B/Lの責任制限とは

Limitation of Liability under Bill of Lading

B/Lの責任制限とは

B/Lの責任制限とは、貨物に滅失、損傷、数量不足、不着などが発生した場合でも、運送人が負う賠償責任を一定額に制限する仕組みです。

海上運送では、損害額全額をそのまま運送人へ請求できるとは限りません。B/L裏面約款、適用される国際条約、国内法により、1包・1単位あたり、または重量あたりの限度額が定められることがあります。

この考え方は、Package LimitationやWeight Limitationとして整理されます。貨物事故時に実際にどの程度回収できるかを判断するうえで、B/Lの責任制限は重要な確認項目です。

本記事では、責任制限額そのものの計算と理解に焦点を当て、Package Limitation、Weight Limitation、666.67 SDR、2 SDR/kg、米国COGSAの500米ドル制限、コンテナ貨物での個数記載を整理します。

この記事で扱う範囲

この記事では、B/Lに基づく貨物事故で、運送人の賠償責任がどのように制限されるかを扱います。準拠法、裁判管轄、免責事由、出訴期限、貨物保険の補償可否は関連する別記事で詳しく扱う内容です。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
責任制限の基本 貨物事故時に運送人の賠償責任が一定額に制限される考え方 B/L裏面約款全体の読み方は「B/L裏面約款とは」で扱う内容
Package Limitation 1包・1単位あたりの責任限度額の考え方 梱包不備や貨物固有の性質は「運送人の免責事由とは」で扱う内容
Weight Limitation 損傷・滅失貨物の重量に基づく責任限度額の考え方 重量証明や事故原因の立証はサーベイ関連の記事で扱う内容
SDRと換算 666.67 SDR/package、2 SDR/kg、換算時点、換算通貨の確認 為替換算や実際の請求処理は個別案件で確認する内容
米国COGSA 500米ドル制限や慣習的運賃単位が問題になる場面 準拠法・Clause Paramountの詳細は「B/Lの準拠法とは」で扱う内容
コンテナ貨物 B/L上の個数記載が責任制限額に与える影響 B/L表面記載の照合はB/L確認関連の記事で扱う内容
出訴期限・裁判管轄 責任制限を主張・争う前提として確認すべき関連論点 期限管理は「B/Lの出訴期限とは」、裁判地は「B/Lの裁判管轄とは」で扱う内容
貨物保険との関係 運送人から回収できない部分を保険で補う必要性 保険金請求や代位求償の詳細は貨物保険関連の記事で扱う内容

責任制限という制度の目的・背景

責任制限制度の目的は、運送人が無制限の賠償責任を負うことを避け、国際海上運送におけるリスクと運賃のバランスを取ることにあります。

海上運送では、1件の輸送で非常に高額な貨物を扱うことがあります。もし運送人が常に貨物価額全額について無制限に責任を負うと、運賃、保険、運送契約、引受判断に大きな影響が出ます。

そのため、B/L裏面約款、国際条約、国内法では、一定の場合に運送人の責任を1包・1単位あたり、または重量あたりの金額に制限する仕組みが用意されています。

ただし、責任制限は「運送人が常に低額で済む」という意味ではありません。適用法、B/L記載、貨物価額申告、Declared Value、事故態様、故意または無謀な行為の有無により、結論は変わります。

