食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度

Positive List System for Food Utensils, Containers and Packaging

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは、食品に接触する器具・容器包装に使用される原材料について、安全性が確認された物質をリスト化し、その範囲内で使用を認める制度です。食品に直接触れる食器、調理器具、食品容器、包装材などの安全性を確保するための仕組みです。

輸入実務では、食品そのものではない貨物であっても、食品に接触する用途がある場合、この制度の確認が必要になることがあります。特に、合成樹脂、いわゆるプラスチックを使用した食品用器具・容器包装では、ポジティブリストへの適合確認が重要です。

この制度で重要なのは、「リストに載っている物質を使っているか」だけではありません。基材、添加剤、使用条件、使用温度、食品接触面、食品の種類、接触時間などを含めて、実際の使用条件に合っているかを確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、器具容器包装、食品衛生法、輸入食品届出、材質試験、製造者証明、販売表示など複数の論点と関係します。この記事では、輸入実務で必要となる制度理解と確認実務を中心に扱い、個別の届出書作成や食品表示の詳細は兄弟記事に委ねます。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
制度の基本 食品用器具・容器包装に使う合成樹脂について、安全性が確認された物質を使用する制度であることを説明します。 食品衛生法全体の制度構造は「食品衛生法」で詳しく扱います。
器具容器包装との関係 食器、調理器具、食品容器、包装材などのうち、食品接触面に合成樹脂が使われる場合を中心に整理します。 器具・容器包装に該当する貨物の基本判断は「器具容器包装」で詳しく扱います。
輸入食品届出との関係 販売または営業目的で食品用器具・容器包装を輸入する場合に、食品等輸入届出が問題になることを説明します。 届出手続、届出済証、検疫所審査は「輸入食品届出」「食品等輸入届出書」で詳しく扱います。
対象材質 制度の中心対象が合成樹脂であり、食品接触面の材質確認が重要であることを整理します。 金属、陶磁器、ガラス、紙、ゴム、シリコーンなどの材質別確認は各材質別記事で扱います。
適合確認の実務 基材、添加剤、使用条件、製造者証明、試験成績書、情報伝達の確認方法を扱います。 試験方法、溶出試験、規格値の詳細は試験・検査関連の記事で扱います。
フォワーダー・通関業者の関与 食品接触用途、食品接触面、合成樹脂使用有無、必要資料を早期確認する実務を整理します。 最終的な法令適合判断、物質ごとの収載確認、新規物質相談は輸入者・製造者・専門機関の確認事項として扱います。

制度の目的・背景

食品用器具・容器包装は、食品に直接または間接的に接触するため、材質中の成分が食品へ移行する可能性があります。食品そのものが安全であっても、容器、包装材、調理器具、食品製造機械の食品接触部から有害な物質が食品へ移行すれば、食品衛生上の問題になります。

ポジティブリスト制度は、食品用器具・容器包装に使用できる物質をあらかじめリスト化し、安全性が確認された物質の範囲で使用を認める仕組みです。問題のある物質を個別に禁止する考え方だけではなく、使用できる物質を明確化する点に特徴があります。

輸入実務では、海外で「food grade」「safe for food contact」と表示されている商品であっても、日本のポジティブリスト制度に適合しているとは限りません。輸入者は、食品接触面の材質、使用されている基材・添加剤、使用条件を確認し、日本の制度に照らして説明できる資料を準備する必要があります。

施行経緯と経過措置

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、食品衛生法改正により導入され、2020年6月1日に施行されました。制度導入時には、既に流通している製品や既存原材料への影響に配慮し、一定の経過措置が設けられていました。

その経過措置は2025年5月31日に満了しました。2025年6月1日以降は、経過措置を前提とした説明ではなく、現在のポジティブリストに基づく適合確認が重要になります。

輸入実務では、過去に輸入できていた商品であっても、継続して問題なく輸入できるとは限りません。継続輸入品、仕様変更品、サプライヤー変更品、包装材変更品、食品接触面の材質変更品では、経過措置満了後の制度運用に照らして、あらためて確認する必要があります。

制度が適用される場面

ポジティブリスト制度は、食品用器具・容器包装のうち、食品接触面に合成樹脂が使われる場面で特に重要になります。商品名が雑貨、キッチン用品、容器、包装材、機械部品であっても、食品に触れる用途があれば確認対象となる可能性があります。

