水濡れ・湿気・結露損害と貨物保険特別約款

Wetting, Moisture and Condensation Damage in Cargo Insurance

水濡れ・湿気・結露損害とは

水濡れ・湿気・結露損害とは、貨物が輸送中又は保管中に水分の影響を受け、濡れ、錆、カビ、変色、変質、包装劣化、臭気、固着、腐敗又は販売不能等が発生する損害をいいます。

貨物保険では、貨物が濡れているという結果だけでは、補償対象になるかどうかを判断できません。

外部から雨水、海水又は河川水等が侵入したのか、コンテナ内部で結露したのか、貨物や木材パレットが持ち込んだ水分に起因するのか、梱包又は防湿措置が不十分であったのか、船積前から品質問題が存在していたのかを切り分ける必要があります。

さらに、適用される保険条件がInstitute Cargo Clauses (A)、Institute Cargo Clauses (B)又はInstitute Cargo Clauses (C)のいずれであるか、水濡れ、雨淡水濡れ、汗濡れ、錆、カビ等に関する特別約款が付帯されているかによっても、補償範囲は変わります。

水濡れ損害」という損害名だけで判断せず、原因、発生区間、適用保険条件、免責及び特別約款の文言を順番に確認することが基本です。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他記事で扱う内容
水濡れ損害 雨水、海水、河川水、倉庫漏水、トラック浸水、コンテナ破損等による外部からの水侵入を整理します。 水分・油汚染事故のサーベイと証拠保全では、現物確認、サンプル採取及びChain of Custodyを詳しく扱います。
結露損害 Container Sweat、Container Rain及びCargo Sweatを区別し、発生メカニズムと保険上の確認点を整理します。 冷凍・冷蔵貨物の貨物海上保険では、温度管理貨物固有の結露及び温度逸脱を扱います。
ICC(A)・(B)・(C) 水分損害に関係する基本的な補償範囲と列挙危険の違いを比較します。 各Institute Cargo Clausesの保険期間、戦争危険、ストライキ危険等の全体構造は個別記事で扱います。
貨物保険特別約款 水濡れ、雨淡水濡れ、汗濡れ、錆、カビ等に関する補償拡張を確認する際の判断項目を整理します。 個々の保険会社が使用する特別約款の正式な文言及び引受条件は、保険証券又は保険会社への照会で確認します。
梱包不備 ICC 2009 Clause 4.3と、防湿梱包、乾燥剤、コンテナ内積付けとの関係を整理します。 梱包不備・防湿措置と貨物保険では、梱包責任及び梱包仕様の詳細を扱います。
固有の瑕疵 ICC 2009 Clause 4.4及び貨物固有の性質と水分損害との関係を整理します。 品質変化・自然劣化・固有の瑕疵と貨物保険では、品質変化との境界を詳しく扱います。
海水濡れと淡水濡れ 事故原因、責任区間及び求償先を確認するための基本的な切り分けを説明します。 科学分析の方法、検出限界及びサンプル管理は、サーベイと証拠保全の記事で扱います。
フォワーダーの関与 通知、保険手配、サーベイ調整、梱包指示及び求償協力の範囲を標準五分類で整理します。 個別の賠償責任は、契約、約款、委任内容、過失及び因果関係に基づいて別途判断します。
事故初動 写真撮影、コンテナ確認、関係者通知及び保険会社への相談等の基本対応を扱います。 Joint Survey、サンプル分割、廃棄前確認等の詳細手順は、サーベイと証拠保全の記事で扱います。

貨物保険特別約款を確認する目的

貨物保険特別約款は、基本となるInstitute Cargo Clausesの補償範囲を拡張し、限定し、又は特定貨物や特定危険に合わせて条件を調整するために使用されます。

ただし、「水濡れ特別約款」「汗濡れ特別約款」等の名称が付いていれば、あらゆる水分損害が補償されるとは限りません。

特別約款によっては、外部からの雨水侵入のみを対象とし、コンテナ内結露を対象外とする場合があります。反対に、結露、発汗、錆又はカビを一定条件の下で補償する場合でも、梱包不備、固有の瑕疵、船積前損害、通常の自然劣化等の免責が残ることがあります。

したがって、特別約款の確認では、約款名ではなく、対象となる原因、対象となる損害、補償期間、免責、自己負担額、貨物別条件及び事故時の証明要件を確認する必要があります。

