英国海上保険法1906 Section 55―担保損害・免責損害
英国海上保険法における担保損害・免責損害とは
英国海上保険法における担保損害・免責損害とは、海上保険契約において、保険者がどの損害について責任を負い、どの損害について責任を負わないかを、損害の近因と保険証券の担保・免責条件に基づいて区別する考え方です。
MIA1906第55条第1項では、保険証券に別段の定めがない限り、保険者は担保危険によって近因的に生じた損害について責任を負い、担保危険によって近因的に生じていない損害については責任を負わないとされています。
同条第2項では、被保険者の故意の不正行為、遅延、通常損耗、通常漏損、通常破損、貨物固有の瑕疵又は性質、ねずみ・害虫による損害及び海上危険に近因しない機械損傷などについて、保険者が原則として責任を負わないことを定めています。
ただし、貨物に損害が存在するだけで担保損害又は免責損害が決まるわけではありません。外部からの偶然な事故、貨物自体の性質、梱包状態、遅延、温度変化、船長・乗組員の過失など、複数の原因が競合することがあります。
貨物保険の実務では、損害結果だけを見るのではなく、損害を実質的かつ効果的に発生させた原因を確認し、その原因が適用される保険約款で担保されているか、免責事項に該当するかを順に判断する必要があります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| 近因 | MIA1906第55条第1項に基づく、担保危険と損害を結び付ける因果関係 | 個別事故の訴訟上の因果関係や判例分析は、弁護士等への確認が必要です。 |
| 複数原因の競合 | 担保危険、免責危険、貨物の性質、過失等が同時に関与する場合の基本的な判断 | 個別の保険証券における因果関係条項の解釈は契約ごとに確認します。 |
| 被保険者の故意の不正行為 | 被保険者自身のWilful Misconductに起因する損害の免責 | 保険金詐欺、告知義務違反その他の不正請求は別記事で扱います。 |
| 船長・乗組員の過失 | 被保険者自身の故意と、船長・乗組員の過失又は不正行為との区別 | 運送人責任、B/L約款及びヘーグ・ヴィスビー・ルールの詳細は別記事で扱います。 |
| 遅延損害 | 遅延そのものに近因する経済損害及び物的損害との切り分け | 納期保証、事業中断及び違約金に関する保険は別の保険契約を確認します。 |
| 通常損耗等 | 通常損耗、通常漏損、通常破損と偶然な事故による損害との区別 | 貨物ごとの許容減量や商慣習上の許容範囲は個別に確認します。 |
| 固有の瑕疵 | 貨物自体の自然な性質による劣化と、外部の偶然な事故による損害との区別 | 冷凍・冷蔵貨物、化学品及び農産物の個別リスクは専門記事で扱います。 |
| ねずみ・害虫・機械損傷 | MIA1906第55条第2項における基本的な免責構造 | 害虫特約、機械危険特約及び電気的・機械的事故特約は個別契約を確認します。 |
| ICCとの関係 | MIA1906第55条とICC(A)(B)(C)2009の担保危険・免責事項との接続 | ICC各約款の全条文比較は協会貨物約款の専門記事で扱います。 |
制度の目的と背景
貨物が損傷したという事実だけでは、保険者の責任は確定しません。損害が、保険証券で担保された危険によって生じたのか、担保外の原因や免責事項によって生じたのかを判断する必要があります。
一つの損害には、複数の原因が関与することがあります。例えば、貨物の積付け不良、荒天、コンテナの不具合、長期遅延、貨物固有の発熱性などが連続又は同時に作用する場合があります。
MIA1906第55条は、原因のうち時間的に最後のものだけを見るのではなく、損害を実質的に発生させた近因を特定し、担保危険と免責危険を区別するための基本規定です。
同条は、被保険者自身の故意の不正行為と、船長・乗組員の過失を区別し、遅延、通常損耗、固有の瑕疵等についても独立した取扱いを定めています。
現代の貨物保険では、最終的な担保範囲はICC(A)(B)(C)、戦争危険約款、ストライキ危険約款、温度変化特約、機械危険特約その他の特別約款によって決まりますが、第55条は原因分析の基本構造として重要です。
MIA1906第55条の用語階層
| 区分 | 基本的な意味 | 保険者の基本的責任 | 判断の中心 | 主な証拠資料 |
|---|---|---|---|---|
| 担保危険による近因損害 | 担保危険が損害の実質的・効果的な原因である損害 | 保険証券に別段の定めがなければ責任を負う | 損害を支配的に発生させた原因 | 事故報告、写真、Survey Report、航海記録 |
| 担保危険に近因しない損害 | 担保危険と損害との間に必要な因果関係がない損害 | 原則として責任を負わない | 別の原因が損害を実質的に発生させたか | 事故時系列、検査報告、専門家意見 |
| 被保険者の故意の不正行為 | 被保険者が意図的又は不正に損害を発生させる行為 | 責任を負わない | 被保険者の認識、意思及び行為 | 社内記録、指示書、通信記録、調査資料 |
