輸入製品と消費生活用製品安全法―PSC表示と事故・リコール対応
輸入品と消費生活用製品安全法とは
輸入品と消費生活用製品安全法とは、海外で製造された一般消費者向け製品を日本国内へ輸入・販売する場合に、製品の安全性を確保し、製品事故を防止するために確認すべき消費生活用製品安全法上の規制をいいます。
消費生活用製品安全法は、一般消費者が日常生活で使用する製品による生命または身体への危害を防止し、製品事故が発生した場合には、その被害の発生及び拡大を防止するための法律です。
一般消費者が使用する製品の中には、構造、材質、使用方法、対象年齢または使用環境によって、けが、火災、やけど、窒息、誤飲、落下、破損または健康被害につながるものがあります。
輸入実務では、海外で一般に販売されている製品であっても、日本国内でそのまま販売できるとは限りません。
特に、PSCマークの対象となる特定製品、特別特定製品、子供用特定製品、重大製品事故の報告対象となる製品及び長期間使用される製品については、輸入前の確認だけでなく、通関後の表示、検査、販売及び事故対応まで含めて管理する必要があります。
この記事で扱う範囲
この記事では、消費生活用製品安全法を、輸入品の製品安全、国内販売及び販売後対応に関する総論・入口記事として整理します。
| 記事・制度 | 主な役割 | 本記事との関係 |
|---|---|---|
| 輸入品と消費生活用製品安全法 | 消費者向け製品の安全規制、特定製品、事故報告、リコール及び販売後対応の全体像 | 製品安全記事群の総論・入口となる |
| 輸入品のPSCマーク | 特定製品、特別特定製品、子供用特定製品の区分、マーク、検査及び経過措置 | PSCマークの詳細、施行日及び経過措置は個別記事で確認する |
| 輸入品の重大製品事故 | 死亡、重傷、火災等の重大な事故が発生した場合の報告・公表制度 | 事故発生後の法定報告を詳しく扱う |
| 輸入品の製品事故情報報告制度 | 重大事故に至らない事故、ヒヤリ・ハット及びNITEへの情報提供 | 事故情報の収集・提供制度を詳しく扱う |
| 輸入品のリコール | 回収、無償修理、交換、返金、注意喚起及び販売停止 | 危害拡大防止措置の具体的な実施方法を扱う |
| 輸入品と製品安全誓約 | オンラインマーケットプレイスにおける危険製品の流通防止 | ECモール及びプラットフォーム対応を扱う |
| 長期使用製品安全点検制度 | 経年劣化事故を防ぐための点検及び所有者情報管理 | 長期使用に伴う安全管理を詳しく扱う |
本記事の中心は、輸入販売者が、販売前の対象品目確認から、届出、技術基準適合、検査、表示、販売記録、重大製品事故報告及びリコールまでを一体として理解することです。
消費生活用製品安全法の目的
消費生活用製品安全法の目的は、一般消費者が使用する製品による生命または身体への危害を防止し、製品事故が発生した場合には被害の拡大を防止することです。
対象となる製品は、家庭用製品、子供向け製品、アウトドア用品、火気、圧力、レーザー、磁石、小部品その他の安全リスクを持つ製品など、主として一般消費者の生活の用に供される製品です。
この法律では、販売前の規制として、特定製品に関する事業届出、技術基準適合、自主検査、適合性検査及びPSCマーク表示を定めています。
また、販売後の規制として、重大製品事故の報告、事故情報の収集・提供、リコール、危害防止命令その他の措置が関係します。
制度全体の構造
消費生活用製品安全法は、単にPSCマークを表示するための法律ではありません。製品の販売前から販売後まで、複数の制度が連続して適用されます。
| 段階 | 主な制度 | 実務上の意味 | 主な確認主体 |
|---|---|---|---|
| 商品企画・発注前 | 消費生活用製品及び特定製品への該当性確認 | 構造、用途、対象年齢、仕様及び販売方法から対象法令を確認する | 輸入販売者、海外メーカー |
| 販売前 | 事業届出、技術基準適合、自主検査、適合性検査、PSCマーク | 対象製品について必要な手続、検査、記録及び表示を完了する | 製造事業者、輸入事業者、特定輸入事業者 |
| 販売時 | 表示義務、販売制限、販売目的の陳列制限 | 必要な表示を欠く製品を販売または販売目的で陳列できない場合がある | 輸入販売者、販売事業者、EC事業者 |
