On Deck Cargo Clause(貨物海上保険の甲板積み特約)
On Deck Cargo Clauseとは
On Deck Cargo Clauseとは、貨物が本船の甲板上に積載される場合に、貨物保険上どのような条件で取り扱うかを整理するための特別条件です。
通常の貨物保険は、貨物が予定された通常の輸送方法によって運送されることを前提として引き受けられます。しかし、貨物の大きさ、重量、形状、船型、航路又は積付事情によっては、貨物が船倉内ではなく甲板上へ積載されることがあります。
甲板積み貨物は、海水、波浪、風雨、日射、塩分、荒天、船体動揺、ラッシング不備、積付不備、投荷及び流失等の影響を受けやすくなります。
そのため、在来船等で大型機械、重量物又は裸貨物を甲板上へ積載する場合には、通常の船倉内積載とは異なる保険条件、梱包、防水、養生、積付及びラッシングの確認が必要です。
一方、コンテナ船において船会社の積付裁量によりコンテナが甲板上へ積載される場合は、在来船の裸貨物による甲板積みと同じではありません。Underdeck or On-deck Clause、B/L約款及び通常のコンテナ輸送条件との関係を確認します。
On Deck Cargo Clauseという名称だけで補償範囲が一律に決まるわけではありません。実際の取扱いは、保険証券、特別約款、Warranty、申告内容、貨物の状態及び事故原因によって異なります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 別に確認すべき内容 |
|---|---|---|
| On Deck Cargo Clause | 甲板積み貨物を貨物保険上どのように取り扱うかという基本的な考え方 | 個別の保険証券、特別約款、保険会社の引受判断及び保険料 |
| 在来船の甲板積み | 裸貨物、大型機械、重量物及び長尺貨物を甲板上へ直接積載する場合 | 本船構造、積付計画、ラッシング計算及び船級上の要件 |
| コンテナ船の甲板上コンテナ | 船会社の積付裁量によってコンテナが甲板上へ積載される場合との区別 | B/L約款、Underdeck or On-deck Clause及び船会社の通常運送条件 |
| Warranty | 防水、梱包、養生、積付、ラッシング及び船積方法に関する条件 | Insurance Act 2015、準拠法、契約上の修正及び個別約款文言 |
| B/L表示 | On Deck、Shipped on Deck、Carried on Deck等の表示がある場合の実務上の確認 | L/C条件、銀行書類審査、運送人責任及び売買契約 |
| 海水濡れ・錆・流失 | 甲板積みに特有又は増加しやすい損害と事故原因の切り分け | 担保危険、免責、梱包不備、固有の性質及び損害査定 |
| 投荷 | 船舶及び共同の安全のため貨物が投棄される場合の基本整理 | 船長判断、航海記録、B/L約款及び運送人への求償 |
| 共同海損 | 投荷又は異常な費用が共同海損となるための基本要件 | York-Antwerp Rules、共同海損保証状、供託金及び精算 |
| フォワーダーの関与 | 保険申告、荷主説明、B/L手配及び積付条件伝達に関する関与範囲 | 個別契約、賠償責任、責任制限及び求償の最終判断 |
| 証拠保全 | 船積写真、積付図、ラッシング記録、荒天記録及びサーベイ資料の整理 | 訴訟手続、証拠開示、海事鑑定及び専門家意見 |
甲板積み貨物とは
甲板積み貨物とは、本船の船倉内ではなく、甲板上に積載される貨物をいいます。英語ではDeck Cargo又はOn Deck Cargoと呼ばれます。
甲板積みになりやすい貨物には、次のものがあります。
- 大型機械、変圧器、発電設備及びプラント機器
- 重量物、長尺貨物、鋼材及びパイプ類
- 木材、建設資材及び大型構造物
- 特殊車両、建設機械及び作業機械
- 船倉内へ収容できない高さ又は幅を有する貨物
- ヨット、ボート及び船舶関連設備
- フラットラック又はオープントップコンテナに積載された特殊貨物
- コンテナ船の甲板上へ積載される通常のコンテナ
甲板上へ直接積載される貨物は、波しぶき、海水、雨、風、紫外線及び塩分へさらされる可能性が高くなります。
また、船体動揺及び荒天による外力を直接受けるため、貨物の重量、重心、支持方法、固縛点及びラッシング強度が重要になります。
