貴金属・宝石類 From Vault to Vault Clause

From Vault to Vault Clause(金庫間約款)とは

From Vault to Vault Clause(金庫間約款)とは、貴金属、宝石類、高級時計、現金、有価証券、貴重書類などの高価品について、保険期間を「金庫から金庫まで」として明確にするための特別約款です。

通常の貨物保険では、出発地の倉庫から仕向地の倉庫までを保険期間とする倉庫間条件が基本になります。しかし、貴金属や宝石類のような高価品は、通常の倉庫ではなく、金庫、保管庫、警備付き保管施設、専門業者の管理場所で保管されることが多くあります。

この約款の中心は、保険の開始時点を「出発地側の金庫から搬出された時点」とし、終了時点を「仕向地側の金庫に引き渡され、収納された時点」として整理する点にあります。

高価品輸送では、搬出直後、積替え、中継保管、最終引渡し前後に盗難、すり替え、紛失、強盗、内部不正などのリスクが集中しやすいため、保険期間の開始と終了を厳密に確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

この記事では、貴金属、宝石類、高級時計、現金、有価証券、貴重書類などの高価品輸送において、From Vault to Vault Clauseにより保険期間をどのように整理するかを扱います。

具体的には、次のような論点を中心に整理します。

  • From Vault to Vault Clauseが必要になる理由
  • 通常の倉庫間条件との違い
  • 保険開始時点、途中の中継保管、保険終了時点の判断基準
  • 高価品輸送における盗難、紛失、すり替え、内部不正のリスク
  • 金庫搬出記録、金庫搬入記録、封印番号、数量確認記録の重要性
  • 中継地や複数金庫を経由する場合の注意点
  • Warranty of Ad Valoremとの関係
  • フォワーダーやNVOCCが確認すべき実務上の注意点

一方で、Wall to Wall Clauseは絵画や美術品の壁・展示場所から展示場所までの保険期間を整理する論点であり、Warranty of Ad Valoremは高価品の価額申告と保険金額を整理する論点です。また、美術品貨物の格落ち損害と貨物保険は、修復後の市場価値低下を扱う別の論点です。

本記事では、それらの周辺論点を踏まえつつ、貴金属・宝石類などの高価品について、どの金庫からどの金庫までを保険期間とするかに焦点を当てます。

なぜFrom Vault to Vault Clauseが必要になるのか

通常の貨物保険における倉庫間条件は、一般貨物の輸送には適しています。しかし、貴金属や宝石類では、「倉庫」という概念だけでは保険期間を十分に明確化できないことがあります。

高価品は、一般倉庫に置かれるのではなく、金庫、警備付き保管室、貴重品保管庫、専門警備会社の施設などで管理されることがあります。

そのため、どの時点で保険が始まり、どの時点で保険が終了するのかを、通常の倉庫間条件よりも厳密に定める必要があります。

たとえば、貴金属が出荷人の金庫から出された後、警備輸送車に積み込まれるまでの間、または到着後に受取人の金庫へ収納される前の間に事故が起きた場合、その区間が保険期間に含まれるかが問題になります。

From Vault to Vault Clauseは、このような高価品特有の保険期間の隙間を明確にするために用いられます。

対象になりやすい貨物

From Vault to Vault Clauseが問題になりやすいのは、単価が高く、盗難、紛失、すり替え、強盗などのリスクが大きい貨物です。

代表的には、次のような貨物があります。

  • 金、銀、プラチナなどの貴金属
  • ダイヤモンド、宝石、裸石
  • 宝飾品、ジュエリー
  • 高級時計
  • 現金、有価証券、貴重書類
  • 小型で高額な換金性の高い貨物
  • 警備輸送や専門保管が必要な高価品

