英国海上保険法における分損・単独海損・共同海損
英国海上保険法における分損・単独海損・共同海損とは
英国海上保険法における分損・単独海損・共同海損とは、海上事故によって発生した損害や費用を、その性質、発生原因、負担関係及び保険上の回収方法に応じて区別する考え方です。
MIA1906第56条では、損害は全損又は分損に区分され、全損に該当しない損害は分損とされています。貨物の一部破損、濡損、汚損、数量不足、変形、外装破損、品質低下などは、状況により分損として整理されます。
しかし、分損に関係する損害や費用が、すべて同じ方法で処理されるわけではありません。MIA1906第64条から第66条は、単独海損、Particular Charges、救助料、共同海損行為、共同海損損害及び共同海損分担金を区別しています。
特に共同海損では、貨物自体に損害がなくても、船舶、貨物及び運賃を共同の危険から救うために支出された費用について、貨物所有者が共同海損分担金の支払いを求められることがあります。
したがって、貨物事故では、貨物が壊れたかどうかだけでなく、誰の財産に損害が発生したのか、共同の安全のための犠牲又は費用なのか、外部の救助者による救助料なのか、被保険者自身が支出した保全費用なのかを分けて確認する必要があります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| 分損 | MIA1906第56条に基づく、全損以外の損害という基本区分 | 現実全損及び推定全損の成立要件は「英国海上保険法における全損・現実全損・推定全損」で扱います。 |
| 単独海損 | MIA1906第64条に基づく、担保危険により個別の保険対象物に発生した共同海損以外の分損 | 貨物損害額の具体的な算定方法は、貨物の分損に関する専門記事で扱います。 |
| Particular Charges | 被保険者又は被保険者のために支出された、保険対象物の安全又は保存のための費用 | Sue and Labour及び損害防止費用の回収条件は、それぞれの専門記事で扱います。 |
| 救助料 | MIA1906第65条に基づく、海事法上、救助者が回収できる救助料の性質 | 救助契約及び救助報酬の具体的な算定は、サルベージの専門記事で扱います。 |
| 共同海損行為 | 共同の危険から財産を守るために任意かつ合理的に行われる特別な犠牲又は支出 | ヨーク・アントワープ規則における各費用の詳細な算入条件は別記事で扱います。 |
| 共同海損損害 | 共同海損行為により、又はその直接の結果として生じる共同海損犠牲及び共同海損費用 | 船舶、貨物及び運賃ごとの精算価額の詳細な計算方法は別記事で扱います。 |
| 共同海損担保 | 共同海損盟約書、共同海損保証状及び現金担保の役割 | 個別事件における担保文言の法的有効性や抗弁は、弁護士又は保険会社への確認が必要です。 |
| 共同海損精算 | 共同海損精算人による資料収集、精算書作成、期間制限及び分担金確定までの基本的な流れ | 個別案件の精算計算、求償、時効及び訴訟手続は、適用契約、準拠法及び規則ごとに確認します。 |
分損制度の目的と背景
海上事故では、事故によって直接損傷した財産だけでなく、損害の拡大を防ぐために支出した費用、船舶と積荷を救うために犠牲にした財産、外部の救助者に支払う救助料など、性質の異なる損害と費用が同時に発生することがあります。
これらを一つの「貨物事故」として処理すると、本来その財産の所有者だけが負担すべき損害と、共同の海上冒険に参加する関係者全体で分担すべき損害が混在します。
MIA1906第64条から第66条は、個別の保険対象物に生じた損害、個別の財産を保存するための費用、海事法上の救助料及び共同の安全のための犠牲・費用を分離し、保険者から回収できる範囲を整理するための基本規定です。
ここでいうAverageは、単なる算術上の平均という意味ではありません。海上保険及び海事法では、航海中に発生した損害や費用の負担及び分担に関係する用語として使用されます。
分損に関する用語の階層
| 区分 | 基本的な意味 | 直接の負担者 | 他の関係者からの分担 | 主な保険上の確認 |
|---|---|---|---|---|
| 分損 | 全損に該当しない損害の総称 | 損害を受けた利益の所有者 | 損害の性質による | 担保危険、免責、損害額及び保険金額 |
| 単独海損 | 担保危険により個別の保険対象物に生じた、共同海損ではない分損 | 損害を受けた保険対象物の所有者 | 原則として共同分担はない | 事故原因が担保危険か、損害が保険対象に属するか |
| Particular Charges | 個別の保険対象物の安全又は保存のために支出された費用 | 費用を支出した被保険者 | 通常は共同海損分担の対象ではない | 費用の必要性、合理性、保険条件及びSue and Labourとの関係 |
| 救助料 | 海事法上、救助者が回収できる救助の対価 | 救助された財産の利害関係者 | 救助価額等に応じて負担が配分されることがある | 担保危険との関係、救助料の性質及び保険条件 |
