英国海上保険法における海上保険契約と海上危険
英国海上保険法における海上保険契約と海上危険とは
英国海上保険法における海上保険契約とは、保険者が被保険者に対し、契約で合意された方法及び範囲に従って、Marine adventureに付随して発生する海上損害を填補する契約です。
MIA1906第1条は、海上保険契約を、Marine adventureに付随する損害を填補する契約として定義しています。
ここでいうMarine adventureは、船舶の航海又は船舶で運ばれる貨物だけを意味するものではありません。海上危険にさらされる船舶、貨物その他の動産、運賃、手数料、利益、前払金、融資、立替金その他の金銭的利益及び第三者に対する責任も、一定の場合にはMarine adventureの構成要素となります。
MIA1906第2条は、海上保険契約が、明示の契約条件又は取引慣習によって、内陸水路上の危険及び海上航海に付随する陸上危険へ拡張できることを定めています。
MIA1906第3条は、適法なMarine adventureを海上保険契約の対象とし、Maritime perilsを、海上航行に起因し又はこれに付随する危険として定義しています。
ただし、MIA1906第1条から第3条に該当する危険であることと、実際の貨物保険で保険金が支払われることは同じではありません。
実際の担保範囲は、保険証券、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)、戦争危険約款、ストライキ危険約款、特別約款、保険期間及び免責事項によって決まります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| 海上保険契約 | MIA1906第1条に基づく契約の基本定義 | 保険価額、保険金額及び損害填補額はそれぞれの専門記事で扱います。 |
| 海陸混合危険 | MIA1906第2条による内陸水路及び陸上危険への拡張 | 具体的な保険期間はICC及び個別の保険証券を確認します。 |
| 倉庫間担保 | 輸出地側の陸上輸送、海上輸送及び輸入地側の配送との関係 | ICC第8条の詳細は保険期間の専門記事で扱います。 |
| Marine adventure | 財産、金銭的利益及び第三者責任の分類 | 被保険利益の成立要件は被保険利益の専門記事で扱います。 |
| Maritime perils | MIA1906第3条に列挙された伝統的な海上危険 | 個別事故の近因判断は担保損害・免責損害の記事で扱います。 |
| ICC(A) | 広い担保構造とMIA1906上の危険概念との関係 | ICC(A)の各免責事項は専門記事で扱います。 |
| ICC(B)・ICC(C) | 列挙危険方式とMaritime perilsとの対応 | 各担保危険の詳細な適用要件は約款別の記事で扱います。 |
| 戦争危険・ストライキ危険 | 標準ICCからの除外と別約款による担保 | 戦争危険約款及びストライキ危険約款は別記事で扱います。 |
| 共同海損 | Marine adventure及び海上危険との基本的な接続 | 共同海損の成立要件、分担及び精算は専門記事で扱います。 |
| 代位求償 | 貨物保険の支払と第三者責任の基本的な区別 | 保険者の代位権及び運送人への求償は専門記事で扱います。 |
制度の目的と背景
海上保険は、船舶又は貨物という物だけを対象とする制度ではありません。
海上航行に関連する財産、収益、利益、資金及び責任がMaritime perilsによって危険にさらされる場合、その経済的利益を保険によって保護することが制度の基本的な目的です。
国際物流では、貨物は工場又は倉庫から搬出され、トラック、鉄道、内陸水路、港湾施設、船舶、輸入地側の倉庫及び配送車両を経由して最終納品先へ運ばれます。
そのため、海上航海だけを切り離して保険を設計すると、港の前後に存在する陸上輸送及び一時保管の危険を十分に処理できません。
MIA1906第2条は、海上保険契約が海上航海に付随する陸上危険へ拡張できる法的な基礎を示しています。
一方、海上航海に時間的又は地理的に近いというだけで、すべての陸上危険が当然に海上保険の対象となるわけではありません。
実際の境界は、契約上の輸送区間、保険期間、通常の輸送過程、貨物の保管目的、最終倉庫での荷卸し及び保険者が承認した特別条件によって判断します。
MIA1906第1条から第3条までの基本構造
| 条文 | 法概念 | 基本的な内容 | 貨物保険実務での役割 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 第1条 | Marine Insurance Contract | Marine adventureに付随する海上損害を合意された範囲で填補する契約 | 保険契約の基本的な性質を確認する | 保険証券、保険明細、適用約款 |
| 第2条第1項 | Mixed Sea and Land Risks | 内陸水路及び海上航海に付随する陸上危険への拡張 | 倉庫間輸送及び複合一貫輸送の基礎となる | 保険区間、輸送経路、ICC |
| 第2条第2項 | Analogous Adventure | 建造中の船舶、進水又はMarine adventureに類似する事業への法適用 | 通常の貨物輸送以外の海上関連リスクを整理する | 個別保険証券、事業内容、特別約款 |