場面 該当しやすい貨物 確認の中心 実務上の注意点
食品保存容器を輸入する場合 プラスチック容器、弁当箱、保存ケース、密閉容器 食品接触面の樹脂、添加剤、パッキン材、使用温度 冷凍、電子レンジ、熱湯、油脂性食品への使用条件を確認します。
食品包装材を輸入する場合 食品包装フィルム、食品用袋、ラミネート包装材、多層フィルム 食品接触層、基材、添加剤、接着剤、印刷面との位置関係 多層構成では、食品に触れる層だけでなく全体構成の説明が必要になることがあります。
紙容器を輸入する場合 紙コップ、紙皿、紙容器、テイクアウト容器 内側の合成樹脂コーティング、ラミネート材、防水・耐油加工 外観が紙でも、食品接触面に合成樹脂層があれば確認対象になり得ます。
食品製造機械の部品を輸入する場合 ホッパー、配管、ベルト、パッキン、ノズル、充填部 食品に直接触れる部品の材質と使用条件 機械全体ではなく、食品接触部品を切り分けて確認します。
ノベルティ容器を輸入する場合 タンブラー、ボトル、マグ、弁当箱、保存容器 食品接触用途、食品接触面、樹脂部品、製造者証明 無償配布でも、食品に触れる用途であれば確認が必要になることがあります。
仕様変更・サプライヤー変更がある場合 継続輸入中の容器、包装材、パッキン、フィルム 材質変更、添加剤変更、製造者変更、グレード変更 過去の試験成績書や証明書が新仕様に使えるか確認します。

適用要件・対象外になりやすいもの

ポジティブリスト制度の確認では、商品全体の材質ではなく、食品に接触する部分の材質を確認することが重要です。食品に触れない外装や輸送用梱包材と、食品接触面に使われる合成樹脂は分けて考える必要があります。

区分 適用確認が必要になりやすい考え方 対象外または別確認になりやすい考え方 確認すべき資料・情報
食品接触用途 食品に直接または間接的に触れる用途がある 食品に触れない装飾品、輸送用外装、一般収納用品 カタログ、販売ページ、使用説明、用途説明
食品接触面 内面、パッキン、コーティング、包装内層、食品接触部品に合成樹脂がある 食品に触れない外面、外箱、輸送保護材 構造図、断面図、部品表、食品接触面の説明
対象材質 食品接触面に合成樹脂が使われている 金属、ガラス、陶磁器、紙、木などで合成樹脂層がない場合 材質証明書、基材情報、添加剤情報
複合材 紙、金属、布などに合成樹脂ラミネートやコーティングがある 合成樹脂層が食品に接触しない構造である場合 層構成表、ラミネート構成、食品接触層の材質
使用条件 高温、油脂性食品、酸性食品、長期保存、電子レンジ使用が想定される 食品非接触または限定的な使用で食品衛生法上の確認対象外となる場合 使用温度、接触時間、使用食品、使用方法
輸入目的 販売または営業使用を目的として輸入する 個人使用で販売・営業使用しないもの 輸入目的、販売計画、配布計画、業務使用の有無

他制度との比較

ポジティブリスト制度は、食品用器具・容器包装の安全性確認の一部です。食品等輸入届出、材質別規格、溶出試験、製造管理、食品表示、製品安全とは目的や確認内容が異なります。通関できたことは、販売表示や製品安全まで保証するものではありません。

制度・確認分野 主な目的 ポジティブリスト制度との関係 実務上の注意点
ポジティブリスト制度 食品接触用途の合成樹脂原材料の安全性管理 基材、添加剤、使用条件がリストに適合するかを確認します。 「食品用」と表示されているだけでは十分ではありません。
食品等輸入届出 輸入時に検疫所へ食品等の内容を届け出る手続 器具・容器包装を販売・営業目的で輸入する場合に関係します。 届出審査で材質証明書や試験成績書を求められることがあります。
材質別規格・溶出基準 材質ごとの安全性や溶出リスクを確認する ポジティブリスト適合とは別に、材質別の規格確認が必要になる場合があります。 試験成績書の対象品、条件、型番が輸入貨物と一致するか確認します。
製造管理・情報伝達 製造者から使用原材料や適合性情報を伝える 輸入者が適合状況を把握するために不可欠です。 海外製造者が日本制度を理解していない場合は、資料取得に時間がかかります。
食品表示・販売表示 販売時の表示や取扱説明を適正にする 食品衛生法上の輸入確認とは別に、耐熱、電子レンジ対応、食洗機対応などが問題になります。 輸入時確認と販売表示確認を混同しないことが重要です。
製品安全関連法令 製品事故や消費者被害を防止する 加熱器具、電気製品、乳幼児向け商品などで別制度が重なることがあります。 ポジティブリスト適合だけで販売可否を総合判断しないよう注意します。

