Letter of Indemnityとは|B/L訂正・Clean B/L・Original B/L未提示引渡しの補償状
Letter of Indemnityとは
Letter of Indemnity(LOI/補償状)とは、B/L訂正、通常の書類手続から外れる貨物引渡し、リマーク付き貨物に対するClean B/L発行依頼などの場面で、依頼者が後日発生する損害、請求、費用を補償することを約束する書面です。
LOIは単なる依頼書ではありません。運送人、船会社、NVOCC、フォワーダーなどに対し、通常の手続から外れる対応を求める代わりに、依頼者が補償責任を引き受ける書面として使われます。
ただし、LOIを差し入れれば必ず相手方が対応してくれるわけではありません。依頼内容によっては、銀行保証、銀行カウンターサイン、社内承認、P&I Club、船会社、NVOCC、フォワーダーの確認が必要になることがあります。LOIはリスクを消す書類ではなく、後日損害や請求が発生した場合に依頼者へ補償請求するための書類です。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| LOIの基本 | Letter of Indemnityの意味、補償状としての役割、リスク移転の考え方 | 契約書一般、保証契約、準拠法、裁判管轄は法務関連の記事で扱う |
| B/L訂正とLOI | B/L発行後の記載訂正でLOIが求められる場面と限界 | B/L訂正、Consignee変更、Notify Party変更、B/L Back Dateは各記事で扱う |
| Clean B/L発行依頼 | 外装異常やリマークがある貨物についてClean B/Lを求められた場合の注意点 | Clean B/L、Claused B/L、貨物事故、サーベイレポートは各記事で扱う |
| Original B/L未提示引渡し | Original B/Lなしで貨物引渡しを求められる場合の誤引渡しリスク | Original B/L紛失、D/O交換、貨物引渡し、Bank L/Gは各記事で扱う |
| 異港・異地引渡し | B/L記載港又は引渡場所と異なる場所で貨物引渡しを求める場合のLOI | Change of Destination、Deviation、D/O、輸入地変更は関連する輸送実務記事で扱う |
| 銀行保証・カウンターサイン | 銀行保証付きLOI、銀行カウンターサイン付きLOIが必要になる場面 | Letter of Guarantee、Bank L/G、信用状、銀行保証は各記事で扱う |
| P&I Clubとの関係 | P&I Club指定書式、P&Iカバーへの影響、LOIが保険の代替ではない点 | P&I Club、船主責任保険、運送人責任、共同海損は各記事で扱う |
| フォワーダー実務 | LOIを受け取る側・差し入れる側としての確認事項、社内承認、事故時対応 | フォワーダー責任、NVOCC責任、貨物保険、求償実務は各記事で扱う |
LOIの基本的な考え方
LOIの基本は、通常であれば相手方が応じにくい対応を依頼する代わりに、依頼者がその結果発生する損害、請求、費用を補償するという考え方です。たとえば、Original B/Lなしで貨物を引き渡す場合、本来の正当なB/L所持人に対する誤引渡しリスクが発生します。
このとき、LOIを差し入れることで、依頼者は「その対応によって運送人側に損害や請求が発生した場合には補償する」と約束します。しかし、LOIはリスクを消す書類ではありません。LOIは、後日損害が発生した場合に、依頼者へ補償請求するための書類です。
したがって、LOIを受け取る側は、依頼者の信用力、補償能力、署名権限、銀行保証の要否、P&I Clubのカバー、社内承認の有無を確認する必要があります。
LOIが使われる主な場面
| 使用場面 | 依頼内容 | 主なリスク | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| B/L訂正 | 荷送人、荷受人、Notify Party、貨物明細、運賃条件などの訂正 | 第三者権利侵害、書類不一致、誤記載による請求 | 事実と一致する訂正か、関係者承認があるかを確認する |
| Clean B/L発行依頼 | 外観異常やリマークがある貨物についてClean B/L発行を求める | 不実記載、銀行決済トラブル、買主との紛争 | 貨物状態と書類内容が食い違わないか確認する |
| Original B/L未提示での貨物引渡し | B/L原本なしで貨物を引き渡す | 誤引渡し、正当所持人からの請求、P&Iカバー問題 | 銀行保証付きLOIやP&I Club指定書式が必要になることが多い |