| 販売後 | 重大製品事故報告、事故情報収集、リコール | 事故や不具合について報告、原因調査、回収、修理及び注意喚起を行う | 製造事業者、輸入事業者、販売事業者 |
| 長期使用 | 長期使用製品安全点検制度 | 経年劣化事故を防ぐため、点検、所有者情報及び保守対応を管理する | 製造・輸入事業者、所有者、点検事業者 |
| オンライン販売 | 製品安全誓約、海外事業者規制、プラットフォーム対応 | 越境EC及び海外直送を含め、危険製品の流通防止と事故対応を確認する | 海外事業者、国内管理人、ECモール、販売者 |
輸入販売者は、販売前にPSCマークの対象かどうかを確認するだけでなく、販売後の事故報告及びリコールまで含めて管理する必要があります。
特定製品・特別特定製品・子供用特定製品の違い
| 区分 | 主な意味 | 必要となる主な対応 | 表示の考え方 |
|---|---|---|---|
| 特定製品 | 一般消費者の生命または身体に危害を及ぼすおそれが多い製品として指定されたもの | 事業届出、技術基準適合、自主検査、検査記録の作成・保存及び表示 | 特別特定製品以外は原則として丸形PSCマークが問題になる |
| 特別特定製品 | 特定製品のうち、製造・輸入事業者による自主確認だけでは安全確保が十分でないもの | 特定製品の義務に加え、登録検査機関による適合性検査及び証明書保存 | 原則として菱形PSCマークが問題になる |
| 子供用特定製品 | 主として子供が使用する製品で、子供の安全確保のために指定されたもの | 技術基準適合、自主検査、対象年齢、使用上の注意、警告表示及び子供PSCマーク | 法的区分に応じて丸形または菱形の子供PSCマークが問題になる |
特定製品かどうかは、商品名だけで判断するものではありません。製品の構造、用途、性能、寸法、対象年齢及び使用方法を、法令上の定義と照合して判断します。
対象となる製品の主な例
| 区分 | 主な対象製品 | 基本的な表示 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| 特別特定製品 | 携帯用レーザー応用装置 | 菱形PSCマーク | レーザー出力、波長、構造及び用途 |
| 特別特定製品 | 浴槽用温水循環器 | 菱形PSCマーク | 吸込口構造、循環方式及び安全装置 |
| 特別特定製品 | ライター | 菱形PSCマーク | チャイルドレジスタンス機能、構造及び適合性検査 |
| 特定製品 | 家庭用の圧力なべ及び圧力がま | 丸形PSCマーク | 使用圧力、容量、安全装置及び用途 |
| 特定製品 | 乗車用ヘルメット | 丸形PSCマーク | 用途、構造、衝撃吸収性能及び表示 |
| 特定製品 | 登山用ロープ | 丸形PSCマーク | 用途、径、強度及び構造 |
| 特定製品 | 石油給湯機、石油ふろがま、石油ストーブ | 丸形PSCマーク | 燃焼方式、安全装置及び対象製品の定義 |
| 特定製品 | 磁石製娯楽用品 | 丸形PSCマーク | 磁束指数、寸法、用途及び誤飲リスク |
| 特定製品 | 吸水性合成樹脂製玩具 | 丸形PSCマーク | 膨張率、寸法、用途及び誤飲リスク |
| 子供用特定製品 | 乳幼児用ベッド | 菱形子供PSCマーク | 構造、対象年齢、警告表示及び適合性検査 |
| 子供用特定製品 | 乳幼児用玩具 | 丸形子供PSCマーク | 3歳未満向けか、技術基準、対象年齢及び注意表示 |
| 子供用特定製品 | 乳幼児用ベッドガード | 丸形子供PSCマーク | 対象月齢、挟み込み、転落及び使用条件 |
| 子供用特定製品 | ベビーカー | 丸形子供PSCマーク | 対象月齢、構造、折畳み機構及び警告表示 |
対象品目は、法令改正により追加または変更されることがあります。
乳幼児用ベッド及び乳幼児用玩具の新たな規制は2025年12月25日に開始され、乳幼児用ベッドガード及びベビーカーは2026年7月8日に規制対象となりました。
製品ごとの施行日、旧表示、経過措置及び販売期限については、「輸入品のPSCマーク」の記事で確認してください。
この法律が定める主な義務
| 義務・制度 | 主な内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 事業届出 | 特定製品の製造または輸入の事業を行う場合に必要となる届出 | 販売開始後ではなく、事業開始前に確認する |
