協会放射能汚染等免責約款(Institute Radioactive Contamination Exclusion Clause)

Institute Radioactive Contamination Exclusion Clause

協会放射能汚染、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器および電磁気兵器免責約款とは

協会放射能汚染、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器および電磁気兵器免責約款とは、放射能汚染、核関連リスク、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器、電磁気兵器等に起因する損害、費用又は責任を貨物保険の対象外とするための免責約款です。

英語では、Institute Radioactive Contamination, Chemical, Biological, Bio-Chemical and Electromagnetic Weapons Exclusion Clause等と表記されます。

この約款は、通常の貨物損害とは性質が異なる巨大リスク、広域汚染リスク、集積リスク及び兵器使用リスクを、貨物保険契約から明確に除外する役割を持ちます。

実務上重要なのは、この約款が、協会戦争約款や協会ストライキ約款とは別に、核、放射能、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器及び電磁気兵器に関する特定リスクを横断的に免責する点です。

したがって、戦争危険やストライキ危険が付保されている場合でも、本免責約款に該当する損害まで当然に補償されるわけではありません。

また、貨物そのものが危険品であるかどうかだけで判断するのではなく、損害、費用又は責任の原因が放射能汚染や特定の兵器リスクに起因するかを確認する必要があります。

一方、通常の化学品漏洩事故、危険品輸送上の申告不備、感染症対策、平和利用の放射性同位体の輸送等が、すべて直ちに本免責約款へ該当するわけでもありません。事故原因、物質の性質、用途、兵器性、行政判断及び実際の約款文言を分けて確認することが重要です。

この記事で扱う範囲

本記事では、協会放射能汚染等免責約款が除外する主なリスク、通常貨物事故との違い、戦争約款・ストライキ約款との関係、危険品輸送との違い、平和利用の放射性同位体、通常貨物への影響、費用・責任、事故時の確認順序及び証拠資料を整理します。

本記事は、危険品輸送の手続、放射性物質の輸送規制、輸出管理又は大量破壊兵器関連法令そのものを詳述するものではありません。貨物保険上、どのような原因による損害が本免責約款によって対象外となり得るかを整理する記事です。

テーマ 本記事で扱う内容 詳しく確認すべき関連テーマ
放射能汚染等免責約款 核、放射能、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器及び電磁気兵器に起因する損害・費用・責任の免責を整理する 本記事
戦争約款との関係 戦争危険が付保されていても、核・放射能・化学兵器・生物兵器・電磁気兵器リスクが別途免責される可能性を整理する 協会戦争約款、Institute War Clauses
戦争解約約款との関係 戦争危険の引受停止・解約通知と、本免責約款による継続的な除外の違いを整理する 協会戦争解約約款
通常の免責事項 貨物海上保険で補償されない損害全体の中で、本免責約款の位置づけを確認する 貨物海上保険で補償されない損害
危険品輸送との違い 通常の危険品事故、化学品漏洩及び平和利用の放射性物質輸送と、本免責約款の対象リスクを区別する 危険物、危険品輸送、化学品輸送規制
事故時の証拠確認 行政発表、検査結果、隔離・廃棄指示、汚染源及び事故原因を確認する 証拠保全、サーベイ、事故通知
費用・責任 検査費、除染費、廃棄費、隔離費、保管費及び第三者責任への影響を整理する 損害防止費用、第三者責任、フォワーダー賠償責任
通常貨物への波及 通常貨物が汚染疑い、隔離、出荷停止又は検査対象となった場合の確認軸を整理する 行政措置、検疫、港湾事故

なぜこの免責約款が必要になるのか

貨物保険は、輸送中の火災、沈没、衝突、水濡れ、破損、盗難等、一般的な輸送リスクを対象とする保険です。

しかし、放射能汚染、核関連リスク、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器及び電磁気兵器に起因する損害は、通常の貨物事故とは規模も性質も大きく異なります。

これらのリスクは、一つの事故によって、広範囲の貨物、倉庫、港湾、船舶、空港、コンテナヤード及び物流網へ影響を及ぼす可能性があります。

貨物そのものの損傷だけでなく、汚染区域への立入禁止、物流施設の閉鎖、貨物の隔離、検査、除染、廃棄、輸送停止及び第三者への責任に波及する可能性もあります。

損害額が極めて大きくなり、複数の保険契約に同時に影響する集積リスクがあるため、通常の貨物保険料及び引受条件では対応しにくい危険として明確に除外されます。

また、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器又は電磁気兵器による損害は、一般的な危険品事故や通常の輸送中損害とは異なり、攻撃、兵器使用、政治的又は軍事的行為と結び付く可能性があります。

