輸入品の長期使用製品安全点検制度

Long-Term Use Product Safety Inspection System for Imported Products in Japan

輸入品の長期使用製品安全点検制度とは

輸入品の長期使用製品安全点検制度とは、海外で製造され、日本国内へ輸入・販売される特定保守製品について、所有者情報の登録、点検時期の通知、法定点検、点検・修理体制の整備を通じて、経年劣化による火災、死亡事故、一酸化炭素中毒等の重大事故を防止する制度です。

特定保守製品とは、消費生活用製品のうち、所有者自身による保守が難しく、長期間の使用に伴う経年劣化によって安全上支障が生じ、一般消費者の生命または身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多い製品です。

現行法では、特定保守製品の定義は消費生活用製品安全法第2条第5項、具体的な対象品目は同法施行令第4条および別表第三に基づきます。

現在の対象品目は、石油給湯機と石油ふろがまの2品目です。制度創設時には9品目が対象でしたが、2021年8月1日の施行令改正により7品目が指定から除外されました。

輸入事業者は、通関や販売前表示だけでなく、販売後の所有者情報管理、点検通知、国内での点検受付、修理、部品供給および事故対応まで継続的に管理する必要があります。

長期使用製品安全点検制度は、輸入時点で完結する制度ではありません。製品が日本国内で長期間使用される間の安全管理を前提とする制度です。

この記事で扱う範囲

記事・制度 主な役割 本記事との関係
輸入品の長期使用製品安全点検制度 特定保守製品の届出、表示、所有者登録、点検通知、法定点検および保守体制 本記事の中心
長期使用製品安全表示制度 長期使用による経年劣化について製品表示で注意喚起する制度 名称が似ている別制度として比較する
輸入品と消費生活用製品安全法 消費者向け製品の販売前規制から販売後対応までの全体像 制度全体の総論を扱う
輸入品のPSCマーク 特定製品、特別特定製品および子供用特定製品の技術基準、検査および表示 販売前の製品規制として区別する
輸入品の重大製品事故 死亡、重傷病、一酸化炭素中毒および火災等の該当性判断 経年劣化事故が発生した場合に関係する
輸入品の製品事故情報報告制度 重大製品事故の報告義務、期限、報告先および公表 事故発生後の法定報告を扱う
輸入品のリコール 回収、修理、交換、返金、点検、注意喚起および販売停止 危害防止措置を扱う
輸入品と製品安全誓約 オンラインマーケットプレイス上の危険製品・リコール製品の流通防止 EC販売時の出品停止や購入者通知に関係する

本記事は、特定保守製品を日本へ輸入・販売する場合の販売後管理を扱います。個別製品の技術基準、重大製品事故の報告書作成、リコール実施方法等は、関連する各記事で確認します。

制度の目的

長期間使用される製品では、使用開始時に問題がなくても、部品の摩耗、腐食、燃焼不良、配線劣化、漏れ、異常加熱、発火等が発生することがあります。

特に、石油給湯機や石油ふろがまでは、燃料系統、燃焼部、熱交換器、排気経路、安全装置等の劣化が、火災、一酸化炭素中毒または死亡事故につながる可能性があります。

所有者自身が内部部品の劣化状態を判断することは困難です。そのため、製造事業者または輸入事業者が、製品ごとに点検期間等を設定し、所有者情報を管理し、点検時期を通知して点検を実施する仕組みが設けられています。

法令上の位置づけ

法令・条項 主な内容 輸入実務上の意味
消費生活用製品安全法第2条第5項 特定保守製品の定義 輸入品が制度対象となる基本要件を確認する
同法施行令第4条・別表第三 特定保守製品の具体的指定 現行対象である石油給湯機・石油ふろがまとの該当性を確認する
同法第32条の4 特定保守製品の製造・輸入事業に関する届出 対象製品の輸入事業を開始する前に届出要否を確認する
同法第32条の5 点検期間等の設定 設計標準使用期間、点検期間その他の保守情報を型式ごとに設定する
同法第32条の6 製品への表示等 製品本体、取扱説明書等へ必要事項を表示する
同法第32条の7 引渡時の説明等 販売・引渡時に所有者へ点検制度や所有者情報提供について説明する
同法第32条の9 関連事業者の責務 設置、修理、エネルギー供給等に関係する事業者の協力体制を整える
同法第32条の10 所有者情報の提供 所有者が輸入事業者等へ所有者情報を提供できる仕組みを設ける
同法第32条の11~第32条の15 利用目的の公表、利用制限、所有者名簿、点検通知、所有者情報管理 登録情報を適法かつ継続的に管理し、点検通知に利用する
同法第32条の16 特定保守製品の所有者等の責務 所有者が所有者情報を提供し、点検その他の保守に努める
同法第32条の17 点検実施義務 点検の求めがあった場合に、製造・輸入事業者が法定点検へ対応する
同法第32条の18・第32条の19 改善命令および主務大臣による公表 制度運用に重大な不備がある場合の行政措置を確認する
同法第32条の20~第32条の22 点検その他の保守の体制整備 国内で点検、修理、部品供給および受付を継続できる体制を整える