水濡れ・湿気・結露損害の基本分類

類型 発生メカニズム 保険上の主な見方 主な確認資料 責任関係の確認先
外部からの水侵入 雨水、海水、河川水、倉庫漏水、トラック浸水又はコンテナ破損等により、外部から水が入るものです。 保険期間中の偶然な外部事故として整理できる可能性があります。 コンテナ写真、漏水箇所、濡れ方、事故記録、気象記録 船会社、倉庫業者、トラック業者、港湾作業者
Container Sweat コンテナ内の湿気が冷えた内壁又は天井等で結露する状態です。 外部事故とは限らず、貨物の含水率、梱包、防湿措置及び航路条件を確認します。 内壁・天井写真、温湿度記録、貨物配置、乾燥剤記録 荷主、梱包業者、バンニング業者、フォワーダー
Container Rain コンテナ天井等に生じた結露水が水滴となり、貨物上面へ滴下するものです。 結露原因と外部からの水侵入を区別し、特別約款の対象範囲を確認します。 天井水滴、貨物上面の滴下痕、開扉直後の写真 荷主、バンニング業者、コンテナ管理者
Cargo Sweat 冷たい貨物表面に暖かく湿った空気が接触し、貨物表面に結露するものです。 貨物温度、露点、開梱時期、保管環境及び貨物固有の性質を確認します。 貨物温度、露点、温湿度記録、開梱記録 荷主、倉庫業者、配送業者、品質管理担当者
湿気による品質変化 貨物、木材パレット、梱包材又は保管環境の湿気により、カビ、錆、変色等が進行するものです。 固有の瑕疵、自然劣化、梱包不備又は保管環境の問題として整理されることがあります。 含水率、梱包仕様、保管記録、品質検査結果 荷主、メーカー、梱包業者、倉庫業者
船積前からの品質問題 出荷前から水分、カビ、変色、錆又は劣化が存在していたものです。 保険期間中の事故ではなく、船積前損害又は品質不良として問題になります。 出荷前写真、検品記録、製造ロット、保管履歴 荷主、メーカー、売主、出荷元

Container Sweat、Container Rain及びCargo Sweatは、実務上、結露の発生位置と濡れ方を整理するために使用される区分です。これらが保険約款上の独立した列挙危険として扱われるとは限りません。

ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)と水分損害の比較

保険条件 外部からの水侵入 雨水・倉庫漏水 結露・汗濡れ 主な確認点
ICC(A) 保険期間中の偶然な損害として立証できる場合は、補償対象となる可能性があります。 偶然な外部事故であり、免責に該当しないかを確認します。 損害発生の偶然性、近因、Clause 4.3及びClause 4.4等を確認します。 Clause 1、Clause 4.3、Clause 4.4、Clause 5及び付帯特別約款
ICC(B) Clause 1.2.3では、海、湖又は河川水が船舶、コンテナ又は保管場所等へ侵入したことによる損害が列挙されています。 一般的な雨水侵入又は倉庫漏水が、当然にClause 1.2.3へ含まれるとは限りません。 結露又は汗濡れは、通常、Clause 1.2.3の水侵入とは分けて検討します。 水の種類、侵入経路、列挙危険との因果関係及び特別約款
ICC(C) 海、湖又は河川水の侵入は、ICC(C)の独立した列挙危険には含まれていません。 雨水又は漏水そのものは、原則として独立した列挙危険ではありません。 結露又は汗濡れも、原則として独立した列挙危険ではありません。 火災、座礁、衝突等の列挙危険との因果関係及び補償拡張の有無
特別約款付帯 対象となる水の種類、侵入原因及び発生区間を約款文言により確認します。 雨水、淡水、倉庫漏水等が明示されているかを確認します。 結露、汗濡れ、錆又はカビまで対象に含むかを確認します。 対象危険、対象損害、残る免責、自己負担額、保険期間及び証明資料

ICC(A)は一般に広い補償条件ですが、「あらゆる原因による損害を無条件で補償する保険」ではありません。

被保険者側では、保険期間中に貨物へ偶然な損害が発生したことを示す必要があります。そのうえで、保険会社は、梱包不備、固有の瑕疵、遅延、通常の損耗その他の免責が適用されるかを確認します。

ICC(A)における水分損害

ICC(A) Clause 1は、Clause 4、Clause 5、Clause 6及びClause 7等で除外される損害を除き、被保険貨物の滅失又は損傷の危険を広く対象とする構造です。

したがって、コンテナの穴あき、ドアガスケットの破損、倉庫屋根からの突発的な漏水、トラック事故による浸水等が保険期間中に発生し、それによって貨物が損傷した場合は、補償対象となる可能性があります。

一方、貨物や木材パレットが持ち込んだ水分によって通常の輸送中に結露が生じた場合、防湿措置が貨物の性質に対して明らかに不足していた場合、貨物自体の吸湿性や発汗性によって損害が生じた場合には、Clause 4.3又はClause 4.4等が問題になります。

外部事故と貨物固有の性質が同時に関係する場合は、どの原因が損害の近因であるか、又は複数原因がどのように損害へ寄与したかを確認します。

ICC(B)における水侵入危険

ICC(B) Clause 1.2.3では、海、湖又は河川水が船舶、艀、船倉、輸送用具、コンテナ又は保管場所へ侵入したことによる損害が列挙危険とされています。

このため、港湾洪水による河川水の侵入、海水のコンテナ内への侵入、船倉への海水浸入等では、Clause 1.2.3との関係を確認します。

ただし、単に貨物が濡れているだけでは、水が海、湖又は河川水であることや、その水が対象場所へ侵入したことを確認できません。

また、雨水、配管水、倉庫屋根からの漏水又は洗浄水等が、当然にClause 1.2.3の列挙危険へ含まれるとは限りません。保険証券、付帯特別約款及び事故原因を確認する必要があります。