| 第3条第1項 | Lawful Marine Adventure | 適法なMarine adventureは海上保険契約の対象となり得る | 違法な航海又は取引を保険対象としない前提となる | 取引契約、輸出入許可、制裁確認 |
| 第3条第2項(a) | Insurable Property | 船舶、貨物その他の動産がMaritime perilsにさらされる場合 | 貨物保険及び船舶保険の対象を整理する | Invoice、Packing List、B/L |
| 第3条第2項(b) | Pecuniary Benefit | 運賃、旅客運賃、手数料、利益、金銭的利益、融資及び立替金等が危険にさらされる場合 | 運賃保険、利益保険及び資金利益の基礎となる | 売買契約、運送契約、融資契約 |
| 第3条第2項(c) | Third-Party Liability | Maritime perilsによって第三者責任を負う可能性がある場合 | 船主責任、運送人責任等との接続を示す | 責任保険証券、B/L、契約条件 |
| 第3条第2項末尾 | Maritime Perils | 海上航行に起因し又は付随する危険 | 担保危険を分類する出発点となる | 事故報告、約款、航海記録 |
海上保険契約・Marine adventure・Maritime perilsの違い
| 概念 | 意味 | 主な問い | 具体例 | 混同した場合の問題 |
|---|---|---|---|---|
| 海上保険契約 | 保険者と被保険者の間の契約関係 | 何を、どの条件で、どこまで填補するか | ICC(A)を付帯した貨物保険証券 | 事故がMarine adventureに関係するだけで担保されると誤解する |
| Marine adventure | 財産、利益又は責任が海上危険にさらされる適法な事業 | どの経済的利益が海上危険にさらされているか | 貨物、運賃、利益、立替金、第三者責任 | 貨物そのもの以外の被保険利益を見落とす |
| Maritime perils | 海上航行に起因し又は付随する危険 | どの危険が損害を発生させたか | 海固有の危険、火災、海賊、投荷 | 事故原因と保険対象を混同する |
| Insurable property | Maritime perilsにさらされる船舶、貨物その他の動産 | 損害を受けた物が付保対象か | 輸出貨物、輸送用機械、コンテナ内の商品 | 付保明細にない財産まで担保されると誤解する |
| Insured peril | 保険証券上で担保される危険 | 事故原因が実際の担保範囲に入るか | ICC(C)に列挙された火災又は座礁 | MIA1906の列挙危険をすべて担保危険と誤解する |
| Insurance period | 保険が危険を負担する時間的・地理的範囲 | 事故発生時に保険が継続していたか | 輸出倉庫から最終倉庫までの通常輸送 | 担保危険でも保険期間外であれば支払われない点を見落とす |
海上保険は海上輸送だけに限られない
MIA1906第2条第1項は、海上保険契約が、明示の契約条件又は取引慣習によって、内陸水路上の損害及び海上航海に付随する陸上危険へ拡張できることを定めています。
この規定は、海上保険契約が当然にすべての陸上危険を担保するという意味ではありません。
陸上危険を担保するためには、保険証券、適用約款、取引慣習又は特別約款により、対象となる輸送区間が契約へ取り込まれている必要があります。
現代の外航貨物海上保険では、ICCの保険期間条項により、輸出地側の倉庫から輸入地側の最終倉庫までの通常の輸送過程を一体として担保する設計が一般的です。
しかし、「Warehouse to Warehouse」という呼称だけで、すべての倉庫保管が無期限に担保されるわけではありません。
貨物が最終倉庫で輸送車両から荷卸しされた場合、通常はその時点が保険終了事由となります。
また、通常の輸送過程ではなく、販売在庫として保管する目的又は仕分け・配送のために選択した別倉庫へ貨物を入れた場合には、最終納品先へ到着する前でも保険が終了することがあります。
ICCにおける陸上危険・保管・保険終了の判断
| 場面 | 標準的な考え方 | 保険継続の可能性 | 主な判断資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 輸出倉庫内で貨物を輸送開始のために初めて動かす | ICC第8条上の保険開始となり得る | 高い | 搬出記録、積込記録、運送依頼 | 単なる倉庫内移動ではなく、直ちに輸送を開始するための移動かを確認する |
| 輸出倉庫から船積港までのトラック輸送 | 通常の輸送過程に含まれ得る | 高い | 輸送経路、トラック運送状、事故報告 | 保険証券の始点及び付保区間を確認する |
| 船積港CFS・CYでの通常の待機 | 通常の輸送に付随する保管となり得る | 条件により継続 | 搬入日、船積予定、遅延理由 | 長期保管又は被保険者の任意保管へ変わっていないか確認する |
| 輸入港での通関待ち・通常の一時保管 | 通常の輸送過程に含まれる場合がある | 条件により継続 | 本船揚げ日、通関記録、搬出予定 | 保険終了事由と60日経過の双方を確認する |
| 輸入港から最終納品先までの配送 | 保険証券に定める目的地までの通常輸送となり得る | 高い | 配送指示、納品先、事故区間 | 保険証券上の最終目的地と一致しているか確認する |
