フォワーダー視点のSCM設計
フォワーダー視点のSCM設計
フォワーダー視点のSCM設計とは、荷主の生産、調達、販売、在庫及び納期方針を、実際に貨物を動かせる国際物流へ変換する作業です。
単に海上運賃が安い航路を選ぶことではありません。輸出側の集荷、輸出通関、CFS又はCYへの搬入、国際輸送、積替え、輸入通関、倉庫、国内配送、船積書類、貨物海上保険及び事故時の責任関係を一つの流れとして設計します。
荷主側のSCMでは、どこで生産し、どこから調達し、どこで販売し、どれだけ在庫を持つかという経営判断が中心になります。
フォワーダーは、その経営判断を、利用港、輸送モード、FCL・LCL、直航・積替え、Cut-off、通関、許認可、書類、D/O、配送、Free Time及び代替ルートへ落とし込みます。
安い輸送ルートでも、リードタイムが不安定で安全在庫が増えれば、SCM全体のコストは上昇します。反対に、運賃が高いルートでも、納期安定性により在庫、保管、欠品及び緊急航空輸送を減らせる場合があります。
したがって、フォワーダー視点のSCM設計では、運賃単価ではなく、Total Landed Cost、Door-to-Doorリードタイム、在庫影響、通関リスク、事故時の回収可能性及び非常時の継続性を含めて判断します。
この記事の位置付け
本記事は、荷主のSCM方針を国際物流の実行計画へ変換するための上位設計記事です。
個別の輸出船積手続、FCL・LCL混載、三国間取引、特殊コンテナ、海上運賃、D/O及びNVOCC責任の詳細は、それぞれの専門記事へ委譲します。
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| SCM設計の基本 | 荷主の経営方針を実行可能な国際物流へ変換する方法 | 本記事 |
| 貨物・輸送・通関・書類・保険 | 五つの層を統合して設計する考え方 | 本記事 |
| 総コスト | 運賃、在庫、保管、追加費用及び欠品リスクの統合 | 海上運賃の詳細は「海上運賃の種類と費用構造」 |
| 低価格見積 | 安いルートがSCM全体では高くなる可能性 | 詳細は「安い見積を選ぶリスク」 |
| FCL・LCL | 貨物量、頻度、破損、在庫及びCFSを含む選択 | 混載の詳細は「混載業務」 |
| 輸出工程 | Cut-off、輸出許可、搬入及び本船接続をSCMへ組み込む | 詳細は「輸出船積手続き」 |
| 特殊貨物 | 特殊貨物が輸送能力、保険及び代替ルートへ与える影響 | 詳細は「フラットラック・オープントップコンテナのはみ出し貨物と船賃」 |
| 三国間取引 | 商流、書類、決済及び保険をSCMへ接続する必要性 | 詳細は「三国間取引とフォワーダーの役割」 |
| NVOCC責任 | 運送主体の違いが事故窓口と責任設計へ与える影響 | 詳細は「NVOCCとは」 |
| 輸入貨物引渡し | D/O、B/L、輸入許可及び配送開始の接続 | 詳細は「輸入貨物引取りの実務」 |
| 海外代理店 | 現地費用、通関、D/O、事故対応及び緊急連絡体制 | 詳細は「海外代理店との契約・精算の実務」 |
荷主視点とフォワーダー視点の違い
| 比較項目 | 荷主視点のSCM | フォワーダー視点のSCM | 接続時の確認事項 |
|---|---|---|---|
| 生産・調達 | 工場、仕入先、調達量及び価格を決める | 利用港、集荷、輸出通関及び船便を設計する | 工場変更に伴う物流条件の変化 |
| 販売 | 市場、販売量、納品日及び顧客条件を決める | 到着港、輸入通関、倉庫及び配送を設計する | 販売日から逆算した物流期限 |
| 在庫 | 安全在庫、発注量及び補充頻度を決める | 輸送頻度、リードタイム変動及びCFS・倉庫能力を示す | 輸送の不安定性が在庫へ与える影響 |
| コスト | 仕入原価、在庫費及び販売利益を管理する | 運賃、通関、保管、配送、保険及び追加費用を算出する | Total Landed Costで比較する |
| リスク分散 | China+1、Dual Sourcing、Nearshoringを決める | 代替港、代替船社、代替倉庫及び航空切替えを設計する | 調達先と物流ルートが同じ障害へ集中していないか |
| 契約 | Incoterms、価格、支払及び危険移転を決める | B/L、通関名義、保険及び貨物Releaseへ反映する | 契約文言と実際の手配が一致するか |
| 事故対応 | 事業損失、納期及び顧客対応を判断する | 事故通知、Survey、証拠保全、保険及び求償を行う | 初動責任者と請求先を事前に決める |
フォワーダーは、荷主の経営判断そのものを決定する立場ではありません。