2025年12月25日施行の法改正により、長期使用製品安全点検制度に関する条番号には繰下げがあります。古いガイドや解説では、第32条の3以降の旧番号が記載されている場合があるため、現行法との照合が必要です。

対象となる特定保守製品

現行対象品目 主な経年劣化リスク 輸入販売時の主な確認事項 販売後の管理
石油給湯機 燃焼不良、漏れ、異常加熱、発火、一酸化炭素発生等 型式区分、届出、設計標準使用期間、点検期間、表示、説明資料 所有者登録、点検通知、法定点検、部品・修理体制
石油ふろがま 燃焼不良、排気不良、火災、一酸化炭素中毒等 燃料仕様、設置条件、型式区分、届出、表示、取扱説明書 所有者情報管理、点検受付、修理、交換部品の確保

対象品目への該当性は、製品名だけでなく、燃料、構造、能力、用途、設置方法および施行令別表第三の要件を確認して判断します。

対象品目の変遷

長期使用製品安全点検制度は、2009年4月1日に開始されました。

時期 対象品目 品目数 実務上の注意点
制度創設時 屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用・LPガス用)、屋内式ガスふろがま(都市ガス用・LPガス用)、石油給湯機、石油ふろがま、密閉燃焼式石油温風暖房機、ビルトイン式電気食器洗機、浴室用電気乾燥機 9品目 都市ガス用・LPガス用をそれぞれ別品目として数える
2021年8月1日以降 石油給湯機、石油ふろがま 2品目 7品目が指定から除外された
現在 石油給湯機、石油ふろがま 2品目 輸入時は最新の施行令と経済産業省資料を確認する

指定から除外された製品でも、製造時期、経過措置、メーカーによる自主点検、リコールまたは長期使用製品安全表示制度が関係する場合があります。現在の新規輸入品が特定保守製品でないことと、既存製品に安全対応が不要であることは同じではありません。

長期使用製品安全点検制度と長期使用製品安全表示制度の違い

項目 長期使用製品安全点検制度 長期使用製品安全表示制度 輸入販売者の確認事項
目的 所有者登録と点検通知を通じて法定点検を促す 経年劣化リスクを表示によって注意喚起する 点検制度と表示制度を別々に判定する
対象 特定保守製品 扇風機、エアコン、換気扇、洗濯機、ブラウン管テレビ 製品の用途・構造と対象法令を確認する
現行対象例 石油給湯機、石油ふろがま 扇風機、エアコン、換気扇、洗濯機、ブラウン管テレビ 名称が似ていても義務内容が異なる
中心となる対応 届出、点検期間設定、表示、所有者登録、点検通知、法定点検 製造年、設計上の標準使用期間、注意喚起表示 表示だけで点検制度への対応が完了するわけではない
販売後管理 所有者名簿、通知、点検受付、修理、部品供給 表示内容を通じた使用者への注意喚起 点検制度では長期の運用体制が必要

設計標準使用期間と点検期間

設計標準使用期間は、標準的な使用条件の下で使用した場合に、安全上支障なく使用できる設計上の標準的な期間です。

点検期間は、設計標準使用期間の終期を基礎として、経年劣化による危害を防止するために点検を受けるべき期間として設定されます。

すべての石油給湯機や石油ふろがまに共通する一律の年数があるわけではありません。型式、構造、部品、使用条件、耐久試験、故障データ等を踏まえ、製造事業者または輸入事業者が法令・技術資料に従って設定します。

