並行輸入とは?真正品の確認・商標権・輸入通関で必要な資料

Parallel Imports in Japan: Authenticity, Trademark Issues and Customs Documents

並行輸入とは

並行輸入とは、海外で流通している真正品を、日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する取引です。

ブランド品、時計、衣類、化粧品、雑貨、家電、部品など、幅広い分野で行われています。

並行輸入は、それ自体が直ちに違法な取引というわけではありません。問題になるのは、その商品が本当に真正品か、海外で適法に流通していた商品か、日本の商標権者の出所表示機能や品質保証機能を害しないか、仕入経路を説明できるかという点です。

つまり、並行輸入では「本物かどうか」だけでなく、「どのような経路で仕入れた真正品か」「日本で販売しても商標権侵害と評価されにくい状態か」を整理する必要があります。

本記事では、ブランド品輸入の中でも特に「並行輸入」という取引形態に固有の論点、すなわち真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性、販売地域制限、仕入経路の説明を中心に扱います。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
並行輸入の基本 海外で流通している真正品を、日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する取引を扱います。 ブランド品全般の輸入確認は「ブランド品輸入」の記事で扱います。
模倣品との違い 並行輸入品と模倣品・商標権侵害品の違いを整理します。 模倣品や知的財産侵害物品そのものの通関対応は、模倣品対策関連の記事で扱います。
真正商品性 海外で商標権者または許諾を受けた者により適法に商標が付された商品かを扱います。 真正品かどうかの最終判断や権利侵害の法的判断は、権利者・税関・専門家側の確認事項です。
内外権利者の関係 海外の商標権者と日本の商標権者が同一または実質的に同一視できる関係かを扱います。 商標権者間の契約関係や権利関係の法的評価は、輸入者・専門家側で確認します。
品質の実質同一性 日本の商標権者が保証する品質と、輸入品の品質に実質的な差異がないかを扱います。 商品の安全規制、成分表示、電気用品、化粧品、医薬品該当性は各他法令記事で扱います。
通関で確認される資料 仕入先、購入証明、正規販売証明、商品仕様、販売地域、型番資料などを扱います。 インボイス、パッキングリスト、B/L、AWBなど基本通関書類の確認は、申告前確認の記事で扱います。
認定手続との関係 商標権侵害品や模倣品の疑いがある場合の輸入差止め、認定手続、資料提出を扱います。 認定手続における意見書の具体的内容や権利者交渉は、輸入者・専門家側で扱います。
フォワーダー対応 資料回収、通関業者連携、期限管理、保管料・廃棄費用リスクの説明を扱います。 適法性の最終判断、任意放棄、廃棄、権利者同意取得の判断は輸入者側で扱います。

ブランド品輸入記事との違い

「ブランド品輸入」は、ブランド品全般の通関確認、真正品性資料、模倣品リスク、輸入差止め、認定手続を広く扱う記事です。

これに対して、本記事「並行輸入」は、正規代理店ルートとは異なる経路で真正品を輸入する場合に、どのような条件で商標権侵害と評価されにくいか、どの資料で仕入経路や品質の同一性を説明するかを中心に扱います。

記事 中心テーマ 確認する主な資料 実務上の使い分け
ブランド品輸入 ブランド品全般の通関確認、真正品性、模倣品リスク インボイス、購入証明、正規販売証明、商品写真、型番資料 ブランド品を輸入する実務全般を確認したい場合に参照します。
並行輸入 正規代理店ルート以外で真正品を輸入する場合の判断軸 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性、仕入経路資料 並行輸入として説明できるかを確認したい場合に参照します。
キャラクター商品の輸入 キャラクター使用許諾、著作権、商品化権、ライセンス範囲 ライセンス契約書、使用許諾書、正規販売証明、商品画像 アニメ、漫画、ゲームなどのキャラクター商品を扱う場合に参照します。

