Warehouse Attachment(倉庫保管特約)―倉庫保管中の補償範囲と保険終期

Warehouse Attachment — Coverage During Storage and Termination of Insurance

Warehouse Attachmentとは

Warehouse Attachmentとは、貨物が倉庫、CY、CFS、保税倉庫、営業倉庫その他の保管場所に置かれている間について、貨物保険がどの範囲まで継続するか、または通常の保険期間終了後にどのような追加条件で補償するかを定める特別条件です。

ただし、Warehouse Attachmentという名称だけで、統一された一つの補償内容が決まるわけではありません。

実際の対象場所、対象期間、担保危険、免責事項、保険金額、自己負担額および通知義務は、保険証券、Open Cover、特別約款または個別の引受条件によって異なります。

貨物保険は、通常、貨物が出発地から仕向地へ移動するordinary course of transit、つまり通常の輸送過程を前提として引き受けられます。

一方、貨物が倉庫で販売待ち、在庫管理、分配、割当、加工、検品または長期保管の状態に移ると、輸送中の危険ではなく、倉庫火災、浸水、盗難、長期的な湿気、在庫集中等の保管危険が中心になります。

そのため、倉庫に貨物が存在するという事実だけで、貨物保険が当然に継続しているとは判断できません。

ICC 2009では、通常の輸送過程と保険終期についてClause 8に定められており、倉庫への搬入、保管目的への変更、分配・割当、コンテナの保管利用、最終荷卸港での荷卸完了後60日等が保険終了の判断に関係します。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 別に確認すべき内容
Warehouse Attachment 倉庫保管中の担保場所、期間、危険および保険終期を補完する特別条件 実際の証券文言、対象倉庫、保険金額、免責金額
ICC 2009 Clause 8 通常の輸送過程とClause 8.1.1から8.1.4による保険終了 個別の輸送経路、最終仕向地、荷卸し日時
Warehouse to Warehouse 仕出地から仕向地までの通常輸送過程を担保する考え方 無制限の倉庫保管を意味しないこと
ordinary course of transit 本記事では倉庫保管の実務段階、損害類型、証拠および求償対応を中心に扱う 通常輸送過程に含まれるかという一般的な判断原則は姉妹記事で確認する
Clause 8.1.1 最終仕向地の最終倉庫等で荷卸しが完了した場合の保険終了 証券上の仕向地、最終倉庫、荷卸完了日時
Clause 8.1.2 通常輸送過程外の保管、分配または割当のために別の倉庫を選択した場合 倉庫選択者、保管目的、分配・割当の有無
Clause 8.1.3 車両、輸送用具またはコンテナを通常輸送過程外の保管に使用した場合 コンテナ留置理由、輸送予定、保管目的への変更時点
Clause 8.1.4 最終荷卸港で本船からの荷卸しが完了した後の60日基準 荷卸完了日、他の早期終了事由、延長条件
Open-Yard Storage Clause 屋内倉庫保管と屋外ヤード・野積み保管との違い 風雨、浸水、盗難、屋外保管の個別条件
倉庫業者責任 貨物保険請求と倉庫業者等への求償の切り分け 倉庫約款、責任制限、通知期限、準拠法

本記事は、倉庫保管の具体的な段階、保管中損害、必要資料および求償実務を中心に扱います。

姉妹記事「ordinary course of transitとは」は、輸送全体を通じて、貨物が通常の輸送過程内にあるのか、それとも保管・分配・在庫管理へ移行したのかを判断する一般原則を中心に扱います。

両記事は重複する部分がありますが、本記事は倉庫保管という特定場面における実務判断を深掘りする位置付けです。

Warehouse AttachmentはICC 2009の標準見出しではない

ICC 2009には、Warehouse Attachmentという名称の独立した標準条項は設けられていません。

ICC 2009の通常の保険期間はClause 8のTransit Clauseによって判断され、通常の保険期間を超える倉庫保管を担保する場合は、保険証券、Open Coverまたは追加の特別約款によって条件を設定することがあります。