| 船長・乗組員の過失等 | 船長又は乗組員の過失・不正行為が事故へ関与する場合 | 担保危険が近因であれば責任を負うことがある | 被保険者自身の故意との区別 | 航海日誌、事故報告、運送人調査資料 |
| 遅延損害 | 遅延自体に近因する損害 | 原則として責任を負わない | 遅延か、別の物的事故か | 運航記録、温度記録、納期資料、保管記録 |
| 通常損耗等 | 通常の輸送過程で自然に生じる損耗、漏損又は破損 | 原則として責任を負わない | 通常範囲か、偶然な外部事故か | 出荷時記録、到着時検品、業界基準 |
| 固有の瑕疵又は性質 | 外部事故がなくても貨物の自然な性質により生じる劣化等 | 原則として責任を負わない | 外部の偶然な事故が介在したか | 温度記録、成分分析、梱包仕様、専門家鑑定 |
| ねずみ・害虫による損害 | ねずみ又は害虫を近因として生じる損害 | 保険証券に別段の定めがなければ責任を負わない | 侵入経路、保管環境及び事故性 | 害虫調査、倉庫記録、燻蒸記録 |
| 海上危険に近因しない機械損傷 | 内部故障等による機械損傷で、海上危険が近因ではないもの | 保険証券に別段の定めがなければ責任を負わない | 外部衝撃か内部要因か | 修理報告、故障解析、衝撃記録、使用履歴 |
制度が問題になる主な場面
| 発生場面 | 主な論点 | 確認するポイント | 最初に行う対応 |
|---|---|---|---|
| 荒天後に貨物が荷崩れした | 荒天と積付け不良の競合 | 海象、固縛状態、積付け主体及び通常予想される動揺 | 写真、気象記録及び積付け記録を確保する |
| 冷蔵貨物が長期遅延後に腐敗した | 遅延、温度異常及び固有の性質 | 温度逸脱、冷凍機故障、遅延期間及び貨物の保存可能期間 | 温度記録、警報履歴及び修理記録を取得する |
| 遅延中の倉庫で火災が発生した | 遅延中に生じた別の物的損害 | 損害の近因が遅延か火災か | 火災原因と遅延による経済損害を分ける |
| 液体貨物が輸送中に減量した | 通常漏損又は偶然な漏出 | 通常許容範囲、容器破損及びシール異常 | 出荷重量、到着重量及び容器状態を比較する |
| 農産物が発熱・変色した | 固有の瑕疵又は外部の温度・水分事故 | 出荷時水分、換気、外気侵入及び温度推移 | 成分検査、温度記録及び積付け資料を保存する |
| 機械が到着後に作動しない | 内部故障又は輸送中の外部衝撃 | 衝撃痕、ショックセンサー、故障部位及び出荷前試験 | 分解前に専門家調査を手配する |
| 船員の荷役ミスで貨物が落下した | 船員・運送人側の過失と担保危険 | 落下事故が担保危険か、被保険者自身の故意がないか | 運送人への留保通知と保険事故通知を行う |
| 保管中に害虫被害が発見された | 害虫免責、保管状態及び侵入時期 | 積込前か輸送中か、外部事故との関係 | 検疫・害虫調査及び倉庫記録を取得する |
近因の判断基準
近因とは、損害発生の直前に存在した原因又は時間的に最も近い原因を意味するものではありません。
近因の判断では、損害を実質的、効果的又は支配的に発生させた原因が何であるかを、事故全体の流れと保険証券の内容に照らして判断します。
単純な「その原因がなければ損害が発生しなかったか」という条件関係だけでは足りません。複数の出来事の中で、損害を現実に発生させた有力な原因を確認します。
| 判断軸 | 確認内容 | 担保危険を近因としやすい事情 | 免責危険を近因としやすい事情 |
|---|---|---|---|
| 事故の有効性 | どの原因が損害を現実化させたか | 外部の偶然な事故によって損害が発生した | 貨物内部の自然な変化だけで損害が進行した |
| 原因の継続性 | 最初の原因が途切れず損害へ作用したか | 担保事故から損害まで自然な因果の連鎖がある | 独立した免責原因が因果の連鎖を支配した |
| 外部事故の介在 | 偶然な外部事故が介在したか | 衝突、落下、海水侵入、火災等が介在した | 外部事故がなく自然劣化だけが進行した |
| 通常性 | 通常の輸送過程で自然に発生する現象か | 通常の輸送範囲を超える事故又は異常がある | 通常の減耗、蒸発、擦れ又は自然変質である |
| 保険証券の文言 | 原因が担保又は明示免責されているか | 原因が担保危険に該当し免責事項がない | 原因が明示された免責事項に該当する |
| 商業的常識 | 契約が対象とする危険として合理的に評価できるか | 保険で引き受ける偶然な輸送事故である | 貨物所有者が通常管理すべき品質・保存リスクである |
複数の原因が競合する場合
一つの損害に、担保危険と免責危険の両方が関与することがあります。
例えば、積付け不良の貨物が荒天によって荷崩れした場合、荒天、固縛不良、梱包不備及び貨物の形状がそれぞれ損害へ影響する可能性があります。