ICC(C)と水濡れ特別約款

ICC(C)は、火災、爆発、座礁、沈没、転覆、陸上輸送用具の転覆、衝突、避難港での荷卸し、共同海損犠牲及び投荷等の列挙危険を中心とする条件です。

ICC(B) Clause 1.2.3にある海、湖又は河川水の侵入は、ICC(C)には同じ形で列挙されていません。

したがって、ICC(C)で手配された貨物について、水濡れ、雨水侵入、結露、錆又はカビ等を補償する必要がある場合は、特別約款による補償拡張の有無が重要になります。

ただし、ICC(C)であっても、座礁、沈没、衝突等の列挙危険によって水分損害が発生した場合には、その列挙危険との因果関係を個別に確認します。

貨物保険特別約款で確認すべき事項

確認項目 確認する内容 水分損害での具体例 注意点
対象となる危険 どの原因による水分損害を補償するかを確認します。 雨水、淡水、海水、結露、汗濡れ、漏水 損害名ではなく原因が限定される場合があります。
対象となる損害 濡損だけでなく、錆、カビ、変色、包装劣化等を含むか確認します。 濡れ、錆、カビ、臭気、固着、変質 原因が対象でも、結果損害が限定される場合があります。
対象貨物 特定貨物だけに適用される条件か確認します。 紙、金属、木材、食品、繊維、機械 貨物明細、品名及び梱包形態との一致が必要です。
保険対象区間 倉庫、港、海上輸送、到着後保管等のどの区間まで対象か確認します。 船積前倉庫、コンテナ輸送、到着後倉庫 損害発見場所と発生場所が異なる場合があります。
残る免責 Clause 4.3、Clause 4.4、遅延、船積前損害等が残るか確認します。 防湿不足、固有の瑕疵、自然劣化 補償拡張がすべての免責を削除するとは限りません。
自己負担額 免責金額、フランチャイズ又は縮小支払条件を確認します。 一定額以下の錆損又は湿気損 損害額の算定方法も確認します。
通知条件 事故通知、サーベイ、処分前確認等の条件を確認します。 コンテナ返却前の確認、廃棄前の承認 安全又は法令上の緊急対応を妨げるものではありません。
証明資料 補償請求に必要な資料を確認します。 写真、温湿度記録、サーベイレポート、検査結果 事故後に資料を作成できない場合があります。

特別約款の名称及び文言は、保険会社、包括予定保険契約、貨物種類、輸送条件及び引受方針によって異なります。

同じ「水濡れ担保」又は「汗濡れ担保」という説明でも、対象原因と免責の範囲が同じとは限りません。

ICC 2009 Clause 4.3と梱包・防湿措置

ICC(A)、ICC(B)及びICC(C)のClause 4.3では、通常の保険対象輸送に耐えるための梱包又は準備が不十分若しくは不適切であり、その梱包等が被保険者若しくはその従業員によって行われた場合、又は保険始期前に行われた場合に、免責が問題になります。

Clause 4.3におけるpackingには、コンテナ内への積付けも含まれます。一方、同Clauseにおけるemployeesには、独立した請負業者は含まれないとされています。

水分損害では、次の事項を確認します。

  • 貨物の性質上、どの程度の防湿梱包が必要であったか
  • 防湿材、乾燥剤、コンテナライナー等の種類及び数量
  • 貨物、木材パレット及び梱包材の含水率
  • コンテナ内の積付け方法及び空気の流れ
  • 梱包又はバンニングを行った者
  • 梱包又はバンニングが行われた時期
  • 保険始期との前後関係
  • 梱包状態と損害との因果関係

乾燥剤を使用していたという事実だけでは、梱包及び防湿措置が適切であったことを確定できません。

貨物量、コンテナ容積、輸送期間、航路、季節、温湿度差、梱包の密閉性及び乾燥剤の配置等を総合的に確認します。

ICC 2009 Clause 4.4と貨物固有の性質

ICC 2009 Clause 4.4では、被保険貨物の固有の瑕疵又は性質によって生じた滅失、損傷又は費用が免責とされています。

英国海上保険法上も、保険証券に別段の定めがない限り、被保険貨物の固有の瑕疵又は性質による損害は、原則として保険者の責任外となることがあります。

木材、紙製品、繊維、食品、種子、化学品、金属製品等は、貨物自体の水分、吸湿性、発汗性、酸化性又は温度感受性により、通常の輸送環境でも品質が変化することがあります。

ただし、水分の影響を受けやすい貨物であるというだけで、直ちにすべての損害が固有の瑕疵によるものになるわけではありません。

コンテナ破損、海水侵入、倉庫漏水等の外部事故が損害の近因である場合や、特別約款によって一定の結露又は汗濡れ危険が補償されている場合には、約款文言と因果関係を個別に確認します。

水分損害に関係するその他の免責・条件

条項・論点 主な内容 水分損害との関係 確認資料
Clause 4.2 通常の漏損、通常の重量・容積減少又は通常の損耗 通常の乾燥、蒸発又は自然な品質変化との区別が問題になります。 貨物仕様、通常許容値、品質記録
Clause 4.3 不十分又は不適切な梱包・準備 防湿梱包、乾燥剤、パレット含水率、コンテナ内積付けが問題になります。 梱包仕様書、作業写真、実施者、実施時期
Clause 4.4 貨物固有の瑕疵又は性質 吸湿、発汗、酸化、カビ、腐敗等との因果関係を確認します。 製品仕様、含水率、製造ロット、専門家意見
Clause 4.5 遅延によって生じた損害 長期滞留中にカビ、錆又は品質劣化が進行した場合に問題になります。 輸送日程、遅延記録、品質変化の時系列
Clause 5.1.2 コンテナ又は輸送用具の不適合 コンテナ又は輸送用具が安全な運送に適さず、積込みが保険始期前に行われた場合、又は被保険者若しくはその従業員が積込み時にその不適合を認識していた場合に、Clause 5.1.2の適用可能性を確認します。 コンテナ受取時写真、EIR、積込み時期、積込み実施者、被保険者側の認識、修理履歴
保険始期 保険がいつ開始したか 梱包、保管又は船積前に既に損害が存在していなかったかを確認します。 保険証券、出荷記録、倉庫記録
特別約款 基本条件の補償拡張又は制限 雨水、結露、錆、カビ等が明示的に対象となるか確認します。 保険証券、明細、特別約款全文

