非常危険とは

Political Risk / Extraordinary Risk

非常危険とは

非常危険とは、買主個別の信用力とは別に、取引先国の政治、経済、金融、法制度、政府措置など、契約当事者の責任ではない外部的要因によって、輸出代金を回収できなくなるリスクをいいます。

英語では、Extraordinary Risk、Political Risk、Country Riskなどと表現されることがあります。

たとえば、戦争、内乱、政変、送金規制、外貨不足、輸入制限、政府措置、経済制裁、銀行業務停止などにより、買主に支払意思があっても、輸出者が代金を回収できない場合があります。

輸出取引信用保険では、買主の倒産や支払不能などの信用危険と並び、非常危険は代金回収不能リスクを考えるうえで重要な論点になります。

非常危険の本質は、買主そのものではなく、国、政府、中央銀行、金融制度、送金ルート、制裁、戦争、政変などに起因して、契約の履行や代金回収が妨げられる点にあります。

この記事で扱う範囲

本記事では、非常危険を、輸出取引信用保険、貿易決済、L/C取引、Trade Finance、貨物保険との関係から整理します。

具体的には、信用危険との違い、カントリーリスクとの関係、送金規制、Transfer Risk、外貨不足、経済制裁、戦争・政変、自然災害・インフラ停止、公的債務者の債務不履行、出荷前リスク、出荷後リスク、第三国の非常危険、L/C取引、UCP600 Article 36、確認信用状、Silent Confirmation、Forfaiting、Aval、貨物海上保険との違いを扱います。

一方、信用危険、カントリーリスク、送金規制、経済制裁、輸出取引信用保険、UCP600不可抗力条項、貨物海上保険、確認信用状、Silent Confirmationの詳細については、それぞれ個別の記事で確認することが前提になります。

本記事の目的は、非常危険を単なる「海外取引の不安要素」としてではなく、どの国の、どの制度・政治・金融・銀行リスクによって、どの段階の回収不能が発生するのかを整理することです。

非常危険が問題になる理由

貿易取引では、売買契約上の支払義務が存在していても、取引先国や関係国の事情によって決済や送金が妨げられることがあります。

たとえば、買主が現地通貨で代金を用意していても、外貨不足により外貨へ交換できない、中央銀行の送金承認が下りない、政府措置により国外送金が止まる、といった場合があります。

このような場合、買主が倒産しているわけではなく、買主に支払意思があるにもかかわらず、輸出者は代金を回収できないことがあります。

したがって、非常危険は、買主の信用調査だけでは把握しきれないリスクです。

買主、買主所在国、支払国、出荷先国、発行銀行、保証銀行、確認銀行、送金ルート、支払通貨、制裁対象の有無を一体で確認する必要があります。

非常危険の主な類型

非常危険には、政治的要因、金融・外貨規制、経済制裁、公的措置、自然災害・インフラ停止など、複数の類型があります。

類型 主な内容 典型例 実務上の確認事項
政治的要因型 国家・政府・政治情勢の変化により、決済や契約履行が困難になるリスクです。 戦争、内乱、政変、暴動、政府転覆、治安悪化 買主国、出荷先国、経由国の政治情勢、港湾・銀行機能、制裁リスクを確認します。
金融・外貨規制型 外貨不足や為替管理により、代金を国外へ送金できないリスクです。 送金規制、外貨割当、中央銀行承認制、外貨交換制限 Transfer Risk、支払通貨、中央銀行承認、送金ルートを確認します。
経済制裁型 制裁により、特定国・企業・銀行・品目との取引や送金が制限されるリスクです。 金融制裁、貿易制裁、制裁対象銀行、制裁対象者 対象国、買主、銀行、船舶、最終需要者、貨物用途を確認します。
公的措置型 政府や行政機関の措置により、契約履行や決済が妨げられるリスクです。 輸入禁止、輸入制限、支払猶予命令、許認可停止、政府命令 輸出入許認可、検疫、輸入規制、契約解除条項を確認します。
公的債務者型 政府機関、国営企業、公的機関が支払不能または支払停止となるリスクです。 国営企業の支払停止、政府機関の支払遅延、財政悪化 公的債務者の性格、国の財政、政府保証、国別リスクを確認します。
自然災害・インフラ停止型 大規模災害や社会インフラ停止により、決済・送金・契約履行が困難になるリスクです。 地震、洪水、台風、港湾閉鎖、銀行業務停止、通信障害 貨物損害なのか、決済不能なのか、保険の対象リスクを分けて確認します。
第三国リスク型 買主国とは別の出荷先国、経由国、支払国で非常危険が発生するリスクです。 第三国での輸入禁止、港湾閉鎖、戦争、制裁、送金停止 買主国だけでなく、出荷先国、支払国、経由国、関係銀行所在国を確認します。

