コンテナ船輸送におけるOn Deckリスク
コンテナ船輸送におけるOn Deckリスクとは
コンテナ船輸送におけるOn Deckリスクとは、コンテナが船倉内ではなく甲板上に積載されることにより、荒天、波浪、海水濡れ、コンテナ流失、ラッシング不備、コンテナ破損などが問題になるリスクをいいます。
現代のコンテナ船では、多くのコンテナが船倉内だけでなく甲板上にも積載されます。そのため、コンテナ船における甲板上コンテナは、在来船で裸貨物を甲板上に積む場合とは分けて整理する必要があります。
ただし、コンテナ船の通常運航上、甲板上に積載されることが一般的であっても、事故が発生した場合には、保険条件、B/L表示、積付状態、ラッシング、荒天、運送人責任、フォワーダーの説明責任が問題になることがあります。
在来船の甲板積みとの違い
在来船で大型貨物や重量物を甲板上に裸で積む場合、貨物そのものが海水、雨、波浪、風圧、荒天の影響を直接受けます。
一方、コンテナ船では、貨物はコンテナ内に収納され、コンテナ単位で甲板上または船倉内に積載されます。
このため、コンテナ船の甲板上コンテナは、通常の裸の甲板積み貨物とは異なり、コンテナという輸送単位の中に貨物が保護されている点が特徴です。
ただし、コンテナが甲板上にある以上、荒天時のコンテナ流失、ラッシング不備、コンテナ破損、海水侵入、扉部からの水濡れ、隣接コンテナとの接触などのリスクは残ります。
Underdeck or On-deck Clauseとの関係
コンテナ船輸送では、Underdeck or On-deck Clauseが問題になることがあります。
これは、密閉性・水密性のあるコンテナ入り貨物について、船会社の裁量により甲板上または船倉内に積載される場合でも、一定の条件のもとで保険上の取扱いを整理するための考え方です。
つまり、コンテナ入り貨物については、船会社が通常の運航判断として甲板上に積載することがあり、それを在来船の裸貨物の甲板積みと同じように扱うと実務に合わない場合があります。
ただし、Underdeck or On-deck Clauseがあるからといって、すべての甲板上コンテナ事故が無条件で問題なく処理されるわけではありません。コンテナの状態、積付方法、ラッシング、事故原因、保険条件を確認する必要があります。
コンテナ船でOn Deckが問題になる場面
コンテナ船輸送では、次のような場面でOn Deckリスクが問題になります。
- 荒天によりコンテナが流失した場合
- 甲板上コンテナが波浪を受けて破損した場合
- コンテナ扉部や通気部から海水が侵入した場合
- ラッシング不備によりコンテナが移動・転倒した場合
- 隣接コンテナとの接触により破損した場合
- 甲板上での積付位置が事故原因として問題になる場合
- リーファーコンテナの電源管理が問題になる場合
- 危険品や特殊貨物の積付位置が問題になる場合
これらの事故では、単に「コンテナ船で輸送されていた」というだけでなく、コンテナがどこに積まれていたのか、どのような事故が発生したのかを確認する必要があります。
B/L表示との関係
コンテナ船輸送では、B/Lに個別にOn Deck表示がされない場合でも、実際にはコンテナが甲板上に積載されることがあります。
そのため、B/L上にOn Deck表示がないからといって、必ず船倉内に積まれていたとは限りません。
一方で、特殊貨物、大型コンテナ、フラットラック、オープントップコンテナ、危険品、冷凍・冷蔵貨物などでは、積付位置や積付条件が問題になることがあります。
フォワーダーやNVOCCは、荷主から特別な積付条件を求められている場合、船会社やNVOCCへのBooking時に条件を明確に伝達し、その記録を残しておくことが重要です。
荒天・コンテナ流失との関係
コンテナ船のOn Deckリスクで代表的なのが、荒天によるコンテナ流失です。
荒天時には、船体動揺、波浪、風圧、ラッシングへの負荷により、甲板上コンテナが損傷、移動、倒壊、流失することがあります。
コンテナ流失が発生した場合、貨物保険、共同海損、運送人責任、船会社への求償、B/L約款、責任制限などが問題になります。
特に、同じ航海で多数のコンテナが損傷・流失している場合には、単独の貨物損害ではなく、航海全体の事故として整理する必要があります。
ラッシング不備との関係
甲板上コンテナでは、ラッシングが重要です。