したがって、Warehouse Attachmentという名称が証券等に記載されていても、次の事項を実際の文言で確認する必要があります。

確認事項 確認する内容 確認しない場合の問題 主な確認資料
対象倉庫 指定倉庫だけか、複数の倉庫やCY・CFSも含むか 事故場所が対象外となる可能性がある 保険証券、倉庫一覧、住所明細
対象期間 何日間、いつからいつまで補償されるか 保険終了後の事故となる可能性がある 特別約款、保険期間明細
担保危険 ICC条件と同じか、火災・盗難等に限定されるか 保管中の損害原因が対象外となる可能性がある 担保危険表、免責条項
保管形態 屋内、屋外、保税、冷蔵、危険品保管等の条件 実際の保管方法が条件に違反する可能性がある 倉庫契約、保管仕様書
保険金額 倉庫ごとの最高保管価額や集積限度額 在庫集中により限度額を超える可能性がある ロケーション別限度額
通知義務 倉庫変更や保管長期化を通知する必要があるか 事故後に未通知が問題となる可能性がある 申告条件、通知条項
追加保険料 期間、倉庫、貨物価額に応じて追加保険料が必要か 延長担保が成立していない可能性がある 保険者の承認、保険料明細

ICC 2009 Clause 8と倉庫保管

ICC 2009 Clause 8.1では、貨物が出発地の倉庫または保管場所で、輸送開始のために最初に動かされた時に保険が開始し、通常の輸送過程中は継続するとされています。

その後、Clause 8.1.1から8.1.4のいずれかが最初に発生した時点で、保険が終了します。

条項 保険終了事由 倉庫保管との関係 実務上の確認点
Clause 8.1.1 証券記載の仕向地にある最終倉庫または最終保管場所で、輸送用具からの荷卸しが完了した時 通常の最終納品倉庫への搬入・荷卸完了により終了する 最終倉庫、納品場所、荷卸完了日時を確認する
Clause 8.1.2 被保険者等が、通常輸送過程外の保管、分配または割当のために選択した別の倉庫等で荷卸しが完了した時 最終仕向地前でも、保管・分配目的なら終了し得る 倉庫選択の目的、分配、割当、販売在庫化を確認する
Clause 8.1.3 被保険者等が車両、輸送用具またはコンテナを通常輸送過程外の保管に使用することを選択した時 コンテナを配送待ちではなく在庫保管設備として使用した場合等が問題となる 保管目的への変更日時、次の輸送予定、指示内容を確認する
Clause 8.1.4 最終荷卸港で航洋船舶からの荷卸しが完了した後60日を経過した時 港、CY、CFS、保税倉庫等での長期滞留に関係する 本船からの荷卸完了日と60日満了日を確認する

Clause 8.1.1から8.1.4は、順番に適用するのではなく、最も早く発生した終了事由によって保険期間が終了します。

たとえば、最終荷卸港での荷卸完了後60日を迎えていなくても、貨物が販売在庫として使用する営業倉庫へ搬入され、荷卸しが完了した場合は、Clause 8.1.2による早期終了が問題になります。

なぜ倉庫保管は輸送危険と別に扱われるのか

輸送中の貨物と、倉庫で保管されている貨物では、保険者が引き受ける危険の内容が異なります。

輸送中は、衝突、転覆、脱線、荷役中の落下、船舶事故、輸送中の水濡れ等、貨物の移動に伴う危険が中心です。

倉庫保管へ移行すると、倉庫火災、浸水、盗難、棚崩れ、フォークリフト事故、温湿度管理不良、長期的な結露・カビ、在庫集中等の静的な保管危険が中心になります。

比較項目 通常の輸送危険 倉庫・在庫保管危険 保険引受上の影響
危険の中心 輸送用具の事故、荷役、移動中の外力 火災、浸水、盗難、保管作業、環境管理 必要な担保危険が異なる
危険期間 予定された輸送期間 保管期間が長期化・不確定になりやすい 期間延長と追加保険料が問題になる
危険の集中 貨物が輸送経路上を移動する 一つの倉庫に高額在庫が集中する ロケーション別集積限度額が必要となる
管理主体 運送人、NVOCC、フォワーダー等 倉庫業者、荷主、在庫管理者等 責任主体と求償先が変わる
貨物作業 積込み、積替え、荷卸し 検品、仕分け、ラベル貼付、再梱包、棚入れ 輸送付随作業か流通加工かを確認する
危険管理 輸送経路、運送手段、梱包 建物構造、防火、防犯、温湿度、保管方法 倉庫の設備・管理状況が重要となる
損害発見 荷卸し・納品時に発見されることが多い 長期間経過後に発見されることがある 損害発生時期の立証が難しくなる