| B/L記載港と異なる場所での引渡し | B/L上の揚港・引渡場所と異なる場所で貨物を渡す | 契約違反、運送人責任、追加費用、保険上の問題 | 船会社、P&I Club、銀行保証の確認が必要になる |
| 書類未着時の緊急対応 | 銀行経由書類やクーリエ未着のため、代替書類で処理を求める | 権利者確認不足、誤引渡し、後日請求 | Sea WaybillやSurrendered B/Lとの違いを確認する |
| 異例のリリース依頼 | 通常のD/O交換や現地代理店手続と異なる処理を求める | 貨物引渡し権限の誤認、現地費用、第三者請求 | 現地代理店、船会社、NVOCCの承認を確認する |
LOIでできること・できないこと
| 項目 | LOIで期待される効果 | LOIで解決できないこと | 実務上の判断 |
|---|---|---|---|
| 補償責任の明確化 | 依頼者が損害、請求、費用を補償する意思を明確にする | 依頼内容自体を適法又は正当なものに変えること | 依頼内容が事実・法令・契約に反しないかを確認する |
| Original B/Lなし引渡し | 誤引渡しが発生した場合の補償請求先を作る | 正当B/L所持人に対するリスクを消すこと | 銀行保証、P&I Club書式、船会社承認を確認する |
| B/L訂正 | 訂正による後日請求や費用負担を依頼者へ戻す | 事実と異なる訂正を正当化すること | 実貨物、売買契約、通関書類、関係者承認を確認する |
| Clean B/L発行依頼 | 依頼者が後日紛争の補償を約束する | 外装異常をなかったことにすること | 写真、検査記録、リマーク、L/C条件を確認する |
| P&Iカバー | P&I Club指定書式の利用が求められる場合がある | LOIがP&I保険の代替になること | P&Iカバーへの影響を事前に確認する |
| 信用補完 | 銀行保証やカウンターサインで依頼者の信用力を補強する | 保証範囲を超える全損害を当然に回収すること | 保証金額、期間、準拠法、署名権限を確認する |
B/L訂正のためのLOI
B/L発行後に、荷送人名、荷受人名、Notify Party、貨物明細、マーク、数量、運賃条件などの訂正が必要になることがあります。この場合、船会社、NVOCC、フォワーダーは、訂正内容が事実に合っているか、関係者の承認があるか、訂正により第三者へ不利益が生じないかを確認します。
訂正内容によっては、依頼者にLOIの差入れを求めることがあります。これは、訂正により後日クレームや費用負担が生じた場合に、依頼者が補償することを明確にするためです。
ただし、事実と異なる訂正や、権利関係に影響する訂正は、LOIがあっても認められないことがあります。LOIは、不正確なB/L記載を正当化する書類ではありません。
| 訂正内容 | LOIで対応しやすいか | 確認する相手 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Notify Partyの表記修正 | 比較的対応しやすい | 荷主、現地代理店、輸入者 | 関係者の同意と表記確認が必要 |
| 住所・連絡先の軽微な訂正 | 対応しやすい場合がある | 荷主、Consignee、Notify Party | 貨物の同一性に影響しないか確認する |
| Consignee変更 | 慎重な確認が必要 | 荷主、銀行、買主、NVOCC、船会社 | 権利関係、Original B/Lの所在、銀行関与を確認する |
| 貨物数量・品名の訂正 | 慎重な確認が必要 | 荷主、通関業者、倉庫、船会社 | 実貨物、通関書類、Invoice、Packing Listとの整合が必要 |
| 事実と異なる内容への変更 | 原則として対応すべきでない | 荷主、法務、管理部門 | LOIがあっても不実記載の問題は消えない |
Clean B/L発行依頼とLOI
貨物や梱包に外観上の異常がある場合、本来はB/Lにリマークが記載されることがあります。たとえば、カートン潰れ、濡損跡、梱包破損、数量不足、シール異常などが確認された場合、運送人はClaused B/Lやリマーク付きB/Lを発行することがあります。
このような状態で、荷主や輸出者がClean B/Lの発行を求め、LOIを差し入れることがあります。しかし、外観上の異常があるにもかかわらずClean B/Lを発行することは、銀行決済、買主への説明、運送人責任、保険対応に重大な問題を生じさせることがあります。
特に信用状取引では、Clean B/Lが求められることが多いため、リマークを消す目的でLOIを使うことは極めて慎重に扱う必要があります。貨物状態と異なる書類を作成することは、紛争や不正確な書類作成と評価されるおそれがあります。
Original B/L未提示での貨物引渡しとLOI
