作業完成後の危険とフォワーダー賠償責任

Completed Operations Risk in Freight Forwarding

作業完成後の危険とフォワーダー賠償責任とは

作業完成後の危険とは、フォワーダー、荷主、梱包業者、倉庫業者、作業会社等が行った梱包、荷役、積込み、積付け、ラッシング、ショアリングその他の作業が完了した後に、その作業の不備が原因となって貨物損害、第三者財物損害又は身体障害として表面化するリスクです。

国際輸送では、事故が発生した場所と、事故原因となった作業が行われた場所・時点が一致しないことがあります。輸出地で行った梱包又はContainer Stuffingに問題があり、数日又は数週間後、海上輸送中、仕向地CFS、国内配送中又は荷受人倉庫で損害が発見されることがあります。

このような事故では、「どこで事故が発生したか」だけではなく、誰が作業を受託したか、誰が実際に作業したか、誰が作業方法を指示したか、誰が貨物情報を提供したか、誰が荷主に対して契約上の責任を負っていたかを分けて確認する必要があります。

本記事では、事故原因となった作業とフォワーダーその他関係者の賠償責任を中心に整理します。成立した賠償責任がCompleted Operations Liability Insuranceで補償されるか、Per Occurrence Limit、Aggregate Limit、Deductible、Defence Costs、Other Insurance Clause等をどのように確認するかは、「貨物作業完了後賠償責任保険(Completed Operations Liability)実務解説」で扱います。

本記事の固有担当範囲

項目 この記事で扱う内容 他の記事で扱う内容
事故原因 事故発見時点から梱包・積付け・固縛・支持等の原因作業へ遡る 保険上の補償可否はCompleted Operations Liabilityの記事で扱う
契約上の責任 フォワーダーが荷主等に対して受託した業務を適切に履行したか 保険上のContractual Liabilityの担保可否は保険記事で扱う
不法行為責任 契約関係のない第三者を含め、過失行為による損害の責任を整理する 具体的訴訟・損害額算定は個別案件で専門家へ確認する
元請け・下請け関係 荷主に対する元請けの契約責任と下請業者自身の責任を分ける 下請業者への保険求償は保険・求償記事で扱う
NVOCC House B/L発行者・Contracting Carrierとして関与する場合の地位を確認する B/L約款及び運送人責任の詳細はNVOCC責任記事で扱う
Shipper’s Pack 荷主作業でもフォワーダーの助言・指図等が責任問題となる場面を整理する 貨物保険上の梱包免責は貨物保険記事で扱う
Forwarder’s Pack フォワーダー又はフォワーダー手配業者の作業責任を整理する Completed Operationsの補償要件は保険記事で扱う
ラッシング・ショアリング 固縛と支持を区別して事故原因を確認する 重量物の技術設計は専門作業業者へ確認する
事故後の証拠 作業写真、重量・重心情報、指示書、Survey Report等を評価する Survey手配自体の詳細は事故対応記事で扱う
保険 関係する保険の存在を把握し、保険会社へ早期通知するところまで扱う 限度額、免責、Primary・Excess等の詳細は保険記事で扱う

作業完成後の危険が問題になる理由

作業完成後事故では、事故発見時には貨物がすでに輸出地のフォワーダー、梱包業者又は作業会社の直接管理下を離れている場合があります。

そのため、仕向地で貨物が破損していたという事実だけでは、輸出地での梱包不備、海上輸送中の異常な動揺、shipping line側の荷役事故、仕向地での取扱不備のどれが原因であるか判断できません。

責任判断では、事故発生場所から原因を推測するのではなく、事故状態から原因候補を絞り込み、輸送工程を逆方向へ遡って証拠を確認します。

フォワーダーの責任が問題になる法的構造

作業完成後事故におけるフォワーダーの責任は、すべて同じ法的根拠から発生するわけではありません。契約当事者に対する責任、第三者に対する不法行為責任、従業員の行為、独立した下請業者の行為、運送人としての責任を区別する必要があります。

