水濡れ損害の実務
概要
水濡れ損害は、海上輸送で頻繁に問題になる貨物事故の一つです。
貨物や梱包材が濡れ、錆、カビ、変色、腐敗、包装劣化、品質低下、再販売不能などの損害につながることがあります。
水濡れ損害で最も重要なのは、単に「濡れていた」という事実ではなく、何の水で、どこから入り、どの段階で発生したのかを確認することです。
海水濡れ、雨水濡れ、淡水濡れ、コンテナスウェット、梱包内の湿気では、責任判断も保険対応も変わります。
特にコンテナ輸送では、外部からの水侵入なのか、コンテナ内部で発生した結露なのかの切り分けが重要です。
外部水濡れであれば保険対応や運送人責任が問題になりやすい一方、コンテナスウェットや梱包不良と判断されると、免責や回収困難につながることがあります。
この記事で扱う範囲
この記事では、海上輸送における水濡れ損害について、事故原因の切り分け、保険対応、運送人責任、サーベイ、Claim Letter、証拠保全の実務を解説します。
特に、次の論点を扱います。
- 海水濡れ、雨水濡れ、淡水濡れ、コンテナスウェット、梱包不良の違い
- ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)における水濡れ損害の扱い
- SLC、すなわち海・湖・河川水の侵入の考え方
- 塩分反応の意味と限界
- コンテナ外観検査と濡れ方からの原因推定
- 運送人責任が問題になる場合と、免責・回収困難になりやすい場合
- 水濡れ発見から保険金請求・求償対応までの流れ
- フォワーダーが確認すべきチェックポイント
- 実務で問題になりやすいケース
本記事の中心は、水濡れ損害を「濡れていた」という事実だけで処理するのではなく、水の種類、侵入経路、発生時点、保険条件、運送人責任を分けて整理することです。
水濡れ損害で最初に確認すること
水濡れ損害を発見した場合、まず貨物の状態、梱包材の濡れ方、コンテナ内の状態、外装の破損、コンテナ外観、シール状態を確認します。
濡れている範囲が貨物全体なのか、一部なのか、上部なのか、床面付近なのかによって、原因の推定が変わります。
開封時には、貨物を動かす前に写真を撮影します。
貨物上部、側面、底部、梱包材、パレット、コンテナ天井、内壁、床面、扉周辺、通気口、外観、シール、コンテナ番号を記録します。
水濡れ事故では、開梱後に貨物を移動してしまうと原因調査が難しくなります。
また、受領書や納品書には水濡れのリマークを残す必要があります。
無条件で受領してしまうと、後から輸送中の水濡れであったことを説明しにくくなる場合があります。
水濡れの原因類型
水濡れ損害は、大きく分けると、海水濡れ、雨水・淡水濡れ、コンテナスウェット、梱包不良・固有欠陥に分けて整理できます。
| 原因類型 | 主な原因 | 責任判断 | 保険対応 | 確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 海水濡れ | 海水がコンテナ、船倉、輸送用具、貨物に侵入した場合 | コンテナ破損、船倉内事故、荷役中事故などがあれば運送人責任が問題になりやすい | 保険条件により補償対象となる可能性がある | 塩分反応、サーベイレポート、コンテナ外観写真、B/L、Claim Letter |
| 雨水・淡水濡れ | 荷役中の降雨、コンテナ扉不良、倉庫・トラックでの水濡れ | 発生場所と管理者の特定が重要になる | 外部からの偶然な水濡れであれば補償対象となる可能性がある | 濡れ方、受領リマーク、配送記録、倉庫記録、写真 |
| コンテナスウェット | 温度差や湿度変化により、コンテナ内部で結露が発生する現象 | 梱包不良、防湿対策不足、貨物固有の性質として扱われることがある | 外部水侵入とは異なり、免責や回収困難につながりやすい | 天井結露跡、貨物上部の水滴跡、温湿度記録、防湿梱包資料 |
| 梱包不良 | 防水・防湿対策不足、梱包材の含水、乾燥剤不足、密閉不良 | 荷主側の梱包責任が問題になりやすい | 梱包不備免責が問題になることがある | 梱包仕様書、梱包写真、乾燥剤の有無、貨物特性資料 |
| 固有欠陥・自然変化 | 貨物自体が湿気を発する、腐敗しやすい、温度変化に弱い場合 | 運送人責任を問うことが難しい場合がある | 固有欠陥や自然変化として免責が問題になることがある | 貨物特性、品質検査、温湿度記録、保管条件資料 |
