B/L名義と保険証券名義が違う場合

B/L名義と保険証券名義が違う場合

B/L名義と保険証券名義が違う場合、まず確認すべきことは、B/Lと外航貨物海上保険証券は同じ性質の書類ではないという点です。

B/LのConsignee欄は、貨物の引渡請求、B/L原本の所持、裏書、銀行担保、貨物支配と関係します。

一方、保険証券のAssured欄は、保険契約上の被保険者、被保険利益、保険金請求権と関係します。

そのため、B/L上でTo Order表記が使われているからといって、保険証券のAssured欄にも同じようにTo Orderと記載すればよい、という考え方は危険です。

重要なのは、B/L名義と保険証券名義を形式的に一致させることではありません。事故時に、誰が被保険利益を持ち、誰が損害を受け、誰が保険金を請求できるのかを説明できる状態にしておくことです。

この記事で扱う範囲

この記事では、B/L名義と保険証券名義が違う場合に、どのように整理すべきかを解説します。

特に、次の論点を扱います。

  • B/LのConsignee欄と保険証券のAssured欄の違い
  • B/LのTo Orderと保険証券のTo Orderの違い
  • L/C条件で保険証券にTo Orderや白地裏書が求められる背景
  • UCP600 Article 28と保険書類の銀行審査
  • CIFCIP、FCA条件での保険手配とAssured欄
  • 名義が違っても問題にならない場合
  • 名義が違うと問題になる場合
  • 損害発生前と損害発生後で確認すべきポイント
  • 三国間取引、Switch B/L、増値保険との関係
  • NVOCC・フォワーダーが確認すべき実務ポイント

本記事の中心は、「B/L上の名義」と「保険証券上の名義」を同じ発想で処理しないことです。

B/Lの名義と保険証券の名義は何を示すのか

B/Lの名義と保険証券の名義は、似ているように見えて、示している内容が異なります。

項目 B/L 保険証券
主な名義欄 Shipper、ConsigneeNotify Party Assured、Claim Payable、Policy Holderなど
主な意味 貨物の運送、引渡し、B/L原本の所持、権利移転に関係する 保険契約、被保険利益、保険金請求権に関係する
To Orderの意味 指図式B/Lとして、裏書と所持により貨物引渡請求権の移転に関係する B/Lと同じ意味では使えず、Assured欄にそのまま記載すると不明確になる場合がある
裏書の意味 貨物引渡請求権や書類上の権利移転に関係する 保険証券や保険金請求権の譲渡・請求者整理に関係することがある
事故時の確認点 誰が貨物を引き取る権限を持つか 誰が被保険利益を持ち、保険金を請求できるか

B/LのConsignee欄と保険証券のAssured欄は、どちらも名義を記載する欄ですが、意味はまったく同じではありません。

保険証券のAssured欄とは

外航貨物海上保険のAssured欄には、原則として、その貨物について被保険利益を持つ者、または保険契約上の被保険者となる者を記載します。

被保険利益とは、その貨物に損害が発生した場合に、経済的な損失を受ける関係をいいます。

外航貨物海上保険は、貨物に対する被保険利益を前提に成り立つ保険です。

したがって、被保険利益を持たない者を形式的にAssured欄へ記載しても、事故時に当然に保険金請求ができるわけではありません。

保険証券のAssured欄では、B/Lの名義を機械的に転記するのではなく、売買条件、危険負担、保険手配者、事故時の損害負担者を確認する必要があります。

To OrderはB/Lと保険証券で意味が違う

B/Lでは、Consignee欄にTo Order、To Order of Shipper、To Order of Bankなどの表記が用いられることがあります。