| 最終倉庫で輸送車両から荷卸しが完了 | 標準ICCでは主要な保険終了事由 | 原則として終了 | 荷卸完了時刻、受領記録 | 倉庫内で後日発見された損害でも、事故発生時点は別途調査する |
| 販売在庫として保管する別倉庫へ搬入 | 通常輸送以外の保管を選択したと評価されることがある | 搬入時に終了する可能性 | 保管目的、在庫処理、配送計画 | 一時保管という名称だけで判断しない |
| 仕分け・分配のための配送センターへ搬入 | 分配目的の倉庫として保険終了事由となる場合がある | 条件により終了 | 配送センターの役割、荷主の指示 | 通常輸送の中継地点か、商業上の分配拠点かを区別する |
| 本船からの荷卸完了後60日を経過 | 標準ICC上の最終的な時間制限となる | 原則として終了 | 本船荷卸完了日、事故日 | 最終倉庫への荷卸し等により、それ以前に終了する場合がある |
| 輸送終了後に通常在庫として保管 | 海上航海に付随する通常輸送を離れている | 原則として対象外 | 納品記録、在庫台帳、保管目的 | 別途、動産総合保険又は保管中の保険が必要となる場合がある |
「倉庫搬入後60日間担保される」という理解は正確ではない
標準ICCには、最終揚港で本船から貨物の荷卸しが完了した後、一定期間が経過した場合に保険が終了する時間制限があります。
しかし、この期間は、貨物が最終倉庫へ搬入された後も一律に保険が継続する猶予期間ではありません。
最終倉庫で輸送車両からの荷卸しが完了した場合、通常はその時点で保険が終了します。
また、被保険者が通常輸送以外の保管、仕分け又は分配のために別の倉庫を選択した場合には、その倉庫への搬入等によって保険が終了することがあります。
したがって、保険終了時期は、最終倉庫への到着、荷卸し、保管目的及び本船荷卸し後の経過期間のうち、該当する最も早い終了事由によって判断します。
MIA1906第2条第2項の類似するMarine adventure
MIA1906第2条第2項は、建造中の船舶、船舶の進水又はMarine adventureに類似する事業が海上保険証券によって担保された場合に、適用可能な範囲でMIA1906を適用することを定めています。
これは、海上保険法の適用対象が、既に航海している船舶又は通常の貨物輸送だけに限定されないことを示しています。
ただし、Marine adventureに類似するという理由だけで、一般の陸上保険契約が海上保険契約へ変わるわけではありません。
契約が海上保険証券の形式で締結され、対象となる事業がMarine adventureに類似し、MIA1906の規定を適用できることが必要です。
Marine adventureの対象範囲
| 対象 | MIA1906上の位置付け | 実務上の例 | 必要となる保険 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 貨物 | Maritime perilsにさらされるInsurable property | 輸出入貨物、機械、食品、原材料 | 貨物海上保険 | 品名、価額、輸送区間及び担保条件を確認する |
| 船舶 | Maritime perilsにさらされるInsurable property | 外航船、内航船、建造中の船舶 | 船舶保険 | 貨物海上保険とは別の保険種目です。 |
| 運賃 | 財産の安全な到着に依存する金銭的利益 | 貨物が到着しなければ取得できない運賃 | 運賃保険 | 前払運賃か到着払運賃かで被保険利益が異なります。 |
| 手数料 | Marine adventureの完了に依存する収益 | 売買又は輸送完了に伴うコミッション | 利益又は収益に関する保険 | 貨物保険へ自動的に含まれるわけではありません。 |
| 期待利益 | 貨物の安全な到着に依存するPecuniary benefit | 輸入販売によって得る予定の利益 | 利益を含めた評価額又は利益保険 | 被保険利益及び保険価額へ適切に反映する必要があります。 |
| 前払金・立替金 | 財産の安全性によって回収が左右される資金 | 貨物購入資金、運賃立替、港湾費用立替 | 個別に設計された利益保険 | 支出した事実だけで貨物保険の対象になるとは限りません。 |
| 融資・担保利益 | 財産の安全性に依存する融資又は担保上の利益 | 貨物金融、貿易金融、担保権者の利益 | 金融機関又は担保権者の利益を含む保険 | 保険証券上の被保険者及び保険金受取関係を確認します。 |
| 第三者責任 | Maritime perilsによって発生し得る第三者への責任 | 船舶衝突責任、運送人責任、汚染責任 | 船主責任保険、運送人責任保険等 | 貨物自体の保険と責任保険を混同しません。 |
CIF契約・L/C決済とMarine adventure
CIF契約では、売主が海上運送及び貨物保険を手配し、買主に対して保険書類を提供することがあります。
この場合、売主が手配した保険は、輸送中の貨物損害を中心とするものですが、保険価額には商業上の利益を見込んだ一定割合が加算されることがあります。
ただし、CIFという売買条件だけで、すべての期待利益、違約金又は市場損失が保険対象となるわけではありません。
L/C決済では、信用状条件に従って、保険証券又は保険証明書の提示が求められることがあります。
銀行が書類を受理したことと、事故が保険契約上担保されることは別の問題です。
保険金請求では、保険証券、被保険利益、保険期間、担保危険及び免責事項を別途確認します。
Maritime perilsとは