Original B/Lを使用する取引では、通常、貨物引渡しにはB/L原本の提示が必要です。しかし、貨物が揚地に到着しているにもかかわらず、B/L原本が銀行経由やクーリエ輸送中で未着の場合、荷受人側からLOIを差し入れて貨物引渡しを求めることがあります。
この対応は、誤引渡しのリスクを伴います。後日、B/L原本の正当所持人が別に現れた場合、運送人は重大な責任を負う可能性があります。Original B/Lを提示せずに貨物を引き渡す場合、LOIを受け取っていても、運送人側のリスクが消えるわけではありません。
そのため、船会社やP&I Clubは、Original B/Lなしの貨物引渡しについて、銀行保証付きLOIや所定書式の使用を求めることがあります。
B/L記載港と異なる場所での貨物引渡しとLOI
B/Lに記載された揚港や引渡場所とは異なる港、場所、ターミナルで貨物引渡しを求められることがあります。この場合、運送契約上の引渡場所と実際の引渡場所が異なるため、運送人責任、追加費用、税関手続、保険、P&Iカバーに影響する可能性があります。
特に、B/L記載港と異なる場所での引渡しに加えて、Original B/L未提示での引渡しを求められる場合は、リスクがさらに大きくなります。このような場面では、単なる会社署名のLOIではなく、銀行カウンターサイン付きLOIや、国際P&Iグループが推奨する書式の使用を求められることがあります。
依頼者は、追加運賃、港費用、保管料、デマレージ、税関手続、第三者請求、運送人責任を含めて、補償範囲を確認する必要があります。
LOIに記載される主な内容
| 記載項目 | 内容 | 確認する相手 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 宛先 | 船会社、運送人、NVOCC、フォワーダーなど | 依頼者、受取側、現地代理店 | 誰に対する補償状かを明確にする |
| 依頼者名 | Shipper、Consignee、Charterer、荷主など | 依頼者、銀行、荷主 | 補償責任を負う主体を確認する |
| 対象船舶・航海 | 本船名、Voyage No. | 船会社、NVOCC、フォワーダー | 対象輸送を特定する |
| B/L番号 | 対象となるB/L番号 | 船会社、NVOCC、荷主 | 別のB/Lと混同しないようにする |
| 貨物明細 | 品名、数量、コンテナ番号、シール番号など | 荷主、倉庫、通関業者 | 対象貨物を明確にする |
| 依頼内容 | B/L訂正、Clean B/L発行、B/Lなし引渡しなど | 依頼者、受取側、法務 | 通常手続から外れる内容を具体的に書く |
| 補償範囲 | 損害、請求、費用、責任、弁護士費用など | 依頼者、法務、保険会社 | どこまで補償するかを確認する |
| 第三者請求への対応 | 第三者からの請求を防御・補償する内容 | 依頼者、銀行、法務 | B/L正当所持人、買主、銀行、保険者からの請求を想定する |
| 銀行保証・カウンターサイン | 銀行が保証又は連帯して署名するか | 銀行、依頼者、受取側 | 依頼者単独の信用で足りるか確認する |
| 署名権限 | 署名者名、肩書、会社代表権限 | 依頼者、法務、銀行 | 署名者に補償状を差し入れる権限があるか確認する |
銀行保証・カウンターサインが必要になる場合
LOIの内容やリスクが大きい場合、船会社や運送人は単なる会社署名のLOIではなく、銀行保証付きLOIや銀行のカウンターサインを求めることがあります。
| 場面 | 銀行保証が求められやすい理由 | 確認事項 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| Original B/Lなしで貨物を引き渡す場合 | 正当B/L所持人からの誤引渡し請求リスクが大きい | 貨物価額、B/L原本所在、銀行関与 | 船会社指定書式やP&I Club書式を確認する |
| B/L記載港と異なる場所で引き渡す場合 | 運送契約、追加費用、保険、P&Iカバーに影響する | 引渡場所、追加費用、税関手続 | 単なる依頼者署名では足りないことがある |
| Original B/Lなし、かつ異地引渡しの場合 | 複数の高リスク要素が重なる | 銀行保証、社内承認、P&I Club確認 | 現場判断だけで処理しない |
| 貨物価額が大きい場合 | 依頼者単独の補償能力では不十分なことがある | 保証金額、保証期間、銀行信用力 | 保証限度額が損害額を下回らないか確認する |
| 依頼者の信用力が不明な場合 | 後日補償請求しても回収できない可能性がある | 依頼者の信用、親会社保証、銀行保証 | 海外会社・新規取引先では特に慎重に扱う |
P&I ClubとLOIの関係