これは、B/L原本の流通、裏書、銀行担保、貨物引渡しと関係する表記です。

たとえばTo Order B/Lでは、裏書と原本所持によって、貨物引渡請求権が移転する実務になります。

一方、外航貨物海上保険証券は、B/Lと同じ意味で貨物引渡請求権を流通させる書類ではありません。

そのため、B/LのConsignee欄にTo Orderと記載する感覚で、保険証券のAssured欄にTo Orderと記載することは適切ではありません。

保険証券では、誰が被保険利益を持ち、誰が保険金請求権を行使できるのかを明確にする必要があります。

なぜAssured欄にTo Orderを求められるのか

実務上、L/C条件で保険証券のAssured欄にTo Orderと記載するよう求められることがあります。

この背景には、B/LのTo Order表記と保険証券の流通性を混同している場合があります。

また、開設銀行や取引関係者が、保険証券を銀行書類として担保的に保有し、必要に応じて保険金請求権を移転できるようにしたいと考えている場合もあります。

その結果、B/Lと同じように、保険証券にもTo Orderと書けば流通しやすい、または白地裏書と同じ効果があると誤解されることがあります。

しかし、Assured欄にTo Orderと記載することと、具体的なAssuredを記載した保険証券に白地裏書を行うことは、同じ意味ではありません。

保険証券は、誰が被保険利益を持ち、誰が保険金請求権を行使できるかを確認する書類です。したがって、Assured欄をB/LのConsignee欄と同じ発想で処理することは避けるべきです。

UCP600 Article 28と保険書類

L/C取引では、保険証券や保険証明書などの保険書類は、信用状条件およびUCP600 Article 28の枠組みの中で銀行により点検されます。

銀行実務では、保険書類について、発行者、署名、原本通数、日付、保険金額、通貨、担保危険、保険区間などが確認されます。

ただし、銀行が確認するのは、原則として信用状条件に対する書類上の適合性です。

銀行が保険書類を受理したからといって、事故時に誰が被保険利益を持つか、誰が実際に保険金請求できるかまで保証されるわけではありません。

そのため、L/C上の保険書類条件を満たすことと、貨物事故時に有効に保険金請求できることは分けて考える必要があります。

白地裏書済み保険証券とAssured欄To Orderは違う

L/C条件では、保険証券または保険証明書について、白地裏書を求められることがあります。

白地裏書とは、特定の譲受人名を明示せずに裏書する方法です。保険証券を銀行経由で流通させる場合や、買主側へ保険金請求の可能性を移す場合に使われることがあります。

しかし、白地裏書済みの保険証券と、Assured欄自体をTo Orderにした保険証券は、同じものではありません。

項目 白地裏書済み保険証券 Assured欄To Order
基本構造 具体的なAssuredが記載されたうえで、裏書により譲渡性を持たせる Assured欄に具体的な被保険者が記載されていない
実務上の目的 保険証券を銀行・買主へ移転しやすくする B/LのTo Orderを誤って保険証券へ持ち込んでいる場合がある
事故時の確認 裏書、被保険利益、売買条件、損害負担者を確認する 誰がAssuredなのか、誰が被保険利益を持つのかが不明確になりやすい
問題点 形式だけでは請求権が確定せず、被保険利益の確認が必要 保険実務上、受理されにくい、または訂正を求められる可能性がある

白地裏書があるからといって、誰でも自由に保険金を請求できるわけではありません。

保険金請求では、被保険利益、損害負担、売買条件、保険証券の譲渡、Assignmentの有効性が確認されます。

L/C条件でAssured欄にTo Orderを求められる場合

L/C条件で、保険証券のAssured欄にTo Orderと記載するよう求められた場合、まずB/LのTo Order表記と混同されていないかを確認する必要があります。

外航貨物海上保険では、Assured欄には被保険者となるべき具体的な者を記載するのが基本です。

そのため、保険証券のAssured欄にTo Orderと記載することは、保険実務上適切でない場合があります。

L/C条件がこのような記載を求めている場合には、信用状発行銀行または取引相手に対し、L/C Amendを依頼することを検討する必要があります。

たとえば、Assured欄には実際のShipper、Consignee、または保険契約上適切な被保険者名を記載し、必要に応じて保険証券を白地裏書する形に修正することが考えられます。

