Switch B/Lと三国間取引・貨物保険の注意点
Switch B/Lとは
Switch B/Lとは、三国間取引や仲介貿易等において、当初発行されたB/Lを回収・取消ししたうえで、Shipper、Consignee、Notify Party等の一部記載を差し替えて発行するB/Lです。
典型的には、輸出国の仕入先を最終買主へ開示したくない場合や、仲介者を最終買主に対する売主としてB/L上に表示する必要がある場合に利用されます。
ただし、Switch B/Lは単なる名義変更ではありません。旧B/Lの回収、新B/Lの記載内容、House B/LとMaster B/Lの関係、D/O発行、L/C条件、通関書類、原産地、貨物保険及び仕向地での貨物引渡しを一体として管理する必要があります。
特に重要なのは、商流上の当事者表示を変更することと、実際の貨物・輸送事実を変更することは全く異なるという点です。実際の積地、揚地、船積日、船名、数量、重量、貨物状態又は原産地と矛盾するB/Lを発行してはいけません。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| Switch B/Lの基本 | 利用目的、発行条件及び商流上の役割 | B/L一般の法的性質は「船荷証券(B/L)の基本的な役割」で扱います。 |
| 旧B/Lの処理 | Original B/Lの全通回収、取消し及びL/Gの限界 | B/L原本なしの貨物引渡しは「B/L原本未着とL/Gによる貨物引渡し」で扱います。 |
| 記載変更 | 変更を検討できる項目と変更してはいけない輸送事実 | 一般的なB/L記載事項は「B/L記載事項と確認方法」で扱います。 |
| House B/LとMaster B/L | NVOCC、shipping line及び仕向地代理店間の整合 | NVOCCの一般的責任は「NVOCC責任とHouse B/L」で扱います。 |
| L/C及び銀行書類 | Third Party B/L、信用状条件及び書類間の矛盾 | 信用状取引全般は「L/C決済と船積書類の確認」で扱います。 |
| 原産地及び通関 | 原産地証明書、Invoice及び輸入許可書類との整合 | EPA及びFTAの適用要件は「EPA・原産地証明」で扱います。 |
| 貨物保険 | 被保険利益、保険価額、保険金請求権及び増し値保険 | 保険証券の譲渡は「貨物保険証券の裏書・譲渡」で扱います。 |
| コンプライアンス | 制裁、輸出管理、原産地偽装及び虚偽記載の防止 | 個別の輸出許可制度は「安全保障貿易管理・輸出規制」で扱います。 |
三国間取引でSwitch B/Lが利用される理由
三国間取引では、輸出国の仕入先A社、仲介国の仲介者C社、輸入国の最終買主B社が、それぞれ別の国に所在することがあります。
A社が貨物を出荷し、C社がA社から貨物を購入したうえでB社へ再販売する場合、C社はB社に対してA社の名称、仕入価格又は仕入経路を開示したくないことがあります。
この場合、当初のB/Lを回収・取消しし、C社をShipperとして表示するSwitch B/Lを発行することがあります。ただし、Switch B/Lによって整理できるのは主として商流上の当事者表示です。貨物の原産地、実際の船積日、実際の積地及び輸送経路まで変更できるわけではありません。
Switch B/L発行の基本原則
- 発行依頼者の本人確認及び依頼権限を確認します。
- 三国間取引の売買契約、商流及び最終買主を確認します。
- 旧B/Lの種類、発行通数、所在及び裏書状況を確認します。
- Original B/Lが発行されている場合は、原則として全通を回収します。
- 旧B/Lを取消し、使用不能とした証跡を残します。
- 変更前後の各記載を対照表で確認します。
- 実貨物、船積記録及び通関書類との矛盾がないことを確認します。
- House B/LとMaster B/Lの引渡し指図を整合させます。
- 仕向地代理店へ新旧B/Lの関係及びD/O発行条件を通知します。
- L/C、原産地証明書及び貨物保険の整合を確認してから新B/Lを発行します。
新B/Lは旧B/Lに代わる運送書類として使用されます。ただし、Switch B/Lを発行しただけで、既存の運送契約、運賃債務、補償義務その他の契約関係が当然にすべて消滅し、別個の契約へ全面的に置き換わるとは限りません。
