Wall to Wall Clause(美術品保険)―展示・往復輸送の保険期間
Wall to Wall Clause(ウォール・トゥ・ウォール約款)とは
Wall to Wall Clause(ウォール・トゥ・ウォール約款)とは、絵画、美術品、展示品、収蔵品その他の文化的・美術的価値を有する物品について、作品が通常置かれている壁、台座、展示ケース、収蔵場所又は保管場所から取り外された時点から、梱包、搬出、輸送、保管、開梱、展示、撤収、再梱包及び返送を経て、所定の展示場所又は保管場所へ再設置されるまでの保険期間を定める補償条件です。
美術品保険や展覧会貸出条件では、Wall to Wallのほか、Nail to Nailという表現が用いられることもあります。
ただし、Wall to Wall Clauseという名称の単一かつ世界共通の標準約款が存在し、すべての保険者が同一の文言を使用しているわけではありません。
実際には、美術品保険の保険証券、展覧会保険、貸出契約、貨物保険へ付帯される個別特約又は保険明細上の補償条件として使用されます。
したがって、名称だけで補償範囲を判断せず、実際に付帯された正式文言、保険の種類、対象作品、予定会場、展示期間、輸送経路、保管場所及び終了条件を確認する必要があります。
通常の貨物保険にICC 2009が組み込まれている場合、Clause 8.1が通常の輸送過程と保険終期を定めます。
一方、Wall to Wall条件は、作品の取り外し、梱包、展示、撤収及び再設置を含めることにより、通常のWarehouse to Warehouse型の起点・終点より広い範囲を定めることがあります。
ただし、Wall to Wall条件が常にICC 2009 Clause 8.1を修正する特約であるとは限りません。独立した美術品保険又は展覧会保険として手配される場合もあるため、ICCとの関係は保険証券ごとに確認します。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 兄弟記事又は別記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| Wall to Wall条件 | 作品を元の場所から取り外した時点から、返送後に再設置されるまでの保険期間を整理します。 | 個別保険会社の正式約款、引受条件及び保険料は、実際の保険証券又は保険者への照会で確認します。 |
| ICC 2009 Clause 8.1 | 貨物保険にICCが組み込まれる場合の通常の保険開始、通常の輸送過程及び保険終期との違いを整理します。 | Warehouse to Warehouse、Clause 8.1.2、Clause 8.1.3及びClause 8.1.4の詳細は、保険期間の記事で扱います。 |
| 展示中担保 | 展示会場、美術館、ギャラリー又はイベント会場で展示されている期間の補償を整理します。 | 施設賠償責任、来場者事故及び会場設備事故は、展示会保険又は賠償責任保険で確認します。 |
| 巡回展 | 複数会場の搬入、展示、撤収、中継保管及び最終返却を一連で扱う場合の確認事項を整理します。 | ATAカルネ、再輸出、各国通関及び文化財輸出規制は、各専門記事で扱います。 |
| 美術品固有の損害 | 額縁、ガラス、キャンバス、絵具層、表面、支持体、吊り金具及び展示用部材の損害を整理します。 | 保存修復方法、真正性及び美術史上の評価は、保存修復専門家又は鑑定人が個別に判断します。 |
| 修復費用・格落ち損害 | 修復可能性、修復費用及び修復後の価値低下を区別します。 | 最終損害額は、保険価額、鑑定、修復報告及び保険条件により個別に判断します。 |
| 戦争・ストライキリスク | ICCの戦争・ストライキ免責と、別途付帯されるInstitute War Clauses又はInstitute Strikes Clausesとの関係を整理します。 | テロ、政治的暴力及び開催国固有の制裁・輸出入規制は、個別条件と最新情勢を確認します。 |
| フォワーダーの関与 | 梱包、輸送、会場搬入、展示設営、返送及び証拠保全への関与を標準五分類で整理します。 | 最終的な賠償責任は、受託範囲、契約、過失、因果関係及び責任制限により判断します。 |
Wall to Wall Clauseの法的・契約上の性質
Wall to Wallは、美術品保険及び展覧会貸出実務で使用される補償範囲の表現です。
保険者又は貸出機関によっては、作品が貸主の壁又は元の場所から取り外された時点から補償を開始し、返却後に再度壁へ掛けられ、又は元の場所へ再設置された時点で補償を終了する旨を定めます。
また、梱包、クレーティング、輸送、会場内保管、展示、撤収及び返送を補償期間へ含める場合があります。
しかし、次の事項は契約ごとに異なります。
- 補償開始が作品への最初の接触時か、取り外し時か、梱包開始時か
- 展示中及び会場保管中を含むか
- 複数会場間の輸送及び中継保管を含むか
- 返送先の建物到着時か、開梱完了時か、再設置時に終了するか
- 修復作業中の損害を含むか又は免責とするか
- 盗難、行方不明、温湿度変化及び機械的損傷をどこまで含むか
- 戦争、ストライキ、テロ及び政治的暴力を含むか
- 保険期間の上限日数又は保険証券上の終了日
したがって、「Wall to Wall」という表示だけを見て、展示中を含む、期間制限がない、又はすべての原因による損害が補償されると判断してはいけません。