非常危険は、単一の原因だけで発生するとは限りません。

たとえば、政変により外貨不足が悪化し、中央銀行が送金承認を停止し、さらに海外銀行が制裁リスクを理由に送金を保留するような複合的な事態もあります。

信用危険との違い

信用危険とは、買主の倒産、支払不能、債務不履行、長期不払いなど、取引先そのものの信用状態に起因する代金回収不能リスクです。

一方、非常危険は、買主自身ではなく、取引先国や関係国の政治・経済・金融事情、政府措置、制裁、戦争、送金規制などに起因するリスクです。

項目 信用危険 非常危険
主な原因 買主個別の信用状態 国、政府、中央銀行、金融制度、戦争、制裁、送金規制
典型例 買主倒産、支払不能、長期不払い、債務不履行 戦争、政変、送金規制、外貨不足、輸入禁止、経済制裁
買主の支払意思 支払意思がない、または支払能力を失っている場合があります。 支払意思があっても、国や銀行制度の事情で送金できない場合があります。
問題の中心 買主の資金繰り、信用力、経営状態 国別リスク、送金制度、外貨事情、政府措置、制裁、銀行機能
確認すべき情報 買主の財務状態、支払実績、信用調査、延滞状況 買主国、支払国、出荷先国、発行銀行所在国、送金規制、制裁情報
主な対応手段 与信管理、前金、保証、輸出取引信用保険、出荷停止 L/C、確認信用状、Silent Confirmation、輸出取引信用保険、Forfaiting、Aval
貨物保険との関係 貨物損害ではなく代金回収リスクです。 貨物損害ではなく、国・政治・金融事情による回収不能リスクです。

たとえば、買主が倒産して支払えない場合は信用危険です。

これに対し、買主に支払意思と現地通貨資金があるにもかかわらず、外貨送金が禁止されて送金できない場合は、非常危険として整理されることがあります。

ただし、実務上は、買主の信用悪化と取引先国の金融混乱が同時に発生することもあり、信用危険と非常危険の境界が分かりにくいケースがあります。

カントリーリスクとの関係

非常危険は、カントリーリスクと密接に関係します。

カントリーリスクとは、買主個別の信用力とは別に、取引先国の政治、経済、金融、法制度上の事情によって、代金回収や送金、契約履行が妨げられるリスクをいいます。

非常危険は、このカントリーリスクが輸出代金の回収不能や輸出不能という形で現実化した場合に問題になります。

そのため、輸出取引信用保険を検討する際には、買主の信用力だけでなく、買主所在国、支払国、出荷先国、発行銀行所在国、保証銀行所在国のリスクを確認する必要があります。