| 損害賠償措置 | 製品欠陥により生じた損害賠償に備えるための措置 | PL保険等の手配内容及び対象製品を確認する |
| 技術基準適合 | 対象製品が法令上の技術基準に適合していることを確認する | 海外規格への適合だけで日本の基準適合とは限らない |
| 自主検査 | 届出事業者が製造または輸入した対象製品について検査を行う | 検査方法、検査単位、結果及び対象ロットを説明できるようにする |
| 検査記録の作成・保存 | 自主検査の結果を記録し、法定期間保存する | 型式、輸入ロット、製造者、検査日及び結果を紐づける |
| 登録検査機関による適合性検査 | 特別特定製品について、第三者機関による検査を受ける | 証明書の対象型式、製造工場、期限及び変更内容を確認する |
| PSCマーク表示 | 必要な義務を履行した製品に所定のPSCマーク等を表示する | マークの形、届出事業者名、登録検査機関表示及び警告表示を確認する |
| 販売・陳列の制限 | 必要な表示を欠く特定製品の販売または販売目的の陳列を制限する | 通関後であっても在庫を販売できない可能性がある |
| 重大製品事故報告 | 重大製品事故を知った製造・輸入事業者が国へ報告する | 海外メーカーに任せず、日本側で報告期限を管理する |
| リコール・危害防止措置 | 事故または事故のおそれがある場合に回収、修理、注意喚起等を行う | 販売記録、ロット管理、消費者連絡及び回収方法を準備する |
輸入販売者にとって重要なのは、PSCマークを貼ることだけではありません。
事業届出、技術基準適合、自主検査、検査記録、表示、事故報告及びリコール対応までを、一連の義務として管理する必要があります。
輸入販売時の確認フロー
- 輸入する製品の用途、構造、対象年齢及び販売方法を確認する
- 一般消費者の生活の用に供される製品か確認する
- 消費生活用製品安全法の対象となる可能性を確認する
- 特定製品、特別特定製品または子供用特定製品に該当するか確認する
- PSCマーク、子供PSCマーク、対象年齢及び注意表示の要否を確認する
- 国内の輸入事業者または特定輸入事業者を確定する
- 事業届出の要否及び届出区分を確認する
- 海外メーカーから仕様書、図面、材料情報及び試験資料を取得する
- 日本の技術基準への適合を確認する
- 自主検査の方法、検査単位及び記録保存方法を決める
- 特別特定製品の場合は登録検査機関による適合性検査を受ける
- 製品、包装、取扱説明書及び販売ページの表示を確認する
- 輸入日、型式、ロット番号、販売数量及び販売先を管理する
- 重大製品事故、苦情及びリコールに対応する体制を整える
- すべての確認が完了した後に国内販売を開始する
海外メーカーが安全性を説明しているだけでは足りません。
海外規格に適合していることと、日本の消費生活用製品安全法上の義務を満たしていることは別の問題です。
海外事業者・越境ECとの関係
海外事業者が、日本国内の輸入事業者を介さず、オンラインマーケットプレイス、自社ECサイトその他の方法により、日本国内の消費者へPSマーク対象製品を直接販売する場合には、特定輸入事業者として規制対象となることがあります。
特定輸入事業者は、日本国内に国内管理人を選任し、事業届出、技術基準適合、自主検査、表示、記録保存及び事故対応等の義務を履行する必要があります。
| 確認項目 | 海外事業者 | 国内管理人 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 事業届出 | 特定輸入事業者として必要な情報及び資料を準備する | 国内での届出手続及び行政連絡を補助する | 海外事業者の委任と資料なしに名目的な届出を行わない |
| 技術資料 | 仕様書、試験資料、製造情報及び変更情報を提供する | 国内で資料を保存し、行政照会に対応できる体制を持つ | 日本語での説明及び提出が可能であることを確認する |
| 検査・表示 | 対象製品について必要な検査及び表示を行う | 日本で販売される実物の表示及び記録を確認する | 海外サイトの画像と実物表示を一致させる |
| 事故対応 | 事故、ロット及び販売先情報を速やかに提供する | 国内で行政連絡、消費者対応及びリコールを支援する | 海外事業者と連絡不能になる事態を防ぐ |
海外から直接発送すること、代金を海外で受領すること、または日本法人が存在しないことだけを理由として、日本の製品安全規制が適用されなくなるわけではありません。
