海外展示会のラウンド保険・現地付保規制と貨物保険

Round Trip Insurance, Local Insurance Regulations and Cargo Insurance for Overseas Exhibitions

海外展示会のラウンド保険・現地付保規制とは

海外展示会のラウンド保険・現地付保規制とは、日本から海外展示会へ展示品を輸送し、現地展示、巡回輸送、現地保管及び日本への返送等を行う場合に、どの区間を日本側の貨物保険で扱い、どの区間について現地保険、現地認可証券、会場保険又は現地法人側の保険を確認するかを整理する実務論点です。

展示品は、通常の売買貨物のように仕向地へ到着して引き渡せば輸送が終了するとは限りません。

展示会場で一定期間使用され、その後に日本へ返送される場合、他国の展示会へ巡回する場合、現地倉庫で保管される場合、現地法人が管理する場合又は展示後に現地販売へ切り替わる場合があります。

このため、海外展示会では、単に往路と復路の貨物保険を手配するだけでなく、会期中、現地保管中、巡回輸送中及び現地法人管理中のリスクを、どの保険契約が引き受けるかを事前に整理する必要があります。

また、現地に所在する財物や現地法人が管理する財物について、その国又は地域で保険引受けの免許又は認可を受けていない保険者による直接引受けを制限する国又は地域があります。

本記事では、展示品の輸送手続や会場作業中の責任判断そのものではなく、日本側貨物保険、現地認可証券、現地保険、会場保険、現地法人側保険及び現地付保規制の役割分担に焦点を当てます。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他記事で扱う内容
展示会シリーズの総論 日本側保険と現地保険をどのように組み合わせるかという保険設計上の位置付けを扱います。 展示品の輸送、搬入、設営、会期中、撤去、再梱包及び返送までの全体像は、「展示品・見本市貨物と貨物保険」で扱います。
往復輸送 往路、巡回輸送及び復路に対して、どの保険を適用するかを扱います。 輸送経路、再輸出手続、返送手続及び各区間の詳細は、「展示品の往復輸送・再輸出・ATAカルネと貨物保険」で扱います。
ATAカルネ・通関 通関状況が保険設計へ影響する場合の確認事項に限って扱います。 ATAカルネ、保税展示、外国貨物のままの展示、成約品の輸入及び再輸出手続は、往復輸送・再輸出の記事で扱います。
会場作業 会場保険、施工業者保険又は搬入業者保険が存在するかという保険上の役割を扱います。 搬入、開梱、設営、撤去及び再梱包中の事故原因、過失及び責任分担は、「展示会搬入・設営・撤去中の損害と責任分担」で扱います。
日本側貨物保険 輸送中、会期中、現地保管中、巡回中及び返送中の担保範囲を確認する方法を扱います。 一般的な貨物保険条件及び保険期間の詳細は、個別の貨物保険記事で扱います。
現地保険・現地認可証券 現地所在財物、現地法人管理財物、現地倉庫及び会場内リスクに対する現地保険の必要性を扱います。 各国の商品内容、保険料率及び具体的な現地証券の手配は、現地保険ブローカー等へ確認します。
マスターポリシー・DIC・DIL 日本側のマスターポリシーと現地認可証券を組み合わせる多国籍保険プログラムの基本構造を扱います。 具体的なDIC・DILの発動条件、保険金支払及び各国法令上の取扱いは、保険会社及び現地専門家へ確認します。
会場保険 会場保険、主催者保険及び施設側保険と、出展者自身の展示品保険との違いを扱います。 会場管理者又は施工業者の具体的な賠償責任は、搬入・設営・撤去の記事で扱います。
現地付保規制 現地所在リスク、Non-admitted Insurance、自国保険主義、現地保険会社利用の要否及び確認手順を扱います。 各国法令に基づく最終的な適法性判断は、現地保険ブローカー又は現地専門家へ確認します。
現地法人・複数国巡回 現地法人管理、長期保管、現地販売及び複数国巡回時の保険設計を扱います。 所有権移転、売買契約、輸入通関及び税務の詳細は、個別案件ごとに別途確認します。

往復輸送とラウンド保険の違い

往復輸送とラウンド保険は関連しますが、中心となる論点は異なります。

区分 中心となる論点 主な確認事項 本シリーズで扱う記事
往復輸送・再輸出 展示品がどの経路と手続によって海外へ輸送され、日本又は次の国へ移動するか 輸出、ATAカルネ、保税展示、再輸出、成約品の輸入、返送 展示品の往復輸送・再輸出・ATAカルネと貨物保険
ラウンド保険 その一連の経路と滞在期間を、どの保険契約で担保するか 日本側保険、現地保険、現地認可証券、会場保険、現地法人側保険、現地付保規制 本記事
会場作業中の事故 搬入、設営、撤去等の作業事故について誰が責任を負うか 受託範囲、作業者、過失、責任制限、会場条件 展示会搬入・設営・撤去中の損害と責任分担
展示品保険の総論 輸送から返送までに発生するリスクの全体像 輸送、展示、保管、作業、事故通知及び保険請求 展示品・見本市貨物と貨物保険

往路、巡回輸送、再輸出及び返送の手続と保険期間の詳細は、往復輸送・再輸出の記事で扱い、本記事では各区間をどの保険で担保するかを扱います。

ラウンド保険とは

ラウンド保険とは、展示品や見本品について、出発地から展示地までの輸送、一定期間の展示又は保管、次の展示地への巡回輸送及び最終的な返送までを、一連の保険設計として整理する考え方です。