LOIは、P&I Clubとの関係でも重要です。船会社や運送人がOriginal B/Lなしで貨物を引き渡した場合や、B/L記載港と異なる場所で貨物を引き渡した場合、P&I保険のカバーに問題が生じることがあります。
そのため、P&I Clubは、LOIの受け取りを推奨する場面がある一方で、LOIを受け取ったからといってP&Iカバーが自動的に維持されるわけではないことにも注意が必要です。LOIは、P&I保険の代わりになる書類ではありません。
| 確認事項 | 実務上の意味 | 確認する相手 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| P&I Clubの所定書式があるか | 船会社が指定書式以外を受け付けない場合がある | 船会社、P&I Club | 自社書式だけで対応できるとは限らない |
| 銀行カウンターサインが必要か | 貨物価額や誤引渡しリスクが大きい場合に問題になる | 船会社、銀行、P&I Club | 銀行の審査、手数料、与信枠が必要になる |
| P&Iカバーから外れるリスクがあるか | LOIがあっても保険でカバーされない場合がある | P&I Club、船会社、法務 | LOIはP&I保険の代替ではない |
| 誤引渡し請求が発生した場合の対応 | LOIに基づき依頼者へ補償請求する可能性がある | 船会社、依頼者、銀行、弁護士 | 補償範囲と回収可能性を確認する |
| 船会社・P&I Clubの承認が必要か | 現場判断だけで貨物を引き渡さない | 船会社、P&I Club、現地代理店 | 承認記録を残す |
よくある誤解
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| LOIを出せば相手は必ず対応してくれる | 相手方はLOIを受け取っても、社内承認、銀行保証、P&I Club確認を求めることがある | LOI提出前に受入条件を確認する |
| LOIがあればリスクは消える | LOIはリスクを消す書類ではなく、後日補償請求するための書類である | 依頼者の信用力と補償能力を確認する |
| LOIがあれば事実と異なるB/L訂正も可能である | 事実と異なる訂正は、LOIがあっても認められないことがある | 実貨物、通関書類、売買契約との整合を確認する |
| Clean B/L発行依頼はLOIで処理すればよい | 外観異常がある貨物にClean B/Lを発行すると、銀行決済や保険で問題になる | 写真、検査記録、リマークの要否を確認する |
| Original B/LなしでもLOIがあれば安全に引渡しできる | 正当B/L所持人への誤引渡しリスクは残る | 銀行保証付きLOI、P&I Club書式、船会社承認を確認する |
| 担当者署名だけで会社のLOIとして有効である | 署名者に会社を代表して補償責任を負う権限が必要である | 肩書、代表権限、社内承認、銀行カウンターサインを確認する |
| LOIはP&I保険の代わりになる | LOIはP&I保険の代替ではなく、P&Iカバーに問題が出る場面で求められることがある | P&I Clubと船会社の方針を確認する |
| ひな形を使えば十分である | 依頼内容、補償範囲、対象貨物、保証期間、署名権限を案件ごとに確認する必要がある | 重要案件では法務、銀行、P&I Club、弁護士に確認する |
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 何が問題になるか | 原因 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| B/L訂正をLOIで依頼したが事実と異なる内容だった | 不実記載、第三者権利侵害、銀行決済トラブルが発生する | 依頼者が書類上の都合だけで訂正を求めた | Invoice、Packing List、Booking、Original B/L、関係者承認を確認する |
| 外観異常貨物についてClean B/Lを求められた | 貨物状態と書類内容が食い違い、後日紛争になる | L/C決済や買主説明を優先してリマークを避けようとした | 写真、検査記録、サーベイ、リマークの要否を確認する |
| Original B/L未着で貨物引渡しを求められた | 正当B/L所持人への誤引渡しリスクが生じる | 銀行経由書類やクーリエが貨物到着に間に合わない | 銀行保証付きLOI、P&I Club書式、船会社承認を確認する |
| B/L記載港と異なる港で引渡しを求められた | 運送契約、追加費用、税関手続、P&Iカバーに影響する | 商流変更、転売、受取地変更、緊急対応 | 異地引渡しの承認、追加費用、銀行カウンターサインを確認する |