責任の構造 典型的な場面 主な判断事項 実務上の注意点
契約上の債務不履行責任 フォワーダーが荷主から梱包・積付け等を受託した 受託内容に適合した業務を履行したか、帰責事由、因果関係、損害 実作業を下請けしただけで元請けの契約上の義務が当然に消えるわけではない
不法行為責任 作業不備により契約関係のない第三者の貨物・設備・身体に損害を与えた 故意・過失、権利又は法的利益の侵害、因果関係、損害 荷主との契約責任とは別に検討する
従業員による作業 フォワーダー従業員が業務として積付け・荷役等を行った 従業員の行為と事業執行との関係 会社自身の責任と従業員本人の責任を区別する
独立した下請業者 梱包会社・ラッシング業者等へ作業を発注した 元請けの契約上の義務、下請業者自身の責任、注文・指図上の過失 下請業者の不法行為について元請けが常に自動的に責任を負うわけではない
NVOCC・Contracting Carrier フォワーダーがHouse B/Lを発行し運送契約を引き受けた 運送契約、B/L約款、受託区間、適用法、Actual Carrierとの関係 単なる作業手配者の場合と同じ責任構造ではない
Shipper’s Packへの助言 荷主が作業したがフォワーダーが具体的な積付方法を指示・承認した 助言内容、専門性、危険認識、因果関係、契約上の役割 単なる立会いと具体的な安全設計・指図を区別する

契約責任と不法行為責任を分ける

荷主がフォワーダーへ梱包、Container Stuffing、積付け、ラッシング、ショアリング等を依頼し、フォワーダーがその業務を受託した場合、荷主との関係ではまず契約上どの業務を引き受けたのかを確認します。

受託した作業が契約の内容に従って適切に履行されず、それによって荷主に損害が発生した場合には、民法上の債務不履行責任が問題となります。

一方、荷崩れによって他荷主の貨物、港湾設備、トラック又は第三者作業員に損害を与えたような場合には、その第三者との契約関係がなくても、不法行為責任が問題となることがあります。

したがって、一件の事故について「荷主に対する契約責任」と「第三者に対する不法行為責任」が別々に存在する可能性があります。

元請けフォワーダーと下請業者の責任を混同しない

元請けフォワーダーが荷主から貨物作業を受託し、実際の梱包・積付け・ラッシング等を専門業者へ委託することは一般的です。

この場合、「実際にミスをしたのは下請業者だから、元請けフォワーダーは一切責任を負わない」と単純には整理できません。

荷主との契約上、元請けフォワーダー自身が作業完成を約束している場合には、下請業者を利用したことだけを理由として荷主に対する契約上の義務が当然に消えるわけではありません。何を受託したのか、どこまで責任を引き受けたのか、標準取引条件や個別契約でどのように定めているかを確認します。

一方、独立した請負業者が第三者に与えた損害について、作業を注文した者が常に当然に不法行為責任を負うわけでもありません。注文・指図自体に過失があったか、元請け自身にも独立した注意義務違反があったか等を別途確認します。

したがって、事故後は、まず荷主から元請けフォワーダーへの請求関係を整理し、その後に元請けフォワーダーから実作業業者への求償可能性を検討するという二層構造になることがあります。

NVOCC・Contracting Carrierとして関与する場合

フォワーダーが単に梱包業者を紹介した場合と、House B/Lを発行してContracting Carrierとして国際輸送を引き受けた場合では、責任判断の出発点が異なります。

NVOCC又はHouse B/L Issuerとして運送契約を引き受けている場合には、荷主・Consigneeとの関係で、House B/L、裏面約款、受託運送区間、適用される強行法規及びActual Carrierとの関係を確認します。

実際の積付作業をCFS、倉庫、梱包会社その他の下請業者が行っていても、荷主との運送契約上、フォワーダー自身がどの範囲まで運送・作業責任を引き受けていたかが重要です。

反対に、フォワーダーが運送人としてではなく、特定作業を紹介・手配しただけである場合には、Contracting Carrierと同じ責任を当然に負うとは限りません。書類名だけではなく実際の契約関係を確認します。