ただし、「ラウンド保険」という名称の単一の標準約款が、すべての保険会社で共通して使用されているとは限りません。

実際の手配では、貨物保険の保険期間を特別に拡張する方法、展示期間を明記する方法、巡回輸送先を申告する方法、現地認可証券を手配する方法又はマスターポリシーと現地証券を組み合わせる方法等があります。

ラウンド保険として手配されていても、次の危険が当然にすべて補償されるとは限りません。

  • 会期中の盗難又は不明損失
  • 現地倉庫での長期保管中損害
  • 現地法人の管理下にある期間の損害
  • 搬入、設営、撤去又は再梱包中の作業損害
  • 展示品を実演又は稼働させたことによる損害
  • 屋外展示中の風雨又は自然災害
  • 展示終了後に販売品又は現地在庫へ転換した後の損害
  • 申告されていない国又は保管場所で発生した損害

そのため、ラウンド保険では、保険の名称ではなく、保険証券、明細、特別条件、現地証券及び申告した展示日程を確認する必要があります。

日本側貨物保険で確認する区間

区間・状態 日本側貨物保険での確認点 対象外又は制限となりやすい点 必要な対応
日本国内の集荷・輸出倉庫 保険始期、集荷地点及び輸出前保管を確認します。 通常の保管、長期保管又は輸送準備前の損害 保険始期と保管目的を申告します。
日本から展示国までの往路 通常の外航貨物保険区間として確認します。 梱包不備、固有の瑕疵、遅延等の免責 貨物、梱包、航路及び輸送方法を申告します。
到着後の会場搬入前保管 通常の輸送過程にある一時保管かを確認します。 任意保管又は長期保管へ移行した場合 保管場所と期間を事前に申告します。
会場搬入後・展示開始前 展示中担保又は据付期間の特別条件を確認します。 通常の保険期間が既に終了している場合 搬入日、設営日及び展示開始日を明示します。
会期中 展示中の火災、盗難、破損等が対象かを確認します。 無人管理、不明損失、屋外展示、実演中損害等 警備、保管及び実演条件を申告します。
会期終了後の撤去・再梱包 展示終了後から復路輸送開始までの期間を確認します。 作業業者の過失による損害が別扱いとなる場合 貨物保険と業者側賠償責任保険を分けて確認します。
次の国への巡回輸送 次の展示地と経路が保険証券に含まれるかを確認します。 未申告国、未申告倉庫又は経路変更 巡回国、輸送日程及び保管予定を事前申告します。
日本への返送 復路及び日本到着後の保険終期を確認します。 返送経路の変更、途中保管又は別荷受人への引渡し 最終返送先と保険終期を明確にします。
現地販売又は譲渡後 展示品から販売貨物へ性質が変わる時点を確認します。 売買成立後又は所有権移転後の現地在庫リスク 現地在庫保険等への切替えを検討します。

日本側貨物保険・現地保険・会場保険の役割分担

本記事における「会場保険」は、展示会主催者又は会場管理者が手配する施設保険、施設賠償責任保険、主催者賠償責任保険その他の保険を便宜上まとめた呼称です。統一された標準保険商品を意味するものではありません。

保険の種類 主な役割 確認する対象 限界・注意点 主な確認先
日本側貨物保険 日本からの往路、申告された展示期間、巡回輸送及び返送中の貨物損害 輸送中、会期中、一時保管中及び復路の展示品 現地長期保管、現地法人管理又は販売後の在庫が当然に対象となるとは限りません。 日本側保険会社、保険代理店、荷主
現地財物保険・現地認可証券 現地に所在又は保管される展示品の火災、盗難その他の財物損害 現地法人管理財物、現地倉庫保管品、長期展示品 国ごとの引受制度、付保規制、保険料税及び現地証券発行要件等の確認が必要です。 現地法人、現地保険ブローカー、現地保険会社
会場保険・主催者保険 会場施設、主催者業務及び第三者賠償等 施設事故、主催者の管理責任、来場者等に対する賠償責任 出展者の展示品そのものの物的損害を対象としない場合があります。 展示会主催者、会場管理者
施工業者・搬入業者の賠償責任保険 作業業者が法律上又は契約上の賠償責任を負う事故 搬入、設営、撤去又は再梱包時の作業損害 業者の責任が認められること、責任限度及び免責の確認が必要です。 施工業者、搬入業者、会場指定業者
現地法人側の包括保険 現地法人が管理する財物、施設及び事業活動のリスク 現地法人の倉庫、事務所又は会場で管理される展示品 日本親会社所有物が対象財物に含まれるとは限りません。 現地法人、現地保険ブローカー
マスターポリシー 多国籍企業又は企業グループ全体の補償条件及び保険金額を本国側で統括します。 現地証券との差額、現地証券で補償されない条件、グループ全体の補償水準 現地法令に反して、現地証券を置き換えるものとして使用できるとは限りません。 マスター保険会社、保険代理店、グローバル保険ブローカー

