外航貨物海上保険の保険期間
概要
外航貨物海上保険の保険期間とは、保険会社が貨物の損害について保険責任を負う時間的及び物流上の範囲をいいます。
一般には「倉庫から倉庫まで」又はWarehouse to Warehouseと説明されますが、出発地から最終倉庫までのすべての移動・待機・保管を無条件で補償する制度ではありません。
Institute Cargo Clauses (A)、(B)及び(C) 1/1/09では、貨物が輸送開始のために最初に動かされた時点から保険が開始し、ordinary course of transit、すなわち通常の輸送過程にある間は継続します。
一方、最終倉庫での荷卸し、通常輸送外の保管・仕分け・分配、コンテナ等の保管目的使用又は本船からの荷卸し完了後60日の経過等によって、最終納品前でも保険が終了することがあります。
航空貨物では、Institute Cargo Clauses (Air) 1/1/09により、最終荷卸場所で航空機からの荷卸しが完了した後30日が一つの終期となります。War、Strikes及びTerrorismの付帯条件は、通常のICCとは異なる保険期間を持つ場合があります。
保険期間の判断では、約款本文、保険証券のFrom/To欄、endorsement、実際の輸送経路、貨物を移動又は保管した目的、通関・D/O・配送の時系列及び事故発生時点を一体として確認します。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| ICC2009の位置づけ | 保険期間条項がICC体系のどこに置かれているか | ICC2009約款(Institute Cargo Clauses 2009)で約款体系全体を扱う |
| 1982年版からの変更 | 変更内容を判断に必要な範囲で要約する | ICC2009新約款の主な変更点で改定内容を詳しく扱う |
| 保険始期 | 輸送開始のための最初の移動と単なる倉庫内移動の区別 | 梱包・搬出事故の記事で作業主体の責任を扱う |
| 保険継続 | ordinary course of transitの判断要素 | 輸送遅延の記事で遅延損害及び費用を扱う |
| 保険終期 | 最終倉庫、途中倉庫、分配、コンテナ保管及び日数制限 | 倉庫保険の記事で輸送終了後の保管危険を扱う |
| 60日・30日基準 | 海上貨物と航空貨物の基本的な期間差 | 各貨物別約款で個別に修正された期間を扱う |
| War・Strikes条件 | 通常ICCと保険期間が異なること | Institute War Clauses及びInstitute Strikes Clausesで補償危険を詳しく扱う |
| Incoterms | 危険移転と保険期間及び被保険利益の違い | 各Incoterms記事で売主・買主間の危険移転を扱う |
| 仕向地・運送変更 | Change of Voyage及びTermination of Contract of Carriageの基本手続 | 航海変更・運送契約打切りの記事で個別請求を扱う |
| 保険期間延長 | 延長申請の時期、必要資料、追加保険料及び書面承認 | 外航貨物海上保険の保険料率と保険料で追加保険料の構造を扱う |
| 事故時の補償可否 | 保険期間内かを判断する手順 | 個別事故の最終的な補償可否は適用約款及び事故事実から判断する |
保険期間制度の目的
貨物保険は、貨物が一定の場所に存在することだけを対象とする保険ではありません。出発地から仕向地へ向かう輸送上の危険を対象とするため、貨物が「通常の輸送過程」に入った時点と、その輸送過程を離れた時点を区別する必要があります。
仮に最終住所へ到着するまで無条件に保険を継続すると、輸送終了後の長期在庫、販売待ち、分配保管及び事業上の倉庫危険まで、輸送保険が際限なく負担することになります。
反対に、港から港までしか補償しないとすると、工場から港までの内陸輸送、積替え、輸入港から最終倉庫までの配送等が補償されず、複合一貫輸送の実態に合いません。
Transit Clauseは、この二つを調整し、通常の輸送に付随する移動・積替え・合理的な待機を対象としながら、在庫保管、販売・分配及び通常輸送終了後の危険を切り離す役割を持ちます。
保険期間の基本判断構造
| 判断段階 | 中心となる質問 | 主な確認事実 | 判断を誤りやすい点 |
|---|---|---|---|
| 保険始期 | 輸送開始のために貨物が最初に動かされたか | 出荷指示、積込予定、トラック手配、移動目的 | 倉庫内で動かしただけでは当然に開始しない |
| 通常輸送中 | 仕向地へ向かうordinary course of transitにあるか | 経路、積替え、待機理由、運送契約 | 物理的に停止していても輸送中の場合がある |
| 途中保管 | 輸送付随保管か、在庫・分配目的の保管か | 倉庫指示、保管期間、次工程、貨物の用途 | 一時保管という名称だけでは決まらない |
| 最終倉庫 | 仕向地の最終倉庫で荷卸しが完了したか | 納品先、荷卸完了、受領記録 | 貨物の検品完了まで当然に続くとは限らない |
| 日数制限 | 本船又は航空機からの荷卸し後、所定日数を超えたか | 荷卸完了日、事故日、延長承認 | 通関遅れでも日数制限が自動停止するわけではない |