Shipper’s Packでもフォワーダーの責任が問題になる場面

Shipper’s Packであれば、梱包・Container Stuffingを実際に行った荷主側の責任が一次的に問題となります。

ただし、フォワーダーが単に完成済み貨物を受け取っただけなのか、具体的な重量配分、固定位置、ラッシング方法、危険品の積付位置等について専門的な助言又は指図を行ったのかによって事情は異なります。

また、明らかな危険状態を認識しながら出荷を継続させた、又は契約上確認を引き受けていた事項を確認しなかった場合には、フォワーダー自身の行為又は不作為が責任問題となる可能性があります。

一方、単に現場へ立ち会った、Booking情報を確認した、輸送日程を調整したという事実だけで、荷主の梱包・積付けを全面的に保証したと判断すべきではありません。

ラッシングとショアリングの違い

ラッシングとショアリングは、どちらも貨物を安定させる作業ですが、機能は異なります。

区分 主な機能 使用場面 不備がある場合の事故
ラッシング ベルト、ワイヤー、チェーン等で貨物を固縛する コンテナ、在来船、Ro-Ro船、重量物 貨物移動、転倒、荷崩れ、他貨物への衝突
ショアリング 木材・支持材等で貨物を支持し、隙間や荷重を処理する 大型機械、重量物、特殊形状貨物 支持材破損、荷重集中、貨物沈下、横転
ブロッキング 貨物の前後・左右への移動を物理的に抑える コンテナ内重量物等 貨物移動、壁面への衝突
重量・重心管理 積付け全体の安定性を確保する 重量物、偏荷重貨物 横転、偏荷重、固定材破損

事故類型と責任主体の整理

事故類型 主な原因 責任が問題となる主体 主な責任判断
梱包不備による貨物破損 外装強度不足、緩衝不足、固定不足 荷主、梱包業者、フォワーダー 誰が梱包仕様を決め、誰が施工したか
コンテナ内積付不良 重量配分、空間処理、固定不足 荷主、作業業者、フォワーダー、NVOCC Shipper’s PackかForwarder’s Packか
ラッシング不備 固定点・資材・張力等の不適切 専門業者、フォワーダー、荷主 誰が設計・指示・施工したか
ショアリング不備 支持材不足、荷重設計不良 梱包業者、専門業者、フォワーダー 重量・重心情報と施工内容が適切だったか
LCL貨物の漏出 容器不良、積付け、貨物相性 荷主、CFS、混載業者、フォワーダー、NVOCC 容器責任と混載・積付責任を分ける
危険品事故 分類、申告、容器、隔離等の不備 荷主、フォワーダー、NVOCC、CFS 誰が正しい情報を保有し、誰が確認義務を負ったか
コンテナ横転 重量偏在、積付不良、重心情報不足 荷主、作業会社、フォワーダー、陸上運送人 原因が積付けか運転・道路条件かを分ける
開梱時人身事故 固定解除、荷崩れ、警告不足 梱包業者、荷主、フォワーダー、荷受人 梱包設計と開梱方法双方を確認する

Shipper’s PackとForwarder’s Packの違い

区分 実際の作業主体 一次的に確認する責任 フォワーダー側の論点 主な証拠
Shipper’s Pack 荷主又は荷主手配業者 荷主側の梱包・積付責任 フォワーダーの助言・指図・危険認識 作業写真、荷主指示、Shipping Instruction
Forwarder’s Pack フォワーダー又はフォワーダー手配業者 フォワーダー側の契約責任・作業責任 元請け責任と下請求償 作業指示、下請契約、作業写真
荷主作業+フォワーダー立会い 荷主側 荷主側作業 立会いと安全性承認を区別する 立会記録、メール、指示内容
フォワーダー設計+荷主施工 荷主側 施工責任 フォワーダーの設計・指図責任 積付図、メール、仕様書
専門業者へ下請 専門作業業者 専門業者自身の作業責任 荷主への元請け契約責任及び注文・指図上の過失 元請契約、下請契約、作業記録