模倣品との違い

模倣品は、権利者の許諾なく製造された偽物です。

一方、並行輸入品は、正規に製造された真正品である点が大きな違いです。

ただし、見た目だけでは真正品か模倣品かを判断できない場合があります。ブランドロゴ、タグ、保証書、外箱、型番、販売ページが整っていても、それだけで真正品と断定できるとは限りません。

また、商品自体が真正品であっても、販売地域制限、品質管理、包装の変更、保証内容、流通経路によって問題になることがあります。

区分 商品の性質 通関上の問題点 確認資料の例
並行輸入品 海外で正規に製造・流通した真正品 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性を説明できるかが問題になります。 正規販売店インボイス、購入証明、型番資料、商品仕様、仕入先情報
模倣品 権利者の許諾なく製造された偽物 商標権侵害品や知的財産侵害物品として輸入差止めの対象になる可能性があります。 権利者確認資料、税関通知、商品写真、認定手続資料
正規代理店輸入品 日本の正規代理店や指定ルートを通じて輸入される商品 通常は仕入経路の説明がしやすい一方、書類不備があれば確認対象になります。 正規代理店資料、契約書、インボイス、販売証明
出所不明品 真正品か模倣品か、仕入経路が説明できない商品 販売ページや口頭説明だけでは真正品性を説明できない場合があります。 追加購入証明、販売者情報、商品写真、仕入経路説明

並行輸入では、単に「本物か偽物か」だけでなく、「日本への輸入販売について商標権侵害と評価されにくい状態か」を確認する必要があります。

真正商品の並行輸入として問題になりにくい場合

真正商品の並行輸入として問題になりにくいかどうかは、一般に次のような観点で整理されます。

確認観点 内容 確認資料の例 注意点
海外で適法に商標が付された商品であること 海外で商標権者または許諾を受けた者により適法にブランド表示が付された商品か 正規販売店のインボイス、購入証明、正規販売証明、仕入先情報 海外EC販売者の表示だけでは不足することがあります。
内外権利者が同一または実質的に同一と見られること 海外の商標権者と日本の商標権者が同一、または法律的・経済的に同一視できる関係か ブランド本社情報、現地法人情報、正規代理店資料、契約資料 輸入者が権利者関係を説明できない場合、確認が必要になります。
品質に実質的な差異がないこと 日本の商標権者が保証する品質と、輸入品の品質に実質的な差異がないか 商品仕様、型番、成分、保証内容、説明書、付属品、保管状態資料 海外仕様品、保証対象外品、改変品、品質劣化品では注意が必要です。
品質保証機能を害していないこと 包装の入替え、改造、小分け、詰替え、再包装などにより品質保証機能を害していないか 商品写真、包装写真、保管記録、流通資料 商品が真正品でも、改変や再包装が問題になることがあります。
仕入経路を説明できること 仕入先、販売者、商品型番、価格、数量を説明できるか インボイス、注文履歴、販売ページ、仕入先会社情報、契約書 仕入経路が不明確な場合、通関で止まることがあります。

これらは、単なる通関書類の形式だけでなく、商標の出所表示機能と品質保証機能を害していないかという観点から整理されます。

したがって、並行輸入は「正規代理店を通していないから違法」と単純に判断されるものではありません。一方で、「海外で売っていた本物だから必ず問題ない」ともいえません。

3つの判断軸

並行輸入で特に重要になるのは、真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性です。

判断軸 内容 実務上の確認資料 止まりやすい原因
真正商品性 海外で商標権者または許諾を受けた者により適法に商標が付された商品か 正規販売店のインボイス、購入証明、仕入先情報、商品型番、販売ページ 海外EC販売者や個人販売者からの購入で、正規流通を説明できない
内外権利者の関係 海外の商標権者と日本の商標権者が同一、または法律的・経済的に同一視できる関係か ブランド本社、現地法人、正規代理店、商標権者情報、契約資料 海外ブランドと日本の権利者の関係を輸入者が説明できない
品質の実質同一性 日本の登録商標が保証する品質と、輸入品の品質に実質的な差異がないか 商品仕様、型番、成分、保証内容、取扱説明書、流通地域、保管状態 海外仕様品、保証対象外品、包装変更品、品質劣化品で説明が難しい