船積前の判断フロー
- 貨物の積載方法を確認する
裸貨物、梱包貨物、フラットラック、オープントップ又は通常コンテナのいずれかを確認します。 - 本船の種類を確認する
在来船、多目的船、重量物船、RO-RO船又はコンテナ船のいずれかを確認します。 - 甲板積みの予定又は可能性を確認する
Booking、船会社回答、積付計画及びB/L案を確認します。 - 保険会社へ申告する
貨物、航路、本船、梱包、積付及びラッシング条件を提示します。 - 適用条件を確認する
On Deck Cargo Clause、Underdeck or On-deck Clause、Warranty、免責及び追加保険料を確認します。 - 梱包・防水・養生を確認する
海水、風雨、塩分及び日射を前提とした仕様か確認します。 - 積付・ラッシング計画を確認する
積付図、支持方法、ラッシング計算、固縛点及び作業主体を確認します。 - B/L表示を確認する
On Deck等の表示及びL/C・売買契約への影響を確認します。 - 責任分担を文書化する
荷主、フォワーダー、船会社、荷役業者及びサーベイヤーの役割を整理します。 - 船積時の証拠を確保する
船積写真、ラッシング記録、積付図及び検査報告を保存します。
船倉内積載と甲板積みの違い
| 項目 | 船倉内積載 | 甲板積み | 実務上の確認点 |
|---|---|---|---|
| 外部環境 | 波浪、風雨及び日射の直接的な影響を受けにくい。 | 海水、雨、風、塩分及び日射の影響を受けやすい。 | 防水、防錆、カバー、密閉及び排水対策を確認します。 |
| 主な損害 | 衝突、荷崩れ、濡損、盗難等の通常の輸送リスクが中心となる。 | 海水濡れ、錆、流失、落下、投荷及びラッシング損害が増加する。 | On Deckを前提とした担保条件を確認します。 |
| 積付・固定 | 船倉構造及び周辺貨物による保護を受ける場合がある。 | 荒天及び船体動揺を前提とした強固な支持・固縛が必要となる。 | 積付図、ラッシング計算及び船積写真を確保します。 |
| 梱包 | 通常の海上輸送を前提とした梱包が使用される。 | 外気、海水及び紫外線へ対応する追加梱包が必要となる場合がある。 | 防水層、防錆材、真空梱包及び排水構造を確認します。 |
| B/L表示 | 通常、特別な甲板積み表示を要しない。 | On Deck、Shipped on Deck等が表示される場合がある。 | L/C、売買契約及び保険条件への影響を確認します。 |
| 保険引受 | 通常条件で引き受けられる場合が多い。 | 特別約款、Warranty、免責又は追加保険料が設定される場合がある。 | 船積前に保険会社又は保険代理店へ相談します。 |
在来船の甲板積みとコンテナ船の甲板上コンテナ
| 比較項目 | 在来船等の甲板積み貨物 | コンテナ船の甲板上コンテナ | 保険上の主な確認 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 貨物の状態 | 裸貨物、大型梱包、重量物又は長尺貨物が直接積載される。 | 貨物は原則としてコンテナ内部へ収納される。 | 貨物自体が外部環境へ直接さらされるか確認する。 | 「甲板上」という事実だけで同一に扱いません。 |
| 積付の性質 | 特定貨物について個別に甲板積みが計画される。 | 船会社が通常運航上の裁量で積載位置を決める場合がある。 | 個別申告が必要な甲板積みか、通常のコンテナ運送か確認する。 | Booking条件とB/L約款を確認します。 |
| 外部からの保護 | 梱包及び養生が貨物保護の中心となる。 | コンテナ外板が一定の保護を提供する。 | コンテナの種類、状態及び貨物の収納方法を確認する。 | コンテナ内への浸水や流失リスクは残ります。 |
| 主な事故 | 海水濡れ、錆、荷崩れ、ラッシング破断、投荷 | コンテナ流失、コンテナ損傷、浸水、庫内荷崩れ | 事故原因と適用約款を確認する。 | ラッシング主体及び責任区間を区別します。 |
| B/L表示 | On Deck表示が明示されることがある。 | 船会社約款により甲板上又は船倉内の選択権が定められる場合がある。 | 個別表示と一般約款の双方を確認する。 | L/C書類条件との整合を確認します。 |