CFS・LCL混載・特殊貨物は別軸で確認する

高リスク場面 分類軸 問題になりやすい理由 確認事項
CFSでのLCL混載 輸送形態・作業場所 一貨物の事故が複数荷主へ波及する 混載明細、積付記録、貨物相性
大型機械・重量物 貨物特性 重心・支持方法の誤りが重大事故につながる 重量、重心、積付図、固定計画
危険品・化学品 貨物危険性 漏出・発火・反応が第三者損害へ拡大する SDS、UN No.、Class、Packing Group、隔離要件
液体貨物 貨物性状 漏出による他貨物汚損が発生しやすい 容器、密閉、二次容器、積付位置
温度管理貨物 品質管理 損害発見時と原因時点が離れやすい 温度指示、予冷、設定記録、データロガー
Ro-Ro・在来船貨物 輸送方法 大型貨物の移動が船体・他貨物へ波及する 積付計画、ラッシング計画、作業分担

契約前に確認すべき事項

確認順序 確認項目 確認する理由 確認できない場合の対応
1 Shipper’s PackかForwarder’s Packか 一次的な作業責任を整理する 契約・作業指示で明確化する
2 誰が実際に作業するか 作業者と契約者を区別する 下請業者を含め作業範囲を確定する
3 重量・重心・形状 安全な積付設計に必要 必要情報が揃うまで作業設計を確定しない
4 危険性・液体性・温度管理 漏出、反応、品質事故を防ぐ 専門担当者へ確認する
5 SDS・危険品分類 適正な申告・隔離・取扱いに必要 情報不足の場合は受託を保留する
6 作業記録 事故後の原因・責任立証に必要 写真・チェックリストを標準化する
7 元請け・下請けの契約条件 荷主への責任と求償関係を整理する 責任範囲・求償条項を確認する
8 関係保険 重大事故時の資金負担を把握する 保険会社・保険代理店へ確認する

事故時の判断フロー

  1. 事故発見場所、発見日時及び貨物状態を記録する。
  2. 危険品、倒壊、漏出等がある場合は事故拡大防止を優先する。
  3. 修理、廃棄、再梱包前に写真・動画その他の証拠を保全する。
  4. 必要に応じてSurveyorを手配する。
  5. 事故状態から原因候補となる作業を特定する。
  6. 輸送工程を遡り、作業者、作業場所、作業日時を特定する。
  7. Shipper’s PackかForwarder’s Packか確認する。
  8. 元請けフォワーダーが何を契約上受託したか確認する。
  9. 下請業者の作業範囲及び注文・指示内容を確認する。
  10. NVOCCの場合はHouse B/L及び運送契約上の地位を確認する。
  11. 契約責任、不法行為責任その他の法的構成を分けて整理する。
  12. 保険会社へ通知し、責任を認める前に保険対応を開始する。
  13. 関係者へ必要なClaim Letter又は権利保全通知を行う。
  14. 荷主への責任と下請業者等への求償を別々に検討する。

事故時に必要な資料

資料区分 主な資料 確認目的 注意点
契約資料 見積書、依頼書、標準取引条件、下請契約 誰が何を受託したか 実作業者だけで責任主体を判断しない
作業資料 作業指示書、写真、積付図、バンニング記録 実際の作業状態 作業完了時の資料が特に重要
貨物資料 Invoice、Packing List、重量・重心情報 設計前提が正しかったか 荷主提供情報の正確性も確認する
危険品資料 SDS、UN No.、Class、Packing Group 危険性と申告内容 実貨物との一致を確認する
輸送書類 House B/L、Master B/L、Booking Confirmation 契約上の地位・輸送区間 HouseとMasterを区別する
事故資料 写真、動画、Survey Report、受領記録 事故状態と原因 修理・廃棄前に確保する
第三者損害 他貨物損害、施設損害、治療費等 請求範囲 貨物損害と第三者損害を分ける
通信記録 荷主、作業業者、CFS、shipping lineとのメール 指示、認識、責任範囲 電話指示も記録化する