これらの貨物では、貨物の大きさや重量よりも、価額、換金性、持ち去りやすさ、保管方法、警備体制が重要になります。

そのため、通常貨物とは異なる保険期間と管理条件が問題になります。

通常の倉庫間条件との違い

通常の貨物保険では、出発地の倉庫から仕向地の倉庫までを一連の輸送過程として捉えることが多くあります。

しかし、高価品では「倉庫」ではなく、「金庫」またはそれに準じる厳格な保管施設への出入庫が保険期間の判断基準になります。

項目 通常の倉庫間条件 From Vault to Vault Clause
主な対象貨物 一般貨物、工業製品、雑貨、原材料など 貴金属、宝石類、高級時計、現金、有価証券などの高価品
保険期間の基準 出発地倉庫から仕向地倉庫までの通常の輸送過程 出発地側の金庫から仕向地側の金庫までの管理された輸送過程
開始時点 出発地倉庫から輸送のために搬出された時点 出発地側の金庫、保管庫、貴重品保管施設から搬出された時点
終了時点 仕向地倉庫、納入先、最終保管場所へ搬入された時点 仕向地側の金庫、保管庫、貴重品保管施設に引き渡され、収納された時点
主なリスク 破損、水濡れ、盗難、輸送事故、荷役事故など 盗難、強盗、紛失、すり替え、数量不足、内部不正、管理の断絶など
重要な確認資料 輸送書類、入出庫記録、受領書、事故写真など 金庫搬出記録、金庫搬入記録、封印番号、警備輸送記録、数量確認記録、監視カメラ記録など

From Vault to Vault Clauseは、単に保険期間を長くするための約款ではありません。高価品輸送において、どの保管地点からどの保管地点までを保険者が引き受けるのかを明確にするための約款です。

保険期間の開始・中継保管・終了の判断基準

From Vault to Vault Clauseでは、保険開始時点、中継保管、保険終了時点を具体的に確認することが重要です。

時点 判断基準 確認資料 注意点
保険開始時点 被保険貨物が出荷人側の金庫、保管庫、貴重品保管施設から搬出され、輸送過程に入った時点 金庫搬出記録、搬出時刻、作業者記録、警備会社引受書、数量確認記録、封印番号 単なる出荷準備ではなく、実際に金庫から搬出されたかが重要です。
警備輸送会社への引渡し 金庫から搬出された貨物が、警備輸送会社、専門輸送業者、航空会社、運送人などへ引き渡された時点 引受書、受領書、警備輸送記録、車両記録、封印記録、担当者サイン 誰の管理下に移ったかを明確にします。
中継保管 空港内貴重品保管庫、警備会社保管施設、保税保管場所、海外中継地の金庫などに一時保管される状態 中継保管記録、入出庫記録、封印番号、保管場所の管理条件、警備記録 予定された中継保管か、保険者が承認した保管かを確認します。
予定外の保管 遅延、通関問題、受取人都合、書類不備などにより、予定外の場所で保管される状態 保管理由、保管場所、保管期間、保険者への通知、追加承認の有無 通常の輸送過程内か、保険条件外の保管かが問題になります。
仕向地側への到着 貨物が受取人の建物、施設、保管場所に到着した状態 到着記録、受領書、警備会社引渡し記録、仮置き記録 建物到着だけでは、金庫収納が完了したとは限りません。
保険終了時点 貨物が仕向地側の金庫、保管庫、貴重品保管施設へ引き渡され、収納された時点 金庫搬入記録、収納記録、受領書、数量確認記録、監視カメラ記録、入退室記録 受付、検品室、仮置き場に置かれているだけでは終了時点が争点になることがあります。

保険開始時点の確認

From Vault to Vault Clauseでは、保険開始時点が重要になります。

一般的には、被保険貨物が出荷人側の金庫、保管庫、貴重品保管施設から搬出され、輸送過程に入った時点が問題になります。

実務上は、単に「出荷準備が始まった時点」では足りません。金庫内での在庫管理中のリスクと、輸送のために金庫から搬出された後のリスクは分けて整理されます。

そのため、事故が発生した場合には、貨物がまだ金庫内にあったのか、金庫から搬出されて輸送業者や警備会社の管理に移った後だったのかを確認する必要があります。

保険終了時点の確認

保険終了時点も、From Vault to Vault Clauseでは重要な論点です。

一般的には、仕向地側の金庫、保管庫、貴重品保管施設に貨物が引き渡され、収納された時点が保険終了の目安になります。

単に受取人の建物に到着しただけでは、金庫への引渡しが完了したとは限りません。

受付、検品室、仮置き場、一般倉庫、展示準備室などに置かれている間は、金庫への引渡しが完了しているかどうかが問題になることがあります。

特に、到着後に盗難や紛失が発生した場合には、受領済みかどうかだけでなく、最終的な金庫収納まで完了していたかが保険期間の判断に影響します。

高価品輸送における管理条件

貴金属や宝石類では、通常貨物以上に管理条件が重要になります。

貨物が小型で高額であり、換金性が高いため、輸送ルート、保管場所、輸送日時、警備体制が外部に知られること自体がリスクになります。

実務上は、次のような管理条件が重要になります。

  • 輸送ルートの秘匿
  • 警備付き輸送
  • 二名体制または複数名体制
  • 封印管理
  • ケース番号、シール番号、封印番号の記録
  • 数量確認、重量確認
  • 追跡記録、GPS記録
  • 入退室管理
  • 監視カメラ記録
  • 中継保管場所の警備条件