L/C AmendまたはL/G買取で対応する

L/C条件に、保険証券のAssured欄をTo Orderとするような不適切な条件が含まれている場合、まずはL/C Amendを検討します。

具体的には、Assured欄に実際のShipper、Consignee、または保険契約上適切な被保険者名を記載できるよう、信用状条件を訂正してもらう必要があります。

すでに船積みが進んでいる場合や、L/C Amendが間に合わない場合には、銀行と相談のうえ、ディスクレ扱い、L/G買取、またはその他の買取可否を検討することがあります。

いずれにしても、B/Lと同じ感覚で保険証券のAssured欄をTo Orderにすることは避けるべきです。

B/L名義と保険証券名義が違うこと自体はあり得る

B/L名義と保険証券名義が異なること自体が、常に誤りというわけではありません。

B/Lは貨物引渡しと運送書類の管理に関係し、保険証券は被保険利益と保険金請求に関係します。

そのため、L/C条件、インコタームズ、売買契約、保険契約の内容によっては、B/L上のConsigneeと保険証券上のAssuredが一致しないことがあります。

重要なのは、名義が違うこと自体ではなく、事故時に誰が保険金を請求できるのか、誰が被保険利益を持っているのかが説明できることです。

名義が違っても問題になりにくい場合

B/L名義と保険証券名義が違っていても、取引構造と保険金請求権を説明できれば問題になりにくい場合があります。

取引場面 B/L名義 保険証券名義 考え方
FOB条件で買主が保険を手配する場合 Consigneeが買主または銀行名義 買主がAssured 買主が保険を手配し、事故時に損害を受ける立場であれば整合しやすい
CIF条件で売主が保険を手配する場合 Consigneeが買主またはTo Order 売主名義、または売主名義で発行後に買主へ裏書 売主が保険を手配し、保険証券を買主へ渡す構造を説明できる必要がある
商社が中間者として保険を手配する場合 最終買主または銀行名義 商社または商社を含むAssured 商社が被保険利益や損害負担を持つ範囲を説明できる必要がある
三国間取引で仲介者が増値保険を手配する場合 Switch B/L後のConsignee 仲介者または最終買主を含む名義 原保険、増値保険、売買価格差を整理できる必要がある
銀行経由のL/C決済で保険証券が白地裏書される場合 To Orderまたは銀行名義 具体的Assured名+白地裏書 Assured欄To Orderではなく、具体的名義と裏書で処理する方が整理しやすい

このように、名義が違っていても、売買条件、危険負担、保険手配者、被保険利益、保険証券の譲渡が説明できれば、実務上整理できる場合があります。

名義が違うと問題になる場合

一方、B/L名義と保険証券名義が違うことで問題になる場合もあります。

問題になる場面 主なリスク 対応
保険証券のAssured欄がTo Orderだけになっている 誰が被保険者か不明確になる 具体的なAssured名に修正し、必要に応じて裏書で対応する
B/L上のConsigneeと保険証券上のAssuredが違い、理由を説明できない 保険金請求権や被保険利益に疑義が生じる 売買契約、Invoice、インコタームズ、Assignmentを確認する
L/C条件に保険実務上不適切な名義指定がある ディスクレまたは保険実務上の不整合が生じる L/C Amendを依頼し、間に合わない場合は銀行と買取方法を相談する
三国間取引で原保険と最終販売価格が一致していない 仲介利益や増値部分が補償されない可能性がある 増値保険、原保険会社、保険金額を確認する
Switch B/L後の名義だけ整えて、保険証券を見直していない B/L、Invoice、保険証券の商流が矛盾する Switch B/L、Invoice、保険証券、原産地証明書を一体で確認する