なぜWall to Wall条件が必要になるのか
通常の貨物保険は、貨物が輸送のために出発地で動かされ、通常の輸送過程を経て、最終仕向地で所定の倉庫又は保管場所へ到達するまでを基本的な対象とします。
しかし、絵画や美術品では、美術館、ギャラリー、個人宅、収蔵庫又は展示室の壁に掛けられている状態や、台座又は展示ケースに設置されている状態が、通常の保管状態となることがあります。
また、美術品は輸送車両に積載されている間だけでなく、次の作業中にも損傷しやすいという特徴があります。
- 壁、台座又は展示ケースからの取り外し
- 額縁、吊り金具又は展示用部材の取扱い
- 梱包、クレーティング及び搬出
- 輸送中の衝撃、振動、温湿度変化及び水濡れ
- 到着時の開梱及び状態確認
- 吊り込み、台座設置及び照明調整
- 展示中の接触、転倒、盗難及び環境変化
- 撤収、再梱包、返送及び再設置
Wall to Wall条件は、これらを一連の貸出、展示又は輸送リスクとして整理し、保険期間の空白を避けるために使用されます。
ICC 2009 Clause 8.1との関係
貨物保険へICC 2009が組み込まれている場合、Clause 8.1は、保険の開始、通常の輸送過程及び主な保険終了事由を定めます。
Clause 8.1の標準的な考え方では、貨物が保険契約上の場所で直ちに輸送用具へ積み込む目的で初めて動かされた時点から保険が開始し、通常の輸送過程中は継続します。
最終仕向地では、Clause 8.1.1により、最終倉庫又は保管場所で輸送用具からの荷卸しが完了した時点が主な保険終期の一つになります。
これに対し、Wall to Wall条件では、美術品の実態に合わせて、輸送用具への積込みより前の取り外し、梱包及び搬出を補償開始へ含めることがあります。
また、最終倉庫での荷卸し完了ではなく、返却後の開梱、状態確認及び所定の壁、台座、展示ケース又は収蔵場所への再設置まで補償を継続することがあります。
| 確認項目 | ICC 2009 Clause 8.1の基本構造 | Wall to Wall条件で定められやすい範囲 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険開始 | 直ちに輸送用具へ積み込む目的で、貨物が指定場所で初めて動かされた時点 | 作品が壁、台座、展示ケース又は元の場所から取り外された時点 | 取り外し前の通常保管中を含むかは別途確認します。 |
| 梱包・搬出 | 通常の輸送開始に連続する範囲として扱われます。 | 専門業者による取り外し、状態確認、梱包及びクレーティングを明示的に含む場合があります。 | 梱包作業中の損害と修復作業中の損害を分けます。 |
| 展示期間 | 通常の輸送過程外の展示は、標準的な貨物保険だけでは当然に含まれるとは限りません。 | 会場到着後の展示、会場内保管及び撤収を含む場合があります。 | 展示会保険又は美術品保険との重複・空白を確認します。 |
| 返送 | 契約上の仕向地又は返送経路が保険へ組み込まれているか確認します。 | 撤収、再梱包及び元の場所への返送を一連の補償期間とする場合があります。 | 往路だけの保険か、往復一体の保険かを確認します。 |
| 保険終了 | 最終仕向地の最終倉庫等で荷卸しが完了した時点等 | 作品が元の壁、台座、展示ケース又は指定された保管場所へ再設置された時点 | 建物到着、仮置き、開梱及び再設置を区別します。 |
| 60日 | Clause 8.1.4は、最終荷卸港で海外本船からの荷卸し完了後60日を定めます。 | Wall to Wall条件の上限日数は、保険証券又は個別特約で別に定められることがあります。 | Wall to Wallの上限日数をClause 8.1.4の60日と同一視しません。 |
Wall to Wall条件は、ICC 2009 Clause 8.1との関係で起点・終点を拡張又は置き換える場合がありますが、その効果は実際の優先条項、特約文言及び保険証券全体により判断します。
Wall to Wall ClauseとFrom Vault to Vault Clauseの違い
| 項目 | Wall to Wall Clause | From Vault to Vault Clause | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 絵画、美術品、展示品、収蔵品及び文化財 | 貴金属、宝石、現金、有価証券その他の高価品 | 名称だけで対象物を限定せず、保険明細を確認します。 |
| 起点 | 壁、台座、展示ケース又は元の保管場所から取り外された時点 | 金庫、保管庫又は警備された保管場所から搬出された時点 | 最初の作業又は最初の移動の定義を確認します。 |
| 終点 | 元の壁、展示場所又は指定保管場所への再設置 | 指定金庫、保管庫又は受取場所への引渡し | 受領だけか、格納完了までかを確認します。 |
| 中心リスク | 取外し、梱包、振動、温湿度、展示、撤収及び再設置 | 盗難、紛失、強盗、すり替え及び警備管理 | 実際の免責及び警備条件を確認します。 |
| 保険形態 | 美術品保険、展覧会保険、貸出契約又は貨物保険特約 | Specie保険、高価品保険又は貨物保険特約 | 必ずしも同一のICCを基礎とするわけではありません。 |