本免責約款は、こうした巨大・広域・集積型のリスクを、通常の貨物保険及び戦争保険から切り離すための条項です。

この約款が除外する主なリスク

リスク類型 具体例 通常貨物事故との違い 確認が必要な状況
核燃料・核廃棄物に関するリスク 核燃料、使用済核燃料、核廃棄物又は核燃料の燃焼に伴う電離放射線や放射能汚染 通常の火災、濡損又は破損と異なり、広域汚染及び長期的影響が問題になります。 港湾、船舶、倉庫又は輸送中貨物が放射能汚染を受けた疑いがある場合
原子力設備・原子炉に関するリスク 原子力設備、原子炉又は核関連施設の放射性、有毒性、爆発性その他の危険な性質 事故の影響が施設外へ波及し、多数の貨物や物流拠点に及ぶ可能性があります。 原子力施設事故、港湾周辺の汚染、行政による隔離又は出荷停止がある場合
核反応を利用する兵器 原子核分裂、核融合その他類似反応を利用する兵器による損害 通常の戦争危険又は爆発事故とは異なる、核兵器特有の巨大損害が問題になります。 軍事衝突、核兵器使用、核爆発又は核攻撃に関係する損害が疑われる場合
放射性物質の危険な性質 放射性物質の放射性、有毒性、爆発性その他の危険な性質による損害 貨物の物理的損傷だけでなく、汚染、隔離、検査又は廃棄が問題になります。 放射性物質の漏洩、汚染検査、隔離措置又は廃棄指示がある場合
化学兵器 毒性化学物質を兵器として使用したことによる汚染、使用不能、隔離又は廃棄 通常の化学品漏洩事故とは異なり、兵器として使用された性質が問題になります。 行政、軍、警察又は港湾当局が化学兵器関連事案として扱う場合
生物兵器 病原体、毒素又は微生物等を兵器として使用したことによる汚染や使用不能 通常の衛生問題又は食品汚染とは異なり、兵器使用及び広域拡散が問題になります。 生物兵器、病原体拡散、隔離命令又は検疫措置が関係する場合
生物化学兵器 化学的及び生物的性質を組み合わせた兵器による損害 通常の危険品事故又は感染症リスクとは別に、兵器性が問題になります。 化学・生物双方の危険性を有する攻撃又は汚染が疑われる場合
電磁気兵器 電磁パルス等、電磁気的作用を兵器として利用したことによる損害 通常の輸送中破損ではなく、電子機器障害、設備停止又は広域システム障害が問題になります。 電磁気兵器の使用により貨物、設備又は輸送システムが損傷した疑いがある場合

この約款の判断では、貨物自体が危険品であるかどうかだけが問題になるわけではありません。

一般貨物であっても、損害原因が放射能汚染又は本免責約款が対象とする兵器リスクに由来する場合は、免責が問題になります。

戦争約款・ストライキ約款・本免責約款の関係

約款・条件 主な対象 本免責約款との関係 判断上の中心 実務上の注意点
協会戦争約款 戦争、内乱、敵対行為、拿捕、機雷、魚雷等の戦争危険 戦争危険が付保されていても、核・放射能・化学兵器・生物兵器・電磁気兵器リスクは別途除外される可能性があります。 事故原因が一般的な戦争危険か、本免責約款の特定危険か 戦争危険の付保だけで補償可否を判断しません。
協会戦争解約約款 戦争危険を一定の予告期間で解約する仕組み 戦争危険の引受継続又は終了を定める条項であり、本免責約款の除外範囲とは役割が異なります。 解約通知及び効力発生日と、恒常的な免責の区別 戦争危険の解約と核・放射能等の免責を分けて確認します。
協会ストライキ約款 ストライキ、暴動、騒擾、労働争議、テロリズム等 テロ行為に関連していても、化学兵器又は生物兵器等に該当すれば本免責約款が問題になります。 行為者の目的だけでなく、使用された手段又は兵器の性質 テロ行為と使用兵器を分けて確認します。
通常の貨物保険条件 輸送中の火災、沈没、衝突、濡損、破損、盗難等 通常事故に見える損害でも、原因が放射能汚染又は特定兵器であれば免責が問題になります。 損害の外形ではなく、近因及び実際の原因 火災又は爆発という結果だけで判断しません。
本免責約款 核・放射能・化学兵器・生物兵器・生物化学兵器・電磁気兵器に起因する損害、費用又は責任 戦争危険又はストライキ危険の付保の有無にかかわらず、特定リスクを横断的に除外します。 損害原因と免責文言との対応 貨物の種類ではなく、原因が免責対象へ該当するかを確認します。