また、外部からの盗難だけでなく、内部不正、すり替え、数量不足も想定する必要があります。

From Vault to Vault Clauseは、これらのリスクをすべて無条件に広く補償するものではありません。むしろ、高価品輸送において、保険者がどの区間を引き受け、どのような管理状態を前提にするかを明確にするためのものです。

中継地・複数金庫がある場合

高価品輸送では、出発地の金庫から最終目的地の金庫まで直行するとは限りません。

途中で警備会社の保管施設、空港内の貴重品保管庫、通関業者の保税保管場所、海外中継地の金庫などを経由することがあります。

この場合、どの中継保管が通常の輸送過程に含まれるのか、どの保管が保険者の承認を受けた保管なのかを確認する必要があります。

予定された中継保管であれば保険期間内として整理されやすい場合がありますが、予定外の保管、長期保管、管理条件の弱い場所での仮置きは争点になります。

特に、複数の金庫を経由する場合には、それぞれの搬出・搬入記録、封印番号、数量確認、警備記録を残しておくことが重要です。

どの時点で誰の管理下にあったかが分からないと、盗難、紛失、数量不足、すり替えが発生した際に責任関係が不明確になります。

Warranty of Ad Valoremとの関係

From Vault to Vault Clauseは、高価品輸送においてWarranty of Ad Valorem(従価申告保証)と密接に関係します。

Warranty of Ad Valoremは、貨物の価額を正確に申告し、その価額に見合った保険金額や保険条件で付保するための約款です。

一方、From Vault to Vault Clauseは、その高価品について、どこからどこまでを保険期間とするかを明確にする約款です。

つまり、高価品輸送では、「いくらの貨物を保険者に申告したか」と「どの管理地点からどの管理地点まで保険が続くか」の両方が重要になります。

価額申告が正確でも、金庫搬出前や金庫引渡し後のリスクは保険期間外となることがあります。

反対に、Vault to Vaultの保険期間が設定されていても、価額申告や保険金額が不十分であれば、事故発生時に十分な保険金を受け取れない可能性があります。

搬出・引渡し証明の重要性

From Vault to Vault Clauseでは、搬出と引渡しの証明が非常に重要です。

保険期間の開始と終了が、金庫からの搬出と金庫への引渡しに関係するためです。

実務上、確認すべき主な資料は次のとおりです。

  • 金庫からの搬出記録
  • 金庫への搬入・収納記録
  • 警備会社または輸送業者の引受書
  • 受領書、引渡し書、サイン記録
  • 封印番号、シール番号、ケース番号
  • 数量確認記録、重量確認記録
  • 監視カメラ記録、入退室記録

これらの資料は、単に保険金請求のためだけでなく、盗難、紛失、数量不足、すり替えがどの時点で発生したかを確認するためにも重要です。

特に、受取人の建物には到着しているが金庫収納前だった場合や、中継保管中に事故が起きた場合には、これらの記録が保険期間の判断を左右します。

サーベイヤー・保険者との確認ポイント

From Vault to Vault Clauseのクレームでは、サーベイヤーや保険者は、損害の発生状況だけでなく、保険期間内の事故であるかどうかを確認します。

確認されやすいポイントは、貨物がいつ金庫から搬出されたか、誰に引き渡されたか、どの輸送ルートを通ったか、どこで保管されたか、いつ受取側の金庫に収納されたかです。

また、封印が破られていないか、数量確認に差異がないか、輸送途中で予定外の保管がなかったか、警備条件が守られていたか、貨物の価額申告と保険金額が適切だったかも確認されます。