一方、経営判断を実行した場合に、どの港で混雑し、どの書類が必要となり、どこで追加費用又は納期遅延が生じるかを示すことは、フォワーダーの重要な役割です。
SCM設計で確認する五つの層
| 層 | 主な設計内容 | 不足した場合の問題 | 主な成果物 |
|---|---|---|---|
| 1. 貨物 | 品名、数量、重量、容積、梱包、危険性、温度、盗難及び納期特性 | 輸送不能、梱包不足、事故、保険条件不一致 | Cargo Profile、梱包・取扱条件表 |
| 2. 輸送 | 集荷、港、FCL・LCL、船便、積替え、倉庫及び配送 | Cut-off不履行、納期遅延、過大なローカルチャージ | Route Matrix、Door-to-Door工程表 |
| 3. 通関・規制 | HSコード、原産地、他法令、許認可、申告名義及び検査 | 貨物到着後の通関停止、保管料及び納品遅延 | Customs and Regulatory Matrix |
| 4. 書類・決済 | B/L、Invoice、Packing List、原産地証明、L/C、D/O及びRelease | 決済不一致、誤引渡し、通関不一致及び書類訂正 | Document Matrix、Release Flow |
| 5. 保険・責任 | 貨物保険、危険移転、Contracting Carrier、Actual Carrier及び求償 | 補償空白、請求先不明、責任限度による回収不足 | Risk and Responsibility Map |
一つの層だけを最適化しても、SCM全体が最適になるとは限りません。
たとえば、最安の海上運賃を選んでも、輸入規制資料が不足して貨物が長期保管されれば、通関・保管・在庫の各層で費用が増加します。
フォワーダーが行うSCM設計の手順
| 段階 | 主な作業 | 確認事項 | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 1. 荷主要件の確認 | 販売日、欠品許容、在庫方針、価格及び事故許容度を確認する | 何を最優先するSCMか | 物流要件定義書 |
| 2. 貨物特性の確認 | 品名、数量、寸法、危険性、温度及び梱包を確認する | 輸送モード及び取扱制限 | Cargo Profile |
| 3. 現行フローの可視化 | 工場出荷から納品までの工程、時間及び費用を整理する | 停止、待機及び手戻りが発生する場所 | As-Is Flow |
| 4. 複数ルートの設計 | 港、船社、FCL・LCL、倉庫、通関及び配送を比較する | 通常ルートと代替ルート | Route Matrix |
| 5. 総コスト計算 | 運賃、ローカルチャージ、在庫、保管、保険及び例外費用を比較する | 表示運賃ではなくTotal Landed Cost | Total Cost Model |
| 6. 責任・書類設計 | Incoterms、B/L、通関名義、保険及びReleaseを接続する | 契約文言と実際の業務の一致 | Document and Responsibility Matrix |
| 7. 非常時設計 | 港湾混雑、船欠航、通関停止及び事故時の切替条件を決める | 誰がいつ切替えを決定するか | Contingency Playbook |
| 8. KPI・改善 | 実績を計測し、ルート、在庫及び費用を定期的に見直す | 計画値と実績値の差 | KPI Dashboard、改善記録 |
貨物の層
SCM設計の出発点は、貨物そのものです。
同じ重量・容積であっても、一般貨物、精密機械、リチウム電池、食品、医療機器、化学品、温度管理品又は高額貨物では、利用可能な運送人、梱包、倉庫、通関、保険及び代替ルートが異なります。
| 確認項目 | SCMへの影響 | 主な設計判断 |
|---|---|---|
| 重量・容積 | FCL・LCL、航空・海上及び車両選択に影響する | 輸送モード、出荷頻度及び積載効率 |
| 貨物価額 | 盗難、保険金額及び事故時の最大損失へ影響する | 保険、保安、分割輸送及び直航便 |
| 危険品性 | 船会社、港、倉庫及び書類を制限する | DG対応ルート、申告及び緊急対応 |
| 温度管理 | Reefer、電源、倉庫及び通関待機へ影響する | 温度帯、監視、電源停止時の代替 |
| 破損しやすさ | CFS荷役、積替え及び配送回数へ影響する | FCL化、直航化、梱包及び取扱制限 |
| 納期の厳しさ | 船便頻度、安全在庫及び航空切替えへ影響する | 通常便と緊急便の使い分け |