協会戦争約款を付帯しているからといって、核兵器、化学兵器又は生物兵器による損害まで当然に担保されるとは限りません。

戦争危険の補償範囲と、本免責約款による特定リスクの除外を別々に確認する必要があります。

危険品輸送との違い

本免責約款は、危険品貨物の輸送をすべて免責にする条項ではありません。

危険品貨物は、IMDG Code、航空危険物規則、国内法令並びに船会社・航空会社の受託条件に従い、適切に申告、梱包、表示及び積付けが行われることを前提として輸送されます。

区分 具体例 保険上の見方 主な確認資料
通常の危険品輸送 化学品、塗料、エアゾール、リチウム電池又は放射性物質を適正に申告して輸送する 危険品であるという事実だけで、直ちに本免責約款の対象になるわけではありません。 SDS、危険品申告書、UN番号、危険物クラス、梱包証明、Booking
危険品申告漏れ・梱包不備 危険品を非危険品として申告した、又は梱包・表示が不適切だった 危険品輸送上の申告不備、梱包不備、法令違反又は他の免責として整理します。 申告資料、梱包写真、SDS、船会社記録、事故報告
通常の化学品漏洩事故 一般化学品の漏洩、腐食、コンタミネーション又は容器破損 化学兵器とは異なり、通常の危険品事故又は貨物事故として確認します。 SDS、分析結果、漏洩原因、サーベイレポート
兵器としての化学・生物リスク 化学兵器、生物兵器又は生物化学兵器として使用されたことによる汚染 本免責約款による除外が問題になります。 行政発表、捜査・当局資料、検査結果、事故原因資料
放射性物質の輸送 医療用、研究用又は工業用の放射性物質を法令に従って輸送する 平和利用の放射性同位体か、免責対象となる核・放射能リスクかを個別に確認します。 輸送許可、用途資料、SDS、線源情報、保険条件

危険品輸送上の申告漏れ、梱包不備、通常の化学品漏洩事故と、本免責約款が対象とする核、兵器又は放射能汚染リスクは分けて整理する必要があります。

平和利用の放射性同位体との関係

放射性物質には、医療、科学、工業、農業等の平和的目的で使用される放射性同位体があります。

医療用の放射性医薬品、工業用の非破壊検査機器、研究用試料、照射装置又は線源等が該当することがあります。

これらは、核兵器又は原子力設備に由来する巨大リスクとは性質が異なります。そのため、平和利用の放射性同位体については、実際の免責約款に例外、復活担保又は個別引受条件が設けられていないかを確認する必要があります。

確認項目 確認する内容 確認資料 注意点
用途 医療、研究、工業又は農業等の平和利用か 用途説明、輸入許可、販売資料、技術資料 用途だけで補償可否を断定しません。
放射性物質の性質 線源、放射能量、包装形態及び危険品分類 SDS、危険品申告書、輸送許可、梱包証明 法令及び輸送規則への適合を確認します。
事故原因 通常の輸送事故か、放射能汚染又は核関連リスクか 事故報告、検査結果、行政発表、サーベイ 貨物の性質と損害原因を分けて確認します。
保険条件 放射性物質に関する除外、例外、特別条件又は事前承認 保険証券、特別約款、引受条件、保険会社回答 個別引受確認が必要となる場合があります。

