Unpaid(不払い)―貿易決済における意味と初動対応
Unpaidとは
Unpaidとは、貿易決済において、予定された支払期日又は決済段階で、代金が支払われていない状態をいいます。
日本語では、「不払い」「未払い」「満期不払い」「支払拒絶」「代金未回収」などと表現されます。
期限付手形又は取立取引では、手形又は支払請求が拒絶された状態をDishonourと表現することがあります。
Unpaidは、D/P、D/A、L/C、L/G Negotiation、Open Account、T/T後払い、銀行買取その他の決済で発生します。
ただし、同じUnpaidでも、その法的・実務的な意味は決済条件によって異なります。
D/Pでは、輸入者が支払わず書類及び貨物を引き取らない問題が中心になります。D/Aでは、輸入者が手形を引き受け、貨物を受領した後の満期不払いが問題になります。
L/Cでは、Discrepancy、発行銀行リスク、送金規制、不可抗力又は信用状失効による支払拒絶・遅延が問題になります。
L/G Negotiationでは、銀行が一時的に資金化していても、発行銀行から支払われなければ、銀行から輸出者へ遡求される可能性があります。
Open Accountでは、銀行による書類管理がないため、支払期日後の売掛債権管理及び回収が中心になります。
Unpaidは、単に「まだ入金されていない」という状態ではありません。輸出者の資金繰り、銀行からの遡求、貨物の保管・返送・転売、信用保険への通知、追加出荷停止及び債権回収方針に直結する重要な実務上の警告です。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 別テーマとして整理する内容 |
|---|---|---|
| Unpaidの基本 | 貿易決済で予定された代金が支払われていない状態の意味 | 国内取引の一般的な売掛金管理及び会計処理 |
| D/P | 輸入者が支払わず、書類及び貨物を引き取らない場合の対応 | URC 522の全条文及び個別の取立指図の詳細 |
| D/A | 期限付手形の引受後に満期不払いとなった場合の対応 | 各国の手形法及び法的回収手続の詳細 |
| L/C | Discrepancy、銀行リスク及び送金規制等による支払拒絶・遅延 | UCP600全体、ISBP及び個別信用状条件の詳細 |
| L/G Negotiation | 保証状付買取後の不払いと銀行から輸出者への遡求 | 個別銀行の買取契約、保証状書式及び融資条件 |
| Open Account | 後払い取引における売掛債権の不払い及び与信管理 | 国際ファクタリング及びForfaitingの詳細契約 |
| Protest | 手形の支払拒絶又は引受拒絶を正式に証明する手続の要否 | 各国法に基づく公証、訴訟及び強制執行の詳細 |
| 貨物処理 | 未引取貨物の現地転売、返送、第三国転売、値引き及び廃棄 | 仕向国の輸入規制、廃棄法令及び個別通関手続 |
| 保険 | 貨物保険、輸出手形保険及び代金回収不能を対象とする貿易保険の区別 | 個別保険契約の引受、免責及び保険金請求手続 |
Unpaidが問題になる主な場面
| 取引形態 | Unpaidが問題になる場面 | 輸出者側の主なリスク | 最初に確認すべきこと |
|---|---|---|---|
| D/P | 輸入者が代金を支払わず、船積書類を受け取らない | 貨物滞留、保管料、デマレージ、返送費用、転売損及び代金未回収 | 貨物が未引取か、現地で止められるか、費用がいくら発生しているか |
| D/A | 輸入者が期限付手形を引き受けた後、満期日に支払わない | 貨物引渡し後の代金未回収、銀行からの遡求及び法的回収費用 | 満期日、支払拒絶理由、Protestの要否及び償還請求権 |
| L/C | Discrepancy、発行銀行リスク又は規制により支払われない | 支払拒絶、入金遅延、値引き要求及び取立扱いへの変更 | Discrepancy、拒絶通知、Waiver及び銀行の支払義務 |
| L/G Negotiation | 保証状付で買取後、発行銀行又は輸入者が支払を拒絶する | 買取銀行から輸出者への遡求 | L/G、買取条件、償還請求権及び支払拒絶理由 |
| Open Account | 請求書ベースの後払いで、支払期日に送金されない | 売掛債権の長期滞留、貸倒れ及び追加出荷による損失拡大 | 支払遅延理由、与信限度、支払意思及び信用保険通知 |
