フォワーダー契約で確認すべき条項

Forwarder Contract Checkpoints

概要

フォワーダー契約では、見積金額だけでなく、フォワーダーの契約上の立場、責任範囲、追加費用、貨物保険との関係、事故発生時の対応手順を確認することが重要です。国際輸送では、貨物の破損、紛失、延着、誤配送、通関遅延、保管料、Demurrage、Detentionなど、輸送中だけでなく輸送前後にも多くのトラブルが発生します。

特に問題になるのは、フォワーダーが自ら運送人として責任を負うのか、それとも荷主のために運送手配を行う取次・代理の立場なのかという点です。この区別が曖昧なまま契約すると、事故が発生した際に、誰に対して、どの範囲で、いつまでに請求できるのかが不明確になります。

フォワーダー契約は、平常時には見積書や手配依頼書の一部として扱われがちです。しかし、事故や追加費用が発生した時には、責任制限、免責、通知期限、支払条件、準拠法、裁判管轄などの条項が実務判断の基礎になります。

この記事で扱う範囲

この記事では、フォワーダー契約を国際輸送リスクの分担を決める実務上の基礎文書として整理します。フォワーダーの立場、責任制限、免責、追加費用、貨物保険、事故通知、特殊貨物、準拠法・裁判管轄を中心に確認します。

項目 この記事で扱う内容 別記事・別確認で扱う内容
フォワーダー契約 契約上の立場、責任範囲、追加費用、事故時の対応条項を整理します。 個別契約書の法的解釈や紛争対応は、弁護士など専門家への確認が必要です。
House B/L・Master B/L 荷主とフォワーダー、フォワーダーと実運送人の二層構造を説明します。 B/L約款の詳細、裏面約款、電子B/Lの取扱いは別途確認が必要です。
NVOCC フォワーダーが契約上の運送人として関与する場合の基本的な見方を扱います。 NVOCC登録制度、各国法令上の要件、実運送人との契約条件は個別確認が必要です。
貨物海上保険 フォワーダー責任と貨物保険の補償範囲が一致しない点を説明します。 保険条件、免責、保険金請求書類、共同海損、サルベージなどは別記事で扱います。
追加費用 Demurrage、Detention、Storage、検査費用、再配達費用などの発生条件を確認します。 各費用の具体的な計算方法、フリータイム、タリフは個別案件で確認が必要です。
事故対応 通知期限、証拠保全、Claim Letter、サーベイ、保険会社との連携を扱います。 訴訟、仲裁、求償手続、海外法上の時効管理は専門的確認が必要です。

フォワーダー契約で最初に確認すべきこと

フォワーダー契約で最初に確認すべきことは、そのフォワーダーがどの立場で業務を行うのかです。国際物流では、同じ「フォワーダー」という名称であっても、実際にはNVOCC、利用運送人、取次業者、通関手配者、海外代理店との連絡窓口など、役割が異なる場合があります。

フォワーダーがHouse B/Lを発行し、荷主との間で運送契約を締結している場合には、フォワーダー自身が契約上の運送人として責任を負う構造になります。一方、単に船会社、航空会社、トラック業者、通関業者を手配するだけの場合には、フォワーダーの責任は取次・手配上の注意義務にとどまることがあります。

この違いは、貨物事故が発生した時の請求先、責任制限、免責、出訴期限、保険会社による求償の相手方に直結します。契約前に、見積書、標準取引条件、House B/L、Sea Waybill、FCR、業務委託条件などを確認し、フォワーダーの立場を整理しておく必要があります。

運送人か、取次・代理か

フォワーダーが運送人として関与する場合、荷主に対して貨物を目的地まで運送する責任を負います。自社では船舶や航空機を保有していなくても、実運送人を利用して運送を引き受ける場合には、契約上は荷主に対する運送人として扱われることがあります。

これに対し、フォワーダーが取次・代理の立場で関与する場合、荷主と実運送人との間の運送契約を手配することが中心になります。この場合、貨物事故そのものについて常に運送人責任を負うとは限らず、手配ミス、指示漏れ、書類確認不足、連絡遅延など、フォワーダー自身の業務上の過失が問題になります。