対象になりやすい作品・貨物
- 絵画、版画、掛け軸及び写真作品
- 額装作品、ガラス又はアクリルを使用した作品
- 彫刻、立体作品、装飾品及びインスタレーション
- 美術館、博物館及びギャラリーの展示品
- 個人コレクション、企業コレクション及び収蔵品
- 国内外の巡回展、貸出展示及びオークション下見会の作品
- 文化財、工芸品、骨董品及び歴史資料
- 分解、組立て又は専門施工を伴う大型作品
作品の素材、制作年代、保存状態、脆弱性、過去の修復歴及び展示方法によって必要な梱包、環境条件及び保険条件が異なります。
保険期間の開始・継続・終了
| 時点 | 判断基準 | 確認資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険開始 | 作品が元の壁、台座、展示ケース又は保管位置から、貸出・展示・輸送のために取り外された時点 | 作業開始記録、取り外し時刻、搬出前写真、Condition Report | 作品への最初の接触時から開始する文言の場合もあります。 |
| 梱包・クレーティング | 作品の状態確認、養生、梱包及び木箱への収納が行われています。 | 梱包仕様、作業写真、梱包業者記録 | 額縁、ガラス、作品本体及び吊り金具を別々に記録します。 |
| 搬出・国内輸送 | 施設から空港、港湾、倉庫又は会場へ輸送されています。 | 受領書、車両記録、GPS、温湿度及び衝撃記録 | 積替え又は一時保管の管理主体を確認します。 |
| 国際輸送 | 航空、海上、鉄道又は複合輸送中です。 | AWB、B/L、運送書類、事故報告 | 戦争・ストライキ及びテロ条件を確認します。 |
| 会場搬入・開梱 | 到着後に開梱、状態確認及び展示準備が行われています。 | 開梱写真、到着時Condition Report、立会記録 | 輸送中損傷と開梱中損傷を切り分けます。 |
| 展示設営 | 吊り込み、台座設置、展示ケース収納又は組立てが行われています。 | 設営写真、施工記録、作業者一覧 | 施工業者の賠償責任と保険担保を分けます。 |
| 展示中 | 作品が一般公開、内覧又は保管展示されています。 | 警備記録、温湿度記録、会場事故報告 | 展示中をWall to Wall条件が含むか明示的に確認します。 |
| 撤収・再梱包 | 作品の取外し、状態確認及び返送梱包が行われています。 | 撤収前後写真、再梱包記録、返送前Condition Report | 撤収時の落下及び表面接触が問題になりやすい場面です。 |
| 返送 | 貸主又は指定返却先へ輸送されています。 | 返送書類、追跡記録、温湿度・衝撃記録 | 返送経路及び中継保管が保険へ含まれるか確認します。 |
| 返却後の開梱・検品 | 返却先で開梱及び状態確認が行われています。 | 返却時Condition Report、開梱写真、受領記録 | 建物到着だけで補償が終了するとは限りません。 |
| 保険終了 | 作品が指定された壁、台座、展示ケース又は保管場所へ再設置され、返却作業が完了した時点 | 再設置写真、返却確認書、受領書 | 仮置き中又は再設置前の損害が期間内か確認します。 |
保険期間の上限日数と終了日の確認
Wall to Wall条件では、展示期間、貸出期間又は保険証券上の保険期間に上限が設定されることがあります。
この上限は、ICC 2009 Clause 8.1.4の60日を当然に流用したものとは限りません。
Clause 8.1.4は、ICCが適用される貨物輸送について、最終荷卸港で海外本船からの荷卸しが完了した後の保険終期を定める条項です。
これに対し、Wall to Wall条件の上限は、次のような契約構造で定められることがあります。
- 保険証券又は保険明細に記載された始期・終期
- 貸出契約又は展覧会契約に記載された貸出期間
- 展示開始日及び終了日に前後の輸送期間を加えた期間
- 一会場又は全巡回展について設定された最大日数
- 会場内保管又は中継保管について設定された個別日数
- 延長時の事前通知及び追加保険料を条件とする規定
期間条件がWarranty、Condition Precedent、Exclusion又は単なる保険期間の定義のいずれとして機能するかは、正式文言によって異なります。
したがって、単に上限日数を超えたという事実だけで、Insurance Act 2015上のWarranty違反として処理してはいけません。
英国法が適用され、当該条件がWarrantyに該当し、かつ契約上の有効な変更がない場合は、Insurance Act 2015 Section 10及び必要に応じてSection 11との関係を確認します。
しかし、保険証券に定められた契約期間そのものが終了した場合は、Warranty違反とは異なる問題です。
会期延長、通関遅延、返送遅延、会場追加又は中継保管が生じた場合は、上限到達前に保険者へ通知し、延長承認と追加保険料を確認します。
絵画・美術品固有の損害リスク
| 損害類型 | 発生場面 | 保険上の確認 | 主な資料 |
|---|---|---|---|
| 額縁・ガラスの破損 | 取り外し、梱包、輸送、開梱又は設営中 | 額縁だけの損害か、破片等が作品本体へ影響したかを確認します。 | 事故前後写真、開梱記録、修復見積り |