責任制限が問題になる主な場面

責任制限は、事故発生後だけでなく、B/L作成時、高額貨物の受託時、保険手配時、Claim Letter受領時にも問題になります。

場面 責任制限が問題になる理由 確認すべき資料 実務上の注意点
B/L作成時 個数記載や貨物明細が責任制限の単位に影響するため B/L、Shipping Instruction、Packing List 「1 Container」のみの記載に注意する
貨物事故発生時 実損額と回収可能額が一致しないことがあるため Invoice、B/L、Packing List、サーベイレポート Invoice価格だけで請求可否を判断しない
高額貨物の損傷時 責任制限額が実損額を大きく下回る可能性があるため Invoice、Declared Value、保険証券 貨物保険の有無と条件を確認する
米国発着・米国経由貨物 COGSAの500米ドル制限が問題になることがあるため B/L、Clause Paramount、運送経路 日本法系のSDR制限と混同しない
代位求償を受けた時 保険金支払い額と運送人責任額が一致しないことがあるため 保険会社の求償書類、B/L、事故資料 保険金支払い額をそのまま認めない
出訴期限が近い時 責任制限を争う前に期限徒過となる可能性があるため Time Bar Clause、Claim Letter、期限延長書面 責任制限の試算と期限管理を並行する

適用場面と対象外として整理すべき事項

責任制限を確認するときは、責任制限が問題になる場面と、責任制限だけでは解決できない事項を分けて整理します。

区分 確認内容 責任制限で整理しやすい事項 責任制限だけでは決まらない事項
貨物の滅失・損傷 貨物自体に発生した物理的損害 Package数、重量、SDRによる限度額 事故原因、過失、免責事由の有無
数量不足・不着 一部貨物の不足、紛失、不着 不足した貨物のPackage数や重量による試算 誤渡し、盗難、書類不備などの責任判断
コンテナ貨物 B/L上の個数記載とコンテナ単位の扱い Package Limitation上の単位確認 個品数の立証、B/L記載の解釈
高額貨物 Invoice価格と責任制限額の差 責任限度額の試算 貨物保険、価額申告、従価運賃の有無
遅延損害・間接損害 工場停止、販売機会喪失、違約金など 約款上の限度額や免責の確認 貨物損害とは別の損害項目としての評価
責任制限の排除 故意または無謀な行為により責任制限が使えない可能性 責任制限を主張できるかの検討 行為態様、認識、証拠関係の高度な判断

責任制限を確認する基本項目

責任制限を確認する際は、損害額だけでなく、適用法、B/L上の個数、重量、価額申告、COGSA条項をあわせて確認します。

確認項目 確認する理由 主な確認資料 実務上の注意点
適用法・条約 どの責任制限ルールが前提になるかを確認するため B/L裏面約款、Clause Paramount、準拠法条項 日本法系、ヘーグ・ヴィスビー系、COGSA系を混同しない
Package Limitation 1包・1単位あたりの限度額を確認するため B/L、Packing List、Shipping Instruction カートン、ケース、パレット、コンテナのどれが単位になるかを見る
Weight Limitation 重量あたりの責任限度額を試算するため B/L、Packing List、重量証明、サーベイレポート 総重量ではなく損傷・滅失貨物の重量が問題になることがある
B/L上の個数記載 責任制限上のPackage数に影響するため No. of Packages欄、Description欄 「1 Container」のみの記載は争点になりやすい
貨物価額申告 通常の責任制限と異なる扱いになる可能性があるため B/L、Declared Value欄、運賃明細 高額貨物でも申告がなければ通常制限に戻ることがある
米国COGSA 500米ドル制限が問題になる可能性があるため 運送経路、B/L、Clause Paramount 米国発着・米国経由・COGSA条項の有無を確認する

Package Limitationとは

Package Limitationとは、1包または1単位あたりの責任限度額を定める考え方です。

海上運送では、B/L上の梱包単位や貨物単位を基準に、運送人の責任額が制限されることがあります。例えば、B/L上に複数のカートン、ケース、パレット、クレートなどが記載されている場合、それぞれが責任制限上の単位として問題になります。

どの単位を「1包」または「1単位」と見るかは、B/L上の記載、貨物の梱包状態、コンテナ内の個品数、適用法によって変わります。

Weight Limitationとは

Weight Limitationとは、貨物の重量を基準に責任限度額を計算する考え方です。

重量品、大型機械、金属製品、原材料などでは、1包あたりの限度額よりも、重量あたりの限度額の方が高くなることがあります。

そのため、貨物事故時には、B/L上の総重量だけでなく、損傷または滅失した貨物の重量、Packing List上の重量、個別梱包ごとの重量を確認します。

666.67 SDR/packageと2 SDR/kg

日本法・ヘーグ・ヴィスビー・ルール系では、1包または1単位あたり666.67 SDR、または損傷・滅失した貨物の総重量1kgあたり2 SDRの高い方が責任制限額として問題になります。

