Single L/G取引の危険性
Single L/Gとは
Single L/Gとは、銀行保証を伴わず、輸入者のみが差し入れる保証状により、B/L原本なしで貨物引渡しを受けようとする実務です。
L/GはLetter of Guaranteeの略で、保証状を意味します。B/L原本がまだ到着していない場合や、書類手続きが遅れている場合に、輸入者が早期に貨物を引き取りたいとして、運送人やNVOCCへ差し入れることがあります。
しかし、Single L/Gは輸入者単独の保証にすぎません。銀行が保証するBank L/Gとは異なり、輸入者が倒産した場合や支払い不能となった場合には、保証の実効性が大きく低下します。
Bank L/Gとの違い
Bank L/Gは、銀行が関与する保証状です。B/L原本が未着の段階で貨物を引き渡す場合に、銀行が一定の保証を行うことで、運送人やNVOCCのリスクを補完する役割を持ちます。
これに対してSingle L/Gは、輸入者自身が差し入れる保証状です。銀行保証がないため、輸入者の信用力に依存します。
そのため、輸入者の資金繰りが悪化している場合や、決済前に倒産した場合には、Single L/Gは実質的な保全手段にならないことがあります。
Single L/Gは、形式上は保証状であっても、銀行担保やB/L原本に代わる安全な書類ではありません。
Single L/Gが実務上受け入れられる場合
Single L/Gは原則として高リスクな貨物引渡し方法ですが、実務上、すべてのケースで直ちに否定されるわけではありません。
たとえば、Consigneeが大手企業であり、信用力、継続取引実績、貨物量、過去の決済状況などから見て、船会社やNVOCCが一定の信用判断を行ったうえで、Single L/Gによる引渡しを受け入れる場合があります。
また、Consigneeの企業規模や取扱物量が大きい場合には、貨物を船会社またはNVOCCから引き取る乙仲・通関業者が、Consigneeとともに連帯保証を行う形で貨物引渡しが行われることもあります。
この場合でも、Single L/Gや乙仲の連帯保証は、Bank L/Gと同じ意味を持つものではありません。銀行保証ではないため、輸入者や連帯保証人の信用力に依存する点は変わりません。
したがって、Single L/Gを受けるかどうかは、Consigneeの信用力、取引実績、貨物価額、決済条件、B/L上のConsignee表示、銀行関与の有無、連帯保証人の信用力を総合的に見て判断する必要があります。
L/C決済でSingle L/Gが危険になる理由
L/C決済では、輸入者の信用状発行銀行が、輸出者側の銀行に対して、信用状条件に合致した書類が提示されることを前提に支払いを行います。
このとき、B/LのConsignee欄が銀行名またはTo Orderとなっている場合、B/L原本は代金決済と貨物支配をつなぐ重要な書類になります。
B/L原本が銀行経由で管理されることにより、輸入者が銀行との決済を完了する前に自由に貨物を引き取れない構造が作られています。
その状態で、運送人やNVOCCが銀行保証のないSingle L/Gだけで輸入者へ貨物を引き渡すと、銀行の貨物担保を失わせる危険があります。
輸入者倒産時に起きる問題
Single L/G取引で最も危険なのは、輸入者が銀行決済を完了する前に貨物を引き取り、その後倒産するケースです。
輸入者が貨物を引き取った後に倒産すると、銀行はB/L原本を管理していたにもかかわらず、現実の貨物担保を失うことになります。
この場合、商品代金の損失を受けた銀行は、B/L上の運送人、船会社、またはNVOCCに対して、貨物を不適切に引き渡したとして損害賠償請求を行う可能性があります。
つまり、Single L/Gによる貨物引渡しは、単なる早期引取りの便宜ではなく、輸入者倒産時に商品代金相当額の賠償問題へ発展する可能性がある実務です。
D/P・D/A取引との関係
Single L/Gの危険性は、L/C決済だけに限りません。
D/P決済では、輸入者が代金を支払うことにより、銀行から船積書類を受け取ります。D/A決済では、輸入者が期限付手形を引き受けることにより、船積書類を受け取ります。
いずれも、B/L原本や船積書類が代金決済または手形引受と結びついています。
そのため、輸入者が銀行との決済や手形引受を完了する前に、Single L/Gだけで貨物を引き渡すと、銀行書類の流れと貨物の現実の引渡しが切り離されます。
この場合も、輸入者が倒産したときには、銀行や関係者から運送人・NVOCCの責任が問われる可能性があります。
Trust Receiptとの関係
D/A取引や輸入ユーザンスを利用するD/P取引では、銀行が貨物に対する担保的な支配を維持しながら、輸入者に船積書類や貨物の利用を認めることがあります。
このような場合に用いられる書類の一つがTrust Receiptです。
Trust Receiptでは、輸入者が銀行に対して、貨物や売却代金を銀行のために管理することを約束する形になります。
銀行は、決済期日まで貨物に対する担保的な権利を意識して書類を管理します。そのため、運送人やNVOCCが銀行の指図を確認せずに貨物を引き渡すことは、銀行の担保権を侵害する問題につながる可能性があります。
Bank Release Orderとの関係
航空輸送では、Air Waybillが利用されます。Air WaybillはB/Lのような有価証券ではなく、通常は記名式の運送書類です。
ただし、Air Waybill上のConsigneeが銀行名になっている場合、輸入者が貨物を引き取るには、銀行からのBank Release Orderが必要になることがあります。
Bank Release Orderは、銀行が運送人やNVOCCに対して、貨物を特定の輸入者へ引き渡してよいと指図する書類です。