送金規制・Transfer Riskとの関係

送金規制は、非常危険の代表的な類型です。

輸入者が現地通貨で代金を用意していても、外貨交換ができない、国外送金の許可が出ない、中央銀行の承認待ちになる、銀行が送金処理を停止する、といった場合があります。

このように、現地では支払資金があるにもかかわらず、国外へ資金を移転できないリスクをTransfer Riskと呼ぶことがあります。

Transfer Riskは、買主の倒産とは異なります。

問題の中心は、買主の信用力ではなく、外貨交換、国外送金、中央銀行承認、送金経路、銀行規制などにあります。

経済制裁との関係

経済制裁は、非常危険と重なることがある重要な論点です。

経済制裁は、特定国、特定企業、特定個人、特定金融機関、特定貨物、特定用途との取引を制限するものであり、送金規制とは発動主体や法的根拠が異なります。

実務上は、買主や銀行が直接制裁対象でなくても、送金経路、関係銀行、船舶、港湾、最終需要者、親会社・子会社関係、貨物用途などが問題になる場合があります。

経済制裁は状況変化が速いため、個別取引では必ず最新の公式情報、銀行確認、必要に応じた専門家確認を行う必要があります。

項目 送金規制 経済制裁
主な発動主体 買主国の政府、中央銀行、金融当局 自国政府、他国政府、国際機関、制裁当局
主な目的 外貨準備管理、資本移動管理、為替管理 安全保障、外交政策、制裁対象への圧力
典型例 外貨送金禁止、外貨割当、中央銀行承認制 制裁対象者、制裁対象銀行、禁輸品目、資産凍結
確認すべき対象 送金通貨、送金承認、外貨事情、送金銀行 買主、銀行、船舶、品目、用途、最終需要者、親会社・子会社
実務上の対応 支払条件変更、確認信用状、信用保険、送金ルート確認 取引停止、制裁スクリーニング、法務確認、銀行確認

主契約の達成不能との関係

非常危険では、政府措置や外部的事情により、売買契約そのものの履行が困難になることがあります。

たとえば、輸入禁止、検疫規制、制裁措置、戦争、政変、政府命令などにより、予定していた貨物を輸出・輸入できなくなる場合があります。

この場合、買主が支払わない理由は、単なる信用不安ではなく、取引先国や第三国の公的措置によって主契約の履行が妨げられたことにある可能性があります。

ただし、契約不適合、商品クレーム、品質不良、許認可取得漏れ、輸出者側の書類不備など、輸出者側や契約上の問題に起因する履行不能は、非常危険とは別に整理する必要があります。

公的債務者の債務不履行

非常危険では、公的債務者の債務不履行が問題になることがあります。

公的債務者とは、政府機関、国営企業、公的機関など、民間企業とは異なる性格を持つ相手方を指すことがあります。

公的債務者が支払を停止した場合、通常の民間買主の信用危険だけでなく、政府財政、外貨事情、政策変更、国際制裁、行政措置などが関係することがあります。

そのため、公的債務者との取引では、相手先の信用力だけでなく、国全体の財政、政治、送金リスクを確認する必要があります。

出荷後リスクとの関係

非常危険は、主に出荷後リスクとして問題になります。

貨物を出荷した後、輸出者の手元には買主に対する代金債権が残ります。

その後、送金規制、外貨不足、戦争、政府措置、銀行業務停止などにより代金を回収できなくなることがあります。

このような場合、貨物そのものに損傷がなくても、輸出者は代金債権を回収できない損害を受ける可能性があります。

出荷前リスクとの関係

非常危険は、出荷前にも問題になることがあります。

たとえば、輸出契約を締結し、製造や仕入れを進めた後に、戦争、輸入禁止、制裁、政府措置などにより輸出できなくなる場合があります。

この場合、輸出者は貨物を出荷できないまま、製造費、仕入費、加工費などの損失を負う可能性があります。

ただし、出荷前リスクは、通常の出荷後リスクとは別に整理され、特約によって補償対象になる場合があります。

特注品、専用品、転売困難な貨物では、出荷前の非常危険を確認する価値があります。

区分 出荷前の非常危険 出荷後の非常危険
発生時点 契約後、出荷前 出荷後、代金回収前
典型例 輸入禁止、戦争、制裁、政府措置により出荷できない 送金規制、外貨不足、銀行業務停止により代金を回収できない
主な損害 製造費、仕入費、加工費、キャンセル不能費用 輸出代金債権の回収不能
保険上の確認 出荷前リスク特約の有無 輸出取引信用保険の本体補償・与信限度額・通知義務
実務上の注意点 製造開始前に保険対象可否を確認します。 支払遅延時の通知、追加出荷停止、損害防止軽減義務を確認します。