| LOI署名者に権限がなかった | 後日補償請求しても会社が署名権限を争う可能性がある | 担当者署名だけで会社承認を確認していなかった | 署名者の肩書、代表権限、社内承認、銀行保証を確認する |
| 依頼者に補償能力がなかった | 第三者請求や費用が発生しても回収できない | 依頼者の信用力確認が不足した | 銀行保証、親会社保証、保証限度額、保証期間を確認する |
| P&Iカバーが維持されると誤解した | LOIがあってもP&I保険でカバーされない可能性がある | LOIと保険カバーを混同した | P&I Club、船会社、法務へ事前確認する |
| LOIの補償範囲が狭すぎた | 保管料、デマレージ、弁護士費用、第三者請求を回収できない | 対象損害や費用項目の記載が不十分だった | 損害、請求、責任、費用、弁護士費用、第三者請求を含めて確認する |
フォワーダーの関与範囲対比表
| 区分 | 支援しやすいこと | 断定すべきでないこと | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| LOI使用場面の整理 | B/L訂正、Clean B/L、B/Lなし引渡しなど、どの場面か整理する | LOIがあれば必ず処理できると説明すること | 依頼内容、通常手続との差異、必要承認を確認する |
| B/L訂正対応 | 訂正内容、関係者承認、書類整合を確認する | 事実と異なる訂正をLOIで正当化できると判断すること | 実貨物、Invoice、Packing List、B/L原本所在を確認する |
| Clean B/L依頼対応 | 写真、外装状態、リマーク、L/C条件を整理する | 外観異常があるのにClean B/Lを出せると断定すること | サーベイ、リマーク、船会社確認を優先する |
| Original B/Lなし引渡し | 原本所在、銀行経由状況、荷受人確認を整理する | LOIのみで安全に引渡しできると説明すること | 銀行保証、P&I Club書式、船会社承認を確認する |
| 銀行保証確認 | 銀行カウンターサイン、保証金額、保証期間を確認する | 銀行署名があれば全損害が必ず回収できると説明すること | 保証範囲、準拠法、署名権限を確認する |
| P&I Club確認 | 船会社指定書式、P&I Club方針、承認要否を確認する | LOIがP&I保険の代替になると説明すること | P&Iカバーへの影響を確認する |
| 事故・請求対応 | LOI、B/L、D/O、Arrival Notice、費用資料、請求書を整理する | 責任主体や保険金支払可否を即断すること | 法務、保険会社、船会社、P&I Clubへ早期確認する |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| LOI依頼を受けた時 | 依頼者、営業担当、業務担当 | 何を通常手続から外して処理したいのか | 依頼内容を特定し、対応可否を即断しない |
| B/L訂正の場合 | 荷主、船会社、NVOCC、銀行 | 訂正内容が事実に合っているか、関係者承認があるか | 不実記載の疑いがあれば訂正を拒否又は保留する |
| Clean B/L依頼の場合 | 荷主、倉庫、船会社、サーベイヤー | 外観異常、写真、検査記録、リマークの要否 | 実貨物状態と異なるClean B/L発行は避ける |
| Original B/L未提示引渡しの場合 | 荷受人、銀行、船会社、P&I Club | B/L原本所在、正当所持人、銀行保証、指定書式 | 銀行保証付きLOIやP&I Club書式を確認する |
| 異港・異地引渡しの場合 | 船会社、現地代理店、税関、P&I Club | 引渡場所、追加費用、契約変更、税関手続 | 船会社承認、追加費用負担、銀行カウンターサインを確認する |
| LOI署名確認時 | 依頼者、銀行、法務 | 署名者の肩書、代表権限、社内承認 | 権限不明なら再署名又は銀行保証を求める |
| 高額貨物の場合 | 依頼者、銀行、保険会社、管理部門 | 貨物価額、補償能力、保証金額、保証期間 | 銀行保証、親会社保証、社内承認を検討する |
| 事故・第三者請求発生時 | 船会社、P&I Club、保険会社、弁護士 | LOIの補償範囲、請求内容、費用、証拠資料 | 依頼者へ補償請求し、関係者通知と証拠保全を行う |
補償責任と遡求の考え方
LOIの補償責任は、貿易決済におけるWith Recourseの考え方と似た面があります。With Recourseでは、銀行がいったん資金化しても、輸入者が支払わない場合に輸出者へリスクが戻ることがあります。
LOIでも、運送人や船会社が依頼者の求めに応じて通常手続から外れた対応をした後、第三者請求や費用が発生した場合に、依頼者へ補償請求する構造になります。つまり、LOIは「リスクをなくす書類」ではなく、「いったん対応した後に、発生した損害を依頼者へ戻すための書類」です。