ここで重要なのは、インボイス価格ではなく、B/L上の梱包数や貨物重量をもとに責任制限額が計算される点です。

例えば、高額な電子部品が1箱だけで輸送されていた場合、貨物価額が高くても、B/L上のPackage数が1であれば、Package Limitationでは1単位分の責任限度額しか問題にならない可能性があります。

一方、重量のある機械部品では、2 SDR/kgで計算した方が、666.67 SDR/packageより高くなることがあります。実務では、両方を試算し、高い方を確認します。

SDRとは

SDRとは、国際通貨基金が定める特別引出権をいいます。B/L約款や国際海上運送に関する法令では、責任制限額を自国通貨ではなくSDRで定めることがあります。

実際の請求では、SDRをどの時点の為替換算で日本円や米ドルなどに換算するかが問題になります。したがって、責任制限額を確認するときは、SDRの数値だけでなく、換算時点、換算通貨、計算レートを確認します。

責任制限額の基本的な計算イメージ

責任制限額を確認するときは、Package LimitationとWeight Limitationをそれぞれ試算し、どちらの金額が高くなるかを比較します。

計算方法 確認する数値 計算イメージ 実務上の注意点
Package Limitation B/L上のPackage数または単位数 666.67 SDR × Package数または単位数 B/L上の個数記載が重要になる
Weight Limitation 損傷・滅失した貨物の重量kg 2 SDR × 損傷・滅失貨物の重量kg 総重量ではなく損傷貨物の重量が問題になることがある
比較 Package計算額とWeight計算額 両方を試算して高い方を確認する 片方だけで判断しない
通貨換算 SDR換算レート、換算時点、換算通貨 SDR額を日本円または米ドル等に換算する 換算時点を関係者間で確認する

日本法・ヘーグ・ヴィスビー系と米国COGSAの比較

B/Lの責任制限では、日本法・ヘーグ・ヴィスビー・ルール系と、米国COGSAの違いが実務上問題になることがあります。

区分 基本的な責任制限 問題になりやすい場面 実務上の注意点
日本法・ヘーグ・ヴィスビー系 666.67 SDR/packageまたは2 SDR/kgの高い方 日本発着貨物、B/L約款で同系統のルールが取り込まれている場合 Package数、重量、SDR換算を確認する
米国COGSA 1包あたり500米ドル、または慣習的運賃単位が問題になることがある 米国発、米国向け、米国経由、COGSA条項がある場合 Clause Paramountと運送経路を確認する
Declared Valueがある場合 通常の責任制限とは異なる扱いになる可能性がある 高額貨物、特殊貨物、美術品、精密機器 B/L上の価額申告と追加運賃の有無を確認する
責任制限排除が争われる場合 一定の故意・無謀行為があると責任制限を主張できない可能性がある 重大事故、高額事故、悪質な取扱いが主張される場合 ハードルは高く、証拠関係の確認が必要

コンテナ貨物での個数記載

コンテナ貨物では、責任制限の単位が特に問題になります。B/L上にコンテナ内の個品数が明確に記載されていない場合、責任制限上、コンテナ自体が1包または1単位として扱われる可能性があります。

この場合、コンテナ内に多数の商品が入っていても、責任制限額は大きく伸びません。一方、B/L上にカートン数、ケース数、パレット数、個品数などが具体的に記載されていれば、それらが責任制限の単位として考慮される余地があります。

FCL貨物では、B/L上の貨物明細、No. of Packages欄、Description欄、Packing List、Invoice、コンテナ番号、シール番号、個品数の記載をあわせて確認します。