この場合、すべての原因から一つだけを機械的に選ぶのではなく、複数の原因が近因として作用している可能性も検討します。
担保危険と明示された免責危険がともに近因となる場合、一般に免責条項が保険金支払いを妨げる可能性があります。ただし、最終的な判断は免責条項の文言、因果関係の強さ及び適用される法律によって異なります。
| 原因の組合せ | 主な判断 | 保険上の可能性 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 荒天+船員の積付け過失 | 荒天による海上危険が損害の近因か | 被保険者自身の故意がなく、担保危険が近因であれば支払対象となることがある | 海象、固縛記録、航海日誌 |
| 外部衝撃+貨物の弱い構造 | 偶然な外部事故か固有の瑕疵か | 外部事故が実質的原因であれば担保される可能性がある | 衝撃記録、設計資料、専門家鑑定 |
| 遅延+冷凍機停止 | 遅延自体か機器故障による温度逸脱か | 原因と適用特約により異なる | 温度ログ、警報履歴、修理報告 |
| 梱包不備+通常の輸送動揺 | 通常の輸送に耐えない梱包が近因か | ICCの梱包不備免責が適用される可能性がある | 梱包仕様、荷姿写真、梱包実施者 |
| 貨物の発熱性+換気装置故障 | 自然発熱か外部設備事故か | 外部事故の有無と特約により異なる | 温度・換気記録、成分分析 |
| 害虫の存在+コンテナ破損 | 害虫自体か外部事故による侵入か | 保険証券の害虫免責及び事故原因による | 侵入口、コンテナ検査、害虫鑑定 |
担保損害の基本要件
| 確認項目 | 判断内容 | 要件を満たす場合 | 要件を満たさない場合 |
|---|---|---|---|
| 保険期間 | 損害が保険期間又は保険輸送中に発生したか | 次の担保判断へ進む | 保険期間外として不担保となる可能性がある |
| 保険対象 | 損害を受けた財産が保険対象に含まれるか | 損害原因を確認する | 保険対象外として処理する |
| 損害の発生 | 物的損害又は約款上の回収可能な損害があるか | 損害額を算定する | 経済的不利益だけで物的損害がない可能性がある |
| 担保危険 | 損害原因が適用約款の担保危険に該当するか | 近因及び免責を確認する | 列挙危険外又は担保外となる可能性がある |
| 近因 | 担保危険が損害の実質的・効果的な原因か | 免責事項がなければ支払可能性がある | 保険者は原則として責任を負わない |
| 免責事項 | 故意、遅延、通常損耗、固有の瑕疵等に該当するか | 免責条項に従い不担保となる可能性がある | 損害額及び支払条件を確認する |
| 証拠資料 | 事故原因と損害の因果関係を裏付けられるか | 保険金請求を具体化できる | 追加調査や専門家鑑定が必要となる |
被保険者の故意の不正行為
MIA1906第55条第2項では、被保険者の故意の不正行為に起因する損害について、保険者は責任を負わないとされています。
ここで問題となるのは、単なる過失や判断ミスではなく、被保険者が損害の発生を意図した場合、不正な目的で損害を発生させた場合又は損害発生を認識しながら故意に行為した場合です。
貨物事故を装った場合、故意に貨物を破損した場合、損害を意図して不適切な指示を出した場合などは、Wilful Misconduct of the Assuredとして免責となる可能性があります。
一方、通常の業務上の過失、不注意又は判断ミスが直ちに被保険者の故意の不正行為になるわけではありません。行為者、認識、意思、指示系統及び損害発生の予見を確認する必要があります。
船長・乗組員の過失との違い
MIA1906第55条第2項は、被保険者自身の故意の不正行為と、船長又は乗組員の不正行為・過失を区別しています。
保険証券に別段の定めがない限り、船長又は乗組員の過失がなければ事故が発生しなかった場合でも、損害の近因が担保危険であれば、保険者が責任を負うことがあります。
例えば、船員の荷役ミスによって貨物が落下した場合、被保険者自身の故意がなく、落下又は荷役事故が約款上の担保危険に該当する場合には、貨物保険での支払いが検討されます。
ただし、貨物保険から支払いを受けられることと、船会社又は運送人が最終的に責任を負うことは別の問題です。
運送人への求償では、B/L約款、準拠法、ヘーグ・ヴィスビー・ルール等の適用、運送人の免責事由、責任限度額、通知期限及び出訴期間を別途確認します。
貨物保険と運送人求償の関係
| 確認項目 | 貨物保険 | 運送人への求償 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 判断の根拠 | 保険証券及び適用される保険約款 | B/L、運送契約、準拠法及び国際条約 | 二つの契約関係を分けて確認する |
| 中心となる原因 | 担保危険と損害の近因 | 運送人の義務違反と免責事由 | 事故原因資料を共通証拠として保存する |