名義の違いそのものよりも、違っている理由を説明できないことが問題です。

CIF条件での考え方

CIF条件では、売主が貨物保険を手配するのが基本です。

たとえば日本からCIF条件で輸出する場合、保険申込時点では、通常、Shipperである輸出者側が保険を手配します。

一方、インコタームズ上の危険負担は、貨物が本船に積み込まれた時点で買主側へ移転します。

そのため、事故が発生した場合には、売買条件、危険負担の移転時期、保険証券の内容に基づき、Consigneeである輸入者側が保険金請求を行うことがあります。

このように、CIF条件では、保険を手配する者と、事故時に保険金請求を行う者が実務上分かれることがあります。

そのズレを整理するために、保険証券の名義、裏書、Assignment、被保険利益を確認する必要があります。

CIP条件での考え方

CIP条件でも、売主が貨物保険を手配するため、保険証券のAssured欄が問題になることがあります。

CIP条件は海上輸送だけでなく、航空輸送、複合輸送、陸上輸送にも使われます。

Incoterms 2020では、CIP条件において売主がより広い補償条件の保険を手配することが求められるため、CIF条件よりも保険条件の確認が重要になる場面があります。

ただし、CIPでも、保険を手配する者、危険が移転する時点、事故時に損害を受ける者、保険金請求を行う者が必ず一致するとは限りません。

そのため、B/L、Sea Waybill、AWBなどの運送書類と、保険証券上のAssured、保険区間、保険金額、保険条件を合わせて確認する必要があります。

FCA条件での考え方

FCA条件では、通常、売主に貨物保険を手配する義務はありません。

そのため、買主が自ら貨物保険を手配し、買主名義で保険証券または保険契約を持つことがあります。

この場合、B/Lや運送書類上のShipperが売主であっても、保険証券上のAssuredが買主であることは、取引構造として自然な場合があります。

重要なのは、売主がShipperとしてB/Lに記載されていることと、買主が被保険利益を持って保険を手配していることを混同しないことです。

FCA条件では、運送書類上の名義と保険証券上の名義が異なり得るため、危険移転時点、保険開始時期、輸送区間を確認する必要があります。

保険証券はB/Lのような流通証券ではない

B/Lは、貨物引渡請求に関係する重要書類であり、裏書や原本の所持が貨物引渡しと関係することがあります。

一方、外航貨物海上保険証券は、B/Lと同じ意味で貨物引渡請求権を移転させる流通証券ではありません。

保険証券に裏書が行われることはありますが、それはB/Lの裏書と同じ意味ではありません。

保険金請求には、被保険利益、売買条件、危険負担、保険証券の内容、損害発生時点の権利関係が関係します。

したがって、保険証券を裏書すれば、被保険利益を持たない者へ自由に保険金請求権を移せるという理解は危険です。

損害発生前と損害発生後で確認すべきポイント

B/L名義と保険証券名義の問題は、保険手配段階と事故発生後で確認すべき内容が異なります。

確認時点 主な確認事項 確認目的 確認を怠った場合のリスク
損害発生前 B/LのShipper、Consignee、Notify Party、To Order表記 運送書類と決済書類の流れを整理する B/Lの名義に合わせて保険証券を誤って作成する可能性がある
損害発生前 保険証券のAssured欄、Claim Payable欄、裏書要否 誰を被保険者として保険を手配するかを確認する 事故時に保険金請求者が不明確になる可能性がある
損害発生前 インコタームズ、売買契約、保険手配義務 誰が保険を手配し、誰が危険を負担するかを整理する 保険手配者と損害負担者の関係を説明できなくなる可能性がある
損害発生前 L/C条件、白地裏書、L/C Amendの要否 銀行書類として受理される形を確認する ディスクレ、買取遅延、L/G買取の検討が必要になる可能性がある
損害発生後 事故時点で誰が被保険利益を持っていたか 保険金請求権の前提を確認する 名義があっても請求根拠を説明できない可能性がある
損害発生後 事故時点の危険負担、所有権、代金支払義務 誰が経済的損失を受けたかを整理する 売主・買主・銀行・保険会社の間で認識が食い違う可能性がある
損害発生後 保険証券の所在、裏書、Assignment、原本の流れ 誰が請求手続を行えるかを確認する 保険金請求の開始が遅れ、必要書類の提出が滞る可能性がある
損害発生後 B/L、Invoice、Packing List、Survey Reportとの整合性 事故内容と商流・物流の整合性を確認する 保険会社から追加説明や補足資料を求められる可能性がある