貨物価額の申告と従価運賃

高額貨物では、B/L上の貨物価額申告が重要になることがあります。

荷主が貨物の種類や価額を事前に申告し、それがB/Lに記載され、必要に応じて追加運賃が支払われている場合、通常の責任制限とは異なる扱いになることがあります。

反対に、貨物価額が高額であっても、B/L上に価額申告がない場合、運送人の責任は通常の限度額に制限される可能性があります。

高額貨物、特殊貨物、美術品、精密機器では、運送人への価額申告と貨物保険の付保内容を分けて整理します。

高額貨物での注意点

高額貨物では、B/Lの責任制限額と実損額の差が大きくなりやすくなります。

例えば、少数梱包で高額な機械、電子部品、医療機器、ブランド品、美術品などは、貨物価格が高くても、責任制限額はB/L上の梱包数や重量に基づいて計算されることがあります。

荷主側は、運送人責任だけに依存せず、貨物保険の手配や保険条件の確認を行う必要があります。一方、NVOCCやフォワーダー側は、高額貨物事故で請求を受けた場合、インボイス価格ではなく、まずB/L上の責任制限額を確認します。

遅延損害・間接損害との関係

B/Lの責任制限は、貨物の滅失・損傷だけでなく、遅延損害や間接損害との関係でも問題になります。

貨物の到着遅延により、工場ライン停止、販売機会喪失、契約違約金、代替品手配費用などが発生することがあります。しかし、B/L約款では、遅延損害、逸失利益、間接損害、派生損害について、免責または別の限度額が定められていることがあります。

そのため、事故対応では、貨物そのものの損害と、遅延・間接損害を分けて整理します。

責任制限を破るハードル

一定の場合には、運送人が責任制限を主張できないことがあります。

代表的には、損害を発生させる意図をもって行われた行為、または損害が発生する可能性を認識しながら無謀に行われた行為が問題になります。

ただし、責任制限を破るハードルは高いと考えられます。単に損害額が大きい、運送人側にミスがある、荷扱いが粗いというだけで、責任制限が当然に使えなくなるわけではありません。

責任制限を否定するには、運送人側の行為態様、認識、事故原因、証拠関係を具体的に確認する必要があります。

制度適用フロー

B/Lの責任制限を確認する際は、いきなり請求額を認めるのではなく、適用法、B/L記載、Package数、重量、価額申告、COGSA条項、保険の順に確認します。

手順 確認する内容 主な確認資料 次の対応
1 請求額と実損額を確認する Claim Letter、Invoice、サーベイレポート 請求額をそのまま責任額と考えない
2 適用法・条約・B/L約款を確認する B/L裏面約款、Clause Paramount、準拠法条項 どの責任制限ルールを使うか整理する
3 B/L上のPackage数・単位数を確認する B/L、Shipping Instruction、Packing List Package Limitationを試算する
4 損傷・滅失貨物の重量を確認する Packing List、重量証明、サーベイレポート Weight Limitationを試算する
5 Package計算額とWeight計算額を比較する 試算表、SDR換算レート 高い方を基準に確認する
6 Declared Valueや従価運賃の有無を確認する B/L、運賃明細、申告書類 通常の責任制限と異なる扱いがないか確認する
7 米国COGSAや特殊条項を確認する Clause Paramount、運送経路、B/L約款 500米ドル制限やFreight Unitの可能性を検討する
8 貨物保険と代位求償を確認する 保険証券、保険会社の通知、代位求償書類 保険金支払い額と運送人責任額を分けて整理する