コンテナは、船体動揺や荒天に耐えられるように、ツイストロック、ラッシングロッド、ターンバックルなどを用いて固定されます。
ラッシングが不十分であった場合、コンテナの移動、倒壊、破損、流失が発生することがあります。
事故後には、荒天という不可避の海上危険だったのか、ラッシング不備、積付不備、船会社側の管理不備があったのかを確認する必要があります。
ただし、船会社側の積付図、ラッシング記録、航海記録、荒天記録は、荷主やフォワーダー側が簡単に入手できないことがあります。そのため、資料請求を行った事実と経緯を記録に残すことが重要です。
海水濡れ・コンテナ破損との関係
甲板上コンテナでは、海水濡れやコンテナ破損も問題になります。
コンテナ自体は密閉性を持つ輸送用具ですが、扉部、通気部、床面、側壁、天井、補修箇所などから水が侵入することがあります。
荒天時に波浪を受けた場合、コンテナ外装に損傷がなくても、扉部やパッキン部から海水が侵入することがあります。
事故後は、海水濡れか淡水濡れか、コンテナ破損があったか、甲板上で波浪を受けた可能性があるか、バンニング時の梱包・防湿措置に問題がなかったかを確認します。
リーファーコンテナと甲板上積載
リーファーコンテナでは、甲板上積載により電源管理や温度管理が問題になることがあります。
リーファーコンテナは、船上で電源接続され、一定温度を維持することを前提に輸送されます。
甲板上に積載されている場合でも、電源接続、温度記録、アラーム履歴、運転記録が重要になります。
温度上昇事故が発生した場合には、単にOn Deckかどうかだけでなく、本船航行中の電源管理、リーファーログ、温度チャート、データロガー記録を確認する必要があります。
特殊コンテナ・特殊貨物の注意点
コンテナ船輸送では、通常のドライコンテナだけでなく、フラットラック、オープントップ、タンクコンテナ、リーファーコンテナ、危険品コンテナなども使用されます。
これらの特殊コンテナでは、積付位置、養生、固縛、重量制限、危険品規則、温度管理、漏洩防止措置が問題になることがあります。
荷主から特殊な輸送条件を受けている場合には、フォワーダーやNVOCCは、その条件をBooking、倉庫、バンニング業者、船会社へ正しく伝達する必要があります。
事故後には、特殊条件が伝達されていたか、船会社がどのような積付判断をしたか、保険条件が特殊貨物に対応していたかを確認します。
貨物保険での確認事項
コンテナ船輸送におけるOn Deckリスクでは、貨物保険上、次の点を確認します。
- Underdeck or On-deck Clauseの適用有無
- 貨物がコンテナ入り貨物として通常条件で扱われるか
- 特殊コンテナや特殊貨物として申告が必要だったか
- 荒天、流失、海水濡れ、ラッシング不備が担保対象となるか
- 保険条件上のWarrantyや特別条件があるか
- コンテナ破損と貨物損害に因果関係があるか
- 船会社・荷役業者への求償可能性があるか
事故発生後に初めて保険条件を確認するのではなく、特殊貨物や高額貨物では、船積前に保険条件を確認することが重要です。
荷主との事前契約で整理すべき事項
コンテナ船輸送におけるOn Deckリスクでは、荷主との事前契約が重要です。
特に、特殊コンテナ、リーファー貨物、高額貨物、危険品、湿気に弱い貨物、甲板上積載が問題になり得る貨物では、次の事項を整理しておくことが望まれます。
- コンテナ船では甲板上に積載される可能性があること
- 特別な積付位置を希望する場合の事前申告
- 保険条件とUnderdeck or On-deck Clauseの確認
- 特殊コンテナ使用時の条件確認
- リーファー貨物の温度管理・電源管理条件
- 危険品・高額貨物・湿気に弱い貨物の申告責任
- 事故発見時の通知方法
- サーベイ手配の権限
- 弁護士費用、サーベイ費用、検査費用の負担
- 船会社・NVOCC・荷役業者への求償協力義務
荷主が「船倉内に積まれると思っていた」と主張する場合でも、コンテナ船では甲板上積載が通常運航上行われることがあります。そのため、特別な積付条件がある場合には、事前に明確な指示と確認記録を残すことが重要です。
フォワーダー実務上の注意点
フォワーダーやNVOCCの立場では、コンテナ船のOn Deckリスクについて、過度な断定を避けることが重要です。
通常のコンテナ船輸送では、船会社が積付位置を判断することが多く、フォワーダーが個別コンテナの船倉内積みを常に保証できるわけではありません。