重要なのは、これらの保険が同じ危険を同じ条件で補償するものではないという点です。

会場保険又は施工業者保険が存在していても、展示品の損害に対する保険金が自動的に支払われるわけではありません。

反対に、日本側貨物保険で損害が補償された場合でも、事故原因によっては会場管理者、施工業者、倉庫業者又は運送人に対する求償が行われることがあります。

日本側貨物保険の延長として設計しやすい場合

次のような案件では、日本からの輸出を起点として、展示期間及び返送までを日本側貨物保険の特別条件で設計できる可能性があります。

  • 展示期間が比較的短い
  • 展示国と展示会場が事前に確定している
  • 展示終了後に日本へ返送する予定が明確である
  • 現地法人へ所有権が移転しない
  • 現地販売又は長期在庫化を予定していない
  • 現地保管期間と保管場所が事前に特定されている
  • 複数国巡回の場合も全日程と経路を事前申告できる
  • 現地付保規制上、日本側保険による引受けに問題がないことを確認できる

ただし、これらに該当しても、展示中担保、盗難条件、屋外展示、無人管理、実演中損害及び会場内作業中損害について、個別の条件が付されることがあります。

現地保険を別に確認すべき場合

状況 日本側保険だけでは整理しにくい理由 確認する現地保険 主な確認事項
現地法人が長期間管理する 一時的な輸送貨物ではなく、現地法人の管理財物として扱われる可能性があります。 現地法人の財物保険、動産総合保険等 所有者、被保険者、対象財物、保管場所
現地倉庫で長期保管する 通常の輸送過程にある一時保管から、現地保管へ性質が変わる可能性があります。 倉庫保管中の財物保険、火災・盗難保険 保管期間、倉庫条件、盗難条件
展示後に現地販売する 展示品から現地販売在庫又は売買貨物へ変わります。 現地在庫保険、販売貨物保険 所有権移転、売買成立日、保険切替日
現地法人が保険契約者となる 現地法人の所在地、事業及び現地法令に従う必要があります。 現地法人名義の現地認可証券 契約者、被保険者、保険金受取人
屋外又は公開区域で展示する 風雨、盗難、破壊行為及び来場者接触の危険が高くなります。 現地展示保険、財物保険、会場保険 警備、夜間管理、屋外展示条件
高額美術品・精密機器を展示する 一般貨物保険では引受条件や評価方法が合わない場合があります。 美術品保険、動産保険、機械保険等 評価額、警備、温湿度、実演条件
現地法令が未認可保険者による引受けを制限する 日本側保険会社による直接付保が認められない可能性があります。 現地認可保険会社の証券 現地付保義務、税、届出、保険金支払方法

現地付保規制とNon-admitted Insurance

Non-admitted Insuranceとは、対象となる国又は地域で保険引受けの免許又は認可を受けていない保険者が、その地域に所在すると判断されるリスクを引き受ける場合の取扱いを指します。

国外保険会社による引受けが典型ですが、許容範囲、例外、現地証券の要否、税務及び保険金支払方法は国又は地域によって異なります。

国外又は未認可の保険者による直接付保を禁止若しくは制限する国、一定の保険種目又は条件について例外を認める国、現地認可保険会社を通じた引受けを要求する国、保険料税や届出を条件とする国等があります。

また、同じ国でも、貨物が国際輸送中であるのか、現地倉庫に長期保管されているのか、現地法人が所有又は管理しているのかによって、リスク所在地や規制上の扱いが変わることがあります。

Non-admitted Insuranceについては、「日本の保険証券が存在するから有効である」「国際貨物だから現地規制は適用されない」と一律に判断してはいけません。

自国保険主義とは

現地付保規制に関連して、実務上「自国保険主義」と表現されることがあります。

これは、国内に所在するリスクについて、その国で認可された保険会社又は現地証券による付保を求める考え方を指します。

ただし、自国保険主義は、すべての国に共通する統一された法令用語又は制度名ではありません。

正式な法令用語、対象となる保険種目、例外、免許制度、現地証券の発行要件、保険料税、届出及び保険金支払方法は国ごとに異なります。

「自国保険主義の国である」という説明だけで、展示品に現地証券が必要か、日本側貨物保険が使用できるか又はDIC・DILが適用できるかを判断しません。

現地付保規制で確認すべき事項

確認項目 確認内容 問題になりやすい場面 主な確認先
リスク所在地 展示品のリスクがどの国に所在すると扱われるか 現地会場、現地倉庫、現地法人管理中 現地保険ブローカー、現地専門家
保険者の免許・認可 対象国で保険者が保険引受けの免許又は認可を受けているか 日本側保険会社又はグループ保険会社が現地リスクを引き受ける場合 保険会社、現地保険ブローカー
未認可保険者による直接付保 現地で認可を受けていない保険者が現地所在リスクを引き受けられるか 長期展示、長期保管、現地法人管理 保険会社、現地保険ブローカー、現地専門家
現地保険会社利用の要否 現地認可保険会社の証券が必要か 現地付保義務がある国 現地保険ブローカー、現地監督当局に詳しい専門家
保険契約者・被保険者 日本法人、現地法人、所有者又は管理者のいずれを設定するか 現地法人が会場又は倉庫を手配する場合 日本側保険会社、現地法人、現地ブローカー
保険料税・公租公課 現地で保険料税、賦課金又は納付義務が生じるか 未認可保険者が現地リスクを引き受ける場合 現地保険ブローカー、税務専門家
保険金支払 誰が、どの国で、どの通貨により保険金を受け取れるか 現地法人が損害を管理又は負担する場合 保険会社、現地法人、現地ブローカー
証券・証明書 現地語証券、保険証明書又は会場提出書類が必要か 主催者又は会場が保険証明を要求する場合 展示会主催者、現地保険ブローカー
制裁・送金規制 保険引受け又は保険金送金に制限がないか 制裁対象国、外貨規制国 保険会社、金融・法務専門家