並行輸入では、これらの観点を総合して説明できることが重要です。

特に品質の実質同一性は見落とされやすい論点です。商品が本物であっても、日本仕様と海外仕様で成分、電圧、保証、表示、付属品、品質管理条件が異なる場合、確認が必要になることがあります。

通関で確認されるポイント

並行輸入では、商品そのものだけでなく、流通経路が重要になります。

輸入者は、仕入先、購入経路、販売証明、商品型番、価格、数量、販売目的を説明できる必要があります。

確認対象 確認する内容 不足しやすい資料 注意点
仕入先 正規販売店、正規代理店、卸業者、個人販売者の別 仕入先会社情報、購入証明、正規販売証明 販売者が正規品と言っているだけでは不足することがあります。
購入経路 どの国・どの販売者・どの注文で購入したか 注文履歴、販売ページ、契約書、請求書 仕入経路が途切れると説明が難しくなります。
商品型番 ブランド名、型番、品番、仕様、数量 商品カタログ、型番資料、商品写真 インボイスにgoodsやpartsだけでは不足することがあります。
価格 仕入価格が通常流通価格と大きく乖離していないか インボイス、注文履歴、価格資料 極端な低価格は模倣品や不自然な流通を疑われやすくなります。
販売目的 個人使用、販売用在庫、展示用、修理品の別 販売計画、販売ページ、注文書、用途説明 販売目的の場合は確認資料が重くなることがあります。
品質・仕様 日本向け商品と仕様・成分・保証・表示に大きな差がないか 仕様書、成分表、保証書、取扱説明書、付属品資料 海外仕様品では品質の実質同一性が問題になることがあります。

インボイスだけでは不十分な場合もあり、契約書、販売証明、商品カタログ、販売ページ、注文履歴、正規販売店からの購入証明などの補足資料が求められることがあります。

また、インボイスの商品名が「goods」「parts」「fashion items」など曖昧な場合、ブランド名、型番、数量、単価、仕入先の詳細を追加で確認されることがあります。

問題になりやすいケース

並行輸入で問題になりやすいのは、海外ECサイトからの仕入れ、個人販売者からの購入、価格が極端に安いブランド品、仕入先が不明確な商品です。

ケース 起きやすい原因 実務上の影響 確認の方向性
海外ECサイトからの仕入れ 販売者が正規販売店か確認できない 真正商品性や仕入経路の説明が不足します。 販売者情報、購入証明、正規販売証明を確認します。
個人販売者からの購入 正規流通ルートかどうか確認しにくい 販売者の説明だけでは真正品性を説明できません。 購入履歴、商品写真、販売者情報を確認します。
価格が極端に安いブランド品 模倣品、余剰品、無許諾流通品の疑い 税関照会や認定手続につながる可能性があります。 価格根拠、仕入先、流通経路を確認します。
海外仕様品 日本向け販売が想定されていない仕様 品質の実質同一性や表示・保証の問題が出ることがあります。 仕様書、保証書、取扱説明書、販売地域を確認します。
保証書や説明書が現地仕様のみの商品 日本向け保証や説明がない 品質保証機能や消費者誤認の問題が出ることがあります。 保証範囲、日本販売時の説明方法を確認します。
包装を入れ替えた商品 再包装、外箱変更、タグ変更 品質管理や出所表示に影響する可能性があります。 包装変更の理由、元包装、商品写真を確認します。
小分け・詰替え・再包装された商品 化粧品、消耗品、部品などで流通形態が変わっている 品質保証機能を害する可能性があります。 詰替え前後の資料、成分、保管状態を確認します。
中古品・展示品・アウトレット品 状態、保証、流通経路が通常品と異なる 真正品でも品質や保証の説明が必要になることがあります。 商品状態、購入証明、保証条件を確認します。