この危険プロファイルの変化があるため、通常の貨物保険を無条件に長期保管へ延長することはできず、Warehouse Attachment、保管中担保または別の在庫・財物保険の検討が必要になります。

Warehouse to Warehouseとの関係

Warehouse to Warehouseは、貨物保険が出発地の倉庫から仕向地の倉庫まで無制限に継続するという意味ではありません。

実際には、ICC 2009 Clause 8に定める通常の輸送過程と保険終了事由に従います。

出発地では、貨物が輸送開始のために最初に動かされた時に保険が開始します。仕向地では、最終倉庫で輸送用具からの荷卸しが完了した時や、通常輸送過程外の保管等に使用する別倉庫で荷卸しが完了した時等に終了します。

誤解しやすい表現 実際の意味 保険終了の可能性 確認事項
倉庫から倉庫まで 通常の輸送過程としての仕出地から仕向地まで 最終倉庫での荷卸完了時等に終了する 証券上の仕出地・仕向地を確認する
途中倉庫も担保される 通常輸送過程に必要な一時保管なら継続する余地がある 保管目的へ移行すれば早期終了し得る 保管理由と継搬予定を確認する
倉庫内なら担保される 場所名だけではなく保管目的が重要である 販売在庫、分配、割当で終了し得る 指示書、在庫登録、販売計画を確認する
60日までは担保される Clause 8.1.1から8.1.3が先に発生しない場合の最長基準の一つである 別の終了事由が先なら60日前に終了する すべての終了事由を照合する

保険期間延長との違い

Warehouse Attachmentと保険期間延長は、同じ意味とは限りません。

単純な保険期間延長は、既存の貨物保険条件を一定期間継続することを中心とします。

これに対し、Warehouse Attachmentでは、対象となる倉庫、保管形態、担保危険、集積限度額、保管期間および免責条件を個別に設定することがあります。

比較項目 Warehouse Attachment 単純な期間延長 確認すべき点
主な目的 倉庫保管という危険を条件付きで担保する 既存の保険期間を一定期間延ばす 補償内容も変更されるか確認する
対象場所 特定倉庫や指定ロケーションの場合がある 元の輸送経路内に限定される場合がある 倉庫住所と移転条件を確認する
担保危険 保管危険用に限定・追加される場合がある 元のICC条件が継続する場合がある 火災、盗難、浸水等の範囲を確認する
保険金額 倉庫別の最高保管価額が設定される場合がある 元の船積み保険金額を基準とする場合がある 集積限度額を確認する
保険料 場所、期間、倉庫構造等を基に算出される場合がある 延長日数を基に算出される場合がある 追加保険料と成立条件を確認する

輸入貨物の保管段階

保管場面 典型的な保管理由 保険上の中心論点 主な確認資料
輸入港のCY 通関、D/O交換、配送手配待ち 通常輸送過程内の一時滞留か、コンテナ保管へ移行したか Arrival Notice、D/O、通関記録、搬出予定
CFSでデバン後 LCL貨物の仕分け・引取待ち 通常のCFS作業期間か、長期保管か デバン記録、搬入記録、引取指示
保税倉庫 通関許可、検査、書類補完待ち 通関に必要な保管か、荷主都合の滞留か 税関通知、検査記録、許可日
荷主指定倉庫 最終納品、検品、仕分け、配送調整 Clause 8.1.1の最終倉庫か、途中倉庫か 納品指示、倉庫契約、次の配送予定
流通加工倉庫 ラベル貼付、再梱包、セット組み 輸送付随作業か、販売準備への移行か 作業指示、販売計画、加工契約
営業倉庫 販売待ち、出荷指示待ち、在庫管理 Clause 8.1.2の通常輸送過程外保管・分配に該当する可能性 在庫台帳、販売指示、倉庫入庫目的
コンテナのまま留置 納品先未定、倉庫不足、在庫保管 Clause 8.1.3のコンテナ保管利用に該当する可能性 留置指示、配送予定、コンテナ使用目的
屋外ヤード 倉庫満床、特殊貨物、搬出待ち Open-Yard Storage Clauseと保管条件 保管場所写真、気象記録、ヤード契約