フォワーダーが確認すべき事項
フォワーダーは、通常、消費生活用製品安全法への適合性を最終判断する立場ではありません。
ただし、輸入前の貨物情報から製品安全規制の対象となる可能性がある場合には、荷主または輸入者へ確認を促すことが実務上有効です。
- 貨物が一般消費者向け製品として日本国内で販売される予定か
- ヘルメット、ライター、レーザー製品、圧力なべ、石油機器または子供向け製品に該当しないか
- PSCマークまたは子供PSCマークの要否を輸入者が確認しているか
- 通関後すぐ販売する場合、届出、検査、表示及び検査記録の準備が済んでいるか
- 国内倉庫で検品、ラベル貼付、再梱包または取扱説明書差替えを行う予定があるか
- 輸入者が販売後の重大製品事故及びリコール対応を想定しているか
- PSE、PSTG、PSLPG、食品衛生法、薬機法、電波法その他の法令が関係しないか
フォワーダーが対象該当性を断定する必要はありません。
確認を促したことによって、輸入者または販売者の法的義務がフォワーダーへ移転するものでもありません。
通関業者が確認すべき事項
- インボイス品名及び仕様から消費生活用製品安全法対象品の可能性がないか
- HSコードだけでなく、用途、構造、対象年齢及び販売方法を確認したか
- 輸入者が販売目的で反復継続して輸入する貨物か
- PSCマーク対象製品または子供用特定製品に該当する可能性がないか
- 輸入者が届出、検査、表示、記録保存及び販売後対応を確認しているか
- PSE、ガス用品、家庭用品品質表示法、食品衛生法、薬機法または電波法等が関係しないか
- 通関後に検品、ラベル貼付、再梱包または取扱説明書差替えを行う予定があるか
- 輸入許可と国内販売の適法性を混同していないか
輸入許可は、関税法上の輸入申告手続が完了したことを示すものです。
消費生活用製品安全法を含む国内販売規制への適合を包括的に証明するものではありません。
輸入販売者が確認すべき事項
- 製品が消費生活用製品に該当するか
- 特定製品、特別特定製品または子供用特定製品に該当するか
- PSCマーク、子供PSCマーク、対象年齢及び注意表示が必要か
- 事業届出または特定輸入事業者としての届出が必要か
- 技術基準への適合を説明できる資料があるか
- 自主検査及び検査記録の作成・保存を行えるか
- 登録検査機関による適合性検査が必要か
- 製品、包装、取扱説明書及び販売ページの表示が適切か
- 販売記録、ロット番号、輸入日、製造者及び製造工場を管理できるか
- 重大製品事故報告、苦情受付、販売停止及びリコールの体制があるか
- PL保険及びリコール費用保険等の保険手配を検討しているか
輸入販売者にとって特に危険なのは、海外メーカーの商品説明、海外規格または海外ECサイトの商品ページだけを根拠として、日本で販売できると判断することです。
他の製品安全法令との関係
| 制度・マーク | 根拠法令 | 主な対象 | 消費生活用製品安全法との関係 |
|---|---|---|---|
| PSCマーク | 消費生活用製品安全法 | 特定製品、特別特定製品、子供用特定製品 | 本法に基づく販売前規制の中心となる表示 |
| PSEマーク | 電気用品安全法 | 電気用品、ACアダプター、電源コード、リチウムイオン蓄電池等 | 電気用品の安全規制として別に確認する |
| PSTGマーク | ガス事業法 | 都市ガス用のガス用品 | 都市ガス用器具の安全規制として別に確認する |
| PSLPGマーク | 液石法 | LPガス用の液化石油ガス器具等 | LPガス用器具の安全規制として別に確認する |
| 家庭用品品質表示 | 家庭用品品質表示法 | 衣類、雑貨、合成樹脂加工品及び電気機械器具等 | 安全性だけでなく品質・取扱表示を確認する |
| 電波・通信端末規制 | 電波法、電気通信事業法 | 無線機器、通信端末、Bluetooth・Wi-Fi機器等 | 無線通信及び端末接続の技術基準を別に確認する |
| 食品衛生規制 | 食品衛生法 | 乳幼児が口に接触する玩具等 | 子供PSCマークと同時に適用される場合がある |
一つの製品に複数の法令が同時に適用される場合があります。
一つのマークが付いていることを理由として、他の法令確認を省略することはできません。
重大製品事故・リコールとの関係
消費生活用製品によって重大な事故が発生した場合、製造事業者または輸入事業者には、国への報告が求められることがあります。