現地付保規制は法令、監督実務、税制及び外貨規制等によって変更される可能性があります。

具体的な案件では、展示国、展示期間、所有者、管理者、現地法人の関与及び保管場所を明らかにしたうえで、保険会社、保険代理店及び現地保険ブローカーへ確認します。

現地法人が関与する場合の保険設計

確認事項 確認する内容 保険設計への影響 必要な対応
展示品の所有者 日本法人が所有を継続するか、現地法人へ移転するか 被保険利益、保険金受取人及び現地保険の要否に影響します。 所有権移転時点を明確にします。
現地法人の管理権限 保管、搬入、展示、処分等を現地法人が判断するか 現地法人の財物保険又は管理者責任が問題になります。 管理委託内容を文書化します。
保管場所 会場、現地倉庫、事務所又は第三者倉庫のいずれか リスク所在地と保険対象場所が変わります。 すべての保管場所を申告します。
現地法人側保険 展示品が既存の財物保険に含まれるか 日本側保険との重複又は無保険区間が生じる可能性があります。 対象財物、限度額及び免責を確認します。
マスターポリシーとの関係 現地証券がグループのマスターポリシーへ組み込まれているか DIC・DIL、保険金支払、保険料配分及び事故通知方法に影響します。 現地証券とマスターポリシーの双方を確認します。
費用負担 保険料、修理費、保管費及び現地処理費を誰が負担するか 損害額と保険金請求主体に影響します。 日本法人と現地法人の負担区分を定めます。
現地販売の可能性 展示後に販売、譲渡又は現地在庫化するか ラウンド保険から現地在庫保険への切替えが必要になる場合があります。 販売決定時の保険切替手順を定めます。

マスターポリシー・現地認可証券・DIC・DIL

現地法人が関与する場合や、複数国を巡回する展示品では、日本側のマスターポリシーと、必要な国で発行される現地認可証券を組み合わせる多国籍保険プログラムを検討することがあります。

マスターポリシーは、本国側で企業グループ全体の補償条件、保険金額、免責及び保険管理を統括するために使用されます。

現地認可証券は、各国の法令、保険免許制度、保険料税、証券様式及び保険金支払要件等に対応するため、その国で認可を受けた保険会社等から発行されます。

現地証券とマスターポリシーの補償条件又は保険金額に差がある場合は、法令上許容される範囲で、DIC又はDILの適用を確認することがあります。

項目 基本的な役割 海外展示会での確認例 注意点
マスターポリシー 企業グループ全体の補償条件や保険金額を本国側で統括します。 複数国での展示、保管及び巡回輸送について、グループ共通の補償水準を設定します。 現地法令上必要な現地証券を省略できるとは限りません。
現地認可証券 リスク所在地の法令及び保険制度に対応した現地保険を提供します。 現地法人管理中、長期保管中又は現地会場に所在する展示品を対象とします。 証券発行国、対象財物、保険金額、免責及び保険金支払場所を確認します。
DIC Difference in Conditionsとして、現地証券よりマスターポリシーの条件が広い場合の条件差を補完します。 現地証券では対象外となる危険が、マスターポリシーでは対象となる場合 現地法令、マスターポリシーの発動条件及び保険金支払方法を確認します。
DIL Difference in Limitsとして、現地証券の保険金額又は限度額とマスターポリシーの限度額との差を補完します。 現地証券の限度額が展示品の評価額又はグループ基準額より低い場合 現地証券での支払後に差額補完が行われるか、支払場所や税務を確認します。

DIC及びDILは、現地証券の不足を常に自動的に補完するものではありません。

現地証券の発行、保険料配分、保険料税、損害通知、査定、保険金支払場所、被保険者、受取通貨及び現地規制を個別に確認する必要があります。

また、DIC又はDILによる支払が、対象国のNon-admitted Insurance規制、保険料税、外貨規制又は保険金送金規制に抵触しないかを確認します。

複数国を巡回する展示品の保険設計

展示品を複数国で巡回展示する場合は、単に日本から最終国までの輸送経路を申告するだけでは不十分です。

各国で、輸送、会場搬入前保管、展示、会期終了後保管及び次国への搬出が繰り返されるため、国ごとの保険期間、現地証券及び現地付保規制を確認する必要があります。

確認項目 確認内容 問題がある場合 対応
巡回国 すべての展示国と経由国 未申告国で事故が発生する可能性があります。 変更を含めて保険会社へ事前申告します。
展示期間 各国の搬入日、会期及び撤去日 展示中担保の期間が不足する可能性があります。 国ごとの展示期間を明記します。
保管期間 会期前後及び国間輸送待ちの保管期間 一時保管を超えて現地保管と扱われる場合があります。 保管場所と日数を申告します。
輸送経路 海上、航空、陸上及び内陸輸送の組合せ 保険証券に含まれない経路変更が生じる場合があります。 輸送業者と予定経路を整理します。
各国の付保規制 未認可保険者による現地リスクの引受可否 日本側保険だけでは適法に担保できない場合があります。 各国の現地保険ブローカーへ確認します。
現地認可証券 各国で現地証券の発行が必要か マスターポリシーだけでは現地規制へ対応できない場合があります。 現地証券の発行国、対象期間及び対象財物を整理します。
DIC・DIL 現地証券とマスターポリシーの条件差及び限度額差 現地証券だけではグループ基準の補償水準へ達しない場合があります。 法令上許容される範囲と発動条件を確認します。
現地代理店 事故通知、保険確認及び現地資料収集の窓口 事故発生時の連絡主体が不明確になります。 国ごとの連絡窓口を指定します。
最終処理 日本返送、第三国への輸送又は現地販売 保険終期又は保険切替時点が不明確になります。 最終仕向地と処理方法を申告します。