旧契約関係に残る債務、新B/L上の発行者責任、荷送人の保証、適用約款及び準拠法は個別に確認する必要があります。
変更できる項目と変更してはいけない項目
| 項目 | 変更を検討できる範囲 | 変更してはいけない又は高リスクの内容 | 主な確認資料 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|---|
| Shipper | 仲介者を最終買主に対する売主として表示する変更 | 依頼権限のない第三者又は制裁対象者を形式的に表示する変更 | 売買契約、Invoice、旧B/L、L/C | 商流と依頼権限が説明できるかを確認します。 |
| Consignee | 最終買主、銀行又は指図人への変更 | 既に権利譲渡された旧B/Lと競合する変更 | L/C、売買契約、裏書記録 | 記名式、指図式及び銀行指図式の違いを確認します。 |
| Notify Party | 最終買主、customs broker又は現地代理店への変更 | 実際の引渡先と無関係な者への変更 | Arrival Notice指示、代理店指示書 | D/O発行及び連絡先と一致させます。 |
| 貨物品名 | 実貨物を正確に表現する同義表現又は真正な誤記訂正 | 実貨物と異なる品名、規制分類又は品質表示への変更 | Commercial Invoice、Packing List、検量記録 | 販売上の都合だけで貨物の同一性を変えてはいけません。 |
| 数量・重量 | 客観的記録に基づく真正な訂正 | 実際の積載数量又は重量と異なる変更 | Tally Sheet、重量証明、船積記録 | 訂正根拠を記録として残します。 |
| 荷姿・貨物状態 | 実際の荷姿を正確に示す訂正 | 破損、濡損又は包装不良を隠す変更 | 受取記録、写真、Mate's Receipt | 発行者が把握した外観状態と矛盾させないことが必要です。 |
| 積地・揚地 | 真正な記載誤りの訂正 | 実際に使用していない港又は場所への変更 | Booking、運航記録、Master B/L | 実輸送経路と一致している必要があります。 |
| 船名・航海番号 | 真正な誤記訂正 | 実際に積載した本船と異なる記載 | 船積記録、Master B/L | 事故区間及び運送人の特定に影響します。 |
| 船積日 | 実際の船積記録に基づく訂正 | L/C期限に合わせる目的の遡及又は虚偽日付 | On-board記録、ターミナル記録 | 銀行決済及び保険始期に影響します。 |
| 原産地 | 真正な誤記訂正 | 仲介国を原産国として表示する変更 | 原産地証明書、製造資料 | 原産地はB/Lの差替えだけで変更できません。 |
旧B/Lの全通回収と取消し
Original B/Lが発行されている場合、Switch B/Lの発行前に、原則として旧B/Lの全通を回収し、取消し又は使用不能の処理を行います。
旧B/Lが流通したまま新B/Lを発行すると、旧B/L所持人と新B/L所持人が同一貨物について引渡しを求める可能性があります。特に銀行が旧B/Lを担保又は信用状書類として保有している場合、依頼者だけの指示で取消しを進めてはいけません。
回収した旧B/Lには、取消印、無効表示、回収日、回収担当者及び新B/L番号との対応関係を記録し、電子データだけでなく原本の保管・廃棄手順も明確にします。
旧B/L未回収時のL/Gの限界
旧B/Lを回収できない場合、依頼者からLetter of Guarantee又はLetter of Indemnityの提出を受けることがあります。
しかし、L/Gは、依頼者がB/L発行者へ損害を補償するという契約上の約束です。旧B/L所持人の権利、銀行の担保権又は第三者の貨物引渡請求権を消滅させるものではありません。
L/Gの提出を受けても、発行者のP&I保険又はフォワーダー賠償責任保険で損害が補償されるとは限りません。虚偽記載、故意の不実表示又は原本未回収を認識した二重発行は、保険上の免責又は補償制限の対象となる可能性があります。
旧B/L未回収のままSwitch B/Lを発行する場合は、通常処理ではなく例外的な高リスク案件として、経営判断、保険者への事前照会及び必要に応じた海事弁護士の確認を行います。
House B/LとMaster B/Lの整合