実務では、見積書やメール上で「当社は手配者にすぎない」「実運送人の責任に従う」「標準取引条件による」などの文言が置かれていることがあります。これらの文言は、事故時の責任範囲を判断するうえで重要です。単に「フォワーダーに依頼した」という事実だけでは、責任主体を正確に判断できません。

運送人としての関与と取次・代理としての関与の違い

確認項目 運送人として関与する場合 取次・代理として関与する場合 実務上の注意点
契約上の立場 荷主に対して運送を引き受ける立場になります。 荷主のために運送人や通関業者などを手配する立場になります。 見積書、約款、House B/L、FCRなどで立場を確認します。
請求先 事故時に荷主がフォワーダーへ請求する構造になりやすくなります。 実運送人、倉庫業者、通関業者などが直接の責任主体になる場合があります。 誰に通知し、誰にClaim Letterを出すかを事故初期に整理します。
適用約款 House B/L約款、複合運送約款、標準取引条件などが重要になります。 フォワーダーの標準取引条件、業務委託条件、実運送人の約款などが関係します。 複数の約款が重なる場合、事故区間と契約関係を確認します。
責任制限 運送人責任として責任制限が適用されることがあります。 手配上の過失がある場合でも、標準取引条件上の責任制限が問題になることがあります。 高額貨物では、責任制限と貨物保険を別々に確認します。
保険との関係 貨物保険とは別に、フォワーダー責任保険や運送人責任が問題になります。 フォワーダー自身の過失がある場合、賠償責任保険の対象になることがあります。 貨物保険の補償範囲とフォワーダー責任を混同しないようにします。
求償 フォワーダーが荷主へ対応した後、実運送人へ求償する流れになることがあります。 荷主または保険会社が実際の責任主体へ直接請求する場合があります。 実運送人への通知期限や請求期限を失わないことが重要です。

House B/LとMaster B/Lの確認

House B/Lは、フォワーダーやNVOCCが荷主に対して発行する船荷証券です。House B/Lが発行されている場合、荷主から見ると、その発行者が契約上の運送人として見えるため、事故時の請求先やB/L約款の内容が重要になります。

Master B/Lは、実際の船会社などがフォワーダーやNVOCCに対して発行する船荷証券です。荷主はMaster B/Lの直接の当事者ではないことが多く、荷主とフォワーダー、フォワーダーと船会社という二層構造になります。このため、House B/L上の責任条件とMaster B/L上の責任条件が一致しない場合があります。

事故が発生した場合、荷主はHouse B/L発行者に請求し、House B/L発行者は必要に応じて実運送人へ求償する流れになります。ただし、実運送人に対する通知期限や請求期限を過ぎていると、フォワーダー側の回収可能性が低下し、結果として責任関係が複雑になります。

責任制限条項の確認

フォワーダー契約では、責任制限条項を必ず確認する必要があります。貨物が全損した場合でも、契約条件や適用される約款によっては、実損額全額が賠償されるとは限りません。責任制限は、B/L約款、標準取引条件、適用法、輸送区間、事故発生場所、貨物の申告価額などによって変わります。

海上輸送、航空輸送、陸上輸送、複合一貫輸送では、責任制限の考え方が異なります。特に複合一貫輸送では、損害がどの区間で発生したかが不明な場合、どの約款や責任制限を適用するかが争点になることがあります。

荷主側は、貨物価額が高い場合や特殊貨物を輸送する場合、責任制限の有無だけでなく、申告価額制度、特別な補償条件、貨物保険の手配要否を事前に確認しておく必要があります。フォワーダー側も、見積段階で責任制限の範囲を明示し、貨物価額に応じた保険手配を案内しておくことが望まれます。

免責条項の確認

免責条項は、フォワーダーや運送人が責任を負わない事由を定める条項です。天災、戦争、ストライキ、港湾混雑、船会社や航空会社の都合、税関検査、検疫、荷主側の書類不備、貨物固有の性質、梱包不備などが免責事由として問題になることがあります。

免責条項があるからといって、常にフォワーダーが責任を免れるわけではありません。たとえば、荷主から必要情報を受け取っていたにもかかわらず、危険品申告を怠った、温度管理条件を誤って手配した、通関書類の不備を放置したといった場合には、フォワーダー自身の業務上の過失が問題になります。

