D/A決済とは

D/A決済とは

D/A決済とは、Documents against Acceptanceの略で、日本語では「引受渡し」と呼ばれる荷為替取引の一種です。

輸入者は、輸入地の銀行で期限付手形を引き受けることにより、B/L原本、インボイス、パッキングリスト、保険証券などの船積書類を受け取ります。

D/P決済が「支払いと引き換えに書類を受け取る」取引であるのに対し、D/A決済は「将来の支払い約束と引き換えに書類を受け取る」取引です。

そのため、D/A決済は輸入者にとっては資金繰り上有利ですが、輸出者にとっては代金回収リスクを伴う決済条件です。

この記事で扱う範囲

この記事では、D/A決済の基本的な仕組み、D/P決済・L/C決済との違い、B/L原本や銀行関連書類との関係、フォワーダー・NVOCCが貨物引渡しで注意すべき点を整理します。

一方で、すでに決まっていた決済条件を後からD/Aへ変更する場面、D/P決済そのものの詳細、輸出取引信用保険の具体的な契約条件については、それぞれ別の論点として切り分けて考える必要があります。

項目 この記事で扱う内容 別テーマとして整理すべき内容
D/A決済の基本 期限付手形の引受により船積書類を受け取る仕組み 国ごとの手形法制、裁判・仲裁手続の詳細
D/P・L/Cとの違い 書類受取条件、銀行の役割、輸出者側リスクの違い D/P決済単独の詳細実務、L/C条件不一致の処理
D/A変更要求 D/A決済が輸出者に信用リスクを生じさせる理由 L/C、D/P、前払い条件からD/Aへ変更を求められた場合の判断基準
信用保険・保証 D/A決済では別途信用リスク対策が必要になること 輸出取引信用保険、ファクタリング、Aval、Forfaitingの個別条件
フォワーダー・NVOCC実務 Consignee、銀行指図、B/L原本、Bank Release Orderの確認 個別案件における責任判断、約款、運送契約上の抗弁

D/A決済の基本的な流れ

D/A決済では、輸出者が船積後に船積書類を銀行へ提出し、輸出地銀行から輸入地銀行へ書類が送られます。

輸入者は、輸入地銀行で期限付手形を引き受けます。たとえば、Draft at 60 days after sightのように、一覧後60日払いなどの条件が付されることがあります。

輸入者は、手形を引き受けることで船積書類を受け取り、B/L原本を使って貨物を引き取ることができます。

段階 主な動き 実務上の意味
1. 船積み 輸出者が貨物を船積みし、B/L、インボイス、パッキングリストなどを取得する 船積書類が代金回収と貨物引渡しの鍵になります。
2. 書類提出 輸出者が輸出地銀行へ荷為替書類を提出する 銀行経由で輸入者側へ書類を送る準備をします。
3. 書類送付 輸出地銀行から輸入地銀行へ書類が送られる 銀行は書類取次ぎの役割を担います。
4. 手形引受 輸入者が期限付手形を引き受ける 輸入者は将来支払うことを約束しますが、この時点では代金を支払いません。
5. 書類引渡し 輸入者が銀行から船積書類を受け取る 輸入者はB/L原本などを使って貨物引取りへ進めます。
6. 満期支払 手形期日に輸入者が代金を支払う ここで支払われない場合、Unpaidの問題になります。

D/A・D/P・L/Cの違い

D/A決済を理解するには、D/P決済やL/C決済との違いを並べて確認することが重要です。特に、輸入者がいつ書類を受け取れるのか、銀行がどのような責任を負うのか、輸出者の代金回収安全性がどの程度あるのかがポイントになります。

項目 D/A決済 D/P決済 L/C決済
正式名称 Documents against Acceptance Documents against Payment Letter of Credit
日本語での考え方 引受渡し 支払渡し 信用状決済
書類受取条件 輸入者が期限付手形を引き受けると書類を受け取れる 輸入者が代金を支払うと書類を受け取れる 信用状条件に合致した書類が提示されると銀行支払の対象になる
代金支払時期 後日払い 書類受取時に支払い 信用状条件に従って支払い
銀行の主な役割 書類取次ぎ、手形引受確認 書類取次ぎ、代金受領後の書類引渡し 信用状発行銀行による支払確約
輸出者側の安全性 輸入者の信用力に大きく依存する D/Aよりは安全性が高いが、輸入者が支払拒絶すると書類が滞留する 信用状条件を満たせば銀行信用に依拠できる
輸入者側の資金繰り 有利。貨物引取り後に支払期日が来る 支払後でなければ書類を受け取れない 銀行枠や信用状開設手続が必要
主なリスク 貨物引渡し後のUnpaid、支払遅延、品質クレームによる減額要求 輸入者の支払拒絶、貨物滞留、返送・転売費用 書類不一致、信用状条件の解釈、発行銀行・国リスク
実務上の注意点 与信管理、B/L管理、支払サイト、保証・信用保険の確認が重要 支払拒絶時の貨物管理と書類回収が重要 信用状条件と船積書類の厳格な照合が重要