代表的な保険設計パターン

設計パターン 適用しやすい案件 主な構成 注意点
日本側ラウンド保険中心型 短期間の単一国展示で、日本へ確実に返送する案件 往路、展示期間、一時保管及び復路を日本側貨物保険で設計します。 現地付保規制、展示中担保及び盗難条件を確認します。
日本側貨物保険+現地財物保険型 現地法人管理又は長期保管を伴う案件 国際輸送を日本側保険、現地保管及び展示期間を現地保険で設計します。 保険の切替時点と重複保険を確認します。
国別現地保険併用型 複数国を長期間巡回する案件 国際輸送保険に加え、必要な国で現地認可証券を手配します。 各国規制、保険料税及び保険金支払方法を確認します。
多国籍保険プログラム型 現地法人が複数国にあり、展示、保管又は巡回輸送を継続的に行う企業グループ 日本側又は本国側のマスターポリシーと、必要な国の現地認可証券を組み合わせます。現地証券とマスターポリシーの補償条件又は保険金額に差がある場合は、法令上許容される範囲でDIC又はDILの適用を確認します。 現地証券の発行、保険料配分、保険料税、保険金支払場所、現地規制、事故通知及びDIC・DILの発動条件を個別に確認します。
専門動産保険型 高額美術品、宝飾品、試作機又は精密機器 貨物保険に加えて、美術品保険又は動産総合保険等を利用します。 評価方法、警備、温湿度及び実演条件を確認します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 保険設計上の問題 確認資料 必要な対応
単一国で3日間だけ展示して日本へ返送する 展示期間を日本側貨物保険へ含められるか 保険証券、展示日程、会場条件 展示中担保と復路担保を事前確認します。
展示終了後、現地倉庫で3か月保管する 通常の輸送過程にある一時保管を超える可能性があります。 保管契約、保険期間、倉庫情報 現地財物保険又は保管中担保を確認します。
現地法人が展示品を管理する 現地法人の管理財物として現地付保規制が問題になります。 管理契約、現地法人保険、所有関係 日本側保険と現地法人側保険を比較します。
展示後に一部商品を現地販売する 展示品から販売在庫へ性質が変わります。 売買契約、所有権移転日、保険終期 販売分を現地在庫保険等へ切り替えます。
会場保険があるため自社保険を手配しなかった 会場保険が展示品の物的損害を対象としない可能性があります。 会場規約、保険証明書、補償内容 展示品自体の補償を別途確認します。
日本、A国、B国、C国を巡回する 各国で保険期間、現地証券及び付保規制が異なります。 巡回日程、輸送経路、現地証券、国別保険確認記録 国ごとの担保区間、現地保険要否及びDIC・DILを整理します。
屋外で大型機械を実演展示する 屋外危険、稼働中損害及び第三者賠償が問題になります。 展示計画、実演条件、会場保険 貨物保険、機械保険及び賠償責任保険を分けて確認します。
現地規制を確認せず日本証券のみで手配した 現地所在リスクを未認可保険者が直接引き受けることを制限される可能性があります。 現地法令確認、保険証券、リスク所在地 現地保険ブローカーへ適法性と必要な現地証券を確認します。

フォワーダー関与範囲の標準五分類

本記事における五分類は、法令上又は業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するために使用する分析上の枠組みです。

標準五分類 本記事における主な関与 保険設計上の確認点 主な資料
Simple Intermediary 荷主を保険会社、保険代理店又は現地保険ブローカーへ取り次ぎます。 保険の有効性を判断又は保証する立場まで引き受けていないか 紹介記録、連絡メール、見積書
Cargo Transportation Service Provider 巡回輸送、保管又は返送を貨物運送サービスとして引き受けます。 受託区間と保険区間が一致しているか 運送契約、輸送日程、保管条件
NVOCC / House B/L Issuer House B/L発行者として国際輸送又は複合輸送に関与します。 House B/L上の運送区間と展示期間中の保険を混同していないか House B/L、Master B/L、運送約款
Door-to-Door Single Contractor 集荷、輸送、会場搬入、保管及び返送を一体的に引き受けます。 一括受託範囲に対応する保険手配と情報伝達が行われているか 一括見積書、作業仕様書、再委託記録
Agent/Coordinator for Specific Operations 保険確認、現地ブローカー連絡又は会場保険確認等の特定業務を調整します。 委任された確認事項と最終判断者が明確か 委任記録、確認依頼、回答記録

Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換える代替分類ではありません。

梱包、保管、検品、積付け、バンニング、デバンニング、会場搬入又は国内配送等の実作業も、それ自体で第六の分類を構成しません。

具体例1:単一国の短期展示を日本側保険で設計する場合

日本企業が精密機器をA国の展示会へ送り、会期終了後に直ちに日本へ返送するとします。

展示期間は5日間であり、会場搬入前後の保管も短期間です。所有権は日本企業に残り、現地販売は行いません。

この場合、日本側貨物保険について、往路、会場搬入後の展示期間、会期終了後の一時保管及び復路を明記したラウンド型の保険設計を検討できます。

ただし、盗難、無人管理、実演中損害、会場内作業中損害及び現地付保規制を別途確認する必要があります。

短期展示であっても、通常の片道輸送保険が会期中と復路を当然に補償するとは限らない事例です。

具体例2:現地法人が展示後に長期保管する場合

日本企業が展示品をB国の現地法人へ送り、展示終了後も現地法人の倉庫で6か月間保管するとします。

展示品の所有権は日本企業に残りますが、保管場所の選定、出入庫及び日常管理は現地法人が行います。

この場合、国際輸送部分を日本側貨物保険で手配できても、6か月間の現地保管を通常の輸送過程として扱えるとは限りません。

現地法人の既存財物保険に日本親会社所有の展示品を含められるか、別途現地認可証券が必要か、Non-admitted Insurance規制が問題にならないかを確認します。