水濡れ原因は一つとは限りません。外部水侵入、結露、防湿不足、貨物固有の性質が複合している場合もあります。
海水濡れ・雨水濡れ・結露の違い
海水濡れは、海水がコンテナや船倉、貨物に侵入した場合に問題になります。
塩分を含むため、金属貨物では急速な錆や腐食が発生しやすくなります。
雨水・淡水濡れは、荷役中の降雨、コンテナ破損、扉の不具合、倉庫やトラックでの水濡れなどが原因になることがあります。
塩分反応が出ない場合でも、外部から水が入った可能性はあります。
コンテナスウェットは、外部から水が入ったのではなく、コンテナ内の温度差や湿度変化により内部で結露が発生する現象です。
これは梱包不良、貨物固有の性質、防湿対策不足として扱われやすく、外部水濡れとは分けて判断する必要があります。
塩分反応の意味
海水濡れを確認する際には、塩分反応が重要な手がかりになります。
貨物、梱包材、コンテナ床面、濡れ跡から塩分が検出される場合、海水が関与した可能性が高くなります。
ただし、塩分反応が出たからといって、直ちに運送人責任が成立するわけではありません。
海水がどこから入ったのか、コンテナに破損があったのか、船倉内で海水が入ったのか、荷役中に海水を浴びたのか、過去の汚染なのかを確認する必要があります。
反対に、塩分反応が出ない場合でも、雨水や淡水による外部水濡れの可能性は残ります。
塩分反応は有力な証拠ですが、それだけで原因を断定せず、コンテナ外観、濡れパターン、事故記録、サーベイ結果とあわせて判断します。
コンテナ外観検査
水濡れ損害では、コンテナ外観の確認が不可欠です。
天井、側壁、床面、扉、通気口、シール、パネル接合部、穴あき、凹み、錆穴、修理跡、扉ゴムの状態を確認します。
コンテナ天井や側壁に穴や破損がある場合、外部から雨水や海水が侵入した可能性があります。
扉周辺に水跡がある場合は、扉の密閉不良や荷役中の雨水侵入が疑われます。
コンテナ外観に異常がない場合でも、内部結露や積込み時の湿気、梱包材の含水、床面からの水分などが原因になることがあります。
コンテナ外観に異常がないことは重要な情報ですが、原因を完全に否定するものではありません。
濡れ方から原因を読む
貨物の濡れ方は、原因推定の重要な手がかりです。
| 濡れ方 | 疑われる原因 | 確認する資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 貨物上部や梱包天面に水滴状の跡がある | コンテナ天井からの結露落下、天井からの漏水 | 天井写真、貨物上部写真、温湿度記録、塩分反応 | 結露か外部水侵入かを分けて確認する |
| 扉側から水濡れが広がっている | 扉ゴム不良、扉周辺からの水侵入、荷役中の雨濡れ | 扉写真、床面水跡、シール記録、受領リマーク | 扉付近の写真を重点的に残す |
| 床面から貨物下部に水が上がっている | コンテナ床面の水たまり、倉庫浸水、トラック床面の水 | 床面写真、パレット写真、倉庫記録、配送記録 | コンテナ内か国内配送中かを時系列で確認する |
| 貨物の一部だけが集中的に濡れている | 局所的なコンテナ破損、荷役中の雨濡れ、隣接貨物からの漏れ | 該当箇所写真、コンテナ外観、積付図、隣接貨物情報 | 濡れた位置とコンテナ破損位置を照合する |
| 貨物全体に湿気・カビが広がっている | コンテナスウェット、防湿不良、長期保管中の湿気 | カビ写真、温湿度記録、防湿梱包資料、航路情報 | 外部水侵入ではなく内部結露の可能性を確認する |
ただし、濡れ方だけで原因を決めることはできません。貨物を移動する前の写真、コンテナ内の水跡、梱包材の濡れ方、塩分反応、サーベイ結果を合わせて判断する必要があります。
ICC条件での水濡れ担保
貨物海上保険では、水濡れ損害の補償可否は保険条件によって変わります。
単に「貨物保険があるか」ではなく、どのICC条件か、特約の有無、水濡れ原因が何かを確認する必要があります。
ICC条件別の水濡れ損害の整理