確認項目 主な確認内容 必要資料 不備がある場合の対応
設計標準使用期間 型式ごとの設定根拠、標準使用条件、起算時点 設計資料、耐久資料、故障データ 販売前に設定根拠を再確認する
点検期間 開始時期、終了時期、通知時期 点検期間設定資料、通知計画 所有者へ通知できる運用を整える
表示 本体、取扱説明書、所有者票等の表示内容 表示図面、実物写真、取扱説明書 国内販売前に日本語表示を是正する
点検基準 点検項目、判定基準、交換基準 点検マニュアル、技術資料 国内技術者が実施できる形へ整備する

関係者の役割分担

関係者 主な役割 実務上の注意点 責任範囲の確認資料
製造事業者・輸入事業者 事業届出、点検期間設定、表示、所有者情報管理、点検通知、法定点検、保守体制 海外メーカー任せにせず国内責任主体を明確にする 届出、契約、社内規程、点検体制図
販売事業者 引渡時の説明、所有者情報提供への協力 店舗、EC、住宅設備販売等の全販売経路で説明を統一する 説明書、確認書、販売記録
設置工事・修理事業者 設置・修理時の情報伝達、所有者登録への協力 所有者と使用者が異なる場合の連絡経路を確認する 工事記録、引渡記録、作業指示書
所有者 所有者情報の提供、点検その他の保守への協力 転居、譲渡、賃貸等による所有者変更を更新する 所有者票、登録履歴、点検通知
点検事業者・メーカーサービス 点検受付、法定点検、修理、部品交換、点検記録 点検対象地域、料金、技術者、部品在庫を整える 点検マニュアル、技術者台帳、部品表

輸入販売者の確認フロー

  1. 製品の名称、用途、燃料、構造、能力および設置方法を確認する
  2. 消費生活用製品に該当するか確認する
  3. 法第2条第5項および施行令第4条・別表第三に基づき特定保守製品への該当性を確認する
  4. 長期使用製品安全表示制度その他の制度も併せて確認する
  5. 製造・輸入事業の届出と型式区分を確認する
  6. 設計標準使用期間、点検期間および設定根拠を確認する
  7. 本体表示、取扱説明書、所有者票および日本語警告を整える
  8. 所有者情報の受付方法、利用目的、管理方法および更新方法を整える
  9. 販売店・設置業者向けの引渡説明資料を準備する
  10. 点検通知を作成・送付するシステムを構築する
  11. 国内の点検受付窓口、技術者、点検基準および料金を整える
  12. 修理、部品交換、部品供給および使用中止案内の体制を整える
  13. 型式、ロット、販売先、所有者および点検履歴を追跡できるようにする
  14. 重大製品事故、リコールおよび行政照会への対応手順を整える
  15. 海外メーカーとの技術支援、費用負担および部品供給を契約で確認する

所有者登録と点検通知

所有者登録は、点検通知を適切な時期に送付するための制度運用の基礎です。

  • 所有者票、Webフォーム、電話または郵送による登録方法が用意されているか
  • 登録先が日本国内で継続的に機能するか
  • 利用目的を明示し、点検通知および点検実施に必要な範囲で情報を利用しているか
  • 所有者名簿を正確かつ安全に管理できるか
  • 転居、売却、譲渡、相続、賃貸物件の所有者変更を更新できるか
  • 点検期間の到来前に通知を送付できるか
  • 通知不達、宛先不明または所有者不明時の再確認手順があるか
  • 点検申込み、日程調整、料金説明および結果通知に対応できるか

輸入販売者が製品を販売しても、所有者情報の受付先や点検通知体制が存在しなければ、制度の目的を達成できません。

表示・引渡説明で確認すべき事項

  • 特定保守製品であることが識別できるか
  • 設計標準使用期間が表示されているか
  • 点検期間または点検時期を確認できるか
  • 製造事業者または輸入事業者の名称・連絡先が確認できるか
  • 所有者情報の登録方法が明示されているか
  • 点検受付窓口が日本国内で機能しているか
  • 取扱説明書、所有者票、保証書および点検案内が日本語で整備されているか
  • 販売事業者や設置事業者が購入者へ説明できる資料があるか
  • EC販売でも引渡説明と所有者登録案内を実施できるか