| 運送変更 | 仕向地又は運送契約が変更されたか | 変更指示、運送人通知、保険者通知 | 新しい仕向地へ自動的に延長されるとは限らない |
| 被保険利益 | 事故時点で請求者が経済的危険を負っていたか | 売買契約、Incoterms、譲渡書類 | 保険期間内であることだけでは請求権は確定しない |
保険始期―最初に動かされた時点
ICC(A)、ICC(B)及びICC(C) 1/1/09では、保険証券に記載された出発地の倉庫又は保管場所で、貨物が輸送開始のため、運送車両その他の輸送用具へ直ちに積み込まれる目的で最初に動かされた時点から保険が開始します。
重要なのは、貨物が物理的に動いたことだけではなく、その移動の目的です。
| 移動の例 | 保険始期となる可能性 | 判断理由 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 在庫棚の並べ替え | 低い | 輸送開始ではなく倉庫管理上の移動である | 在庫作業指示、倉庫日報 |
| 検品場所への移動 | 事実関係による | 出荷前準備か、通常在庫管理かを確認する | 検品指示、出荷予定 |
| 出荷ピッキング後、積込場所へ移動 | 高い | 直後の車両積込み及び輸送開始を目的とする | 出荷指示、Truck Booking |
| トラック積込みのためフォークリフトで搬出 | 高い | 輸送開始のための直接的な作業である | 搬出記録、積込記録 |
| 数日後の出荷に備えて別倉庫へ移動 | 慎重な確認が必要 | 即時積込みではなく、別の保管工程である可能性がある | 倉庫間指示、保管目的 |
| 輸出梱包工場への移動 | 契約及びFrom欄による | 保険証券上の始点及び梱包工程との関係を確認する | 保険証券、運送指示 |
事故が最初の移動前に発生していれば、倉庫保険、動産総合保険、国内運送保険又は作業業者の賠償責任が問題となる場合があります。
出荷直前であっても、保険証券のFrom欄に記載されていない場所又は貨物が対象外であれば、Transit Clauseだけで保険始期を確定することはできません。
ordinary course of transitの判断
ordinary course of transitは、貨物が売買上又は物流上予定された仕向地へ向かう通常の輸送過程にあることを意味します。
貨物が動いているか停止しているかだけでは決まりません。積替え待ち、通関待ち、運送人の都合による一時保管等は、輸送の一部として認められる可能性があります。
一方、貨物を販売待ち、需要調整、分配、長期在庫又は荷主の都合による保管へ転用した場合には、通常の輸送過程を離れたと判断される可能性があります。
| 判断要素 | 通常輸送の継続を示す事情 | 通常輸送の終了を示す事情 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|
| 保管目的 | 次の運送便を待つための一時待機 | 在庫、販売待ち、需要調整 | 倉庫指示、社内メール |
| 次の仕向地 | 契約時から確定している | 入庫後に販売先を決める | 配送指示、売買契約 |
| 期間 | 輸送上合理的な短期間 | 予定のない長期保管 | 入出庫記録、工程表 |
| 貨物の処理 | 積替えに必要な取扱いだけを行う | 開梱、仕分け、分配、加工を行う | 作業指示、倉庫作業明細 |
| 運送契約 | 同一又は連続する運送契約が継続している | 運送契約が完了し、新たな販売・配送指示を待つ | B/L、運送契約、配送伝票 |
| 遅延原因 | 運送人、港湾混雑、強制荷卸し等 | 荷主が任意に納品を停止した | Arrival Notice、遅延通知 |
| 保管場所 | 積替港、保税倉庫、通過型施設 | 販売用物流センター又は通常在庫倉庫 | 倉庫契約、施設機能 |
個々の要素だけで結論を出すのではなく、貨物の移動目的、当初の輸送計画、契約書類及び事故までの時系列を総合して判断します。
保険終期―最も早い終了事由を確認する
ICC(A)、ICC(B)及びICC(C) 1/1/09では、次の終了事由のうち、最も早く発生した時点で保険が終了します。
| 終了事由 | 終了時点 | 典型的な場面 | 判断資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 最終倉庫での荷卸し | 最終倉庫・保管場所で輸送用具からの荷卸しが完了した時 | 買主倉庫、工場、指定納品場所 | 納品書、荷卸記録、受領書 | 検品又は開梱完了まで続くとは限らない |
| 他の倉庫での通常輸送外保管 | 当該倉庫で荷卸しが完了した時 | 在庫保管、販売待ち、長期保管 | 倉庫指示、保管契約 | 途中倉庫でも保険が終了する |
| 仕分け・分配目的の倉庫 | 当該倉庫で荷卸しが完了した時 | 複数販売先への分配センター | Allocation List、配送計画 | 各納品先が未到着でも終了し得る |
| コンテナ等の保管利用 | 輸送用具又はコンテナを通常輸送外の保管に使うことを選択した時 | コンテナを仮設倉庫として使用 | 保管指示、搬出・開梱予定 | 実際の荷卸し前でも終了し得る |
| 海上貨物の60日経過 | 最終荷卸港で本船からの荷卸しが完了した後60日 | 通関・検査・D/O・配送遅延 | 本船荷卸完了日、事故日 | 遅延が支配外でも自動延長されない |