放射性物質であることだけを理由に直ちに免責と判断することも、医療・研究用途であることだけを理由に当然に補償されると判断することも適切ではありません。

通常貨物にも影響する点

本免責約款は、核燃料、放射性物質又は兵器そのものを輸送する場合だけに関係するものではありません。

一般貨物であっても、放射能汚染又は特定兵器に起因する事故の影響によって、検査、隔離、出荷停止、使用不能又は廃棄の対象になることがあります。

通常貨物に影響する場面 問題になる内容 主な確認資料 実務上の注意点
港湾で放射能汚染が確認された場合 同じエリアに保管されていた一般貨物が検査、隔離又は出荷停止の対象になる 港湾当局発表、検査結果、隔離指示、保管場所記録 貨物自体が通常貨物でも、損害原因が免責リスクに該当するか確認します。
倉庫で化学兵器関連事案が発生した場合 一般貨物が汚染疑いにより出荷停止、隔離又は廃棄の対象になる 行政発表、倉庫事故報告、分析結果、廃棄指示 通常の化学品漏洩事故か、兵器関連事故かを区別します。
空港・船舶で生物兵器関連の疑いがある場合 貨物が検疫、隔離、滅菌、検査又は廃棄の対象になる 検疫記録、行政指示、検査結果、貨物明細 感染症対策と兵器性を分けて確認します。
電磁気兵器により電子機器貨物が損傷した場合 外装に損傷がなくても、電子機器又は精密機器が作動不能になる 技術検査、事故原因資料、当局発表、サーベイ 通常の電気的故障、静電気又は輸送中衝撃と区別します。
汚染疑いのみで貨物が長期間隔離された場合 最終的に汚染が否定されても、保管費、検査費、納期遅延又は販売機会損失が発生する 隔離指示、解除通知、検査結果、費用明細 物的損害、遅延損害及び免責リスク起因費用を分けます。
物流施設全体が閉鎖された場合 事故貨物と無関係な一般貨物も搬出不能となり、追加費用が発生する 施設閉鎖命令、在庫明細、搬入搬出、費用資料 貨物損害と施設閉鎖による間接損失を区別します。

費用・責任も免責対象になり得る

本免責約款では、貨物そのものの物的損害だけでなく、損害に関連して発生する費用又は責任も免責対象として整理されることがあります。

放射能汚染又は化学・生物兵器関連の事故では、検査費、除染費、廃棄費、隔離費、保管費、遅延費用及び第三者への責任が問題になります。

費用・責任の種類 発生しやすい場面 保険上の注意点 確認資料
検査費用 放射能、化学物質又は生物汚染の有無を確認する検査 免責対象リスクに起因する検査費用か、担保事故の損害調査費用かを確認します。 検査依頼、検査結果、行政指示、請求書
除染費用 貨物、コンテナ、倉庫又は作業場所の汚染除去 通常の清掃費用か、放射能・兵器関連汚染に起因する除染費用かを区別します。 除染指示、作業報告、費用明細、汚染原因資料
廃棄費用 汚染又は汚染疑いによって貨物を廃棄する 廃棄原因が本免責約款の対象リスクかを確認します。 廃棄指示、廃棄証明、行政命令、検査結果
隔離・保管費用 検査待ち又は行政指示による隔離保管 通常の保管料か、免責リスクに起因する追加費用かを分けます。 隔離指示、保管記録、費用明細、当局発表
遅延費用 汚染確認や隔離によって配送、通関又は販売が遅れる 遅延免責及び本免責約款の双方が問題になる可能性があります。 遅延経緯、契約資料、費用明細、事故原因
第三者責任 汚染拡大、施設使用不能又は他貨物への影響について請求を受ける 貨物保険とは別に、賠償責任保険及び契約上の責任を確認します。 請求書、責任通知、事故報告、契約書、責任保険条件

費用が発生した場合は、単に「事故対応費用」として一括せず、何の原因により、誰の指示で、どの貨物又は施設に対して、どの費用が発生したかを分けて記録することが重要です。