これらの商品は、単に「本物」であることだけでは足りず、出所表示や品質保証機能を害していないかを確認する必要があります。

輸入差止めと認定手続

税関で商標権侵害品、模倣品、知的財産侵害物品に該当するおそれがあると判断された場合、認定手続が行われることがあります。

認定手続とは、税関が発見した侵害疑義物品について、知的財産侵害物品に該当するかどうかを判断するための手続です。

認定手続が開始されると、輸入者に通知が行われ、輸入者は期限内に意見や証拠を提出することになります。

段階 主な内容 輸入者側で必要になる対応 注意点
侵害疑義の発見 税関で商標権侵害品や模倣品の疑いがある貨物が確認される 商品内容、仕入先、真正商品性、仕入経路を確認します。 通関が止まり、保管料や回答期限の管理が必要になります。
認定手続の開始 税関から輸入者へ手続開始の通知が行われる 通知内容、回答期限、必要資料を確認します。 期限内対応が重要です。
意見・証拠の提出 輸入者が侵害物品ではないことを説明する資料を提出する 購入証明、販売ページ、正規販売証明、商品仕様、契約資料を準備します。 販売者の説明だけでは十分な証拠にならない場合があります。
税関による判断 提出資料をもとに侵害物品に該当するか判断される 追加資料や補足説明に対応します。 フォワーダーや通関業者は最終判断を行う立場ではありません。
侵害物品ではないと認定 輸入許可へ進む可能性がある 通関再開、搬出、配送を進めます。 他の通関不備が残っていないか確認します。
侵害物品と認定 輸入できない方向で処理が進む 廃棄、任意放棄、権利者同意、返送可否、修正対応などを検討します。 費用、保管料、販売計画への影響を確認します。

並行輸入品として輸入する場合でも、真正商品性や仕入経路を説明できなければ、通関が止まり、認定手続に進む可能性があります。

実務の流れ

段階 主な確認事項 止まりやすい原因 実務上の対応
仕入前 真正品か、仕入先が信頼できるか、販売地域や品質に問題がないか 海外EC販売者の説明だけで正規品と判断してしまう 仕入先、正規販売証明、価格、販売地域を確認します。
輸入手配前 ブランド名、型番、数量、価格、仕入先、販売目的 インボイスや注文履歴にブランド名・型番が明記されていない 商品写真、型番資料、購入証明を準備します。
通関申告時 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性 仕入経路や正規流通を示す資料が不足している 通関業者へ資料を共有し、不足資料を確認します。
税関照会時 購入証明、販売ページ、正規販売証明、商品仕様、契約資料 海外仕入先と連絡が取れず、資料取得に時間がかかる 輸入者から資料を回収し、期限内に通関業者へ連携します。
認定手続開始時 輸入者が期限内に意見書・証拠を提出するか判断 並行輸入の意味を輸入者が理解しておらず、回答期限が迫る 回答期限、必要資料、保管料リスクを共有します。
侵害該当と判断された場合 廃棄、任意放棄、権利者同意、返送可否、修正対応 保管料、廃棄費用、販売計画への影響、荷主との費用負担が問題になる 輸入者判断事項として、費用と手続状況を整理します。