多国籍保険プログラムがある場合は、現地証券とマスターポリシーの補償条件及び限度額を比較し、DIC又はDILの適用可能性も確認します。

所有者が日本法人であっても、現地での管理状態と保管期間によって現地保険の確認が必要になる事例です。

具体例3:複数国を巡回した後に一部を現地販売する場合

展示品を日本からA国、B国及びC国へ順番に輸送し、最後に一部をC国で販売し、残りを日本へ返送するとします。

この場合、巡回輸送中の貨物保険、各国の展示期間、各国での一時保管、国別の付保規制及び現地認可証券の要否を確認します。

さらに、C国で販売する展示品については、売買成立時又は所有権移転時に、ラウンド保険の対象から外れ、現地販売在庫又は買主側の保険へ切り替わる可能性があります。

返送する展示品と現地販売する展示品について、貨物明細、保険金額及び保険終期を分けて整理する必要があります。

マスターポリシーと国別現地証券を使用する場合は、各国証券の補償範囲、保険金額、事故通知先及びDIC・DILの発動条件も整理します。

複数国巡回と現地販売が組み合わさる場合は、国別の規制確認と貨物別の保険切替えが必要になる事例です。

保険設計時の判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
展示計画作成時 荷主、現地法人、展示担当者 展示国、会期、巡回国、返送又は販売予定 全日程と最終処理を一覧化します。
日本側保険確認時 保険会社、保険代理店 往路、展示中、一時保管、巡回及び復路の担保 証券と特別条件に各区間を明記します。
会場条件確認時 展示会主催者、会場管理者 会場保険、保険証明書、展示品損害の対象範囲 展示品自体が対象外なら自社保険を確認します。
現地保険確認時 現地法人、現地保険ブローカー 現地財物保険、現地認可証券、盗難、火災及び長期保管 不足区間について現地証券を検討します。
現地付保規制確認時 保険会社、現地保険ブローカー、現地専門家 リスク所在地、保険者の免許・認可、税及び届出 現地認可保険会社による手配を検討します。
現地法人関与時 荷主、現地法人 所有者、管理者、保管場所、保険契約者 日本側保険と現地法人側保険の役割を定めます。
マスターポリシー確認時 マスター保険会社、保険代理店、現地保険ブローカー 現地証券との条件差、限度額差、DIC・DIL及び事故通知方法 現地証券とマスターポリシーの適用順序を整理します。
複数国巡回時 荷主、保険会社、各国代理店 国別日程、保管期間、現地証券及び現地規制 国ごとの担保と現地保険要否を整理します。
展示後販売時 荷主、現地法人、保険会社 所有権移転、販売日、在庫化及び保険終期 現地在庫保険等への切替日を決めます。
保険の重複確認時 日本側保険会社、現地保険ブローカー 同一財物・同一区間に複数保険が存在するか 重複保険の通知及び分担方法を確認します。
契約締結前 荷主、フォワーダー、現地法人 誰がどの保険を確認・手配するか 確認主体と費用負担を文書化します。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
ラウンド保険なら現地のすべての損害が補償される 展示中、長期保管、屋外展示、実演中損害等が制限される場合があります。 証券、明細及び特別条件を確認します。
往復輸送保険とラウンド保険は同じである 往復輸送は経路と手続、ラウンド保険は各区間の保険設計が中心です。 輸送手続と保険設計を分けて整理します。
会場保険という統一された保険商品がある 本記事の会場保険は、主催者又は会場管理者が手配する複数の保険を便宜上まとめた呼称です。 実際の保険商品名、被保険者、対象危険及び限度額を確認します。
会場保険があれば展示品も補償される 会場保険は施設又は主催者の賠償責任を中心とする場合があります。 展示品そのものの物的損害が対象か確認します。
施工業者に保険があれば貨物保険は不要である 業者保険は業者の賠償責任が認められる場合に限られることがあります。 展示品自体の貨物保険と分けて確認します。
日本企業の所有物なら日本の保険だけでよい リスク所在地や現地法人の管理状態により現地規制が問題になります。 所有者だけでなく所在地と管理者を確認します。
現地法人が管理すれば現地法人の保険で自動的に補償される 日本親会社所有の展示品が対象財物に含まれない場合があります。 被保険者、対象財物及び限度額を確認します。
国際貨物にはNon-admitted Insurance規制が適用されない 現地保管や現地法人管理へ移行すると、現地所在リスクとして問題になる場合があります。 国別の付保規制を確認します。
国外保険会社でなければNon-admitted Insuranceは問題にならない 中心となるのは、対象国で保険引受けの免許又は認可を受けているかです。 保険者の所在地だけでなく、対象国での免許・認可を確認します。
自国保険主義なら必ず現地証券だけを使う 対象保険種目、例外、手続及びDIC・DILの許容範囲は国ごとに異なります。 名称だけで判断せず、現地法令と監督実務を確認します。
マスターポリシーがあれば現地証券は不要である 現地付保規制により、現地認可証券が必要になる場合があります。 各国の現地証券発行要件を確認します。
DIC・DILがあれば現地証券の不足は必ず補完される DIC・DILの発動は、マスターポリシーの条件及び現地法令上の許容範囲に左右されます。 条件差、限度額差、支払場所及び規制を確認します。
複数国巡回でも一枚の証券があれば十分である 未申告国、長期保管又は現地付保規制によって不足が生じる場合があります。 全巡回国と各国の展示・保管期間を申告します。
展示後に販売しても保険はそのまま継続する 所有権移転や現地在庫化によって保険終期又は対象が変わります。 売買成立時の保険切替えを決めます。
現地保険と日本側保険が重複しても問題ない 重複保険の通知、保険金分担及び求償関係が問題になる場合があります。 同一リスクを担保する証券を相互に確認します。
現地付保規制は事故後に確認すればよい 事故後には適法な現地証券を遡って手配できない場合があります。 展示国と管理形態が決まった段階で確認します。
フォワーダーが保険の適法性を保証する 保険会社、現地ブローカー又は現地専門家による確認が必要です。 フォワーダーの確認範囲と最終判断者を明確にします。