荷主から船倉内積み、特定位置積み、温度管理、危険品積付、高額貨物の取扱いなど特別な要望がある場合には、実現可能性、追加費用、保険条件、船会社の承認を確認する必要があります。
また、事故後に船会社から積付図、ラッシング記録、航海記録、温度ログなどを入手する必要がある場合には、早期に資料請求を行い、請求経緯を記録しておくことが重要です。
海事弁護士を利用すべき場面
コンテナ船輸送におけるOn Deck事故では、貨物保険だけでなく、B/L約款、運送約款、運送人責任、責任制限、共同海損、求償権保全が問題になることがあります。
特に、コンテナ流失、荒天損害、多数コンテナ事故、ラッシング不備、船会社への求償、荷主からフォワーダーへの賠償請求が関係する場合には、早い段階で海事弁護士の関与を検討することが重要です。
船会社側の記録が任意に開示されない場合や、事故原因が荒天なのか積付不備なのか争われる場合には、保険実務だけで判断せず、法的観点から求償可能性を確認する必要があります。
証拠として重要になる資料
コンテナ船輸送におけるOn Deck事故では、コンテナの積付位置、事故原因、損害状況、責任区間を確認するための証拠が重要です。
保険・船積条件に関する資料
- 保険証券または保険条件
- Underdeck or On-deck Clauseの適用条件
- B/L、Waybill、Booking確認書
- 船積指示書、積付条件、特殊貨物の申告記録
- 荷主との契約書、見積条件、作業指示書
本船・積付に関する資料
- 積付図
- コンテナの積付位置に関する記録
- ラッシング記録
- 本船側の事故記録
- 荒天記録、航海記録
- 船会社への資料請求記録
事故確認・求償に関する資料
- コンテナ外装写真
- 貨物写真
- 損害箇所の写真
- サーベイレポート
- コンテナ流失・破損に関する船会社通知
- リーファー貨物の場合は温度ログ、アラーム記録、データロガー記録
- 船会社・NVOCC・フォワーダーとのやり取りの記録
事故処理の基本フロー
コンテナ船輸送におけるOn Deck事故が発生した場合、実務上は次の順番で対応します。
- 貨物とコンテナの損害状態を写真で記録する。
- コンテナが甲板上に積載されていたかを確認する。
- 保険条件とUnderdeck or On-deck Clauseの適用有無を確認する。
- B/L、Booking、船積条件を確認する。
- 荒天、コンテナ流失、ラッシング不備、海水濡れの有無を確認する。
- 船会社へ積付図、ラッシング記録、航海記録の提出を求める。
- 保険会社、保険代理店、フォワーダー、船会社へ通知する。
- 必要に応じてサーベイを手配する。
- 船会社・NVOCC・荷役業者への求償可能性を確認する。
- 荷主との契約条件と費用負担を確認する。
- 損害額が大きい場合や責任論が複雑な場合は、海事弁護士の利用を検討する。
- 貨物保険請求とフォワーダー賠償責任の有無を分けて整理する。
実務上のポイント
- コンテナ船では、甲板上コンテナは通常の運航上発生する。
- 裸の甲板積み貨物と、コンテナ船の甲板上コンテナは分けて整理する。
- Underdeck or On-deck Clauseの適用有無を確認する。
- B/LにOn Deck表示がなくても、甲板上積載の可能性はある。
- 特殊貨物や高額貨物では、船積前に積付条件と保険条件を確認する。
- 荒天、コンテナ流失、ラッシング不備、海水濡れが主要な事故原因になる。
- 船会社側の積付図やラッシング記録は入手が難しいことがあるため、資料請求の経緯を残す。
- 責任関係が複雑な場合は、海事弁護士の利用を検討する。
まとめ
コンテナ船輸送におけるOn Deckリスクでは、現代のコンテナ船では甲板上コンテナが通常運航上発生することを前提に整理する必要があります。
一方で、荒天、コンテナ流失、ラッシング不備、海水濡れ、特殊コンテナ、リーファーコンテナでは、貨物保険、運送人責任、フォワーダー責任が問題になることがあります。
フォワーダーやNVOCCにとっては、Underdeck or On-deck Clause、B/L表示、積付条件、保険条件、船会社記録の取得、荷主への説明、海事弁護士との連携を整理しておくことが重要になります。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://marineinsurance.jp/