| 保険条件 | 水濡れ損害の扱い | 補償対象になりやすい例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ICC(A) | 広い条件であり、偶然な外部水濡れは補償対象となる可能性がある | コンテナ破損による雨水侵入、海水侵入、荷役中の偶然な水濡れ | 梱包不良、固有欠陥、通常の自然変化などの免責に注意する |
| ICC(B) | 担保危険が限定され、水濡れではSLCの侵入が重要な論点になる | 海・湖・河川水が船舶、輸送用具、コンテナ、保管場所へ侵入した場合 | 単なる結露や梱包内湿気はSLCと異なるため慎重な確認が必要 |
| ICC(C) | 担保危険がさらに限定され、水濡れ単独では補償対象になりにくい | 座礁、沈没、火災など担保危険に伴って水濡れが発生した場合など | 通常の雨濡れや結露は対象外となりやすい |
| 水濡れ特約がある場合 | 標準条件とは別に、水濡れ損害を拡張して扱うことがある | 雨濡れ、淡水濡れ、特定区間での水濡れなど | 対象範囲、免責、証明資料を保険証券で確認する |
ICC(A)であっても、すべての水濡れが自動的に補償されるわけではありません。
また、ICC(B)ではSLCが重要な論点となりますが、外部水の侵入であることを資料で説明できるかが問題になります。
SLCの意味
SLCとは、Sea, Lake or River Water の略で、海水・湖水・河川水が輸送用具や保管場所に侵入したことによる損害を指します。
水濡れ損害の保険実務では、外部水がどこから侵入したかを確認する際の重要な考え方です。
SLCが問題になる場合、単に貨物が濡れているだけでは足りません。
海水・湖水・河川水がコンテナ、船倉、輸送用具、保管場所へ侵入したことを示す必要があります。
塩分反応、コンテナ破損、船会社報告、サーベイレポートなどが判断材料になります。
コンテナスウェットや梱包材内部の湿気は、SLCとは異なる論点です。
内部結露は外部水の侵入ではないため、ICC(B)上のSLCとして扱えるかは慎重に判断する必要があります。
よくある誤解
水濡れ損害では、塩分反応、ICC条件、コンテナスウェットについて誤解が生じやすくなります。
| よくある誤解 | 正しい理解 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 塩分反応があれば運送人責任が成立する | 塩分反応は海水関与の有力な手がかりだが、侵入経路や管理区間の確認が必要である | コンテナ破損、船倉事故、荷役中事故、過去汚染の可能性を確認する |
| コンテナスウェットは保険対象である | コンテナスウェットは、梱包不良、貨物固有の性質、防湿不足として扱われることがある | 外部水侵入か内部結露かを資料で切り分ける |
| 水濡れなら全件ICC(A)で対応できる | ICC(A)でも梱包不良、固有欠陥、通常の自然変化などの免責が問題になる | 保険条件だけでなく原因と免責を確認する |
| ICC(B)なら雨水濡れもすべて補償される | ICC(B)ではSLCの侵入が中心論点になり、単なる雨濡れや結露は慎重な判断が必要になる | 水の種類、侵入経路、濡れ方、サーベイ結果を確認する |
| コンテナ外観に異常がなければ水濡れは輸送中事故ではない | 外観に異常がなくても、扉密閉不良、過去汚染、内部結露などの可能性がある | 外観だけでなく内部写真、濡れパターン、塩分反応を確認する |
| 受領後に写真を撮れば十分である | 貨物を動かす前、開梱直後の写真が重要である | 貨物、梱包材、コンテナ内、床面、扉周辺を移動前に撮影する |
| サーベイを待ってからClaim Letterを出せばよい | Claim Letterは権利保全のため、サーベイレポートを待たずに期限内提出を検討する | 原因未確定でも、事故通知として早めに対応する |
運送人責任との関係
水濡れ損害で運送人責任を追及するには、貨物が運送人の管理下で水濡れしたことを示す必要があります。
たとえば、コンテナに穴があった、船倉内で海水が入った、荷役中に雨濡れした、CY保管中に水濡れしたといった事情が確認できれば、運送人や関係業者への請求を検討します。
一方、コンテナスウェット、梱包不良、防湿対策不足、貨物固有の性質が原因と判断される場合、運送人は免責を主張することがあります。
運送人は通常、貨物ごとの防湿設計や梱包内部の状態までは保証しません。