特に盗難やすり替えが疑われる場合、管理の連続性を示す資料が重要になります。

よくある誤解

From Vault to Vault Clauseでは、建物への到着、受領書、通常の倉庫間条件、中継保管を混同しないことが重要です。

よくある誤解 実務上の整理 確認すべきこと
建物に到着すれば、金庫に収納されたのと同じである 建物到着だけでは、金庫への引渡しや収納が完了したとは限りません。 金庫搬入記録、収納記録、受領書、入退室記録を確認します。
通常の倉庫間条件で高価品も十分カバーできる 貴金属や宝石類では、金庫から金庫までの管理区間を明確にしないと、保険期間の隙間が生じることがあります。 From Vault to Vault Clauseの有無、開始時点、終了時点を確認します。
Vault to Vaultがあれば、中継保管中も自動的に補償される 予定された中継保管か、保険者が承認した保管か、管理条件が守られているかを確認する必要があります。 中継保管場所、保管期間、警備条件、保険者への通知・承認を確認します。
警備会社に渡した時点で、保険上の問題はなくなる 警備会社への引渡し後も、輸送ルート、封印管理、数量確認、保管条件が問題になります。 警備輸送記録、引受書、封印番号、追跡記録を確認します。
価額申告をしていれば、保険期間は問題にならない 価額申告と保険期間は別の論点です。正確に申告していても、保険期間外の事故は問題になります。 Warranty of Ad ValoremとFrom Vault to Vault Clauseを分けて確認します。
受領書があれば、金庫収納まで証明できる 受領書は建物や担当者への引渡しを示すだけで、金庫収納まで示していない場合があります。 受領書の内容、収納記録、管理場所、数量確認記録を確認します。

フォワーダー実務での判断チェックリスト

フォワーダーやNVOCCの立場では、貴金属や宝石類の輸送を通常貨物と同じ手順で扱わないことが重要です。

高価品では、輸送ルート、保管場所、引渡し方法、警備体制、保険期間、価額申告がすべて重要な確認事項になります。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
受託時 荷主、輸出者、輸入者、所有者 貨物が貴金属、宝石類、高級時計、現金、有価証券など高価品に該当するか 通常貨物として扱わず、高価品輸送として保険条件と警備体制を確認します。
価額確認時 荷主、保険会社、保険代理店 申告価額、保険金額インボイス、鑑定書、評価資料 Warranty of Ad Valoremの要否と、価額申告の正確性を確認します。
保険手配時 保険会社、保険代理店、保険ブローカー From Vault to Vault Clauseの有無、対象区間、開始時点、終了時点、中継保管の扱い 金庫から金庫までの範囲を保険者に明確に確認します。
搬出前 荷主、警備会社、倉庫業者、保管施設 出発地金庫、搬出時刻、数量、封印番号、ケース番号、警備体制 金庫搬出記録、数量確認記録、封印記録を残します。
輸送中 警備輸送会社、航空会社、海上運送人、現地代理店 輸送ルート、中継保管、引渡し記録、封印状態、追跡記録 予定外の保管や経路変更がある場合は、保険者への通知要否を確認します。
中継保管時 警備会社、空港施設、保税倉庫、現地代理店 保管場所、警備条件、保管期間、搬入・搬出記録、封印番号 予定された中継保管か、承認された管理条件かを確認します。
到着時 受取人、警備会社、倉庫業者、保管施設 建物到着、受領、検品、金庫搬入、金庫収納の各時点 建物到着と金庫収納を混同せず、収納記録を確保します。
事故発生時 荷主、保険会社、警備会社、運送人、海事弁護士 事故発生時点、管理主体、封印状態、数量差異、保険期間内かどうか 保険請求と、警備会社・運送人・倉庫業者への求償を分けて整理します。

事故時に確認すべき資料

From Vault to Vault Clauseの事故では、貨物がどの時点で、誰の管理下にあり、保険期間内であったかを確認する資料が重要です。

出発地側の資料

  • 出発地金庫の所在地、管理者、保管条件
  • 金庫からの搬出記録
  • 搬出時刻、作業者、立会者
  • 数量確認記録、重量確認記録
  • 封印番号、シール番号、ケース番号
  • 監視カメラ記録、入退室記録

輸送中・中継保管中の資料

  • 警備輸送会社または輸送業者の引受書
  • 輸送ルート、追跡記録、GPS記録
  • 航空会社、海上運送人、倉庫会社、通関業者の引渡し記録
  • 中継保管場所の入出庫記録
  • 封印状態、ケース状態、数量確認記録
  • 予定外保管、経路変更、遅延があった場合の通知記録