Unpaidが発生した場合、最初に決済条件を確認します。
同じ不払いでも、D/Pでは貨物の所在と処理、D/Aでは手形満期及びProtest、L/CではDiscrepancy及び銀行の支払義務、L/G Negotiationでは遡求、Open Accountでは与信管理及び債権回収が中心になります。
よくある誤解
| 誤解 | 実務上の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 銀行が買い取ったので代金回収は確定している | 償還請求権付き買取又はL/G Negotiationでは、最終決済されない場合に輸出者へ遡求されることがあります。 | 取立か買取か、遡求の有無及び保証状の内容を確認します。 |
| D/Pなら貨物を必ず止められる | Original B/Lを管理していれば一定の効果がありますが、Surrendered B/L、Sea Waybill又はAWBでは引渡しを止めにくい場合があります。 | 運送書類と現地のRelease状況を確認します。 |
| D/Aでは銀行が支払を保証している | D/Aは輸入者の手形引受と引換えに書類を渡す取立であり、取立銀行が当然に満期支払を保証する制度ではありません。 | 銀行保証又はAvalの有無を別途確認します。 |
| L/CがあればUnpaidは発生しない | Discrepancy、発行銀行リスク、送金規制、不可抗力又は信用状失効で支払われない場合があります。 | 船積前に信用状条件と銀行リスクを確認します。 |
| B/Lコピーを送れば輸入者は必ず残金を送金する | B/Lコピー確認後送金でも、輸入者が支払わない可能性は残ります。 | 着金前にOriginal B/L又はSurrender指示を渡さないようにします。 |
| Discrepancyが軽微なら銀行は必ず支払う | 信用状条件との不一致があれば、発行銀行が拒絶する可能性があります。 | 軽微かどうかを輸出者だけで判断しません。 |
| ProtestはすべてのD/A不払いで自動的に行われる | Protestの要否は取立指図、準拠法、銀行実務及び保険条件によります。 | 期限が短い場合があるため、直ちに銀行へ確認します。 |
| 貨物保険で代金不払いも補償される | 通常の貨物保険は輸送中の貨物の物的損害を対象とします。 | 代金未回収には貿易保険、保証又はファクタリングを検討します。 |
| 少し待てば支払われるので保険通知は後でよい | 保険契約によっては支払遅延又は危険発生を認識した段階で通知が必要です。 | 正式な貸倒れ確定まで待たないようにします。 |
| 輸入者と分割払いを合意すれば保険会社への確認は不要である | 支払猶予、債務減免又は和解は保険者の承認を必要とする場合があります。 | 債権条件を変更する前に保険会社へ確認します。 |
D/P取引におけるUnpaid
D/PはDocuments against Paymentの略で、輸入者が代金を支払うことと引換えに、銀行から商業書類を受け取る取立方式です。
輸入者が支払わない場合、取立銀行は原則として書類を輸入者へ引き渡しません。
そのため、Original B/Lが銀行管理下にあり、貨物も未引取であれば、輸出者は一定程度貨物をコントロールできる可能性があります。
ただし、銀行は原則として貨物の保管、付保又は処分を当然に引き受けるものではありません。
輸入者が書類及び貨物を引き取らない場合、輸出者は現地代理店、船会社、NVOCC、倉庫及び銀行と連携し、貨物の所在及び引渡状況を確認します。
D/PのUnpaidでは、代金回収と並行して、保管料、デマレージ、コンテナ関連費用、返送費用及び貨物価値の低下を管理する必要があります。
D/P Unpaid発生時の貨物処理
| 処理方法 | 検討する場面 | 確認事項 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 現地転売 | 一般商品で、仕向国に別の買主が存在する場合 | 輸入規制、通関状況、販売価格、所有権及び決済条件 | 専用品、ブランド品、規制品及びライセンス品は転売困難な場合があります。 |
| 返送 | 輸出者が貨物を再利用でき、現地販売が困難な場合 | 返送運賃、再輸入手続、梱包状態、保険及び貨物価値 | 返送費用が貨物価値を上回る場合があります。 |
| 第三国転売 | 仕向国では販売困難だが、別の市場で販売可能な場合 | 再輸出手続、第三国規制、追加運賃、買主信用及び保険 | 手続中も保管料が増加します。 |