NVOCCがHouse B/Lを発行している場合、shipping lineとの間ではMaster B/L又はOcean B/Lが存在します。
House B/LだけをSwitchする場合、Master B/Lを必ず回収・再発行するとは限りません。Master B/Lの記載又はshipping lineへの引渡し指図を変更しないのであれば、Master B/Lは従来のまま使用されることがあります。
この場合でも、Master B/L上のConsignee又は仕向地代理店が貨物を適法に受け取り、新House B/Lに基づいて正しい相手へD/Oを発行できる構造になっていることが必要です。
Master B/L側のShipper、Consignee、揚地又は引渡し指図も変更する場合は、Master B/Lの原本回収、Surrender処理、取消し又は再発行の要否をshipping lineへ確認します。
D/O発行と仕向地代理店の役割
仕向地代理店は、旧B/Lと新B/Lの関係、Master B/L上の引渡し指図、運賃及び現地費用の回収状況を確認してD/Oを発行します。
D/Oがまだ発行されていない場合は、新B/Lに基づくD/Oの発行条件及び発行名義を確認します。すでに旧B/Lに基づくD/Oが発行されている場合は、そのD/Oの取消し、回収及び再発行が必要かを確認します。
旧D/Oが有効なまま新D/Oを発行すると、貨物引渡しの指図が重複するため、代理店、倉庫又はターミナルで誤引渡しが生じる可能性があります。
NVOCCパターンとshipping line直接パターンの比較
| 取引形態 | 主な運送書類 | Switchを行う主体 | 仕向地引渡しの確認 | 主な責任上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| NVOCC利用 | House B/L及びMaster B/L | House B/L発行者であるNVOCC | Master B/L上の代理店と新House B/L上の受取人を整合させます。 | NVOCCが新House B/Lの記載及び引渡し指図について責任を負う可能性があります。 |
| shipping line直接 | Ocean B/L | shipping line又は正当な発行代理人 | shipping lineの仕向地支店又は代理店が確認します。 | shipping lineのSwitch発行基準及びP&I上の制限に従います。 |
| 海外代理店発行 | 代理店名義又はNVOCC本体名義のB/L | 発行権限を持つ代理店 | 本体と代理店間の発行権限及び指図系統を確認します。 | 誰の名義で発行し、誰がContracting Carrierとなるかを確認します。 |
| Sea Waybill利用 | Sea Waybill | 運送人又は発行代理人 | 記名されたConsigneeへの引渡し指図を変更できるか確認します。 | Original B/Lの回収問題はありませんが、指図変更権限は別途確認が必要です。 |
Switch B/Lを使わない選択肢
| 手段 | 書類の性質 | 貨物引渡し | 向いている場面 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Switch B/L | 旧B/Lを回収・取消しして新B/Lへ差し替える方法 | 新B/Lの条件に基づいて行います。 | 商流上のShipper又はConsignee表示を変更する必要がある場合 | 旧B/L全通回収及び二重発行防止が必要です。 |
| Surrendered B/L | 元地でOriginal B/Lを回収し、原本提示なしで引き渡す処理 | Surrender情報に基づいて行います。 | 航海が短く原本到着が間に合わない場合 | 仕入先秘匿そのものを解決する方法ではありません。 |
| Sea Waybill | 通常、有価証券性を持たない記名式運送書類 | 記名Consigneeへ行います。 | 信用取引、関連会社間取引及び原本流通が不要な場合 | B/Lと同じ担保機能又は譲渡機能はありません。 |
| FCR | freight forwarderが貨物受領を確認する書類 | FCR自体の提示により貨物を引き渡す仕組みではありません。 | 仲介者が輸出者からの貨物受領を確認したい場合 | 運送契約、引渡指図及び責任主体を別途整理します。 |