保険設計の基本フロー

  1. 展示品、所有者、保険金額及び用途を確認します。
  2. 展示国、会場、会期及び展示方法を確認します。
  3. 往路、会期前保管、展示期間、会期後保管、巡回輸送及び復路を時系列で整理します。
  4. 往復輸送、ATAカルネ及び再輸出手続の詳細を、兄弟記事の論点として別途確認します。
  5. 日本側貨物保険が各区間をどこまで担保するか確認します。
  6. 展示中担保、盗難条件、屋外展示及び実演中損害の条件を確認します。
  7. 会場保険及び施設側保険が展示品自体を対象とするか確認します。
  8. 現地法人又は現地倉庫が関与する場合は、現地側保険の有無を確認します。
  9. 各展示国について、リスク所在地、保険者の免許・認可、現地付保規制及びNon-admitted Insuranceの取扱いを確認します。
  10. 自国保険主義と説明される国について、対象保険種目、例外、現地証券及び手続を確認します。
  11. 現地認可証券が必要な場合は、対象財物、保険期間、保険金額及び保険金支払方法を確認します。
  12. マスターポリシーがある場合は、現地証券との条件差及び限度額差を確認します。
  13. 法令上許容される範囲で、DIC及びDILの適用可能性を確認します。
  14. 現地保険が必要な場合は、日本側保険との切替時点又は重複区間を整理します。
  15. 複数国巡回の場合は、国別の保険期間、保管場所、現地証券及び現地保険要否を整理します。
  16. 展示後に販売又は譲渡する場合は、所有権移転時の保険切替えを定めます。
  17. 荷主、現地法人、フォワーダー及び保険関係者の確認分担を文書化します。
  18. 最終的な保険条件、特別条件、保険料、現地証券及び現地規制対応を保険会社等へ確認します。

荷主との事前契約で整理すべき事項

  • 日本側貨物保険を誰が手配するか
  • 展示中及び現地保管中の保険を誰が確認するか
  • 現地付保規制を誰が確認するか
  • 現地認可証券を誰が手配するか
  • 現地法人側の保険を誰が確認するか
  • マスターポリシーと現地証券の管理主体
  • DIC・DILの確認主体
  • 会場保険及び施設側保険の確認主体
  • 複数国巡回時の追加申告方法
  • 展示日程又は輸送経路が変更された場合の通知義務
  • 展示後に販売、譲渡又は長期保管へ変更する場合の通知義務
  • 日本側保険と現地保険の保険料負担
  • 保険証券、特別条件及び現地保険証明書の保管主体
  • 重複保険がある場合の通知及び協力義務
  • 現地専門家又は現地保険ブローカーの費用負担

フォワーダーが保険の照会又は連絡を補助する場合でも、保険の適法性、補償可否及び現地規制への適合を独自に保証するものではないことを明確にします。

保険会社・保険代理店へ確認すべき事項

  • ラウンド型の保険設計が可能か
  • 往路、展示中、巡回輸送及び復路の保険期間
  • 会場搬入後及び会期終了後の一時保管期間
  • 盗難、不明損失、屋外展示及び実演中損害の条件
  • 現地法人管理中及び現地倉庫保管中の取扱い
  • 複数国巡回時の申告方法
  • 現地販売又は所有権移転時の保険終期
  • 現地認可証券の発行要否
  • マスターポリシーと現地証券の関係
  • DIC・DILの適用可能性及び発動条件
  • 現地保険との重複又は切替え
  • 現地付保規制について確認可能な範囲
  • 現地保険ブローカー又は現地保険会社との連携方法
  • 保険料配分、保険料税、現地証券及び保険金支払方法
  • 展示品の評価方法、保険金額及び自己負担額

現地保険ブローカー・現地専門家へ確認すべき場面

  • 現地に展示品を長期間保管する場合
  • 現地法人が展示品を管理する場合
  • 現地法人名義で保険を手配する場合
  • 対象国で保険者が必要な免許又は認可を受けているか不明な場合
  • 未認可保険者による直接付保が認められるか不明な場合
  • 現地認可保険会社の利用が必要な場合
  • 現地証券とマスターポリシーを組み合わせる場合
  • DIC・DILが現地法令上認められるか確認する場合
  • 保険料税、賦課金又は届出義務が問題になる場合
  • 現地語の保険証券又は保険証明書が必要な場合
  • 複数国を巡回し、国ごとの規制が異なる場合
  • 展示後に現地販売又は現地在庫化する場合
  • 保険金を現地法人又は現地通貨で受け取る必要がある場合