| 値引き販売 | 早期処分によって損失拡大を抑えられる場合 | 値引き幅、転売先、信用保険、回収額及び残存債権 | 保険者の承認なく値引きすると保険金に影響する場合があります。 |
| 廃棄・処分 | 貨物価値が低く、保管又は返送費用が過大な場合 | 現地法令、危険品規制、廃棄費用、所有権及び保険通知 | 輸出者だけで無断処分せず、関係者の承認を取得します。 |
一般には、現地転売、返送、第三国転売、値引き販売、廃棄の順に検討されることがありますが、必ずこの順序になるわけではありません。
生鮮品、季節商品、危険品、温度管理品、専用品又は規制品では、時間の経過による価値低下が大きいため、早期判断が必要です。
デマレージ・ディテンション・保管料の確認
D/PでUnpaidが発生すると、貨物が仕向地で滞留し、複数の費用が並行して増加する可能性があります。
デマレージは、一般にコンテナ又は貨物が港湾・ターミナル内でFree Timeを超えて留まる場合に発生する費用です。
ディテンションは、一般にコンテナをターミナル外へ搬出した後、所定期間内に返却しない場合に発生する費用です。
ただし、費用名称及び計算方法は船会社、ターミナル、国及び契約によって異なります。
Unpaid発生時には、少なくとも次の費用を日次で確認します。
- ターミナル保管料
- デマレージ
- ディテンション
- 倉庫保管料
- 冷凍・冷蔵又は電源使用料
- 危険品追加費用
- 通関及び再輸出費用
- 現地代理店費用
- 返送又は転売手配費用
貨物価値より滞留費用が大きくなる可能性があるため、輸入者への督促だけを続け、貨物処理を保留することは危険です。
D/A取引におけるUnpaid
D/AはDocuments against Acceptanceの略で、輸入者が期限付手形を引き受けることと引換えに、銀行から商業書類を受け取る取立方式です。
輸入者は手形の満期日前に貨物を受領し、使用又は販売できる場合があります。
満期日に輸入者が支払わない状態が、D/Aにおける典型的なUnpaidです。
D/Pと異なり、貨物がすでに輸入者へ引き渡されていることが多いため、Unpaid発生後にOriginal B/Lによる貨物管理へ戻すことは通常困難です。
輸出者は、支払拒絶理由、輸入者の資金状態、保証人、担保、手形上の権利、銀行買取の有無、Protest及び保険通知を確認します。
銀行が手形を買い取っていた場合でも、償還請求権付きであれば、輸入者の不払い後に銀行から輸出者へ遡求される可能性があります。
Protestとの関係
手形の引受又は支払が拒絶された状態は、Dishonourと呼ばれることがあります。
Protestとは、手形が引き受けられなかった又は支払われなかった事実を、所定の方法で公的に証明する手続又は証書です。
URC 522では、Protestは独立した条項として扱われています。
ただし、取立銀行がすべての不払いについて自動的にProtestを行うわけではありません。
Protestの要否は、取立指図、手形の準拠法、仕向国の法令、銀行実務、遡求権の保全及び保険条件によって異なります。
Protestが必要な場合、期限が短く設定されていることがあります。満期不払いを確認した後に長期間待つと、手形上の権利、保険請求又は遡求に影響する可能性があります。
D/AのUnpaidが発生した場合は、直ちに銀行へ次の事項を確認します。
- 正式な支払拒絶通知が出ているか
- Protestが必要か
- Protest期限はいつか
- 誰がProtestを手配するか
- 費用は誰が負担するか
- 手形原本はどこにあるか
- 保険会社への通知が必要か
L/C取引におけるUnpaid
L/Cでは、発行銀行が、信用状条件に合致する提示に対して支払、引受又は買取に関する信用状上の義務を負います。
D/P又はD/Aよりも代金回収の安全性を高めることができますが、Unpaidが完全になくなるわけではありません。
代表的な原因には、次のものがあります。
- 船積書類のDiscrepancy
- 信用状の失効
- 提示期限超過
- 発行銀行の信用不安又は営業停止
- 発行国の送金規制又は外貨不足
- 金融制裁
- 不可抗力による銀行業務中断
- 不正又は詐欺の疑い
Unpaid通知を受けた場合は、「輸入者が支払わない」という問題なのか、「発行銀行が信用状上の支払義務を負わないと主張している」のかを区別します。
UnpaidとDiscrepancyの関係