必要となる資料

並行輸入で確認が入った場合、次のような資料が必要になることがあります。

資料 主な役割 確認される内容 注意点
仕入先からのインボイス 売主、買主、品名、数量、価格を説明する ブランド名、型番、数量、単価、仕入先 goodsやpartsなど曖昧な品名では不足することがあります。
注文履歴 購入経緯や注文内容を説明する 注文日、商品名、数量、価格、販売者 真正商品性の証明としては補足資料にとどまる場合があります。
販売ページ 商品内容、販売者、表示内容を確認する 商品名、型番、ブランド名、販売者表示 販売ページにauthentic等の記載があっても、それだけでは十分とは限りません。
商品カタログ・型番資料 商品仕様や型番の正確性を確認する 型番、仕様、付属品、販売地域 インボイス明細と対応しているか確認します。
商品写真 本体、ロゴ、タグ、保証書、説明書、付属品を確認する ブランド表示、品質、包装状態、改変の有無 商品本体だけでなく付属品や包装も確認します。
正規販売店からの購入証明 正規流通から入手したことを説明する 販売店名、対象商品、購入数量、販売地域 仕入先が正規流通に属するか確認します。
仕入先の会社情報 販売者の実在性や信用性を確認する 会社名、所在地、連絡先、販売実績 海外EC上の表示名だけでは不足することがあります。
権利者関係資料 海外ブランド本社、現地法人、日本権利者の関係を説明する ブランド本社、正規代理店、現地法人、商標権者情報 輸入者だけで説明できない場合は専門家確認が必要になることがあります。
商品仕様・保証資料 品質の実質同一性を説明する 成分、電圧、保証内容、説明書、付属品、保管条件 海外仕様品では特に重要です。

これらの資料は、単に「本物です」と主張するためではなく、真正商品性、仕入経路、品質の実質同一性を説明するために使われます。

特に、販売ページや注文履歴だけでは足りないことがあります。仕入先が正規流通に属しているか、商品がどの地域向けに販売されたものか、日本で販売する商品と品質に実質的な差異がないかを確認する必要があります。

フォワーダー実務での対応

フォワーダーは、並行輸入の適法性や商標権侵害の有無を判断する立場ではありません。

しかし、ブランド品や並行輸入品と分かる貨物については、荷主に対して、真正品であること、仕入経路を説明できること、販売目的、資料準備の有無を事前確認する必要があります。

場面 フォワーダーが対応できること フォワーダーだけでは判断できないこと 輸入者・通関業者と連携すべき事項
輸入手配前 並行輸入品・ブランド品であることを把握し、資料準備を促す 並行輸入として適法かどうかの最終判断 輸入者に仕入先資料、購入証明、商品仕様を確認します。
通関申告前 ブランド名、型番、数量、価格、仕入先、販売目的を整理する 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性の法的評価 通関業者へ事前相談し、必要資料を確認します。
税関照会時 輸入者から資料を回収し、通関業者へ連携する 商標権侵害ではないと断定すること 輸入者に購入証明、正規販売証明、補足説明を依頼します。
認定手続開始時 通知、回答期限、必要資料を輸入者へ伝える 意見書の内容や提出方針の判断 輸入者・通関業者・必要に応じて専門家確認を促します。
保留中 保管料、搬出停止、配送予定への影響を整理する 輸入を継続するか、放棄・廃棄するかの判断 輸入者へ費用発生と期限を共有します。
侵害該当と判断された場合 手続状況、費用、返送・廃棄の実務情報を整理する 権利者交渉、任意放棄、廃棄判断 輸入者の判断に基づき、通関業者と実務対応を確認します。
海外仕様品の場合 仕様書、保証書、説明書、成分表などを回収する 品質の実質同一性や販売可否の判断 輸入者・通関業者へ仕様差を共有します。
資料不足の場合 不足資料と回答期限を整理する 資料不足でも申告を進められるかの判断 通関業者に確認し、申告前に止めるべきか整理します。

ただし、フォワーダーが輸入者の代理人として「真正商品の並行輸入です」「商標権侵害ではありません」と断定することは避けるべきです。

フォワーダーの役割は、事実確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、保管料や廃棄費用などのリスク説明にあります。