ポジティブリストの三層構造

ポジティブリスト制度では、単に物質名が掲載されているかだけではなく、基材、添加剤、使用条件の関係を確認する必要があります。基材が適合していても、添加剤や使用条件が合わなければ、実際の製品として問題になることがあります。

確認層 意味 確認する資料 実務上の注意点
基材 合成樹脂の骨格となるポリマーや基材を構成する物質です。 基材名、樹脂名、グレード、構成モノマー、材質証明書 ポリエチレン、ポリプロピレンなどの一般名だけでは不足する場合があります。
添加剤 合成樹脂に機能を持たせるために使われる物質です。 添加剤リスト、配合情報、規格書、製造者証明 安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤などが確認対象になります。
使用条件 食品の種類、使用温度、接触時間、使用量、使用目的などの条件です。 使用説明、仕様書、販売ページ、試験条件、適合証明 常温乾燥食品用と高温・油脂性食品用では確認条件が異なります。
食品接触面 実際に食品に触れる面や部品です。 構造図、断面図、部品表、食品接触面の説明資料 商品全体ではなく、食品に触れる層・部品を特定します。
製品仕様 輸入する実際の品番、ロット、仕様、製造者です。 品番、仕様書、製造者情報、ロット情報、試験成績書 過去の証明書が別仕様や別品番のものでないか確認します。
情報伝達 製造者から輸入者・販売者へ適合情報を伝える仕組みです。 適合証明書、宣言書、サプライヤー説明、取引書類 海外製造者が日本制度向け資料を作成できるか早めに確認します。

適合確認の実際の方法

ポジティブリスト適合性を確認する際は、消費者庁が公表するポジティブリスト、関連通知、Q&Aなどを確認します。ただし、輸入者やフォワーダーがリストだけを見ても、実際の製品に使用されている物質が何か分からなければ判断できません。

実務では、製造者から材質情報、基材情報、添加剤情報、食品接触面の構造、使用条件、適合証明を取得し、それらを日本の制度に照らして説明できる状態にします。必要に応じて、第三者試験機関の試験成績書や材質試験・溶出試験の結果を確認します。

重要なのは、単に「食品用」「food grade」「BPA free」と表示されているだけでは、日本のポジティブリスト制度への適合確認として十分とは限らない点です。日本の制度に照らして、基材、添加剤、使用条件、食品接触面を説明できる資料が必要になります。

制度適用フロー

ポジティブリスト制度の確認は、商品名から始めるのではなく、食品接触用途、食品接触面、合成樹脂の有無、基材・添加剤、使用条件、証明資料の順に確認することが実務的です。

ステップ 確認内容 判断の考え方 次に行う対応
1. 食品接触用途の確認 食品に直接または間接的に触れる用途か 商品名ではなく、実際の使用方法と販売説明で判断します。 カタログ、写真、販売ページ、使用説明を確認します。
2. 食品接触面の特定 食品に触れる面、層、部品がどこか 内面、コーティング、パッキン、包装内層などを切り分けます。 構造図、断面図、部品表を取得します。
3. 合成樹脂の有無確認 食品接触面に合成樹脂が使われているか 紙や金属でも、内面に樹脂コーティングがあれば確認対象になり得ます。 材質証明書、層構成表を確認します。
4. 基材・添加剤の確認 基材、添加剤、グレード、規格が分かるか 一般名称だけではなく、ポジティブリストと照合できる情報が必要です。 製造者証明、規格書、適合宣言を取得します。
5. 使用条件の確認 使用温度、食品種類、接触時間、電子レンジ・熱湯・油脂性食品対応 リスト収載物質でも、使用条件によっては問題になる場合があります。 使用条件と試験条件が一致しているか確認します。
6. 届出・通関への反映 食品等輸入届出、検疫所照会、税関申告へ反映できるか 資料不足の場合、届出審査や通関が止まることがあります。 輸入者、通関業者、検疫所と確認事項を共有します。

よくある誤解

ポジティブリスト制度では、「食品用と書いてあるから大丈夫」「BPA freeなら問題ない」「プラスチック以外は無関係」といった誤解が起きやすくなります。制度上の確認は、表示文言ではなく、食品接触面の材質と使用条件に基づいて行う必要があります。