| キャンバスの破れ・たるみ | 衝撃、圧迫、落下、振動又は設営中の接触 | 作品本体の修復費用と価値低下を分けます。 | 拡大写真、保存修復報告、事故状況 |
| 絵具層の剥落・ひび割れ | 振動、温湿度変化、表面接触又は既存劣化 | 外部事故、既存状態、固有の性質及び通常劣化を切り分けます。 | Condition Report、温湿度記録、専門家意見 |
| 表面汚損・指紋・擦過傷 | 開梱、検品、展示、撮影又は撤収中 | 発生時点、管理主体及び取扱手順を確認します。 | 作業記録、会場報告、CCTV、写真 |
| 水濡れ・湿気・カビ | 輸送中、倉庫保管中又は展示会場 | 水の侵入、結露、環境管理不良、既存状態及び素材特性を確認します。 | 温湿度記録、梱包材、サーベイ、検査結果 |
| 反り・波打ち・変形 | 急激な温湿度変化、航空輸送又は会場環境 | 偶発事故か、通常予見される素材変化かを確認します。 | 素材情報、環境記録、専門家意見 |
| 落下・転倒 | 吊り込み、台座設置、展示中又は撤収中 | Wall to Wall担保、施工業者責任及び会場管理責任を分けます。 | 施工記録、固定部材、事故報告、写真 |
| 盗難・行方不明 | 輸送、倉庫、展示会場又は返却作業中 | 盗難担保、警備条件、在庫照合及び管理引継ぎを確認します。 | 警備記録、受渡記録、警察届、CCTV |
巡回展・複数会場で確認すべき事項
巡回展では、最初の貸出元から最終返却先までを一つのWall to Wall期間として手配する場合と、会場又は輸送区間ごとに保険を分ける場合があります。
| 確認項目 | 主な問題 | 確認資料 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 全会場の記載 | 予定会場が保険明細から漏れている | 展覧会日程、Venue List、保険明細 | 会場追加前に保険者承認を得ます。 |
| 会場間輸送 | 各会場間の陸送又は航空輸送が未手配 | 輸送計画、Booking、運送契約 | 全輸送区間を保険へ明記します。 |
| 中継保管 | 予定外倉庫又は長期仮置き | 保管契約、所在地、警備・環境情報 | 保険者へ通知し、保管条件を確認します。 |
| 会期延長 | 保険終期又は最大日数を超過 | 会期変更通知、貸出契約 | 期限前に延長承認を取得します。 |
| 作品の入替え | 作品一覧又は評価額が変更 | 作品明細、評価書、貸出記録 | 保険明細と総保険価額を更新します。 |
| 最終返却先 | 貸出元と異なる保管場所へ返却 | 返却指示、保険明細、受領書 | 変更後の終了場所を保険者へ確認します。 |
貨物保険・展示会保険・美術品保険の役割分担
| 保険の種類 | 主な対象 | Wall to Wallとの関係 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 貨物保険 | 国内・国際輸送、搬入搬出及び一定の一時保管 | 特約により取り外し、展示及び再設置まで拡張される場合があります。 | 展示中及び長期保管を当然に含むとは限りません。 |
| 展示会保険 | 展示物、会場設備、設営撤収及び第三者賠償 | 会場内の展示期間を中心に補完する場合があります。 | 輸送区間、貸出元での取り外し及び返送後を確認します。 |
| 美術品保険 | 美術品の保管、展示、貸出、輸送及び価値低下 | 独立したWall to Wall又はNail to Nail条件を設ける場合があります。 | 評価額、真正性、修復、警備及び環境条件が重要です。 |
| 動産総合保険 | 施設内又は一定地域内の動産損害 | 展示又は保管中を補完する場合があります。 | 国際輸送、作品価値及び格落ち損害の取扱いを確認します。 |
| 施設・施工業者の賠償責任保険 | 会場管理又は作業上の過失による賠償責任 | Wall to Wall保険からの求償先となる場合があります。 | 美術品の高額価値に対して責任限度額が不足する場合があります。 |
戦争・ストライキ・テロリスクとの関係
Wall to Wall条件が付帯されていても、戦争、ストライキ、暴動、テロ又は政治的暴力が自動的に補償されるとは限りません。
貨物保険の基本条件としてICC(A)、ICC(B)又はICC(C)が適用される場合、ICC 2009 Clause 6は戦争危険を、Clause 7はストライキ、暴動及びテロ等の危険を一般免責としています。
これらの危険を補償する場合は、輸送方法に応じてInstitute War Clauses (Cargo)、Institute Strikes Clauses (Cargo)、Institute War Clauses (Air Cargo)又はInstitute Strikes Clauses (Air Cargo)等を別途付帯することがあります。
ただし、美術品保険又は展覧会保険が独自の約款体系を採用する場合、ICC Clause 6及びClause 7が直接適用されるとは限りません。
この場合は、当該保険のWar Exclusion、Terrorism Exclusion、Strikes, Riots and Civil Commotions条件、地理的制限及び取消条項を確認します。
| リスク | ICC貨物保険での基本確認 | 美術品保険等での確認 | 主な実務対応 |
|---|---|---|---|