4列判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
仕入前 輸入者、仕入先 真正品か、仕入先が信頼できるか、販売地域や品質に問題がないか 正規販売証明、購入証明、仕入先情報を確認します。
輸入手配前 輸入者、海外売主 ブランド名、型番、数量、価格、仕入先、販売目的 インボイスや注文履歴に詳細を明記できるか確認します。
通関申告前 輸入者、通関業者 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性 不足資料がある場合は、申告前に通関業者へ相談します。
海外EC仕入れの場合 輸入者、仕入先 販売者が正規販売者か、商品が正規流通品か 販売ページだけでなく購入証明・販売者情報を取得します。
海外仕様品の場合 輸入者、メーカー、通関業者 成分、電圧、保証、表示、付属品、説明書の違い 品質の実質同一性を説明できる資料を準備します。
税関照会時 輸入者、通関業者 購入証明、販売ページ、正規販売証明、商品仕様、契約資料 回答期限内に提出できる資料を整理します。
認定手続開始時 輸入者、通関業者 通知内容、回答期限、意見・証拠提出方針 輸入者判断事項として期限管理を行います。
輸入継続が難しい場合 輸入者、通関業者 任意放棄、廃棄、権利者同意、返送可否、費用負担 保管料、廃棄費用、販売計画への影響を整理します。
フォワーダーに適法性説明を求められた場合 輸入者、通関業者 フォワーダーが判断できる範囲とできない範囲 適法性を断定せず、資料回収と通関業者連携に徹します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 起きやすい原因 実務上の影響 対応の方向性
海外EC販売者から仕入れたブランド品 販売者が正規流通に属するか不明 真正商品性や仕入経路の説明が不足します。 販売者情報、購入証明、正規販売証明を確認します。
販売ページにgenuineやauthenticとだけ書かれている 販売ページの表示をそのまま信用している 客観的な真正品資料として不足することがあります。 正規販売店資料や購入証明を確認します。
海外仕様品を日本で販売する 仕様、成分、電圧、保証、説明書が日本向けと異なる 品質の実質同一性が問題になることがあります。 仕様書、保証条件、説明書、成分表を確認します。
保証対象外品を販売する 日本の正規保証と異なる条件で販売される 品質保証機能や消費者誤認の問題が出ることがあります。 保証内容と販売時の説明を確認します。
包装を入れ替えた商品 再包装、外箱変更、タグ変更 出所表示や品質保証機能を害する可能性があります。 元包装、変更理由、商品写真を確認します。
小分け・詰替え品 化粧品、消耗品、部品などで流通形態が変わっている 品質管理や成分表示に影響することがあります。 詰替え前後の資料、保管状態、成分情報を確認します。
中古品・展示品・アウトレット品 状態、保証、流通経路が通常品と異なる 真正品でも品質や保証の説明が必要になります。 商品状態、購入証明、保証条件を確認します。
価格が通常流通価格より著しく安い 模倣品、余剰品、無許諾流通品の疑い 税関照会や認定手続につながる可能性があります。 価格根拠、仕入ルート、販売者情報を確認します。

実務シナリオ1:海外EC仕入れで真正品性を説明できないケース

輸入者が海外ECサイトからブランドバッグや時計を仕入れ、日本国内で販売しようとするケースがあります。

販売ページには「genuine」「authentic」と書かれていても、販売者が正規販売店かどうか、ブランド権利者とどのような関係にあるかが分からない場合があります。

