数量不足クレームで発生区間が特定できない場合の対応
概要
数量不足クレームとは、B/L、Packing List、Invoiceなどに記載された数量と、実際に到着・納品・検品された数量が一致しない場合に発生するクレームです。
数量不足は、破損や濡損と異なり、事故の発生場所がすぐに分からないことが多い実務トラブルです。船積前から不足していたのか、CFS作業中に誤仕分けされたのか、海上輸送中に紛失したのか、輸入CFSでの搬出時に不足したのか、国内配送や納品先で差異が生じたのかを切り分ける必要があります。
本記事では、数量不足クレームで発生区間が特定できない場合に、フォワーダーがどの順番で事実確認を進め、責任主体・保険・求償対応を整理すべきかを解説します。
数量不足は「誰が足りないと言っているか」から確認する
数量不足クレームでは、最初に「何個足りないか」だけを確認してはいけません。まず確認すべきなのは、誰が、どの時点で、どの基準と比較して不足を主張しているかです。
荷主がInvoice数量と納品数量を比較しているのか、倉庫がPacking Listと入庫数量を比較しているのか、納品先が発注数量と受領数量を比較しているのかによって、確認すべき資料は変わります。
例えば、B/L上は10 cartons、Packing List上は100 pieces、納品先の検品では98 piecesという場合、外装単位では不足がないが、内装個数で不足している可能性があります。この場合、海上運送人の責任をすぐに問えるとは限りません。
数量不足では、外装数量、内装数量、商品数量、販売単位を分けて確認することが重要です。
発生区間が分からないまま責任を認めない
数量不足の連絡を受けた段階で、「弊社で確認不足でした」「船会社へ請求します」「保険で対応します」と回答するのは危険です。
数量不足は、出荷前、船積時、輸送中、輸入CFS、倉庫入庫、国内配送、納品先検品のいずれの段階でも発生する可能性があります。
発生区間が特定できない段階では、フォワーダーの責任も、運送人の責任も、荷主側の出荷数量ミスも確定していません。
初動では、「不足のご連絡は確認しました。出荷数量、B/L数量、CFS入庫・出庫記録、配送記録、納品時受領記録を確認します」といった表現にとどめるべきです。
最初に集めるべき資料
数量不足クレームでは、資料を時系列で集めます。
まず、Commercial Invoice、Packing List、B/L、House B/L、Master B/L、AWBなど、出荷時に作成された書類を確認します。ここでは、外装数量、重量、容積、品名、ケースマーク、パレット数を確認します。
次に、CFS搬入記録、CY搬入記録、倉庫入庫記録、デバン記録、検品記録、POD、受領書、納品書控えを確認します。
さらに、写真、シール番号、コンテナ番号、搬出入記録、配送会社の運行記録、納品先の受領記録を確認します。
数量不足は、単一の資料だけで判断できません。各段階の数量がどこで変化したのかを追跡することが重要です。
B/L数量と実数量は同じとは限らない
実務上注意すべきなのは、B/Lに記載された数量が、必ずしも運送人による中身の確認数量を意味するとは限らないことです。
FCL貨物では、Shipper’s Load and Count、Said to Containなどの表現が使われることがあります。この場合、船会社はコンテナ内の個品数量まで確認していない可能性があります。
例えば、B/Lに「1 container said to contain 500 cartons」と記載されている場合、船会社が500 cartonsを実際に数えたとは限りません。荷主申告に基づく記載である場合があります。
そのため、FCL貨物の内装数量不足について、直ちに船会社責任と判断することはできません。シール状態、デバン記録、出荷時記録、入庫検品記録を合わせて確認する必要があります。
FCLとLCLで確認ポイントは変わる
FCL貨物とLCL貨物では、数量不足の見方が異なります。
FCLでは、コンテナ単位で引き渡されるため、シール番号、コンテナ外観、デバン時記録、荷主側バンニング記録が重要になります。コンテナシールに異常がなく、外装にも異常がない場合、コンテナ内の個数不足は出荷前またはバンニング時の問題として扱われやすくなります。
一方、LCL貨物では、CFSで複数荷主の貨物が混載・仕分けされます。そのため、CFS搬入時、輸出CFS、輸入CFS、Co-load先、配送会社など、複数の作業工程で誤仕分けや積み違いが発生する可能性があります。