| 典型的な保険条件 | On Deck Cargo Clause及び個別Warrantyが問題となりやすい。 | Underdeck or On-deck Clause又は通常のコンテナ条件が問題となる。 | 名称ではなく実際の約款文言を確認する。 | 保険会社ごとに取扱いが異なる場合があります。 |
On Deck Cargo ClauseとUnderdeck or On-deck Clauseの違い
On Deck Cargo Clauseは、貨物が甲板上へ積載されることを重要な前提として、甲板積みに伴う増加危険、担保範囲、免責、梱包及びラッシング条件等を定めるために使用されます。
特に在来船、多目的船又は重量物船へ裸貨物や大型貨物を積載する場合には、個別の甲板積み条件が問題になります。
これに対し、Underdeck or On-deck Clauseは、主にコンテナ入り貨物について、船会社が船倉内又は甲板上のいずれへ積載しても、約定された条件に従って取り扱うために使用されることがあります。
ただし、約款名称及び文言は保険会社や契約によって異なります。名称だけで補償範囲を判断せず、次の事項を確認します。
- 対象が通常コンテナ貨物か、特殊コンテナ又は裸貨物か
- 流失、投荷、海水濡れ、錆及び荒天損害の取扱い
- 梱包、積付及びラッシングに関する条件
- 免責金額及び責任限度
- 本船、航路又は船齢に関する条件
- 保険会社への事前申告又は承認の要否
B/L表示との関係
甲板積み貨物では、B/L又はWaybill上の表示が重要になります。
使用される可能性がある表示には、次のものがあります。
- On Deck
- Shipped on Deck
- Carried on Deck
- Stowed on Deck
- At Shipper’s Risk
これらの表示がある場合、貨物が甲板上へ積載される事実、運送人責任の取扱い又は特別なリスク分担が示されている可能性があります。
ただし、表示の法的効果は、B/L約款、準拠法、国際条約及び具体的な文言によって異なります。
CIF又はCIP取引、L/C決済及び銀行提出書類が関係する場合は、On Deck表示が売買契約又は信用状条件に適合するかを確認します。
保険上の申告義務とB/L上の表示は同じ問題ではありません。B/LにOn Deck表示がない場合でも、実際に個別の甲板積みが予定されていることを把握している場合は、保険会社への説明が必要となることがあります。
Warrantyとして定められる条件
On Deck貨物では、防水、梱包、養生、積付、ラッシング及び船積方法等が、保険契約上のWarranty又はその他の条件として定められる場合があります。
| 条件 | 具体的な内容 | 確認資料 | 不履行時に問題となる事項 |
|---|---|---|---|
| 防水条件 | 防水シート、密閉梱包、防水層又は排水対策を設ける。 | 梱包仕様書、写真、検査報告 | 海水濡れ又は雨濡れとの因果関係 |
| 防錆条件 | 防錆油、乾燥剤、バリア梱包又は真空梱包を使用する。 | 防錆仕様、施工記録、材料証明 | 錆の原因が塩分か、結露か、通常酸化か |
| ラッシング条件 | 指定された強度、方法又は専門業者によって固縛する。 | ラッシング計算、作業記録、写真 | 移動、落下又は流失との関係 |
| 積付条件 | 指定位置、支持台、荷重分散及び周辺空間を確保する。 | 積付図、船体計画、サーベイ報告 | 積付不備又は船体構造との関係 |
| サーベイ条件 | 船積前又は船積時に指定サーベイヤーの検査を受ける。 | Survey Report、承認書、検査記録 | 検査未実施又は指摘事項未是正の効果 |
| 本船条件 | 特定の船型、船齢、船級又は航路条件を満たす。 | 本船明細、船級資料、航海計画 | 申告内容と実際の本船条件の相違 |
Warranty違反の法的効果
Marine Insurance Act 1906の旧来の原則では、Warranty違反が発生すると、原則として保険者は違反時点以後の責任を免れるものと整理されていました。
しかし、英国法ではInsurance Act 2015によってこの取扱いが変更されています。
Insurance Act 2015 Section 10の下では、Warranty違反によって保険者の責任が永久に消滅するのではなく、原則として違反が継続している間、保険者の責任が停止します。