MIA1906第3条は、Maritime perilsを、海上航行に起因し又はこれに付随する危険として定義しています。
伝統的に列挙される危険には、海固有の危険、火災、戦争危険、海賊、海上略奪者、盗賊、捕獲、拿捕、拘束、抑留、投荷及びBarratryが含まれます。
Barratryとは、船長又は船員が船主その他の利害関係者に損害を与える不正な目的で行う故意の不正行為を意味します。
単なる船長又は船員の過失を、すべてBarratryと表現することは適切ではありません。
MIA1906のMaritime perilsは、海上保険法上の伝統的な危険分類です。
これらの危険が実際に担保されるかどうかは、適用されるICC及び別途付帯された戦争危険約款等に従って判断します。
Maritime perilsと現代の貨物事故
| MIA1906上の危険 | 現代の事故例 | 主な確認事項 | 標準ICCでの基本的な位置付け | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Perils of the Seas | 荒天、異常な波浪、海水侵入、船舶の座礁 | 異常性、偶然性、近因及び船舶事故 | ICC(A)は広い担保、ICC(B)(C)は列挙された事故類型を確認 | 海上で発生した通常の損耗まで含むものではありません。 |
| Fire | 船倉火災、コンテナ火災、倉庫火災 | 火災の発生区間、原因及び保険期間 | ICC(A)(B)(C)で基本的な担保危険となる | 被保険者の故意等の免責を別途確認します。 |
| War Perils | 戦争、内戦、敵対行為、機雷 | 事故原因、地域、戦争危険約款の有無 | 標準ICCでは原則として除外し、別の戦争危険約款で検討 | 通常のICCだけで担保されると考えません。 |
| Pirates | 海賊による船舶又は貨物の奪取 | 海賊行為、盗難、拿捕との区別 | ICC(A)では全危険担保及び除外条項を確認し、ICC(B)(C)では通常列挙されていない | 戦争危険と機械的に同一視しません。 |
| Thieves | 輸送中の貨物盗難、コンテナ開封 | 盗難の立証、数量、封印及び保管管理 | ICC(A)では検討対象、ICC(B)(C)では通常の列挙危険ではない | 単なる数量不足との区別が必要です。 |
| Capture, Seizure, Restraint or Detainment | 当局による拿捕、拘束、差押え、航行制限 | 行為主体、法的根拠、戦争・制裁との関係 | 標準ICCでは戦争危険等の免責を確認 | 税関による通常の留置と保険事故を区別します。 |
| Jettison | 船舶又は共同の安全のための貨物投棄 | 投荷の事実、共同海損宣言及び対象貨物 | ICC(A)(B)(C)で担保構造を確認 | 投荷損害と共同海損分担金は別の損害項目です。 |
| Barratry | 船長又は船員による故意の不正行為 | 不正目的、行為者、船主との関係 | ICC(A)では全危険担保及び免責を確認し、ICC(B)(C)では通常列挙されていない | 通常の操船ミス又は過失とは区別します。 |
Maritime perilsとICC(A)(B)(C)第1条の関係
MIA1906第3条のMaritime perilsとICC(A)(B)(C)第1条は、一対一で完全に対応するものではありません。
ICC(A)は、免責事項を除き、保険対象に発生する偶然な損失又は損傷を広く担保する構造です。
ICC(B)及びICC(C)は、第1条に列挙された原因による損失又は損傷を担保する列挙危険方式です。
そのため、MIA1906上はMaritime perilに分類できる危険であっても、ICC(B)又はICC(C)の列挙危険に該当しなければ、標準約款では担保されないことがあります。
| 危険・事故 | ICC(A) | ICC(B) | ICC(C) | 実務上の確認点 |
|---|---|---|---|---|
| 火災・爆発 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 第1条の列挙危険 | 近因、免責及び保険期間を確認する |
| 船舶の座礁・乗揚げ・沈没・転覆 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 第1条の列挙危険 | 船舶事故と貨物損害の因果関係を確認する |
| 陸上輸送用具の転覆・脱線 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 第1条の列挙危険 | 海陸混合輸送における重要な列挙危険です。 |
| 船舶又は輸送用具の衝突・接触 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 第1条の列挙危険 | 水以外の外部物との接触等、約款文言を確認する |
| 避難港での荷卸し | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 第1条の列挙危険 | 避難港及び荷卸しとの因果関係を確認する |
| 地震・噴火・落雷 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 通常は列挙されていない | ICC(B)とICC(C)の重要な差異です。 |
| 投荷 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 第1条の列挙危険 | 投荷損害と共同海損分担金を分ける |