LCLの数量不足では、CFSの入出庫記録、搬出伝票、仕分け記録、Co-load先との照合が重要になります。
受領書・PODのリマークを確認する
数量不足で最も重要な資料の一つが受領書やPODです。
納品時に不足が確認され、受領書に「short」「1 carton missing」「received 9 cartons only」などのリマークが残っていれば、不足発見時点を示す重要な証拠になります。
一方、受領書にリマークがなく、後日納品先から数量不足が申告された場合は、納品後の保管、開梱、検品、社内移動で差異が生じた可能性も検討する必要があります。
受領書にリマークがないからといって必ず請求できないわけではありませんが、フォワーダーや運送人にとっては重要な反論材料になります。
不足が外装単位か内装単位かを分ける
数量不足では、外装単位の不足と内装単位の不足を分ける必要があります。
外装単位の不足とは、10 cartonsのうち1 cartonが届かないようなケースです。この場合、輸送・保管・配送のどこかで外装単位の紛失や誤配送が発生した可能性があります。
内装単位の不足とは、外装箱はすべて届いているが、箱の中の商品数が足りないケースです。この場合、出荷前の梱包ミス、検品ミス、開梱後の管理ミス、盗難などが問題になります。
外装単位の不足であれば運送人やCFS、配送会社の責任を検討しやすくなりますが、内装単位の不足では、運送人が中身を確認していないことが多いため、責任追及は難しくなる場合があります。
発生区間を特定するための時系列整理
数量不足の発生区間を特定するには、時系列で数量を並べることが重要です。
出荷時数量、輸出CFS搬入数量、B/L数量、到着時搬入数量、輸入CFS出庫数量、配送会社引取数量、納品時受領数量、納品先検品数量を順番に確認します。
どこかの段階で数量が変わっていれば、その前後の工程が調査対象になります。
逆に、すべての外装数量が一致しているにもかかわらず、納品先の内装検品で不足が出た場合は、輸送中の外装紛失ではなく、出荷前や開梱後の問題として検討する必要があります。
保険会社・運送人への通知
数量不足が確認された場合、貨物保険の有無を確認し、必要に応じて保険会社へ事故一報を行います。
また、運送人、NVOCC、CFS、Co-loader、配送会社などへの通知も検討します。
重要なのは、発生区間が不明だから通知しない、という判断をしないことです。発生区間が不明な場合こそ、関係者へ権利保全通知を行い、記録や調査機会を確保する必要があります。
ただし、通知文では責任を断定せず、「数量不足が申告されているため、権利保全のため通知する」という位置づけにすることが適切です。
具体例:LCL貨物の数量不足で発生区間が不明だったケース
輸入LCL貨物で、Packing List上は20 cartonsと記載されていたにもかかわらず、納品先の検品で19 cartonsしか確認できなかったケースを考えます。
荷主はフォワーダーに対して「1 carton不足しているので賠償してほしい」と連絡しました。しかし、フォワーダーが確認したところ、B/L上は20 cartons、輸入CFSの搬入記録も20 cartons、配送会社の引取記録も20 cartonsとなっていました。
一方、納品時の受領書にはリマークがなく、納品先では一度貨物を倉庫に入れた後、翌日に検品を行っていました。
この場合、不足が輸送中に発生したのか、配送後の納品先保管中に発生したのか、または検品時のカウントミスなのかを直ちに判断することはできません。
フォワーダーは、配送会社へ納品時の写真と受領記録を確認し、CFSへ搬出記録の再確認を依頼し、荷主へ納品先での開梱・移動・検品記録の提出を求めました。
最終的に、納品先倉庫内で別ロット貨物と混在していた1 cartonが後日発見され、フォワーダーや運送人の責任問題にはなりませんでした。
このケースでは、数量不足の申告だけで責任を認めず、各段階の数量記録を順番に確認したことが重要でした。
まとめ
数量不足クレームでは、まず不足が外装単位なのか内装単位なのか、誰がどの時点で不足を確認したのかを整理する必要があります。
発生区間が特定できない段階で責任を認めると、後日フォワーダー側に不必要な負担が残ることがあります。
FCLではシール番号、デバン記録、バンニング記録が重要になり、LCLではCFS入出庫記録、Co-load先、配送記録、受領書が重要になります。
数量不足は、単純な「足りない」という問題ではなく、出荷時から納品後検品までの数量の流れを追う実務です。フォワーダーは、感覚ではなく記録をもとに、発生区間と責任主体を整理する必要があります。