実務で問題になりやすいケース

ケース 主な対立点 確認すべき資料 実務対応
Forwarder’s Packの重量物が輸送中に荷崩れ 作業不備か異常な輸送外力か 積付図、重量・重心、写真、Survey Report 原因を確定するまで責任を認めない
Shipper’s Packでフォワーダーが助言 単なる助言か具体的な安全設計・指図か メール、積付図、立会記録 関与範囲を明確にする
LCL液体貨物が他貨物を汚損 容器不良かCFS積付不良か SDS、容器写真、CFS記録 荷主責任とCFS・フォワーダー責任を分ける
仕向地で開梱時に人身事故 梱包設計不備か開梱方法不備か 梱包図、警告表示、事故記録 輸出地と仕向地双方の行為を確認する
下請ラッシング業者の作業不備 荷主への元請け責任と下請自身の責任 元請契約、下請契約、作業記録 荷主対応と下請求償を分離する
NVOCCがHouse B/Lを発行 作業手配者かContracting Carrierか House B/L、約款、Booking 契約上の地位を先に確定する
危険品事故 誤申告か作業・隔離不備か SDS、危険品申告、積付記録 情報提供者と確認者を分ける

具体例1:名古屋港から輸出した重量物の荷崩れ

以下は責任判断を説明するための想定例です。

元請けフォワーダーが、名古屋港からロッテルダム港へ輸出する産業用プレス機械1台、貨物価格3,800万円について、Container Stuffing、ラッシング及びショアリングを受託し、実作業を専門業者へ委託しました。

ロッテルダム港到着後、機械がコンテナ内で約40センチ移動しており、機械本体及び制御装置に合計1,600万円の損害が確認されました。

荷主は「フォワーダーが手配した作業業者の固定不備が原因であり、元請けフォワーダーが責任を負う」と主張しました。

これに対しフォワーダーは、「ラッシング・ショアリングは通常航海に耐える状態であり、本船が異常な荒天に遭遇したことが事故原因である」と反論しました。

責任判断では、単に下請業者が作業したという事実ではなく、元請けフォワーダーが荷主からどの作業を受託したかを確認します。そのうえで、作業写真、積付図、機械の重量・重心情報、使用したラッシング資材、支持材配置及び本船の航海記録を比較します。

想定上、Survey Reportで通常輸送時に必要とされた固定点の一部が施工されていなかったことが確認された場合、荷主に対する元請けフォワーダーの契約責任と、実作業業者への求償を別々に検討することになります。

このケースの重要点は、下請業者の作業不備と、荷主に対する元請けフォワーダーの契約責任を同一問題として処理しないことです。

具体例2:横浜港向けShipper’s Packでフォワーダーの助言が争われた場合

中国の工場から横浜港へ輸送する工作機械2台、貨物価格2,600万円について、荷主自身がShipper’s PackとしてContainer Stuffingを行いました。

フォワーダーは現地代理店を通じ、荷主へ「機械2台を左右に配置し、中央部を木材で固定する」という積付案をメールで送付していました。

横浜港到着後、一方の機械が転倒して双方の機械が損傷し、修理費等として900万円が請求されました。

荷主は「フォワーダーの提示した積付方法に従ったため、フォワーダーにも責任がある」と主張しました。

これに対しフォワーダーは、「積付図は参考案にすぎず、実際の作業・安全確認はShipper’s Packとして荷主が行った」と主張しました。

この場合、単にShipper’s Packと表示されているだけでは結論は出ません。フォワーダーがどの程度具体的な設計を行ったか、重量・重心情報を保有していたか、専門的判断を引き受けたか、荷主へどのような注意事項を伝えたかを確認します。