| 他仕向地への転送開始 | 新しい仕向地への輸送開始のため最初に動かされた時 | 買主変更、納品先変更 | 変更指示、搬出記録 | 当初保険のまま新仕向地へ当然に続かない |
「最終倉庫へまだ到着していない」という事実だけでは、保険継続を証明できません。60日経過、分配倉庫への荷卸し又はコンテナの保管転用等が先に発生すれば、その時点で終了する可能性があります。
海上貨物の60日基準
ICC(A)、ICC(B)及びICC(C) 1/1/09では、最終荷卸港において、本船から貨物の荷卸しが完了した後60日が経過すると、他の終了事由が先に発生していない場合でも保険が終了します。
起算点は、一般的な本船到着日、Arrival Notice発行日、D/O交換日、輸入許可日又はCY搬出日ではありません。約款上は、本船からの荷卸し完了が中心となります。
| 日付 | 60日の起算点になるか | 理由 |
|---|---|---|
| 本船入港日 | 原則としてならない | 荷卸し完了前である可能性がある |
| 本船からの荷卸し完了日 | なる | ICC2009の60日基準の起算点である |
| Arrival Notice発行日 | ならない | 通知書類の日付にすぎない |
| D/O交換日 | ならない | 貨物引渡手続上の日付である |
| 輸入許可日 | ならない | 税関手続と保険期間は別である |
| CY搬出日 | ならない | 既に60日が進行している可能性がある |
通関検査、輸入許可、書類不備、D/O交換、港湾混雑又は納品先都合による遅延があっても、60日の進行が当然に停止するわけではありません。
60日を超える可能性が判明した時点で、事故発生前かつ既存保険の終了前に、保険会社又は保険代理店へ延長を申請する必要があります。
航空貨物の30日基準
Institute Cargo Clauses (Air) 1/1/09では、貨物が最終荷卸場所で航空機から荷卸しされた後30日が、一つの保険終期となります。
海上貨物の60日を航空貨物へ機械的に適用してはなりません。
| 比較項目 | 海上貨物ICC 1/1/09 | 航空貨物ICC (Air) 1/1/09 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 日数制限 | 60日 | 30日 | 輸送手段に対応する約款を確認する |
| 起算点 | 最終港で本船からの荷卸し完了 | 最終荷卸場所で航空機からの荷卸し完了 | 到着案内日ではない |
| 途中保管 | 通常輸送外保管等で早期終了する | 同様に通常輸送外保管等で早期終了する | 日数内でも保険終了があり得る |
| 仕向地変更 | 保険者への迅速な通知が必要 | 保険者への迅速な通知が必要 | 自動延長ではない |
| 運送契約打切り | 継続承認及び追加保険料が必要となる場合がある | 同様に継続承認が必要となる場合がある | 約款上の通知義務を確認する |
通常ICC・War・Strikes・航空貨物の期間比較
| 適用約款 | 主な始期 | 主な終期 | 日数基準 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ICC(A)・(B)・(C) 1/1/09 | 出発地で即時積込みのため最初に動かされた時 | 最終倉庫荷卸し、通常輸送外保管、分配、保管転用又は60日の早い時 | 海上本船荷卸し完了後60日 | Warehouse to Warehouseは無条件ではない |
| ICC (Air) 1/1/09 | 出発地で即時積込みのため最初に動かされた時 | 最終倉庫荷卸し、通常輸送外保管、分配、保管転用又は30日の早い時 | 航空機荷卸し完了後30日 | 海上貨物の60日と混同しない |
| Institute War Clauses (Cargo) 1/1/09 | 貨物又はその一部が外航船へ積み込まれた時 | 最終港での荷卸し又は本船到着後15日の早い時 | 原則15日 | 通常の倉庫間保険ではない |
| Institute Strikes Clauses (Cargo) 1/1/09 | 通常ICCに近い最初の移動時 | 最終倉庫、保管・分配、保管転用又は60日の早い時 | 原則60日 | テロ危険終期を修正するendorsementの有無を確認する |
| 個別貨物約款 | 貨物別条件による | 貨物別条件又はendorsementによる | 契約ごとに異なる | 標準ICCより個別条件が優先する場合がある |
| 国内運送保険 | 国内保険約款及び申込条件による | 国内保険約款及び申込条件による | ICCの60日・30日を当然に適用しない | 外航貨物保険と別契約である |
| 倉庫保険 | 倉庫保管開始又は契約日等 | 保管終了又は契約期間終了等 | 契約期間による | 通常輸送終了後の在庫危険を対象とする |
支配外の遅延でも終期は残る
ICC2009では、被保険者の支配を超える遅延、deviation、forced discharge、reshipment、transshipment及び運送契約上の自由裁量による輸送変更の間も、一定の範囲で保険が継続します。
ただし、この継続は、最終倉庫での荷卸し、通常輸送外保管、コンテナ等の保管転用及び60日・30日の終了事由に従います。