水濡れ事故では、運送人へのClaim Letterを早期に出すことが重要です。
原因調査が未了でも、通知期限や請求期限を失わないよう、事故発生の事実と責任追及の可能性を通知しておく必要があります。
フォワーダーが注意すべき点
フォワーダーは、水濡れ事故の直接原因者でない場合でも、荷主との窓口として事故対応を求められることがあります。
特にHouse B/Lを発行している場合や、CFS、国内配送、海外代理店を含めて手配している場合には、荷主から説明を求められやすくなります。
フォワーダーは、事故発見時に責任を即断するのではなく、海水濡れ、雨水濡れ、コンテナスウェット、梱包不良、固有欠陥を切り分ける資料を集めます。
写真、シール記録、コンテナ外観、濡れパターン、塩分反応、サーベイ、保険条件を確認します。
また、貨物保険が付保されている場合は、保険会社または保険代理店へ速やかに通知するよう荷主に案内します。
水濡れ損害は、発見直後の状態が最も重要な証拠になるため、対応の遅れが回収可能性に影響します。
保険金請求で必要になる資料
水濡れ損害の保険金請求では、原因資料と損害額資料の両方を揃えることが重要です。
| 確認目的 | 必要になりやすい資料 | 確認される内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険内容の確認 | 保険証券、保険申込内容、付保条件 | ICC条件、水濡れ担保、免責、特約の有無 | ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)で扱いが異なる |
| 輸送事実の確認 | B/L、AWB、インボイス、パッキングリスト | 貨物名、数量、輸送区間、船名、コンテナ番号 | 事故貨物と保険対象貨物の同一性を確認する |
| 事故状態の確認 | 事故写真、開梱時写真、コンテナ内写真、梱包材写真 | 濡れ範囲、濡れ方、損害箇所、発見時状態 | 貨物を動かす前の写真が重要になる |
| 原因確認 | 塩分反応、サーベイレポート、コンテナ外観検査、温湿度記録 | 海水濡れ、雨水濡れ、結露、梱包不良の切り分け | 一つの資料だけで原因を断定しない |
| 受渡し状況確認 | 受領書、納品書、リマーク、搬入記録、配送記録 | 事故発見時点、受領時の異常、輸送中事故の可能性 | 無条件受領は後の説明を難しくする |
| 損害額確認 | 修理見積、再梱包費用、検査費用、廃棄費用、残存価額資料 | 請求金額の根拠、販売不能の理由 | 原因資料と損害額資料を分けて整理する |
| 権利保全確認 | Claim Letter控え、送付記録、相手方回答 | 運送人や関係業者への通知状況 | サーベイレポートを待たずに期限管理する |
水濡れ発見から保険金請求・求償完了までの流れ
水濡れ事故では、発見直後の証拠保全が最も重要です。水濡れ原因の確認、保険会社への事故一報、サーベイ、Claim Letter、損害額資料の整理を並行して進めます。
| 段階 | 主な対応 | 確認するポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 水濡れ発見時 | 貨物を動かす前に写真を撮影する | 濡れ範囲、発見場所、外装異常、コンテナ番号 | 開梱直後の状態を必ず記録する |
| 受領時対応 | 受領書や納品書にリマークを残す | 水濡れ、外装破損、数量不足、異臭、カビ | 無条件受領を避ける |
| 事故一報 | 保険会社または保険代理店へ連絡する | 保険証券番号、事故内容、貨物状態、サーベイ要否 | 損害額未確定でも早期に連絡する |
| 現物保全 | 貨物、梱包材、ラベル、コンテナ内状態を保全する | 外装、内装、床面、扉周辺、梱包材、パレット | 廃棄、修理、再梱包前に確認を取る |
| 原因確認 | 塩分反応、コンテナ外観、濡れ方、温湿度記録を確認する | 海水、雨水、結露、梱包不良、固有欠陥の切り分け | 原因を早期に断定しない |
| サーベイ手配 | サーベイヤーによる現物確認を調整する | 訪問日時、立会者、検査対象、必要資料 | サーベイ前に貨物状態を変えない |