損害発生前は、書類をどの名義で作るかが中心です。損害発生後は、誰が実際に損害を受け、誰が保険金を請求できるかが中心になります。

実務で問題になりやすいケース

B/L名義と保険証券名義の違いは、通常時には見過ごされがちですが、L/C決済、Switch B/L、三国間取引、貨物事故の場面で問題化しやすくなります。

ケース 問題の内容 確認すべき点 実務上の対応
Assured欄にTo Orderと記載してしまったケース B/LのTo Orderと同じ感覚で保険証券を作成し、具体的な被保険者が不明確になる L/C条件、保険会社の受理可否、実際の被保険利益者 具体的なAssured名へ訂正し、必要に応じて白地裏書またはL/C Amendで対応する
Switch B/L後に保険証券を見直していないケース B/L上のShipperやConsigneeは変更されたが、保険証券上のAssuredや保険金額が旧商流のまま残る Switch B/L、Invoice、保険証券、原産地証明書、売買契約 保険証券の名義、保険金額、増値保険、Assignmentの要否を一体で確認する
L/C条件でAssured欄To Orderを求められたケース 銀行書類条件と保険実務が噛み合わず、保険会社または銀行で問題になる L/C条件、UCP600 Article 28、保険会社の発行条件、銀行の買取方針 L/C Amendを優先し、間に合わない場合は銀行とディスクレ買取やL/G買取を相談する
CIF条件で売主名義の保険証券のまま事故が発生したケース 危険負担は買主側に移転しているが、保険証券の名義や原本が売主側に残っている On Board Date、売買契約、保険証券の裏書、代金支払義務 売主・買主・銀行・保険会社で、請求者、必要書類、裏書・譲渡の処理を整理する
FOBまたはFCA条件でB/L上は売主名義、保険は買主名義のケース B/L上のShipperと保険証券上のAssuredが一致しないため、形式だけ見ると不整合に見える 保険手配者、危険移転時点、買主の被保険利益、輸送区間 買主が保険を手配し損害を負担する構造を資料で説明できるようにする
三国間取引で仲介者の利益部分が保険に反映されていないケース 原保険は仕入価格ベースで、最終販売価格との差額が補償されない可能性がある 原保険金額、最終Invoice、増値保険、仲介者の被保険利益 増値保険の要否を確認し、誰の名義でどの価格差を付保するか整理する
白地裏書があるため誰でも請求できると誤解したケース 保険証券の流通性と保険金請求権を混同し、被保険利益の確認を省略してしまう 裏書、被保険利益、損害負担者、Assignment、売買条件 白地裏書の有無だけで判断せず、事故時点の被保険利益と請求根拠を確認する
B/L、Invoice、保険証券の名義が三者三様になっているケース 荷主、買主、銀行、保険会社の間で商流と物流の説明が一致しない B/L、Invoice、保険証券、L/C、売買契約、三国間取引の有無 各書類が何を示しているかを分け、保険金請求権の根拠を文章で説明できるようにする