したがって、通関遅れが被保険者の責任ではない場合でも、「支配外の遅延だから60日を超えて自動的に補償される」と判断してはなりません。
また、被保険者は、自ら管理できる事情について合理的な迅速性をもって行動する必要があります。納品先の都合だけで長期保管を選択した場合や、必要な書類取得を放置した場合には、ordinary course of transit及び合理的迅速性の双方が問題になる可能性があります。
運送契約が途中で終了した場合
被保険者の支配を超える事情により、運送契約が当初の仕向地以外の港又は場所で終了した場合、又は最終荷卸し前に輸送が打ち切られた場合、保険も原則として終了する方向となります。
ただし、保険者へ迅速に通知し、保険継続を要請した場合は、保険者が追加保険料及び条件を求めたうえで、一定期間の保管又は転送について継続を認めることがあります。
| 確認事項 | 確認内容 | 必要な対応 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 打切り原因 | 港湾閉鎖、運送人倒産、強制荷卸し等 | 事実及び通知書を収集する | 被保険者の任意変更と区別する |
| 現在地 | 港、倉庫、船上、コンテナ内等 | 保管状況を保険者へ通知する | War条件と通常ICCで期間が異なる |
| 継続希望 | 現地売却、保管、当初仕向地への転送等 | 書面でcontinuation of coverを申請する | 自動継続を前提にしない |
| 追加条件 | 期間、保管条件、追加保険料、survey等 | endorsement又は承認書を取得する | 口頭連絡だけで終えない |
| 再輸送 | 新しい運送人、経路、仕向地 | 新条件及び保険期間を確定する | 新しい危険が引受対象外の場合がある |
仕向地変更とChange of Voyage
保険開始後に被保険者が仕向地を変更した場合は、保険会社へ迅速に通知し、新しい料率及び条件について合意する必要があります。
当初の保険証券にFrom Yokohama to Singaporeと記載されている貨物を、途中でJakartaへ転送することにした場合、Singaporeまでの保険がそのままJakartaまで自動延長されるわけではありません。
合意前に事故が起きた場合でも一定の補償が検討される可能性はありますが、合理的な市場条件で当該危険を引き受けることができた場合等に限られ、無条件の補償ではありません。
仕向地変更が決まった時点で、貨物を新仕向地へ動かす前に通知し、書面による承認を取得することが重要です。
Incotermsの危険移転と保険期間の違い
| 売買条件 | 危険移転の基本 | 保険期間との関係 | 事故時に追加確認する事項 |
|---|---|---|---|
| FCA・CPT・CIP | 指定場所で最初の運送人等へ引き渡した時 | 保険が売主倉庫から開始しても、売買上の危険移転時点とは一致しない場合がある | 事故時の被保険利益、指定場所、引渡方法 |
| FOB・CFR・CIF | 貨物が指定船積港で本船上に置かれた時 | 倉庫間保険は本船積込前から始まる場合があるが、売主・買主の危険負担は別に確認する | 本船積込時点、売主保険、買主保険 |
| DAP・DDP | 指定仕向地で荷卸し前の状態で買主の処分に置かれた時 | 保険終期が売買上の危険移転より先又は後になる可能性がある | From/To欄、荷卸し、通関、最終場所 |
| DPU | 指定場所で荷卸しが完了した時 | 売買上の危険移転と最終倉庫荷卸しが近接しやすい | 指定場所と保険上の最終倉庫が同一か |
| EXW | 原則として売主施設で買主の処分に置いた時 | 買主保険の始期が搬出作業を含むか確認が必要 | 積込み主体、保険証券の始点、被保険利益 |
Incotermsは売主と買主の危険・費用分担を定めます。Transit Clauseは保険会社の責任期間を定めます。両者は別の契約構造です。
事故が保険期間内であっても、請求者が事故時点で被保険利益を持っていなければ、保険金請求が認められない可能性があります。
反対に、売買上の危険が買主へ移転した後であっても、買主の保険が開始していなければ、無保険区間が生じる可能性があります。
フリータイム、Demurrage及びDetentionとの違い
フリータイムは、コンテナ又はターミナルの使用料・保管料が無料となる期間に関する運送・料金上の制度です。貨物保険の保険期間とは別の概念です。
フリータイム内であっても、貨物をコンテナ内で通常輸送外の保管に使用することを選択すれば、保険が終了する可能性があります。
反対に、Demurrage又はDetentionが発生していても、それだけで直ちに貨物保険が終了するとは限りません。ordinary course of transit、保管目的及び60日基準等を確認します。
| 概念 | 主な対象 | 貨物保険期間との関係 |
|---|---|---|
| フリータイム | コンテナ・ターミナル費用 | 保険継続を保証しない |
| Demurrage | ターミナル内のコンテナ超過利用等 | 費用発生と保険終期は別判断 |
| Detention | ターミナル搬出後のコンテナ超過利用等 | コンテナ保管転用の判断材料となる |
| 60日基準 | 貨物保険の時間的終期 | フリータイムとは独立して進行する |
本記事の判断がそのまま適用されない場面