実務上は、免責条項の文言だけでなく、事故原因、荷主からの指示内容、フォワーダーの確認義務、実運送人への伝達状況、事故後の対応を合わせて確認します。免責条項は重要ですが、事故対応では事実関係の整理が不可欠です。

追加費用・支払条件の確認

フォワーダー契約では、運賃だけでなく追加費用の発生条件を確認する必要があります。国際輸送では、Demurrage、Detention、Storage、保管料、検査費用、通関遅延費用、再配達費用、貨物取扱料、書類訂正費用、キャンセル料などが発生することがあります。

見積書に「発生時実費」「別途請求」「現地費用は実費精算」とだけ記載されている場合、どの費用が、どの時点で、誰の負担になるのかが不明確になります。特に輸入貨物では、フリータイム超過、D/O交換遅れ、輸入許可後の搬出遅れ、納品先都合による待機などにより、想定外の費用が発生することがあります。

契約時には、運賃に含まれる費用と含まれない費用、現地費用の負担者、為替換算方法、立替払いの有無、支払期限、支払遅延時の取扱いを確認しておくことが重要です。安い見積であっても、追加費用の条件が曖昧であれば、結果的に総費用が高くなることがあります。

貨物保険との関係

フォワーダーの責任と貨物保険の補償範囲は一致しません。フォワーダーが責任を負う場合でも、責任制限によって賠償額が限定されることがあります。一方、貨物保険が付保されていても、遅延損害、逸失利益、販売機会の喪失、違約金、間接損害などは補償対象外となることがあります。

貨物保険は、貨物そのものの滅失・損傷を中心に補償する制度です。フォワーダー責任は、契約違反や業務上の過失に基づく賠償責任の問題です。両者は重なる部分もありますが、同じものではありません。

高額貨物、温度管理貨物、危険品、展示品、中古機械、食品、薬機法対象品などでは、貨物保険の条件とフォワーダー契約の責任範囲を別々に確認する必要があります。事故発生後に「フォワーダーに頼んだから大丈夫」「保険があるから大丈夫」と考えるのではなく、契約前に補償範囲と責任範囲を切り分けておくことが重要です。

事故発生時の通知・証拠保全

貨物事故が発生した場合、初動対応の遅れは回収可能性に影響します。契約条件やB/L約款には、損害通知の期限、請求書類、出訴期限などが定められていることがあります。外装異常、濡損、破損、数量不足、温度逸脱、封印異常などを確認した場合には、速やかに写真を撮影し、受渡書類にリマークを残す必要があります。

フォワーダー契約では、事故発生時に誰へ連絡するのか、どの書類を提出するのか、サーベイを誰が手配するのか、保険会社への連絡を誰が行うのかを確認しておくべきです。通知先がフォワーダー、実運送人、倉庫業者、保険会社、海外代理店に分かれる場合、連絡の遅れや漏れが起きやすくなります。

実務では、事故写真、B/L、インボイス、パッキングリスト、納品書、検品記録、温度記録、Claim Letter、サーベイレポート、運送状、受渡書類などが重要な資料になります。契約時に事故対応条項が曖昧な場合、事故発生後に必要資料の収集が遅れ、求償や保険金請求に支障が出ることがあります。

危険品・特殊貨物の申告義務

危険品、化学品、温度管理貨物、食品、医薬品、リチウム電池、精密機械、美術品、中古品などは、通常貨物とは異なる確認が必要です。荷主が必要情報を提供しなかった場合、船積み拒否、港湾での留置、追加検査、再梱包、保管料、罰則、事故時の免責などにつながることがあります。

危険品では、品名、UN番号、クラス、容器等級、SDS、危険品申告書、梱包状態、ラベル表示などが確認対象になります。温度管理貨物では、設定温度、許容温度帯、予冷、データロガー、積替時の管理、遅延時の対応を確認する必要があります。

フォワーダー契約では、荷主の情報提供義務と、フォワーダーの確認・伝達義務を切り分けておくことが重要です。荷主が情報を出さなかった場合と、フォワーダーが受け取った情報を正しく伝えなかった場合では、責任の所在が変わります。

準拠法・裁判管轄の確認

国際輸送では、事故が日本国内で発生するとは限りません。輸出地、輸入地、積替地、海上輸送中、航空輸送中、倉庫保管中など、損害発生場所によって関係者や適用条件が変わります。そのため、契約書やB/L約款に定められた準拠法と裁判管轄を確認する必要があります。