| 船員の過失 | 担保危険が近因であれば支払対象となることがある | 運送人が条約又はB/L上の抗弁を主張することがある | 保険金支払可否と運送人責任を同一視しない |
| 責任限度額 | 保険金額、保険価額及び免責金額による | パッケージ又は重量による責任制限が問題になることがある | B/L上の荷姿及び個数記載を確認する |
| 期限 | 保険証券上の事故通知及び請求期限 | 条約又はB/L上の通知・出訴期間 | それぞれの期限を別に管理する |
| 保険金支払後 | 保険者が被保険者へ保険金を支払う | 支払範囲で保険者が代位求償を行うことがある | 被保険者は求償権を害さないよう証拠と権利を保全する |
遅延による損害
MIA1906第55条第2項では、保険証券に別段の定めがない限り、船舶又は貨物について、遅延に近因する損害について保険者は責任を負わないとされています。
遅延が火災、座礁、衝突その他の担保危険によって生じた場合でも、損害の近因が遅延そのものである場合には免責となる可能性があります。
納期遅れによる販売機会の喪失、違約金、市況下落、操業停止、代替品の緊急購入費用等は、通常の貨物の物的損害とは区別して検討します。
一方、遅延期間中に火災、盗難、海水濡れ、落下等の独立した担保事故が発生し、その事故によって貨物に物的損害が生じた場合には、単に遅延中であったという理由だけで直ちに免責となるものではありません。
遅延損害と物的損害の境界
| 事例 | 考えられる近因 | 主な判断 | 必要資料 |
|---|---|---|---|
| 到着遅れにより販売契約が解除された | 遅延 | 物的損害ではなく遅延による経済損害か | 販売契約、納期、解除通知 |
| 遅延中に市場価格が下落した | 遅延又は市場変動 | 貨物自体に物的損害があるか | 市況資料、到着記録 |
| 遅延中の倉庫で火災により焼損した | 火災 | 火災が独立した物的損害の近因か | 消防報告、倉庫記録、写真 |
| 遅延により常温保管期間が延び、食品が自然腐敗した | 遅延又は固有の性質 | 外部の偶然な事故が介在したか | 保存期限、温度記録、品質鑑定 |
| 遅延中に冷凍機が突然故障し温度が上昇した | 機器故障、温度逸脱又は遅延 | 故障が独立した偶然な事故か、特約で担保されるか | 警報履歴、修理報告、温度ログ |
| 遅延に伴う保管場所変更後に雨水が侵入した | 雨水侵入又は遅延 | 雨水侵入が独立した事故として損害を発生させたか | 保管場所、天候、屋根・容器状態 |
遅延が存在したという事実だけでは、遅延免責の適用は確定しません。何が貨物の物的損害を実質的に発生させたのかを確認します。
通常損耗・通常漏損・通常破損
MIA1906第55条第2項では、通常の損耗、通常の漏損及び通常の破損について、保険者は原則として責任を負わないとされています。
これらは、偶然な輸送事故ではなく、貨物の取扱い、振動、蒸発、乾燥、摩擦又は通常の輸送過程によって自然に発生する範囲の損失をいいます。
液体貨物の軽微な蒸発、農産物の自然減量、袋物の通常の粉漏れ、外装の通常の擦れ等が問題になることがあります。
通常範囲を超える漏出や破損が、容器の落下、衝突、穴開き、圧壊等の偶然な事故によって生じた場合には、通常漏損・通常破損ではなく、担保事故による物的損害として検討される可能性があります。
| 判断項目 | 通常損耗等と判断しやすい事情 | 偶然な事故と判断しやすい事情 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 損失量 | 業界上通常予想される範囲内 | 通常範囲を大きく超えている | 出荷重量、到着重量、業界基準 |
| 容器状態 | 破損や異常がない | 穴、亀裂、圧壊又はシール破断がある | 写真、コンテナ検査、シール記録 |
| 損害分布 | 全体に均等な軽微損耗 | 特定箇所へ集中した異常損害 | 検品表、配置図 |
| 外部事故 | 特段の事故が確認されない | 落下、衝突、浸水等が記録されている | 事故報告、荷役記録 |
| 輸送期間 | 通常期間に比例する自然減耗 | 短期間で異常な損失が発生 | 輸送日程、測定記録 |
| 貨物特性 | 蒸発・乾燥・摩耗しやすい貨物 | 通常は損失しない貨物に異常がある | 製品仕様、過去輸送実績 |
貨物固有の瑕疵又は性質
MIA1906第55条第2項では、保険対象物の固有の瑕疵又は性質による損害について、保険者は原則として責任を負わないとされています。
固有の瑕疵とは、外部からの偶然な事故が介在しなくても、貨物自体の自然な性質又は挙動によって劣化、変質、腐敗、発熱、発酵、変色、蒸発、重量減少等が発生する危険をいいます。
貨物が外部事故に対して弱いというだけで、直ちにすべての損害が固有の瑕疵となるわけではありません。偶然な外部事故が損害を実質的に発生させた場合には、その外部事故が近因となる可能性があります。
したがって、貨物自体の弱点があったかだけではなく、通常の航海中の自然な挙動だけで損害が生じたのか、外部の偶然な事故が介在したのかを確認します。