| 共同海損犠牲 | 共同の安全のために意図的に犠牲にされた財産の損害 | 当初は犠牲となった財産の所有者 | 他の共同海上冒険の利益から分担を受ける | 共同海損行為の成立、担保危険及び保険証券 |
| 共同海損費用 | 共同の安全のために特別に支出された費用 | 当初は費用を支出した当事者 | 他の共同海上冒険の利益から分担を受ける | 費用の共同性、特別性、合理性及び精算上の算入可否 |
| 共同海損分担金 | 共同海損損害を船舶、貨物、運賃等の利害関係者が割合に応じて負担する金額 | 分担義務を負う各利害関係者 | 精算価額等に基づいて按分される | 保険価額、保険条件、担保危険、過少保険及び免責 |
分損制度が問題になる主な場面
| 発生場面 | 主に問題となる区分 | 中心となる確認事項 | 最初に行う対応 |
|---|---|---|---|
| 一部貨物だけが海水で濡れた | 単独海損 | 浸水原因、損害範囲、担保危険及び免責 | 写真、検品記録、Survey Report及び事故原因資料を確保する |
| 濡れた貨物を乾燥・再梱包した | Particular Charges | 費用の必要性、合理性及び損害軽減との関係 | 作業前後の状態、見積書、請求書及び作業指示を保存する |
| 座礁船に外部の救助者が救助作業を行った | 救助料 | 救助者の法的地位、救助契約、救助成功及び救助価額 | 救助契約、担保要求及び保険会社からの案内を確認する |
| 船舶を救うために一部貨物を投棄した | 共同海損犠牲 | 共同の危険、意図的な犠牲、合理性及び因果関係 | 共同海損宣言、航海記録、事故報告及び貨物明細を確認する |
| 火災の消火によって別の貨物が濡れた | 共同海損犠牲又は単独海損 | 消火行為が共同の安全を目的としたものか | 火災原因と消火行為による損害を分けて記録する |
| 避難港で荷揚げ・保管・再積込みが行われた | 共同海損費用 | 避難理由、特別費用、適用規則及び精算上の算入可否 | 各費用の請求書、作業記録及び避難港入港理由を整理する |
| 共同海損宣言後に貨物の引渡しを受ける | 共同海損担保 | 共同海損盟約書、共同海損保証状又は現金担保の要否 | 書類へ署名する前に貨物保険会社又は保険代理店へ連絡する |
| 共同海損精算書が発行された | 共同海損分担金 | 精算価額、分担率、控除、期間制限、担保文言及び保険回収 | 精算書一式を保険会社へ提出し、支払義務と保険対応を確認する |
各制度の適用要件
| 制度・区分 | 主な要件 | 欠けると問題になる要素 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 分損 | 全損に該当しない損害であること | 実際には全部滅失又は推定全損に該当する可能性 | 数量資料、損害明細、残存価値、修理・回復可能性 |
| 単独海損 | 保険対象物の分損であり、担保危険による損害で、共同海損ではないこと | 原因が免責危険、固有の瑕疵、梱包不良又は通常の減耗である場合 | Survey Report、写真、B/L、事故報告、保険証券 |
| Particular Charges | 個別の保険対象物の安全又は保存のために支出され、共同海損又は救助料に該当しない費用であること | 通常の事業費用、共同海損費用又は救助料に該当する場合 | 作業指示、見積書、請求書、貨物状態記録、費用発生理由 |
| 救助料 | 海事法上、救助者が回収できる救助料であり、担保危険による損害の防止に関係すること | 単なる曳航契約、修理契約又は被保険者側が雇用した作業費である場合 | 救助契約、救助報告、担保書類、裁定・和解資料、救助価額 |
| 共同海損行為 | 危険時に、共同の海上冒険に属する財産を保存する目的で、特別な犠牲又は支出が任意かつ合理的に行われたこと | 共同の危険、特別性、任意性、合理性又は共同保存目的がない場合 | 船長報告、航海日誌、事故報告、作業命令、費用資料 |
| 共同海損損害 | 共同海損行為によって、又はその直接の結果として損害又は費用が生じたこと | 共同海損行為との因果関係がない損害 | 事故時系列、損害発生記録、作業報告、精算資料 |
| 共同海損分担金 | 共同海損損害が成立し、適用される海事法及び共同海損規則に従って各利益へ按分されること | 分担対象価額、貨物価額又は利害関係が確認できない場合 | 共同海損精算書、Commercial Invoice、B/L、保険価額資料 |
| 保険者からの回収 | 保険証券に別段の定めがなく、損害又は分担金が担保危険の回避又はその回避に関連して発生していること | 免責危険、無保険、過少保険、保険期間外又は保険対象外である場合 | 保険証券、協会貨物約款、事故原因資料、精算書、請求書 |
対象外又は直ちには適用されない場面
| 場面 | 直ちに該当しない区分 | 理由 | 追加確認 |
|---|---|---|---|
| 通常の荷役費用や予定された港湾費用 | 共同海損費用 | 共同海損には通常の航海費用ではなく、危険時の特別な費用であることが必要です。 | 事故がなければ発生しなかった費用かを確認します。 |