本免責約款の適用確認フロー

確認順序 確認する事項 主な確認資料 判断のポイント
1. 適用される保険条件を特定する 基本となるICC条件、戦争約款、ストライキ約款及び本免責約款の付帯を確認する 保険証券、包括予定保険条件、専用通知書、特別約款 約款名だけでなく、実際に適用される全文を確認します。
2. 損害・費用・責任を分類する 物的損害、検査費、除染費、廃棄費、隔離費、遅延又は第三者責任に分ける 損害明細、請求書、費用資料、責任通知 異なる損害項目を一括して判断しません。
3. 事故発生場所と時点を確認する 港湾、船舶、倉庫、空港、CY又は輸送中のどこで、いつ発生したかを確認する 搬入搬出、保管記録、事故報告、船会社・倉庫記録 事故発見場所と事故発生場所を区別します。
4. 直接の損害原因を確認する 火災、爆発、漏洩、汚染、隔離、兵器使用又は設備故障等を確認する 事故報告、行政発表、サーベイ、技術資料 損害の外形だけで免責該当性を判断しません。
5. 汚染源・危険源を特定する 核燃料、放射性物質、化学物質、生物由来物質又は電磁気的作用の有無を確認する SDS、分析結果、測定記録、専門機関所見 物質の存在と損害原因との因果関係を確認します。
6. 兵器性又は平和利用を確認する 通常の危険品事故、平和利用の輸送又は兵器としての使用のいずれかを確認する 用途資料、行政・捜査当局資料、輸送許可、分析結果 化学物質又は病原体の存在だけで兵器性を断定しません。
7. 行政・港湾当局の措置を確認する 検査、隔離、出荷停止、施設閉鎖、除染又は廃棄の指示を確認する 行政命令、港湾当局通知、検疫記録、解除通知 任意対応か法的な指示かを区別します。
8. 関連約款との関係を確認する 戦争危険、ストライキ危険、通常危険、遅延免責その他の免責との関係を整理する Institute Cargo Clauses、Institute War Clauses、Institute Strikes Clauses 本免責約款だけでなく、複数の条件が同時に問題となる場合があります。
9. 因果関係と免責範囲を確認する 損害、費用又は責任が、本免責約款の対象危険に直接又は間接に起因するかを確認する 事故時系列、検査結果、専門家意見、約款文言 約款の因果関係文言と事実関係を照合します。
10. 保険会社へ通知し責任関係を分ける 貨物保険の免責判断と、運送人、倉庫業者、フォワーダーその他の責任を分けて整理する 事故通知、B/L、倉庫約款、運送契約、責任保険 貨物保険の免責と、関係者の無責任は同じではありません。

実務で問題になりやすいケース

場面 主な原因 判断のポイント 確認資料 初動対応
港湾の放射能検知により一般貨物が隔離された 周辺施設又は別貨物からの放射能汚染疑い 実際の汚染の有無、隔離費用及び物的損害の有無 測定結果、隔離指示、解除通知、保管記録 貨物を移動せず、測定結果と行政指示を保存します。
化学兵器の疑いで倉庫が封鎖された 刺激臭、漏洩又は不審物に関する初期情報 兵器性が確認されたか、通常の化学品事故だったか 分析結果、警察・行政発表、SDS、事故報告 原因を断定せず、公式発表及び検査結果を確保します。
生物兵器疑いにより食品貨物が廃棄対象となった 病原体又は毒素による汚染の疑い 通常の食品衛生事故、感染症対策又は兵器使用のどれに該当するか 検査結果、検疫記録、廃棄命令、専門機関所見 廃棄前に保険会社及びサーベイヤーへ通知します。
戦争約款付保中に核兵器使用が疑われた 軍事攻撃、爆発及び放射能検知 戦争危険の担保と、本免責約款による核リスク除外の関係 戦争約款、本免責約款、当局資料、事故原因資料 双方の約款を確認し、事故原因を留保して通知します。
医療用放射性同位体が輸送事故で損傷した 落下、衝突又は容器破損 通常の輸送事故か、放射能汚染に起因する損害か、個別承認があるか 用途資料、輸送許可、測定結果、保険条件 漏洩及び汚染の有無を確認し、適用条件を照会します。
電磁気的作用で電子機器が一斉に故障した 電磁気兵器、落雷、電源異常又は通常の電気的故障 兵器使用によるものか、通常事故によるものか 技術検査、電源記録、当局発表、サーベイ 原因候補を分け、電子機器のログを保存します。
汚染疑いが否定されたが高額な保管費が発生した 行政検査及び長期隔離 物的損害の有無、遅延損害、隔離費用及び免責リスクとの因果関係 解除通知、検査結果、保管費、販売契約 費用を原因別・期間別に区分して記録します。
他貨物の汚染によって自社貨物が廃棄された 同一倉庫又はコンテナ内での汚染拡大 汚染源、本免責約款、倉庫業者責任及び求償可能性 保管配置、分析結果、廃棄命令、倉庫契約 貨物保険と倉庫業者等への求償を並行して確認します。