一時保管か輸送終了後保管かを判断する基準

倉庫、CY、CFS、保税倉庫という名称だけで、通常の輸送過程に含まれるかを判断することはできません。

判断項目 通常輸送過程内と見られやすい状態 輸送終了後の保管と見られやすい状態 確認資料
保管目的 通関、積替え、搬出、配送接続のための待機 販売待ち、在庫管理、分配、割当 保管指示、配送指示、社内メール
次の仕向地 具体的な納品先が決定している 納品先未定または複数の販売先へ分配予定 配送依頼書、売買契約、納品指示
次の輸送手配 運送人、配送日、経路が具体化している Bookingや配送予定が長期間存在しない Booking、配車表、運送契約
保管期間 通常の通関・荷捌きに必要な期間 輸送上必要な期間を超える長期保管 入出庫記録、通関時系列
保管指示者 運送人や通関手続上の必要性による 貨物所有者の販売・在庫判断による 指示メール、作業依頼書
保管場所 輸送接続に通常使用されるCY、CFS、保税倉庫 販売用倉庫、長期在庫倉庫、流通センター 倉庫契約、施設用途
貨物への作業 通関検査、輸送に必要な仕分け・積替え 加工、販売用ラベル、セット組み、商品化 作業指示書、加工明細
在庫登録 輸送中貨物として管理されている 営業在庫・販売可能在庫として計上されている 在庫台帳、会計記録、WMS記録
コンテナの使用目的 輸送のため一時的に貨物を収容している 倉庫代替として長期間使用している コンテナ留置指示、返却予定
継続輸送の現実性 具体的かつ近接した継続輸送が予定されている 将来の販売状況次第で輸送するだけである 配車記録、販売計画、納品先回答

一つの項目だけで機械的に判断するのではなく、保管目的、次の輸送、期間、指示者、作業内容および客観資料を総合して判断します。

保険終期との関係

倉庫保管中の事故では、損害原因を調査する前に、事故が保険期間内に発生したかを確認する必要があります。

確認項目 保険上の意味 主な資料 注意点
最終仕向地 Clause 8.1.1の最終倉庫を特定する 保険証券、B/L、売買契約 貨物所有者の最終使用場所とは限らない
最終倉庫での荷卸完了 Clause 8.1.1の終了時点を確認する POD、入庫記録、荷卸記録 到着時ではなく荷卸完了時が問題となる
別倉庫の選択目的 Clause 8.1.2の適用を確認する 保管指示、分配指示、在庫台帳 仕向地前でも保管目的なら終了し得る
コンテナの保管利用 Clause 8.1.3の適用を確認する 留置指示、返却予定、配送計画 CYにあるだけでは判断できない
本船からの荷卸完了日 Clause 8.1.4の60日起算点を確認する 船会社記録、ターミナル記録 本船到着日と混同しない
事故発生日時 保険期間内事故かを判断する 監視映像、作業記録、温度記録 事故発見日時と発生日時を区別する
Warehouse Attachment 通常の保険終期後に追加担保があるか確認する 特別約款、保険者承認、追加保険料 名称だけで適用を判断しない

保管中に発生しやすい損害

損害類型 典型例 貨物保険上の確認点 責任先の確認
水濡れ・浸水 屋根漏水、雨水流入、床面浸水、洪水 保険期間、担保危険、屋内・屋外条件 倉庫業者、施設管理者、賃貸人
湿気・結露・カビ 長期保管、換気不足、温湿度管理不良 貨物固有の性質、保管環境、免責事項 倉庫業者、荷主、包装担当者
盗難・紛失 抜き取り、パレット紛失、数量不足 盗難担保、数量記録、施錠・警備条件 倉庫業者、警備会社、荷役業者
油・臭気汚染 床面油、隣接貨物、荷役機器からの汚染 外来原因か貨物固有の性質か 倉庫業者、他貨物所有者、荷役業者
荷崩れ・棚崩れ 積上げ不良、ラック破損、地震 事故原因、作業中損害、地震担保 倉庫業者、ラック管理者、作業業者
フォークリフト事故 接触、落下、突刺し、転倒 保険期間と作業中事故の担保 倉庫業者、荷役業者、作業者
温度逸脱 冷蔵設備故障、停電、設定ミス 温度管理特約、継続時間、免責時間 冷蔵倉庫、設備管理者、電力事業者
火災・爆発 倉庫火災、危険品事故、電気設備事故 対象危険、貨物集積額、危険品条件 倉庫業者、施設管理者、出火原因者
長期劣化 錆、変色、乾燥、期限切れ、自然劣化 偶然な外来事故か、固有の性質・遅延か 保管契約、貨物所有者の在庫管理