通関で確認が入った場合、輸入者が販売ページのスクリーンショットしか提出できないと、真正商品性や正規流通の説明が不十分になることがあります。

この場合、通関が止まり、追加資料の提出、保管料、納期遅延、販売計画への影響が発生します。

実務シナリオ2:海外仕様品で品質の実質同一性が問題になるケース

海外で正規に販売されていた商品であっても、日本向け商品と仕様が異なる場合があります。

例えば、電気製品の電圧、化粧品の成分表示、保証内容、説明書、付属品、保管条件が日本向け商品と異なる場合です。

このような場合、商品が真正品であっても、日本の商標が保証する品質と実質的に同一といえるかが問題になることがあります。

輸入者は、海外仕様品であること、日本での販売時に誤認が生じないこと、品質や安全性に問題がないことを説明できる資料を準備する必要があります。

実務シナリオ3:フォワーダーに適法性の説明を求められるケース

通関で並行輸入品の確認が入った場合、荷主からフォワーダーに対して「並行輸入だから問題ないと説明してほしい」と依頼されることがあります。

しかし、フォワーダーは権利者でも正規代理店でもなく、商標権侵害の有無を判断する立場でもありません。

この場合、フォワーダーは、輸入者から提出されたインボイス、注文履歴、販売ページ、仕入先情報、商品仕様資料を通関業者へ連携し、必要に応じて輸入者から補足説明を取得します。

意見書の内容、権利者への確認、認定手続への対応、任意放棄や廃棄の判断は、輸入者自身が行うべき事項です。

実務シナリオ4:正規店購入品だが販売地域制限が不明なケース

海外の正規販売店から購入した商品であっても、日本での販売が想定されていない場合があります。現地販売限定品、特定地域向け仕様品、現地保証のみの商品などでは、日本での販売時に説明が必要になることがあります。

この場合、商品が真正品であることだけでなく、販売地域、保証条件、仕様差、国内販売時の表示方法を確認する必要があります。

対応としては、購入証明、販売条件、保証書、商品仕様、販売地域に関する資料を整理します。通関業者へは、真正商品性だけでなく、品質や保証の違いも含めて資料を共有します。

実務シナリオ5:包装を入れ替えた並行輸入品のケース

海外から仕入れた真正品について、日本販売用に外箱を入れ替えたり、説明書やラベルを追加したりするケースがあります。

包装の入替えや再包装は、出所表示や品質保証機能に影響する可能性があります。商品本体が真正品であっても、包装変更によって権利者の品質管理やブランド表示に影響する場合があります。

対応としては、元包装、変更後包装、変更理由、商品状態、保管状況を確認します。輸入者は、再包装により品質や出所表示に誤認が生じないことを説明できる資料を準備します。

実務シナリオ6:中古品・展示品・アウトレット品の並行輸入

中古品、展示品、アウトレット品を海外から仕入れて日本で販売する場合、商品自体は真正品であっても、状態、保証、付属品、保管状況、販売条件が通常の正規品と異なることがあります。

この場合、真正商品性に加えて、品質の実質同一性や販売時の説明が問題になります。保証対象外品、傷あり品、箱なし品、付属品欠落品では、消費者が正規新品と誤認しないよう注意が必要です。

対応としては、商品状態、購入証明、付属品、保証条件、販売時の表示内容を確認します。フォワーダーは、通関業者へ提出する資料として、商品状態が分かる写真や仕入資料を輸入者から回収します。

輸入差止めになった場合の費用と判断

並行輸入品として申告していても、税関で商標権侵害品や模倣品の疑いがあると判断されると、貨物は保留状態になります。

その間、保管料、検査立会費用、書類準備費用、翻訳費用、廃棄費用、返送可否の確認費用などが問題になることがあります。

費用・判断項目 発生しやすい場面 輸入者が判断すべきこと フォワーダーの対応
保管料 通関保留や認定手続が長引く場合 輸入継続するか、放棄・廃棄を検討するか 保管料発生日と見込みを共有します。
検査立会費用 税関検査や現物確認が必要になる場合 検査対応を行うか、資料提出で対応できるか 通関業者・倉庫と実務手配を確認します。
翻訳・書類準備費用 外国語資料や契約資料を提出する場合 翻訳や補足説明を準備するか 期限内に提出できるよう資料回収を促します。
廃棄費用 輸入できないと判断される場合 任意放棄・廃棄を選ぶか 通関業者と廃棄手続の実務を確認します。
返送可否 輸入できない貨物を海外へ戻したい場合 返送が可能か、費用を負担するか 通関業者・運送人と実務可否を確認します。
販売計画への影響 販売開始日や納品予定に間に合わない場合 販売延期、キャンセル、代替対応 通関保留の見込みを輸入者へ共有します。
権利者同意の取得 権利者から輸入同意を得られる可能性がある場合 権利者へ連絡するか、専門家に相談するか フォワーダーは交渉主体ではなく、通関業者への連携を行います。