また、同種事故の再発及び被害拡大を防止するため、製品の回収、点検、修理、交換、返金、注意喚起または販売停止等のリコール対応が必要となる場合があります。
輸入品では、海外メーカーが日本国内に拠点を持たないことも多いため、輸入者または販売者が国内対応の中心となります。
事故が発生してから慌てて対応するのではなく、販売前から表示、取扱説明書、販売記録、ロット管理、事故連絡体制及びリコール方法を整理しておくことが重要です。
通関できても販売できない主なケース
| ケース | 主な原因 | 国内販売への影響 | 初動対応 |
|---|---|---|---|
| 輸入後にPSCマーク対象製品と判明した | 商品名やHSコードだけで発注・輸入した | 届出、検査及び表示が完了するまで販売できない可能性がある | 在庫を隔離し、対象品目と必要手続を確認する |
| 事業届出を行っていなかった | 海外メーカーの届出で足りると誤解した | 適法な表示及び販売ができない可能性がある | 販売を止め、届出要件を確認する |
| 技術基準適合を確認できない | 海外試験資料しかなく、日本基準との差異を確認していない | 販売可否を説明できない | 不足試験及び技術資料を特定する |
| 自主検査記録がない | 型式試験だけで義務を満たすと誤解した | PSCマーク表示の根拠を証明できない | 対象ロットを隔離し、検査方法と記録を整理する |
| 特別特定製品の適合性検査を受けていない | 丸形PSC対象品と誤認した | 菱形PSCマークを適法に表示できない | 登録検査機関へ相談する |
| 子供用特定製品の警告表示が不足している | 対象年齢及び日本語注意表示を確認していない | 販売停止または表示修正が必要になる | 対象年齢、技術基準及び表示を再確認する |
| PSCマーク等の表示が不足している | 届出事業者名や検査機関表示を省略した | 表示要件を満たすまで販売できない | 表示根拠と修正方法を確認する |
| 対象ロットを特定できない | 輸入日、製造番号及び販売履歴の管理不足 | 回収範囲が広がる可能性がある | 販売停止し、輸入・在庫・販売記録を照合する |
販売前から整備すべき管理体制
- 対象製品かどうかを確認する社内フロー
- PSC、PSE、PSTG及びPSLPG等の法令確認表
- 仕入先、製造者、製造工場、型式及びロット番号の管理
- 仕様書、試験資料、検査記録、証明書及び取扱説明書の保存
- 販売先、販売数量及び販売チャネルの記録
- 消費者からの苦情及び事故情報を受け付ける窓口
- 重大製品事故に該当する可能性を判断する初動手順
- リコール時の回収、修理、交換、返金及び注意喚起の手順
- 海外メーカーとの事故連絡、費用負担、部品供給及び求償条件
- PL保険、リコール費用保険及び貨物保険の整理
製品安全対応は、事故が発生してから準備するものではありません。
販売前から、表示、記録、問い合わせ、事故報告及びリコールまでを想定した管理体制を整える必要があります。
具体例1:3歳未満向けの電気玩具を輸入する場合
輸入販売者が、充電式の電気玩具を3歳未満の乳幼児向けとして日本国内で販売するとします。
まず、乳幼児用玩具として子供用特定製品に該当するかを確認し、技術基準、対象年齢、使用上の注意、自主検査及び子供PSCマークの要件を確認します。
次に、玩具本体、ACアダプター、充電器及びリチウムイオン蓄電池を個別に確認します。ACアダプターや蓄電池には、電気用品安全法及びPSEマークの規制が関係する場合があります。
玩具にBluetoothまたはWi-Fi機能がある場合には、電波法上の技術基準適合証明も別に確認します。
したがって、子供PSCマークを確認しただけでは足りません。製品本体、電源用品、蓄電池、無線機能及び表示を制度ごとに切り分けて確認する必要があります。
具体例2:海外製ライターを輸入後に販売停止する場合
輸入販売者が海外製ライターを輸入し、輸入許可後にECモールへ出品しようとしたところ、PSC関係資料の提出を求められたとします。
ライターが消費生活用製品安全法上の特別特定製品に該当する場合、事業届出、技術基準適合、自主検査及び登録検査機関による適合性検査が必要です。
製品に菱形PSCマークらしい表示があっても、日本の届出事業者、適合性検査証明書及び検査記録を確認できなければ、表示だけを根拠に販売することはできません。