Container Sweat・Container Rain・Cargo Sweatの違い

用語 発生場所・状態 典型的な濡れ方 主な確認点 保険上の注意点
Container Sweat コンテナ内の水蒸気が内壁又は天井等で結露します。 内壁、天井又は扉周辺に水滴が付着します。 温湿度差、貨物・梱包材の含水率、換気、航路 外部からの水侵入とは限りません。
Container Rain 天井等に生じた結露水が貨物へ滴下します。 貨物上面に点状又は筋状の滴下痕が生じます。 天井水滴、貨物上面、開扉直後の状態、貨物配置 コンテナ破損による漏水との区別が必要です。
Cargo Sweat 冷たい貨物表面へ暖かく湿った空気が接触して結露します。 貨物表面、金属面又は包装内部に水滴が生じます。 貨物温度、露点、開梱時期、到着後の保管環境 輸送中だけでなく到着後に発生する場合があります。

結露が発生しやすい場面には、高温多湿地域から寒冷地への輸送、季節が異なる地域間の輸送、温度差の大きい航路、含水率の高い貨物又は木材パレットの使用、長期間のコンテナ輸送等があります。

また、到着後に冷たい貨物を暖かく湿った倉庫で直ちに開梱した場合は、Cargo Sweatが発生することがあります。

水分損害が問題になりやすい貨物

貨物 主な水分リスク 典型的な損害 事前に確認する事項
紙・紙製品 吸湿、結露、雨水侵入 波打ち、変形、変色、印刷不良 防湿包装、含水率、パレット状態
金属製品 結露、海水、湿気 錆、腐食、表面変色 防錆処理、防湿材、温湿度管理
機械類 結露、雨水、保管中の湿気 電気系統故障、錆、絶縁不良 真空包装、防錆剤、開梱手順
木材 貨物自体の含水率、発汗 カビ、変形、割れ、変色 含水率、乾燥工程、換気条件
繊維製品 湿気、結露、雨水 カビ、臭気、色移り、変色 防湿包装、出荷前品質、保管履歴
食品 湿気、温度変化、結露 カビ、腐敗、包装劣化、販売不能 衛生条件、温度、含水率、消費期限
農産物・種子 呼吸作用、発熱、含水率 発芽、カビ、腐敗、固着 収穫後乾燥、含水率、通風
化学品 吸湿性、容器内結露 固結、反応、濃度変化 密閉性、吸湿性、保管条件
医薬品 湿気、温度逸脱、包装不良 品質不適合、使用不能 安定性データ、包装仕様、保管基準
電子機器 結露、湿気、急激な温度変化 腐食、短絡、絶縁不良 防湿包装、乾燥剤、開梱環境

海水濡れ・淡水濡れ・塩分反応の切り分け

水濡れ損害では、水の種類を確認することが、事故区間、保険条件及び求償先を整理するうえで重要です。

区分 考えられる原因 主な確認方法 保険上・求償上の注意点
海水濡れ 本船上の海水被り、コンテナへの海水侵入、港湾浸水等 科学分析、濡れ方、事故記録、コンテナ状態 船会社、本船事故、港湾作業及びB/L上の通知先を確認します。
湖・河川水の侵入 洪水、河川港での浸水、内陸水運中の水侵入等 事故地点、浸水記録、水質分析、現場写真 ICC(B) Clause 1.2.3との関係を確認します。
雨水・一般淡水 コンテナ穴、ドア不良、倉庫漏水、トラック雨濡れ等 漏水経路、屋根・側壁・扉、気象記録 ICC(B)の海・湖・河川水侵入と同一に扱わず、特別約款を確認します。
判別困難 貨物移動、乾燥、梱包材処分、コンテナ返却等 写真、サーベイ、分析結果、作業記録を総合確認 原因立証及び求償が困難になるため、早期の証拠保全が重要です。