| 当初から仲介者をShipperとするB/L | Switchを前提とせず商流に合わせて発行するB/L | 当初のB/Lに基づいて行います。 | 出荷前に三国間取引の構造が確定している場合 | 輸出申告者、実際の輸出者及び原産地書類との整合が必要です。 |
FCRを利用する場合の注意点
FCRは、通常、freight forwarderが貨物を受領したこと及び受領後の取扱指示を確認する書類です。B/Lのような有価証券又は貨物引渡請求権を表章する運送書類ではありません。
ただし、FCRが発行されているからといって、freight forwarderと依頼者の間に運送契約が存在しないと一律に判断することもできません。運送契約の成立、責任範囲及び準拠法は、FCRの記載、見積書、quotation terms、適用約款、メール及び実際に引き受けた業務から判断します。
海外代理店が本体名義のFCRを発行する場合は、代理権限、発行主体、契約当事者及び事故時の責任主体を明確にする必要があります。
L/C条件とThird Party B/L
UCP 600が適用される信用状取引では、運送書類上のShipper又はConsignorがL/C上のBeneficiaryと同一であることが一律に要求されているわけではありません。
したがって、B/L上のShipperが仲介者又は第三者であることだけを理由に、直ちに銀行が書類を拒絶するとは限りません。
ただし、信用状本文にShipperをBeneficiaryへ限定する条件がある場合や、B/L、Invoice、保険書類、原産地証明書その他の書類間に矛盾するデータがある場合は、ディスクレパンシーとなる可能性があります。
Switch B/Lを発行する前に、少なくとも次の事項を確認します。
- 信用状がUCP 600に準拠しているか
- Shipper又はConsignorを限定する特別条件があるか
- Consignee及びNotify Partyの指定
- 積地、揚地、船積期限及び呈示期限
- 貨物明細、数量及び重量
- Full Set of Original B/Lの提出条件
- 保険書類及び原産地証明書とのデータ整合
原産地証明書及び通関書類との関係
Switch B/LによってShipperを仲介者へ変更しても、貨物の原産地は変わりません。
原産地証明書、輸出申告、輸入申告、製造者証明、検疫証明及び輸入許可書類には、実際の製造国、輸出国又は製造者が記載されることがあります。
商流秘匿を優先してB/L又はInvoiceの記載を変更した結果、原産地証明書や許認可書類との間に矛盾が生じると、通関保留、特恵関税の否認、追加資料要求又は虚偽申告の疑いにつながります。
コンプライアンス上、受けてはいけない依頼
- 実際の積地又は揚地を別の国・港へ変更する依頼
- 実際の船積日より前又は後の日付を記載する依頼
- 実貨物と異なる品名、数量、重量又は荷姿へ変更する依頼
- 実際の原産国を仲介国へ変更する依頼
- 輸出管理対象貨物の最終需要者又は最終仕向地を隠す依頼
- 制裁対象者又は制裁対象国との関係を隠す依頼
- 関税率又は輸入規制の回避を目的とする依頼
- 旧B/Lの所在又は権利者を説明できない依頼
- 銀行が旧B/Lを保有しているにもかかわらず無断で取消しを求める依頼
依頼者の指示があることは、B/L発行者の免責理由にはなりません。虚偽記載又は違法取引への関与が疑われる場合は、Switch B/Lの発行を停止し、コンプライアンス担当者及び必要に応じて専門家へ確認します。
三国間取引における貨物保険
三国間取引では、誰が貨物保険を手配するかだけでなく、誰のどの経済的利益を、どの価格で、どの区間について補償するかを確認する必要があります。
B/L上のShipper又はConsignee名義だけで、保険金請求権が決まるわけではありません。事故時には、売買契約、危険負担の移転、被保険利益、保険契約上の被保険者、保険証券の裏書及び損害負担の実態が確認されます。
Switch B/Lの発行によってShipper名が変更されても、保険証券上の被保険者又は保険金請求権が自動的に新Shipperへ移転するわけではありません。
インコタームズ別の保険手配
| 取引条件 | 売主の保険手配義務 | 三国間取引での確認事項 | 不足しやすい利益 | 実務対応 |