| 場面 | 標準的な判断をそのまま適用できない理由 | 確認すべき契約・資料 |
|---|---|---|
| ICC(1982)が適用される契約 | 始期・終期の文言がICC2009と異なる | 約款名、日付、保険証券 |
| 航空貨物 | 30日基準及び航空貨物用約款が適用される | Institute Cargo Clauses (Air) |
| War危険 | 原則として船上危険を中心とする別の保険期間である | Institute War Clauses |
| Terrorism終期条項付き契約 | 通常のStrikes条件の期間が修正される場合がある | Termination of Transit Clause (Terrorism) |
| 冷凍・冷蔵貨物 | 温度危険及び保管期間が個別条件で制限される場合がある | Frozen Food Clauses、Temperature Clause |
| プロジェクト貨物 | 長期保管、据付前保管及びsurvey条件が追加される | Project Cargo Endorsement、MWS条件 |
| 国内運送だけの契約 | 国内運送保険の独自約款が適用される | 国内運送保険証券 |
| 輸送終了後の在庫保管 | 貨物保険ではなく倉庫・財産保険の領域となる | 倉庫保険、動産総合保険 |
| 個別endorsementで期間変更 | 標準ICCの60日・30日が修正されている | endorsement、特別条件 |
保険期間延長が必要となる場面
| 延長理由 | 想定される危険 | 保険者が確認する事項 | 考えられる条件 |
|---|---|---|---|
| 通関・輸入許可の長期化 | 水濡れ、盗難、温度、火災 | 遅延理由、予定日、保管場所 | 追加保険料、期間限定 |
| 港湾混雑・ストライキ | 長期滞留、積替え、盗難 | 港、貨物、代替経路 | War・Strikes条件の見直し |
| 納品先工事の遅れ | 在庫保管、風水災、接触 | 被保険者都合か、保管設備 | 倉庫条件、免責、survey |
| 検査・修理・再梱包 | 作業中損傷、保管中損害 | 作業主体、期間、作業場所 | 作業危険の追加又は除外 |
| 仕向地変更・転送 | 新航路、積替え、内陸輸送 | 新仕向地、運送人、経路 | 新料率・新条件 |
| 運送契約打切り | 現地保管、再輸送、売却 | 打切り原因、現在地、今後の処置 | continuation of cover、追加保険料 |
| 長期プロジェクト保管 | 洪水、火災、盗難、劣化 | 集積価額、倉庫構造、管理体制 | 別建て保管保険への切替え |
保険期間延長の実務手続
- 標準の保険終期、60日・30日の満了日及び他の終了事由を確認する。
- 延長が必要となる理由、現在地及び予定される新しい終了日を特定する。
- 保険証券番号、貨物名、保険金額、梱包、現在の保管状態及び事故の有無を整理する。
- 倉庫名称・住所、建物構造、消火設備、警備、温度管理及び自然災害危険を確認する。
- 今後の輸送経路、運送人、予定搬出日及び最終納品先を整理する。
- 既存保険が終了する前に、保険会社又は保険代理店へ書面で延長を申請する。
- 延長の可否、追加保険料、免責金額、除外危険、保証条件及びsurvey要否を確認する。
- 保険会社の承認書又はendorsementを取得する。
- 承認された期間・場所・条件を物流担当、倉庫及び荷主へ共有する。
- 延長期間又は場所が再度変更された場合は、改めて通知する。
延長申請を行っただけでは、保険期間が延長されたとは限りません。保険会社の承認及び必要な追加保険料・条件の合意を確認します。
追加保険料は、単純な日割計算とは限りません。貨物価額、延長期間、保管場所、建物構造、自然災害、盗難、温度、危険品、集積価額及び事故実績等によって個別に判断されます。
長期在庫へ移行する場合は、輸送保険の延長ではなく、倉庫保険又は財産保険へ切り替える方が適切なことがあります。
フォワーダーの関与範囲
この五分類は、法令上又は業界全体で確立された法的分類ではなく、本シリーズにおいて、フォワーダーが契約及び実務上どの範囲まで関与しているかを整理するための分析上の枠組みである。
| Standard Five Classifications | 一般的な関与 | 保険期間に関する関与 | 確認すべき限界 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 1. Simple Intermediary | 荷主と運送人等の連絡を取り次ぐ | 到着日、搬出日、遅延情報を伝達する | 保険継続を自ら確約しない | 依頼メール、通知記録 |
| 2. Cargo Transportation Service Provider | 集荷、保管、搬入、配送等を提供する | 実際の移動・荷卸し・保管日時を記録する | 作業受託と保険契約上の権限を区別する | 作業記録、倉庫受領書 |
| 3. NVOCC / House B/L Issuer | House B/Lを発行し契約運送人となる | 自社運送区間、積替え及び運送打切りを通知する | 貨物保険と運送人賠償責任を混同しない | House B/L、運送約款 |