制度が問題になる典型場面

責任制限は、貨物事故の損害額だけでなく、B/L作成時の記載、保険手配、代位求償、米国COGSA、コンテナ貨物の個数記載にも影響します。

典型場面 問題になる理由 不利になりやすい点 実務上の対応
高額貨物が少数梱包で輸送された Package数が少ないため責任制限額が低くなる可能性がある 実損額と回収可能額に大きな差が出る Declared Value、貨物保険、B/L上のPackage数を確認する
B/L上の記載が「1 Container」のみだった コンテナ自体が1単位と見られる可能性があるため 多数の商品が入っていても責任制限額が伸びない No. of Packages欄とDescription欄を確認する
米国COGSAが問題になった 500米ドル制限やFreight Unitが適用される可能性があるため SDRベースの試算と大きく異なる可能性がある 運送経路、Clause Paramount、COGSA条項を確認する
保険会社から代位求償を受けた 保険金支払い額と運送人責任額が一致しないため 保険金支払い額をそのまま認めてしまう B/L上の責任制限額を別途試算する
損傷貨物の重量が不明確だった Weight Limitationの試算ができないため 総重量か損傷部分重量かで争いになる Packing List、重量証明、サーベイ結果を確認する
貨物価額申告がなかった 高額貨物でも通常の責任制限に戻る可能性があるため Invoice価格全額を回収できない可能性がある Declared Value欄と従価運賃の有無を確認する
遅延損害や間接損害を請求された 貨物損害とは別の約款制限や免責が問題になるため 請求額が大きく膨らむ可能性がある 貨物損害、遅延損害、間接損害を分けて整理する
責任制限を破れると主張された 故意または無謀行為の有無が問題になるため 単なるミスと重大な行為態様が混同される 事故原因、認識、証拠関係を具体的に確認する

NVOCC・フォワーダーの関与範囲対比表

NVOCCやフォワーダーは、責任制限の確認に必要な資料整理や関係者調整を支援できます。ただし、責任制限の最終的な適用可否、外国法上の解釈、保険金支払い可否を自社判断で断定することは避ける必要があります。

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
B/L確認 B/L上のPackage数、重量、Declared Value欄の確認 片方のB/Lだけで責任制限額を確定すること House B/LとMaster B/Lを分けて確認する
資料整理 Invoice、Packing List、Survey Report、写真の収集 請求額をそのまま運送人責任額と認めること 実損額と責任制限額を分けて整理する
責任制限試算 Package LimitationとWeight Limitationの基礎数値整理 最終的な法的責任額を断定すること 必要に応じて保険会社・弁護士・専門家へ確認する
保険会社対応 保険会社へB/L、事故資料、試算資料を提出する 保険金支払い可否や代位求償責任を断定すること 保険会社の判断と運送人責任を分けて整理する
COGSA確認 米国発着・米国経由、Clause Paramountの有無を確認する COGSAの適用可否を専門確認なしに断定すること 運送経路、約款、準拠法を確認する
初期回答 請求受領、資料依頼、責任制限確認中であることを伝える 責任承認や支払約束と受け取られる表現 責任額は未確定であることを明確にする

実務シナリオ1:高額な精密機器で責任制限額が実損額を大きく下回った場合

例えば、高額な精密機器1台が木箱1ケースで輸送され、到着時に破損していたとします。Invoice価格は非常に高額であり、荷主はその金額を基準に運送人へ請求しました。

しかし、B/L上のPackage数が1で、貨物価額の申告もなく、通常の責任制限が適用される場合、Package LimitationまたはWeight Limitationで計算した金額が実損額を大きく下回ることがあります。

この場合、荷主側は貨物保険で損害を回復する必要があり、運送人から回収できる金額はB/L上の責任限度額にとどまる可能性があります。高額貨物では、事故後に責任制限額を知るのでは遅く、出荷前に貨物保険、価額申告、梱包、輸送条件を確認することが重要です。

実務シナリオ2:B/L上の記載が「1 Container」のみで争いになった場合

例えば、コンテナ内に多数のカートンが積まれていたにもかかわらず、B/L上の個数記載が「1 Container」としか読めない場合があります。

事故発生後、請求側はPacking List上のカートン数を基準に責任制限額を計算すべきだと主張することがあります。一方、運送人側は、B/L上の記載を基準にコンテナを1単位として責任制限を主張する可能性があります。

この場合、B/L表面のNo. of Packages欄、Description欄、Shipping Instruction、Packing List、Invoice、コンテナ番号、シール番号を確認します。コンテナ貨物では、B/L上の個数記載が責任制限に大きく影響します。