Discrepancyとは、信用状条件と提示された書類との不一致です。
Discrepancyがある場合、発行銀行はUCP600及び信用状条件に基づいて提示を拒絶する可能性があります。
輸入者がWaiverを行い、発行銀行がそのWaiverを受け入れれば支払われる場合がありますが、輸入者のWaiverだけで発行銀行の対応が常に確定するとは限りません。
輸入者の信用状態が悪化している場合、Discrepancyが支払拒絶又は値引き交渉の材料として利用されることがあります。
船積前に、次の書類条件を確認します。
- B/L又はAWB
- Commercial Invoice
- Packing List
- 保険証券又は保険証明書
- 原産地証明書
- 検査証明書
- 重量・数量証明書
- 船積通知
- 提示期限及び有効期限
対応できない条件がある場合は、船積前にAmendmentを依頼します。
L/G NegotiationにおけるUnpaid
L/G Negotiationとは、信用状取引で提示書類にDiscrepancyがある場合に、輸出者が銀行へ保証状を差し入れ、銀行へ買取を依頼する実務上の取扱いです。
L/G Negotiationという名称及び手続は、国際的に統一された単一制度ではなく、銀行の買取契約及び保証状の内容によって異なります。
銀行は、発行銀行から最終的に支払われることを無条件に保証して資金化しているのではなく、輸出者の保証又は償還義務を前提に資金を交付している場合があります。
発行銀行がDiscrepancyを理由に支払を拒絶し、輸入者からWaiverも取得できない場合、買取銀行は輸出者へ返済を求める可能性があります。
この銀行から輸出者への請求が遡求又はRecourseです。
L/G Negotiationを利用する場合は、次の事項を確認します。
- 買取か取立か
- 償還請求権付きか
- 保証状の対象範囲
- 返済期限
- 利息及び費用
- 発行銀行の拒絶理由
- 輸入者によるWaiverの可能性
- 信用保険又は輸出手形保険との関係
L/G Negotiation後に遡求を受けた場合
| 対応 | 確認内容 | 主な確認資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 輸入者への直接請求 | 支払拒絶理由及びWaiverの可否 | 銀行拒絶通知、Invoice、売買契約 | Discrepancyが値引き交渉に利用される場合があります。 |
| 発行銀行への確認 | 拒絶理由、拒絶期限及び書類返却 | SWIFT、拒絶通知、提示書類 | 拒絶通知の適時性及び具体性も確認します。 |
| 買取銀行との協議 | 遡求額、利息、返済期限及び担保 | 買取契約、L/G、計算書 | 銀行への返済と輸入者への請求を分けて管理します。 |
| 保険通知 | 保険対象、通知期限及び必要書類 | 保険契約、買取通知、拒絶通知 | 遡求確定まで通知を待たないようにします。 |
| 追加出荷停止 | 同一輸入者への未決済債権及び追加注文 | 売掛一覧、受注残、船積予定 | 営業部門を含めて即時共有します。 |
Open Account取引におけるUnpaid
Open Accountは、輸出者が先に貨物を出荷し、Invoiceに定めた支払期日に輸入者が後払いする取引です。
銀行が船積書類の引渡しを通じて決済を管理する度合いは、一般にL/C、D/P又はD/Aより低くなります。
支払期日に輸入者から送金されなければ、その金額は売掛債権のUnpaidとなります。
Open Accountでは、次の管理が重要です。
- 輸入者ごとの与信限度額
- 支払サイト
- 過去の支払実績
- 延滞日数
- 未決済Invoiceの総額
- 追加出荷の停止基準
- 信用保険の限度額
- 保証又は親会社保証
- ファクタリングの利用
一度の軽微な遅延だけで取引停止が必要とは限りませんが、遅延の常態化、連絡不能、支払約束の反復不履行、分割払い要請又は銀行口座の頻繁な変更は、信用悪化の兆候となる場合があります。
運送書類と貨物引渡しの関係
| 運送書類 | 貨物を止められる可能性 | Unpaid時の主な注意点 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| Original B/L | 比較的高い | 原本を輸出者又は銀行が保持していれば、引渡しを一定程度管理できる可能性があります。 | 代金決済条件を満たす前に原本を引き渡さないよう管理します。 |