| 経年劣化、自然減量又は固有の瑕疵による品質低下 | 単独海損としての保険回収 | 分損であっても、担保危険による損害でなければ保険金の対象とは限りません。 | 事故原因、貨物特性及び免責条項を確認します。 |
| 貨物所有者が通常業務として行った再梱包 | Particular Charges | 保険対象物の安全又は保存のために必要となった特別な費用とは限りません。 | 事故との因果関係及び通常費用との差額を確認します。 |
| 特定貨物だけを守るための費用 | 共同海損費用 | 共同の海上冒険全体を保存する目的がなければ、共同海損とは限りません。 | Particular Charges又は損害防止費用に該当するかを確認します。 |
| 被保険者が自ら雇った作業者による救助的作業 | MIA1906第65条の救助料 | 被保険者、その代理人又は雇用した者による費用は、海事法上の救助料と区別されます。 | Particular Charges又は共同海損損害に該当するかを確認します。 |
| 危険が存在しない時点で行った任意の貨物処分 | 共同海損犠牲 | 共同海損行為には、危険時に共同の財産を保存する目的が必要です。 | 危険の存在、処分理由及び意思決定記録を確認します。 |
| 共同海損宣言が出されたという事実だけ | 共同海損分担義務の最終確定 | 宣言は手続開始の通知であり、すべての費用が自動的に共同海損へ算入されるわけではありません。 | 適用規則、共同海損精算書及び各費用の算入根拠を確認します。 |
| 貨物保険へ加入しているという事実だけ | 共同海損分担金の全額回収 | 保険条件、保険価額、免責、担保危険及び過少保険によって回収範囲が変わります。 | 保険証券及び協会貨物約款を確認します。 |
MIA1906第64条における単独海損
MIA1906第64条における単独海損とは、保険対象物に発生した分損のうち、担保危険によって生じ、共同海損損害に該当しない損害をいいます。
例えば、航海中の海水侵入によって一部の貨物だけが濡れた場合、荷崩れによって特定の貨物だけが破損した場合、衝突事故によって一部の貨物だけが変形した場合などは、単独海損として検討されることがあります。
ただし、貨物に損害があるだけでは足りません。事故原因が保険で担保される危険であること、損害と事故との間に因果関係があること、免責事項に該当しないことを確認する必要があります。
また、共同の安全のために意図的に貨物を損傷又は処分した場合には、見た目は特定貨物だけの損害であっても、共同海損犠牲として整理される可能性があります。
Particular Chargesとは
MIA1906第64条では、被保険者又は被保険者のために、保険対象物の安全又は保存のために支出された費用のうち、共同海損及び救助料に該当しないものをParticular Chargesとしています。
Particular Chargesは、貨物自体に発生した単独海損とは別の区分です。貨物の損害額と、貨物を保全するために支出した費用を一つの金額にまとめず、別々に整理する必要があります。
貨物事故では、検品、仕分け、乾燥、洗浄、再梱包、一時保管、残存物の移動、損傷品と健全品の分離、品質検査などの費用が発生することがあります。
これらの費用が保険から回収できるかは、費用が必要かつ合理的であったか、担保危険による損害を防止又は軽減するための費用か、保険証券やSue and Labourに関する規定がどのように定められているかによって判断されます。
MIA1906第64条上、Particular Chargesに分類されることと、保険金として当然に全額回収できることは同じではありません。
MIA1906第65条における救助料
MIA1906第65条における救助料とは、海事法上、救助者が契約とは独立した法的性質に基づいて回収できる救助の対価をいいます。
船舶の座礁、火災、漂流、機関故障、沈没危険などの場面では、外部の救助者が船舶、貨物、燃料その他の財産を救助することがあります。救助が成功した場合には、救助された財産の価額や救助作業の危険性などを考慮して救助料が問題になることがあります。
MIA1906第65条は、担保危険による損害を防止するために発生した救助料について、保険証券に別段の定めがない限り、その危険による損害として回収できる場合があるとしています。
一方、被保険者、被保険者の代理人又は被保険者が雇った者が行った救助的な作業の費用は、MIA1906第65条の救助料には含まれません。その費用は、発生状況に応じてParticular Charges又は共同海損損害として検討されます。
「契約とは独立している」という表現は、救助作業について書面や合意が一切存在しないことを意味するものではありません。単なる曳航、修理、荷役又は作業請負の費用と、海事法上の救助料を区別するための法的性質を示しています。
共同海損行為と共同海損損害の違い
共同海損行為と共同海損損害は、同じ意味ではありません。