| 4. Door-to-Door Single Contractor | Door-to-Door輸送を一括受託する | 全区間の時系列及び最終荷卸しを管理する | 一括受託が貨物保険の延長権限を当然に与えるものではない | 一括運送契約、配送記録 |
| 5. Agent / Coordinator for Specific Operations | 特定地域又は作業を代理・調整する | 現地保管、通関及び転送状況を収集する | 代理権、通知先及び情報の確定時点を確認する | Agency Agreement、現地報告 |
梱包、保管、検品、積付け、vanning、devanning、drayageその他の実作業は、各分類における具体的な受託業務として確認すべき事項であり、五分類そのものを置き換えるものではなく、第六の分類を構成するものでもない。
五分類だけで責任又は権限を決めることはできません。少なくとも、次の二点を別途確認します。
- 当該フォワーダーがContracting Carrier、Actual Carrier又は単なる手配者のいずれであるか
- 保険会社への事故通知、期間延長申請、仕向地変更通知及び追加保険料の合意について、どのような委任又は権限を持つか
フォワーダーは、到着、荷卸し、通関、保管及び配送の事実情報を整理できますが、適切な保険募集・契約権限がなければ、保険期間の継続を断定したり、延長契約の成立を確約したりしないよう注意する必要があります。
保険期間を判断する実務フロー
- 保険証券及びendorsementから適用約款、日付、From/To欄を確認する。
- 海上貨物、航空貨物、War、Strikesその他のどの条件を判断しているか区別する。
- 出発地で貨物が輸送開始のため最初に動かされた日時を確認する。
- 事故までの運送人、経路、積替地、保管場所及び貨物の移動目的を時系列化する。
- 途中の停止・保管がordinary course of transitに含まれるか確認する。
- 最終倉庫又は他の倉庫で荷卸しが完了していないか確認する。
- 仕分け、分配、販売待ち又はコンテナ等の保管利用が選択されていないか確認する。
- 本船又は航空機からの荷卸し完了日を確定し、60日又は30日を計算する。
- 仕向地変更又は運送契約打切りが発生していないか確認する。
- 保険期間延長、continuation of cover又は新仕向地について書面承認があるか確認する。
- 事故時点で請求者が被保険利益を持っていたか確認する。
- 保険期間内であっても、事故原因が補償危険に該当し、免責されないかを別途確認する。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 倉庫内で搬出前に貨物を落下 | 移動目的が不明確 | 出荷指示、積込予定、CCTV | 即時積込みのための最初の移動か | 作業を止め、時刻と目的を記録する |
| 通関遅れ中に60日を超過 | 延長申請の失念 | 荷卸日、通関記録、証券 | 事故時に標準期間が終了していたか | 満了前に延長を申請する |
| D/O交換遅れによる港湾滞留 | 書類不備又は銀行手続 | Arrival Notice、D/O、メール | 通常輸送か、60日を超えていないか | 遅延判明時に保険者へ通知する |
| 途中の物流センターで分配 | 最終倉庫の認識相違 | 配送計画、Allocation List | 分配目的の倉庫で荷卸しが完了したか | 保険設計時に最終地点を明示する |
| コンテナを仮設倉庫として利用 | 納品先の保管場所不足 | 保管指示、搬出・開梱予定 | 通常輸送外の保管利用を選択したか | 利用決定前に保険者へ照会する |
| フリータイム内なので保険継続と誤認 | 料金制度と保険期間の混同 | フリータイム条件、保険証券 | 他の終了事由が発生していないか | 日数及び保管目的を別々に確認する |
| 仕向地変更後に事故 | 保険者への通知前に転送 | 変更指示、運送記録、通知メール | 新仕向地について条件合意があったか | 貨物を動かす前に通知する |
| 運送契約打切り後の現地保管 | continuation of cover未取得 | 運送人通知、倉庫記録、証券 | 保険継続の書面承認があるか | 打切り判明直後に継続を申請する |
| 航空貨物へ60日を適用 | 海上条件との混同 | AWB、適用約款、荷卸記録 | ICC (Air)の30日基準か | 航空貨物用約款で再計算する |
| War危険も倉庫間で続くと誤認 | 通常ICCとWar条件の混同 | War endorsement、船積・荷卸記録 | 船上積載及び15日基準を満たすか | 通常危険とWar危険を別々に判定する |
事故時に確認すべき資料
| 資料 | 確認する項目 | 保険期間判断における目的 | 不足する場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険証券・保険承認状 | From/To、適用約款、日付、特約 | 契約上の基本期間を特定する | 保険会社から契約一式を取得する |
| 包括予定保険契約 | 標準期間、延長条件、除外貨物 | 個別証明書に省略された条件を確認する | 更新履歴を含めて確認する |
| B/L・Sea Waybill・AWB | 運送区間、積替え、荷卸港 | 予定された輸送過程を確認する | 運送人又はフォワーダーから取得する |
