Institute Cargo Clauses
概要
Institute Cargo Clauses(ICC/協会貨物約款)とは、外航貨物海上保険で使用される代表的な英文貨物保険約款です。国際輸送中の貨物損害について、どのような事故が補償され、どのような損害が免責又は制限されるのかを定める基本条件として使われます。
ICCには、代表的な条件としてICC(A)、ICC(B)、ICC(C)があります。ICC(A)は最も広い補償条件、ICC(B)とICC(C)は列挙された危険を中心に補償する条件です。ただし、ICC(A)であっても、すべての損害が補償されるわけではなく、免責条項や保険期間、貨物の性質、梱包状態、事故原因によって保険金支払の可否が変わります。
実務では、ICCの種類だけでなく、戦争危険、ストライキ危険、温度変化、盗難、不着、油汚染、船齢制限、冷凍・冷蔵貨物、中古品、展示品などの特約や条件制限もあわせて確認する必要があります。
ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の違い
| 条件 | 補償範囲の考え方 | 実務上の位置づけ |
|---|---|---|
| ICC(A) | 免責事項を除き、偶然な外来事故による損害を広く対象とする条件です。 | 一般商業貨物、高額貨物、機械類などで多く使われます。 |
| ICC(B) | 一定の列挙危険を対象とする条件です。ICC(A)より補償範囲は狭くなります。 | 貨物の性質や保険料との関係で選択されることがあります。 |
| ICC(C) | 沈没、座礁、火災、衝突など、より限定された重大事故を中心に対象とする条件です。 | バルク貨物、低リスク貨物、保険料を抑えたい取引などで検討されます。 |
実務上は、ICC(A)が最も広い条件として使われることが多くあります。ただし、貨物の種類や輸送形態によっては、ICC(A)であっても温度変化、品質変化、自然劣化、梱包不十分、遅延損害などが問題になることがあります。
ICC(A)は「何でも補償」ではない
ICC(A)は一般にオールリスク条件と呼ばれますが、これは「すべての損害を無条件に補償する」という意味ではありません。偶然な外来事故による損害を広く対象とする一方で、約款上の免責事項は適用されます。
たとえば、貨物固有の性質による変質、通常の漏損・重量減少、梱包不十分、故意、遅延損害、市場価格の下落、通常の品質劣化などは、保険条件上問題になることがあります。
そのため、ICC(A)が付いているかどうかだけで安心するのではなく、貨物の性質、輸送環境、梱包方法、温度管理、積替え、保管期間、特別約款の有無を確認する必要があります。
ICC(B)・ICC(C)を使う場面
ICC(B)やICC(C)は、ICC(A)より補償範囲が限定される条件です。列挙された危険を中心に補償するため、貨物の破損、濡損、盗難、不着などが常に対象になるとは限りません。
一方で、バルク貨物、原材料、低価格貨物、比較的リスクが限定される貨物では、保険料とのバランスからICC(B)やICC(C)が検討されることがあります。
ただし、荷主が「保険は付いている」と考えていても、実際にはICC(C)で補償範囲がかなり限定されている場合があります。事故発生後に保険条件を確認した結果、想定した損害が対象外となる場合があります。
戦争・ストライキ危険との関係
ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)は貨物損害に関する基本条件ですが、戦争危険やストライキ危険は、通常のICC基本条件では免責対象として扱われます。そのため、これらの危険を対象にするには、Institute War ClausesやInstitute Strikes Clausesなどを別途手配する必要があります。
戦争、拿捕、機雷、内乱、ストライキ、暴動、テロ行為などに関係する損害は、通常のICC基本条件だけでは補償されません。特に、紛争地域、制裁対象地域、港湾ストライキが発生している地域、治安リスクの高い地域では、戦争・ストライキ危険の有無を確認する必要があります。
保険期間との関係
ICCでは、保険がいつ開始し、いつ終了するかも重要です。貨物保険は、単に本船上の事故だけを対象とするものではなく、条件に応じて、倉庫出荷から輸送中、積替え、保管、最終倉庫到着までを対象とすることがあります。
ただし、保険期間には終了条件や日数制限があります。輸入港到着後の長期保管、配送遅延、通関待ち、買主都合による保管、通常の輸送経路から外れた保管などでは、保険期間の終了や制限が問題になることがあります。
実務では、Incoterms上の危険移転時点と、貨物保険上の保険期間が必ず一致するとは限りません。CIFやCIPで保険が手配されている場合でも、買主が必要とする範囲まで補償されているかを確認する必要があります。
特約・条件制限が問題になる貨物
貨物の種類によっては、ICCの基本条件だけでは不十分な場合があります。特に、冷凍・冷蔵貨物、温度管理貨物、化学品、食品、美術品、展示品、中古機械、精密機器、バルク貨物、液体貨物などでは、特約や条件制限の確認が重要です。
たとえば、温度変化、リーファーコンテナの電源不備、品質変化、油汚染、水分混入、スペックオフ、買主による引取り拒否などは、通常のICC条件だけでは判断できないことがあります。貨物の性質に応じて、特別約款、保険会社の引受条件、免責条件を確認する必要があります。
L/C・貿易書類との関係
L/C決済では、信用状が要求する保険条件と、実際に発行される保険証券又は保険承認状の内容が一致しているかを確認する必要があります。信用状上でICC(A)、War Clauses、Strikes Clauses、保険金額、通貨、保険開始地・終了地などが指定されている場合があります。
保険条件がL/C条件と一致していない場合、銀行で書類不一致となる可能性があります。特に、CIFやCIP取引では、売主が保険を手配するため、買主が求める保険条件とL/C条件、保険証券の内容が一致しているかを出荷前に確認することが重要です。
フォワーダー・通関実務での確認ポイント
- 保険条件がICC(A)、ICC(B)、ICC(C)のどれかを確認する。
- 戦争危険、ストライキ危険が付いているか確認する。
- 貨物の性質に応じて、温度変化、盗難、不着、油汚染、品質変化などの特約が必要か確認する。
- 保険期間が、実際の輸送経路と保管期間に合っているか確認する。
- 保険金額がインボイス価額、運賃、保険料、希望利益を含めて適切か確認する。
- L/C決済の場合は、保険証券の条件が信用状条件と一致しているか確認する。
貨物事故時の確認
貨物事故が発生した場合は、まず保険条件を確認します。ICC(A)なのか、ICC(B)又はICC(C)なのか、戦争・ストライキ危険が付いているのか、特別約款や免責条件があるのかを確認する必要があります。
あわせて、事故原因、発生区間、発見時期、貨物の状態、梱包状態、温度記録、受領時リマーク、サーベイレポート、運送人への事故通知を確認します。保険金請求だけでなく、運送人や倉庫業者への求償を考えるうえでも、早期の通知と証拠保全が重要です。
まとめ
Institute Cargo Clausesは、外航貨物海上保険の補償範囲を判断するための基本約款です。実務では、ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の違いだけでなく、免責条項、戦争・ストライキ危険、保険期間、特約、L/C条件、貨物の性質をあわせて確認することが重要です。