| 戦争・内戦 | Clause 6とInstitute War Clausesの付帯 | War Exclusionと個別拡張 | 開催国、経由国、輸送方法及び取消通知を確認します。 |
| ストライキ・暴動 | Clause 7とInstitute Strikes Clausesの付帯 | SRCC条件及び地域制限 | 空港・港湾・会場の閉鎖と保管延長を確認します。 |
| テロ・政治的暴力 | Clause 7、テロ関連条項及び保険終期 | Terrorism Exclusion又は専用補償 | 会場警備、避難、保管変更及び保険者通知を確認します。 |
| 制裁・輸出入規制 | Sanctions Clause及び適法な輸送可否 | 制裁除外及び保険金支払制限 | 作品、所有者、貸出先、経由地を確認します。 |
修復費用と格落ち損害
美術品の損害額は、単純な修理費用だけでは整理できない場合があります。
保存修復によって外観又は構造が回復しても、事故歴又は修復歴によって市場価値、美術的評価又はコレクション価値が低下することがあります。
| 損害項目 | 内容 | 主な確認資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 応急処置費用 | 剥落防止、乾燥、仮固定及び安全な保管 | 専門家指示、費用明細、写真 | 緊急時を除き保険者の承認を確認します。 |
| 修復費用 | キャンバス、支持体、絵具層、額縁等の修復 | 修復見積書、修復計画、専門家意見 | 作品本体と額縁等を分けます。 |
| 調査・鑑定費用 | 損害原因、真正性、価値及び修復可能性の調査 | 鑑定書、保存修復報告、分析結果 | 保険上認められる費用範囲を確認します。 |
| 格落ち損害 | 修復後も残る市場価値又は美術的価値の低下 | 事故前評価、修復後評価、市場資料 | すべての保険が格落ち損害を補償するわけではありません。 |
| 全損 | 物理的消失、修復不能又は経済的全損 | 保険価額、専門家意見、残存価値 | 保険金支払後の作品所有権及び買戻し条件を確認します。 |
フォワーダー関与範囲の標準五分類
本記事で使用する五分類は、法令又は業界全体の合意によって確立された区分ではありません。フォワーダーの関与範囲を明確にするため、本シリーズで使用する分析上の枠組みです。
| 標準五分類 | 美術品輸送への主な関与 | 責任判断の中心 | 主な資料 |
|---|---|---|---|
| Simple Intermediary | 荷主又は所有者を美術品運送業者、梱包業者、保険会社又はサーベイヤーへ取り次ぎます。 | 単純取次を超えて保険期間、梱包又は作品取扱いを判断・保証したか | 紹介記録、見積書、メール |
| Cargo Transportation Service Provider | 梱包、集荷、国内輸送又は国際輸送を含む貨物運送サービスを引き受けます。 | 受託区間、作業業者選定、条件伝達及び運送契約上の義務 | 運送契約、Booking、作業指示 |
| NVOCC / House B/L Issuer | House B/L発行者として国際海上輸送を引き受けます。 | House B/L約款、責任限度、通知期限及び美術品価額の取扱い | House B/L、Master B/L、運送約款 |
| Door-to-Door Single Contractor | 取り外し、梱包、輸送、会場搬入、展示設営、撤収及び返送を一括して引き受けます。 | 一括受託範囲、再委託管理、会場間連携及び証拠保全 | 一括見積書、仕様書、再委託記録 |
| Agent/Coordinator for Specific Operations | 美術品梱包、Condition Report、サーベイ、通関又は会場作業を調整します。 | 委任された確認事項、調整範囲及び最終判断者 | 委任記録、確認依頼、作業報告 |
Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換える分類ではありません。
梱包、保管、検品、吊り込み、展示設営、撤収及び修復等の実作業も、それ自体で第六の分類を構成しません。
具体例1:海外展覧会へ貸し出した絵画
美術館の壁に掛けられていた絵画を海外展覧会へ貸し出すため、専門業者が壁から取り外し、Condition Reportを作成して専用木箱へ梱包したとします。
作品は国内輸送、航空輸送、現地会場での開梱、展示設営、展示、撤収及び返送を経て、元の美術館へ戻されました。
この場合、Wall to Wall条件が、壁からの取り外し、梱包、全輸送区間、展示中及び返送後の再設置までを含むか確認します。
単に航空輸送中だけを対象とする貨物保険では、貸出元での取り外し、展示中又は返送後の再設置前に補償の空白が生じる可能性があります。
最初の取り外し時点と、返却後の再設置完了時点を記録することが、Wall to Wall期間を証明する中心資料になります。
具体例2:返送後の仮置き中に転倒した場合
巡回展を終えた彫刻が貸出元の建物へ返送されましたが、指定台座への再設置前に、搬入口付近の仮置き場所へ置かれていたとします。
その後、作業車両との接触により彫刻が転倒し、表面及び台座接続部が損傷しました。
この場合、建物への到着だけでWall to Wall条件が終了するのか、指定台座への再設置まで継続するのかを正式文言で確認します。