固有の瑕疵と外部事故を切り分ける資料
| 資料 | 確認できる内容 | 固有の瑕疵を示しやすい事情 | 外部事故を示しやすい事情 |
|---|---|---|---|
| 出荷前検査記録 | 出荷時の品質、水分、機能及び外観 | 出荷時点ですでに異常又は不安定性があった | 出荷時は正常で輸送後に急変した |
| 温度・湿度記録 | 輸送中の保存環境 | 正常環境でも自然劣化が進行した | 明確な温度逸脱又は湿度異常がある |
| 梱包仕様書 | 貨物特性に適した梱包であったか | 貨物特性に対する保護が不足していた | 梱包を破壊する外部衝撃があった |
| 機器・冷凍機記録 | 設備故障、警報及び停止時間 | 設備は正常で貨物内部だけが変化した | 突然の故障や電源停止が記録されている |
| 専門家鑑定書 | 損害機序及び原因の専門的評価 | 自然発熱、自己反応又は材質劣化が主因 | 衝撃、浸水又は温度事故が主因 |
| 同一ロット比較 | 輸送条件と損害差 | 異なる場所でも同様の劣化が発生 | 事故箇所の貨物だけに損害が集中 |
| 過去輸送実績 | 通常条件下での保存性 | 同条件で繰り返し同様の自然劣化が発生 | 今回だけ異常な外部事故が存在 |
ねずみ・害虫による損害
MIA1906第55条第2項では、保険証券に別段の定めがない限り、ねずみ又は害虫によって近因的に生じた損害について、保険者は責任を負わないとされています。
貨物保険実務では、食害、虫害、害虫混入、巣作り、包装のかじり、糞尿汚染等が問題になることがあります。
害虫が積込前から貨物内に存在していたのか、倉庫内で侵入したのか、コンテナ破損等の外部事故により侵入したのかを確認します。
ICC(A)等の具体的な保険証券では、MIA1906のデフォルト規定だけでなく、約款全体、特別約款及び事故原因に基づいて判断する必要があります。
機械損傷
MIA1906第55条第2項では、海上危険に近因しない機械損傷について、保険者は原則として責任を負わないとされています。
機械の内部摩耗、材質疲労、設計不良、電気的故障、潤滑不良又は長期保管による固着等は、外部からの海上危険に近因しない内部要因として問題になることがあります。
一方、コンテナ落下、衝突、転倒、海水浸入又は異常な外部衝撃によって機械内部が損傷した場合には、外部事故が近因となる可能性があります。
| 確認項目 | 内部故障を示しやすい事情 | 外部事故を示しやすい事情 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 外観 | 外部損傷や衝撃痕がない | へこみ、亀裂、転倒痕又は浸水痕がある | 到着時写真、梱包写真 |
| 故障部位 | 摩耗部品又は内部電子部品だけが故障 | 衝撃方向と一致する破断がある | 分解報告、修理業者意見 |
| 出荷前状態 | 作動確認がない又は以前から不具合がある | 出荷前試験では正常に作動していた | 出荷前試験、整備記録 |
| 輸送記録 | 異常な輸送事故がない | 落下、衝撃又は浸水記録がある | ショックセンサー、荷役記録 |
| 専門家評価 | 経年劣化、材質疲労又は内部故障 | 外力による破損又は短絡 | 故障原因鑑定書 |
| 保険条件 | 機械的・電気的故障が明示免責 | 外部事故又は機械危険特約が適用 | 保険証券、特別約款 |
ICC(A)(B)(C)との関係
現代の外航貨物海上保険では、実際の担保範囲は、MIA1906第55条だけではなく、保険証券に組み込まれたICC(A)(B)(C)及び特別約款によって判断します。
ICC(A)2009は、明示された免責事項を除き、保険対象の滅失又は損傷に関する広い危険を担保する構造です。
ICC(B)及びICC(C)2009は、約款第1条に列挙された危険によって生じた損害を担保する構造です。
ICC(A)(B)(C)の第4条には、被保険者の故意の不正行為、通常漏損、通常減量、通常損耗、梱包不備、固有の瑕疵及び遅延等の免責事項があります。
| MIA1906第55条の論点 | ICC(A)(B)(C)2009との主な接続 | 実務上の判断 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 担保危険による近因損害 | ICC(A)は広い危険、ICC(B)(C)は列挙危険 | 原因が担保構造に該当するか確認する | ICC(A)でも免責条項の確認が必要です。 |
| 被保険者の故意の不正行為 | 第4.1条で免責 | 被保険者の認識と意図を確認する | 通常の過失と故意の不正行為を区別します。 |
| 通常漏損・通常減量・通常損耗 | 第4.2条で免責 | 通常範囲か偶然な事故か確認する | 貨物ごとの許容範囲を確認します。 |
| 梱包不備 | 第4.3条で一定の場合に免責 | 梱包実施者、時期及び通常輸送への適合性を確認する | 独立請負人による梱包等は文言を個別に確認します。 |