第三国の非常危険

貿易取引では、買主の所在国、支払国、出荷先国が一致しないことがあります。

たとえば、買主はA国に所在しているが、貨物は第三国Bへ出荷されるという取引があります。

この場合、買主国だけでなく、出荷先国で発生する非常危険も問題になることがあります。

第三国で輸入禁止、戦争、政変、港湾閉鎖、政府措置などが発生すると、貨物を出荷できない、または代金回収に支障が出る可能性があります。

このような取引では、買主の居住国だけでなく、出荷先国、支払国、経由国、関係銀行の所在国を確認する必要があります。

L/C取引との関係

L/Cがある場合でも、非常危険が完全になくなるわけではありません。

信用状取引では、信用状条件に合った書類が提示されれば、発行銀行が支払、引受、買取などを行います。

しかし、発行銀行所在国で送金規制、外貨不足、金融制裁、戦争、銀行業務停止などが発生すると、L/C決済にも影響する可能性があります。

確認信用状が付いていない場合、輸出者は発行銀行と発行銀行所在国のリスクを負うことになります。

したがって、L/C取引では、買主の信用力だけでなく、発行銀行の信用力、発行銀行所在国の非常危険、確認信用状の有無、UCP600不可抗力条項、制裁リスクを確認する必要があります。

UCP600 Article 36との関係

UCP600 Article 36は、不可抗力に関する規定です。

銀行業務が、天災、暴動、内乱、戦争、テロ行為、ストライキ、ロックアウト、その他銀行の支配を超える原因により中断された場合の銀行の責任に関係します。

非常危険が現実化し、銀行業務が停止した場合、書類審査、支払、買取、通知、送金、書類引渡しに影響が出ることがあります。

ここで注意すべき点は、不可抗力が発生したからといって、信用状の有効期限や書類提示期限が当然に延長されるとは限らないことです。

UCP600 Article 36は、銀行が自らの支配を超える事由によって業務を中断した場合の銀行責任を整理する規定です。

しかし、銀行が免責されることと、輸出者の書類提示期限や信用状有効期限が自動的に延びることは同じではありません。

そのため、戦争、政変、送金規制、銀行業務停止などが発生した場合には、L/C Amend、確認銀行の有無、書類提示場所、期限管理、代替銀行経由の可否を早急に確認する必要があります。

確認信用状・Silent Confirmationとの関係

発行銀行所在国に非常危険が懸念される場合、確認信用状やSilent Confirmationが検討されることがあります。

項目 確認信用状 Silent Confirmation
基本的な仕組み 発行銀行とは別の確認銀行が、信用状上正式に確認を付けます。 信用状上には表示されない形で、輸出者と第三者銀行等が個別契約によりリスク補完を行います。
支払確約の性質 確認銀行が、信用状条件に合致した書類提示に対して独立した支払確約を行います。 個別契約で定めた範囲に限り、発行銀行リスクやカントリーリスクを補完します。
非常危険への対応効果 確認銀行所在国が非常危険の影響を受けにくい場合、発行銀行所在国リスクを軽減できます。 契約条件により、発行銀行リスク、カントリーリスク、送金規制リスクを一定範囲で補完できる場合があります。
信用状上の表示 確認銀行として信用状上に表示されます。 信用状上には表示されないため、輸入者や発行銀行に知られない形で組まれることがあります。
確認すべき点 確認銀行の引受可否、手数料、対象国、書類条件、制裁リスク 対象リスク、対象金額、期間、免責、手数料、発動条件