サーベイヤー・保険者との確認ポイント

確認項目 確認する内容 確認資料 注意点
損害原因 通常の輸送事故か、放射能汚染又は兵器関連リスクか 事故報告、行政発表、検査結果、サーベイ 損害の外形だけで判断しません。
事故発生場所 港湾、船舶、倉庫、空港、CY又は輸送中のどこで発生したか 搬入搬出、保管場所、船会社・倉庫記録 事故発見場所と事故発生場所を区別します。
汚染源・危険源 放射性物質、化学物質、生物由来物質又は兵器由来物質の有無 SDS、分析結果、当局資料、専門機関所見 通常の化学品事故か、兵器リスクかを切り分けます。
行政・港湾当局の指示 隔離、検査、廃棄、出荷停止、施設閉鎖又は立入制限 行政命令、港湾当局通知、検疫記録、廃棄指示 任意対応か行政指示かを確認します。
費用・責任の内訳 検査費、除染費、廃棄費、隔離費、保管費及び第三者請求 費用明細、請求書、契約書、事故対応記録 通常事故対応費用と免責リスク起因費用を分けます。

原因の切り分けができない段階では、保険者の判断にも時間がかかることがあります。

初動段階では原因を断定せず、行政発表、検査結果、専門機関の所見、船会社・倉庫業者の記録及びサーベイレポートを早期に確保することが重要です。

具体例1:港湾放射能汚染により隔離された通常貨物

港湾内の一部区域で放射線量の異常が検知され、同じ区域に保管されていた一般機械貨物が、港湾当局の指示によって隔離されたとします。

当該貨物は放射性物質ではなく、外装にも物理的な損傷はありませんでした。しかし、隔離期間中は搬出できず、追加保管費、検査費及び納期遅延が発生しました。

初期検査では貨物表面から微量の反応が確認されましたが、その後の詳細検査によって、貨物自体の放射能汚染は否定され、行政による隔離も解除されたとします。

この場合、隔離されたという事実だけで、貨物が本免責約款の対象となる物的損害を受けたと判断することはできません。

まず、異常検知の原因、汚染源、貨物への実際の付着又は汚染の有無、行政指示の内容及び解除理由を確認します。

次に、物的損害、検査費、隔離保管費、納期遅延及び販売上の損失を分け、各損害が放射能汚染に起因するのか、行政上の予防措置又は単なる遅延に起因するのかを整理します。

貨物保険上の支払可否とは別に、汚染源となった施設又は貨物の管理者、港湾事業者若しくは倉庫業者への求償可能性も確認する必要があります。

具体例2:化学兵器の疑いが否定され、通常の化学品事故として処理された場合

倉庫内で刺激臭が発生し、複数の貨物が緊急隔離されたとします。

初期段階では、不審な容器及び周辺状況から化学兵器関連事案の可能性が報道され、警察及び行政機関が施設を封鎖しました。

その後の分析により、原因は通常の工業用化学品の容器破損と判明し、兵器として使用された事実や意図的な攻撃は否定されたとします。

この場合、初期報道で「化学兵器の疑い」とされたことだけを理由に、本免責約款の適用を確定することは適切ではありません。

最終的な分析結果、SDS、漏洩物質、事故発生経緯、容器破損の原因、当局の最終発表及び貨物への付着状況を確認します。

兵器性が否定され、通常の化学品漏洩事故であることが確認された場合は、本免責約款ではなく、通常の貨物保険条件、危険品申告、梱包不備、コンタミネーション又は倉庫業者責任等の観点から検討することになります。

初期段階の推定と、最終的に確定した事故原因を明確に区別することが重要です。

具体例3:戦争約款付保下で核兵器使用が疑われた場合

協会戦争約款が付帯された貨物を積載する船舶が、武力衝突地域付近で大規模な爆発に遭遇し、貨物に火災及び熱損害が発生したとします。

初期報道では通常兵器による攻撃とされていましたが、その後、異常な放射線量が検知され、核反応を利用した兵器が使用された可能性が指摘されたとします。

この場合、戦争約款が付帯されているという理由だけで、損害が当然に担保されるとは限りません。

戦争行為による損害として協会戦争約款の担保危険へ該当する可能性がある一方で、核兵器又は核反応を利用した兵器に起因する損害であれば、本免責約款が優先的な争点となる可能性があります。