| 固有の瑕疵又は性質 | 第4.4条で免責 | 自然な挙動か外部事故か確認する | 貨物が弱いだけで直ちに固有の瑕疵とは限りません。 |
| 遅延 | 第4.5条で、担保危険による遅延でも原則免責 | 損害の近因が遅延か別の物的事故か確認する | 共同海損等の約款上の例外を確認します。 |
| ねずみ・害虫 | ICC第4条に独立した同一文言がない場合がある | 約款全体、原因及び特約を確認する | MIA1906のデフォルト規定だけで断定しません。 |
| 機械損傷 | 外部事故、偶然性、明示免責及び特約を確認 | 内部故障か外部の担保事故かを分析する | 機械危険・電気的事故特約も確認します。 |
| 損害軽減・権利保全 | 第16条で合理的措置と第三者への権利保全を要求 | 損害拡大防止と運送人への通知を行う | 合理的に支出した費用は別途償還される場合があります。 |
ICC(A)はすべての損害を担保するわけではない
ICC(A)は一般に広い担保範囲を持つ約款ですが、貨物に生じたすべての損害を無条件に担保するものではありません。
被保険者の故意の不正行為、通常損耗、通常漏損、梱包不備、固有の瑕疵、遅延、船舶の不堪航又はコンテナの不適合に関する一定の免責、戦争危険及びストライキ危険等が別途定められています。
そのため、ICC(A)が適用されている場合でも、損害の偶然性、近因、免責事項及び特別約款を確認します。
ICC(B)(C)では、免責事項の確認に加えて、損害原因が約款第1条の列挙危険に該当するかを確認する必要があります。
制度適用の実務フロー
- 貨物の損害を発見する
損傷、濡損、腐敗、変色、不足、機械故障その他の異常を確認します。 - 損害拡大を防止する
乾燥、仕分け、再梱包、移動、冷却その他の合理的な措置を行います。 - 保険会社又は保険代理店へ通知する
事故概要、貨物情報、損害状況及び緊急措置を伝えます。 - 適用保険条件を確認する
ICC(A)(B)(C)、特別約款、免責金額、温度変化特約等を確認します。 - 事故時系列を作成する
出荷、積込、輸送、遅延、保管、事故発見までを時系列で整理します。 - 原因候補を列挙する
外部事故、過失、遅延、梱包、貨物の性質、通常損耗等を分けます。 - 近因を検討する
損害を実質的・効果的に発生させた原因を確認します。 - 担保危険を確認する
近因がICC又は特別約款の担保危険に該当するかを確認します。 - 免責事項を確認する
故意、遅延、通常損耗、梱包不備、固有の瑕疵等を確認します。 - 専門資料を収集する
温度記録、梱包仕様、故障解析、気象記録、専門家鑑定等を取得します。 - 第三者への権利を保全する
運送人、倉庫業者その他の関係者へ事故通知及び求償権留保を行います。 - 保険金請求を作成する
近因、担保危険、免責に該当しない理由及び損害額を資料とともに整理します。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な論点 | 確認資料 | 判断の分かれ目 | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 荒天後に積付け貨物が転倒 | 海上危険と積付け不良 | 気象記録、固縛記録、写真 | 荒天が外部の偶然な事故として近因か | 海象及び積付け状況を保存する |
| 船員の荷役ミスで貨物が落下 | 船員の過失と被保険者の故意の区別 | 荷役報告、映像、事故証明 | 落下が担保危険に該当するか | 保険通知と運送人への留保を行う |
| 長期遅延後に食品が腐敗 | 遅延免責と固有の性質 | 温度記録、保存期限、輸送日程 | 外部の温度事故が存在したか | 温度逸脱と遅延期間を切り分ける |
| 遅延中の倉庫火災で貨物焼損 | 遅延中の独立した物的事故 | 消防報告、倉庫記録 | 火災が物的損害の近因か | 経済損害と焼損を分ける |
| 農産物が自然発熱 | 固有の瑕疵 | 水分値、換気記録、成分分析 | 外部事故なしに自然挙動で発熱したか | 専門家鑑定を取得する |
| コンテナ浸水後に農産物が発熱 | 外部浸水と固有の性質の競合 | 浸水痕、含水率、コンテナ検査 | 浸水が発熱を実質的に引き起こしたか | 浸水前後の状態を確定する |
| 液体貨物に重量不足 | 通常減量又は漏出事故 | 重量記録、タンク・容器検査 | 通常範囲を超える漏出があるか | 数量差と容器損傷を確認する |
| 機械が到着後に内部故障 | 機械内部要因又は外部衝撃 | 出荷前試験、ショック記録、修理報告 | 輸送中の外部事故が近因か | 分解前に原因調査を行う |
| 害虫被害が到着後に判明 | 害虫免責と侵入時期 | 検疫報告、燻蒸記録、倉庫記録 | 積込前から存在したか輸送中に侵入したか | 害虫の種類と侵入経路を調査する |
制度適用シナリオ1:荒天と積付け不良が競合した場合
貨物が船内で十分に固縛されておらず、航海中の荒天によって転倒・破損したとします。
損害原因として、積付け又は固縛の不良と、船舶の動揺を生じさせた荒天の両方が考えられます。