よくある誤解

B/L名義と保険証券名義を同じものとして扱うと、事故時やL/C決済時に誤った判断につながります。

よくある誤解 正しい理解 実務上の注意点
B/LがTo Orderなら、保険証券のAssured欄もTo Orderでよい B/LのTo Orderと保険証券のAssured欄は意味が異なる 保険証券には具体的なAssured名を記載し、必要に応じて裏書で処理する
白地裏書があれば誰でも保険金を請求できる 白地裏書だけで被保険利益が発生するわけではない 事故時点の被保険利益、損害負担者、売買条件を確認する
B/L名義と保険証券名義は必ず一致していなければならない 両者は性質の異なる書類であり、取引構造によって異なることがある 名義が違う理由を、売買条件、危険負担、保険手配者から説明できるようにする
L/Cで銀行が保険書類を受理すれば、事故時の保険金請求も問題ない 銀行審査は書類上の信用状条件適合性が中心であり、保険金請求権の最終判断ではない 銀行受理と保険会社の事故査定を分けて考える
保険証券に買主名があれば、常に買主が請求できる 買主名があっても、事故時点で被保険利益や損害負担があるか確認が必要 危険移転時点、代金支払義務、保険区間を確認する
Switch B/Lを作り直せば、保険証券もそのままで問題ない Switch B/LでB/L名義を変えても、保険証券、Invoice、保険金額との整合性確認が必要 保険証券のAssured、増値保険、Assignmentを併せて確認する
保険証券の名義はB/Lから機械的に転記すればよい 保険証券の名義は、被保険利益と保険金請求権を踏まえて決める必要がある 保険申込時に売買条件、保険手配者、損害負担者を確認する

事故時に問題になる点

貨物事故が発生した場合、保険会社はB/L、保険証券、Invoice、Packing List、売買契約、インコタームズ、事故報告、サーベイレポートなどを確認します。

このとき、B/L上のShipperやConsignee、保険証券上のAssured、Invoice上の売主・買主が一致していない場合、その理由を説明できる必要があります。

特に、誰が事故時点で被保険利益を持っていたのか、誰が損害を受けたのか、誰が保険金請求権を持つのかが問題になります。

名義だけを形式的に合わせても、被保険利益や権利関係が整っていなければ、保険金請求時に問題となる可能性があります。

三国間取引・Switch B/Lとの関係

三国間取引やSwitch B/Lを利用する取引では、B/L名義と保険証券名義の違いがさらに問題になりやすくなります。

実際のShipper、仲介者、最終Consigneeが異なるため、誰が保険を手配し、どの価格で付保し、誰が保険金を請求できるのかを整理する必要があります。

仲介者が仕入価格と販売価格の差額を持つ場合、保険価額や増値保険の問題も発生します。

Switch B/LでB/L名義を差し替えても、保険証券、Invoice、原産地証明書、売買契約の整合性が取れていなければ、事故時やL/C決済時に問題になる可能性があります。

三国間取引では、B/L名義を隠す・整えることだけではなく、保険証券上のAssured、保険金額、増値保険、Assignmentを一体で確認することが重要です。

NVOCC・フォワーダーが注意すべき点

NVOCCやフォワーダーは、L/C条件や荷主の依頼に従って書類を作るだけでは不十分です。

特に、B/LのConsignee欄、保険証券のAssured欄、Invoice上の売主・買主、インコタームズ条件が整合しているかを確認する必要があります。

保険証券のAssured欄にTo Orderと記載するよう求められた場合には、B/Lと保険証券の性質が異なることを説明し、必要に応じてL/C Amendを求めるべきです。

また、フォワーダーが保険手配を代行する場合には、誰をAssuredとして記載すべきかを機械的に判断せず、売買条件、保険申込者、被保険利益、事故時の請求者を確認する必要があります。