貨物保険から保険金が支払われる可能性がある場合でも、倉庫業者、荷役業者その他の第三者に責任があれば、求償権を保全する必要があります。

Open-Yard Storage Clauseとの違い

比較項目 Warehouse Attachment Open-Yard Storage Clause 実務上の分岐点
主な場所 屋内倉庫、保税倉庫、営業倉庫等 屋外ヤード、野積み場所 屋根・壁による保護があるか
中心危険 火災、漏水、盗難、荷役、温湿度 風雨、洪水、飛来物、盗難、錆 外部環境への露出度を確認する
対象貨物 倉庫内で保管される貨物 コンテナ、機械、鋼材等の屋外保管貨物 デバン済みかコンテナ内かを確認する
必要資料 入出庫、保管区画、作業、温湿度記録 ヤード写真、養生、排水、気象記録 事故場所と保管形態を立証する
引受条件 倉庫構造、防火、防犯、集積額 地盤、排水、養生、高さ、警備 一つの約款を他方へ代用しない

実務で問題になりやすいケース

ケース 中心論点 保険上の判断点 確認資料 初動対応
通関待ちのCYでコンテナが浸水した 通常輸送過程内の一時滞留 Clause 8継続中か、保管利用へ移行したか 通関記録、搬出予定、ターミナル記録 事故通知とコンテナ状態の保全を行う
CFSデバン後に貨物が盗難された CFS作業と引取待ちの期間 通常のLCL輸送過程内か デバン記録、数量記録、監視映像 CFSへ責任通知を行う
税関検査で保税倉庫保管が長期化した 被保険者の支配外の通関手続 通常輸送過程内の遅延か、60日経過か 税関通知、荷卸完了日、保管記録 保険者へ期間確認を行う
荷主指定倉庫で検品中に破損した 最終倉庫か途中倉庫か Clause 8.1.1または8.1.2による終了時点 配送指示、検品目的、次の輸送予定 保険期間と作業者責任を確認する
営業倉庫へ入庫後、火災が発生した 販売在庫への移行 貨物保険終了後かWarehouse Attachment対象か 在庫台帳、入庫目的、特別約款 在庫保険と倉庫業者責任も確認する
コンテナを倉庫代わりに留置した Clause 8.1.3の保管利用 輸送用コンテナから保管設備へ目的が変わった時点 留置指示、配送予定、返却予定 保険終期を直ちに確認する
本船荷卸完了後60日を超えた Clause 8.1.4の期間満了 他の終了事由と延長承認の有無 荷卸記録、延長依頼、保険者回答 満了前に延長担保を要請する
屋外ヤードへ移動後に雨濡れした 保管場所変更と屋外保管 Warehouse AttachmentかOpen-Yard Storage Clauseか 移動指示、ヤード写真、保険条件 保険者と保管者へ即時通知する

フォワーダーの関与範囲対比

本記事における五分類は、法令上または業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズでフォワーダーの関与範囲を分析するための枠組みです。

標準五分類 想定される関与 倉庫保管時の確認事項 当然には負わない範囲 実務上の対応
Simple Intermediary(単純取次) 保管指示、倉庫書類、保険通知等の取次 保管目的、期間、場所を正確に伝達したか 保険期間や倉庫業者責任の最終判断 貨物所有者と保険関係者へ速やかに情報を転送する
Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) 倉庫を含む輸送区間を実運送事業者等により手配 輸送区間と保管区間の境界、継搬予定 すべての倉庫事故についての無制限責任 輸送費用と保管費用を区分する
NVOCC / House B/L Issuer House B/L上の運送契約に倉庫区間を含める場合がある House B/Lの仕向地、引渡し場所、運送終了時点 Master Carrierや倉庫業者の行為による自動免責 House B/LとMaster B/Lの区間を分けて確認する
Door-to-Door Single Contractor 港、倉庫、通関、配送を一体的に手配 保管を含む全工程の責任主体と時系列 外部事業者の全事故についての無条件保証 工程別の契約、費用、証拠を一元管理する
Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) 倉庫手配、検品、サーベイ、保険照会等を個別調整 委任範囲、保管期間、費用上限、承認者 委任外の保険判断および法的判断 保管開始前に書面指示を取得する