共同海損行為とは、危険時に、共同の海上冒険に属する財産を保存する目的で、特別な犠牲又は支出を任意かつ合理的に行うことです。これは共同海損の原因となる行為です。
共同海損損害とは、その共同海損行為によって、又はその直接の結果として発生した損害です。共同海損犠牲と共同海損費用が含まれます。これは共同海損行為から生じる結果です。
| 区分 | 位置付け | 具体的な内容 | 実務上の確認 |
|---|---|---|---|
| 共同海損行為 | 原因となる意思決定又は行為 | 貨物投棄、共同の安全のための消火、避難港への入港判断など | 危険、共同保存目的、任意性、合理性及び特別性 |
| 共同海損犠牲 | 共同海損行為による財産的損害 | 投棄貨物、共同の安全のための消火水により生じた損傷など | 共同海損行為との因果関係及び犠牲となった財産の価額 |
| 共同海損費用 | 共同海損行為によって支出された特別費用 | 避難港費用、特別荷役費用、保管費用、再積込み費用など | 適用規則上の算入可否、必要性及び金額の合理性 |
| 共同海損分担金 | 共同海損損害を各利益へ按分した結果 | 貨物所有者、船舶所有者、運賃利益等が負担する金額 | 精算価額、分担率、担保、期間制限及び保険回収 |
MIA1906第66条における共同海損
MIA1906第66条では、危険時に、共同の海上冒険に属する財産を保存する目的で、特別な犠牲又は支出が任意かつ合理的に行われた場合に、共同海損行為が存在するとしています。
共同海損は、単に船舶事故が発生した場合や、高額な費用が発生した場合に自動的に成立するものではありません。
共同の危険が存在すること、船舶や貨物などの共同の財産を保存する目的があること、通常の航海費用ではない特別な犠牲又は支出であること、意思をもって行われたこと、合理的な判断であることが重要です。
共同海損損害が成立した場合、その損害を直接負担した者は、海事法上の条件に従い、共同の海上冒険に参加する他の利害関係者から割合に応じた分担を受ける権利を有します。
この分担額が共同海損分担金です。
共同海損と他の制度との比較
| 制度・規定 | 主な役割 | 判断の中心 | 費用の負担関係 | 実務上の資料 |
|---|---|---|---|---|
| MIA1906第64条 | 単独海損とParticular Chargesの区別 | 個別損害か、個別の保全費用か | 原則として被保険者と保険者の関係 | 損害資料、費用資料、保険証券 |
| MIA1906第65条 | 救助料の定義と保険上の回収 | 海事法上の救助料か、被保険者側の作業費か | 救助された財産の利害関係者が負担 | 救助契約、裁定、担保、救助価額 |
| MIA1906第66条 | 共同海損行為、損害及び分担金の基本構造 | 共同の危険と特別な犠牲・支出 | 船舶、貨物、運賃等が割合に応じて分担 | 共同海損精算書、事故資料、価額資料 |
| ヨーク・アントワープ規則 | 共同海損精算における犠牲や費用の詳細な算入基準 | B/Lや用船契約に取り込まれた適用規則 | 適用規則に従い精算価額を基に按分 | B/L、用船契約、共同海損条項、精算資料 |
| 協会貨物約款 | 貨物保険における共同海損分担金や救助料の補償範囲 | 適用約款、免責危険、保険金額及び保険期間 | 保険条件の範囲で保険者がてん補 | 保険証券、ICC、申告書、事故通知 |
| Sue and Labour | 損害の防止又は軽減のために合理的に支出した費用の検討 | 費用の必要性、合理性及び担保危険との関係 | 保険条件に従い保険者へ請求されることがある | 作業指示、見積書、請求書、損害軽減記録 |
共同海損が宣言された後の実務フロー
- 船舶事故が発生する
座礁、火災、衝突、機関故障、避難港入港などが発生し、共同の海上冒険に属する財産が危険にさらされます。 - 船主側が共同海損の可能性を検討する
発生した犠牲又は費用について、共同海損として精算する必要があるかを検討します。 - 共同海損が宣言される
共同海損宣言は実務手続の開始を示します。ただし、宣言だけで全費用の共同海損算入や最終的な分担義務が確定するわけではありません。 - 共同海損精算人が選任される
船主側から共同海損精算人が選任され、担保書類の収集、費用資料の整理及び精算作業が開始されます。 - 貨物ごとに担保提出が求められる
貨物の引渡し条件として、共同海損盟約書、共同海損保証状、貨物価額資料又は現金担保の提出が求められることがあります。 - 貨物所有者が保険会社へ事故を通知する
貨物保険へ加入している場合は、書類への署名や現金支払いを行う前に、保険会社又は保険代理店へ連絡します。 - 共同海損担保を提出する
貨物所有者等が共同海損盟約書を提出し、貨物保険会社が共同海損保証状を提出することがあります。無保険貨物では現金担保を求められる場合があります。 - 貨物の引渡しを受ける
共同海損精算人又は船主側が担保を受理した後、貨物の引渡しが認められます。 - 費用・損害・価額資料が収集される
船舶、貨物、運賃その他の利益に関する資料が収集され、共同海損へ算入する犠牲及び費用が検討されます。 - 共同海損精算書が作成される