海事弁護士・現地法律専門家を利用すべき場面

  • Non-admitted Insuranceの適法性について見解が分かれる場合
  • 自国保険主義の適用範囲又は例外が不明な場合
  • 現地法人、日本法人及び保険会社の契約関係が複雑な場合
  • 複数国の付保規制が同時に問題になる場合
  • マスターポリシーと現地証券の優先関係が争われる場合
  • DIC・DILによる保険金支払の適法性が問題になる場合
  • 現地保険と日本側保険の重複又は優先関係が争われる場合
  • 展示品の所有権、管理権又は保険金受取権が争われる場合
  • 現地販売への変更により保険終期が問題になる場合
  • 保険料税、外貨規制、制裁又は保険金送金が問題になる場合
  • 高額展示品について保険会社間の分担又は求償が問題になる場合
  • 荷主からフォワーダー又はNVOCCへ高額な賠償請求が行われた場合

現地付保規制は、貨物保険の補償内容だけでなく、現地の保険業法、税制及び外貨規制等に関係することがあります。

具体的な適法性判断については、保険会社、現地保険ブローカー及び必要に応じて現地法律専門家へ確認します。

実務上のポイント

  • ラウンド保険は、往復輸送手続ではなく、一連の経路をどの保険で担保するかという保険設計の論点です。
  • 日本側貨物保険が会期中、現地保管中及び返送中を当然に補償するとは限りません。
  • 会場保険は便宜上の総称であり、統一された標準保険商品ではありません。
  • 会場保険、主催者保険及び施工業者保険は、展示品自体の保険と役割が異なります。
  • 現地法人が管理する場合は、所有者、管理者、保険契約者及び対象財物を確認します。
  • 現地長期保管又は現地販売では、現地財物保険や在庫保険への切替えを検討します。
  • Non-admitted Insuranceは、保険者が対象国で必要な免許又は認可を受けているかという観点から確認します。
  • 自国保険主義は統一された法令用語ではなく、対象保険種目、例外及び手続は国ごとに異なります。
  • 現地認可証券が必要な国では、マスターポリシーだけで現地証券を代替できるとは限りません。
  • DIC・DILは、現地証券との条件差又は限度額差を法令上許容される範囲で補完する仕組みです。
  • DIC・DILの発動条件、保険金支払場所、保険料税及び現地規制を確認します。
  • 複数国巡回では、国別の日程、保管場所、保険期間、現地証券及び現地規制を整理します。
  • 日本側保険と現地保険が重複する場合は、重複保険の通知及び保険金分担を確認します。
  • 展示後に販売又は譲渡する場合は、保険終期と現地保険への切替時点を定めます。
  • フォワーダーは保険の有効性を断定せず、確認事項と最終判断者を明確にします。

まとめ

海外展示会のラウンド保険・現地付保規制では、展示品の往路、展示期間、会期前後の保管、巡回輸送及び返送について、どの保険が各区間を担保するかを整理する必要があります。

往復輸送、ATAカルネ、再輸出及び返送手続の詳細は、往復輸送・再輸出の記事で扱い、搬入、設営、撤去及び再梱包中の事故原因と責任分担は、会場作業中の損害と責任分担の記事で扱います。

本記事の中心は、日本側貨物保険、現地認可証券、現地財物保険、会場保険、現地法人側保険、マスターポリシー及び現地付保規制の役割を区別することです。

短期間の単一国展示では、日本側貨物保険の特別条件によって往路、展示中及び復路を一体的に設計できる可能性があります。

一方、現地法人管理、現地長期保管、複数国巡回、現地販売又は高額展示品では、現地認可証券の手配とNon-admitted Insurance規制の確認が重要になります。

現地法人や複数国を含む多国籍保険プログラムでは、本国側のマスターポリシーと各国の現地認可証券を組み合わせることがあります。

現地証券とマスターポリシーの補償条件又は保険金額に差がある場合は、法令上許容される範囲でDIC又はDILの適用可能性を確認します。

ただし、DIC・DILが現地証券の不足を自動的に補完するとは限らず、現地証券の発行、保険料配分、保険料税、保険金支払場所、事故通知及び現地規制を個別に確認する必要があります。

会場保険は、主催者又は会場管理者が手配する複数の保険を便宜上まとめた呼称であり、展示品そのものの物的損害が十分に補償されるとは限りません。

現地付保規制については、展示国、リスク所在地、保険者の免許又は認可、所有者、管理者、保管期間及び現地法人の関与を明確にしたうえで、保険会社、保険代理店、現地保険ブローカー及び必要に応じて現地専門家へ確認します。

フォワーダー又はNVOCCは、保険の有効性や現地法上の適法性を独自に断定するのではなく、荷主へ必要な確認を促し、日本側と現地側の保険の間に無保険区間が生じないよう、保険設計上の確認事項を整理することが基本です。

同義語・別表記

  • ラウンド保険
  • 展示会ラウンド保険
  • 海外展示会保険
  • 巡回展示保険
  • 現地付保規制
  • 自国保険主義
  • Non-admitted Insurance
  • 現地保険
  • 展示品保険
  • 往復輸送保険

関連用語

公式情報