食品添加物
食品添加物とは、食品の製造、加工、保存、着色、香味付け、品質保持などの目的で食品に使用される物質です。保存料、甘味料、着色料、香料、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、発色剤、調味料などが代表例です。
輸入食品実務で重要なのは、海外で使用されている添加物が、日本でもそのまま使用できるとは限らない点です。原産国では一般的に使われている添加物であっても、日本の食品衛生法上は使用できない場合や、使用できる食品・使用量が制限されている場合があります。
食品添加物の確認は、単にラベル上の表示を確認する作業ではありません。日本で使用が認められている添加物か、対象食品への使用が認められているか、使用量が基準内か、複合原材料や製造工程中の添加物を見落としていないかを確認する実務です。
食品添加物の制度上の位置づけ
日本では、食品添加物について、原則として使用が認められたものだけを使用できる仕組みが採られています。食品衛生法上、使用できる添加物は、指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物などに整理されます。
この仕組みは、輸入食品実務では非常に重要です。海外で合法的に製造・販売されている食品であっても、日本で認められていない添加物が使われていれば、日本国内で販売・営業使用できない可能性があります。
そのため、輸入者は、食品等輸入届出の前に、使用されている添加物の名称、用途、使用量、対象食品、日本の基準への適合性を確認しておく必要があります。
食品添加物の主な分類
食品添加物は、法令上の位置づけにより、主に次のように整理されます。輸入実務では、添加物名だけでなく、その添加物がどの分類に属し、日本で使用可能かを確認することが重要です。
指定添加物
指定添加物は、食品衛生法に基づき、使用してよいものとして定められた食品添加物です。化学的合成品だけでなく、天然由来の物質であっても指定添加物に含まれるものがあります。
輸入食品で最初に確認すべきなのは、使用されている添加物が指定添加物として認められているか、または他の使用可能な分類に該当するかです。名称が似ていても、別物質として扱われる場合があるため、英語名、化学名、規格名を確認する必要があります。
既存添加物
既存添加物は、長年日本で使用されてきた実績などを踏まえ、指定添加物とは別に使用が認められている添加物です。天然由来のものが多く含まれますが、天然由来であれば何でも使用できるという意味ではありません。
輸入食品では、「天然添加物」「natural additive」と表示されていても、日本の既存添加物名簿に該当するか、規格や用途に問題がないかを確認する必要があります。
天然香料
天然香料は、動植物を起源とする香料で、食品に香りを付ける目的で使用されるものです。輸入食品では、香料の名称が包括的に記載されていることが多く、詳細な構成成分が分かりにくい場合があります。
香料については、単に「flavor」や「natural flavor」と記載されているだけでは、日本側で十分に確認できないことがあります。英語表記に限らず、現地語表記や包括的な香料表示でも同様に注意が必要です。必要に応じて、香料の種類、起源、用途、規格に関する資料を取得する必要があります。
一般飲食物添加物
一般飲食物添加物は、通常は食品として飲食されるものを、添加物として使用する場合の分類です。たとえば、食品として利用される素材が、着色、香味、品質調整などの目的で添加物的に使われることがあります。
輸入実務では、食品原料なのか、添加物として使用されているのかが曖昧な場合があります。用途によって確認すべき法令上の位置づけが変わるため、製造工程や配合目的を確認することが重要です。
輸入食品で問題になりやすい理由
食品添加物が輸入食品で問題になりやすい理由は、国ごとに使用できる添加物、対象食品、使用量、表示方法が異なるためです。海外で適法に販売されている食品であっても、日本の基準とは一致しないことがあります。
特に問題になりやすいのは、日本で認められていない添加物が使われている場合、日本では使用できる食品が限定されている場合、使用量の上限を超えている場合です。また、複合原材料の中に含まれる添加物や、製造工程中に使用される物質が見落とされることもあります。
加工食品、菓子、飲料、調味料、健康食品、冷凍食品、レトルト食品などでは、原材料の種類が多く、添加物も複数使われることがあります。そのため、輸入前に原材料表、配合表、製造工程表を確認しておく必要があります。
使用基準の確認
食品添加物は、日本で使用が認められていれば常に自由に使えるわけではありません。添加物によっては、使用できる食品の種類、使用量、使用目的、残存量などに基準が定められていることがあります。
輸入食品では、次のような観点で確認します。
- その添加物が日本で使用可能な添加物か
- 対象食品への使用が認められているか
- 使用量や残存量が基準内か
- 使用目的が日本の基準に合っているか
- 複数の原材料由来で同じ添加物が入っていないか
- 加工助剤やキャリーオーバーとして扱われるものがないか
使用基準の確認では、食品衛生法施行規則、関連告示、添加物使用基準リストなどを参照します。実務上は、検疫所や食品衛生監視員から追加資料を求められることもあるため、輸出者や製造者から使用量や配合情報を取得できる体制が必要です。
加工助剤とキャリーオーバー