事故原因を確認するため、軍・行政当局の発表、放射線測定、爆発分析、船会社報告、サーベイレポート及び専門機関の所見を確認します。

事故原因が確定していない初期段階では、「通常の戦争危険」と「核兵器関連免責」の双方の可能性を留保し、速やかに保険会社へ通知する必要があります。

貨物保険の免責判断とは別に、運送人の航路選定、船舶の安全管理、航路変更又は戦争危険に関する通知義務についても確認が必要となる場合があります。

フォワーダー実務での判断チェックリスト

確認場面 確認すること 確認先・確認資料 問題がある場合の対応
貨物受託時 放射性物質、化学品、研究用試料、医療用物質又は軍民両用性が問題となる貨物か 荷主、SDS、貨物明細、用途説明、輸出入書類 危険品規制、輸出管理及び保険引受可否を事前に確認します。
保険手配時 本免責約款、戦争約款、ストライキ約款及び危険品条件 保険証券、特別約款、保険会社、保険代理店 戦争約款があっても、本免責約款の除外が残ることを確認します。
事故発生時 通常事故か、放射能汚染又は兵器関連リスクか 行政発表、船会社発表、港湾当局資料、事故報告 原因を推測で断定せず、公式資料と検査結果を確保します。
通常貨物が影響を受けた時 貨物自体は通常貨物でも、損害原因が免責リスクに由来するか 保管場所、汚染源情報、隔離指示、検査結果 貨物種類だけで保険対象と判断しません。
兵器性確認時 通常の危険品事故か、意図的な兵器使用か 行政・捜査当局資料、分析結果、用途資料 初期報道と最終的な事故原因を区別します。
費用発生時 検査費、除染費、廃棄費、隔離費、保管費及び遅延費用の原因 費用明細、行政指示、検査結果、請求書 通常事故対応費用と免責リスク起因費用を分けます。
求償・責任確認時 荷主、運送人、倉庫業者、港湾事業者及び第三者責任の関係 契約書、B/L、倉庫約款、行政命令、事故報告 貨物保険だけでなく、責任保険及び契約責任も確認します。
荷主説明時 通常事故、危険品事故、戦争危険及び本免責約款の違い 保険条件、事故原因資料、検査結果、保険会社回答 危険品でないから無関係、戦争約款があるから担保される等と断定しません。
記録保全時 事故原因、行政指示、検査結果、費用内訳及び関係者連絡 メール、通知書、検査報告、サーベイ、費用明細 後日の保険確認及び責任切り分けに備えて保存します。
廃棄・処分時 廃棄の必要性、行政命令、代表サンプル及び残存価値 廃棄指示、写真、計量記録、検査結果 廃棄前に保険会社又はサーベイヤーへ通知します。

よくある誤解

誤解 実務上の考え方 確認すべきこと
戦争約款があれば核・化学兵器リスクも補償される 戦争危険が付保されていても、核、放射能、化学兵器、生物兵器又は電磁気兵器リスクは、本免責約款で除外される場合があります。 戦争約款、本免責約款、事故原因、保険条件
危険品でない通常貨物なら関係ない 通常貨物でも、損害原因が放射能汚染又は特定兵器リスクに由来すれば免責が問題になります。 事故原因、汚染源、行政指示、検査結果
放射性物質なら直ちに免責である 医療、研究又は工業用途等の平和利用の放射性同位体もあります。用途、事故原因及び個別条件を確認します。 用途資料、SDS、危険品申告、保険会社回答
化学品事故はすべて化学兵器免責になる 通常の化学品漏洩事故と、化学兵器による損害は別です。 SDS、事故報告、行政発表、分析結果
病原体が確認されれば生物兵器免責になる 通常の感染症又は衛生事故と、兵器として使用された生物リスクを区別します。 検査結果、行政判断、事故経緯、兵器性
貨物そのものが壊れていなければ損害はない 隔離、検査、廃棄、使用不能又は出荷停止が問題となることがあります。 隔離指示、検査結果、廃棄証明、品質資料
行政命令による費用なら貨物保険で支払われる 行政命令に基づく費用でも、その原因が免責対象リスクであれば、当然に補償されるとは限りません。 行政命令、費用原因、保険条件、本免責約款
化学兵器の疑いと報道されれば免責が確定する 初期の疑いと、最終的に確定した事故原因を区別する必要があります。 最終分析結果、当局発表、サーベイ
貨物保険が免責なら関係業者にも責任はない 貨物保険の支払可否と、運送人、倉庫業者又はフォワーダーの責任は別問題です。 B/L、倉庫約款、事故原因、責任保険
この約款は実務ではほとんど関係ない 頻度は高くなくても、発生すると広域・高額・複数契約へ波及するため重要な免責です。 保険証券、特別約款、事故原因、対象貨物