違反が是正可能な性質であり、適切に是正された場合は、その後の損害について保険者の責任が再開する可能性があります。ただし、違反中に発生した損害又は違反中の事情に起因する損害については、保険者が責任を負わないことがあります。
また、Insurance Act 2015 Section 11が適用される条件では、被保険者が、条件不履行によって実際に発生した種類、場所又は時期の損害リスクが増加し得なかったことを示した場合、保険者がその不履行へ依拠できないことがあります。
例えば、甲板積み貨物の防水Warrantyへ違反し、その貨物に海水濡れが生じた場合は、違反と損害の関連性が重大な問題になります。
一方、同じ貨物が陸上輸送中の交通事故によって破損した場合は、甲板積み防水条件と実際の損害との関係を別に検討する必要があります。
ただし、非消費者保険では契約によってInsurance Act 2015の一部と異なる取扱いが定められる場合があります。準拠法、契約文言、説明の透明性及び個別の事実関係を確認する必要があります。
甲板積みで発生しやすい損害
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 大型機械が海水濡れとなった。 | 波しぶき、荒天、防水シート破損、排水不良 | 船積写真、梱包仕様、気象記録、サーベイ | 海上危険か、防水・養生不備か | 開梱を制限し、塩分検査と防錆措置を行います。 |
| 鋼材又は機械部品に錆が発生した。 | 海水、塩分、結露、防錆処理不足 | 塩分反応、防錆記録、温湿度、梱包状態 | 外来の海水か、通常酸化又は固有の性質か | 錆の進行を防ぎ、原因別に資料を保存します。 |
| 貨物が甲板上で移動又は転倒した。 | 船体動揺、ラッシング破断、支持台不良 | 積付図、ラッシング計算、船積写真、航海記録 | 荒天の程度と固定方法の妥当性 | 現状を保存し、ラッシング部材を確保します。 |
| 貨物又はコンテナが流失した。 | 荒天、固縛破断、積付不備、構造破損 | 本船報告、ラッシング記録、気象資料、積付位置 | 海上危険、ラッシング責任及び運送人責任 | 船会社へ直ちにクレーム通知を行います。 |
| 貨物が投荷された。 | 船舶及び共同の安全を確保するための船長判断 | 船長報告、Logbook、共同海損宣言、航海記録 | 共同海損行為の要件を満たすか | 保険会社へ通知し、共同海損書類を確認します。 |
| 防水カバーが破れ、雨水が侵入した。 | カバー強度不足、固定不良、長期航海 | カバー仕様、施工写真、破断状況 | Warranty、梱包不備及び事故原因との関係 | 濡損範囲とカバー破損状況を記録します。 |
| 木箱内部で結露が発生した。 | 温度差、含水率、乾燥剤不足、密閉不良 | 梱包仕様、含水率、温湿度、航路 | 外来の水濡れか、結露・固有の性質か | 水分の種類と発生機序を調査します。 |
| 船積時の荷役で貨物が損傷した。 | 吊上げ方法、クレーン操作、吊具不適合 | 荷役計画、吊上げ図、写真、作業記録 | 甲板積み危険か、荷役事故か | 荷役業者と船会社へ事故通知を行います。 |
| フラットラック貨物が変形した。 | ラッシング過大、支持点不良、船体動揺 | 固縛計画、支持位置、貨物図面、サーベイ | 貨物強度とラッシング荷重の適合性 | 変形部と固縛点を測定・記録します。 |
| 甲板積みの事実が保険会社へ申告されていなかった。 | Booking情報不足、連絡漏れ、認識相違 | 見積依頼、メール、保険申込、B/L案 | 申告事項、Warranty及び事故原因への影響 | 事実経過を時系列で整理し、直ちに通知します。 |
投荷と共同海損
Jettisonとは、船舶、積荷及び航海上の共同の安全を確保するため、貨物等を意図的に船外へ投棄する行為をいいます。
しかし、貨物が船外へ投棄されたという事実だけで、当然に共同海損となるわけではありません。
共同海損行為として整理されるためには、一般に次の要素を確認します。
- 船舶及び積荷が共同の危険に直面していたこと
- 通常の運送過程を超える異常な犠牲又は費用であること
- 共同の安全のために行われたこと
- 意図的に行われたこと
- 措置が合理的であったこと