塩分反応は、海水濡れの可能性を検討する資料の一つですが、単純検査の陽性結果だけで原因、発生場所又は発生時期を確定しません。

貨物又は梱包材に由来する塩分、木材パレット、倉庫床面、採取器具による汚染、試薬、対照試料、検出限界及び採取場所等を確認する必要があります。

必要に応じて、試験分析機関による分析結果と、濡れ方、コンテナ状態、航海記録、気象記録及び事故記録を組み合わせて判断します。

特別約款が問題になる主な場面

場面 基本条件だけでは問題になる点 特別約款で確認する事項 主な資料
ICC(C)で紙製品を輸送する場合 一般的な雨水侵入や結露は独立した列挙危険ではありません。 雨淡水濡れ、結露及び包装損害の補償拡張 保険証券、梱包仕様、輸送経路
金属製品の錆損が想定される場合 錆の原因が結露、固有の性質又は防湿不足である可能性があります。 錆損、汗濡れ、結露及び防錆条件 防錆仕様、湿度記録、貨物明細
高温多湿地域から寒冷地へ輸送する場合 Container Sweat及びContainer Rainの危険が高くなります。 結露危険の対象範囲、免責、自己負担額 航路、季節、輸送期間、含水率
食品又は農産物を輸送する場合 固有の性質、自然劣化及び遅延免責が問題になります。 カビ、腐敗、結露、温度変化の対象範囲 品質基準、温度記録、衛生条件
木材パレットを使用する場合 パレットから放出される水分が結露原因となることがあります。 パレット含水率、梱包条件、結露補償 パレット仕様、乾燥証明、バンニング写真
倉庫保管を含む輸送の場合 輸送中か保管中かによって保険対象区間が変わります。 倉庫保管中の水濡れ、漏水及び保険終期 倉庫記録、保険期間、配送指示
到着後に開梱まで時間を要する場合 Cargo Sweat又は保管中の湿気損害が発生することがあります。 到着後保管、開梱時結露及び保険終期 開梱記録、倉庫温湿度、納品記録

補償対象となるために確認する要件

確認要件 確認内容 問題となる例 対応
保険期間 損害が保険始期後かつ保険終期前に発生したか 船積前からカビや錆が存在していた 出荷前検品記録と到着時記録を比較します。
偶然性 保険期間中の偶然な事故又は列挙危険が確認できるか 通常予見される吸湿又は自然な発汗のみ 事故記録、漏水箇所、温湿度記録を確認します。
因果関係 事故と貨物損害の間に因果関係があるか 水滴はあるが、損害が船積前品質不良による 品質検査及び発生時系列を確認します。
基本保険条件 ICC(A)、ICC(B)又はICC(C)のいずれか ICC(C)で雨水損害を当然に補償対象と考える 保険証券と適用Clauseを確認します。
特別約款 補償拡張が付帯されているか 錆担保があるが結露は対象外 約款名だけでなく全文を確認します。
免責 Clause 4.3、Clause 4.4、遅延等に該当しないか 明らかな防湿不足又は貨物固有の発汗 実施者、時期、梱包仕様、貨物性質を確認します。
損害額 修理、再加工、値引販売、廃棄及び残存価値 全損主張に対して再加工が可能 品質評価、見積書及び残存価値を確認します。

特別約款の適用確認フロー

  1. 保険証券、保険明細及び適用されるInstitute Cargo Clausesを確認します。
  2. 水濡れ、雨淡水濡れ、結露、汗濡れ、錆又はカビに関する特別約款の有無を確認します。
  3. 特別約款が対象とする貨物、輸送区間及び損害原因を確認します。
  4. 損害が保険期間中に発生したことを確認します。
  5. 外部からの水侵入、Container Sweat、Container Rain又はCargo Sweatのいずれかを切り分けます。
  6. 海水、湖・河川水、雨水、配管水又は原因不明の水分を区別します。
  7. 貨物の含水率、吸湿性、発汗性、出荷前品質及び保管履歴を確認します。
  8. 梱包、防湿材、乾燥剤、コンテナライナー及びバンニング方法を確認します。
  9. Clause 4.3、Clause 4.4、Clause 4.5及びClause 5等の適用可能性を確認します。
  10. 特別約款によって、どの免責が修正され、どの免責が残るかを確認します。
  11. 写真、サーベイレポート、分析結果、温湿度記録及び作業記録を整理します。
  12. 貨物保険請求、運送人等への求償及びフォワーダー賠償責任を別々に判断します。
  13. 事故原因又は約款解釈が争われる場合は、保険会社、保険代理店又は海事弁護士へ相談します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 主な原因候補 確認資料 保険上の判断点 初動対応
コンテナ天井から紙製品へ水滴が落ちた Container Rain、屋根穴、外部漏水 天井、貨物上面、穴、温湿度記録 外部事故か結露か、Clause 4.3・4.4との関係 コンテナ返却前に天井と貨物配置を記録します。
金属部品に広範囲の錆が発生した Cargo Sweat、防錆不足、海水濡れ 錆の分布、塩分分析、防錆仕様、温湿度 特別約款、梱包免責、固有の性質 洗浄前に写真とサンプルを確保します。
ICC(B)で輸送した貨物が河川洪水で濡れた 河川水の保管場所又はコンテナへの侵入 洪水記録、浸水写真、保管場所、時刻 Clause 1.2.3との因果関係 事故地点、水位及び浸水範囲を確認します。
ICC(B)で雨水がコンテナ扉から入った ドアガスケット不良、扉閉鎖不良 ドア、濡れ跡、気象記録、EIR Clause 1.2.3だけでなく特別約款を確認 扉周辺を清掃又は返却する前に記録します。
ICC(C)で紙袋貨物が倉庫漏水した 倉庫屋根又は配管からの漏水 漏水箇所、倉庫記録、保険証券 ICC(C)の列挙危険及び補償拡張の有無 倉庫業者へ通知し、漏水源を保存します。
食品貨物にカビが拡大した 含水率、結露、遅延、船積前品質 製造ロット、温湿度、検査結果、時系列写真 Clause 4.4、Clause 4.5、特別約款 衛生上必要な隔離と証拠保存を両立させます。
乾燥剤を使用したが貨物が結露した 数量不足、配置不良、過剰な水分、長期輸送 乾燥剤仕様、配置、コンテナ容積、含水率 乾燥剤使用だけでClause 4.3を否定できない 使用量と設計根拠を確認します。
到着後の開梱時に機械表面へ水滴が発生した Cargo Sweat、急激な温度変化 貨物温度、倉庫湿度、開梱時刻、納品記録 保険期間、発生時点、開梱手順 拭き取り前に貨物表面と環境を記録します。