|---|---|---|---|---|
| FCA・FOB | 原則としてありません。 | 仲介者がどの地点から危険を負担するかを確認します。 | 仲介者の仕入価格及び最終販売利益 | 仲介者又は買主が実際の輸送区間を付保します。 |
| CPT・CFR | 運賃は売主負担ですが、保険手配義務は原則としてありません。 | 費用負担と危険移転時点が異なることを確認します。 | 運賃支払者が保険も付けたと思い込むことによる無保険 | 買主又は仲介者が危険負担開始時点から付保します。 |
| CIP | 売主が保険を手配します。 | 原則としてInstitute Cargo Clauses(A)相当の補償水準及び契約価格の110%以上を確認します。 | 仲介者による再販売価格の上乗せ部分 | 最終販売価格との差額について増し値保険を検討します。 |
| CIF | 売主が保険を手配します。 | 原則としてInstitute Cargo Clauses(C)相当が基準となるため、貨物に十分か確認します。 | 広い補償を必要とする貨物及び仲介利益 | 必要に応じて補償条件の拡張及び増し値保険を検討します。 |
| 仲介者から最終買主へのCIP・CIF | 仲介者が最終買主のために保険を手配します。 | 仲介者の販売価格、実輸送区間及び証券の交付先を確認します。 | 原保険と最終販売価格との差額 | 原保険との重複及び保険金請求権を調整します。 |
C&Fは旧来又は慣用的な表記です。現行のIncoterms®ではCFRを使用します。
原保険と増し値保険の比較
| 項目 | 原保険 | 増し値保険 | 確認すべき問題 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|---|
| 対象価額 | 輸出者から仲介者への販売価格を基準とする場合があります。 | 仲介利益又は最終販売価格との差額を対象とします。 | 両保険の対象価額に空白又は重複がないか | 価格構成を明細化します。 |
| 被保険者 | 輸出者、仲介者又は買主 | 主として増し値部分の利益を有する仲介者 | 事故時に被保険利益を有していた者は誰か | 売買契約と危険移転時点を確認します。 |
| 保険期間 | 原保険のinsured transit | 原保険と同一又は必要な追加区間 | 始期・終期及び保管中の空白 | 両証券のattachmentとterminationを照合します。 |
| 保険会社 | 輸出者側の保険会社 | 同一又は別の保険会社 | 他保険条項、重複保険、分担及び代位求償 | 可能な限り事前に両保険の関係を申告します。 |
| 事故処理 | 貨物の物的損害を査定します。 | 増し値部分の損害及び支払条件を査定します。 | 同一事故について異なる査定が行われる可能性 | 同一サーベイ資料及び損害資料を共有します。 |
原保険と増し値保険を別々の保険会社へ手配すること自体が直ちに不適切というわけではありません。ただし、他保険条項、重複保険、保険金の分担、サーベイ、代位求償及び協定条項の調整が必要になることがあります。
実際の保険金額、増し値部分及び保険証券の設計は、売買契約と貨物の性質によって異なります。手配前に、外航貨物海上保険に精通した保険代理店又は保険会社へ確認することが重要です。
フォワーダー標準五分類による関与範囲
本記事における五分類は、法令上又は業界全体で確立された法的分類ではなく、本シリーズにおいてfreight forwarderの契約及び実務上の関与範囲を整理するための分析上の枠組みです。
| 標準五分類 | Switch B/Lへの関与 | 確認すべき権限 | 主な責任範囲 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Simple Intermediary | 発行依頼の連絡又は書類授受を取り次ぎます。 | B/L発行者への連絡権限 | 依頼内容の正確な伝達及び委任範囲内の業務 | 自ら発行者又は運送人であるとは限りません。 |
| Cargo Transportation Service Provider | 利用運送契約の一部として発行又は手配します。 | 運送引受け及び書類発行権限 | 利用運送契約及び適用約款に基づく責任 | 単純取次との区別が必要です。 |