荒天による船舶の異常な動揺が、貨物転倒を実質的に発生させた外部の偶然な事故である場合、海上危険が近因となる可能性があります。
一方、通常予想される船舶動揺だけで転倒するほど梱包又は固縛が不適切であり、ICCの梱包不備免責が適用される場合には、保険金支払いが否定される可能性があります。
したがって、海象の程度、固縛方法、梱包実施者、積付け主体及び通常の輸送に耐えられる状態であったかを総合して判断します。
制度適用シナリオ2:遅延中に冷凍機が停止した場合
冷凍食品の輸送が港湾混雑によって遅延し、その期間中に冷凍機が停止して貨物温度が上昇したとします。
遅延が存在するため、直ちにすべての損害を遅延免責と判断することはできません。
冷凍機の突然の故障又は外部電源事故が独立した偶然な事故として温度逸脱を発生させ、その危険が保険証券又は温度変化特約で担保されている場合には、物的損害として検討される可能性があります。
一方、冷凍設備に異常がなく、単に輸送期間が延びたことによって保存可能期間を超え、自然に品質が低下した場合には、遅延又は貨物固有の性質が近因となる可能性があります。
温度記録、警報履歴、冷凍機の修理報告、遅延期間及び商品の保存可能期間を確認して判断します。
制度適用シナリオ3:農産物の発熱と海水侵入
農産物が輸送中に発熱し、変色及び品質低下が発生したとします。同じコンテナには海水侵入の痕跡も確認されました。
農産物は水分や貨物自体の呼吸作用によって自然発熱する可能性があるため、固有の瑕疵又は性質が問題になります。
しかし、コンテナの破損によって海水が侵入し、貨物の含水率を上昇させた結果、発熱と変質が急速に進行した場合には、海水侵入という外部事故が近因となる可能性があります。
出荷時水分値、到着時含水率、コンテナ破損箇所、損害分布、温度記録及び専門家鑑定を確認します。
外部事故がなく貨物の自然な挙動だけで発熱したと認められる場合には、固有の瑕疵による免責損害となる可能性があります。
制度適用シナリオ4:船員の荷役ミスによる落下
港湾での荷役中に、船員又は運送人側の作業ミスによって貨物が落下し、機械が破損したとします。
作業ミスがなければ損害が発生しなかったとしても、被保険者自身が故意に損害を発生させたものではありません。
落下という偶然な外部事故が約款上の担保危険に該当し、他の免責事項が適用されない場合には、貨物保険での支払いが検討されます。
ただし、貨物保険の支払いと運送人の責任は別に判断します。運送人への求償については、B/L約款、適用法、責任限度額、免責事由及び出訴期間を確認します。
制度適用シナリオ5:機械の内部故障と輸送衝撃
精密機械が到着後に作動せず、内部部品が破損していたとします。外装には軽微なへこみがあり、ショックセンサーにも大きな衝撃が記録されています。
内部部品の材質疲労又は経年劣化だけが原因であれば、海上危険に近因しない機械損傷又は固有の瑕疵として免責となる可能性があります。
一方、出荷前試験では正常に作動し、輸送中の外部衝撃と一致する方向へ内部部品が破断している場合には、外部衝撃が近因となる可能性があります。
出荷前試験、ショックセンサー、荷役記録、外装損傷及び専門家による故障解析を確認し、内部要因と外部事故を切り分けます。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 貨物が壊れていれば保険金が支払われる | 担保危険が損害の近因であり、免責事項に該当しないことが必要です。 | 損害結果だけでなく原因を確認します。 |
| 近因は損害直前の最後の原因である | 近因は損害を実質的・効果的に発生させた原因です。 | 事故全体の因果関係を確認します。 |
| 複数原因がある場合は一つだけを選ぶ | 複数の原因が近因として作用する場合があります。 | 担保危険と明示免責の競合を確認します。 |
| 船員の過失があれば貨物保険は支払われない | 被保険者自身の故意と船員の過失は区別されます。 | 担保危険が近因かを確認します。 |
| 貨物保険が支払われれば運送人にも全額請求できる | 運送人責任はB/L、条約、免責事由及び責任限度額により別に判断します。 | 保険請求と運送人求償を分けます。 |
| 遅延中の損害はすべて遅延免責である | 遅延中に独立した担保事故が発生した場合は、物的損害として検討されることがあります。 | 損害の近因を確認します。 |
| 遅延が担保事故によって生じれば遅延損害も担保される | 遅延自体に近因する損害は、担保事故による遅延でも免責となることがあります。 | 物的損害と経済損害を分けます。 |
| 貨物が壊れやすければすべて固有の瑕疵である | 偶然な外部事故が損害の近因であれば、固有の瑕疵とは限りません。 | 外部事故の介在を確認します。 |
| 通常損耗と偶然な破損は同じである | 通常損耗は自然に発生する範囲であり、落下等による異常損害とは区別されます。 | 通常範囲及び外部事故を確認します。 |