| 甲板上からの流失 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 通常は列挙されていない | 甲板積み条件及び保険者の承認を確認する |
| 海水・湖水・河川水の侵入 | 原則として担保対象 | 第1条の列挙危険 | 通常は列挙されていない | 雨水、結露及び通常湿気との区別が必要です。 |
| 船積み・荷卸し中に海中へ落下した一梱包の全損 | 原則として担保対象 | 一定の全損が列挙危険 | 通常は列挙されていない | 一部損傷ではなく一梱包の全損要件を確認する |
| 盗難 | 免責事項に該当しない限り検討対象 | 通常は列挙されていない | 通常は列挙されていない | 必要に応じて盗難担保の特約を確認する |
| 戦争・拿捕・機雷等 | 標準ICCでは戦争危険免責を確認 | 標準ICCでは戦争危険免責を確認 | 標準ICCでは戦争危険免責を確認 | Institute War Clauses等の別約款を確認する |
海上危険と貨物事故の判断基準
| 判断項目 | 確認する質問 | 担保を支持する事情 | 担保外・免責を支持する事情 |
|---|---|---|---|
| 付保対象 | 損害を受けた財産又は利益が保険証券へ記載されているか | 品名、数量及び価額が保険明細と一致する | 付保明細に含まれない財産又は利益である |
| 保険期間 | 事故発生時に保険が開始し継続していたか | 通常の輸送過程中に事故が発生した | 最終倉庫での荷卸し後又は販売在庫中に事故が発生した |
| 事故原因 | 損害を実質的に発生させた原因は何か | 火災、衝突、転覆、海水侵入等の偶然な事故 | 固有の瑕疵、通常損耗又は遅延そのもの |
| 適用ICC | ICC(A)(B)(C)のどれが適用されるか | 原因が約款上の担保構造に入る | ICC(B)(C)の列挙危険に該当しない |
| 免責事項 | 故意、梱包不備、固有の瑕疵、遅延等に該当しないか | 偶然な外部事故によって損害が発生した | 明示された免責原因が近因となっている |
| 特別約款 | 戦争、ストライキ、温度、盗難等の追加担保があるか | 必要な特別約款が付帯されている | 標準ICCだけで追加危険を請求している |
| 証拠 | 事故区間、原因及び損害を立証できるか | 写真、サーベイ、運送記録及び事故報告が整合する | 発見時期だけが判明し、事故発生区間を特定できない |
貨物保険・運賃保険・利益保険・責任保険の違い
| 保険の種類 | 主な被保険利益 | 典型的な損害 | Marine adventureとの関係 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 貨物海上保険 | 貨物の財産的価値 | 破損、濡損、盗難、全損 | 貨物がMaritime perilsにさらされる | 運送人の法的責任とは別です。 |
| 船舶保険 | 船体、機関及び船舶所有者の利益 | 衝突、座礁、火災、機関損傷 | 船舶がMaritime perilsにさらされる | 貨物保険のICCは通常適用しません。 |
| 運賃保険 | 取得予定の運賃 | 貨物不着等による運賃の喪失 | 運賃取得が財産の安全に依存する | 前払済み運賃か未収運賃かを確認します。 |
| 利益保険 | 航海完了によって得る予定の利益 | 貨物全損等による期待利益の喪失 | Pecuniary benefitがMaritime perilsにさらされる | 通常の貨物評価額に含まれる利益との重複を確認します。 |
| 運送人・フォワーダー責任保険 | 第三者に対する法律上又は契約上の責任 | 貨物所有者からの損害賠償請求 | Maritime perilsにより第三者責任が発生する場合がある | 貨物そのものを被保険利益とする保険ではありません。 |
| 船主責任保険 | 船主の第三者責任及び費用 | 衝突責任、汚染責任、乗組員責任 | 第3条第2項(c)の責任概念と接続する | 契約条件及びP&Iルールを確認します。 |
共同海損との接続
共同海損は、船舶及び積荷が共同の海上危険にさらされた場合に、共同の安全のために意図的かつ合理的に行われた特別な犠牲又は支出を、利害関係者間で分担する制度です。
投荷はMIA1906第3条のMaritime perilsとして列挙される一方、共同の安全のために貨物を投棄した場合には、貨物の物的損害だけでなく、共同海損犠牲としての処理が問題となることがあります。
また、事故で貨物自体に損害がなくても、貨物所有者が共同海損分担金を負担する場合があります。
共同海損の成立要件、共同海損犠牲、共同海損費用及び分担金の填補額は、「英国海上保険法における共同海損損失」及び関連する共同海損記事で別途確認する必要があります。
代位求償との接続
貨物事故がMaritime perilによって発生し、貨物保険者が被保険者へ保険金を支払った場合でも、運送人、港湾作業者、倉庫業者その他の第三者が法律上の責任を負う可能性があります。
保険金支払の可否と第三者の賠償責任は、異なる契約及び法的基準によって判断します。
保険者が保険金を支払った後は、支払った範囲で被保険者の第三者に対する権利を代位取得することがあります。
そのため、事故発生後は、運送人への通知、貨物受領時の留保、サーベイ、写真、B/L、運送記録及び期限管理によって求償権を保全することが重要です。