共同海損精算人が、適用される契約、準拠法及び共同海損規則に基づいて、算入額、精算価額及び分担額を計算します。 - 共同海損分担金が請求される
精算書によって各利害関係者の分担額が示され、担保提供者又は貨物所有者に支払いが求められます。 - 保険金請求又は保険者による支払いが行われる
貨物保険の条件に従い、保険会社が共同海損分担金を支払うか、被保険者が支払った金額を保険金として回収します。
共同海損精算の完了時期は、事故規模、関係貨物数、費用資料、救助手続及び貨物価額資料の収集状況によって大きく異なります。共同海損宣言から分担金の確定まで、相当の期間を要することがあります。
共同海損盟約書と共同海損保証状の違い
| 書類・担保 | 主な提出者 | 主な役割 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 共同海損盟約書 General Average Bond |
貨物所有者、荷受人その他の貨物利害関係者 | 後日、共同海損精算によって確定した適正な分担金を支払う旨を約束する | 貨物情報、B/L番号、署名者の権限、準拠条件及び留保事項を確認します。 |
| 共同海損保証状 General Average Guarantee |
貨物保険会社 | 保険会社が、保証条件の範囲内で共同海損分担金の支払いを担保する | 共同海損盟約書を当然に代替するものではなく、両方を求められることがあります。 |
| 現金担保 | 無保険の貨物所有者又は保証状を提出できない利害関係者 | 将来確定する共同海損分担金に備えて金銭を預託する | 金額、返還条件、利息、送金先及び精算後の残額返還を確認します。 |
| 貨物価額申告書 | 貨物所有者又は荷受人 | 共同海損の精算価額を計算するための貨物価額を申告する | Commercial Invoice、運賃、保険料及び到着時価額との整合を確認します。 |
共同海損盟約書は貨物利害関係者自身の支払約束であり、共同海損保証状は保険会社による保証です。
貨物保険へ加入している場合でも、貨物所有者側の共同海損盟約書が不要になるとは限りません。共同海損保証状は、通常、共同海損盟約書と連動して使用されます。
共同海損盟約書へ署名したことは、共同海損精算書のすべての内容や船主側の法的責任を無条件に承認したことと同じとは限りませんが、書類の具体的な文言によって法的効果が変わります。署名前に保険会社、保険代理店又は必要に応じて弁護士へ確認することが重要です。
共同海損精算人の役割
共同海損精算人とは、共同海損に関する事故資料、費用資料、貨物価額及び担保書類を整理し、適用される契約、準拠法及び共同海損規則に基づいて共同海損精算書を作成する専門家です。
共同海損精算人は船主側から選任されることが一般的ですが、精算作業では船舶、貨物、運賃その他の各利益に関する資料を収集し、どの犠牲又は費用を共同海損へ算入するか、各利益がいくらを分担するかを計算します。
主な業務には、共同海損担保の収集、貨物価額資料の確認、事故費用の分析、共同海損算入項目の整理、精算価額の計算、分担率の算定及び共同海損精算書の発行があります。
ただし、共同海損精算人は裁判所ではなく、貨物保険の保険金支払可否を最終決定する保険者でもありません。
貨物所有者が精算内容、貨物価額、費用の算入、運送人の責任又は保証状の法的効果について異議を有する場合には、共同海損精算人、保険会社及び必要に応じて弁護士へ確認します。
MIA1906第66条と保険者の責任
MIA1906第66条では、被保険者が共同海損費用を負担した場合、保険証券に別段の定めがない限り、被保険者に帰属する割合について保険者から回収できるとされています。
共同海損犠牲の場合には、被保険者は、他の分担義務者から共同海損分担金を先に回収していなくても、保険者に対して損害の回収を求めることができます。
また、被保険者が保険対象について共同海損分担金を支払った場合又は支払義務を負った場合にも、保険証券に別段の定めがない限り、保険者から回収できる場合があります。
ただし、共同海損として精算されたという事実だけで、保険者が常に責任を負うわけではありません。
MIA1906第66条では、明示の定めがない限り、共同海損損害又は共同海損分担金が、担保危険を避ける目的又はその回避に関連して発生したものでなければ、保険者は責任を負わないとされています。
実際の回収範囲は、保険証券、協会貨物約款、免責事項、保険金額、保険価額、過少保険及び事故原因により判断されます。
共同海損分担請求の期間制限
共同海損分担金の請求には、適用される共同海損規則、準拠法及び契約により期間制限が設けられることがあります。
例えば、ヨーク・アントワープ規則2016のRule XXIIIでは、適用法上の強行的な期間制限を優先したうえで、共同海損精算書の発行後1年以内に訴訟が提起されず、かつ共同の海上冒険の終了後6年を経過した場合には、共同海損分担請求権が失われる旨が定められています。
共同の海上冒険が終了した後であれば、当事者間の合意によって期間を延長できる場合があります。また、この期間制限は、共同海損に関係する当事者とそれぞれの保険者との間の保険金請求に、そのまま適用されるものではありません。