| NVOCC / House B/L Issuer | 自らのHouse B/Lを回収・取消しし、新House B/Lを発行します。 | 旧B/L取消し、新B/L発行及び仕向地引渡指図 | House B/L発行者としての契約上の責任 | Master B/L及び代理店指図との整合が必要です。 |
| Door-to-Door Single Contractor | 集荷から最終納品までの一体的な輸送の中で処理します。 | 各区間の書類発行及び再委託権限 | 一体的に引き受けた範囲及び適用約款上の責任 | 全区間について無制限責任を負う意味ではありません。 |
| Agent / Coordinator for Specific Operations | 旧B/L回収確認、代理店連絡又はD/O発行調整等を行います。 | 個別に委任された業務の範囲 | 指定された確認・調整業務 | 委任されていない発行判断や貨物状態保証まで負うとは限りません。 |
Contracting Carrier及びActual Carrierは法的又は契約上の地位を示す概念であり、標準五分類を置き換える分類ではありません。
B/L作成、書類回収、D/O発行、通関、保管及び国内配送等の実作業も、それ自体で第六の分類を構成するものではありません。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 旧Original B/L未回収のまま新B/Lを発行した | 回収確認不足又は納期優先 | 旧B/L発行台帳、Courier記録、銀行保有状況 | 旧B/Lが第三者へ譲渡されていないか | 新B/L及びD/Oの使用を停止し、権利者を確認します。 |
| House B/LだけをSwitchし仕向地で貨物を引き取れない | Master B/L上の代理店又は引渡指図との不整合 | House B/L、Master B/L、代理店指示書 | 誰がshipping lineから貨物を受け取る構造か | shipping line及び仕向地代理店へ引渡指図を確認します。 |
| 旧D/Oと新D/Oが併存した | 旧D/Oの取消し漏れ | D/O発行記録、倉庫引渡記録 | 貨物がすでに引き渡されていないか | 倉庫又はターミナルへ即時の引渡停止を指示します。 |
| L/C書類がディスクレパンシーとなった | 信用状条件又は他書類との矛盾 | L/C、B/L、Invoice、保険書類 | Shipper限定条件及びデータ間の矛盾 | 銀行呈示前なら訂正し、呈示後はWaiverの可否を確認します。 |
| 原産地証明書とB/L表示が矛盾した | 仲介国を原産国のように表示した | 原産地証明書、B/L、製造資料 | 原産地偽装又は特恵適用への影響 | 通関を停止し、正しい原産地資料へ修正します。 |
| 事故時に仲介利益が補償されなかった | 仕入価格だけで保険を手配した | 原保険証券、売買契約、各Invoice | 仲介者の被保険利益及び増し値部分 | 原保険の請求可能額を確認し、未補償部分を算定します。 |
| 旧B/L名義と保険証券名義が異なる | B/Lだけを差し替え、保険証券を確認しなかった | 旧新B/L、保険証券、裏書、売買契約 | 損害時に誰が被保険利益を有していたか | 保険会社へ事故通知し、権利関係資料を提出します。 |
| 制裁回避が疑われる変更依頼を受けた | 最終需要者又は輸送経路の秘匿 | KYC資料、輸出許可、取引経路 | 商流秘匿と規制回避を区別できるか | 発行処理を停止し、コンプライアンス審査へ移します。 |
具体例1:FOB仕入れ・CIF再販売の場合
輸出国A社が仲介国C社へFOB条件で販売し、C社が輸入国B社へCIF条件で再販売するケースを考えます。
FOB取引では、原則としてA社に貨物保険の手配義務はありません。C社はFOBの危険移転時点以降の被保険利益を持ち、B社とのCIF契約に基づいてB社のために保険を手配します。
この場合、C社はA社からの仕入価格ではなく、原則としてB社へのCIF販売価格を基礎として必要な保険金額を設定します。
Switch B/LでC社をShipperとして表示しても、保険の対象区間、被保険者及び保険価額が自動的に整うわけではありません。B/L発行前に、C社の保険証券が実際の出発地から目的地までを補償しているかを確認します。