| 本船・航空機荷卸記録 | 荷卸完了日時 | 60日・30日の起算点を確定する | ターミナル又は運送人へ照会する |
| Arrival Notice・D/O | 到着・引渡手続の時系列 | 遅延原因及び手続経過を確認する | メール及びシステム履歴を保存する |
| 通関記録 | 申告、検査、許可、保留理由 | 通関待ちの期間と原因を確認する | 通関業者から記録を取得する |
| 倉庫受領書・入出庫記録 | 入庫、荷卸し、保管目的、出庫 | 途中倉庫又は最終倉庫を判断する | 倉庫作業指示も併せて取得する |
| 配送記録・納品書 | 最終配送、荷卸し、受領 | 最終倉庫での終了時点を確認する | GPS及び受領者記録を確認する |
| 保険延長承認書 | 場所、期間、条件、追加保険料 | 標準終期後の補償を確認する | 口頭説明ではなく書面を取得する |
| 事故写真・サーベイレポート | 事故日時、場所、発見状況 | 事故が期間内に発生したかを確認する | 発見日と発生日を区別して調査する |
制度適用シナリオ1:横浜の輸出倉庫で搬出中に機械を落下した場合
日本の輸出者が、4,800万円相当の精密機械を横浜港から輸出するため、自社倉庫からトラックへ積み込む予定だったとします。
出荷前日の夕方、倉庫作業員が木箱を保管棚から出荷ステージへ移動中に落下させました。
輸出者は、翌朝のトラック積込みに向けた搬出作業であり、ICC(A) 1/1/09の保険は最初の移動時から開始していたと主張しました。
保険会社は、トラックは翌日午後の予定であり、当日の移動は在庫整理又は出荷前保管にすぎず、「immediate loading」のための移動ではなかった可能性があると主張しました。
この場合は、出荷指示、Truck Booking、作業指示、移動時刻、出荷ステージで予定されていた作業及び倉庫の通常運用を確認します。
貨物が動いたという事実だけでなく、その移動が輸送開始のための即時積込みと一体だったかが判断の中心となります。
制度適用シナリオ2:神戸港で通関が長期化し60日後に損害を発見した場合
日本の輸入者が、8,700万円相当の機械設備を神戸港へ輸入したとします。本船からの荷卸しは1月5日に完了しました。
輸入許可に必要な規制書類の確認が長期化し、貨物は保税地域内のコンテナに留置されました。3月9日、荷卸し完了から63日目にコンテナを開けたところ、海水濡れ損害が発見されました。
輸入者は、税関手続の遅れは自社の支配を超えるものであり、貨物はordinary course of transitにあったため、保険は継続していたと主張しました。
保険会社は、支配外の遅延に関する継続規定も60日の終期に従い、期間延長の承認がなかったため、事故が60日後に発生したのであれば期間外であると主張しました。
この場合、損害が実際にいつ発生したか、荷卸し完了日、コンテナ保管の目的、延長申請の有無及び事故原因を確認します。
損害が60日以内に発生していたことを立証できる場合と、63日目に初めて発生した場合では結論が異なります。発見日と発生日を区別する必要があります。
制度適用シナリオ3:名古屋の物流センターで分配前に損害が発生した場合
日本のcargo ownerが、1億2,600万円相当の輸入部品を名古屋港から国内物流センターへ搬入し、その後三つの顧客工場へ分けて配送する計画だったとします。
貨物は物流センターでトラックから荷卸しされ、納品先別に仕分ける前に火災で損傷しました。
cargo ownerは、最終納品先である三工場へ到着しておらず、Warehouse to Warehouse coverは継続していたと主張しました。
保険会社は、物流センターがallocation又はdistributionのために選択された倉庫であり、同センターで荷卸しが完了した時点で保険が終了したと主張しました。
この場合は、保険証券のTo欄、物流センターの役割、入庫後の所有・在庫処理、配送先が事前に確定していたか、仕分け作業の内容及び倉庫契約を確認します。
物流センターが単なる通過型積替施設なのか、在庫・分配拠点なのかが重要な判断要素となります。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| Warehouse to Warehouseならすべての倉庫保管が対象になる | 通常輸送外の保管、仕分け又は分配で終了する場合がある | 倉庫の名称ではなく利用目的を確認する |
| 最終納品前なら必ず保険期間内である | 60日経過等により先に終了することがある | 最も早い終了事由を確認する |
| 貨物を動かした瞬間に保険が開始する | 輸送開始のための即時積込みを目的とする移動が必要である | 移動目的と出荷計画を確認する |
| 通関待ちはすべてordinary course of transitである | 理由、期間及び保管目的によって判断が変わる | 60日基準も別途確認する |
| 支配外の遅延なら60日を超えても自動的に続く | 遅延中の継続も終期条項に従う | 満了前に延長承認を取得する |
| フリータイム中は保険期間内である | フリータイムは料金制度であり保険期間とは別である | 保管目的及び日数を確認する |
| 海上貨物も航空貨物も60日である | ICC (Air) 1/1/09は原則30日である | 輸送手段に対応する約款を確認する |