確認信用状は、確認銀行が信用状上の当事者として独立した支払確約を行う点が特徴です。

Silent Confirmationは、信用状上には表示されない個別契約による補完であるため、どの非常危険がどこまでカバーされるかを契約ごとに確認する必要があります。

いずれの場合も、送金規制、制裁、不可抗力、銀行側のコンプライアンス判断がどこまで対象となるかは、個別条件の確認が必要です。

Forfaiting・Avalとの関係

ForfaitingやAvalも、非常危険と関係します。

Forfaitingでは、輸出者が保有する輸出債権や期限付手形を金融機関に売却し、早期資金化することがあります。

この場合、金融機関が買主国や保証銀行所在国の非常危険をどこまで引き受けるかが重要です。

Avalは、手形や約束手形に銀行保証を付ける仕組みですが、保証銀行の所在国で送金規制、外貨不足、制裁、政変が発生すれば、支払に影響する可能性があります。

手段 非常危険との関係 確認すべき点
Forfaiting 輸出債権を売却して早期資金化できる場合がありますが、支払国・保証銀行所在国リスクが審査されます。 ノンリコースか、保証銀行所在国、支払通貨、送金規制、制裁リスクを確認します。
Aval 銀行保証により買主信用を補完できますが、保証銀行所在国の非常危険は残ることがあります。 保証銀行の信用力、所在国、支払通貨、送金ルートを確認します。
輸出取引信用保険 非常危険による代金回収不能を保険対象として検討できる場合があります。 対象国、対象買主、与信限度額、通知義務、保険事故要件を確認します。

ForfaitingやAvalを利用する場合でも、買主だけでなく、保証銀行、支払国、送金ルート、制裁対象の有無を確認する必要があります。

貨物海上保険との違い

非常危険は、代金回収や輸出不能に関するリスクであり、貨物の損傷・滅失リスクとは異なります。

貨物が無事に到着していても、送金規制や戦争により代金を回収できないことがあります。

反対に、代金決済に問題がなくても、輸送中に貨物損害が発生することがあります。

項目 非常危険 貨物海上保険
対象となる問題 国・政治・金融事情により代金回収や輸出が困難になること 輸送中の貨物の損傷・滅失
典型例 送金規制、外貨不足、戦争、政変、輸入禁止、政府措置、制裁 破損、濡損、盗難、滅失、共同海損
貨物が無事な場合 代金を回収できなければ損害が発生することがあります。 通常、貨物損害がなければ保険金請求の対象になりません。
確認する保険 輸出取引信用保険、貿易保険、確認信用状、Silent Confirmationなど 外航貨物海上保険、国内輸送保険、倉庫保険など
注意点 貨物損害ではなく代金回収不能リスクとして整理します。 代金未回収や送金不能は貨物保険の対象ではありません。

非常危険と貨物海上保険は、対象とするリスクが異なります。

非常危険は貿易決済・信用リスクの問題であり、貨物海上保険は輸送中の物的損害の問題です。

よくある誤解

非常危険では、L/C、買主信用、貨物保険、信用危険との関係を誤解しやすいため注意が必要です。

よくある誤解 実務上の考え方 注意点
L/Cがあれば非常危険は関係ない L/Cがあっても、発行銀行所在国の送金規制、戦争、銀行業務停止、制裁リスクは残る場合があります。 確認信用状の有無、発行銀行所在国、UCP600 Article 36を確認します。
買主が優良企業なら非常危険は心配ない 非常危険は買主の信用力とは別に、国や金融制度から発生します。 買主国、支払国、出荷先国、関係銀行所在国を確認します。
非常危険は貨物保険で守られる 貨物海上保険は輸送中の貨物損害を対象とする保険です。 代金回収不能は輸出取引信用保険などで検討します。
非常危険と信用危険は区別しなくてよい 信用危険は買主個別の問題、非常危険は国・政治・金融事情の問題です。 保険通知や事故原因の整理で区別が重要になります。
確認信用状があれば非常危険は完全に消える 確認信用状は発行銀行所在国リスクを軽減できますが、確認銀行の条件や免責は確認が必要です。 確認銀行、確認範囲、制裁、不可抗力を確認します。
自然災害は貨物保険だけの問題である 自然災害で貨物が損傷すれば貨物保険の問題ですが、銀行業務や送金インフラ停止により代金回収不能となる場合は非常危険として問題になることがあります。 貨物損害と決済不能を分けて確認します。