海外メーカーの取扱説明書を翻訳しただけでは、日本の法定点検制度に必要な所有者登録、点検通知、国内受付窓口等の説明が不足する場合があります。

他の製品安全規制との関係

略称・制度 正式な関係法令 主な対象 本制度との関係
PSEマーク 電気用品安全法 電気用品 電源部、電装品、付属品等について別途確認する
PSTGマーク ガス事業法 都市ガス用のガス用品 ガス用品の技術基準・表示として別途確認する
PSLPGマーク 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律 LPガス用の器具等 LPガス用品の技術基準・表示として別途確認する
PSCマーク 消費生活用製品安全法 特定製品、特別特定製品、子供用特定製品 同じ法律に基づくが、販売前規制として本制度と区別する
重大製品事故報告 消費生活用製品安全法 消費生活用製品全般 点検対象製品で重大事故が発生した場合に関係する

特定保守製品への該当性だけで、他法令への適合が確認されたことにはなりません。

フォワーダーが確認すべき事項

フォワーダーは、通常、長期使用製品安全点検制度の適合性を最終判断する立場ではありません。ただし、住宅設備機器や燃焼機器の輸入では、輸入者へ国内販売後の制度確認を促すことが実務上有効です。

  • 貨物が石油給湯機、石油ふろがま、暖房機器、給湯機器または住宅設備機器に該当しないか
  • 日本国内で一般消費者向けに販売・設置される予定か
  • 輸入者が特定保守製品への該当性を確認しているか
  • 通関後すぐに販売・設置する場合、表示、説明書および所有者登録資料が準備されているか
  • PSE、PSTG、PSLPG、PSCその他の法令も確認されているか
  • 交換部品、修理品、点検機材または回収品の輸送が発生する可能性があるか
  • 燃料残留、使用済み部品、漏れまたは危険品上の問題がないか

フォワーダー関与範囲の標準五分類

次の五分類は、法令または業界全体で定められた区分ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するための分析枠組みです。

分類 本制度での主な関与 通常確認する事項 通常含まれない判断
Simple Intermediary(単純取次) 輸送予約、連絡および資料授受の補助 品名、用途、輸入者、販売予定、必要資料の有無 特定保守製品への最終該当性または法令適合保証
Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) 対象製品、交換部品、修理品等の輸送 輸送条件、包装、燃料残留、保管および納期 輸入事業届出、所有者情報管理または法定点検
NVOCC / House B/L Issuer 契約運送人として海上・複合輸送を引き受ける 貨物情報、運送書類、危険品申告、荷送人および荷受人 House B/L発行だけを理由とする製品安全上の責任
Door-to-Door Single Contractor 集荷、通関、保管、国内配送および設置場所までの一括調整 配送条件、設置前保管、引渡時期、返送および交換物流 契約外の所有者登録、点検通知または法定点検判断
Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) 検品、表示、再梱包、交換部品輸送等の個別調整 委任範囲、対象製品、作業指示および完了記録 委任されていない制度説明、所有者情報管理または行政届出

Contracting CarrierおよびActual Carrierは、法的・契約上の地位を示す概念であり、上記五分類を置き換えるものではありません。

梱包、保管、検品、バンニング、デバンニング等の実作業は、第六分類を構成するものではありません。これらは、該当する分類、契約、作業指示および実際の取扱いに基づいて責任範囲を確認すべき個別作業です。

通関業者が確認すべき事項

  • インボイス品名、用途、構造、燃料およびHSコードから対象品目の可能性がないか
  • 輸入者が販売目的または設置目的で輸入する貨物か
  • 特定保守製品への該当性を輸入者が確認しているか
  • 輸入事業届出、表示、所有者登録、点検通知および点検体制が準備されているか
  • PSE、PSTG、PSLPG、PSCその他の国内販売規制が関係しないか
  • 通関許可と国内販売・設置の適法性を混同していないか
  • 無償交換品、修理品、返送品および点検用部品の申告方法が適切か

長期使用製品安全点検制度は、輸入申告だけで完結する制度ではありません。税関で輸入許可を受けても、届出、表示、所有者登録または点検体制が不足していれば、国内販売・設置後に問題が生じます。