実務シナリオ3:米国COGSAの500米ドル制限が問題になった場合

例えば、米国向け貨物で事故が発生し、B/L上のClause Paramountやローカル条項により、米国COGSAの責任制限が問題になる場合があります。

この場合、日本法・ヘーグ・ヴィスビー・ルール系の666.67 SDRまたは2 SDR/kgとは異なり、1包あたり500米ドル、または慣習的運賃単位を基準とする考え方が問題になることがあります。

貨物が高額であっても、B/L上の個数記載や適用法によっては、回収可能額が大きく変わる可能性があります。米国発着貨物や米国経由貨物では、B/Lの準拠法、裁判管轄、Clause Paramount、COGSA適用条項、Package数、Freight Unitの扱いを確認する必要があります。

4列判断チェックリスト

B/Lの責任制限を確認する際は、確認場面、確認相手、確認事項、問題がある場合の対応を分けて管理します。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
貨物事故受領時 荷主、保険会社、倉庫 損害額、損傷貨物、事故発生区間 請求額をそのまま認めず、B/L確認へ進む
B/L確認時 NVOCC、船会社、海外代理店 Package数、重量、Description、Declared Value B/L記載が曖昧な場合はShipping Instruction等を確認する
責任制限試算時 社内担当者、保険会社、弁護士 Package Limitation、Weight Limitation、SDR換算 両方を試算し、高い方を確認する
コンテナ貨物確認時 荷主、NVOCC、船会社 コンテナ単位か、個品数・カートン数が記載されているか 「1 Container」のみの場合は争点化を想定する
高額貨物確認時 荷主、保険会社、フォワーダー Declared Value、従価運賃、貨物保険 運送人責任と貨物保険を分けて説明する
COGSA確認時 船会社、海外代理店、弁護士 米国発着・米国経由、Clause Paramount、Freight Unit SDR系ルールと500米ドル制限を混同しない
代位求償対応時 保険会社、荷主、NVOCC 保険金支払い額、求償根拠、責任制限額 保険金支払い額と運送人責任額を分けて回答する
初期回答作成時 請求者、保険会社、海外代理店 責任承認表現の有無、資料依頼、責任制限確認中の表現 責任額は未確定であり、B/L約款確認後に回答すると明記する

海外代理店・船会社へ確認する場合の英文表現

海外代理店、船会社、保険会社へ確認する場合は、責任制限の前提となるPackage数、重量、適用法、Clause Paramountを確認する目的を明確にします。

場面 英文例 使う目的 注意点
Package数の確認 Please confirm the number of packages stated on the relevant B/L. Package Limitationの基礎数値を確認する Packing List上の数量と区別する
重量の確認 Please confirm the gross weight of the damaged or lost cargo. Weight Limitationの基礎数値を確認する 総重量か損傷貨物重量かを確認する
責任制限条項の確認 Please confirm the applicable limitation of liability under the B/L terms. B/L上の責任制限条項を確認する 責任承認ではなく前提確認として使う
COGSA確認 Please confirm whether U.S. COGSA applies under the Clause Paramount. 米国COGSA適用可能性を確認する 米国発着・米国経由貨物で有用
責任未確定の明示 This response shall not be construed as an admission of liability or quantum. 責任額を認めない趣旨を明示する 初期回答で有用
権利留保 We reserve all rights and defenses under the applicable B/L terms, including any limitation of liability. 責任制限を含む抗弁を留保する 保険会社・船会社とのやり取りで有用

確認すべき資料

NVOCCやフォワーダーが貨物クレームを受けた場合、責任制限を確認するために次の資料を整理します。

  • House B/L表面
  • House B/L裏面約款
  • Master B/L表面
  • Master B/L裏面約款
  • Ocean B/LまたはSea Waybill
  • Shipping Instruction
  • Booking資料
  • Invoice
  • Packing List
  • 重量証明資料
  • Claim Letter
  • サーベイレポート
  • 写真、受領記録、POD
  • Declared Valueに関する記載
  • 従価運賃または追加運賃に関する資料
  • Clause Paramount
  • 保険証券、保険会社からの通知
  • 代位求償書類