準拠法は、契約の解釈や責任判断に適用される法律を意味します。裁判管轄は、紛争が発生した場合にどこの裁判所で争うかを定めるものです。海外裁判所や外国法が指定されている場合、日本の荷主や保険会社にとって請求のハードルが高くなることがあります。

特にHouse B/Lや標準取引条件では、準拠法・管轄条項が小さく記載されていることがあります。事故発生後に初めて確認すると、請求期限や手続面で不利になる場合があるため、契約前に確認しておくことが望まれます。

フォワーダーの関与範囲

フォワーダー契約では、フォワーダーが支援できることと、断定すべきでないことを分けて理解する必要があります。フォワーダーは輸送手配、関係者連絡、書類確認、事故時の初動支援を行いますが、すべての損害について無条件に責任を負うわけではありません。

場面 フォワーダーが支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の注意点
契約上の立場確認 House B/L発行有無、見積条件、標準取引条件の提示を支援できます。 事故前にすべての法的責任を一方的に断定することは避けるべきです。 運送人か取次・代理かを資料で確認します。
責任範囲の説明 責任制限や免責条項の存在を説明できます。 実損額全額が必ず賠償されるとは説明できません。 高額貨物では貨物保険の手配を検討します。
追加費用の案内 Demurrage、Detention、Storageなどの発生可能性を案内できます。 発生前にすべての費用額を確定できるとは限りません。 見積時に実費精算・別途請求条件を明記します。
事故初動対応 写真撮影、リマーク取得、関係者への通知、必要書類案内を支援できます。 原因調査前に責任の所在を断定すべきではありません。 通知期限と証拠保全を優先します。
保険会社との連携 保険会社やサーベイヤーへの連絡を支援できます。 保険金支払可否や支払額をフォワーダーが確約することはできません。 保険条件、免責、必要書類を確認します。
特殊貨物対応 危険品、温度管理貨物、重量物などの確認項目を案内できます。 必要情報がない状態で船積可否や無事故を保証すべきではありません。 SDS、温度条件、梱包、許認可情報を事前に確認します。
紛争対応 関係書類の整理、時系列確認、相手先連絡を支援できます。 法的判断や訴訟見通しを専門家でない立場で断定すべきではありません。 準拠法、裁判管轄、出訴期限を確認します。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
フォワーダーに頼めば、事故時は必ず全額賠償される。 フォワーダーの立場、約款、責任制限、事故原因によって賠償範囲は変わります。 高額貨物では責任制限と貨物保険を必ず確認します。
見積金額が安ければ、契約条件も有利である。 安い見積でも、追加費用や責任制限が厳しい場合があります。 運賃だけでなく、別途費用、支払条件、免責条項を確認します。
House B/LとMaster B/Lの条件は同じである。 House B/LとMaster B/Lでは当事者、約款、責任条件が異なる場合があります。 荷主、フォワーダー、実運送人の契約関係を分けて確認します。
貨物保険があれば、フォワーダー契約の確認は不要である。 貨物保険とフォワーダー責任は別の問題です。 保険で補償されない損害や責任制限を確認します。
免責条項があれば、フォワーダーは常に責任を免れる。 フォワーダー自身の確認漏れ、伝達ミス、手配ミスがあれば責任問題になることがあります。 事故原因と業務上の過失を分けて確認します。
追加費用は、発生した時に考えればよい。 事前に条件を確認していないと、請求時に負担者をめぐって争いになります。 発生時実費、現地費用、立替払い、支払期限を契約時に確認します。
事故後に連絡すれば、いつでも請求できる。 通知期限、請求期限、出訴期限を過ぎると回収可能性が下がります。 事故発見直後に写真、リマーク、通知、Claim Letterを準備します。
準拠法や裁判管轄は、実務ではあまり関係ない。 紛争時には、どの法律でどこの裁判所に請求するかが大きな負担になります。 契約前に準拠法、管轄、時効・出訴期限を確認します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 問題になりやすい点 確認すべき資料 実務上の注意点
フォワーダーが運送人か取次者か不明確だった 事故時に誰へ請求するのかが曖昧になります。 見積書、標準取引条件、House B/L、FCR、メール記録 契約前にフォワーダーの立場を確認します。
責任制限条項を確認していなかった 高額貨物の損害でも、実損額全額が賠償されない場合があります。 B/L約款、標準取引条件、貨物価額、保険証券 高額貨物では申告価額や貨物保険を確認します。
免責条項が問題になった 天災、港湾混雑、書類不備、梱包不備などを理由に責任否認されることがあります。 契約条件、事故原因資料、指示メール、梱包写真、通関書類 免責事由とフォワーダー自身の過失を分けて確認します。
追加費用の発生条件が曖昧だった Demurrage、Detention、Storage、検査費用などの負担者をめぐって争いになります。 見積書、費用明細、Arrival Notice、請求書、フリータイム案内 発生時実費、現地費用、別途請求の範囲を明記します。
事故通知が遅れた 実運送人への請求や保険金請求に必要な期限を失う可能性があります。 受渡書類、写真、Claim Letter、B/L、サーベイレポート 事故発見直後に通知先と期限を確認します。
危険品情報が十分に共有されていなかった 船積み拒否、追加保管料、事故時の免責、罰則につながることがあります。 SDS、危険品申告書、UN番号、クラス、梱包明細 荷主の情報提供義務とフォワーダーの伝達義務を分けて確認します。
貨物保険とフォワーダー責任を混同した 保険で補償される範囲と、フォワーダーが賠償する範囲が一致しない場合があります。 保険証券、保険条件、フォワーダー約款、事故資料 保険請求と責任追及を別々に整理します。
準拠法・裁判管轄を事故後に初めて確認した 海外法や海外裁判所が指定され、請求コストが高くなることがあります。 House B/L、標準取引条件、契約書、約款 契約前に準拠法、管轄、出訴期限を確認します。