通関できても販売・長期運用できない主な場面

場面 主な問題 事業への影響 必要な対応
輸入後に特定保守製品と判明した 届出、表示、登録・点検体制が未整備 販売・設置延期、在庫滞留 該当性と必要手続を再確認する
輸入事業届出を行っていない 法定手続の欠落 行政対応、販売計画の停止 所管経済産業局へ確認する
設計標準使用期間の根拠がない 表示および点検期間設定ができない 販売準備が完了しない 海外メーカーから耐久資料等を取得する
所有者登録の受付先がない 点検通知の対象者を把握できない 制度が機能しない 国内登録窓口と名簿管理を整える
国内点検技術者がいない 点検申込みへ対応できない 点検義務の履行が困難 技術者教育、委託先またはサービス網を整える
交換部品を供給できない 点検後の修理ができない 使用中止、交換または回収が必要となる 部品供給期間と代替措置を定める
販売店が制度説明を行っていない 所有者登録が進まない 点検通知不能、苦情、行政指導 説明資料、研修、確認記録を整える
所有者情報を更新できない 転居・譲渡後の通知が届かない 未点検製品が市場に残る 情報更新手段と再通知手順を設ける

行政措置との関係

措置 主な根拠 主な内容 実務上の注意点
勧告・公表 法第32条の8 引渡時説明等が適切に行われていない場合の是正と公表 販売店、設置業者を含む説明体制を確認する
改善命令 法第32条の18 点検、通知、所有者情報管理等の制度運用について改善を命じられる場合がある 社内体制、名簿、通知履歴、点検記録を整備する
主務大臣による公表 法第32条の19 命令等に関する事業者情報が公表される場合がある 事実関係と是正状況を正確に管理する
事故対応 重大製品事故報告、危害防止命令等 事故報告、販売停止、回収、修理または使用中止等 点検制度上の対応と事故対応を並行する

重大製品事故・リコールとの関係

点検通知を受けず、または点検を受けないまま長期間使用された製品では、経年劣化による事故リスクが高まる場合があります。

火災、一酸化炭素中毒、死亡事故等が発生した場合は、長期使用製品安全点検制度への対応とは別に、重大製品事故報告、原因調査、販売停止、リコール、無償点検、修理または使用中止案内を検討します。

法定点検を実施していたことだけで、製造物責任、事故報告またはリコール対応が免除されるわけではありません。反対に、リコールを実施したことだけで、所有者情報管理や点検通知等の制度上の義務が消えるわけでもありません。

実務上確認すべき資料

資料 主な用途 作成・保管主体 確認時期
製品仕様書・型式一覧 対象品目、構造、燃料、能力の判定 海外メーカー・輸入事業者 発注前・輸入前
設計標準使用期間の設定資料 期間設定と表示根拠 海外メーカー・輸入事業者 販売前
輸入事業届出書・型式区分資料 法定届出の確認 輸入事業者 事業開始前
取扱説明書・所有者票 引渡説明と所有者登録 輸入事業者 販売前
所有者名簿・登録履歴 点検通知と追跡管理 製造・輸入事業者 販売後継続
点検通知文・送付履歴 通知実施の証拠 製造・輸入事業者 点検期間前
点検・修理マニュアル 国内点検、判定、修理 製造・輸入事業者、サービス事業者 販売前・点検時
交換部品リスト・供給計画 点検後の修理・交換 海外メーカー・輸入事業者 販売前・販売後
販売・設置記録 所有者・設置場所の追跡 販売事業者・設置事業者 引渡時

具体例1:輸入した石油給湯機に所有者登録の仕組みがなかった場合

輸入販売者が海外製の石油給湯機を日本へ輸入し、住宅設備会社を通じて販売・設置したものの、所有者票、Web登録、国内の登録受付窓口を準備していなかったとします。

石油給湯機は現行の特定保守製品です。輸入許可を受け、製品が正常に作動していても、所有者情報を把握できなければ、点検期間の到来前に所有者へ通知できません。

輸入販売者は、新規販売・設置を一時停止し、既販売分の型式、販売先、設置場所を確認します。販売店・設置業者と連携して所有者登録を案内し、利用目的、情報管理、点検通知および点検受付の体制を整える必要があります。