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
「food grade」と書いてあれば日本でも問題ない 海外の食品接触用途表示は、日本のポジティブリスト適合を意味するとは限りません。 日本制度に照らした基材、添加剤、使用条件の資料を確認します。
BPA freeならポジティブリスト対応済みである BPA不使用は一部物質に関する表示であり、制度全体の適合証明ではありません。 基材、添加剤、食品接触面全体の適合確認が必要です。
プラスチック製品だけを見ればよい 紙容器、金属容器、複合材でも、食品接触面に合成樹脂層があれば確認対象になり得ます。 外観ではなく、食品に触れる層や部品を確認します。
過去に輸入できた商品なら今後も問題ない 経過措置満了後は、現在の制度運用に基づく確認が重要です。 継続輸入品でも、証明書、仕様、サプライヤー変更を確認します。
試験成績書があれば必ず適合している 試験成績書は重要資料ですが、対象品、品番、材質、試験条件が一致している必要があります。 輸入貨物と試験対象品の同一性を確認します。
フォワーダーが適合可否を判断してくれる フォワーダーは確認支援はできますが、物質ごとの適合性を最終判断する立場ではありません。 輸入者、製造者、専門機関、検疫所確認へつなげます。

実務で問題になりやすいケース

ポジティブリスト制度で問題になりやすいのは、食品そのものではない貨物であるため、荷主が食品衛生法の対象と認識していない場合です。特に、雑貨、包装材、ノベルティ、機械部品、複合素材では、食品接触面の確認が遅れやすくなります。

ケース 問題になりやすい点 確認すべき資料 実務上の注意点
プラスチック保存容器 基材や添加剤の詳細が分からず、ポジティブリスト照合ができない 材質証明書、基材情報、添加剤情報、製造者証明 単なるプラスチック製という説明では不足します。
紙コップ・紙容器 紙製と説明されているが、内面に合成樹脂コーティングがある 層構成表、内面材質、コーティング材情報 食品接触面が紙なのか樹脂層なのかを確認します。
多層フィルム・ラミネート包装材 食品接触層、接着剤、中間層、印刷面の関係が不明確 断面構成、層構成表、食品接触層の材質、試験成績書 包装材は見た目だけで材質判断できません。
ノベルティ用タンブラー 販促品として扱われ、食品接触用途の確認が漏れる 商品写真、使用説明、材質証明書、食品接触面資料 無償配布でも飲料容器として使う場合は確認が必要です。
食品製造機械の樹脂部品 機械部品として輸入され、食品接触部品であることが見落とされる 部品表、図面、食品接触部品リスト、材質証明書 機械全体ではなく、食品に触れる部品を切り分けます。
海外製造者が配合情報を非開示にする商品 confidentialを理由に基材や添加剤の詳細が確認できない 製造者証明、適合宣言、検疫所提出用資料、非開示範囲の説明 資料不足のまま船積みすると、届出審査や通関が止まる可能性があります。

4列判断チェックリスト

ポジティブリスト制度の確認では、輸入者、輸出者、製造者、通関業者、フォワーダーの間で情報が分散しやすくなります。特に、食品接触面の材質と使用条件は、輸入者側だけでは把握できない場合が多いため、製造者からの資料取得が重要です。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
引合い・見積時 荷主・輸入者 食品接触用途の有無、販売または営業使用の有無 食品接触用途がある場合、届出要否と必要資料を早めに案内します。
船積前 輸出者・製造者 食品接触面、合成樹脂使用有無、基材・添加剤情報 資料不足なら、船積延期や事前相談を検討します。
資料確認時 製造者・サプライヤー 製造者証明、適合宣言、試験成績書、対象品番 輸入貨物と証明書・試験対象品が一致しているか確認します。
届出準備時 通関業者・検疫所 食品等輸入届出の要否、添付資料、追加照会の可能性 判断が難しい場合は、検疫所相談や専門確認へつなげます。
仕様変更時 輸入者・製造者 材質、添加剤、製造者、製造所、グレード、層構成の変更有無 過去資料の流用可否を確認し、必要なら再取得します。
販売準備時 輸入者・販売担当者 使用温度、電子レンジ対応、食洗機対応、耐熱表示、使用条件 輸入時確認とは別に、販売表示や取扱説明の整合を確認します。

フォワーダーの関与範囲対比表

フォワーダーや通関業者は、ポジティブリスト制度の適合性を最終判断する立場ではありません。ただし、食品接触用途がある貨物を早期に発見し、必要資料の取得を促し、通関遅延リスクを共有する役割は重要です。