食品添加物の確認では、加工助剤とキャリーオーバーの扱いも重要です。これらは、最終製品のラベルに表示されない場合があるため、輸入者が見落としやすい論点です。
加工助剤とは、食品の製造工程中に使用されるものの、最終食品に残らない、または残ってもごくわずかで効果を発揮しないものをいいます。たとえば、製造工程中の処理、抽出、ろ過、酵素反応などで使われる物質が問題になることがあります。
キャリーオーバーとは、原材料に使用された添加物が、その原材料を通じて最終製品に持ち込まれる場合をいいます。最終製品で技術的効果を発揮しない場合などには、表示上は省略できることがあります。
ただし、表示が省略できる場合でも、輸入時の確認が不要になるわけではありません。加工助剤やキャリーオーバーであっても、使用された物質が日本で問題となる場合や、基準への適合確認が必要になる場合があります。
複合原材料中の添加物
輸入加工食品では、複合原材料中の添加物が問題になることがあります。複合原材料とは、複数の原材料から作られた原材料を指します。たとえば、ソース、シーズニング、ミックス粉、チョコレート、香料製剤、プレミックス原料などが該当することがあります。
輸入者が最終製品の原材料表だけを確認していると、複合原材料の中で使われている保存料、甘味料、着色料、酸化防止剤、乳化剤などを見落とす可能性があります。
食品衛生監視員から確認を求められた場合、単に最終製品のラベルを提出するだけでは足りないことがあります。複合原材料の内訳、添加物の名称、使用目的、使用量、製造工程中での役割を確認できる資料が必要になります。
必要になりやすい資料
食品添加物の確認では、製造者または輸出者から詳細な資料を取得することが重要です。商品名やラベルだけでは、添加物の使用状況を正確に判断できない場合があります。
- 原材料表
- 成分表
- 配合表
- 製造工程表
- 添加物の規格書
- 添加物の使用量を確認できる資料
- 複合原材料の内訳資料
- 加工助剤やキャリーオーバーの有無を確認できる資料
- 試験成績書
- 商品ラベル
- サプライヤーの説明書または証明書
特に初回輸入品、健康食品、菓子、飲料、調味料、冷凍食品、レトルト食品では、添加物情報の確認に時間がかかることがあります。貨物到着後に確認を始めると、届出審査や通関スケジュールに影響する可能性があります。
輸入食品届出との関係
販売または営業目的で食品を輸入する場合、輸入者は検疫所へ食品等輸入届出を行います。届出では、原材料、添加物、製造方法、用途などが確認され、食品衛生監視員が食品衛生法への適合性や検査要否を判断します。
添加物の内容が不明確な場合、検疫所から追加資料の提出や補足説明を求められることがあります。未指定添加物の使用、使用基準違反、複合原材料中の添加物の不明確さなどがあると、届出審査が止まり、検査、積戻し、廃棄などにつながることがあります。
輸入者は、食品等輸入届出の前に、添加物の名称、使用目的、使用量、対象食品への使用可否を整理しておく必要があります。通関業者やフォワーダーは、荷主から受けたラベルや商品名だけで判断せず、添加物情報の取得状況を確認することが重要です。
食品表示との関係
食品添加物の確認は、輸入時の食品衛生法上の確認だけでなく、輸入後の販売表示にも関係します。日本国内で販売する加工食品では、食品表示法に基づき、原材料名や添加物表示を適切に行う必要があります。
ただし、輸入時に食品衛生法上問題がないと確認されたことと、販売表示が正しいことは同じではありません。加工助剤やキャリーオーバーのように表示上の扱いが別途問題になるものもあります。
特に、健康食品、機能性をうたう食品、サプリメント、菓子、飲料、調味料などでは、添加物表示だけでなく、栄養成分表示、アレルゲン表示、原料原産地表示、広告表現、薬機法上の効能効果表現もあわせて確認する必要があります。
フォワーダー・通関実務での見方
フォワーダーや通関業者にとって、食品添加物は、輸入食品届出の審査で止まりやすい確認項目です。荷主から「普通の食品です」と説明されても、加工食品であれば添加物の確認が必要になる場合があります。
特に注意すべきなのは、海外ラベルに記載された添加物名だけでは日本基準への適合性を判断できないことです。英語名、現地語名、商品名、成分名が一致しないこともあるため、必要に応じて正式名称、化学名、用途、使用量を確認します。
また、輸出者が「confidential」として配合表の開示を渋る場合でも、日本側の届出審査では確認資料が必要になることがあります。この場合、輸入者が製造者・輸出者と調整し、検疫所へ説明できる範囲の資料を取得する必要があります。
まとめ
食品添加物は、食品の製造、加工、保存、着色、香味付け、品質保持などに使われる物質です。輸入食品実務では、海外で使用されている添加物が、日本で使用できる添加物に該当するかを確認することが出発点になります。
確認すべき点は、添加物名だけではありません。指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物のどれに該当するか、対象食品に使用できるか、使用量が基準内か、加工助剤やキャリーオーバー、複合原材料中の添加物を見落としていないかを確認する必要があります。
輸入者、通関業者、フォワーダーは、船積前に添加物情報を確認し、日本で使用可能な添加物か、使用基準に適合しているか、表示上の扱いに問題がないかを整理しておく必要があります。添加物情報を届出審査で説明できる資料として整えておくことが、通関遅延や販売段階での表示トラブルを防ぐうえで重要です。