具体例2:CIF仕入れ後に高値で再販売する場合
A社がC社へCIF条件で販売し、A社がC社向け販売価格を基準として貨物保険を手配したとします。その後、C社がB社へさらに高い価格で再販売します。
A社の原保険は、通常、A社からC社への契約価格を基礎とします。このため、C社がB社へ上乗せした販売価格又は仲介利益まで原保険で補償されるとは限りません。
C社は、原保険の保険金額、補償条件、被保険者、証券譲渡及び事故時の請求方法を確認したうえで、必要に応じて増し値保険を検討します。
別の保険会社へ増し値保険を手配する場合は、原保険の存在を申告し、同一事故における損害査定、他保険条項及び代位求償の調整方法を事前に確認します。
具体例3:Switch後に輸送中損害が判明した場合
旧B/LではA社がShipper、新B/LではC社がShipperとして記載され、貨物到着後に輸送中の水濡れが判明したケースを考えます。
新B/LにC社がShipperとして記載されていることだけで、C社が当然に保険金を請求できるとは限りません。
まず、損害が発生したと推定される時点を確認し、その時点で売買契約上の危険を負担していた者、保険証券上の被保険者、保険証券の裏書先及び実際に損害を負担した者を確認します。
運送人への求償についても、新B/L発行者、Actual Carrier、損害発生区間及び適用約款を確認します。旧B/Lと新B/Lの名義だけで請求先を決めず、契約関係と事故区間を重ねて判断します。
具体例4:旧B/Lを銀行が保有していた場合
A社からC社へのL/C取引で、旧Original B/Lが銀行へ呈示されていたにもかかわらず、C社がB/Lを紛失したと説明し、Switch B/Lの発行を依頼したケースを考えます。
この場合、C社のL/Gだけで新B/Lを発行してはいけません。銀行が旧B/Lを保有している場合、旧B/Lは決済又は担保のために使用されている可能性があります。
発行者は、銀行を含む旧B/L所持人、裏書状況及び信用状決済の進行状況を確認します。銀行の権利が未処理のまま新B/Lを発行すると、競合する引渡請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 発行依頼受領時 | 依頼者、営業担当、コンプライアンス担当 | 取引目的、商流、最終買主及び変更理由 | 取引目的を説明できない場合は発行処理を停止します。 |
| 旧B/L確認時 | B/L発行者、依頼者、銀行 | 発行通数、所在、裏書及び回収状況 | 全通回収できない場合は通常処理を中止します。 |
| 変更内容確認時 | 依頼者、書類担当、通関担当 | 新旧B/Lの差分及び実貨物との一致 | 輸送事実と矛盾する項目は変更を拒否します。 |
| Master B/L確認時 | NVOCC、shipping line、輸出地代理店 | Master B/L上のConsignee及び引渡指図 | 新House B/Lで引渡しできない場合は指図を修正します。 |
| D/O発行前 | 仕向地代理店、D/O担当 | 有効なB/L、費用回収及び引渡先 | 旧D/Oがある場合は取消し・回収を行います。 |
| L/C確認時 | 荷主、銀行、貿易担当 | 信用状条件及び各書類間のデータ整合 | 呈示前に訂正し、呈示後は銀行へ対応を確認します。 |
| 原産地確認時 | 輸出者、customs broker、発給機関 | B/L、Invoice及び原産地証明書の整合 | 矛盾がある場合は通関前に書類を訂正します。 |
| 貨物保険確認時 | 仲介者、保険代理店、保険会社 | 被保険者、保険価額、保険期間及び増し値部分 | 補償不足がある場合は出荷前に追加手配を検討します。 |
| 事故発生時 | 荷主、NVOCC、保険会社、サーベイヤー | 損害時点、被保険利益、事故区間及び求償先 | 貨物状態を保全し、関係者へ直ちに事故通知します。 |
| 競合請求発生時 | 旧新B/L所持人、銀行、運送人、海事弁護士 | 各B/Lの有効性、所持経路及び引渡状況 | 貨物引渡しを停止し、法的整理が完了するまで処分しません。 |
海事弁護士へ相談すべき場面
- 旧Original B/Lの全通を回収できず、第三者が保有している可能性がある場合
- 旧B/L所持人と新B/L所持人から競合する貨物引渡請求を受けた場合
- 旧B/L又は旧D/Oに基づいてすでに貨物を引き渡した場合