ヨーク・アントワープ規則には複数の版があり、すべてのB/Lや用船契約に2016年版が適用されるわけではありません。実際の期間制限は、B/L又は用船契約に取り込まれた規則の版、準拠法、共同海損盟約書、共同海損保証状及び個別の合意によって異なります。
共同海損精算書や分担金請求書を受領した場合は、書面に記載された支払期限だけで判断せず、適用される規則、訴訟提起期限及び保険金請求期限を、保険会社又は必要に応じて弁護士へ速やかに確認する必要があります。
船舶・貨物・運賃が同一所有者の場合
MIA1906第66条では、船舶、運賃及び貨物の全部又は一部が同一の被保険者に属する場合でも、共同海損損害又は共同海損分担金に関する保険者の責任は、それぞれの利益が別々の所有者に属するものとして判断するとされています。
ここでいう運賃は、共同の海上冒険において危険にさらされている運賃利益を指します。
同一の者が船舶と貨物を所有している場合、現実には自分から自分へ共同海損分担金を請求する関係が生じないことがあります。
しかし、共通所有だけを理由に船舶利益、貨物利益及び運賃利益を一つにまとめると、共同海損上の負担配分や各保険契約の責任計算が不明確になります。
第66条の規定は、共通所有の場合でも各利益を形式的に分離し、別々の所有者が存在する場合と同じ基準で保険者の責任を計算するための規定です。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な区分 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| コンテナ内の一部貨物だけが海水濡れ | 単独海損 | Survey Report、写真、コンテナ状態、船舶事故記録 | 担保危険による個別貨物の分損か | 健全品と損傷品を分離し、保険会社へ事故通知する |
| 濡損貨物の乾燥、仕分け及び再梱包 | Particular Charges | 見積書、作業報告、請求書、損害軽減記録 | 必要かつ合理的な保存費用か、通常費用を含んでいないか | 可能な範囲で事前承認を取得し、作業内容を記録する |
| 座礁船を外部の救助者が離礁 | 救助料 | 救助契約、救助報告、担保要求、救助価額資料 | 海事法上の救助料か、通常の曳航費用か | 救助担保を確認し、貨物保険会社へ直ちに通知する |
| 船舶を軽くするために一部貨物を投棄 | 共同海損犠牲 | 船長報告、航海日誌、貨物明細、投棄記録 | 共同の安全を目的とする意図的かつ合理的な犠牲か | 貨物価額及び損害資料を共同海損精算人へ提出する |
| 船内火災の消火水による貨物損害 | 共同海損犠牲又は単独海損 | 火災報告、消火記録、損害箇所、原因調査資料 | 火災そのものによる損害か、共同の安全のための消火による損害か | 原因別に損害を分けて記録し、保険会社へ提出する |
| 避難港で貨物を荷揚げして保管 | 共同海損費用 | 避難理由、荷役費、保管費、再積込み費、航海記録 | 共同の安全のための特別費用か、適用規則上算入できるか | 通常費用と追加費用を分けて請求資料を保存する |
| 共同海損宣言後、貨物引渡しが停止 | 共同海損担保 | 担保要求書、共同海損盟約書、共同海損保証状 | 誰がどの担保を提出するか、署名権限があるか | 保険会社へ連絡し、指定書式と提出先を確認する |
| 貨物保険がなく現金担保を要求された | 共同海損担保 | 現金担保請求書、送金先、返還条件、貨物価額 | 担保額の算定根拠と精算後の返還条件 | 送金先の真正性を確認し、支払記録を保存する |
| 共同海損精算書の分担額が高額 | 共同海損分担金 | 共同海損精算書、算入費用、精算価額、担保文言 | 計算根拠、貨物価額、期間制限、過少保険、運送人の責任及び抗弁 | 保険会社及び必要に応じて弁護士へ精算書を提出する |
制度適用シナリオ1:一部貨物の濡損と再梱包費用
航海中にコンテナへ海水が侵入し、積載貨物の一部が濡れたとします。濡れた貨物は仕分けされ、乾燥及び再梱包が行われました。
貨物自体の濡損は、担保危険による保険対象物の分損であり、共同海損ではない場合、単独海損として検討されます。
一方、乾燥、仕分け及び再梱包の費用は、貨物自体の損害額ではありません。貨物の安全又は保存のために必要かつ合理的に支出された費用であれば、Particular Charges又は保険条件上の損害防止費用として検討されます。
したがって、海水侵入が担保危険に該当し、再梱包等が損害の拡大防止に必要かつ合理的であったことが確認される場合、貨物自体の濡損は単独海損、乾燥及び再梱包の費用はParticular Charges等として、別々に処理される可能性が高いと考えられます。
制度適用シナリオ2:座礁と外部救助者による離礁作業
船舶が座礁し、外部の救助者が船舶と貨物を救うために離礁作業を行ったとします。
救助者が海事法上の救助者として作業を行い、救助の結果に基づいて報酬を請求する場合、その費用はMIA1906第65条の救助料として検討されます。