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
貨物のInvoice価格全額を運送人へ請求できる B/L上の責任制限により、回収可能額が実損額を下回ることがあります。 Invoice価格と責任制限額を分けて整理します。
Package Limitationだけ確認すればよい Weight Limitationの方が高くなる場合があります。 Package計算とWeight計算を両方試算します。
コンテナ内のカートン数は常にPackage数になる B/L上の記載によっては、コンテナ自体が1単位として争われることがあります。 No. of Packages欄とDescription欄を確認します。
高額貨物なら責任制限は当然に外れる 貨物価額が高いだけでは、責任制限が当然に排除されるわけではありません。 Declared Valueや従価運賃の有無を確認します。
保険会社が保険金を払ったなら運送人も同額を払う 保険金支払い額と運送人の責任限度額は別問題です。 代位求償ではB/L上の責任制限を確認します。
米国COGSAでもSDRで計算すればよい 米国COGSAでは500米ドル制限や慣習的運賃単位が問題になることがあります。 Clause Paramountと運送経路を確認します。
Claim Letterを出せば責任制限の問題は解決する Claim Letterは請求意思を示す書類であり、責任制限額を当然に確定させるものではありません。 B/L約款、適用法、Package数、重量を別途確認します。

実務上の確認ポイント

  • B/L上の個数、梱包単位、重量を確認する。
  • Package LimitationとWeight Limitationを比較する。
  • SDR換算時点と換算通貨を確認する。
  • コンテナ貨物では個品数がB/L上に記載されているか確認する。
  • 貨物価額申告やDeclared Valueの有無を確認する。
  • 米国COGSAやClause Paramountの有無を確認する。
  • 高額貨物では貨物保険の有無を確認する。
  • 遅延損害・間接損害は貨物損害と分けて確認する。

実務上の注意点

B/Lの責任制限は、貨物事故時に運送人からどこまで回収できるかを判断するための重要な仕組みです。

損害額全額を請求できるとは限らず、Package Limitation、Weight Limitation、SDR、貨物価額申告、コンテナ単位の扱いによって回収可能額が変わります。

高額貨物や少量高額貨物では、実損額と責任制限額に大きな差が出ることがあります。荷主側は貨物保険の手配を確認し、フォワーダー側は請求額をそのまま認めず、B/L上の責任制限を確認します。

まとめ

B/Lの責任制限とは、貨物に滅失・損傷が発生した場合でも、運送人が負う賠償責任を一定額に制限する仕組みです。

日本法・ヘーグ・ヴィスビー・ルール系では、1包または1単位あたり666.67 SDR、または損傷・滅失貨物の総重量1kgあたり2 SDRの高い方が問題になります。

米国COGSAでは、1包あたり500米ドル、または慣習的運賃単位という別の考え方が問題になることがあります。

コンテナ貨物では、B/L上の個数記載が責任制限額に大きく影響します。「1 Container」とだけ記載されている場合と、カートン数やケース数が明記されている場合では、責任制限額の考え方が変わる可能性があります。

B/Lの責任制限は、損害額とは別に確認すべき回収可能額の問題です。貨物事故の初動では、Invoice価格だけでなく、B/L上の個数、重量、SDR換算、適用法、貨物価額申告の有無を確認することが重要です。

外航貨物海上保険は、保険料より条件で差が出ます。付保条件の選択と約款の解釈は、専門の保険会社・代理店にご相談ください。

同義語・別表記

  • B/L責任制限
  • 船荷証券の責任制限
  • 運送人責任制限
  • Liability Limitation
  • Limitation of Liability
  • Package Limitation
  • Weight Limitation
  • 責任限度額
  • 666.67 SDR
  • 2 SDR/kg
  • COGSA 500ドル
  • パッケージリミット
  • 重量制限