書類上の名義を形式的に合わせることよりも、事故時に保険金請求権を説明できる構造になっているかが重要です。

判断チェックリスト

B/L名義と保険証券名義が異なる場合は、確認場面、確認事項、問題になる点、問題がある場合の対応を分けて整理する必要があります。

確認場面 確認事項 問題になる点 問題がある場合の対応
B/L作成時 B/L上のShipper、Consignee、Notifyは誰か 貨物引渡しや銀行書類の流れが分からない B/L原本、裏書、L/C条件、決済条件を確認し、必要に応じてConsignee表記を見直す
保険手配時 保険証券上のAssuredは誰か 被保険者や保険金請求者が不明確になる 保険申込内容、売買契約、被保険利益を確認し、具体的なAssured名を設定する
商流確認時 Invoice上の売主・買主は誰か B/L・保険証券と商流が合わない 売買契約、三国間取引、Switch B/Lの有無を確認し、書類間の関係を整理する
取引条件確認時 インコタームズ条件は何か 誰が保険を手配し、誰が危険を負担するか分からない CIF、CIP、FOB、FCAなどの条件別に、保険手配者と損害負担者を確認する
事故発生時 事故時点で誰が被保険利益を持つか 保険金請求権に疑義が生じる 危険移転時点、所有権、代金支払義務、損害負担者を確認する
L/C確認時 L/C条件がAssured欄にTo Orderを求めていないか B/Lと保険証券の混同が起きる L/C Amendを依頼し、必要に応じて具体的Assured名と白地裏書で対応する
銀行買取時 保険証券に白地裏書が必要か 銀行書類としての流通性や買取可否に影響する 信用状条件、銀行指示、保険会社の実務を確認する
三国間取引時 価格差や増値部分があるか 原保険だけでは増値部分が不足する可能性がある 増値保険、原保険会社、保険金額、仲介者の被保険利益を確認する
書類不一致時 L/C Amendが間に合わないか ディスクレや書類不一致になる 銀行とL/G買取、ディスクレ買取、取引先承諾を相談する
保険金請求時 保険証券の原本、裏書、Assignmentは揃っているか 請求権者や提出書類が不明確になる 保険会社に必要書類を確認し、売主・買主・銀行間で書類の流れを整理する

確認の目的は、名義を無理に一致させることではありません。事故時に、保険金請求権と被保険利益を説明できる状態にすることです。

実務上のポイント

B/L名義と保険証券名義は、同じ意味ではありません。

B/LのTo Orderは、貨物引渡請求権やB/L原本の流通と関係します。

保険証券のAssured欄は、被保険利益や保険金請求権と関係します。

L/C条件で保険証券に白地裏書が求められることはありますが、それはAssured欄をTo Orderにすることとは別です。

CIF、CIP、FCAなどの取引条件によって、保険を手配する者、危険を負担する者、保険金を請求する者が異なる場合があります。

名義が違うこと自体よりも、なぜ違うのかを説明できないことが問題です。

まとめ

B/L名義と保険証券名義が違う場合、まずB/Lと外航貨物海上保険証券の性質を分けて考える必要があります。

B/LではTo Order表記が使われることがありますが、保険証券のAssured欄は被保険利益や保険金請求権と関係するため、同じ感覚でTo Orderと記載することは適切ではありません。

L/C条件で保険証券の白地裏書が求められる場合でも、具体的なAssured欄と裏書の問題を分けて確認する必要があります。

CIF条件やCIP条件では、売主が保険を手配しても、危険負担の移転後には買主側が保険金請求を行うことがあります。FCA条件では、B/L上のShipperが売主でも、買主が保険を手配してAssuredとなる場合があります。

損害発生前には、B/L、保険証券、Invoice、L/C、売買条件の整合性を確認し、損害発生後には、事故時点の被保険利益、損害負担者、保険金請求権を確認する必要があります。

重要なのは、B/L名義と保険証券名義を形式的に一致させることではなく、事故時に誰が被保険利益を持ち、誰が保険金を請求できるのかを説明できる状態にしておくことです。

L/C条件で保険証券のAssured欄にTo Orderを求められた場合には、B/Lとの混同がないか確認し、必要に応じてL/C Amend、白地裏書、L/G買取、ディスクレ買取などの正規の方法で対応することが重要です。

同義語・別表記

  • B/L名義
  • 保険証券名義
  • Assured
  • To Order
  • Marine Insurance Policy
  • Insurance Policy
  • 保険証券
  • 被保険利益
  • 保険証券の裏書
  • 白地裏書
  • Blank Endorsement
  • CIF
  • CIP
  • L/C条件

関連用語