また、仮置き場所が返却作業に通常必要な場所なのか、所有者の都合による長期保管へ移行していたのかも確認します。
Wall to Wallの終了時点は、住所への到着ではなく、契約上指定された再設置又は返却完了の定義により判断します。
具体例3:巡回展の会期が延長された場合
三つの会場を巡回する展覧会について、当初の保険証券では最終会場終了後30日以内に貸出元へ返却する予定だったとします。
しかし、最終会場の会期が45日延長され、中継倉庫での保管期間も追加されました。
この場合、Wall to Wallという名称だけを理由に自動的な無期限継続を期待してはいけません。
保険証券上の終期、最大日数、会場一覧、保管場所、延長通知条件及び追加保険料を確認します。
期間上限が単なる保険期間の終了なのか、個別条件又はWarrantyとして規定されているのかも正式文言に基づいて判断します。
会期又は保管期間の変更が判明した時点で、既存の保険期間が終了する前に延長承認を取得することが重要です。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 中心論点 | 主な確認資料 | 初動対応 |
|---|---|---|---|
| 搬出中に額装ガラスが破損したが、作品本体は無傷だった | 額縁・ガラスと作品本体の損害区分、Wall to Wall期間の開始時点、作業業者責任 | 搬出前写真、破損写真、Condition Report、作業記録、修復見積り | 作品本体への破片・衝撃の影響を確認し、額装部分と作品本体を分けて記録します。 |
| 返送後、開梱前の仮置き中に水濡れが発生した | 建物到着後も保険が継続していたか、仮置きが返却作業の一部か、保管移行か | 到着記録、仮置き場所の写真、開梱予定、再設置予定、Wall to Wall条件 | 水濡れの原因と発生時刻を特定し、再設置完了前かを確認します。 |
| 巡回展の会場が予定外に追加され、保険明細に記載されていなかった | 対象場所、巡回経路、会場追加の承認、保険期間及び追加保険料 | 展覧会日程、Venue List、保険明細、会場追加通知、保険者回答 | 作品移動前に保険者へ通知し、追加会場と輸送区間の承認を取得します。 |
| 展示中に来場者が接触し、作品が損傷した | Wall to Wall条件の展示中担保、展示会保険、施設管理責任及び第三者賠償 | 会場事故報告、CCTV、警備記録、展示位置図、各保険証券 | 現場を保全し、貨物保険・美術品保険・展示会保険の対象範囲を分けて確認します。 |
| 会期延長により保険証券上の最大日数を超過した | 保険期間の終了、延長通知、追加保険料、期間条件の法的性質 | 保険証券、延長通知、貸出契約、会期変更記録、保険者承認 | 上限到達前に延長承認を取得し、期間終了とWarranty違反を混同しないよう確認します。 |
| 修復後も事故歴により市場価値が低下した | 修復費用と格落ち損害の区別、事故前価額、修復後評価、保険条件 | 事故前鑑定書、修復報告書、修復後鑑定、売買実績、専門家意見 | 修復着手前に保険者と調整し、事故前後の価値を独立した専門家に評価させます。 |
| 戦争・ストライキにより搬出又は返送が不能になった | ICC Clause 6・Clause 7、Institute War Clauses、Institute Strikes Clauses、保険期間延長 | 保険証券、特別約款、現地公的情報、運送人通知、保管場所及び延長承認 | 作品の安全な保管を優先し、保険者へ直ちに通知して補償継続と追加条件を確認します。 |
フォワーダー実務での判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 受託時 | 荷主、所有者、美術館、ギャラリー | 作品、価額、素材、貸出先、会場、期間及び返却先 | 通常貨物として扱わず、専門輸送と保険条件を確認します。 |
| 保険手配時 | 保険会社、保険代理店、所有者 | 開始、終了、展示中、巡回展、上限日数、戦争・ストライキ | 正式約款と保険明細を書面で取得します。 |
| 搬出前 | 所有者、施設管理者、梱包業者 | 作品状態、額縁、ガラス、吊り金具及び取り外し方法 | 取り外し前のCondition Reportと写真を確保します。 |
| 梱包時 | 梱包業者、保存修復担当者 | 梱包材、内部固定、温湿度及び衝撃対策 | 梱包仕様と作業写真を保存します。 |
| 輸送時 | 運送業者、航空会社、船会社、倉庫業者 | 車両、経路、積替え、警備、温湿度及び保管 | 追跡、環境記録及び受渡記録を確保します。 |
| 会場搬入時 | 会場管理者、施工業者、キュレーター | 開梱、状態確認、吊り込み、台座及び展示環境 | 開梱時に共同確認を行います。 |
| 展示中 | 会場管理者、警備、施設担当者 | 警備、温湿度、来場者動線及び事故報告 | 異常時の連絡先と応急対応を決めます。 |
| 撤収・返送時 | 会場管理者、梱包業者、運送業者 | 撤収時状態、再梱包、返送経路及び返却予定 | 撤収前後のCondition Reportを作成します。 |
| 返却時 | 所有者、美術館、保管施設 | 到着、開梱、検品、再設置及び受領 | 再設置完了を写真と受領書で記録します。 |
| 事故発生時 | 保険会社、サーベイヤー、修復専門家、鑑定人 | 発生時点、損傷箇所、修復可能性及び価値低下 | 現状変更前に写真、サンプル及び記録を保全します。 |