一方、フォワーダーが単に現場へ立ち会っただけで、積付方法を指示していなかった場合には、同じShipper’s Packでも責任評価は異なります。

このケースの重要点は、Shipper’s Packという名称だけでフォワーダーの責任をゼロと判断せず、具体的な助言・指図・契約上の役割を見ることです。

具体例3:神戸港発LCL貨物の液体漏出

神戸港のCFSで、工業用液体原料20ドラム、インボイス価格350万円を他荷主貨物と混載し、シンガポールへ輸送したとします。

仕向地CFSでデバンしたところ、1ドラムから液体が漏出し、同一コンテナ内の電子機器等に900万円の汚損損害が生じ、さらに清掃・廃棄費用として120万円が請求されました。

被害を受けた他荷主は、混載を行ったフォワーダーに対して合計1,020万円の賠償を求めました。

フォワーダーは「原因は荷主が提供したドラム容器の密閉不良であり、CFSの積付作業に問題はない」と主張しました。

一方、液体貨物の荷主は「輸出前検査では漏れがなく、重量貨物をドラム上部へ積載したCFS側の積付けが原因」と反論しました。

責任判断では、出荷前の容器写真、封緘状態、CFS受領時の記録、積付配置、他貨物重量、SDS、仕向地Survey Report等を比較します。

容器自体の欠陥であれば荷主側責任が中心となる可能性があり、CFS積付けによる外力が原因であればCFS又はその作業を受託したフォワーダー側の責任が問題になります。

このケースの重要点は、漏れた貨物の荷主と、混載・積付けを行った側の責任を、事故結果だけから決めないことです。

具体例4:ロサンゼルスでの開梱中人身事故

大阪で輸出梱包した大型工作機械、貨物価格4,500万円がロサンゼルスの荷受人倉庫へ到着し、現地作業員が木箱を開梱した際、内部支持材を取り外した直後に機械部品が倒れ、作業員が重傷を負ったとします。

被害者側から、治療費、休業損害その他として3,000万円の賠償請求が行われました。

荷受人は「日本側の梱包設計に問題があり、支持材を外す順番や危険性について警告表示がなかった」と主張しました。

これに対し日本の梱包業者は、「梱包自体は適切であり、荷受人側が通常の開梱手順を守らず、複数の支持材を同時に外したことが事故原因」と主張しました。

元請けフォワーダーが梱包を一括受託していた場合には、荷主との契約上の責任と梱包業者への求償を確認します。一方、荷受人作業員との関係では、不法行為責任を含む第三者責任が問題となり得ます。

梱包図面、開梱手順書、警告ラベル、輸出時写真、現地開梱動画、作業員証言等を確認し、梱包設計上の危険と現地作業方法の双方を評価します。

このケースの重要点は、貨物事故と異なり、第三者の身体障害では契約関係のない被害者に対する責任も独立して検討する必要があることです。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
輸送中に発生した事故ならshipping lineの責任である 原因が輸出地の梱包・積付けにある場合がある 事故発見場所と原因作業場所を分ける
下請業者が作業したので元請けフォワーダーに責任はない 荷主に対する元請けの契約責任と下請業者自身の責任は別問題である 元請契約と下請契約を確認する
下請業者の不法行為について元請けは常に責任を負う 独立した請負人については注文・指図上の過失等を含め個別に検討する 契約責任と不法行為責任を混同しない
Shipper’s Packならフォワーダーは常に無関係である 具体的助言・指図・確認義務があればフォワーダー自身の責任が問題となる場合がある 助言内容を記録する
Forwarder’s Packならフォワーダーがすべての事故責任を負う 実際の原因が荷主提供情報、後続運送人又は別要因にある場合もある 因果関係を確認する
House B/Lを発行していても単なる作業手配者と同じである Contracting Carrierとしての契約上の地位が問題となる B/Lと受託区間を確認する
貨物保険が支払えば責任問題は終わる 貨物保険者から責任者へ代位求償される場合がある 責任資料を保存する
ラッシングとショアリングは同じ作業である ラッシングは固縛、ショアリングは支持・荷重処理である それぞれの施工状況を記録する
事故写真だけあれば原因を説明できる 作業完成時の写真、重量・重心、指示内容等との比較が必要である 作業前後の記録を残す