Contracting CarrierおよびActual Carrierは法的または契約上の地位を示す概念であり、この標準五分類を置き換えるものではありません。

具体例1:通関待ちの保税倉庫で事故が発生した場合

輸入貨物が税関検査の対象となり、保税倉庫で一時保管されている間に、倉庫内の配管から漏水して貨物が損傷したケースを考えます。

次の配送先と配車予定が決まっており、保管が税関検査に必要な期間に限られている場合は、通常の輸送過程内の一時保管と評価される可能性があります。

ただし、Clause 8.1.4の60日を経過していないか、Clause 8.1.1から8.1.3の終了事由が先に発生していないかを確認します。

貨物保険の確認と並行して、倉庫業者へ事故通知を行い、漏水原因、施設管理記録および損害貨物を保全します。

具体例2:営業倉庫で販売待ちとなった場合

輸入貨物が荷主指定の営業倉庫へ搬入され、WMS上で販売可能在庫として登録された後、出荷指示を待っている間に火災で焼失したケースを考えます。

倉庫が本来の最終仕向地であれば、Clause 8.1.1により荷卸し完了時に通常の貨物保険が終了している可能性があります。

また、最終仕向地前の倉庫であっても、販売、分配または在庫管理のために選択された場合は、Clause 8.1.2による終了が問題になります。

この場合は、Warehouse Attachment、在庫保険、財物保険等の別の保険が有効であったかを確認します。

具体例3:コンテナを一時倉庫として使用した場合

港から搬出したコンテナについて、納品先倉庫が満床であるため、貨物所有者の指示により敷地内へ長期間留置し、必要に応じて少量ずつ取り出すケースを考えます。

当初は配送待ちであっても、コンテナを在庫保管設備として使用する意思が明確になった時点で、Clause 8.1.3の通常輸送過程外の保管に該当する可能性があります。

判断には、留置指示、コンテナ返却予定、貨物の取り出し記録、次の配送計画および在庫台帳を使用します。

通常の貨物保険が終了している場合は、別途保管中担保が必要です。

荷主との事前契約で整理すべき事項

  • 貨物保険の開始時点と終了時点
  • Warehouse Attachmentまたは保管中担保の有無
  • 通常の輸送過程を超える保管が発生した場合の通知義務
  • 通関遅れ、搬出遅れ、納品先都合による保管費用
  • 荷主都合の長期保管時の保険手配者
  • 倉庫業者の責任範囲と責任制限
  • 屋外保管、冷蔵保管、危険品保管の条件
  • 事故発見時の通知先と通知期限
  • サーベイ手配および損害品処分の権限
  • 保険会社と倉庫業者への求償協力義務
  • 弁護士費用、サーベイ費用、検査費用等の負担

事故時に確認すべき資料

資料 確認できること 実務上の目的 注意点
保険証券・Open Cover ICC条件、Warehouse Attachment、保険終期 事故時の担保有無を確認する 証券名だけでなく約款全文を確認する
B/L・Waybill 仕出地、仕向地、運送人、運送区間 当初の輸送計画を確認する House B/LとMaster B/Lを分ける
Arrival Notice・本船記録 本船到着日、荷卸し完了日 Clause 8.1.4の起算点を確認する 到着日と荷卸完了日を混同しない
通関・D/O記録 搬出可能日、通関遅延の理由 保管が輸送上必要だったか確認する 書類不備の原因も確認する
倉庫入出庫記録 保管開始・終了、貨物数量、保管場所 事故時点と管理区間を特定する 入庫目的も確認する
保管・配送指示 保管理由、指示者、次の輸送予定 ordinary course of transitか判断する 事故後作成資料だけに依存しない
在庫・WMS記録 営業在庫化、分配、割当、出荷指示 Clause 8.1.2の適用を検討する 登録日時を保存する
監視映像・作業記録 事故発生日時、作業者、貨物移動 損害原因と責任主体を確認する 保存期間内に確保する
温湿度・設備記録 温度逸脱、停電、漏水、設備異常 保管環境と損害原因を確認する 校正記録も確認する
写真・サーベイ報告 損害状態、原因、梱包、残存価値 保険請求と求償の基礎にする 損害品を処分する前に調査する
倉庫契約・倉庫約款 倉庫業者責任、責任制限、通知期限 求償可能性を確認する 適用約款の版を確認する