証拠として重要になる資料
| 資料区分 | 主な資料 | 確認目的 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険関係資料 | 保険証券、保険明細、Wall to Wall条件、ICC、特別約款 | 保険期間、対象場所、展示中担保、免責及び上限日数を確認します。 | 約款名だけでなく正式文言を確認します。 |
| 作品明細 | 作家、作品名、寸法、素材、制作年、保険価額 | 対象作品と保険価額を特定します。 | 写真と作品番号を一致させます。 |
| Condition Report | 事故前、搬出時、到着時、展示前後及び返却時の状態報告 | 損害発生時点と既存状態を確認します。 | 同じ様式、撮影方向及び照明で比較します。 |
| 梱包資料 | 梱包仕様、材料、木箱番号、作業写真 | 梱包状態、内部固定及び作品保護を確認します。 | 開梱前の外装状態も記録します。 |
| 輸送資料 | AWB、B/L、車両記録、受渡書、追跡記録 | 輸送区間、管理主体及び事故地点を確認します。 | 各受渡時刻と署名を確認します。 |
| 環境資料 | 温湿度記録、衝撃・傾斜記録、警報記録 | 環境変化と作品損害の因果関係を確認します。 | 編集前の原データを保存します。 |
| 展示資料 | 会場図、設営写真、警備記録、事故報告 | 展示位置、管理状態及び事故状況を確認します。 | 展示変更又は会場追加を記録します。 |
| 返却資料 | 返送書類、返却時報告、再設置写真、受領書 | Wall to Wall期間の終了時点を確認します。 | 建物到着と再設置完了を分けます。 |
| 損害評価資料 | Survey Report、修復見積り、鑑定書、価値低下意見 | 原因、修復費用、全損及び格落ち損害を確認します。 | 保険者承認前の修復着手を避けます。 |
保険会社・保険代理店へ確認すべき事項
- Wall to Wall又はNail to Nail条件の正式文言
- 当該条件が貨物保険、美術品保険又は展覧会保険のどこに組み込まれているか
- ICC 2009 Clause 8.1が適用されるか、特約が優先するか
- 作品への最初の接触、取り外し又は梱包のどの時点で開始するか
- 展示中、会場内保管中及び撤収中を含むか
- 複数会場、会場間輸送及び中継保管を含むか
- 返却後の開梱、検品及び再設置のどの時点で終了するか
- 保険証券上の終了日、最大日数及び延長手続
- 修復費用、鑑定費用及び格落ち損害の取扱い
- 額縁、ガラス、吊り金具及び展示用部材が保険対象に含まれるか
- 戦争、ストライキ、暴動、テロ及び政治的暴力の取扱い
- 警備、温湿度、梱包、専門業者及びサーベイに関する条件
- 事故通知、修復前承認、正式請求及び期限管理
海事弁護士又は保険法専門家を利用すべき場面
- Wall to Wall条件とICC Clause 8.1の優先関係が争われる場合
- 建物到着、開梱又は再設置のどの時点で保険が終了したか争われる場合
- 展示中担保又は中継保管中の担保が争われる場合
- 保険期間の上限日数又は延長通知の効果が争われる場合
- 期間条件がWarranty、Condition Precedent又は保険期間の定義のいずれか争われる場合
- 戦争、ストライキ、テロ又は政治的暴力の免責が問題になる場合
- 格落ち損害、真正性又は事故前価額が争われる場合
- 運送業者、施工業者、会場又はフォワーダーへ高額求償を行う場合
- 複数国の法律、管轄、貸出契約及び保険契約が関係する場合
- 通知期限、正式請求期限、時効又は出訴期限が迫っている場合
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| Wall to Wall Clauseは世界共通の単一約款である | 名称は広く使われますが、正式文言と補償範囲は保険者や貸出条件により異なります。 | 保険証券、貸出契約及び正式約款を確認します。 |
| Wall to Wallは必ずICC Clause 8.1の修正特約である | 貨物保険特約の場合もあれば、独立した美術品保険又は展覧会保険の場合もあります。 | 保険の種類と適用約款を確認します。 |
| 輸送中だけ保険があれば足りる | 取り外し、梱包、開梱、展示、撤収及び再設置中にも損害が発生します。 | 各作業と展示期間が補償へ含まれるか確認します。 |
| 会場又は返却先の建物へ到着すれば終了する | 所定の壁、台座又は保管場所への再設置まで継続する条件があります。 | 終了時点の正式文言と再設置記録を確認します。 |
| Wall to Wallなら展示中も必ず補償される | 輸送のみを対象とし、展示中を別保険とする契約もあります。 | 展示中担保、対象場所及び期間を確認します。 |
| Wall to Wallなら保険期間は無制限である | 保険証券上の終期、最大日数又は延長条件が設定される場合があります。 | 会期、返送予定及び延長承認を確認します。 |
| Wall to Wallの上限はICC Clause 8.1.4の60日である | Clause 8.1.4の60日と個別Wall to Wall条件の上限日数は別の制度です。 | 適用ICCと個別特約を確認します。 |