| 規制対象 | 許認可、検査及び通関日数へ影響する | 出荷前審査と必要書類の取得 |
輸送の層
輸送設計では、Port-to-Portの航海日数だけでなく、工場出荷から納品までのDoor-to-Door工程を確認します。
| 工程 | 主な確認事項 | 代表的な遅延要因 |
|---|---|---|
| 工場出荷・集荷 | 梱包完了、車両、積込み及び集荷予約 | 製造遅延、積込み待機、車両不足 |
| 輸出搬入 | CFS・CY Cut-off、搬入予約及び検量 | Cut-off超過、書類未完成、混雑 |
| 輸出通関 | 申告名義、許可、検査及び他法令 | 品名・価格・規制資料の不一致 |
| 国際輸送 | 直航、積替え、便数、欠航及び本船変更 | 港湾混雑、接続失敗、天候 |
| 輸入通関 | HSコード、原産地、許認可、検査及び納税 | 書類不足、税番照会、検査 |
| D/O・搬出 | B/L Release、費用支払、Free Time及び搬出予約 | D/O遅延、銀行承認、費用未払い |
| 倉庫・配送 | デバン、検品、納品予約及び車両 | 倉庫混雑、配送枠不足、受入拒否 |
通関・規制の層
通関は、貨物到着後に始める手続ではなく、SCM設計時から組み込むべき工程です。
輸送ルートが安定していても、許認可、原産地、製造者情報、成分資料又は検査証明が不足すれば、貨物は輸入地で停止します。
| 確認分野 | 出荷前に確認する内容 | 未確認の場合の影響 |
|---|---|---|
| HSコード・関税 | 品名、材質、用途、税番及び関税率 | 課税差額、申告訂正及び通関遅延 |
| 原産地 | 原産地証明、EPA・FTA要件及び第三国Invoice | 特恵否認、追加関税及び書類再取得 |
| 輸入規制 | 食品、薬機、電気、化学品、検疫その他の法令 | 貨物保留、積戻し又は廃棄 |
| 申告名義 | 輸出者、輸入者、荷主及び通関依頼者 | 契約・B/L・税関情報の不一致 |
| 価格・評価 | Invoice、加算要素、ロイヤルティ及び関連者取引 | 関税評価上の追徴又は説明要求 |
| 検査対応 | 開梱場所、立会い、検体及び再梱包 | 追加費用、破損及び納品遅延 |
書類・決済の層
書類は、通関資料であるだけでなく、代金決済、貨物引渡し、保険及び責任関係を示す証拠です。
| 書類 | SCM設計上の役割 | 主な不一致リスク |
|---|---|---|
| Commercial Invoice | 価格、売主、買主、通貨及び取引条件を示す | 通関評価、L/C及び保険金額との不一致 |
| Packing List | 個数、重量、寸法及び梱包構成を示す | 検量、搬入、通関及び荷役の不一致 |
| B/L・Sea Waybill | 運送契約、Consignee、Release及び輸送区間を示す | D/O遅延、誤引渡し及び責任区間の不明確化 |
| 原産地証明書 | 関税、規制及び製造地を証明する | Invoice・申告内容との不一致 |
| 保険証券 | 被保険者、保険金額、条件及び輸送区間を示す | 補償空白、名義不一致及び保険金不足 |
| 許認可・検査証明 | 輸出入規制への適合を示す | 通関停止、積戻し又は販売不能 |
| 見積書・指図書 | 輸送範囲、費用、ルート及び委任業務を示す | 追加費用及び責任範囲の紛争 |
保険・責任の層
SCM設計では、事故が起きない前提だけでなく、事故が発生した場合の回収経路まで設計します。
貨物海上保険がある場合でも、遅延、販売機会損失、工場停止、違約金及び将来利益が当然に補償されるとは限りません。
また、フォワーダーがHouse B/Lを発行する場合は、荷主に対する契約上の運送責任と、船会社、倉庫、トラック会社又は海外代理店への求償可能性を分けて確認します。
| 確認項目 | 主な確認内容 | 設計上の対応 |
|---|---|---|
| 危険移転 | Incoterms、所有権及び売買上の危険負担 | 事故時点の経済的損失負担者を明確にする |
| 貨物保険 | 被保険者、保険金額、条件、区間及び免責 | 輸送開始前に補償空白を解消する |
| 契約運送人 | House B/L、Through B/L及び運送約款 | 荷主の直接請求先を明確にする |
| 実運送人・下請先 | 船会社、航空会社、倉庫、トラック及び代理店 | 事故区間ごとの証拠と求償ルートを確保する |
| 責任限度 | 運送約款、条約、法令及び重量・梱包単位 | 高額貨物では保険を中心に回収可能性を設計する |
| 事故初動 | 写真、Survey、Claim Notice、保険通知及び現状保存 | 連絡先と期限を手順書へ組み込む |