制度適用の実務フロー
- 保険証券を確認する
被保険者、付保貨物、保険価額、輸送区間及び適用約款を確認します。 - Marine adventureを特定する
貨物、船舶、運賃、利益又は責任のどの利益が危険にさらされているかを整理します。 - 事故発生区間を確認する
輸出倉庫、陸上輸送、港湾、海上輸送、輸入倉庫又は配送中のどこで発生したかを確認します。 - 保険期間を確認する
事故時にICC第8条等による保険が開始し継続していたかを確認します。 - 事故原因を特定する
火災、衝突、転覆、海水侵入、盗難、投荷等の原因を整理します。 - Maritime perilとの関係を確認する
事故が海上航行に起因し又は付随する危険かを整理します。 - 適用ICCの担保構造を確認する
ICC(A)の広い担保か、ICC(B)(C)の列挙危険かを確認します。 - 戦争・ストライキ危険を分ける
標準ICCの免責と別途付帯された約款を確認します。 - 免責事項を確認する
故意、通常損耗、梱包不備、固有の瑕疵、遅延等を検討します。 - 証拠を確保する
写真、サーベイレポート、温度記録、事故報告及び輸送記録を収集します。 - 第三者責任を確認する
運送人、フォワーダー、倉庫業者等への通知と求償権保全を行います。 - 保険会社へ通知する
事故内容、発生区間、推定原因及び緊急措置を速やかに伝えます。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な論点 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 輸出倉庫から港までのトラック事故 | 陸上危険への拡張と保険開始 | 搬出記録、運送状、事故報告 | 保険証券上の輸送開始後か | 事故時刻と貨物移動開始時刻を確保する |
| 船積港倉庫で火災 | 通常輸送に付随する保管 | 搬入日、船積予定、火災報告 | 商業上の長期保管へ変わっていないか | 保管目的と予定船を確認する |
| 輸入港で通関待ち中に盗難 | 保険期間と盗難担保 | 荷卸日、通関記録、適用ICC | 保険継続中か、ICC(A)又は盗難特約があるか | 警察、保険会社及び倉庫へ通知する |
| 最終倉庫で荷卸し後に破損を発見 | 事故発生時期と保険終了 | 荷卸記録、開梱写真、受領書 | 輸送中の事故か荷卸し後の事故か | 外装状態と発見直後の証拠を保存する |
| 販売在庫倉庫で水濡れ | 通常輸送終了後の保管 | 在庫台帳、納品記録、保管目的 | 海上航海に付随する危険を離れていたか | 貨物保険以外の保管保険を確認する |
| 荒天でコンテナ内貨物が荷崩れ | Perils of the Seasと梱包・固縛 | 気象資料、梱包仕様、写真 | 異常な海象か通常輸送に耐えない梱包か | 気象及び固縛資料を確保する |
| 船上火災で貨物は無傷だが共同海損分担金を請求 | 共同海損と貨物の金銭的負担 | 共同海損宣言、保証状、精算資料 | 分担金が保険条件上填補対象か | 独自に支払わず保険会社へ通知する |
| 海賊による貨物奪取 | 海賊危険と適用約款 | 事件報告、適用ICC、戦争危険約款 | ICC(A)又は特別約款での担保を確認する | 保険者及び関係当局へ通知する |
| 貨物損害後に運送人へ請求 | 保険金支払と代位求償 | B/L、事故通知、サーベイ | 保険担保と運送人責任を分ける | 通知期限及び訴訟期限を管理する |
制度適用シナリオ1:輸出地側の陸上輸送中の事故
輸出者の倉庫から船積港へ向かうトラックが横転し、貨物が破損したとします。
MIA1906第2条は、海上航海に付随する陸上危険を海上保険契約へ拡張できることを定めています。
保険証券が輸出者の倉庫を始点とし、貨物が通常の海上輸送を開始するために倉庫内で動かされた後の事故であれば、保険期間内となる可能性があります。
ICC(A)では、免責事項に該当しない限り、トラック横転による偶然な損傷が検討対象となります。
ICC(B)及びICC(C)でも、陸上輸送用具の転覆は列挙危険に含まれます。
保険証券上の始点、貨物の移動目的、事故時刻及びトラック事故報告を確認します。
制度適用シナリオ2:輸入港での一時保管中の事故
貨物が本船から荷卸しされ、通関待ちのため港湾倉庫へ保管されている間に火災が発生したとします。
港湾倉庫での保管が通常の輸送過程に付随し、最終倉庫への輸送が継続する予定であれば、保険が継続している可能性があります。
ただし、本船からの荷卸完了後の経過期間、保管目的、最終倉庫への配送予定及びICC上の保険終了事由を確認する必要があります。
火災はICC(A)(B)(C)で基本的な担保危険ですが、火災が発生しただけで保険期間の問題が解消するわけではありません。
本船荷卸完了日、倉庫搬入日、通関状況、火災日時及び配送指示を確認します。
制度適用シナリオ3:配送センターへの搬入後の事故
輸入貨物が最終顧客への配送前に、荷主が選択した配送センターへ搬入され、複数の販売先向けに仕分けられた後に水濡れ損害が発生したとします。
配送センターが通常輸送上の単なる中継地点ではなく、仕分け、分配又は販売在庫保管のために選択された場所であれば、搬入時に保険が終了している可能性があります。
「一時保管」又は「配送前倉庫」という名称だけで判断することはできません。
貨物の支配目的、仕分け作業、在庫計上、配送先の確定状況及び保険証券上の目的地を確認します。
制度適用シナリオ4:CIF契約とL/C決済
