温度管理貨物の解凍損害とフォワーダー賠償責任

温度管理貨物の解凍損害とフォワーダー賠償責任

温度管理貨物とは、冷凍、冷蔵、保温、換気など、一定の温度・環境条件を維持して輸送する必要がある貨物をいいます。食品、冷凍水産品、畜産品、医薬品、化学品、精密材料などでは、輸送中の温度逸脱により大きな損害が発生することがあります。

特に冷凍・冷蔵貨物では、リーファーコンテナの設定温度、予冷、CYでの電源接続、海上輸送中の冷凍機作動、陸上輸送中の電源管理、デバン時の温度確認が重要になります。

温度管理貨物の事故では、貨物そのものの損害額が高額になりやすく、原因立証も難しいため、荷主、フォワーダー、NVOCC、船会社、CY、倉庫、トラック業者、保険会社の間で責任関係が大きな争点になります。

Special Container条項の考え方

NVOCC CLUBのB/L裏面約款に見られるように、リーファーコンテナ、保温コンテナ、換気コンテナなどの特殊コンテナについては、通常のドライコンテナとは異なる条件が定められることがあります。

この種の条項では、運送人が特殊コンテナを使用して貨物を運送する場合、特別な取決め、書面による指示、必要な追加運賃の支払いなどが前提とされることがあります。

また、運送人が輸送開始前または開始時に相当な注意を払って特殊コンテナが正常に作動する状態であることを確認していた場合、冷凍機、断熱設備、換気装置、その他装置の隠れた欠陥、故障、停止、機能不全などから生じた損害について、運送人が当然に責任を負うとは限らない方向で整理されることがあります。

温度維持は絶対保証ではない

リーファーコンテナを使用する場合でも、運送人が貨物の温度維持を絶対に保証しているわけではありません。

B/L約款では、特定の温度がB/L面上に記載されていたとしても、リーファーコンテナ内の温度維持そのものを保証するものではない、という考え方が置かれることがあります。

つまり、温度管理貨物で事故が発生した場合、単に「設定温度が記載されていた」「リーファーで輸送された」というだけで運送人の責任が認められるとは限りません。誰が温度を指示し、誰が設定し、貨物が積込み前に所定温度まで冷却されていたか、どこで温度逸脱が生じたかを確認する必要があります。

荷主側の予冷・梱包・温度指示責任

温度管理貨物では、荷主側の準備が極めて重要です。

リーファーコンテナは、原則として貨物を冷凍・冷蔵状態に保つための設備であり、常温の貨物を急速に冷凍するための設備ではありません。そのため、貨物はコンテナ詰め前に、指定温度まで十分に予冷されている必要があります。

B/L約款でも、Merchantがリーファーまたは特殊コンテナへ貨物を詰める場合、貨物を適切に準備・梱包し、必要な温度設定を行うべき趣旨の規定が置かれることがあります。

荷主側が予冷を怠った、貨物中心温度が高いまま積み込んだ、包装が温度管理に適していなかった、空気循環を妨げる積付けをした、といった場合には、荷主側の責任が問題になります。

フォワーダーが注意すべき温度指示

フォワーダーは、荷主から受けた温度指示を正確に船会社、NVOCC、倉庫、トラック業者へ伝達する必要があります。

温度管理貨物では、わずかな記載ミスや伝達漏れが大きな事故につながります。

  • 摂氏・華氏の取り違え
  • 冷凍と冷蔵の取り違え
  • 設定温度の入力ミス
  • 換気設定の伝達漏れ
  • 湿度条件の確認漏れ
  • 予冷要否の確認漏れ
  • 温度許容範囲の確認不足
  • リーファーコンテナ手配漏れ
  • ドレー中の電源管理漏れ

フォワーダーがBooking時に誤った温度を伝えた場合や、荷主からの温度条件を正確に関係者へ伝達しなかった場合には、フォワーダー側の賠償責任が問題になることがあります。

CY電源不備と責任関係

リーファー貨物では、CY搬入後、船積み前、揚げ港到着後、CY保管中の電源接続が重要になります。

CYで電源が接続されていなかった、電源障害があった、プラグイン記録が不十分だった、アラーム対応が遅れた、長時間電源が落ちていた、といった場合、温度逸脱や解凍損害が発生することがあります。

この場合、CY、ターミナル、船会社、NVOCC、フォワーダーの責任関係が問題になります。ただし、責任を追及するには、どの時点で温度逸脱が生じたのか、電源接続記録、温度記録、アラーム記録、コンテナ移動記録を確認する必要があります。

単に貨物が解凍していたというだけでは、誰の管理下で事故が発生したかを特定することは困難です。

温度記録が最重要証拠になる

温度管理貨物の事故では、温度記録が極めて重要です。

リーファーコンテナ本体の温度ログ、データロガー、CYのプラグイン記録、船会社の運航記録、トラック輸送中の温度記録、倉庫入出庫時の温度記録などを確認することで、温度逸脱の発生時期を推定できる場合があります。

確認すべき資料には次のようなものがあります。

  • Booking時の温度指示
  • B/L上の温度記載
  • リーファーコンテナ番号
  • 設定温度記録
  • リーファー温度ログ
  • データロガー記録
  • CYプラグイン記録
  • アラーム履歴
  • トラック輸送中の温度記録
  • 倉庫入出庫時の温度記録
  • デバン時の貨物温度
  • Survey Report
  • 写真・動画記録