このため、依頼者の信用力、銀行保証、署名権限、補償範囲が重要になります。
シナリオ1:B/L訂正をLOIで依頼したが事実と異なる場合
荷主がLOIを差し入れ、B/Lの貨物明細や荷受人名を訂正するよう依頼したものの、実貨物や売買契約と一致しない内容だったケースです。この場合、LOIがあっても、事実と異なるB/L訂正を行うべきではありません。
船会社、NVOCC、フォワーダーは、Invoice、Packing List、Booking、Shipping Instruction、Original B/Lの所在、関係者承認を確認します。訂正が権利関係、銀行決済、通関、貨物引渡しに影響する場合は、社内承認や法務確認を行う必要があります。
シナリオ2:外観異常貨物についてClean B/Lを求められる場合
カートン潰れ、濡損跡、梱包破損などがある貨物について、輸出者がLOIを差し入れてClean B/Lの発行を求めるケースです。この場合、L/C決済や買主への説明を意識してリマークを消したいという事情があることがあります。
しかし、貨物状態と異なるClean B/Lを発行すると、後日、銀行、買主、保険会社、運送人との間で重大な紛争になる可能性があります。外観異常がある場合は、写真、検査記録、サーベイ、リマークの要否を確認し、書類上だけ状態を整える対応は避ける必要があります。
シナリオ3:Original B/L未着を理由に貨物引渡しを求められる場合
貨物は揚地に到着しているものの、Original B/Lが銀行経由又はクーリエ輸送中で未着のため、荷受人がLOIで貨物引渡しを求めるケースです。この場合、誤引渡しリスクが極めて重要です。
後日、Original B/Lの正当所持人が現れた場合、運送人側が責任追及を受ける可能性があります。銀行保証付きLOI、P&I Club書式、船会社承認、荷主・銀行・Consigneeの確認が必要になることがあります。
シナリオ4:B/L記載港と異なる港で引渡しを求められる場合
B/LにはA港揚げと記載されているにもかかわらず、依頼者がB港での貨物引渡しを求めるケースです。この場合、運送契約、追加費用、税関手続、P&Iカバー、船会社の運航判断が関係します。
Original B/L未提示も同時に求められる場合は、銀行カウンターサイン付きLOIを求められることがあります。異港・異地引渡しでは、引渡場所、追加運賃、港費用、保管料、デマレージ、税関手続、第三者請求まで補償範囲に含まれるかを確認する必要があります。
シナリオ5:LOIの署名者に権限がない場合
LOIに会社名と担当者署名があるものの、その担当者に会社を代表して補償責任を負う権限がないケースです。後日、補償請求をしても、会社側が「その担当者に署名権限はなかった」と争う可能性があります。
LOIでは、署名者の肩書、会社代表権限、社内承認、銀行カウンターサインの有無を確認します。高額貨物、海外会社、新規取引先、Original B/Lなし引渡し、異港引渡しでは、担当者署名だけで処理せず、銀行保証や法務確認を検討する必要があります。
シナリオ6:LOIがあるためP&I保険で当然カバーされると誤解する場合
Original B/Lなしの貨物引渡しについてLOIを取得していたため、P&I保険でも当然カバーされると誤解するケースです。LOIはP&I保険の代替ではありません。
むしろ、通常手続から外れる対応によりP&Iカバーに問題が生じる可能性があるため、P&I Clubや船会社の方針を事前に確認する必要があります。LOIを取得していることと、保険でカバーされることは別問題として整理します。
まとめ
Letter of Indemnity(LOI)は、B/L訂正、Clean B/L発行依頼、Original B/L未提示での貨物引渡しなどで使われる補償状です。LOIは単なる依頼書ではなく、依頼者が後日発生する損害、請求、費用を補償することを約束する書面です。
実務上重要なのは、LOIを差し入れてもリスクが消えるわけではないという点です。LOIは、通常手続から外れた対応をした後に損害や請求が発生した場合、依頼者へ補償請求するための書類です。そのため、依頼内容、事実関係、補償範囲、署名権限、依頼者の信用力、銀行保証の要否を確認する必要があります。
Original B/Lなしの貨物引渡し、B/L記載港と異なる場所での引渡し、外観異常がある貨物に対するClean B/L発行依頼などでは、P&I Club、船会社、銀行、弁護士、保険会社への確認が必要になることがあります。LOIを使う場合は、書式を埋めることではなく、どのリスクを誰が負い、後日どの範囲まで補償できるのかを明確にすることが重要です。