CIF条件で機械を輸出し、売主が貨物保険を手配して、L/C条件に従い保険証明書を銀行へ提出したとします。
保険書類がL/C条件を満たして銀行に受理されても、その事実だけで、あらゆる貨物事故が担保されるわけではありません。
実際の事故では、売主又は買主の被保険利益、保険証券上の被保険者、適用ICC、事故発生時期及び保険金請求権の移転を確認します。
また、Invoice金額へ一定割合を加算した保険価額が設定されていても、販売機会喪失、違約金又は市況変動損失まで自動的に担保されるものではありません。
制度適用シナリオ5:海上危険による運賃の喪失
運送人が、貨物が目的地へ到着した場合にのみ運賃を取得できる契約を締結していたところ、船舶事故によって貨物が全損し、運賃を取得できなかったとします。
この場合、危険にさらされている利益は貨物そのものではなく、貨物の安全な到着に依存する運賃です。
MIA1906第3条第2項(b)は、このような運賃その他の金銭的利益がMaritime perilsによって危険にさらされる場合をMarine adventureに含めています。
ただし、貨物所有者が手配した通常の貨物保険から運送人の運賃損失が支払われるわけではありません。
運賃についての被保険利益及び専用の保険契約が必要です。
制度適用シナリオ6:海賊による貨物の奪取
航海中に船舶が海賊に襲撃され、貨物が奪取されたとします。
海賊はMIA1906第3条に列挙されるMaritime perilです。
しかし、MIA1906上のMaritime perilであるという理由だけで、すべての貨物保険から保険金が支払われるわけではありません。
ICC(A)では、全危険担保の構造、戦争危険免責の文言及びその他の免責事項を確認します。
ICC(B)及びICC(C)では、海賊又は一般的な盗難が通常の列挙危険に含まれていないため、特別約款の有無を確認する必要があります。
制度適用シナリオ7:火災事故と第三者責任
危険品コンテナから火災が発生し、同じ船舶上の他の貨物へ損害が拡大したとします。
自社貨物の損害は貨物海上保険で検討されます。
一方、自社貨物の性質又は申告不備によって他の貨物、船舶又は第三者へ損害を与えた場合には、第三者に対する賠償責任が別途問題となります。
MIA1906第3条第2項(c)は、Maritime perilsによって第三者責任を負う可能性もMarine adventureの一類型として示しています。
ただし、貨物海上保険は通常、自社貨物の物的損害を中心とするため、第三者責任については、フォワーダー責任保険、運送人責任保険又はその他の賠償責任保険を確認します。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 海上保険は港から港までの海上輸送だけを担保する | 契約条件により、海上航海に付随する陸上輸送及び一時保管を含むことがあります。 | 保険証券の始点、終点及びICC第8条を確認します。 |
| MIA1906第2条により、すべての陸上危険が自動的に担保される | 明示条件又は取引慣習による契約上の拡張が必要です。 | 実際の保険証券と約款を確認します。 |
| Warehouse to Warehouseなら倉庫内の事故はすべて担保される | 通常輸送に付随する保管と、販売在庫等の保管を区別します。 | 倉庫の名称ではなく保管目的を確認します。 |
| 本船荷卸し後は必ず60日間担保される | 最終倉庫での荷卸し等により、それ以前に保険が終了する場合があります。 | 最も早い保険終了事由を確認します。 |
| Marine adventureは船舶の航海だけを意味する | 貨物、運賃、利益、融資、立替金及び第三者責任も含まれ得ます。 | どの被保険利益を付保するかを特定します。 |
| Maritime perilに該当すれば必ず保険金が支払われる | 適用ICC、免責、保険期間及び近因を確認する必要があります。 | MIA1906の分類と契約上の担保を区別します。 |
| ICC(B)とICC(C)は海上で発生する事故をすべて担保する | ICC(B)(C)は第1条の列挙危険による損害を担保します。 | 事故原因が列挙危険に該当するか確認します。 |
| 戦争危険は海上危険なので標準ICCで担保される | 標準ICCでは戦争危険が原則として除外され、別約款で検討します。 | Institute War Clauses等の付帯を確認します。 |
| 海賊と戦争危険は常に同じ扱いになる | 約款上の海賊の扱いは戦争危険と同一とは限りません。 | 適用ICC及び戦争危険免責の文言を確認します。 |
| Barratryは船長又は船員のすべての過失を意味する | Barratryは不正目的を伴う故意の不正行為です。 | 通常の過失、操船ミス及び故意の不正を区別します。 |
| 貨物保険に加入すれば運賃や期待利益もすべて担保される | 貨物、運賃及び利益は異なる被保険利益です。 | 保険証券上の対象及び評価額を確認します。 |
| 貨物保険が支払われれば運送人の責任も確定する | 貨物保険の担保判断と運送人責任は別の問題です。 | B/L、適用法、免責及び責任制限を別途確認します。 |
実務判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険を手配するとき | 保険会社又は保険代理店 | 付保対象、保険区間、適用ICC及び特別約款 | 輸送経路と保険条件を文書で確定する |