Total Landed Costで比較する
フォワーダー視点のSCM設計では、Ocean Freightだけでなく、納品完了までの総コストを比較します。
| コスト区分 | 主な費用 | SCM上の意味 |
|---|---|---|
| 輸送費 | 集荷、海上・航空運賃、積替え及び国内配送 | 見積書に表れやすい直接費 |
| 港湾・倉庫費 | THC、CFS、D/O、保管、荷役及び横持ち | 利用港・LCL・Free Timeで大きく変わる |
| 通関・規制費 | 申告、検査、許認可、分析及び訂正 | 貨物特性と規制準備に左右される |
| 在庫費 | 資金、倉庫、陳腐化、保険及び安全在庫 | 長く不安定なリードタイムで増加する |
| 例外費用 | Demurrage、Detention、再配送、緊急航空及び再梱包 | 通常見積では見えにくい |
| 事業損失 | 欠品、工場停止、販売機会損失及び信用低下 | 運賃差額を大きく上回る可能性がある |
実務上は、次の考え方で比較します。
Total Landed Cost=通常物流費+通関・規制費+在庫保有費+通常発生が見込まれる追加費用+リスク発生確率を考慮した期待損失
期待損失は厳密な保険数理計算でなくても、遅延頻度、過去の追加費用、緊急航空輸送回数及び欠品発生額を使って比較できます。
リードタイムを構成要素へ分解する
| リードタイム要素 | 標準日数の例 | 変動要因 |
|---|---|---|
| 受注・生産完了から集荷 | 1~3日 | 梱包、車両及び工場出荷枠 |
| 集荷から輸出搬入 | 1~2日 | 内陸距離、Cut-off及び搬入予約 |
| 輸出通関・本船待ち | 2~5日 | 検査、書類及び船便頻度 |
| 海上輸送 | 航路ごとに異なる | 直航・積替え、欠航及び港湾混雑 |
| 輸入通関・D/O | 2~5日 | 書類、検査、Original B/L及び銀行承認 |
| デバン・配送 | 1~4日 | CFS・CY混雑、納品予約及び車両 |
SCM上重要なのは、平均日数だけでなく、最短、標準、遅延時及び最大日数の幅です。
平均20日のルートでも、実績が18日から40日まで大きく変動する場合、安全在庫を増やす必要があります。
通常ルートと代替ルートを分けて設計する
| ルート区分 | 主な目的 | 切替条件の例 | 事前に確認する事項 |
|---|---|---|---|
| 通常海上ルート | 通常時のコストと輸送量を最適化する | 平常運航時 | 船便頻度、リードタイム及び在庫 |
| 代替港ルート | 港湾閉鎖・混雑時に別港を使用する | 予定遅延が5日を超える場合 | 内陸配送、通関、倉庫及び費用 |
| 代替船社・積替ルート | スペース不足又は欠航時に輸送を継続する | Booking拒否又は本船欠航 | 積替港、運送日数及び事故リスク |
| 航空輸送 | 工場停止又は欠品を回避する | 在庫残日数が一定水準を下回る場合 | 航空運賃、危険品、搭載可能量及び通関 |
| Sea & Air | 海上と航空の中間コスト・日数を確保する | 海上では間に合わず、全量航空が高過ぎる場合 | 積替国、通関、書類及び保険区間 |
| 代替倉庫・国内配送 | 倉庫・配送障害を回避する | 倉庫停止又は配送枠不足 | 在庫移動、システム、保険及び納品条件 |
代替ルートは、問題が起きてから探すのではなく、費用、必要書類、予約窓口及び切替権限を平常時に決めておきます。
SCM設計で使用する主なKPI
| KPI | 主な内容 | SCM上の利用方法 |
|---|---|---|
| Door-to-Door Lead Time | 工場出荷から納品までの日数 | 安全在庫及び発注時期を決める |
| Lead Time Variability | 標準日数からのばらつき | 不安定なルートを特定する |
| OTIF | On Time In Fullで納品できた割合 | 納期と数量の両方を評価する |
| Total Landed Cost | 納品までの総コスト | 安い運賃と高い総コストを区別する |
| Customs Hold Rate | 通関照会・検査・保留の発生率 | 規制資料と申告精度を改善する |
| Emergency Freight Ratio | 緊急航空・特別輸送費の比率 | 在庫又は通常ルート設計の不足を確認する |
| Claims Frequency | 事故・破損・紛失の発生率 | 梱包、CFS、積替え及び配送を見直す |
| Demurrage・Detention Days | フリータイム超過日数 | 通関、D/O及び配送工程を改善する |