認定手続の結果、輸入できないと判断された場合、輸入者は任意放棄、廃棄、権利者からの同意書取得、修正対応などを検討することになります。

これらの判断は、商品の金額、数量、販売計画、保管料、法的リスク、権利者対応の可能性を踏まえて行います。

フォワーダーや通関業者は、輸入者に代わって権利関係を判断するのではなく、手続の状況、期限、発生し得る費用を整理して伝える立場になります。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
並行輸入は違法である 並行輸入それ自体が直ちに違法というわけではありません。 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性を確認します。
海外で売っていた本物なら必ず問題ない 真正品であっても、仕入経路や品質差、販売地域が問題になることがあります。 購入証明、販売地域、商品仕様を確認します。
正規代理店を通していないから必ず輸入できない 正規代理店ルートでなくても、真正商品の並行輸入として整理できる場合があります。 正規外ルートであることと違法性を混同しないようにします。
販売ページにauthenticと書いてあれば十分である 販売ページの表示だけでは、真正商品性や正規流通を十分に説明できない場合があります。 客観的な購入証明や正規販売証明を確認します。
商品が本物なら品質の確認は不要である 海外仕様品、保証対象外品、再包装品では品質の実質同一性が問題になることがあります。 仕様、保証、説明書、付属品、保管状態を確認します。
並行輸入なら認定手続にはならない 資料不足や真正商品性への疑義があれば、認定手続に進む可能性があります。 期限内に意見・証拠を提出できる準備が必要です。
フォワーダーが適法性を説明すればよい フォワーダーは並行輸入の適法性や商標権侵害の有無を判断する立場ではありません。 資料回収、通関業者連携、期限管理に徹します。
注文履歴があれば真正品性は証明できる 注文履歴は購入経緯の資料ですが、仕入先の正規性や品質の実質同一性までは説明できない場合があります。 仕入先情報、商品仕様、正規販売証明も確認します。

実務上の注意点

並行輸入は合法な取引であっても、資料不足により通関が遅れるケースがあります。

特に初回取引、海外EC仕入れ、小口大量貨物、個人販売者からの購入品、販売目的の継続輸入では、事前準備が不十分になりやすいため注意が必要です。

輸入者は、商品が真正品であること、仕入先が信頼できること、海外権利者と日本権利者の関係、品質の実質同一性、販売地域や保証条件を確認する必要があります。

フォワーダーは、貨物の性質を把握し、必要に応じて事前確認を促すことで、通関トラブルを回避するための連絡整理を行う立場です。

並行輸入では、「本物かどうか」だけでなく、流通経路、販売地域、品質差、保証条件、包装変更の有無まで確認することが重要です。

まとめ

並行輸入は、模倣品とは異なり、海外で流通している真正品を日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する取引です。

ただし、真正品であっても、商標権侵害と評価されにくい状態にするためには、真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性を説明できることが重要です。

輸入実務では、商品が本物であることだけでなく、仕入経路、販売者、型番、品質、保証、販売目的を資料で説明できる必要があります。

フォワーダーは適法性の判断者ではありませんが、荷主への事前確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、費用リスクの説明を行う立場です。

並行輸入は、真正品性、商標権者間の関係、品質管理、仕入経路、通関実務が重なる取引であり、仕入前の資料確認が最重要の予防策です。

同義語・別表記

  • 並行輸入品
  • 真正品輸入
  • 海外正規品
  • Parallel Import
  • Parallel Imported Goods
  • Genuine Goods Import
  • 正規外ルート輸入
  • 海外流通品輸入

関連用語

公式情報