- 銀行が旧B/Lを保有し、担保権又は信用状上の権利が問題になる場合
- 虚偽記載、原産地偽装、制裁回避又は輸出管理違反が疑われる場合
- 複数国の運送人、NVOCC及び代理店の責任が競合する場合
- 高額貨物についてL/Gを受けて例外的な発行を検討する場合
- 保険会社から故意、不実表示又は補償対象外の可能性を指摘された場合
これらの場面では、営業上の納期を優先して書類処理を進めると、貨物価額を超える損害、銀行との紛争又は保険補償の喪失につながる可能性があります。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| Switch B/LはShipper名を変更するだけの手続きである | 貨物引渡し、D/O、L/C、通関及び保険にも影響します。 | 新旧B/Lだけでなく関係書類全体を照合します。 |
| 旧B/Lは新B/L発行後に回収すればよい | 原則として旧Original B/L全通の回収・取消し後に新B/Lを発行します。 | 未回収のまま発行すると二重引渡しの危険があります。 |
| L/Gがあれば旧B/L所持人の権利は消える | L/Gは発行者に対する補償約束であり、第三者の権利を消滅させません。 | L/Gの信用力と保険上の取扱いも確認します。 |
| House B/LをSwitchする場合は必ずMaster B/Lも再発行する | Master B/Lの記載又は引渡指図を変更しない場合、再発行しないことがあります。 | 仕向地で新House B/Lに基づく引渡しが可能か確認します。 |
| 新B/Lを発行すると旧契約は当然に消滅する | 運賃債務、補償義務又は既存の契約関係が残る場合があります。 | 旧新B/Lの約款及び契約当事者を個別に確認します。 |
| FCRはB/Lと同じ権利を持つ | FCRは通常、貨物受領を確認する書類であり、B/Lと同じ有価証券ではありません。 | 運送契約及び貨物引渡指図を別途確認します。 |
| UCP 600ではB/L上のShipperは必ずBeneficiaryでなければならない | 一律には要求されませんが、信用状の特別条件及び書類間の矛盾を確認します。 | Third Party B/Lという名称だけで可否を判断しません。 |
| B/L上のShipperを変更すれば保険金請求権も移る | 保険金請求権は被保険利益、証券名義、裏書及び損害負担から判断します。 | B/Lと同時に保険証券の権利関係を確認します。 |
| CIFとCIPは同じ保険条件である | Incoterms® 2020では、原則としてCIPとCIFで求められる補償水準が異なります。 | 貨物の性質に応じて必要な補償条件を確認します。 |
| 原産地は仲介国へ変更できる | 原産地は製造又は加工の実態及び原産地規則に基づきます。 | B/Lの差替えによって原産地を変更してはいけません。 |
まとめ
Switch B/Lは、三国間取引や仲介貿易において、仕入先又は商流上の当事者を最終買主へ開示しないために利用されることがあります。
しかし、変更できるのは、実際の商流及び輸送事実に反しない範囲の当事者表示等に限られます。積地、揚地、船積日、船名、貨物数量、貨物状態及び原産地を事実と異なる内容へ変更してはいけません。
Original B/Lが発行されている場合は、原則として旧B/L全通を回収・取消ししてから新B/Lを発行します。L/Gは旧B/L所持人の権利を消滅させるものではなく、未回収発行の危険を完全に解消するものでもありません。
NVOCC案件では、House B/Lだけでなく、Master B/L上の引渡指図、仕向地代理店及びD/O発行条件を確認します。ただし、House B/LをSwitchするだけでMaster B/Lの再発行が必ず必要になるわけではありません。
三国間取引の貨物保険では、B/L名義ではなく、被保険利益、危険負担、保険価額、保険証券の裏書及び実際の損害負担を確認します。仕入価格と最終販売価格に差がある場合は、仲介利益を対象とする増し値保険の要否も検討します。
Switch B/Lは、B/L発行だけで完結する実務ではありません。旧B/L回収、Master B/L、D/O、L/C、原産地、輸出管理、貨物保険及び事故時の求償関係までを一つの管理手順として設計することが重要です。