| Claim Letter提出 | 運送人、NVOCC、倉庫会社、配送会社へ必要な通知を行う | 提出期限、送付先、事故概要、責任追及の可能性 | サーベイレポートを待たずに期限管理する |
| 損害額資料整理 | 修理費、検査費、再梱包費、廃棄費、残存価額を整理する | 請求金額、販売不能理由、処分資料 | 水濡れ原因資料と金額資料を両方揃える |
| 保険金請求 | 保険金請求書と必要資料を提出する | 保険条件、事故原因、損害額、免責、残存価額 | ICC条件により補償可否が変わる |
| 求償対応 | 保険会社または荷主側で運送人等への求償を検討する | 原因資料、Claim Letter、相手方回答、責任関係 | 保険請求と求償資料を分けて管理する |
事故後にやってはいけないこと
水濡れ損害では、事故品をすぐに廃棄したり、梱包材を処分したり、貨物を移動してしまうと、原因調査が難しくなります。
衛生上や安全上の理由で処分が必要な場合でも、処分前に写真、サーベイ、保険会社への連絡を行うことが望まれます。
また、受領書にリマークを残さず無条件で受領すると、後から輸送中の事故であることを説明しにくくなる場合があります。
納品先で水濡れを発見した場合は、受領書や納品書に水濡れ、外装異常、数量不足などを記録します。
原因が分からない段階で「結露だから仕方ない」「海水濡れだから運送人責任」と断定することも避けるべきです。
水濡れ事故では、原因を資料で確認する前に結論を出すと、保険対応や求償に支障が出ることがあります。
実務で問題になりやすいケース
水濡れ損害では、原因の切り分け、保険条件、受領リマーク、Claim Letter、証拠保全が問題になりやすくなります。
| ケース | 問題の内容 | 確認すべき点 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 塩分反応が出たため運送人責任と断定したケース | 海水関与の可能性はあるが、侵入経路や管理区間が未確認 | コンテナ破損、船倉事故、荷役中事故、過去汚染 | 塩分反応だけで断定せず、サーベイと外観検査を行う |
| コンテナ天井から水滴が落ちたケース | 外部漏水かコンテナスウェットかの判断が難しい | 天井状態、温湿度、貨物上部の濡れ方、塩分反応 | 外部水侵入と内部結露を切り分ける |
| 納品先で水濡れを発見したが受領書にリマークがないケース | 輸送中の事故であることを説明しにくい | 納品時写真、開梱時刻、受領状況、外装異常 | 受領時に異常があれば必ずリマークを残す |
| CFS搬出後に水濡れが判明したケース | CFS保管中、配送中、納品先保管中のどこで発生したか争点になる | CFS搬出記録、配送記録、納品記録、写真 | 発見場所と輸送経路を時系列で整理する |
| 水濡れ貨物を廃棄してから保険会社へ連絡したケース | 現物確認ができず、原因や損害範囲の確認が難しくなる | 廃棄前写真、廃棄理由、廃棄証明、品質検査 | 廃棄前に保険会社へ連絡し、証拠資料を残す |
| ICC(C)条件で水濡れ事故を請求したケース | 水濡れ単独では補償対象になりにくい | 担保危険との関係、事故原因、保険条件 | ICC条件と特約の有無を確認する |
| 梱包材の含水が原因と疑われたケース | 外部水侵入ではなく、梱包不良や防湿不足が問題になる | 梱包仕様、乾燥剤、防湿材、貨物特性、温湿度 | 梱包設計と輸送環境を確認する |
| サーベイレポートを待ってClaim Letterが遅れたケース | 運送人等への権利保全期限を失う可能性がある | Claim Letter提出期限、B/L条件、事故発見日 | 原因未確定でも、必要な通知を先行する |
確認チェックリスト
水濡れ損害では、事故発見時、受領時、原因確認時、保険請求時、求償対応時で確認すべき相手と内容を分けて管理します。
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 水濡れ発見時 | 荷主・荷受人・倉庫・納品先 | 発見日時、発見場所、濡れ範囲、貨物状態 | 貨物を動かす前に写真を撮影する |
| 受領時 | 配送会社・倉庫・納品先 | 受領書、納品書、外装異常、水濡れリマーク | 無条件受領を避け、異常を記録する |