Standard Five Classificationsとの接続
この五分類は、法令上又は業界全体で確立された法的分類ではなく、本シリーズにおいて、フォワーダーが契約及び実務上どの範囲まで関与しているかを整理するための分析上の枠組みである。
| Standard Five Classifications | SCM設計との主な関係 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 1. Simple Intermediary | 船会社、倉庫又は通関業者を紹介・取り次ぐ | SCM全体の履行責任を負うのか、紹介に限定されるのか |
| 2. Cargo Transportation Service Provider | 集荷、通関、倉庫、配送等の特定業務を提供する | 各工程の作業責任と工程間の調整責任 |
| 3. NVOCC / House B/L Issuer | 自己名義で国際運送を引き受ける | House B/L区間、下請先及び事故時の直接請求先 |
| 4. Door-to-Door Single Contractor | 工場出荷から最終納品まで一括して引き受ける | 通関、倉庫、配送及び海外代理店を含む責任範囲 |
| 5. Agent / Coordinator for Specific Operations | 特定の工程、書類、D/O又は代替ルートを調整する | 委任業務、D/O権限、費用承認及び緊急時の切替権限 |
Standard Five Classificationsとは別に、誰がContracting Carrierであり、誰がActual Carrier、代理人、取次者又は下請事業者であるかを確認します。
また、Booking、B/L発行、通関、D/O、倉庫、配送、保険、費用回収、事故対応及び代替ルート切替えのうち、具体的にどの業務と権限をフォワーダーが引き受けるかを別に確認します。
SCM設計、4PL、Control Tower、Lead Logistics Provider又は物流統括という呼称は、Standard Five Classificationsを置き換えるものではなく、別の第六の分類を構成するものでもありません。
実務上問題になりやすい場面
| 場面 | 主な原因 | 確認資料 | 判断の中心 | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 最安ルートを採用したが総コストが増加した | 在庫、保管及び追加費用を比較していない | 見積、請求書、在庫実績及び緊急輸送費 | Total Landed Costの比較 | 通常費用と例外費用を再集計する |
| China+1後も供給停止リスクが減らなかった | 二つの生産地が同じ港・積替港へ依存した | Route Matrix、船便及び港湾情報 | 障害原因が共通しているか | 独立性のある代替港・航路を設計する |
| LCL化により破損・納期変動が増えた | CFS荷役と混載工程を評価していない | 事故記録、CFS工程及びリードタイム | 運賃差と事故・在庫影響の比較 | FCL化又は梱包強化を検討する |
| 輸入規制資料が不足して貨物が停止した | 通関を到着後の業務として扱った | 許認可、Invoice、製品資料及び照会記録 | 出荷前審査の担当者と期限 | 保管・Demurrageを抑えつつ資料を取得する |
| 代替ルートへの切替えが遅れた | 切替条件と承認者が決まっていなかった | BCP、在庫日数、運航情報及び承認記録 | 誰がいつ判断すべきだったか | 在庫残日数に基づくTriggerを設定する |
| 事故時に責任主体を特定できなかった | B/L区間と実際の配送範囲が不一致だった | B/L、見積、配送指図、保険証券 | Contracting Carrierと事故区間 | 契約階層ごとに通知と証拠保全を行う |
| Door-to-Door見積でも追加費用が発生した | 検査、保管又は条件付費用が除外されていた | 見積条件、料金表及び発生記録 | 通常範囲と例外条件の区別 | 見積書にTriggerと負担者を明記する |
| フォワーダーへSCM全体の損失が請求された | 設計助言と履行保証の範囲が曖昧だった | 提案書、契約、KPI及び免責条件 | 助言、調整、運送及び保証の区別 | 契約上の業務範囲を工程別に整理する |
具体例1:深圳から関東向け電子部品でLCLとFCLを比較した場合
深圳の工場から神奈川県の組立工場へ、月3回、1回当たり18m³・3,200kg、貨物価額2,800万円の電子部品を輸入する想定例です。