一方、船主又は被保険者が通常の曳航業者を時間単価で雇っただけである場合、その費用が同条の救助料に該当するとは限りません。
さらに、離礁のために貨物を荷揚げした費用や、避難港で支出した特別費用がある場合には、それらが共同海損費用として精算される可能性があります。
外部の救助者が、海上の危険にさらされた船舶及び貨物を救助し、海事法上の救助報酬を請求する立場であったことが確認される場合、本ケースの離礁作業に関する請求は、MIA1906第65条の救助料として扱われる可能性が高いと考えられます。
制度適用シナリオ3:船内火災と共同海損担保
船内火災が発生し、船舶と積荷全体を救うために大量の消火水が使用され、避難港へ入港したとします。船主は共同海損を宣言し、貨物の引渡し前に共同海損担保を要求しました。
火災そのものによって焼損した貨物は、事故原因と保険条件に応じて単独海損として検討されることがあります。
共同の安全を目的とする消火行為によって損傷した貨物は、共同海損犠牲として検討される可能性があります。また、避難港での特別な荷揚げ、保管及び再積込み費用は、適用規則に従い共同海損費用として検討されます。
貨物所有者は、共同海損盟約書への署名や現金担保の支払いを独自に進めず、担保要求書一式を貨物保険会社又は保険代理店へ提出します。
消火行為が船舶及び積荷全体を共同の危険から救う目的で、意図的かつ合理的に行われたことが確認される場合、その消火行為によって生じた貨物損害は、共同海損犠牲として精算される可能性が高いと考えられます。
制度適用シナリオ4:無保険貨物と現金担保
貨物保険へ加入していない貨物について共同海損が宣言され、貨物の引渡し条件として現金担保を要求されたとします。
保険会社による共同海損保証状を取得できないため、貨物所有者が共同海損盟約書に加えて現金担保を差し入れることがあります。
この段階の現金担保は、最終的な共同海損分担金そのものではありません。将来作成される共同海損精算書に基づく支払いに備えるための担保です。
したがって、無保険であり、共同海損精算人が現金担保を貨物引渡しの条件としている場合、貨物所有者は担保額の算定根拠、送金先、受領証、精算後の充当方法、残額返還条件及び追加請求の可能性を確認したうえで対応する必要があります。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 貨物の一部が壊れれば、すべて単独海損になる | 共同の安全のために意図的に生じた損害は、共同海損犠牲となる可能性があります。 | 損害の外観だけでなく、損害を発生させた行為の目的を確認します。 |
| Particular Chargesは単独海損の一部である | MIA1906第64条では、Particular Chargesは単独海損に含まれないとされています。 | 貨物損害額と保全費用を別々に整理します。 |
| 貨物を守るための費用はすべて救助料である | 救助料は海事法上の救助者が回収する費用であり、被保険者側の作業費とは区別されます。 | 作業者の立場、契約内容及び費用請求の根拠を確認します。 |
| 共同海損は船会社が自由に決められる | 共同海損宣言は手続開始の通知ですが、最終的な算入及び分担は適用法、契約及び規則に基づき精算されます。 | 宣言の有無だけで支払義務を判断しません。 |
| 貨物に損害がなければ共同海損とは無関係である | 貨物が無傷でも、共同海損分担金の支払いを求められることがあります。 | 共同海損担保の提出期限と貨物引渡し条件を確認します。 |
| 共同海損保証状があれば共同海損盟約書は不要である | 共同海損保証状は共同海損盟約書を当然に代替するものではありません。 | 共同海損精算人が指定する必要書類を確認します。 |
| 共同海損盟約書への署名は単なる受領確認である | 将来確定する分担金の支払いに関係する法的書類です。 | 署名者の権限、文言、準拠法及び留保事項を確認します。 |
| 共同海損精算人が保険金支払いを決定する | 共同海損精算人は共同海損の精算を行いますが、貨物保険の支払可否は保険者が判断します。 | 精算書と保険金請求を別々の手続として管理します。 |
| 共同海損分担金は貨物保険で常に全額支払われる | 保険条件、保険価額、担保危険、免責及び過少保険により回収範囲が変わります。 | 保険証券と協会貨物約款を確認します。 |
| ヨーク・アントワープ規則2016の期間制限が、すべての共同海損に適用される | 適用される規則の版、B/L、用船契約、準拠法及び個別合意によって期間制限は異なります。 | 共同海損精算書を受領した段階で適用版と期限を確認します。 |
| 船舶と貨物が同じ所有者なら共同海損の検討は不要である | MIA1906第66条では、保険者の責任を各利益が別所有者であるものとして判断します。 | 船舶、貨物及び運賃利益を分けて保険契約を確認します。 |
実務判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 貨物の一部損害を発見したとき | Surveyor、倉庫、運送人 | 損害範囲、事故原因、発生時期及び貨物状態 | 写真、検品記録、留保通知及びSurvey Reportを確保する |