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
対象貨物の確認 食品接触用途の有無を荷主に確認する 食品衛生法の対象外であると独自に断定する 用途が不明な場合は、カタログや販売ページの提出を依頼します。
材質確認 食品接触面に合成樹脂が使われているか確認を促す 材質名だけでポジティブリスト適合を判断する 材質証明書、基材情報、添加剤情報を取得するよう案内します。
資料案内 製造者証明、適合宣言、試験成績書が必要になり得ることを案内する 資料があれば必ず輸入可能と保証する 資料は審査の前提であり、適合判断とは分けて説明します。
スケジュール管理 資料不足による届出審査・通関遅延リスクを共有する 通常雑貨と同じ日程で必ず通関できると約束する 初回輸入品や新規サプライヤー品では余裕を持った日程を設定します。
検疫所照会対応 追加資料の依頼内容を輸入者へ伝える 物質ごとの収載有無や使用条件適合を自社判断で確定する 必要に応じて輸入者、製造者、専門機関、検疫所確認へつなげます。
販売表示への注意喚起 輸入時確認と販売表示確認は別であると伝える 電子レンジ対応、耐熱、安全表示の適法性を断定する 輸入者側で表示・広告・製品安全の確認を行うよう促します。

制度が問題になる典型場面

ポジティブリスト制度が問題になる典型場面は、食品ではない貨物として物流手配が進んだ後に、食品接触用途が判明する場合です。貨物到着後に材質証明書や適合証明を集め始めると、検疫所審査、通関、納品予定に影響が出やすくなります。

典型場面 発生しやすい問題 確認すべき相手・資料 実務上の対応
雑貨として輸入されるキッチン用品 食品接触用途であることに荷主が気づいていない 輸入者、販売ページ、商品カタログ、使用説明 食品に触れる用途の有無を最初に確認します。
包装材を一般プラスチック品として輸入する 食品包装材であるにもかかわらず、材質資料が準備されていない 製造者、材質証明書、層構成表、適合証明 食品接触層と使用条件を船積前に確認します。
継続輸入品のサプライヤーが変わる 過去の証明書が新しい製造者・仕様に使えない 新旧仕様書、製造者情報、材質情報、試験成績書 継続品でも、変更点があれば再確認します。
試験成績書だけが提出される 試験対象品と輸入品の同一性が確認できない 品番、ロット、仕様書、試験条件、対象材質 証明書・試験成績書と輸入貨物の対応関係を確認します。
海外メーカーが日本制度を理解していない food grade証明だけが提出され、日本向け適合資料がない 製造者証明、適合宣言、基材・添加剤情報 日本制度で必要な確認項目を具体的に伝えます。
食品製造機械の部品として輸入される 機械部品扱いのため、食品接触部材の確認が漏れる 部品表、図面、食品接触部品リスト、材質証明書 食品に触れる部品だけを切り分けて確認します。

制度適用シナリオ1:紙容器の内側に樹脂コーティングがある場合

紙コップや紙容器は、外観上は紙製品に見えるため、ポジティブリスト制度と関係しないと誤解されることがあります。しかし、内側に防水・耐油のための合成樹脂コーティングやラミネート層がある場合、食品接触面は紙ではなく樹脂層として確認が必要になることがあります。

この場合、輸入者は、紙の種類だけでなく、食品に触れる内面層の材質、コーティング材、使用温度、使用食品、試験成績書を確認します。熱い飲料、油脂性食品、電子レンジ加熱などを想定する場合は、使用条件と試験条件の整合も問題になります。

フォワーダーや通関業者は、インボイス上の品名が「paper cup」「paper container」となっていても、食品接触面に合成樹脂層があるかを荷主に確認します。食品用として販売される場合は、届出要否と適合資料の準備を早めに進めることが重要です。

制度適用シナリオ2:ノベルティ用タンブラーを輸入する場合

企業ロゴ入りタンブラーやボトルをノベルティとして輸入する場合、無償配布であることだけを理由に、食品衛生法上の確認が不要とは限りません。配布後に飲料を入れて使用することが前提であれば、食品に接触する器具として確認対象になる可能性があります。

タンブラーでは、本体内面、飲み口、蓋、パッキン、ストロー、コーティングなど、複数の食品接触部品が存在する場合があります。ステンレス製やガラス製に見える商品でも、蓋やパッキンに合成樹脂が使われていれば、その部品についてポジティブリスト適合確認が問題になります。