フォワーダー関与範囲の標準五分類

本記事における五分類は、法令上又は業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するために使用する分析上の枠組みです。

標準五分類 水分損害での主な関与 責任判断の中心 主な確認資料
Simple Intermediary 保険会社、船会社、倉庫業者等への連絡を補助します。 単なる取次か、判断又は指示まで引き受けたか 依頼メール、見積書、連絡記録
Cargo Transportation Service Provider 貨物運送サービスの契約主体として輸送又は保管を引き受けます。 契約上の運送区間、適用約款及び事故区間 運送契約、見積条件、輸送記録
NVOCC / House B/L Issuer House B/L発行者として海上運送又は複合運送へ関与します。 House B/L上の責任、免責、責任制限及び通知期限 House B/L、Master B/L、運送約款
Door-to-Door Single Contractor 集荷、梱包、海上輸送、保管及び配送を一体的に引き受けます。 各作業の受託範囲、下請利用及び事故区間 一括見積書、作業仕様書、再委託記録
Agent/Coordinator for Specific Operations サーベイ、検査、乾燥、再加工又は処分等の特定業務を調整します。 個別に委任された業務及び指示内容 委任記録、作業指示、調整メール、報告書

Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換える代替分類ではありません。

梱包、保管、検品、積付け、バンニング、デバンニング、CFS搬入又は国内配送等の実作業も、それ自体で第六の分類を構成しません。

事故発見時の初動対応

水濡れ・湿気・結露損害では、時間の経過、貨物移動、乾燥、清掃、再加工、コンテナ返却又は廃棄によって、原因を示す証拠が失われることがあります。

事故発見後は、次の事項を早期に実施します。

  • 貨物全体、損傷部分及び正常部分を撮影する
  • 外装、内装、緩衝材、防湿材及び乾燥剤を撮影する
  • コンテナ番号及びシール番号を記録する
  • コンテナの天井、側壁、床、扉、ガスケット及び通気口を撮影する
  • 濡れ方、滴下痕、錆、カビ、変色及び臭気の範囲を記録する
  • 保険会社又は保険代理店へ事故通知を行う
  • 必要に応じてサーベイを手配する
  • 船会社、倉庫業者、トラック業者等へ事故通知を行う
  • コンテナ返却、洗浄、乾燥、再加工又は廃棄前に証拠を確保する
  • 通知期限、正式請求期限及び出訴期限を別々に管理する

ただし、人の安全、衛生、法令遵守又は損害拡大防止のために緊急対応が必要な場合は、安全確保を優先します。そのうえで、安全かつ合理的に可能な範囲で、対応前後の状態、対応理由、時刻及び作業者を記録します。

具体例1:ICC(A)で紙製品にContainer Rainが発生した場合

高温多湿地域から寒冷地へ輸送した紙製品について、コンテナ開扉時に天井へ多数の水滴があり、貨物上面へ点状の濡れが確認されたとします。

まず、コンテナ天井の穴、補修跡又は外部からの漏水経路がないかを確認します。外部からの水侵入が確認できなければ、Container Rainの可能性を検討します。

ICC(A)であっても、結露損害という結果だけで補償が確定するわけではありません。貨物、紙製包装及び木材パレットの含水率、防湿包装、乾燥剤、輸送期間、温湿度差及びバンニング方法を確認します。

外部事故が認められず、防湿措置が貨物の性質に対して不十分であった場合はClause 4.3が、紙製品の通常の吸湿性が損害原因であった場合はClause 4.4が問題になります。

ICC(A)であること、偶然な損害が生じたこと及び免責原因が適用されないことを、それぞれ分けて確認する事例です。

具体例2:ICC(B)で金属貨物にCargo Sweatが発生した場合

寒冷地から到着した金属部品を、暖かく湿度の高い倉庫で直ちに開梱したところ、金属表面に水滴が生じ、その後に錆が発生したとします。

この水滴が海、湖又は河川水のコンテナ等への侵入によるものではなく、冷たい貨物表面への結露であれば、ICC(B) Clause 1.2.3の列挙危険とは異なる問題になります。

貨物温度、倉庫温湿度、露点、開梱時刻、保管方法及び防錆包装を確認し、Cargo Sweatが輸送中に発生したのか、到着後の開梱時に発生したのかを切り分けます。

結露又は錆に関する特別約款が付帯されている場合でも、保険対象区間、開梱条件、自己負担額及び梱包免責が残るかを確認します。

ICC(B)の水侵入危険と、貨物表面で発生する結露を同一に扱わないことが重要な事例です。

具体例3:ICC(C)で倉庫漏水が発生した場合

ICC(C)で手配された紙袋貨物が、到着後の通常の輸送過程にある倉庫で、屋根からの突発的な雨漏りによって濡れたとします。

ICC(C)では、一般的な雨水侵入又は倉庫漏水そのものは、独立した列挙危険ではありません。

そのため、まず火災、衝突、転覆その他のICC(C)の列挙危険との因果関係があるかを確認します。該当しない場合は、雨淡水濡れ等に関する特別約款が付帯されているかを確認します。