この指図を受ける前に、輸入者の依頼やSingle L/Gだけで貨物を引き渡すと、輸入者倒産時に銀行から損害賠償請求を受ける可能性があります。
NVOCC・フォワーダーにとっての本質的な危険
Single L/G取引の本質的な危険は、NVOCCやフォワーダーが、銀行の書類管理や貨物担保を無視して貨物を引き渡したと評価される可能性がある点です。
特に、House B/Lを発行しているNVOCCは、自社が発行したB/Lに基づく貨物引渡しについて責任を負う立場になります。
実際の貨物引渡しが船会社、現地代理店、海外パートナーによって行われる場合でも、B/L発行者であるNVOCCが責任を問われる可能性があります。
したがって、NVOCCは、輸入者からSingle L/Gが提出されたというだけでD/Oを発行したり、貨物引渡しを認めたりしてはいけません。
海外代理店業務との関係
日本からの輸出貨物でHouse B/Lを発行している場合、仕向地でのB/L回収、D/O発行、貨物引渡しは海外代理店が行うことが多くなります。
しかし、海外代理店が現地で貨物を引き渡したとしても、House B/Lを発行したNVOCCの責任が問題になる可能性があります。
特に、代理店がB/L原本の回収、Bank L/Gの確認、Bank Release Orderの受領、Consignee確認を誤ると、誤引渡しや銀行担保侵害の問題につながります。
NVOCCは、海外代理店に対して、Single L/Gでは引渡しを認めない条件、Bank L/Gまたは銀行指図が必要な条件、B/L原本回収手順を明確に指示しておく必要があります。
Single L/Gだけでは危険な場面
次のような取引では、Single L/Gだけで貨物を引き渡すことは特に危険です。
- L/C決済でB/LのConsigneeが銀行名またはTo Orderの場合
- D/P決済で輸入者が代金支払い前の場合
- D/A決済で輸入者が手形引受前または銀行指図前の場合
- 輸入ユーザンスを利用しており、銀行が貨物担保を意識している場合
- Air WaybillのConsigneeが銀行名で、Bank Release Orderが必要な場合
- B/L原本が未着で、Bank L/Gが提出されていない場合
- 輸入者の信用状態に不安がある場合
- 連帯保証人となる乙仲・通関業者の信用力や保証意思が明確でない場合
このような場合、輸入者単独の保証状だけで貨物を引き渡すと、後に重大な損害賠償問題に発展する可能性があります。
貨物保険との関係
Single L/Gによる貨物引渡しの問題は、貨物保険とは直接の補償対象が異なります。
貨物保険は、通常、輸送中の滅失・損傷などの物的損害を対象とするものであり、輸入者が代金を支払わない、銀行が貨物担保を失う、運送人が誤って貨物を引き渡すといった信用リスクや賠償リスクを直接補償するものではありません。
ただし、貨物損害事故が絡む場合には、B/L原本、Consignee、保険証券、保険金請求権、運送人への求償権が問題になることがあります。
また、NVOCCやフォワーダーがSingle L/Gに基づき不適切に貨物を引き渡した場合、その責任は貨物保険ではなく、NVOCC賠償責任やフォワーダー賠償責任の問題として検討されることになります。
実務上の確認事項
Single L/Gによる貨物引渡しを求められた場合、NVOCCやフォワーダーは少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 決済条件がL/C、D/P、D/A、送金のいずれか
- B/LのConsignee欄が銀行名、To Order、輸入者名のいずれか
- B/L原本が発行されているか
- Original B/Lの全通がどこにあるか
- 銀行のBank L/GまたはBank Release Orderが必要な取引か
- 輸入者が銀行決済を完了しているか
- 輸入ユーザンスやTrust Receiptが関係しているか
- Consigneeの信用力、企業規模、取扱物量、過去の取引実績
- 乙仲・通関業者が連帯保証する場合、その保証内容と信用力
- 海外代理店が銀行指図なしに貨物を引き渡そうとしていないか
- 貨物引渡し後に銀行から請求を受ける可能性がないか
これらを確認せずにSingle L/Gだけで貨物を引き渡すことは、NVOCCやフォワーダーにとって非常に危険です。
まとめ
Single L/Gとは、銀行保証を伴わない輸入者単独の保証状です。
B/L原本が未着の場合や、早期に貨物を引き取りたい場合に利用を求められることがありますが、Bank L/Gとは安全性が大きく異なります。
実務上は、Consigneeが大手企業である場合や、取引実績・物量・信用力を踏まえて、船会社やNVOCCがSingle L/Gを受ける場合もあります。また、乙仲・通関業者が連帯保証する形で貨物引渡しが行われることもあります。
しかし、それらはあくまで信用判断に基づく例外的な実務であり、銀行保証と同じ安全性を持つものではありません。
特にL/C決済、D/P決済、D/A決済、輸入ユーザンス、Bank Release Orderが関係する取引では、銀行が貨物に対する担保的な支配を前提に書類を管理していることがあります。
その状態で、NVOCCや運送人がSingle L/Gだけで貨物を引き渡し、輸入者が倒産した場合、銀行から商品代金相当額の損害賠償請求を受ける可能性があります。
Single L/Gは、貨物引渡しを簡単にする便利な書類ではなく、B/L原本、銀行担保、決済条件、D/O発行、Consigneeの信用力、連帯保証の内容、NVOCC責任を一体で確認しなければならない高リスクな実務です。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://tokiomaritime.com/single-lg/