資料が矛盾する場合の判断順序

確認事項 優先して確認する資料 補足資料 判断上の注意点
本船からの荷卸完了日 ターミナル・船会社の荷卸記録 Arrival Notice、通関記録 本船到着日だけで60日を起算しない
倉庫への搬入・荷卸完了 倉庫入庫記録、POD、荷卸記録 配送業者報告、請求書 書類発行日ではなく実際の作業日時を確認する
保管目的 事故当時の保管指示、配送指示、在庫記録 担当者説明、後日報告書 後日作成された説明より当時の記録を重視する
次の輸送予定 Booking、配車表、運送契約 社内予定表、納品先とのメール 抽象的な将来予定ではなく具体性を確認する
事故発生日時 監視映像、設備アラーム、作業記録 発見者報告、サーベイ推定 発見日時と発生日時を区別する
貨物の管理主体 倉庫契約、受領書、作業指示 請求書、メール 物理的管理と契約上の責任を分ける

後日作成された説明書や記憶に基づく口頭説明よりも、事故当時に作成された時刻付きの入出庫記録、監視映像、WMS記録、配送記録等を優先します。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の対応
倉庫にある間は貨物保険が続く 通常輸送過程、Clause 8の終期、特別条件を確認する必要がある 保管理由と保険終期を確認する
Warehouse Attachmentという名称があれば何でも担保される 対象場所、期間、危険、限度額は個別文言によって異なる 特別約款全文を確認する
Warehouse to Warehouseならどの倉庫でも担保される 通常の輸送過程が前提である Clause 8.1.1から8.1.4を確認する
最終荷卸港から60日間は無条件で担保される Clause 8.1.1から8.1.3が先に発生すれば早期終了する 終了事由を時系列で照合する
CYにある貨物は常に輸送中である コンテナを保管目的に使用すればClause 8.1.3が問題になる 留置理由と次の輸送予定を確認する
保税倉庫なら保険は終了しない 施設の法的名称だけでなく保管目的と期間が重要である 通関上の必要性を確認する
フォワーダーが倉庫を手配すれば保険が続く 手配者ではなく輸送目的と保険条件によって判断する 倉庫手配の目的を記録する
事故を倉庫で発見したため倉庫内で発生した 輸送中に発生し、倉庫で発見された可能性もある 梱包、入庫時、作業時の状態を比較する
貨物保険から支払われれば倉庫業者への通知は不要である 保険者の代位求償権を保全する必要がある 通知期限内に責任通知を行う
倉庫業者の事故なら必ず全額請求できる 責任制限、免責、因果関係、通知期限によって変わる 倉庫約款と証拠を確認する

判断チェックリスト

確認タイミング 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
事故発見直後 倉庫業者、貨物所有者、フォワーダー 損害状態、発見日時、発見場所 写真、動画、監視映像を確保する
保険条件確認時 保険会社、保険代理店 ICC条件、Warehouse Attachment、保険終期 約款全文と承認条件を確認する
Clause 8確認時 保険会社、貨物所有者、フォワーダー Clause 8.1.1から8.1.4の終了事由 時系列表を作成する
保管理由確認時 貨物所有者、倉庫業者、通関業者 通関、配送、販売、在庫、加工のどれか 通常輸送過程との関係を整理する
輸送継続確認時 フォワーダー、配送業者、納品先 次の仕向地、配車、Booking、日程 具体的な手配がなければ保管移行を検討する
損害原因確認時 サーベイヤー、倉庫業者、設備管理者 漏水、火災、盗難、荷役、温度等 現場と損害品を保全する
責任切り分け時 保険会社、倉庫業者、フォワーダー、弁護士 貨物保険、倉庫責任、フォワーダー責任 契約、約款、責任制限を確認する
求償検討時 倉庫業者、荷役業者、運送人 通知期限、損害原因、証拠 期限内に書面で責任通知する
保管長期化時 保険会社、保険代理店、貨物所有者 期間延長、倉庫変更、追加保険料 保険終了前に承認を取得する
損害品処分前 保険会社、サーベイヤー、倉庫業者 処分承認、残存価値、求償証拠 独自判断で処分しない