判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
見積取得時 フォワーダー、営業担当、海外代理店 フォワーダーの立場、適用約款、House B/L発行有無 不明な場合は、標準取引条件と発行書類を確認します。
契約前 荷主、フォワーダー、法務担当 責任制限、免責、通知期限、準拠法、裁判管轄 高額貨物や特殊貨物では事前に条件を明確化します。
貨物情報確認時 荷主、倉庫、梱包業者、フォワーダー 貨物価額、品名、危険品有無、温度条件、梱包状態 情報不足の場合は、船積前に追加確認します。
保険確認時 荷主、保険会社、保険代理店、フォワーダー 貨物保険の有無、保険条件、免責、補償対象外損害 フォワーダー責任と貨物保険を分けて整理します。
追加費用発生時 フォワーダー、通関業者、倉庫、船会社、荷主 発生理由、発生日、負担者、見積条件との関係 請求前に根拠資料を整理し、荷主へ説明します。
事故発生時 フォワーダー、実運送人、倉庫、保険会社、サーベイヤー 事故状況、写真、リマーク、通知期限、サーベイ要否 責任判断より先に証拠保全と通知を優先します。
請求・求償時 荷主、保険会社、フォワーダー、実運送人 Claim Letter、請求額、責任制限、求償先、期限 契約関係と事故区間を整理して請求先を確認します。
紛争化した場合 法務担当、弁護士、保険会社、フォワーダー 準拠法、裁判管轄、出訴期限、証拠資料 専門家に確認し、期限管理を優先します。

具体例1:責任制限条項を確認していなかったケース

輸入貨物で、荷主がフォワーダーに一括手配を依頼し、フォワーダーがHouse B/Lを発行していたケースを考えます。貨物は海上輸送中または搬入前後に損傷し、荷主はフォワーダーに実損額全額の賠償を求めました。しかし、House B/L約款には責任制限条項があり、賠償額は貨物価額ではなく約款上の上限を基準に判断される可能性がありました。

このケースでは、荷主側は「フォワーダーに一括で頼んだのだから全額賠償される」と考えていましたが、契約上は責任制限が適用される可能性がありました。高額貨物であれば、見積段階で貨物価額を申告し、責任制限の有無、追加補償、貨物保険の手配を確認しておくべきでした。

フォワーダー側も、House B/Lを発行する以上、自社が荷主に対してどの範囲で運送人責任を負うのかを明示し、実運送人に対する通知期限や求償可能性を確保しておく必要があります。