調達部門は、運賃が安いLCLを希望しました。生産部門は、CFS工程とリードタイム変動による工場停止を懸念し、20フィートFCLを希望しました。
| 比較項目 | 案A:塩田港発LCL | 案B:蛇口港発20フィートFCL |
|---|---|---|
| 国際輸送・集荷等 | 268,000円 | 356,000円 |
| CFS・THC・D/O等 | 124,000円 | 82,000円 |
| 国内配送 | 54,000円 | 68,000円 |
| 1回当たり通常総額 | 446,000円 | 506,000円 |
| 標準Door-to-Door日数 | 15日 | 11日 |
| 実績変動幅 | 13~25日 | 10~15日 |
| CFS荷役 | 積地・揚地で発生 | 原則としてなし |
| 過去の破損・遅延期待費用 | 1回当たり平均92,000円 | 1回当たり平均24,000円 |
| 期待費用を含む総額 | 538,000円 | 530,000円 |
表示される通常物流費では、LCLが1回当たり60,000円安くなります。
一方、過去12か月の実績では、LCLのCFS遅延、梱包損傷及び緊急補充による追加費用が平均92,000円発生していました。
FCLの期待費用を含む総額は530,000円で、LCLの538,000円を下回りました。
調達部門は、事故や遅延は毎回発生するものではなく、通常費用で比較すべきだと主張しました。
生産部門は、部品欠品が1日発生すると約180万円の工場損失が生じるため、変動幅を含めて判断すべきだと主張しました。
判断では、通常運賃だけでなく、Lead Time Variability、緊急航空輸送、破損率、安全在庫及び工場停止額を比較します。
本件では、通常はFCLを使用し、需要が減少して12m³未満となる月だけLCLを使用する運用が採用されました。
具体例2:China+1で中国とベトナムへ生産を分散しても物流が共通していた場合
日本の機械メーカーが、深圳工場への集中を避けるため、生産量の40%をベトナム南部の工場へ移転した想定例です。
経営会議では、二つの国に生産拠点を分けたことで供給停止リスクが低下したと判断していました。
しかし、フォワーダーが物流フローを確認すると、深圳貨物は香港経由、ベトナム貨物はカットライ港からシンガポール積替えで、最終的には同じ船社グループの日本向け接続便へ依存していました。
| 比較項目 | 深圳工場 | ベトナム工場 |
|---|---|---|
| 月間出荷量 | 12FEU | 8FEU |
| 主な積地 | 香港 | カットライ港 |
| 積替え | なし又は香港接続 | シンガポール |
| 日本向け主要船社 | X船社グループ | X船社グループ |
| 標準リードタイム | 12日 | 19日 |
| 1FEU当たり総物流費 | 328,000円 | 376,000円 |
シンガポール港で大規模な接続遅延が発生し、ベトナム貨物が平均11日遅延しました。同時期に同じ船社グループの機材繰りが悪化し、香港発のスペースも制限されました。
荷主は、生産地を分散したにもかかわらず、フォワーダーが物流上の共通障害を説明しなかったと主張しました。
フォワーダーは、各出荷の見積と船便は個別に説明しており、全社SCMの共通障害分析までは依頼されていなかったと反論しました。
判断では、フォワーダーが単発輸送を受託したのか、SCM設計・BCP提案まで受託したのかを確認します。
改善策として、ベトナム貨物の半分をカイメップ港発の別船社直航系統へ切り替え、中国貨物についても別船社の塩田港発ルートを予備登録しました。
1FEU当たり平均費用は約21,000円増加しましたが、二つの生産地、二つの主要港及び二つの船社グループへ分散されました。
具体例3:上海港混雑時に東京港から名古屋港へ切り替えた場合
上海港から関東地区へ輸入する家庭用機器について、通常は東京港揚げ、緊急時は名古屋港揚げを使用する想定例です。
月間輸送量は10FEU、貨物の平均在庫価額は1FEU当たり1,600万円、関東倉庫の安全在庫は12日分でした。
| 比較項目 | 通常:東京港 | 代替:名古屋港 |
|---|---|---|
| 1FEU当たり通常物流費 | 298,000円 | 354,000円 |
| 標準Door-to-Door日数 | 9日 | 11日 |
| 関東倉庫までの国内配送 | 68,000円 | 126,000円 |
| 港湾混雑時の予想遅延 | 8~14日 | 2~4日 |
上海発東京向け本船の欠航と東京港混雑が重なり、予定到着が10日遅れる見込みとなりました。