海事弁護士を利用すべき場面

倉庫保管中の事故では、貨物保険だけでなく、倉庫契約、運送契約、フォワーダー契約および第三者責任が同時に問題となることがあります。

特に、次のような場合は、早い段階で海事・物流分野を扱う弁護士への相談を検討します。

  • 保険期間内か終了後かについて争いがある場合
  • 損害額が大きく、複数の責任主体が関与する場合
  • 倉庫業者が責任を否定している場合
  • 倉庫約款の責任制限または免責が問題になる場合
  • 貨物所有者からフォワーダーへ賠償請求が行われた場合
  • 監視映像、作業記録等の証拠保全が必要な場合
  • 通知期限、時効または出訴期限が迫っている場合

フォワーダー実務での注意点

フォワーダーやNVOCCは、貨物が倉庫に置かれているという理由だけで、貨物保険が継続していると説明してはなりません。

まず、証券上の最終仕向地、倉庫への搬入目的、荷卸完了日時、次の輸送予定およびClause 8.1.1から8.1.4の終了事由を確認します。

保管が長期化する場合や、販売在庫、分配、割当、加工等へ目的が変わる場合は、保険期間終了前に貨物所有者へ通知し、保険会社または保険代理店への確認を促します。

フォワーダーが倉庫を選定・手配した場合でも、倉庫事故について直ちに無制限の責任を負うとは限りません。一方で、倉庫選定、指示伝達、保険確認、事故通知等に過失があれば、フォワーダー賠償責任が問題になる可能性があります。

事故時は、貨物保険の請求だけでなく、倉庫業者、荷役業者、運送人その他の第三者への求償権を保全する必要があります。

監視映像や作業記録は短期間で消去されることがあるため、事故発見後直ちに書面で保存を要請します。

まとめ

Warehouse Attachmentは、倉庫、CY、CFS、保税倉庫、営業倉庫等で保管される貨物について、通常の貨物保険がどこまで継続するか、または保険終了後にどのような追加条件で保管中危険を担保するかを定める特別条件です。

Warehouse Attachmentという名称だけで統一された補償内容が決まるわけではありません。対象倉庫、期間、担保危険、免責、集積限度額、通知義務および追加保険料を実際の約款文言で確認する必要があります。

ICC 2009 Clause 8.1では、貨物保険は通常の輸送過程中に継続し、Clause 8.1.1から8.1.4のうち最も早く発生した事由によって終了します。

Clause 8.1.1は最終仕向地の最終倉庫等での荷卸完了、Clause 8.1.2は通常輸送過程外の保管・分配・割当のための別倉庫での荷卸完了、Clause 8.1.3は車両・輸送用具・コンテナの保管利用、Clause 8.1.4は最終荷卸港での本船からの荷卸完了後60日を扱います。

Warehouse to Warehouseは、どの倉庫でも無制限に担保されることを意味しません。通常の輸送過程が前提であり、販売待ち、営業在庫、分配、割当、加工または長期保管へ移行すれば、貨物保険が終了している可能性があります。

倉庫保管では、輸送中の衝突・転覆・荷役事故等とは異なり、火災、浸水、盗難、温湿度管理、在庫集中等の危険が中心になります。この危険プロファイルの変化が、別の保管条件や保険料を必要とする理由です。

事故時には、倉庫名だけで判断せず、保管目的、保管期間、次の仕向地、次の輸送手配、在庫登録、指示者および客観的な時系列資料を確認します。

貨物保険から保険金が支払われる可能性がある場合でも、倉庫業者、荷役業者、運送人その他の第三者に対する求償権を保全する必要があります。

具体的な保険期間、Warehouse Attachmentの適用、対象危険、集積限度額、追加保険料、倉庫業者責任および保険金支払可否は、実際の保険証券、Open Cover、特別約款、倉庫契約、保管理由、損害原因および個別の事実関係によって異なります。

同義語・別表記

  • Warehouse Attachment
  • 倉庫保管特約
  • 倉庫保管中の貨物保険
  • 保険期間延長
  • 保険終期延長
  • 保管中担保
  • Warehouse to Warehouse
  • 倉庫リスク

公式情報