| Surrendered B/L | 低い | 元地でSurrender処理が完了すると、仕向地でOriginal B/Lなしに引渡しが進む場合があります。 | 着金前のSurrender指示を避けます。 |
| Sea Waybill | 低い | Original B/Lの呈示を前提としないため、原本保有による引渡管理ができません。 | 後払い又はOpen Accountとの組合せを慎重に判断します。 |
| Air Waybill | 低い | 航空貨物は到着が早く、AWBは通常、流通性のある権利証券ではありません。 | 高額貨物又は新規取引では前払い、保証又は信用保険を検討します。 |
| 電子B/L | システムによる | 権利管理、移転及びSurrenderの方法がプラットフォームごとに異なります。 | アクセス権、Controlの移転及び銀行利用可否を確認します。 |
Original B/Lを保持している場合でも、貨物を無期限に止められるわけではありません。
保管料の増加、現地法令による競売又は処分、腐敗、危険品規制及び税関手続によって、貨物管理が困難になることがあります。
Unpaidと銀行の役割
D/P及びD/Aでは、銀行は取立指図に従い、書類の提示、支払又は引受の確認及び代金送金を行います。
輸入者が支払わない場合、取立銀行が当然に自己資金で代金を支払うわけではありません。
また、銀行は原則として貨物そのものを検査し、品質又は数量を保証するものではありません。
L/Cでは、発行銀行及び確認銀行が信用状上の義務を負いますが、信用状条件に合致する提示が前提となります。
銀行が輸出者へ資金を交付していても、それが取立前の融資、償還請求権付き買取又はL/G Negotiationであれば、最終的な支払リスクが輸出者に残る場合があります。
Unpaid発生時には、銀行が関与しているという事実だけでなく、銀行の法的・契約上の地位を確認します。
Unpaid発生時の初動判断フロー
| 段階 | 確認事項 | 判断のポイント | 次の対応 |
|---|---|---|---|
| 1.決済条件の特定 | D/P、D/A、L/C、L/G Negotiation又はOpen Accountのどれか | 銀行・書類・貨物の関係がどうなっているか | 条件別の担当者及び初動手続を決めます。 |
| 2.支払期日の確認 | 支払期日、満期日、猶予期間及び入金記録 | 正式なUnpaidか、単なる銀行処理中か | 銀行及び輸入者へ着金状況を確認します。 |
| 3.不払い理由の確認 | 資金不足、Discrepancy、規制、銀行停止又は商事紛争 | 信用危険か、非常危険か、書類問題か | 証拠を取得し、問題別に担当を分けます。 |
| 4.貨物状況の確認 | 未出荷、輸送中、港湾滞留、引渡済み又は転売済みか | 貨物を止められるか、費用が増加しているか | 船会社、NVOCC及び代理店へHoldを指示します。 |
| 5.銀行関係の確認 | 取立、買取、遡求、保証、拒絶通知及び書類所在 | 銀行から輸出者へ返済請求が来るか | 銀行との期限及び金額を確定します。 |
| 6.Protest・法的手続 | Protest、支払拒絶証明、準拠法及び期限 | 権利保全のため即時手続が必要か | 銀行及び専門家へ確認します。 |
| 7.保険通知 | 保険契約、事故通知期限、与信限度及び免責 | 危険発生通知が必要か | 正式な貸倒れ確定前でも通知します。 |
| 8.損害拡大防止 | 追加出荷、保管料、値下がり及び回収費用 | 待つことによって損害が増えるか | 追加出荷停止及び貨物処理を決定します。 |
| 9.回収方針 | 一括支払、分割払い、保証、相殺、訴訟又は債権譲渡 | 回収可能性と費用が釣り合うか | 期限、条件及び承認者を明記した回収計画を作成します。 |
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| D/Pで輸入者が書類及び貨物を引き取らない | 資金不足、価格下落又は販売先喪失 | 取立指図、B/L、Arrival Notice、費用明細 | 貨物を止められるか、現地転売又は返送が可能か | 貨物をHoldし、費用及び処理案を日次で確認します。 |
| D/PだがSurrendered B/Lで貨物が引き渡された | 決済条件と運送書類の不整合 | B/L、Surrender指示、引渡記録、銀行書類 | 誰が着金前にSurrenderを指示したか | 追加引渡しを止め、輸入者へ直接請求します。 |