実務では、商品全体を一括して判断するのではなく、食品に触れる部品ごとに材質と使用条件を確認します。製造者証明や試験成績書がどの部品に対応しているかを確認し、輸入品番と証明書の対象品番が一致しているかを確認する必要があります。

制度適用シナリオ3:食品製造機械の樹脂製ベルトを輸入する場合

食品製造機械の部品として樹脂製ベルトやパッキン、ノズル、ホースなどを輸入する場合、機械部品としての通関確認だけでなく、食品接触材としての確認が必要になることがあります。食品に直接触れる部品であれば、食品用器具・容器包装の確認対象となる可能性があります。

この場合、確認すべき資料は、部品表、図面、食品接触部品リスト、材質証明書、製造者証明、使用条件です。食品に触れないフレームや外装部品と、食品に触れるベルトやパッキンを分けて確認する必要があります。

フォワーダーや通関業者は、品名が「machine parts」となっている場合でも、食品製造ラインで使う部品か、食品に接触する部品かを確認します。食品接触部品であれば、通常の機械部品よりも資料確認に時間がかかる可能性を荷主へ共有することが重要です。

製造者証明と試験成績書

ポジティブリスト制度では、製造者からの情報伝達が重要です。輸入者が製品の材質や適合状況を把握できなければ、検疫所での確認や販売先への説明が難しくなります。

製造者証明では、食品接触面に使用されている材質、基材、添加剤、適合する規格、使用条件などが確認できることが望まれます。ただし、製造者が配合情報を機密情報として扱う場合もあるため、どこまで情報を開示できるかは事前に調整が必要です。

試験成績書は、材質試験や溶出試験などの結果を確認する資料です。ただし、試験成績書があれば常にポジティブリスト適合性が確認できるとは限りません。試験対象品、品番、仕様、材質、試験条件、食品接触面、使用条件が、実際に輸入する貨物と一致しているかを確認する必要があります。

未収載物質を使用している場合

食品接触面に使用される合成樹脂の原材料がポジティブリストに収載されていない場合、原則として食品用器具・容器包装に使用することはできません。未収載物質が使われている可能性がある場合、輸入者は製造者へ材質情報を確認し、使用部位や食品接触の有無を整理する必要があります。

実務では、代替材料への変更、食品非接触部位への限定、バリア層の有無、新規物質に関する相談の要否などを検討します。輸入者が適合性を説明できない場合、検疫所で追加資料を求められたり、食品等輸入届出の審査が進まなかったりすることがあります。

結果として、通関遅延、販売計画の変更、積戻し、廃棄などにつながる可能性があります。未収載物質の可能性がある場合は、貨物到着後ではなく、取引開始前または船積前に確認することが重要です。

情報伝達の重要性

ポジティブリスト制度では、製造者、輸出者、輸入者、販売者、食品事業者の間で、使用原材料や適合性に関する情報を適切に伝達することが重要です。輸入者が製品の材質や適合状況を把握できなければ、検疫所での確認に対応できず、販売先からの問い合わせにも説明できません。

特に、包装材、容器、パッキン、食品製造機械の部品では、製造者側が日本のポジティブリスト制度を理解していないことがあります。海外のサプライヤーが提出する一般的なfood contact certificateだけでは、日本制度に必要な確認項目を満たさない場合があります。

実務では、単にカタログに「食品用」「safe for food contact」と記載されているだけでは不十分な場合があります。具体的な材質、食品接触面、使用条件、適合根拠を、製造者または輸出者から確認しておくことが重要です。

まとめ

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、食品に接触する合成樹脂製の器具・容器包装について、安全性が確認された物質を使用することを求める制度です。2020年6月1日に施行され、2025年5月31日に経過措置が満了しました。

制度の確認では、単に「リストに載っているか」だけでは足りません。基材、添加剤、使用条件、食品接触面、使用温度、食品の種類、接触時間などを含めて、実際の使用条件に合っているかを確認する必要があります。

輸入者、通関業者、フォワーダーは、食品接触用途、合成樹脂の使用有無、食品接触面の材質、製造者証明、試験成績書を船積前に確認しておく必要があります。ポジティブリスト制度では、情報伝達と適合根拠の確認が、通関遅延や輸入後の販売トラブルを防ぐ中心になります。

同義語・別表記

  • 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度
  • ポジティブリスト制度
  • PL制度
  • 食品接触材ポジティブリスト
  • 食品用器具容器包装PL制度
  • 合成樹脂ポジティブリスト
  • Positive List System
  • Food Contact Materials