フォワーダーは、5FEUを名古屋港向けへ切り替え、追加費用28万円で在庫切れを回避する案を提示しました。
荷主の経理部門は、追加費用が大きいため東京港向けを維持すべきだと主張しました。
営業部門は、欠品すると主要販売先への違約金約240万円と販売機会損失が生じるとして、切替えを求めました。
最終的には、在庫残日数が8日を下回り、到着予測が7日以上遅れる場合は、最大50%を代替港へ切り替えるTriggerを設定しました。
この事例では、港湾混雑が発生した後の個別判断ではなく、在庫残日数と予想遅延日数を組み合わせた切替ルールを設けることがSCM設計となります。
具体例4:タイ発医療機器で輸入規制資料が不足した場合
バンコク近郊の工場から横浜港へ医療機器を輸入する案件で、1回の貨物価額は6,500万円、40フィートHCコンテナ1本であったとします。
フォワーダーは、海上輸送、輸出通関及び日本側配送をDoor-to-Doorで受託しました。
貨物到着後、日本側で製品区分と輸入許可関係の確認が必要となり、必要資料の提出に13日を要しました。
| 追加費用 | 金額 |
|---|---|
| Demurrage・Detention | 486,000円 |
| 保管・横持ち | 218,000円 |
| 書類翻訳・追加確認 | 96,000円 |
| 納品延期対応 | 150,000円 |
| 合計 | 950,000円 |
荷主は、Door-to-Doorで受託した以上、フォワーダーが出荷前に輸入規制を確認すべきだったと主張しました。
フォワーダーは、通関は荷主から提供された品名・資料に基づいて行う契約であり、製品の法令上の適合判断は荷主側の責任であると反論しました。
判断では、見積書、通関依頼契約、事前質問、製品資料の提供時期及びフォワーダーが規制確認を引き受けたかを確認します。
改善後は、新規品目について初回出荷の30日前までに、品名、用途、材質、カタログ、許認可及び輸入実績を確認するGate Reviewが導入されました。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| SCM設計は最も安い輸送ルートを選ぶことである | 総コスト、在庫、納期、通関、事故及び継続性を統合する | Ocean Freightだけで比較しない |
| 航海日数が短ければリードタイムも短い | 集荷、Cut-off、通関、D/O及び配送が全体日数へ影響する | Door-to-Doorで計測する |
| 生産国を二つにすればリスク分散が完成する | 同じ港、船社、積替港又は倉庫に依存する場合がある | 物流上の共通障害を確認する |
| LCLは貨物量が少なければ常に最適である | CFS、破損、納期変動及び在庫影響を含めて判断する | 期待費用を含む総額を比較する |
| 通関は貨物到着後に始めればよい | 規制・許認可・原産地は出荷前に確認する | 新規品目へGate Reviewを設ける |
| Door-to-Door契約なら全ての追加費用をフォワーダーが負担する | 条件付費用、荷主情報不足及び規制対応は別に判断される | 見積範囲とTriggerを確認する |
| 貨物保険があれば納期遅延の事業損失も回収できる | 遅延・間接損害は通常の貨物損害と別に判断される | 在庫・BCPで補完する |
| House B/Lを発行すればフォワーダーが全工程を一括保証する | B/L区間、契約内容及び下請業務を確認する必要がある | Contracting Carrierと実際の業務範囲を分ける |
| 代替ルートは問題発生後に探せばよい | 費用、書類、連絡先及び承認権限を平常時に決める | 切替Triggerを数値で設定する |
| SCM提案を行ったフォワーダーは荷主の経営判断まで負う | 助言、調整、運送、保証及び意思決定を区別する | 契約上の業務範囲を明文化する |
SCM設計の判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| SCM設計開始時 | 荷主の経営、調達、営業、物流及び経理 | 優先順位、納期、在庫、最大損失及び予算 | 部門ごとの目的差を整理する |
| 貨物確認時 | メーカー、Shipper、品質・法務担当 | 品名、寸法、危険性、温度、規制及び価額 | 不明な貨物は正式見積・Bookingを保留する |
| ルート比較時 | 船会社、NVOCC、海外代理店、倉庫 | 総額、頻度、直航・積替え、実績日数及び能力 | 同一条件のRoute Matrixを作成する |