- 適用される準拠法及び共同海損規則上の要件を満たすこと
投荷された甲板積み貨物の取扱いは、甲板積みが適法又は契約上認められていたか、B/L表示、航路上の慣行及び適用される共同海損規則によっても影響を受ける可能性があります。
共同海損が宣言された場合、貨物の引渡し前にGeneral Average Bond、保険会社による保証状又は供託金を求められることがあります。
貨物保険上の損害請求、共同海損分担及び船会社等への求償は別々の手続となる場合があるため、早期に保険会社又は海事専門家へ連絡します。
Practical Example 1 大型変圧器が甲板上で海水濡れとなった場合
日本から東南アジアへ輸送された大型変圧器200,000,000円相当が、多目的船の甲板上へ積載されたとします。
貨物は木箱及び防水シートで養生されていましたが、航海中の荒天によって防水シートが破れ、木箱内部へ海水が侵入しました。
到着後、変圧器内部から塩分が検出され、分解洗浄、防錆処理、絶縁試験及びメーカー技術者による再検査が必要となりました。
この場合、On Deckとして適切に申告されていたか、防水及びサーベイに関するWarrantyがあったか、実際の梱包が条件を満たしていたかを確認します。
また、荒天による外来海水の侵入と、防水シートの設計・固定不良のどちらが損害の主要原因であったかを、船積写真、気象記録及びサーベイレポートから整理します。
Practical Example 2 コンテナ船からコンテナが流失した場合
欧州から日本へ輸送された機械部品30,000,000円相当が通常のドライコンテナへ収納され、コンテナ船の甲板上へ積載されたとします。
航海中の荒天によって複数のコンテナが流失し、対象コンテナも回収不能となりました。
この場合、在来船における裸貨物の甲板積みとは異なり、B/L約款上、船会社に甲板上又は船倉内の積付裁量が認められていたか、Underdeck or On-deck Clauseが適用されていたかを確認します。
事故原因については、荒天の異常性、コンテナラッシング、積付位置及び本船側の固縛管理を確認します。
貨物保険請求と並行して、船会社へのクレーム通知及び求償権保全を行います。
Practical Example 3 甲板積み貨物が投荷された場合
重量物船が航海中に機関故障と荒天へ遭遇し、復原性及び船舶の安全を確保するため、船長が甲板上の建設機械50,000,000円相当を投荷したとします。
投荷後、本船と残存貨物は避難港へ到着し、船会社から共同海損が宣言されました。
この場合、投荷が共同の危険に対処するため、意図的かつ合理的に行われた異常な犠牲であったかを確認します。
船長報告、航海日誌、気象記録、復原性資料及び共同海損宣言が重要な証拠となります。
貨物保険上の投荷損害、共同海損手続及び運送人責任は、それぞれ別の観点から確認します。
Practical Example 4 On Deck表示がL/C書類で問題になった場合
CIF条件で輸出された大型プラント部品100,000,000円相当について、売主が貨物保険を手配し、代金決済には信用状が使用されていたとします。
船会社が発行したB/LにはShipped on Deckとの表示がありましたが、信用状では甲板積み表示を認める条件が明確にされていませんでした。
その結果、銀行による書類審査で不一致が指摘され、代金回収が遅れました。
この場合、保険上のOn Deck申告、売買契約、信用状条件及びB/L表示は、それぞれ別の問題として確認します。
保険が適切に手配されていても、信用状条件への不適合が自動的に解消されるわけではありません。Booking前にB/L表示の予定を確認することが重要です。
フォワーダーの関与範囲
本記事で使用する五分類は、法令又は業界全体で確立された分類ではありません。本シリーズにおいて、甲板積み貨物に対するフォワーダーの関与範囲を整理するための分析上の枠組みです。
| 標準五分類 | On Deck貨物への主な関与 | 主な確認資料 | 責任範囲を判断する際の注意点 |
|---|---|---|---|
| Simple Intermediary(単純取次) | 船会社の甲板積み条件、B/L表示及び保険確認事項を荷主へ伝達する。 | 取次メール、Booking回答、荷主への通知 | 情報を取り次いだだけで、積付又は保険金支払を保証するものではありません。 |
| Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) | 貨物輸送サービスとして集荷、船積、海上輸送又は配送を引き受ける。 | 運送契約、見積書、運送指示、事故記録 | 甲板積みが含まれる受託区間及び説明内容を確認します。 |
| NVOCC / House B/L Issuer | House B/Lを発行し、契約運送人として甲板積み条件及び事故対応を整理する。 | House B/L、約款、Master B/L、Booking | 貨物保険の担保判断と運送人責任は分けて確認します。 |
| Door-to-Door Single Contractor | 梱包、集荷、船積、海上輸送、荷卸し及び納品を一体的に手配する。 | 一貫輸送契約、業務範囲、下請契約 | 一体手配であっても、保険金額又は間接損害まで無制限に負担するものではありません。 |
| Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) | 船積サーベイ、積付図確認、ラッシング、保険通知又は求償を個別に調整する。 | 個別委任、作業依頼、調整記録 | 委任範囲を超えて、積付承認、補償可否又は責任を決定することはできません。 |
Contracting Carrier及びActual Carrierは、運送人責任に関する法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換える分類ではありません。
また、梱包、養生、積付、ラッシング、荷役、サーベイ及び保険通知等の実作業は、それ自体で第六の分類を構成するものではありません。誰のために、どの契約上の地位で、どこまで引き受けたかを確認します。
よくある誤解
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 実務上の対応 |
|---|---|---|
| コンテナ船の甲板積みと在来船の裸貨物は同じである。 | 通常コンテナの積付裁量と、個別に計画された裸貨物の甲板積みは異なります。 | 貨物形態、本船及び適用約款を確認します。 |
| B/LにOn Deck表示がなければ保険会社への申告は不要である。 | 実際の積付予定及び引受時に提供した情報が重要です。 | Booking、船会社回答及び保険申込を確認します。 |
| On Deck Cargo Clauseがあれば全損害が補償される。 | 担保範囲、免責、Warranty及び事故原因によって異なります。 | 約款文言と損害原因を照合します。 |
| 海水濡れであれば必ず保険金が支払われる。 | 梱包不備、固有の性質、Warranty及び申告内容も問題になります。 | 海水侵入経路と保険条件を確認します。 |
| Warranty違反があれば保険契約は永久に無効になる。 | 現行英国法では、原則として違反中の責任停止として整理されます。 | Insurance Act 2015、契約文言及び違反是正を確認します。 |
| Warranty違反が損害と無関係でも必ず免責になる。 | Section 11が適用される場合は、実際の損害リスクとの関係が問題になります。 | 条件の目的と実際の損害原因を整理します。 |
| ラッシングは船会社だけの責任である。 | 荷主、フォワーダー、荷役業者又は専門業者が関与する場合があります。 | 指示者、作業者及び確認者を特定します。 |
| 投荷された貨物は必ず共同海損になる。 | 共同の危険、異常な犠牲、意図性及び合理性等の要件を確認します。 | 船長報告及び共同海損宣言を確認します。 |
| 共同海損になれば運送人責任は問題にならない。 | 共同海損分担と運送人責任・求償は別の問題です。 | 保険請求と求償権保全を並行します。 |
| フォワーダーがOn Deck貨物の補償可否を決定できる。 | 最終的な補償判断は保険会社が約款と事実関係に基づいて行います。 | 資料を整理し、保険会社又は保険代理店へ確認します。 |
荷主との事前契約で整理すべき事項
- 甲板積みになる可能性及び予定の有無
- 荷主又は被保険者へのOn Deck条件の説明
- 保険会社への申告及び承認の担当者