これらの資料が不足すると、船会社、CY、トラック業者、倉庫、荷主側への求償が難しくなります。

解凍損害は高額化しやすい

冷凍食品、水産品、畜産品、医薬品、化学品などでは、一度温度逸脱や解凍が発生すると、貨物価値が大きく失われることがあります。

外観上は大きな損傷がなくても、品質劣化、衛生上の問題、再販売不可、廃棄処分、検査費用保管料廃棄費用、代替品手配費用が発生することがあります。

特に食品では、解凍後に再凍結して販売することができない場合が多く、貨物全損に近い扱いになることがあります。そのため、1コンテナ単位で高額な請求が発生しやすい点に注意が必要です。

貨物保険とフォワーダー賠償責任

荷主が貨物保険に加入している場合、温度逸脱や解凍損害について保険で処理されることがあります。ただし、温度管理不備、梱包不備、予冷不足、設定ミス、被保険者側の過失、免責事項が問題になることがあります。

また、貨物保険会社が荷主に保険金を支払った後、事故原因がフォワーダー、NVOCC、船会社、CY、トラック業者にあると判断されれば、代位求償が行われることがあります。

フォワーダー側が温度指示を誤った、リーファー手配を怠った、電源管理の確認を怠った、異常発生時の対応が遅れたと評価される場合には、フォワーダー賠償責任が問題になります。

船会社への再求償が難しい場合

温度管理貨物で損害が発生しても、船会社へ当然に再求償できるとは限りません。

船会社は、リーファーコンテナが輸送開始時に正常に作動していたこと、相当な注意を尽くしていたこと、隠れた欠陥や機械故障であったこと、荷主側の予冷不足や積付不良であったこと、温度維持を保証していないことなどを主張することがあります。

そのため、船会社へ請求するには、温度逸脱が船会社の責任区間で発生したこと、適切な温度管理が行われなかったこと、事故原因が荷主側の予冷不足や梱包不備ではないことを、資料に基づいて整理する必要があります。

契約前に確認すべきポイント

温度管理貨物は、通常貨物よりも契約前確認が重要です。新規案件を受ける前に、次の点を確認しておく必要があります。

  • 貨物の適正温度
  • 温度許容範囲
  • 冷凍・冷蔵・保温・換気の別
  • 予冷が完了しているか
  • 誰が温度設定を指示するか
  • 誰がコンテナに温度設定を入力するか
  • 誰がバンニングを行うか
  • 空気循環を妨げる積付けになっていないか
  • データロガーを使用するか
  • CY・トラック・倉庫での電源管理
  • 温度逸脱時の連絡体制
  • 貨物保険の温度管理条件
  • フォワーダー賠償保険の補償範囲

フォワーダー賠償保険で確認すべき点

温度管理貨物を扱うフォワーダーは、フォワーダー賠償保険や貨物損害賠償責任保険が温度管理貨物に対応しているかを確認する必要があります。

特に確認すべき点は次のとおりです。

  • 冷凍・冷蔵貨物の温度逸脱損害が対象になるか
  • 解凍損害が対象になるか
  • リーファー設定ミスが対象になるか
  • CY電源不備やプラグイン漏れが対象になるか
  • 予冷不足や荷主側梱包不備は免責にならないか
  • 廃棄費用、検査費用、保管料が対象になるか
  • サーベイ費用、争訟費用が対象になるか
  • 一事故補償限度額が十分か

冷凍・冷蔵貨物は損害額が高額化しやすいため、補償限度額が業務内容に合っているかを確認することが重要です。

実務上の注意点

温度管理貨物では、事故後に原因を調べても、資料が不足していると責任関係を整理できないことがあります。

フォワーダーは、荷主からの温度指示、Booking内容、リーファー設定、予冷確認、バンニング記録、CY搬入時の状態、温度ログ、デバン時の状態をできるだけ記録しておく必要があります。

また、温度逸脱が判明した場合は、速やかにサーベイを手配し、貨物状態、温度記録、コンテナ状態、電源記録を確認することが重要です。時間が経過すると、解凍・腐敗・品質劣化が進み、事故原因の立証がさらに難しくなります。

まとめ

温度管理貨物の解凍損害は、貨物損害額が高額になりやすく、原因立証も難しいフォワーダー賠償リスクです。

B/L約款上、リーファーコンテナなどの特殊コンテナについては、運送人が相当な注意を尽くしていた場合、隠れた欠陥、機械故障、温度維持の不保証、荷主側の予冷・梱包・設定責任が問題になることがあります。

フォワーダーは、温度指示の伝達、リーファー手配、CY電源、温度記録、サーベイ、貨物保険、フォワーダー賠償保険を契約前から整理しておく必要があります。

冷凍・冷蔵貨物は、事故後の交渉だけでなく、契約前の確認と証拠保全が結果を大きく左右する典型的な高リスク貨物です。

同義語・別表記

  • 温度管理貨物
  • 冷凍貨物
  • 冷蔵貨物
  • リーファーコンテナ
  • Reefer Container
  • Special Container
  • 解凍損害
  • 温度逸脱
  • 冷凍機故障
  • CY電源不備
  • 温度記録

公式情報