| 上限日数を超えれば必ずWarranty違反になる | 期間終了、条件違反又はWarranty違反のいずれかは正式文言により異なります。 | 条件の法的性質、準拠法及び契約変更を確認します。 |
| ICC(A)なら戦争やストライキも補償される | ICC 2009 Clause 6及びClause 7により一般に免責され、別途Institute Clauses等を確認します。 | War、Strikes及びTerrorismの付帯条件を確認します。 |
| 外箱が無傷なら作品本体も無傷である | 振動、温湿度、圧力又は既存脆弱性により内部損傷が生じる場合があります。 | 開梱時検品、Condition Report及び専門家調査を行います。 |
| 修復できれば損害は修復費用だけである | 修復後の市場価値低下又は美術的価値低下が残る場合があります。 | 事故前評価、修復計画及び修復後評価を確認します。 |
| 展示会保険があれば輸送中もすべて補償される | 会場内だけを対象とし、輸送や返送後を含まない場合があります。 | 貨物保険、美術品保険及び展示会保険の役割を分けます。 |
実務上のポイント
- Wall to Wall又はNail to Nailは、美術品貸出・輸送で使用される補償期間の表現です。
- 世界共通の単一約款ではないため、実際に付帯された正式文言を確認します。
- 貨物保険へICC 2009が組み込まれる場合は、Clause 8.1とWall to Wall条件の優先関係を確認します。
- Wall to Wall条件は、ICCとは別の美術品保険又は展覧会保険として手配される場合もあります。
- 保険開始は、作品への最初の接触、取り外し又は梱包開始のどの時点かを確認します。
- 保険終了は、建物到着、開梱、検品又は再設置のどの時点かを確認します。
- 展示中、巡回展、中継保管及び会場間輸送を含むか確認します。
- 個別の上限日数とICC Clause 8.1.4の60日を混同しません。
- 期間条件を当然にWarrantyと判断せず、正式文言と準拠法を確認します。
- ICCが適用される場合、戦争はClause 6、ストライキ等はClause 7との関係を確認します。
- 額縁、ガラス、作品本体、吊り金具及び展示用部材を分けて記録します。
- 修復費用と修復後の格落ち損害を分けて評価します。
- 事故時には、Condition Report、写真、梱包資料、環境記録及び再設置記録を早期に確保します。
まとめ
Wall to Wall Clauseは、絵画、美術品、展示品及び収蔵品について、作品が通常置かれている壁、台座、展示ケース又は保管場所から取り外された時点から、梱包、輸送、保管、展示、撤収、返送及び再設置を経て、所定の場所へ戻るまでの保険期間を整理する補償条件です。
Wall to Wall又はNail to Nailという表現は、美術品保険及び展覧会貸出実務で使用されていますが、すべての保険者が使用する単一かつ統一された市場標準文言ではありません。
したがって、保険開始時点、展示中担保、巡回展、会場間輸送、中継保管、返送後の終了時点及び最大日数は、実際の保険証券、保険明細、貸出契約及び正式約款で確認します。
貨物保険へICC 2009が組み込まれる場合、Clause 8.1は通常の保険開始、通常の輸送過程及び保険終了事由を定めます。
Wall to Wall条件は、作品の取り外しや梱包を起点に加え、展示及び返送後の再設置を終点へ含めることにより、Clause 8.1の標準的な起点・終点より広い範囲を定める場合があります。
しかし、Wall to Wall条件が必ずICC Clause 8.1を修正する特約であるとは限りません。独立した美術品保険、展覧会保険又は貸出契約上の保険条件として設定される場合もあります。
保険期間の上限日数も、ICC Clause 8.1.4の60日と同一ではありません。
保険証券上の終了日、貸出期間、展示期間、個別最大日数及び延長条件を確認し、会期延長、通関遅延、会場追加又は返送遅延が生じる場合は、期間満了前に保険者へ通知する必要があります。
期間上限がWarranty、Condition Precedent、Exclusion又は保険期間そのものの定義のいずれであるかは、正式文言によって判断します。
戦争、ストライキ、暴動及びテロについても、Wall to Wall条件だけで補償されるとは限りません。
ICC(A)、ICC(B)又はICC(C)が適用される場合はClause 6及びClause 7と、別途付帯されるInstitute War Clauses又はInstitute Strikes Clausesとの関係を確認します。
美術品事故では、作品本体、額縁、ガラス、支持体、吊り金具及び展示用部材を分けて確認し、修復費用、応急処置費用、鑑定費用及び修復後の格落ち損害を整理します。
事故発生後は、搬出前から返却後までのCondition Report、写真、梱包資料、輸送記録、温湿度・衝撃データ、展示管理記録、修復見積り及び再設置記録を早期に確保することが重要です。
最終的な保険適用及び賠償責任は、実際の保険証券、正式約款、貸出契約、事故発生時点、作品の状態、受託範囲及び証拠資料に基づいて個別に判断されます。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://marineinsurance.jp/