具体例2:免責条項が問題になったケース

荷主が輸出貨物を手配し、貨物は港湾混雑により予定より大幅に遅れて到着しました。荷主は納品遅延による販売機会の喪失を理由にフォワーダーへ賠償を求めましたが、契約条件には港湾混雑、船会社都合、不可抗力、遅延による間接損害についての免責条項が置かれていました。

この場合、遅延が発生したという事実だけでは、フォワーダーが当然に全損害を負うとは限りません。港湾混雑や船会社都合が免責事由に該当するか、フォワーダーが遅延情報を適切に伝えていたか、代替手段の案内が必要だったかを確認する必要があります。

免責条項は、責任を完全に消す魔法の文言ではありません。事故原因、連絡状況、荷主からの指示、フォワーダーの対応を合わせて確認し、免責事由と業務上の過失を分けて判断することが重要です。

具体例3:追加費用の発生条件が不明確だったケース

輸入FCL貨物で、通関書類の不足により輸入許可が遅れ、コンテナの搬出も遅れました。その結果、Demurrage、Storage、ドレージ再手配費用が発生しました。見積書には「現地費用は実費精算」とだけ記載されていたため、荷主とフォワーダーの間で誰が追加費用を負担するのか争いになりました。

このようなケースでは、追加費用そのものよりも、契約時に発生条件と負担者を明確にしていなかったことが問題になります。通関書類の提出遅れが荷主側にあるのか、フォワーダーの確認漏れがあるのか、船会社やターミナル都合なのかによって、説明の仕方が変わります。

見積段階では、Demurrage、Detention、Storage、検査費用、再配達費用、待機料などが発生する可能性と、発生時の負担条件を明記しておくことが重要です。追加費用は、事故が起きてからではなく、契約時に扱いを決めておくべき項目です。

具体例4:通知期限を過ぎて求償できなくなったケース

輸入LCL貨物で、納品後に貨物の破損が発見されました。荷主は社内確認に時間をかけ、フォワーダーへの正式な通知が遅れました。その間に、実運送人やCFSへの通知期限が過ぎ、フォワーダー側から実際の責任関係者へ求償することが難しくなりました。

貨物事故では、損害額の確定より先に、通知と証拠保全を行う必要があります。事故写真、外装状態、受渡書類のリマーク、検品記録、Claim Letter、サーベイ要否の確認が遅れると、原因特定や求償が難しくなります。

契約時には、事故発見時の通知先、通知期限、必要書類、サーベイ手配者、保険会社への連絡方法を確認しておくべきです。事故対応では、「誰が悪いか」を先に決めるよりも、期限を失わないことが実務上重要です。

実務上の注意点

フォワーダー契約で重要なのは、価格の安さだけではありません。誰が運送人として責任を負うのか、どの約款が適用されるのか、責任制限や免責がどこまで及ぶのか、追加費用がどの条件で発生するのかを確認することが、事故時の実務判断につながります。

契約条件を確認しないまま輸送を進めると、事故後に初めて責任範囲や請求期限の制約に直面することがあります。平常時には目立たない条項ほど、貨物事故、遅延、追加費用、通関トラブル、求償の場面で重要になります。

フォワーダー契約は、単なる手配条件ではなく、国際輸送リスクの分担を決める実務上の土台です。見積段階で契約条件を確認しておくことが、後日の争いを防ぎ、事故時の対応を早める最も現実的な対策になります。

まとめ

フォワーダー契約では、見積金額だけでなく、フォワーダーの契約上の立場、適用約款、責任制限、免責、追加費用、貨物保険、事故通知、特殊貨物、準拠法・裁判管轄を確認する必要があります。

特に重要なのは、フォワーダーが運送人として関与しているのか、取次・代理として関与しているのかを明確にすることです。この区別が曖昧なまま事故が発生すると、請求先、責任範囲、求償先、通知期限の判断が難しくなります。

フォワーダー契約は、国際輸送の実務リスクを事前に整理するための重要な確認資料です。安い見積を選ぶだけでなく、事故時にどの条項が適用され、誰が何を負担し、どの期限までに対応すべきかを確認しておくことが重要です。

同義語・別表記

  • フォワーダー契約
  • Freight Forwarder Contract
  • フォワーディング契約
  • 国際運送取扱契約
  • Forwarding Terms
  • Forwarder Terms and Conditions
  • 標準取引条件
  • 運送取扱条件

公式情報