具体例2:制度創設時の旧対象品目を新規輸入する場合

海外製のビルトイン式電気食器洗機を輸入する際、古い資料に「特定保守製品」と記載されていたため、現在も長期使用製品安全点検制度の対象であると判断したとします。

ビルトイン式電気食器洗機は、制度創設時の対象品目でしたが、2021年8月1日の改正により指定から除外されています。

ただし、対象外となったから国内規制が一切なくなるわけではありません。電気用品安全法に基づくPSEマーク、長期使用製品安全表示制度への該当性、取扱説明書、事故・リコール情報等を別途確認します。

具体例3:点検通知後に部品供給が終了していた場合

輸入販売した石油ふろがまの点検期間が近づき、所有者へ点検通知を送付したものの、海外メーカーが主要部品の製造を終了していたとします。

点検を実施できても、不具合部品を交換できなければ、継続使用の可否、使用中止、製品交換、代替部品、回収等の対応が必要になります。

輸入販売者は、販売開始前から部品供給期間、技術資料、代替部品、修理費用、製品交換および海外メーカーの費用負担を契約で定める必要があります。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
通関できれば国内販売後の点検制度も問題ない 通関と販売後の法定点検制度は別である 届出、表示、登録、通知、点検体制を別途確認する
現在も制度創設時の9品目が対象である 2021年8月1日以降の現行対象は2品目である 最新の施行令を確認する
特定保守製品はPSCマーク対象製品と同じである 特定保守製品とPSC対象製品は別の分類である 制度ごとに対象と義務を確認する
設計標準使用期間はすべての製品で同じである 型式や設計条件等に基づき設定される 海外メーカーの根拠資料を確認する
本体へ期間を表示すれば対応は完了する 所有者登録、点検通知、点検実施および保守体制も必要である 表示制度と点検制度を混同しない
海外メーカーが点検を行えば国内窓口は不要である 日本国内の所有者が利用できる点検受付と実施体制が必要である 国内サービス網を整える
所有者登録は販売店だけの責任である 製造・輸入事業者、販売事業者、所有者等がそれぞれ役割を持つ 情報の流れと責任分担を文書化する
所有者が変わっても最初の登録情報で足りる 点検通知を届けるため情報更新が必要である 譲渡、転居、相続、賃貸の変更に対応する
点検を受けなかった事故はすべて所有者責任になる 設計、表示、通知、点検体制等の事業者側対応も確認される 原因と各当事者の対応を個別に確認する
点検を実施すればリコールは不要である 製品全体に危険があれば別途リコールが必要となる 点検結果と同種事故を監視する
フォワーダーが輸送したため制度適合を保証する 輸送業務と製品安全法上の義務は通常別である 契約、委任範囲、実際の業務を確認する
指定から除外された旧製品は安全確認不要である 表示制度、事故情報、リコールまたは自主点検が関係する場合がある 製造時期と現行制度を確認する

判断チェックリスト

確認段階 確認相手 確認事項 問題がある場合の対応
商品企画時 海外メーカー、商品担当 用途、燃料、構造、能力、設置方法 対象法令が確定するまで発注を止める
対象品目確認時 法務、品質、行政窓口 法第2条第5項、施行令第4条・別表第三 特定保守製品への該当性を文書化する
輸入事業届出時 輸入事業者、経済産業局 届出要否、型式区分、事業開始時期 届出完了前の販売計画を見直す
期間設定時 海外メーカー、技術部門 設計標準使用期間、点検期間、設定根拠 耐久資料や試験資料を追加取得する
製造前・出荷前 海外メーカー、検査機関 本体表示、型式、説明書、所有者票 不適切な表示品を出荷しない
輸入申告前 輸入者、通関業者 品名、HSコード、用途、他法令 必要資料を追加取得する
販売前 販売、法務、品質 届出、表示、点検受付、部品供給 制度対応完了まで販売しない
販売店教育時 販売店、EC担当、設置業者 引渡説明、所有者登録、資料交付 研修と確認記録を実施する
所有者登録時 購入者、所有者 氏名、住所、製品、設置場所、利用目的 不備情報を再確認する
情報管理時 個人情報管理責任者 利用目的、アクセス権、更新、保存 名簿と管理手順を是正する
点検通知時 所有者、サービス部門 通知先、点検期間、申込方法、料金 不達時の再通知・情報更新を行う
点検受付時 所有者、点検事業者 型式、設置場所、使用状況、日程 対象地域外等の代替体制を手配する
法定点検時 点検技術者 点検基準、劣化、不具合、使用可否 修理、使用中止または交換を案内する
部品交換時 海外メーカー、サービス部門 部品適合性、供給期間、在庫 代替品、製品交換または回収を検討する
事故発生時 消費者庁、経済産業省、NITE 重大製品事故、同種事故、点検履歴 報告、販売停止、原因調査を開始する
リコール判断時 経営、法務、品質、海外メーカー 危険度、対象型式、販売数量、対策 回収、修理、交換、返金または注意喚起を実施する
定期見直し時 法務、品質、経営 法改正、対象品目、サービス網、部品供給 制度と運用を更新する