輸入販売者は、出品及び販売を停止し、在庫を隔離したうえで、海外メーカー、登録検査機関及び行政窓口へ確認します。
輸入許可があることと、日本国内でライターを販売できることは別の問題です。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 海外で販売されている製品なら日本でも販売できる | 日本の製品安全法令への適合を別に確認する必要がある | 発注前に用途、構造、対象年齢及び対象法令を確認する |
| 輸入許可を取得すれば国内販売できる | 輸入通関と国内販売規制は別の制度である | 届出、検査、表示及び記録を販売開始前に確認する |
| PSCマークを貼れば義務を満たす | マークは届出、基準適合及び検査等を履行した事業者だけが表示できる | 表示を裏付ける資料及び検査記録を保存する |
| CEマークや海外試験報告書があれば十分である | 海外規格と日本の技術基準は別に確認する必要がある | 試験項目、対象型式及び日本基準との差異を整理する |
| 商品名が違えば特定製品には該当しない | 法令上の構造、用途、性能及び対象年齢から判断する | ECサイト上の商品分類だけで対象外と判断しない |
| 子供向けと表示しなければ子供用特定製品ではない | 設計、寸法、広告、使用方法等の客観的事情から判断される | 規制回避を目的に対象年齢だけを変更しない |
| 一つのPSマークがあれば他法令の確認は不要である | PSC、PSE、ガス用品、電波法等が同時に適用される場合がある | 本体と付属品を分けて制度別に確認する |
| フォワーダーが輸送したため製品安全責任も負う | 輸入者・販売者の法的義務と物流業務は通常別である | 契約、委任範囲及び実際の作業内容を確認する |
| 海外直送なら日本の規制は適用されない | 日本の消費者へ直接販売する海外事業者も規制対象となる場合がある | 特定輸入事業者及び国内管理人の要否を確認する |
| PSCマークを適法に表示すれば販売後対応は不要である | 事故発生後の報告、原因調査及びリコール対応は別に必要である | 販売記録、ロット管理及び事故受付体制を整える |
| 貨物保険で製品事故やリコール費用も補償される | 貨物保険は通常、輸送中の偶然な物的損害を中心とする | PL保険及びリコール費用保険を別に確認する |
まとめ
消費生活用製品安全法は、一般消費者が日常生活で使用する製品について、安全性を確保し、製品事故及び危害の発生・拡大を防止するための法律です。
この法律は、PSCマークだけを定める法律ではありません。
特定製品、特別特定製品、子供用特定製品、事業届出、技術基準適合、自主検査、登録検査機関による適合性検査、表示、重大製品事故報告、リコール及び長期使用製品安全点検制度等を含む、製品安全の総合的な制度です。
輸入実務では、通関できるかだけでなく、日本国内で販売できる製品か、販売後に事故対応できる体制があるかを確認することが重要です。
輸入販売者は、対象品目、届出、技術基準適合、検査記録、表示、販売記録、事故報告及びリコール対応までを一体として管理する必要があります。
海外で一般に販売されていること、海外規格に適合していること、輸入許可を取得したこと、または製品にPSCマークらしい表示があることだけでは、日本国内での適法な販売を証明できません。
子供向け電気玩具のように、消費生活用製品安全法、電気用品安全法、電波法その他の複数制度が同時に適用される製品もあります。
フォワーダー及び通関業者は、製品安全規制への最終的な適合判断を行う立場ではありませんが、対象となる可能性を輸入者へ確認し、検品、表示、保管及び販売開始時期を調整することが実務上有効です。
海外事業者が日本国内の消費者へ対象製品を直接販売する場合には、特定輸入事業者及び国内管理人の制度も確認する必要があります。
製品安全対応は、事故が発生した後に始めるものではありません。商品企画及び発注の段階から、対象法令、技術資料、検査、表示、販売記録、事故報告及びリコールまでを確認することが基本です。
本記事は、消費生活用製品安全法及び輸入販売実務に関する一般的な整理を目的とするものであり、個別製品の法令適合性、PSCマークの表示可否、販売可否または事故発生時の法的責任を確定するものではありません。実際の製品については、最新の法令、公式資料、製品仕様、対象年齢、試験資料及び所管行政機関等への確認が必要です。