実務上のポイント

協会放射能汚染等免責約款は、通常の貨物事故や危険品事故とは異なる、核、放射能、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器及び電磁気兵器リスクを貨物保険から除外する重要な免責約款です。

この約款では、貨物の種類ではなく、損害、費用又は責任の原因が何であるかが重要になります。

一般貨物であっても、損害原因が放射能汚染又は特定兵器に由来する場合には、免責が問題になります。

戦争約款又はストライキ約款が付帯されていても、核、放射能、化学兵器、生物兵器又は電磁気兵器に関するリスクは別枠で除外される場合があります。

一方、危険品輸送、通常の化学品漏洩事故、感染症事故又は平和利用の放射性同位体輸送は、それだけで直ちに本免責約款へ該当するとは限りません。

用途、申告内容、輸送条件、物質の性質、兵器性、事故原因、行政判断及び保険条件を分けて確認する必要があります。

フォワーダーやNVOCCは、放射性物質、化学品、研究用試料、医療用物質又は軍民両用性が問題となる貨物を扱う場合、貨物保険だけでなく、危険品規制、輸出管理、通関及び船会社・航空会社の受託条件も確認する必要があります。

まとめ

協会放射能汚染、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器および電磁気兵器免責約款は、放射能汚染、核関連リスク、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器及び電磁気兵器に起因する損害、費用又は責任を貨物保険から除外する重要な免責約款です。

この約款の実務上の核心は、通常の貨物事故や危険品輸送事故とは異なる巨大汚染リスク、兵器リスク及び集積リスクを、貨物保険から明確に切り離す点にあります。

実務では、貨物の種類だけで判断せず、損害原因が放射能汚染又は特定兵器リスクに該当するかを確認する必要があります。

戦争約款、ストライキ約款、戦争解約約款、危険品輸送、平和利用の放射性同位体及び通常の化学品事故は、それぞれ役割と判断軸が異なります。

事故時には、保険証券、特別約款、事故発生場所、貨物明細、危険品申告、SDS、行政機関・港湾当局の発表、検査結果、隔離・廃棄指示、サーベイレポート及び費用内訳を早期に確保します。

初期段階で兵器性又は汚染原因が不明な場合は、通常事故、本免責約款、戦争約款及びストライキ約款の可能性を留保し、事故原因を断定せずに保険会社へ通知することが重要です。

貨物保険上の免責判断と、運送人、倉庫業者、港湾事業者、荷主又はフォワーダーの賠償責任は、別の問題として整理します。

外航貨物海上保険は、保険料より条件で差が出ます。放射能汚染、核関連リスク、化学兵器、生物兵器、生物化学兵器、電磁気兵器及び関連費用の取扱いについては、専門の保険会社・保険代理店にご相談ください。

本記事は、協会放射能汚染等免責約款に関する一般的な貨物保険及び国際輸送実務を解説するものです。個別事故における免責の適用、兵器性の判断、放射性物質の取扱い、保険金支払、運送人責任、フォワーダー責任又は法的請求の成否を保証するものではありません。実際の判断では、保険証券、本免責約款、Institute Cargo Clauses、Institute War Clauses、Institute Strikes Clauses、行政発表、検査結果、SDS、輸送許可、事故通知、サーベイレポート、準拠法及び事故資料を確認し、保険会社、保険代理店、サーベイヤー又は海事弁護士へ相談してください。

同義語・別表記

  • Institute Radioactive Contamination Exclusion Clause
  • Radioactive Contamination Exclusion Clause
  • 協会放射能汚染免責約款
  • 放射能汚染免責約款
  • 化学兵器免責
  • 生物兵器免責
  • 生物化学兵器免責
  • 電磁気兵器免責
  • CBRN免責
  • 核リスク免責

関連用語

公式情報