| War保険も倉庫から倉庫まで続く | War条件は原則として外航船上の期間を中心とする | 通常ICCと別に始期・終期を確認する |
| Incotermsの危険移転と保険終期は同じである | 売買契約と保険契約の異なる概念である | 被保険利益も別途確認する |
| 延長を依頼すれば自動的に延長される | 保険者の承認、条件及び追加保険料の合意が必要である | 書面のendorsementを取得する |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険契約締結時 | 保険会社、保険代理店 | 適用約款、From/To、60日・30日、特約 | 予定経路及び保管を証券へ反映する |
| 出荷準備時 | 倉庫、荷主、物流担当 | 最初の移動、積込予定及び作業主体 | 出荷指示及び時刻を記録する |
| 運送経路決定時 | freight forwarder、運送人 | 積替港、途中倉庫、保管及び最終納品先 | 保険会社へ全経路を申告する |
| 輸入港到着時 | shipping line、ターミナル、通関業者 | 本船荷卸し完了日 | 60日の満了日を管理する |
| 航空貨物到着時 | 航空会社、上屋、通関業者 | 航空機からの荷卸し完了日 | 30日の満了日を管理する |
| 通関・D/O遅延時 | 通関業者、銀行、運送人 | 遅延理由、予定解消日、保管状態 | 満了前に延長を検討する |
| 途中倉庫利用時 | 倉庫、物流担当、保険会社 | 保管目的、分配、作業及び期間 | 通常輸送外となる場合は別保険を手配する |
| コンテナ保管を選択する時 | 荷主、倉庫、freight forwarder | 輸送継続か保管転用か | 選択前に保険会社の承認を得る |
| 仕向地変更時 | 買主、売主、運送人、保険会社 | 新仕向地、経路、料率及び条件 | 貨物を動かす前に書面承認を得る |
| 運送契約打切り時 | 運送人、保険会社、荷主 | 打切り場所、保管、転送及び売却予定 | 迅速にcontinuation of coverを申請する |
| 保険期間延長時 | 保険会社、保険代理店 | 期間、場所、危険、追加保険料及び免責 | endorsementを取得する |
| 事故発生時 | 保険会社、サーベイヤー、運送人 | 事故日時、発見日、場所及び輸送目的 | 証拠を保存し、発生日を調査する |
| 法的争いが生じた時 | 保険会社、海事弁護士、法務担当 | 約款、endorsement、被保険利益、準拠法及び期限 | 権利を留保し各請求期限を管理する |
海事弁護士を利用すべき場面
通常の保険期間確認及び延長申請は、保険会社又は保険代理店と進めます。ただし、次の場合は、海上保険及び国際取引に詳しい弁護士への相談を検討します。
- 貨物の最初の移動が保険始期に該当するか争われている場合
- 途中倉庫が通常輸送上の保管か、分配・在庫保管か争われている場合
- 事故発生日と発見日が異なり、60日又は30日以内の発生を立証する必要がある場合
- 支配外の遅延と保険終期の関係が争われている場合
- 保険期間延長の申請又は承認が成立していたか争われている場合
- 仕向地変更又は運送契約打切り後の補償が争われている場合
- 通常ICC、War、Strikes又はTerrorism条件のどの期間が適用されるか争われている場合
- Incoterms上の危険移転と被保険利益の帰属が争われている場合
- 外国保険者が外国法又は外国裁判管轄を主張している場合
- 保険金請求期限、運送人への事故通知期限又は出訴期限が迫っている場合
貨物保険上の保険期間と、運送人の責任期間、倉庫業者の責任期間及び売買契約上の危険負担は、それぞれ異なる契約・法的根拠によって判断されます。
保険期間について保険会社と協議している場合でも、運送人、倉庫業者その他の第三者への事故通知及び権利保全を省略しないことが重要です。
まとめ
外航貨物海上保険の保険期間は、単に港から港まで、又はすべての倉庫から倉庫までを補償する制度ではありません。
ICC(A)、ICC(B)及びICC(C) 1/1/09では、出発地で輸送開始のために貨物が最初に動かされた時点から始まり、ordinary course of transitにある間は継続します。
保険は、最終倉庫での荷卸し、通常輸送外の保管、仕分け・分配、コンテナ等の保管目的使用又は本船荷卸し完了後60日のうち、最も早い時点で終了します。航空貨物では原則30日です。
被保険者の支配を超える遅延であっても、60日・30日等の終期が自動的に延長されるわけではありません。長期化が見込まれた時点で、保険会社へ延長を申請し、追加保険料及び条件を含む書面承認を取得します。
War条件は通常の倉庫間保険と異なり、原則として外航船への積込みから最終港での荷卸し又は本船到着後15日までを中心とします。通常ICC、War、Strikes、Air及び個別endorsementの期間を分けて確認する必要があります。
事故時は、保険証券、荷卸記録、通関・D/O・倉庫・配送記録を時系列化し、貨物がどこにあったかだけでなく、何の目的で移動又は保管されていたかを確認します。
さらに、保険期間内であっても、事故時に請求者が被保険利益を持っていたか、事故原因が補償危険に該当するか、免責が適用されないかを別途判断する必要があります。