| コンテナ確認時 | フォワーダー・倉庫・配送会社 | コンテナ番号、シール番号、外観、扉、天井、床面 | 外観写真と内部写真を残す |
| 原因確認時 | サーベイヤー・保険会社・荷主 | 海水濡れ、雨水濡れ、結露、梱包不良、固有欠陥の可能性 | 塩分反応や濡れ方だけで断定しない |
| 保険条件確認時 | 保険会社・保険代理店 | ICC条件、水濡れ担保、SLC、免責、特約の有無 | ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の違いを確認する |
| サーベイ手配時 | 保険会社・サーベイヤー・倉庫 | サーベイ要否、実施場所、立会者、必要資料 | サーベイ前に貨物状態を変えない |
| Claim Letter確認時 | 運送人・NVOCC・倉庫会社・配送会社 | 提出要否、提出期限、送付先、事故概要 | サーベイ結果を待たず、期限内通知を検討する |
| 損害額確認時 | 荷主・修理業者・検査業者・処分業者 | 修理費、検査費、再梱包費、廃棄費、残存価額 | 水濡れ原因資料と損害額資料を分けて整理する |
| 廃棄・処分時 | 荷主・保険会社・処分業者 | 廃棄理由、品質検査、処分前写真、廃棄証明 | 処分前に保険会社へ確認する |
| 求償対応時 | 保険会社・フォワーダー・運送人 | 責任原因、証拠資料、Claim Letter、相手方回答 | 保険請求と運送人求償を分けて管理する |
具体例
輸入コンテナを開封したところ、貨物の一部に水濡れと錆が確認されたケースを考えます。
貨物はコンテナ扉側に近い位置から濡れており、外装段ボールの側面と下部に水跡が集中していました。
荷主は、コンテナ内結露ではなく、外部からの水侵入を疑いました。
サーベイの結果、コンテナ扉周辺のゴムパッキンに劣化があり、扉付近の床面にも水跡が確認されました。
さらに、濡れた梱包材から塩分反応が検出され、海水または海水を含む水が外部から侵入した可能性が高いと判断されました。
このケースでは、単なるコンテナスウェットではなく、外部水侵入による水濡れ損害として整理できる可能性があります。
B/L、コンテナ番号、シール番号、コンテナ外観写真、塩分反応、サーベイレポート、Claim Letterを揃えることで、貨物保険での対応や運送人・関係業者への求償を検討しやすくなります。
実務上のポイント
水濡れ損害では、海水濡れ、雨水濡れ、淡水濡れ、コンテナスウェット、梱包不良、固有欠陥を切り分けることが最も重要です。
原因によって、運送人責任、貨物保険、免責、請求先が変わります。
ICC条件では、水濡れがどのように担保されるかが保険条件によって異なります。
特にSLC、すなわち海・湖・河川水の侵入が問題になる場合には、塩分反応、コンテナ破損、外部水の侵入経路を資料で示す必要があります。
水濡れ事故の成否は、発見直後の証拠保全に大きく左右されます。
写真撮影、リマーク記入、コンテナ外観確認、塩分反応、サーベイ、保険会社への早期通知を行い、事故原因と損害額を説明できる状態を整えることが実務上の基本です。
まとめ
水濡れ損害は、海上輸送で頻繁に問題になる貨物事故の一つです。
水濡れ事故では、単に貨物が濡れているかどうかではなく、海水濡れ、雨水濡れ、淡水濡れ、コンテナスウェット、梱包不良、固有欠陥のどれに近いかを確認する必要があります。
ICC条件では、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)で水濡れ損害の扱いが異なります。特にICC(B)では、SLC、すなわち海・湖・河川水の侵入が重要な論点になります。
塩分反応は海水関与を示す重要な手がかりですが、それだけで運送人責任が成立するわけではありません。侵入経路、コンテナ外観、濡れ方、サーベイ結果、管理区間を合わせて確認します。
水濡れ損害では、発見直後の写真撮影、受領リマーク、現物保全、サーベイ手配、保険会社への事故一報、Claim Letterの提出が重要です。
原因を早期に断定せず、保険請求と運送人求償を分けて管理することが、水濡れ損害対応の実務上の基本です。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://www.marineinsurance.jp/