| 通関設計時 | 通関業者、荷主、規制担当者 | HSコード、原産地、他法令、許認可及び検査 | 出荷前Gate Reviewを実施する |
| 書類設計時 | 荷主、銀行、NVOCC、海外代理店 | Invoice、B/L、Consignee、D/O、L/C及びRelease | 貨物流・商流・決済の不一致を修正する |
| 保険設計時 | 荷主、保険会社、保険代理店 | 危険移転、保険金額、条件、区間及び高額リスク | 輸送開始前に補償空白を解消する |
| 代替ルート設計時 | 荷主、船会社、航空会社、倉庫、通関業者 | 切替条件、能力、費用、必要書類及び承認者 | 平常時に予備Booking・料金を確認する |
| 契約締結時 | 荷主、フォワーダー、法務担当 | 助言、運送、調整、KPI及び損害責任の範囲 | 工程別に責任を明文化する |
| 運用開始後 | 荷主と全関係事業者 | Lead Time、OTIF、総コスト、事故及び緊急輸送 | 月次・四半期で原因別に改善する |
| 障害発生時 | 荷主、フォワーダー、運送人、保険者 | 在庫残日数、遅延見込み、代替案、責任及び証拠 | 事前に定めたTriggerで切り替える |
専門家への確認を検討する場面
通常のSCM設計は、荷主とフォワーダーが貨物、ルート、通関、書類、保険及び責任を整理することで進められます。一方、次の場合は、海事・物流分野の弁護士、通関・規制専門家、保険会社、保険代理店又は税務専門家への確認を検討します。
- SCM提案の不備を理由として、工場停止、欠品又は販売機会損失の高額請求を受けた場合
- フォワーダーが単なる助言者か、Door-to-Doorの一括請負人かが争われている場合
- House B/L又はThrough B/Lの責任区間と実際の事故区間が一致しない場合
- 通関・規制確認の責任が荷主とフォワーダーのどちらにあるか争われている場合
- 三国間取引、移転価格、関税評価又は第三国InvoiceがSCMへ組み込まれている場合
- 貨物保険、事業中断、遅延損害又は間接損害の補償範囲が問題となる場合
- 海外代理店、倉庫、船会社及び国内配送業者が相互に責任を否定している場合
- 港湾閉鎖、制裁、輸出管理又は政治危険によりルート変更が必要な場合
- Control Tower、4PL又は長期包括契約でKPI・損害賠償・責任制限を定める場合
- 複数国の輸送・通関・保険契約について準拠法又は紛争解決方法を統一する場合
次に確認する専門記事
| 確認したい論点 | 次に確認する記事 |
|---|---|
| 輸出Cut-off、搬入、輸出許可及び本船接続 | 輸出船積手続き |
| LCL混載、CFS及びFCLとの使い分け | 混載業務 |
| Ocean Freight、Local Charge及びTotal Costの内訳 | 海上運賃の種類と費用構造 |
| 最安見積と最終総額・納期リスクの比較 | 安い見積を選ぶリスク |
| 特殊コンテナ、Void Space及びOOG貨物 | フラットラック・オープントップコンテナのはみ出し貨物と船賃 |
| 三国間取引の書類、決済、保険及びRelease | 三国間取引とフォワーダーの役割 |
| House B/L発行者の契約上の運送責任 | NVOCCとは |
| 輸入地のD/O、B/L処理及び貨物引渡し権限 | 輸入貨物引取りの実務 |
| 海外代理店の業務、費用及び事故対応 | 海外代理店との契約・精算の実務 |
まとめ
フォワーダー視点のSCM設計は、荷主の生産、調達、販売及び在庫方針を、実際に動く国際物流へ変換する作業です。
貨物、輸送、通関、書類、保険・責任という五つの層を分離して確認し、最後に一つの物流フローとして接続します。
判断基準は、最安のOcean Freightではありません。Total Landed Cost、Door-to-Doorリードタイム、その変動幅、安全在庫、事故率、通関リスク及び非常時の継続性を含めて比較します。
China+1又はDual Sourcingを行っても、同じ港、船社、積替港、倉庫又は通関体制へ依存していれば、物流面のリスク分散は完成していません。
通常ルート、代替港、代替船社、航空輸送、Sea & Air及び代替倉庫を事前に設計し、在庫残日数、予想遅延日数又はBooking拒否等の切替Triggerを定めます。
また、Incoterms、B/L、通関名義、保険及び実際の配送範囲を一致させ、事故時の直接請求先と下請先への求償ルートを整理します。
フォワーダーが提供する価値は、単に貨物を安く運ぶことではありません。荷主が、平常時にも障害発生時にも、安全に、継続的に、説明可能な形で貨物を動かせる仕組みを設計することにあります。