| 輸送開始を確認するとき | 荷主、倉庫、フォワーダー | 貨物を初めて動かした目的、時刻及び積込車両 | 搬出・積込記録を保存する |
| 陸上輸送中に事故が発生したとき | 運送人、保険会社 | 保険期間、事故原因及び適用ICC | 事故証明、写真及び運送状を取得する |
| 港湾で保管するとき | フォワーダー、倉庫、保険会社 | 保管目的、期間、予定船及び輸送継続性 | 長期化又は目的変更を保険会社へ通知する |
| 輸入港で貨物が滞留するとき | 通関業者、フォワーダー、保険会社 | 本船荷卸日、通関状況、最終配送予定 | 保険終了日を事前に確認する |
| 最終倉庫へ納品するとき | 配送業者、荷受人 | 荷卸完了時刻、外装状態及び受領留保 | 異常があれば受領書へ留保を記載する |
| 配送センターを利用するとき | 荷主、物流担当者、保険会社 | 中継輸送か、仕分け・分配・在庫保管か | 必要に応じて保険期間の延長又は保管担保を手配する |
| Maritime perilを確認するとき | Surveyor、運送人、保険会社 | 事故原因、航海との関係及び近因 | 事故原因別に証拠を整理する |
| 戦争・海賊・拿捕が問題となるとき | 保険会社、必要に応じて弁護士 | 事故類型、適用免責及び別約款 | 標準ICCと戦争危険約款を分けて確認する |
| 共同海損の通知を受けたとき | 船会社、共同海損精算人、保険会社 | 保証状、分担価額、分担金及び担保条件 | 独自に保証・支払を行わず保険会社へ連絡する |
| 第三者へ求償するとき | 運送人、フォワーダー、保険会社 | 責任主体、B/L、通知期限及び時効 | 権利留保通知を速やかに行う |
| 保険金を請求するとき | 保険会社又は保険代理店 | Marine adventure、担保危険、保険期間、免責及び損害額 | 各判断項目と証拠を対応させて提出する |
Marine adventureと被保険利益を混同しない
Marine adventureに関係する経済的利益であっても、当然にそのすべてが一つの保険契約へ含まれるわけではありません。
被保険者は、貨物、運賃、利益、融資、立替金又は第三者責任について、法律上又は経済上の被保険利益を有し、その利益を保険契約の対象として適切に特定する必要があります。
貨物所有者が貨物について被保険利益を有していても、運送人の未収運賃又はフォワーダーの第三者責任について被保険利益を有するとは限りません。
Marine adventureは保険可能な利益の範囲を理解するための基本概念であり、実際の被保険利益、保険価額及び契約上の担保対象は個別に確認します。
Maritime perilsと担保危険を混同しない
Maritime perilsは、MIA1906第3条が示す海上航行に関連する危険の法的な分類です。
担保危険は、保険証券及び適用約款によって、保険者が実際に引き受けた危険です。
ICC(A)では広い危険を対象とする一方、免責事項が適用されます。
ICC(B)及びICC(C)では、事故原因が第1条の列挙危険に該当することが必要です。
戦争危険、ストライキ危険その他の危険については、標準ICCとは別の約款又は特別条件を確認します。
まとめ
MIA1906第1条は、海上保険契約を、保険者が合意された方法及び範囲に従って、Marine adventureに付随する海上損害を填補する契約として定義しています。
MIA1906第2条は、海上保険契約が、明示の条件又は取引慣習によって、内陸水路及び海上航海に付随する陸上危険へ拡張できることを定めています。
ただし、第2条だけによってすべての陸上危険が自動的に担保されるわけではありません。保険証券、ICC、特別約款、輸送経路及び保険期間を確認する必要があります。
標準ICCの倉庫間担保では、通常の輸送開始から最終目的地までの輸送を一体として扱いますが、最終倉庫での荷卸し、通常輸送以外の保管又は分配目的の倉庫への搬入等によって保険が終了することがあります。
本船荷卸し後の時間制限は、最終倉庫への搬入後も一律に担保を延長する期間ではありません。該当する保険終了事由のうち最も早い時点を確認します。
MIA1906第3条のMarine adventureには、船舶及び貨物だけでなく、運賃、手数料、利益、前払金、融資、立替金その他の金銭的利益及び第三者に対する責任が含まれ得ます。
ただし、Marine adventureに含まれる利益が一つの貨物保険へ自動的に含まれるわけではありません。被保険利益及び保険契約上の対象を個別に特定します。
Maritime perilsには、海固有の危険、火災、戦争危険、海賊、盗賊、捕獲、拿捕、拘束、投荷及びBarratry等が含まれます。
MIA1906上のMaritime perilと、ICC上の担保危険は同一ではありません。ICC(A)は広い担保構造、ICC(B)(C)は列挙危険方式であり、戦争危険等には別約款が必要となることがあります。
共同海損では、貨物自体に損害がなくても分担金の負担が発生することがあります。貨物保険者が保険金を支払った場合には、第三者に対する代位求償も別途問題となります。
貨物事故が発生した場合は、Marine adventure、付保対象、事故発生区間、保険期間、事故原因、適用ICC、免責事項、特別約款及び第三者責任を分けて整理することが重要です。
個別事故の担保可否又は保険終了時期に疑義がある場合は、保険証券、輸送記録、事故資料及び保管目的を整理したうえで、保険会社、保険代理店又は海上保険に詳しい専門家へ確認する必要があります。