仕向地側の資料

  • 到着記録、受領書、引渡し書
  • 受取人建物への到着時刻
  • 検品室、仮置き場、一般保管場所での管理記録
  • 仕向地金庫への搬入・収納記録
  • 受取時の数量確認、封印確認
  • 監視カメラ記録、入退室記録

保険・責任整理に関する資料

  • 保険証券
  • From Vault to Vault Clauseの適用有無
  • 申告価額、保険金額、インボイス、鑑定書
  • 警備輸送契約、運送契約、保管契約
  • 事故報告書、警察届、サーベイレポート
  • 保険会社への事故通知記録

具体例

たとえば、東京の貴金属業者の金庫からダイヤモンドが搬出され、警備輸送会社、空港、航空輸送、海外の警備倉庫を経由して、現地買主の金庫へ引き渡される取引があるとします。

この場合、保険期間を判断するうえでは、単に空港から空港までを見れば足りるわけではありません。

出発地の金庫から搬出された時点、警備輸送会社への引渡し、中継保管、到着地での受領、最終金庫への収納時点を確認する必要があります。

もし到着後、現地買主の建物には届いていたものの、金庫へ収納される前の仮置き中に盗難が発生した場合、その時点でFrom Vault to Vault Clause上の保険期間が継続していたかどうかが問題になります。

この場合、受領書だけでなく、金庫への搬入記録、収納記録、管理記録、監視カメラ記録が重要になります。

海事弁護士・専門家を利用すべき場面

From Vault to Vault Clauseが問題になる事故では、貨物保険だけでなく、警備輸送契約、運送契約、保管契約、通関業者責任、倉庫業者責任、盗難・すり替えに関する刑事手続きが関係することがあります。

特に、損害額が大きい場合、盗難やすり替えが疑われる場合、管理主体が複数に分かれている場合、金庫収納前後の保険期間が争点になる場合には、早い段階で海事弁護士や高価品輸送の専門家の関与を検討することが重要です。

高価品輸送では、誰の管理下で事故が発生したか、封印や数量確認にどこで差異が出たか、保険期間内かどうかが争点になりやすいため、初動段階で証拠資料を確保することが重要です。

実務上のポイント

  • From Vault to Vault Clauseは、貴金属や宝石類などの高価品について、保険期間を金庫から金庫まで整理する約款である。
  • 通常の倉庫間条件とは異なり、出発地金庫からの搬出と、仕向地金庫への収納が重要な判断基準になる。
  • 建物に到着しただけでは、金庫へ収納されたとは限らない。
  • 中継保管がある場合は、予定された保管か、保険者が承認した保管か、管理条件が守られていたかを確認する必要がある。
  • Vault to Vaultの保険期間と、Warranty of Ad Valoremによる価額申告は別の論点である。
  • 高価品輸送では、盗難、紛失、すり替え、数量不足、内部不正への備えが重要になる。
  • 金庫搬出記録、金庫搬入記録、封印番号、ケース番号、数量確認記録、監視カメラ記録は重要な証拠になる。
  • フォワーダーやNVOCCは、貴金属・宝石類を通常貨物と同じ手順で扱わず、保険条件、警備輸送、保管場所、引渡し方法を事前に確認する必要がある。

まとめ

From Vault to Vault Clauseは、貴金属、宝石類、高級時計、現金、有価証券などの高価品について、保険期間を金庫から金庫まで明確にするための特別約款です。

この約款の実務上の核心は、通常の倉庫間条件では曖昧になりやすい高価品の搬出・保管・引渡しのタイミングを、金庫への出入庫を基準に整理する点にあります。

実務では、出発地金庫からの搬出時点、中継保管、警備輸送、仕向地側金庫への収納時点を明確にし、封印番号、数量確認、搬出入記録、監視カメラ記録を残しておくことが重要です。

また、Vault to Vaultの保険期間だけでなく、Warranty of Ad Valoremによる価額申告、保険金額、警備条件、保管条件を合わせて確認することで、盗難、紛失、すり替えが発生した場合の保険請求と責任整理を行いやすくなります。

同義語・別表記

  • From Vault to Vault Clause
  • Vault to Vault Clause
  • 金庫間約款
  • 金庫から金庫まで
  • 貴金属輸送約款
  • 宝石輸送約款
  • 高価品輸送約款

関連用語

公式情報