専門家へ相談すべき場面

  • 特定保守製品への該当性が不明な場合
  • 海外メーカーが設計標準使用期間の根拠資料を提供しない場合
  • 輸入事業届出や型式区分を判断できない場合
  • 所有者情報の利用目的、管理方法または個人情報保護に問題がある場合
  • 国内で法定点検を実施できる技術者やサービス網がない場合
  • 点検期間が近いのに所有者へ通知できない場合
  • 点検後に修理部品を供給できない場合
  • 販売済み製品の対象型式・所有者・設置場所を特定できない場合
  • 火災、一酸化炭素中毒、死亡事故または重大な不具合が発生した場合
  • 行政から報告、改善、資料提出等を求められた場合
  • リコール、使用中止または製品交換を検討する場合
  • PL保険またはリコール費用保険の適用を確認する場合

相談先としては、経済産業省または地方経済産業局、消費者庁、NITE、製品安全に詳しい弁護士、試験・検査機関、点検サービス事業者、保険会社または保険代理店、危険品輸送に詳しい物流事業者等が考えられます。

まとめ

輸入品の長期使用製品安全点検制度とは、特定保守製品について、製造・輸入事業者が点検期間等を設定し、製品への表示、所有者登録、点検通知、法定点検および保守体制の整備を行うことで、経年劣化による重大事故を防ぐ制度です。

現行の特定保守製品は、石油給湯機と石油ふろがまの2品目です。制度創設時は9品目でしたが、2021年8月1日の改正により7品目が指定から除外されました。

現行法では、特定保守製品の定義は消費生活用製品安全法第2条第5項、具体的指定は施行令第4条および別表第三に基づきます。製造・輸入事業届出、点検期間等の設定、表示、引渡説明、所有者情報管理、点検通知、点検実施および保守体制は、法第32条の4以降に定められています。

長期使用製品安全点検制度と長期使用製品安全表示制度は別の制度です。点検制度は所有者情報と法定点検を中心とし、表示制度は経年劣化リスクの注意喚起表示を中心とします。

輸入販売者は、通関前後の製品確認だけでなく、販売後に長期間継続する所有者登録、点検通知、国内点検、修理、部品供給および事故対応まで整備する必要があります。

設計標準使用期間や点検期間は、すべての製品に共通する一律の年数ではありません。型式、構造、使用条件、耐久資料等に基づく設定根拠を確認する必要があります。

PSE、PSTG、PSLPG、PSC等の制度は、長期使用製品安全点検制度とは別に確認します。特定保守製品であることだけで、他法令への適合が確認されたことにはなりません。

フォワーダーや通関業者は通常、制度適合性の最終判断者ではありませんが、石油給湯機、石油ふろがま、燃焼機器または住宅設備機器の輸入では、輸入者へ対象品目、表示、所有者登録、点検体制および他法令の確認を促すことが実務上有効です。

通関できたことと、日本国内で適法に販売・設置し、長期間安全に運用できることは同じではありません。輸入事業者は、販売前の手続と販売後の運用を一体として設計する必要があります。

本記事は、長期使用製品安全点検制度および輸入販売実務に関する一般的な整理を目的とするものであり、個別製品の特定保守製品該当性、届出義務、表示適合性、点検義務、行政責任、損害賠償責任または保険適用を確定するものではありません。実際の輸入・販売については、最新の法令、施行令、経済産業省の公式資料、製品仕様、型式区分、技術資料、契約および所管行政機関への確認が必要です。

同義語・別表記

  • 長期使用製品安全点検制度
  • 特定保守製品
  • 法定点検
  • 所有者登録
  • 点検通知
  • 設計標準使用期間
  • Long-Term Use Product Safety Inspection System
  • Long-Term Use Product Safety Inspection Program

関連用語