| 機械内部の故障はICC(A)なら必ず担保される | 偶然性、近因、明示免責及び特別約款を確認する必要があります。 | 外部衝撃と内部故障を切り分けます。 |
| ICC(A)はすべての損害を補償する | ICC(A)にも故意、通常損耗、梱包不備、固有の瑕疵、遅延等の免責があります。 | 第4条その他の免責を確認します。 |
| 保険会社が事故原因をすべて調査してくれる | 被保険者側も損害と原因を裏付ける資料を確保する必要があります。 | 写真、記録及び専門家鑑定を早期に取得します。 |
実務判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 損害を発見したとき | 倉庫、荷受人、運送人 | 損害状態、数量、発見日時及び保管状況 | 写真、検品記録及び留保通知を確保する |
| 事故原因を確認するとき | Surveyor、運送人、作業担当者 | 事故区間、原因候補及び事故時系列 | 原因別に証拠資料を整理する |
| 近因を検討するとき | 保険会社、Surveyor、必要に応じて弁護士 | 実質的・効果的に損害を発生させた原因 | 複数原因がある場合は競合関係を整理する |
| 保険条件を確認するとき | 保険会社又は保険代理店 | ICC、特別約款、免責金額及び担保危険 | 証券一式を取得し適用順位を確認する |
| 遅延が存在するとき | 運送人、保険会社、貨物管理担当者 | 遅延期間、物的事故、保存可能期間及び経済損害 | 遅延損害と物的損害を分ける |
| 冷凍・冷蔵貨物が損傷したとき | 冷凍機業者、Surveyor、保険会社 | 温度逸脱、警報、故障及び貨物特性 | 温度ログと修理報告を取得する |
| 固有の瑕疵が疑われるとき | 専門鑑定人、製造者、保険会社 | 出荷時品質、自然挙動及び外部事故 | 成分分析及び専門家意見を取得する |
| 通常損耗が疑われるとき | Surveyor、業界専門家、荷主 | 通常許容範囲、過去実績及び異常事故 | 通常範囲を超える理由を立証する |
| 機械が作動しないとき | 修理業者、製造者、Surveyor | 出荷前状態、外部衝撃、内部故障及び故障部位 | 分解前に原因鑑定を実施する |
| 船員・運送人の過失が疑われるとき | 運送人、保険会社、必要に応じて弁護士 | B/L、事故報告、責任制限及び出訴期間 | 保険請求と運送人求償を並行管理する |
| 害虫損害を発見したとき | 検疫機関、害虫専門家、倉庫 | 害虫の種類、侵入時期、侵入経路及び燻蒸履歴 | 害虫鑑定及び保管記録を確保する |
| 保険金請求を提出するとき | 保険会社又は保険代理店 | 近因、担保危険、免責事項、損害額及び証拠資料 | 原因と損害の対応を明記した請求資料を作成する |
担保損害と免責損害を混同しない
担保損害とは、単に保険対象に発生した損害ではなく、担保危険によって近因的に生じ、適用される免責事項に該当しない損害です。
免責損害とは、損害が存在していても、近因が担保危険ではない場合又は保険証券の免責事項に該当する場合に、保険者が責任を負わない損害です。
一つの事故に担保危険と免責危険が関与する場合には、事故を時間順に並べるだけではなく、どの原因が損害を実質的・効果的に発生させたかを確認します。
貨物保険の支払可否と、運送人、倉庫業者、梱包業者その他の第三者の責任も同じではありません。それぞれの契約と適用法に基づいて別々に判断します。
まとめ
MIA1906第55条第1項では、保険者は担保危険によって近因的に生じた損害について責任を負い、担保危険によって近因的に生じていない損害については責任を負わないとされています。
近因は、時間的に損害へ最も近い原因ではなく、損害を実質的・効果的に発生させた原因です。複数の原因が作用する場合には、担保危険と免責危険の両方が近因となる可能性も検討します。
被保険者自身の故意の不正行為による損害は免責となりますが、船長又は乗組員の過失が関与していても、担保危険が近因である場合には保険者が責任を負うことがあります。
遅延自体に近因する損害は、遅延が担保危険によって生じた場合でも、原則として免責となります。一方、遅延期間中に独立した担保事故が発生して物的損害が生じた場合には、別途検討します。
通常損耗、通常漏損、通常破損、貨物固有の瑕疵又は性質、ねずみ・害虫による損害及び海上危険に近因しない機械損傷も、保険証券に別段の定めがない限り、原則として免責となります。
固有の瑕疵を判断する際には、貨物自体が損傷しやすいかだけではなく、外部の偶然な事故が損害へ介在したかを確認します。
現行のICC(A)(B)(C)2009では、MIA1906第55条の基本構造に加え、各約款の担保危険、故意、通常損耗、梱包不備、固有の瑕疵、遅延その他の免責事項及び特別約款を確認する必要があります。
貨物事故が発生した場合は、写真、Survey Report、温度記録、梱包仕様、航海・荷役記録、機械故障解析及び専門家鑑定を確保し、保険会社又は保険代理店へ速やかに連絡することが重要です。