| D/Aの満期日に手形が支払われない | 輸入者の資金繰り悪化 | 手形、満期通知、銀行のDishonour通知 | Protest、遡求及び保険通知が必要か | 銀行へ期限を確認し、直ちに保険通知を検討します。 |
| D/A満期後に輸入者が分割払いを求めた | 一括支払能力の不足 | 支払提案、財務資料、保険契約 | 条件変更が保険又は手形上の権利に影響するか | 合意前に銀行及び保険会社へ確認します。 |
| L/C書類がDiscrepancyで拒絶された | B/L、Invoice又は保険書類の不一致 | 信用状、提示書類、拒絶通知、SWIFT | 拒絶が適時かつ具体的か、Waiverが可能か | 発行銀行及び輸入者へWaiverを求めます。 |
| L/G Negotiation後に銀行から遡求された | 発行銀行の支払拒絶 | L/G、買取契約、拒絶通知、計算書 | 償還請求権及び返済額が契約に合致するか | 返済期限を確認し、輸入者請求と保険通知を行います。 |
| Open Accountで支払約束が繰り返し延期された | 輸入者の信用悪化 | Invoice、督促記録、支払約束、売掛一覧 | 一時的遅延か、実質的な支払不能か | 追加出荷を停止し、具体的な回収期限を設定します。 |
| 送金規制により輸入者が支払えない | 外貨送金規制又は外貨不足 | 銀行通知、政府発表、送金申請記録 | 輸入者の信用危険か、非常危険か | 信用保険へ通知し、代替送金方法を銀行と協議します。 |
| 未引取貨物が保管中に損傷した | 長期保管、温度管理不良又は荷役事故 | 保険証券、Survey Report、倉庫記録、写真 | Unpaidとは別に貨物保険事故が成立するか | 貨物保険へ事故通知し、代金回収問題と分けて処理します。 |
| 保険通知期限を経過した | L/C又は銀行買取があるため安全と判断した | 保険契約、銀行通知、延滞記録、社内記録 | 通知遅延が補償に影響するか | 直ちに保険者へ事情を説明し、必要資料を提出します。 |
具体例1:D/Pで生鮮品の転売も返送も困難となった場合
輸出者が生鮮食品をD/P条件で輸出しましたが、貨物到着後、輸入者が市場価格の下落を理由に代金を支払わず、書類を引き取りませんでした。
Original B/Lは銀行が保持しており、貨物はまだ輸入者へ引き渡されていません。
この段階では、代金未回収だけでなく、冷蔵保管料、コンテナ費用、品質低下及び廃棄期限が問題になります。
一般貨物であれば現地転売又は返送を検討できますが、生鮮品では買主探索中にも品質が低下します。返送に必要な期間中に商品価値がなくなる可能性もあります。
輸出者は、現地転売価格、即時値引きによる回収額、廃棄費用及び保険への影響を比較し、最も損失が小さい方法を早急に決定する必要があります。
輸入者への支払請求だけを続け、貨物処理を先送りすることが、最も大きな損失につながる場合があります。
具体例2:L/G Negotiation後に発行銀行から支払を拒絶された場合
輸出者がL/C条件に基づいて貨物を船積みしましたが、B/Lの日付にDiscrepancyがありました。
輸出者は買取銀行へL/Gを差し入れ、書類の買取を受けました。
その後、発行銀行がDiscrepancyを理由に支払を拒絶し、輸入者もWaiverを行いませんでした。
買取銀行は、L/G及び買取契約に基づき、買取代金、利息及び費用を輸出者へ遡求しました。
この場合、「銀行が買取済みである」という事実だけでは、輸出者の代金回収が確定したことになりません。
輸出者は、発行銀行の拒絶通知が適時かつ具体的であるか、輸入者からWaiverを取得できるか、銀行の遡求額が契約に合致するか、信用保険へ通知すべきかを並行して確認します。
具体例3:D/A満期不払いでProtestの要否が問題となった場合
輸入者がD/A条件で期限付手形を引き受け、貨物を受領しましたが、満期日に手形代金を支払いませんでした。
輸出者は輸入者から「翌月には支払う」と説明を受け、銀行への連絡を数日間保留しました。
しかし、取立指図及び手形準拠法上、遡求権を保全するために一定期間内のProtestが必要となる可能性がありました。
Protestが必要かどうかは、すべてのD/A取引で同一ではありません。
重要なのは、輸入者の支払約束を待つ前に、銀行へProtestの要否、期限及び保険通知を確認することです。