| 保全作業を開始するとき | 保険会社又は保険代理店 | 乾燥、仕分け、再梱包、保管等の必要性と費用 | 緊急時を除き事前承認を取り、作業記録を保存する |
| 救助料の請求を受けたとき | 救助者、船主、保険会社 | 救助の法的性質、担保、救助価額及び請求根拠 | 独自に支払わず、保険会社へ請求書類を提出する |
| 共同海損宣言を受領したとき | 船会社、船主又は共同海損精算人 | 事故概要、適用規則、必要担保、提出期限及び提出先 | 通知一式を保険会社又は保険代理店へ直ちに転送する |
| 共同海損盟約書へ署名するとき | 保険会社、共同海損精算人、必要に応じて弁護士 | 署名者、貨物情報、支払約束、準拠法及び留保事項 | 不明な文言を残したまま署名しない |
| 共同海損保証状を依頼するとき | 貨物保険会社又は保険代理店 | 保険契約、保険金額、事故通知、必要書式及び発行条件 | 保険証券、Invoice、B/L及び担保要求書を提出する |
| 現金担保を要求されたとき | 共同海損精算人、銀行、保険会社 | 算定根拠、送金先、受領証、充当及び返還条件 | 送金先の真正性を確認し、詐欺送金を防止する |
| 貨物価額を申告するとき | 共同海損精算人、経理担当者 | Invoice価額、運賃、保険料、到着時価額及び通貨 | 保険申告価額との不一致理由を整理する |
| 共同海損精算書を受領したとき | 共同海損精算人、保険会社 | 算入費用、精算価額、分担率、控除及び支払期限 | 計算に疑義があれば根拠資料と説明を求める |
| 期間制限を確認するとき | 共同海損精算人、保険会社、必要に応じて弁護士 | 適用規則の版、準拠法、精算書発行日、共同の海上冒険の終了日及び延長合意 | 書面上の支払期限と訴訟提起期限を分けて管理する |
| 運送人側に事故原因がある可能性があるとき | 弁護士、保険会社、運送契約の相手方 | 運送人の責任、共同海損請求への抗弁及び求償権 | 権利を留保し、時効及び証拠保全を確認する |
| フォワーダーが貨物所有者から相談を受けたとき | 貨物所有者、船会社、保険会社 | フォワーダーの委任範囲、書類提出先及び保険手配の有無 | 法的判断や支払保証を独自に行わず、関係者間の連絡を整理する |
| 共同海損分担金を支払うとき | 保険会社、共同海損精算人、経理担当者 | 支払義務、保証状との関係、送金先及び保険回収方法 | 二重払いを防止し、支払証明と精算書を保存する |
単独海損と共同海損を混同しない
単独海損は、担保危険によって個別の保険対象物に発生した、共同海損ではない分損です。
共同海損は、共同の危険から船舶、貨物及び運賃などを保存するために、特別な犠牲又は支出を任意かつ合理的に発生させ、その負担を関係者間で分担する制度です。
単独海損では、主として損害を受けた貨物の事故原因、損害額及び保険条件を確認します。
共同海損では、共同海損行為の成立、担保書類、共同海損精算人、精算価額、期間制限、分担金及び貨物保険による回収を確認します。
Particular Charges及び救助料は、単独海損と共同海損の中間的な呼称ではありません。それぞれ独立した定義と回収方法を持つため、費用の名称ではなく、誰が、何の目的で、どのような法的根拠により支出又は請求したかを確認する必要があります。
まとめ
MIA1906第56条では、全損以外の損害を分損として整理しています。
MIA1906第64条の単独海損は、担保危険によって個別の保険対象物に発生した、共同海損ではない分損です。保険対象物の保存のために支出したParticular Chargesは、単独海損そのものには含まれません。
MIA1906第65条の救助料は、海事法上の救助者が回収できる救助の対価です。被保険者、その代理人又は被保険者が雇った者による救助的作業費とは区別されます。
MIA1906第66条の共同海損は、共同の危険から財産を保存するために行われた特別な犠牲又は支出を、船舶、貨物及び運賃等の利害関係者が割合に応じて分担する制度です。
共同海損宣言後は、共同海損盟約書、共同海損保証状、現金担保、貨物価額申告、共同海損精算書などの書類が重要になります。
共同海損盟約書は貨物利害関係者の支払約束であり、共同海損保証状は貨物保険会社による保証です。共同海損保証状が共同海損盟約書を当然に代替するものではありません。
共同海損分担請求の期間制限は、適用されるヨーク・アントワープ規則の版、B/L、用船契約、準拠法及び個別合意によって異なります。精算書や請求書を受領した場合は、支払期限、訴訟提起期限及び保険金請求期限を分けて確認する必要があります。
実際の保険金支払可否、共同海損分担義務、担保書類への署名、運送人への抗弁及び求償の可否は、事故原因、保険証券、協会貨物約款、B/L、適用される共同海損規則及び個別の担保文言によって変わります。最終的な判断を行う前に、保険会社、保険代理店、共同海損精算人又は必要に応じて弁護士へ確認することが重要です。