判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
新規案件受託前 荷主・営業担当・業務責任者 受託作業、Shipper’s Pack/Forwarder’s Pack 契約・見積条件で責任範囲を明確にする
下請作業手配時 専門作業業者 作業範囲、責任条件、保険加入 下請契約を整備する
重量物作業前 荷主・専門業者 重量、重心、支持・固縛計画 情報不足なら作業開始を保留する
危険品受託時 荷主・危険品担当者 SDS、分類、容器、隔離条件 情報不足なら受託・船積みを保留する
Shipper’s Pack立会時 荷主・現場担当 フォワーダーの助言・指図範囲 立会記録及び助言内容を残す
事故発見時 荷受人・現地代理店 発見状態、事故拡大危険 証拠保全と安全確保を優先する
原因調査時 Surveyor・作業業者 作業不備と輸送事故の切り分け 原因確定前に責任を認めない
元請責任確認時 法務担当・海事弁護士 荷主との契約、標準取引条件 契約上の責任範囲を整理する
NVOCC案件 業務担当・海事弁護士 House B/L、Contracting Carrierとしての地位 運送契約上の責任を確認する
第三者損害発生時 保険会社・海事弁護士 対人・対物請求、不法行為責任 責任承認前に専門家へ相談する
下請求償時 下請業者・法務担当 下請業者の作業不備、求償根拠 証拠と権利を保全する
保険対応時 保険会社・保険代理店 関係する責任保険 補償詳細は保険記事に従って確認する

海事弁護士へ相談すべき場面

  • 元請けフォワーダーと下請作業業者のどちらが荷主に対して責任を負うか争われている場合
  • 契約上の債務不履行責任と第三者への不法行為責任が同時に問題となる場合
  • Shipper’s Packでフォワーダーの助言・指図が責任原因として主張されている場合
  • House B/Lを発行したNVOCCのContracting Carrierとしての責任範囲が争われている場合
  • 高額な貨物損害、死亡・重傷事故又は大規模な第三者財物損害が発生した場合
  • 海外で訴訟又は賠償請求が開始された場合
  • B/L約款、標準取引条件、準拠法、裁判管轄又は責任制限の適用が争われている場合
  • 複数の作業者・運送人・荷主間で過失割合又は求償割合が争われている場合
  • 貨物保険者その他の保険者から高額な代位求償を受けた場合
  • 原因が確定していない段階で相手方から責任承認又は示談を求められた場合

まとめ

作業完成後の危険では、事故発見場所だけを見て責任主体を決めてはいけません。輸送工程を遡り、事故原因となった作業、実作業者、指示者、契約当事者及び貨物情報提供者を分けて確認します。

フォワーダーの責任には、荷主に対する契約上の責任、第三者に対する不法行為責任、従業員の業務上の行為、下請業者を利用した場合の元請け契約責任、注文・指図上の責任、NVOCC・Contracting Carrierとしての責任等、異なる法的構造があります。

特に、下請業者が実作業を行った場合でも、荷主に対する元請けフォワーダーの契約責任が当然に消えるわけではありません。一方、独立した下請業者の不法行為について元請けが常に自動的に責任を負うわけでもありません。この二つを区別することが重要です。

Shipper’s Packでも、フォワーダーが具体的な設計、助言又は指図を行った場合には、その関与内容が責任判断の対象となることがあります。反対に、単なる立会い又は輸送手配だけで貨物作業全体を保証したと扱うべきではありません。

事故後は、作業写真、重量・重心情報、積付図、契約書、House B/L、Survey Report、通信記録等を早期に確保し、契約責任、不法行為責任、元請け責任及び下請求償を順番に整理します。

そのうえで、成立した責任がCompleted Operations Liability Insuranceその他の責任保険でどこまで補償されるかは、「貨物作業完了後賠償責任保険(Completed Operations Liability)実務解説」で別途確認します。

同義語・別表記

  • 作業完成後危険
  • 作業完成後リスク
  • 作業完成後賠償責任
  • Completed Operations
  • Completed Operations Risk
  • Completed Operations Liability

公式情報