特別約款が付帯されている場合でも、倉庫保管が保険対象区間内であるか、屋外保管又は長期保管による補償制限がないか、損害発見及び通知が適切に行われたかを確認します。

基本条件では補償されにくい水分危険を、特別約款と保険期間の両面から確認する事例です。

事故時の判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
事故発見直後 荷主、倉庫業者、フォワーダー、現地代理店 貨物、梱包、濡れ方、カビ、錆及び変色の状態 安全を確保したうえで、移動又は廃棄前に撮影します。
保険条件の確認 保険会社、保険代理店 ICC(A)・(B)・(C)、特別約款、自己負担額 保険証券と特別約款全文を取り寄せます。
外部水侵入の確認 船会社、倉庫業者、トラック業者 コンテナ破損、雨水、海水、倉庫漏水 漏水箇所と事故区間を記録します。
海水・淡水の確認 サーベイヤー、試験分析機関、保険会社 水の種類、濡れ方、分析方法、対照試料 単純な塩分反応だけで原因を断定しません。
結露の確認 倉庫業者、バンニング業者、サーベイヤー Container Sweat、Container Rain、Cargo Sweat 温湿度、貨物温度、露点及び貨物配置を確認します。
梱包の確認 荷主、梱包業者、バンニング業者 防湿材、乾燥剤、ライナー、実施者、実施時期 Clause 4.3の要件と因果関係を確認します。
貨物性質の確認 荷主、メーカー、品質管理担当者 含水率、吸湿性、発汗性、出荷前品質 Clause 4.4及び船積前損害を検討します。
コンテナ返却前 コンテナ管理者、船会社、サーベイヤー 天井、側壁、床、扉、ガスケット、穴 返却前に内外部を撮影し、必要ならJoint Surveyを行います。
廃棄・再加工前 荷主、保険会社、サーベイヤー、関係当局 証拠、残存価値、衛生、安全及び法令 緊急時を除き、処分前確認と記録保存を行います。
求償・責任判断 保険会社、海事弁護士、関係業者 契約、事故区間、過失、責任制限、期限 貨物保険請求と賠償責任を分けて整理します。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
濡れていれば必ず外部事故である 結露、貨物の含水率、防湿不足又は船積前品質問題でも濡損が発生します。 侵入経路、温湿度、梱包及び出荷前状態を確認します。
ICC(A)ならすべての水分損害が支払われる ICC(A)でもClause 4.3、Clause 4.4その他の免責が適用されることがあります。 事故の偶然性と免責を別々に確認します。
ICC(B)ならあらゆる水濡れが補償される Clause 1.2.3は海、湖又は河川水の侵入を列挙しています。 雨水、配管水又は結露を同一に扱いません。
ICC(C)でも水濡れは当然に補償される 水侵入はICC(C)の独立した列挙危険ではありません。 列挙危険との因果関係と特別約款を確認します。
水濡れ特別約款があれば結露も補償される 外部水侵入だけを対象とし、結露を対象外とする場合があります。 約款名ではなく対象原因を確認します。
Container Sweatは船会社の責任である 貨物、パレット、梱包、防湿及び温湿度差等の複数原因が考えられます。 コンテナ破損の有無と結露原因を分けて確認します。
乾燥剤を使用すれば梱包免責は問題にならない 乾燥剤の種類、数量、配置及び設計が適切である必要があります。 貨物量、コンテナ容積、航路及び輸送期間を確認します。
塩分反応が陽性なら海水濡れである 貨物、梱包材、パレット又は採取器具由来の塩分も考えられます。 対照試料、分析方法及び事故状況を組み合わせます。
貨物保険が免責ならフォワーダーが賠償する 貨物保険の補償可否とフォワーダーの賠償責任は別の基準で判断します。 契約、委任範囲、過失、因果関係及び責任制限を確認します。
コンテナ返却後でも原因確認は容易である 返却後は穴、ガスケット、天井水滴等を確認できなくなることがあります。 デバンニング時又は事故発見直後に撮影します。
事故通知をすれば求償期限も停止する 事故通知、正式請求及び出訴期限は別に管理する必要があります。 B/L、運送約款、適用法及び期限延長合意を確認します。
カビや錆があれば輸送中の事故である 船積前品質、自然劣化、貨物固有の性質又は到着後保管も考えられます。 製造ロット、出荷前検品及び損害進行の時系列を確認します。

貨物保険とフォワーダー賠償責任の切り分け

貨物保険は、保険契約に基づき、被保険貨物に生じた損害が補償対象となるかを判断します。

一方、フォワーダー又はNVOCCの賠償責任は、運送契約、House B/L、見積条件、委任された業務、過失、因果関係、免責、責任制限及び通知期限等に基づいて判断します。

貨物保険でClause 4.3又はClause 4.4が適用され、保険金が支払われない場合でも、直ちにフォワーダーが賠償責任を負うわけではありません。

反対に、貨物保険から保険金が支払われた場合でも、運送人、倉庫業者、梱包業者又はフォワーダーに対する求償が行われる可能性があります。

フォワーダーが梱包を直接行っていない場合でも、貨物の特殊な性質を知らされながら必要な情報を関係業者へ伝達しなかった場合、事故通知を怠った場合、コンテナ返却前の証拠保全を行わなかった場合又は求償権を失わせた場合には、別の責任問題が生じることがあります。