- On Deck Cargo Clause又はUnderdeck or On-deck Clauseの適用
- B/L上のOn Deck表示の取扱い
- 梱包、防水、防錆及び養生の責任分担
- 積付計画、支持台及びラッシングの責任分担
- 船積サーベイの要否及び費用負担
- 船積写真及びラッシング記録の保存
- 事故発見時の通知先及び通知期限
- サーベイ、応急措置及び残存物処分の権限
- 船会社、荷役業者及び下請業者への求償協力
- 共同海損が宣言された場合の対応
- 海事弁護士又は専門家費用の取扱い
事故処理チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 事故発見直後 | 貨物所有者、倉庫、フォワーダー、現地代理店 | 濡損、錆、破損、変形、流失及び数量不足 | 写真、動画、開梱記録及び受領記録を確保します。 |
| 積載状態確認時 | 船会社、船積代理店、NVOCC | 実際に甲板積みであったか、積載位置はどこか | 積付図、Booking及び本船記録を取得します。 |
| B/L確認時 | 船会社、NVOCC、荷主、銀行 | On Deck、Shipped on Deck等の表示及び約款 | 保険、L/C及び運送人責任への影響を確認します。 |
| 保険条件確認時 | 保険会社、保険代理店、被保険者 | On Deck申告、適用約款、Warranty、免責及び限度額 | 申告経緯と事故原因を時系列で整理します。 |
| 梱包確認時 | 荷主、梱包業者、サーベイヤー | 防水、防錆、養生、木箱及び排水構造 | 仕様書と実際の施工状態を比較します。 |
| 積付・ラッシング確認時 | 船会社、荷役業者、専門業者、サーベイヤー | 積付図、支持台、固縛方法、計算及び作業記録 | 積付不備、ラッシング不備及び船体側要因を分けます。 |
| 航海状況確認時 | 船会社、本船、気象情報提供者 | 荒天、波高、風力、船体動揺及び航路変更 | 海上危険の程度と予見可能性を確認します。 |
| 投荷確認時 | 船会社、船長、共同海損精算人 | 共同の危険、投荷理由、共同海損宣言 | 保険会社へ通知し、保証状等を手配します。 |
| サーベイ時 | サーベイヤー、メーカー、修理業者 | 損害原因、範囲、応急措置及び修理可能性 | 保険請求と求償の双方に使用できる資料を作成します。 |
| 求償時 | 船会社、荷役業者、フォワーダー、保険会社 | 責任区間、責任制限、通知期限及び時効 | 期限内に書面でクレーム通知を行います。 |
| 責任切り分け時 | 荷主、フォワーダー、船会社、専門家 | 誰が申告、指示、作業及び確認を行ったか | 契約書、見積条件及び通信記録を照合します。 |
証拠として重要になる資料
| 資料 | 確認できること | 実務上の目的 |
|---|---|---|
| 保険証券・特別約款 | On Deck条件、Warranty、免責、限度額及び申告内容 | 補償条件と事故原因を照合します。 |
| B/L・Waybill | On Deck表示、運送条件、契約運送人及び約款 | 運送契約上の積付及び責任を確認します。 |
| Booking Confirmation | 船積予定、本船、貨物形態及び甲板積み条件 | 船積前に甲板積みを把握していたか確認します。 |
| 船積指示書・作業指示書 | 積付、ラッシング、防水及び養生の指示内容 | 指示者及び作業範囲を特定します。 |
| 梱包仕様書 | 防水、防錆、木箱、乾燥剤及び密閉構造 | 梱包の適合性と損害原因を確認します。 |
| 積付図 | 甲板上の積載位置、支持方法及び周辺貨物 | 積付不備又は外力の影響を確認します。 |
| ラッシング計算・記録 | 固縛強度、固縛点、使用部材及び作業結果 | ラッシング不備及び流失原因を検討します。 |
| 船積写真・動画 | 船積時の貨物、梱包、養生及び固縛状態 | 事故前状態を確認します。 |
| 荒天記録・航海日誌 | 波浪、風力、船体動揺、航路及び事故時刻 | 海上危険と損害との因果関係を確認します。 |
| 船長報告・本船事故報告 | 流失、投荷、ラッシング破断及び応急措置 | 事故原因と共同海損の判断資料とします。 |
| 共同海損宣言・保証書類 | 共同海損手続、担保要求及び精算人 | 貨物引渡しと分担手続へ対応します。 |