支払猶予又は分割払いを合意する場合も、手形上の権利、銀行の遡求及び保険条件への影響を確認してから行います。
具体例4:Open Accountの延滞中に追加出荷を続けた場合
輸出者は長年取引している輸入者へ、60日後払いのOpen Account条件で継続的に輸出していました。
一件目のInvoiceが支払期日を30日経過しましたが、営業担当者は「長年の顧客だから問題ない」と判断し、追加出荷を続けました。
その後、二件目及び三件目も支払われず、未回収額が当初の三倍になりました。
Unpaid発生時の追加出荷停止基準がなかったことが、損害拡大の原因です。
Open Accountでは、支払遅延日数、未決済総額、与信限度額及び支払約束の履行状況に基づく機械的な停止基準を設定する必要があります。
長年の取引実績は重要な与信情報ですが、現在の支払能力を保証するものではありません。
発生前・発生時・発生後の確認
| 時点 | 主な確認事項 | 実務上の目的 | 主な対応 |
|---|---|---|---|
| 発生前 | 信用状態、決済条件、支払サイト、運送書類、保険、取立又は買取 | Unpaidの発生可能性及び損失額を抑える | 与信限度、前受金、L/C、保証及び保険を設定します。 |
| 発生時 | 支払期日、拒絶理由、貨物所在、銀行通知、Protest及び保険期限 | 通知漏れ、証拠不足及び費用増大を防ぐ | 貨物Hold、保険通知及び追加出荷停止を実施します。 |
| 発生後 | 回収交渉、分割払い、保証、貨物処理、訴訟及び保険請求 | 回収額を最大化し、追加損失を防ぐ | 承認された回収計画に基づいて実行します。 |
貨物保険との関係
Unpaidの中心は、代金回収及び信用リスクです。
通常の貨物保険は、輸送中の貨物の滅失又は損傷を対象とし、輸入者が代金を支払わないこと自体を補償するものではありません。
貨物が無事に到着しているにもかかわらず、輸入者が支払わない場合は、貨物保険ではなく、売掛債権及び貿易決済の問題です。
ただし、D/Pで未引取となった貨物が、港湾又は倉庫で保管中に損傷する場合があります。
この場合、次の二つを分けて処理します。
- 輸入者の不払いによる代金回収問題
- 保管中の事故による貨物の物的損害
貨物保険上は、保険期間、保管場所、輸送の通常過程が継続しているか、保険条件上の危険変更又は保管延長があるかを確認します。
輸出手形保険・輸出取引信用保険等との関係
輸出手形保険は、一般に荷為替手形を買い取った銀行を被保険者とする制度です。
輸出者が直接の被保険者となる信用保険とは、契約構造及び保険金請求主体が異なります。
銀行が輸出手形保険を利用していても、銀行と輸出者との買取契約上の遡求権が当然に消滅するとは限りません。
輸出取引の代金回収不能を対象とする貿易保険又は民間信用保険では、輸入者の倒産、長期不払い、送金規制、戦争、政変その他の危険が対象となる場合があります。
| リスク | 検討される手段 | 主な被保険者・利用者 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| D/A満期不払い | 輸出手形保険、貿易保険、信用保険 | 銀行又は輸出者 | Protest、銀行通知、事故通知及び遡求条件を確認します。 |
| Open Account不払い | 貿易保険、民間信用保険、国際ファクタリング | 輸出者又はファクター | 与信限度額、延滞通知及び回収努力義務を確認します。 |
| L/G Negotiation後の遡求 | 銀行との協議、貿易保険、信用保険 | 契約による | L/G及び買取契約上の遡求と保険対象を分けて確認します。 |
| 長期支払サイト | Forfaiting、ファクタリング、保証、信用保険 | 輸出者、金融機関又はファクター | 遡求の有無、保証人及び対象債権を確認します。 |
| 送金規制・政変 | 非常危険を対象とする貿易保険 | 輸出者又は金融機関 | 対象国、事故原因及び通知期限を確認します。 |
専門家へ確認すべき場面
- D/A満期不払いでProtestの要否又は期限が不明な場合
- 銀行からL/G Negotiation又は買取代金の遡求を受けた場合
- 発行銀行の拒絶通知がUCP600上適切か争いがある場合
- 輸入者の倒産、清算、再生又は差押えが開始された場合
- 未引取貨物の転売、返送又は廃棄に現地法令上の問題がある場合
- Original B/Lがあるにもかかわらず貨物が引き渡された場合
- 輸入者との分割払い又は債務減免が保険条件に影響する場合