保険会社・保険代理店へ確認すべき事項

  • 適用されるInstitute Cargo Clauses
  • 水濡れ、雨淡水濡れ、結露、汗濡れ、錆又はカビに関する特別約款
  • 特別約款が対象とする原因及び損害
  • Clause 4.3及びClause 4.4が修正されるか
  • 自己負担額、縮小支払又は引受制限
  • 貨物、梱包形態、航路及び季節に応じた条件
  • サーベイの手配及び費用負担
  • コンテナ返却、乾燥、洗浄、再加工又は廃棄前の確認手順
  • 残存価値、値引販売及び再加工費用の取扱い
  • 運送人等への事故通知及び求償資料

特別約款の付帯可否、追加保険料及び引受条件は、貨物の性質、梱包、航路、輸送期間、事故履歴等によって異なります。

水分損害の危険が高い貨物は、事故発生後ではなく、輸送手配前に保険会社又は保険代理店へ相談することが重要です。

海事弁護士を利用すべき場面

  • 損害額が大きく、複数の責任関係者が存在する場合
  • ICC、特別約款又はB/L約款の解釈が争われている場合
  • 外部事故と固有の瑕疵のいずれが近因か争いがある場合
  • 船会社、倉庫業者、トラック業者又は梱包業者へ求償する場合
  • 荷主からフォワーダー又はNVOCCへ高額な賠償請求が行われた場合
  • Joint Surveyへの不参加又は証拠廃棄が問題になっている場合
  • 通知期限、正式請求期限、時効又は出訴期限が迫っている場合
  • 責任制限、裁判管轄又は仲裁条項が問題になる場合
  • 試験分析機関の分析結果又はサンプル管理が争われている場合

保険金の支払可否、運送人等への求償及びフォワーダーの賠償責任は、それぞれ異なる契約及び法的基準によって判断されます。

高額事故又は複雑な責任問題では、事故初期の段階から保険会社、保険代理店及び海事弁護士の役割を分けて整理する必要があります。

実務上のポイント

  • 水濡れという結果だけで補償可否を判断しません。
  • ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)及び特別約款を最初に確認します。
  • ICC(B) Clause 1.2.3の水侵入と、雨水又は結露を同一に扱いません。
  • ICC(C)では、水侵入が独立した列挙危険ではないことに注意します。
  • Container Sweat、Container Rain及びCargo Sweatを分けて確認します。
  • Clause 4.3では、梱包実施者、実施時期、保険始期及び因果関係を確認します。
  • Clause 4.4では、貨物固有の性質と外部事故のいずれが損害原因かを確認します。
  • Clause 5.1.2では、コンテナ又は輸送用具の不適合だけでなく、積込み時期、積込み実施者及び被保険者側の認識を確認します。
  • 塩分反応の陽性結果だけで海水濡れを確定しません。
  • コンテナ返却、乾燥、洗浄又は廃棄前に証拠を確保します。
  • 貨物保険請求とフォワーダー賠償責任を別に整理します。

まとめ

水濡れ・湿気・結露損害では、貨物が濡れているという結果だけでなく、水分の侵入経路、結露の発生位置、貨物の含水率、梱包及び防湿措置、保険期間並びに適用保険条件を確認する必要があります。

ICC(A)は広い危険を対象とする条件ですが、Clause 4.3の梱包・準備不足、Clause 4.4の固有の瑕疵又は性質その他の免責が適用される可能性があります。

ICC(B)では、海、湖又は河川水の船舶、コンテナ又は保管場所等への侵入がClause 1.2.3で列挙されていますが、一般的な雨水侵入、倉庫漏水又は結露を当然に同じ危険として扱うことはできません。

ICC(C)では、水侵入は独立した列挙危険ではないため、水濡れ、雨淡水濡れ、結露、錆又はカビ等を補償する必要がある場合は、特別約款の有無と文言が特に重要になります。

Clause 5.1.2については、コンテナ又は輸送用具に不具合があったという事実だけではなく、安全な運送への不適合、積込み時期、積込みを行った者及び被保険者又はその従業員の認識を確認する必要があります。

特別約款については、約款名だけでなく、対象となる原因、対象損害、対象貨物、保険対象区間、自己負担額及び残る免責を確認します。

事故発見後は、貨物、梱包及びコンテナの状態を早期に記録し、保険会社、保険代理店及び求償先となる可能性のある関係者へ通知します。

貨物保険の補償可否とフォワーダー又はNVOCCの賠償責任は別の基準で判断されるため、事故原因、保険条件、契約関係及び責任区間を混同せずに整理することが基本です。

最終的な補償可否は、保険証券、適用Clause、特別約款、事故原因、保険期間及び証拠資料に基づき、保険会社が個別に判断します。

同義語・別表記

  • 水濡れ損害
  • 湿気損害
  • 結露損害
  • コンテナ内結露
  • Container Sweat
  • Container Rain
  • Cargo Sweat
  • 貨物の汗濡れ
  • 海水濡れ
  • 淡水濡れ
  • 雨濡れ損害
  • 防湿不備

公式情報