| サーベイレポート | 損害原因、損害範囲、修理費及び求償可能性 | 保険請求と第三者求償の基礎資料とします。 |
| 荷主との契約・見積条件 | On Deck説明、保険手配及び責任分担 | フォワーダーの受託範囲を確認します。 |
| 通信記録 | 申告、説明、指示、承認及び事故通知の経緯 | 関係者の認識と時系列を確定します。 |
海事弁護士を利用すべき場面
On Deck貨物の事故では、貨物保険だけでなく、B/L約款、運送人責任、ラッシング責任、共同海損、投荷及び責任制限が同時に問題となることがあります。
特に、次の場面では早期に海事弁護士又は専門家の関与を検討します。
- 損害額が高額である場合
- 貨物又はコンテナが流失した場合
- 投荷又は共同海損が宣言された場合
- B/L上のOn Deck表示又は責任免除が争点となる場合
- 船会社、荷役業者又はラッシング業者への求償が必要な場合
- 保険会社がWarranty又は申告不備を問題としている場合
- 荷主からフォワーダーへ賠償請求が行われた場合
- 求償期限又は提訴期間が迫っている場合
- 複数国の準拠法又は裁判管轄が関係する場合
実務上のポイント
On Deck Cargo Clauseは、甲板積み貨物の増加危険及び補償条件を整理するための特別条件です。
在来船等における裸貨物・大型貨物の甲板積みと、コンテナ船における通常コンテナの甲板上積載は分けて確認します。
甲板積み貨物では、海水濡れ、錆、流失、投荷、ラッシング不備及び積付不備が問題となるため、事故後ではなく船積前に保険会社へ申告することが重要です。
Warranty違反の効果については、Marine Insurance Act 1906の旧来の取扱いだけで判断せず、Insurance Act 2015 Sections 10及び11、契約上の修正並びに具体的な損害原因を確認します。
投荷が行われても、自動的に共同海損になるわけではありません。共同の危険、異常な犠牲、共同の安全、意図性及び合理性等の要件を確認します。
フォワーダー又はNVOCCは、保険金支払又は共同海損の成立を決定する立場ではありません。甲板積みの事実、申告内容、B/L表示、梱包、積付、ラッシング、航海状況及び事故記録を整理し、荷主へ保険会社、保険代理店又は海事専門家への確認を促します。
まとめ
On Deck Cargo Clauseとは、貨物が本船の甲板上へ積載される場合の貨物保険上の取扱いを定めるための特別条件です。
甲板積み貨物は、船倉内積載と比べて海水、波浪、風雨、塩分、荒天及び船体動揺の影響を受けやすく、海水濡れ、錆、移動、落下、流失及び投荷等のリスクが増加します。
在来船へ裸貨物や大型貨物を直接甲板積みする場合と、コンテナ船で通常コンテナが甲板上へ積載される場合は、貨物の保護状態、船会社の積付裁量、B/L約款及び保険条件が異なります。
保険実務では、On Deckであることの申告、適用約款、Warranty、B/L表示、梱包、防水、防錆、積付及びラッシングを船積前に確認する必要があります。
現行英国法上、Warranty違反は原則として保険者の責任を永久に消滅させるものではなく、違反中の責任停止として整理されます。違反の是正及び実際の損害との関連性も確認します。
投荷が共同海損となるためには、共同の危険に対し、共同の安全のため、意図的かつ合理的に行われた異常な犠牲又は費用であること等の要件が問題になります。
事故発生時には、保険証券、B/L、Booking、梱包仕様、積付図、ラッシング記録、船積写真、荒天記録、船長報告及びサーベイレポートを早期に確保します。
本記事はOn Deck Cargo Clause、Underdeck or On-deck Clause、Warranty、投荷及び共同海損に関する一般的な実務を解説するものであり、個別事故における保険金支払、共同海損の成立、運送人責任又はフォワーダーの賠償責任を断定するものではありません。
実際の判断は、保険証券、適用約款、準拠法、B/L約款、積付・ラッシング資料、航海記録及び個別の事実関係を確認したうえで、保険会社、保険代理店又は海事専門家へ相談してください。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://marineinsurance.jp/