- 送金規制、制裁又は政変による支払停止が発生した場合
- 貨物損害と代金不払いが同時に発生した場合
案件に応じて、取立銀行、買取銀行、発行銀行、船会社、NVOCC、海外代理店、信用保険者、貨物保険者、弁護士及び現地回収機関へ確認します。
Unpaidを防ぐための判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 取引開始前 | 営業、審査担当、輸入者 | 信用状態、会社実在性、支払実績及び取引国リスク | 前受金、L/C、保証又は取引限度を設定します。 |
| 決済条件決定時 | 輸出者、輸入者、銀行 | D/P、D/A、L/C、T/T又はOpen Accountのどれか | リスクに合わない条件は変更します。 |
| 銀行取引確認時 | 取立銀行、買取銀行 | 取立か買取か、償還請求権及びL/Gの有無 | 遡求条件を書面で確認します。 |
| L/C受領時 | 通知銀行、書類担当 | 対応不能条件、期限、提示場所及び必要書類 | 船積前にAmendmentを依頼します。 |
| 運送書類決定時 | 輸出者、フォワーダー、NVOCC | Original B/L、Surrendered B/L、Sea Waybill又はAWB | 決済前に貨物が引き渡されない方式へ変更します。 |
| 船積前 | 営業、管理部門、銀行 | 前受金、与信限度、未回収残高及び保険限度 | 限度超過の場合は船積みを停止します。 |
| 書類提示時 | 銀行、書類担当 | Discrepancy、提示期限及び銀行受領記録 | 不備を修正し、受領証拠を保存します。 |
| 支払期日前 | 輸入者、銀行、営業 | 支払予定、送金準備、満期日及び資金状況 | 遅延兆候があれば追加出荷を保留します。 |
| Unpaid発生時 | 輸入者、銀行、代理店 | 不払い理由、貨物所在、書類所在及び費用 | 貨物Hold、督促及び証拠保全を行います。 |
| 手形不払い時 | 取立銀行、専門家 | Dishonour通知、Protest、期限及び遡求 | 権利保全手続を直ちに実施します。 |
| 保険確認時 | 保険会社、取扱機関 | 事故通知、与信限度、回収努力及び条件変更 | 分割払い等を合意する前に承認を得ます。 |
| 回収方針決定時 | 管理部門、弁護士、回収機関 | 回収額、費用、担保、分割払い及び法的手続 | 期限と責任者を定めた回収計画を承認します。 |
まとめ
Unpaidとは、貿易決済において、予定された支払期日又は決済段階で代金が支払われていない状態です。
D/P、D/A、L/C、L/G Negotiation及びOpen Accountでは、Unpaidの意味及び初動対応が異なります。
D/Pでは、輸入者が支払わず書類及び貨物を引き取らないことが中心となるため、代金請求だけでなく、現地転売、返送、第三国転売、値引き又は廃棄を早急に検討します。
D/Aでは、輸入者が貨物を受領した後の満期不払いが中心となります。Protest、銀行の遡求、手形上の権利及び信用保険への通知を確認します。
L/Cでは、Discrepancy、信用状失効、銀行リスク、送金規制、不可抗力及び制裁によって支払われない場合があります。
L/G Negotiationでは、銀行が輸出者へ資金を交付していても、発行銀行から最終的に支払われなければ、輸出者へ遡求される可能性があります。
Open Accountでは、売掛債権の与信限度、延滞日数及び追加出荷停止基準が重要です。
運送書類の種類もUnpaid時の貨物管理に影響します。Original B/L、Surrendered B/L、Sea Waybill、AWB及び電子B/Lでは、貨物引渡しを止められる可能性が異なります。
通常の貨物保険は代金不払いを補償しません。代金回収不能については、輸出手形保険、貿易保険、信用保険、保証、国際ファクタリング又はForfaitingを別途確認します。
Unpaid発生時には、決済条件、支払期日、不払い理由、取立又は買取、償還請求権、Discrepancy、Protest、貨物所在、費用、保険通知及び追加出荷を同時に確認する必要があります。
本記事は一般的な実務情報を整理したものであり、個別取引における銀行の支払義務、手形上の権利、Protestの要否、債権回収、貨物処分又は保険金支払を保証するものではありません。実際の対応は、売買契約、信用状、取立指図、買取契約、手形、運送書類、準拠法及び保険契約に基づいて判断してください。