局面別の確認フロー

非常危険は、取引開始前、出荷前、支払期日前、回収困難発生時、保険通知時に分けて確認すると整理しやすくなります。

局面 確認する人 確認事項 実務上の注意点
取引開始前 輸出者、営業担当、与信管理担当 買主国、支払国、出荷先国、外貨事情、政治情勢、制裁リスク 買主信用だけでなく国別リスクを確認します。
決済条件設定時 輸出者、輸入者、銀行、保険担当 L/C、確認信用状、Silent Confirmation、Forfaiting、Aval、信用保険の要否 非常危険が懸念される場合は、単純な後払いを避ける検討をします。
保険申込時 保険担当、保険会社、保険代理店 対象国、対象買主、与信限度額、非常危険の対象範囲、出荷前リスク特約 出荷前と出荷後で補償対象が異なる場合があります。
出荷前 輸出者、物流担当、保険担当 輸入許可、制裁変更、港湾状況、送金規制、L/C条件、出荷可否 情勢悪化時は追加出荷や製造継続を慎重に判断します。
支払期日前 輸入者、輸出者、銀行 送金申請、中央銀行承認、外貨手当、銀行業務、制裁審査 支払期日に間に合うか早めに確認します。
回収困難発生時 輸出者、輸入者、銀行、保険担当 原因が信用危険か非常危険か、送金規制か制裁か、銀行通知の有無 遅延理由を文書で確認し、保険通知の要否を判断します。
保険通知時 保険担当、保険会社、管理部門 通知期限、必要資料、非常危険該当性、損害防止軽減措置 通知遅れや追加出荷継続が問題にならないよう注意します。
回収対応時 輸出者、銀行、法務担当 代替送金、支払猶予、契約解除、L/C Amend、追加出荷停止 制裁違反や法令違反にならない範囲で対応します。

まとめ

非常危険とは、戦争、内乱、政変、送金規制、外貨不足、輸入制限、政府措置、経済制裁など、買主個別の信用力とは別の外部的要因により、輸出代金を回収できなくなるリスクをいいます。

信用危険が買主自身の倒産や支払不能を中心とするのに対し、非常危険は取引先国や関係国の政治、経済、金融、法制度、政府措置に起因する点が特徴です。

非常危険には、政治的要因型、金融・外貨規制型、経済制裁型、公的措置型、公的債務者型、自然災害・インフラ停止型、第三国リスク型などがあります。

買主に支払意思があっても、送金規制や外貨不足により代金を回収できない場合があります。このような資金移転不能リスクは、Transfer Riskとして整理されることがあります。

L/Cがある場合でも、非常危険が完全になくなるわけではありません。確認信用状が付いていない場合、発行銀行所在国の送金規制、外貨不足、戦争、銀行業務停止、UCP600 Article 36に関係する不可抗力リスクが残る場合があります。

確認信用状やSilent Confirmationは、発行銀行リスクやカントリーリスクを軽減する手段として検討されることがありますが、対象リスク、金額、期間、免責、手数料は個別条件によって異なります。

非常危険は貨物そのものの損傷・滅失ではなく、代金回収や輸出不能に関するリスクであるため、貨物海上保険とは役割を分けて考えることが重要です。

同義語・別表記

  • 非常リスク
  • 非常危険
  • Political Risk
  • Extraordinary Risk
  • Country Risk
  • Transfer Risk
  • カントリーリスク
  • ポリティカルリスク
  • 政治リスク
  • 国家リスク

関連用語

公式情報