D/A決済の最大のリスク

D/A決済の最大のリスクは、輸入者が代金を支払う前に船積書類を取得し、貨物を引き取ることができる点です。

輸入者が貨物を販売した後、手形期日に代金を支払えない場合、輸出者は商品も代金も失う可能性があります。

つまり、D/A決済は輸出者にとって、輸入者に信用を供与する取引です。輸入者の与信力を確認せずに利用すると、代金回収不能の危険が高くなります。

よくある誤解

D/A決済では、銀行、手形、B/L原本などが関係するため、実際以上に安全な取引だと誤解されることがあります。しかし、D/A決済の本質は、輸入者が支払前に書類を受け取れる点にあります。

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
D/A決済は銀行を通すから安全である D/A決済で銀行が関与しても、通常は輸入者の支払を保証するものではありません。 銀行の役割が取立なのか、買取なのか、保証付きなのかを確認します。
手形を引き受けた以上、代金回収は確定する 期限付手形を引き受けても、満期日に輸入者が支払わなければUnpaidになります。 輸入者の信用状態、支払実績、支払サイトを確認します。
B/L原本を銀行経由にしていれば輸出者は安心である D/Aでは、輸入者が手形を引き受けるとB/L原本を受け取れるため、その後は貨物引取りに進めます。 B/L原本がいつ、誰に、どの条件で渡るかを確認します。
D/Aは一般的な貿易決済なので特別な注意は不要である D/Aは実務上存在する決済条件ですが、輸出者が輸入者に信用を与える取引です。 新規取引先、支払遅延先、高額取引では慎重に判断します。
貨物保険があるので未払いも補償される 貨物保険は原則として貨物の物的損害を対象とし、輸入者の支払不能を補償するものではありません。 未払いリスクは信用保険、保証、ファクタリングなど別の手段で検討します。
フォワーダーは決済条件に関係なく通常どおり引き渡せばよい Consigneeが銀行名の場合や銀行指図が必要な場合、誤った引渡しが責任問題になることがあります。 銀行指図、B/L原本、Bank Release Order、L/Gの内容を確認します。

B/L原本との関係

海上輸送でD/A決済を利用する場合、B/L原本は貨物引渡しに関わる重要な書類です。

輸入者は、期限付手形を引き受けた後にB/L原本を受け取り、そのB/L原本を使ってD/Oを取得し、貨物を引き取ります。

このためD/A決済では、B/L原本が代金回収の担保として機能する期間が短くなります。輸入者が書類を受け取った後は、貨物支配が輸入者側へ移りやすくなるためです。

Bank Release Order・Trust Receiptとの関係

D/A決済や輸入ユーザンスが関係する取引では、B/L原本だけでなく、Bank Release Order、Trust Receipt、Bank L/G、Single L/Gなどの書類が問題になることがあります。

これらの書類は、銀行、輸入者、運送人、フォワーダー、NVOCCの間で、誰の指図により貨物を引き渡してよいかを判断するうえで重要です。

書類・仕組み 主な機能 問題になる場面 確認事項
B/L原本 海上輸送で貨物引渡しに関わる代表的な船積書類 D/A決済で輸入者が手形引受後にB/L原本を受け取る場面 B/L原本の所持者、Consignee表示、裏書、銀行経由の有無を確認します。
Bank Release Order 銀行が貨物引渡しを認める指図書として使われることがある書類 AWBや銀行名Consigneeの貨物で、銀行の指図なしに輸入者が引取りを求める場面 発行銀行、対象貨物、引渡先、指図内容、原本性・真正性を確認します。
Trust Receipt 銀行が輸入者に貨物または書類の取扱いを認める際に使われることがある書類 輸入ユーザンスや銀行金融が関係し、銀行が担保権を意識している場面 銀行と輸入者の関係書類であり、運送人が何を根拠に引き渡すべきかを別途確認します。
Bank L/G 銀行が保証人となるL/G B/L原本未着時や書類未整備時に貨物引渡しを求められる場面 保証銀行、保証範囲、対象B/L、免責文言、署名権限を確認します。
Single L/G 輸入者単独で差し入れるL/G B/L原本未着時に輸入者が早期引渡しを求める場面 銀行保証がないため、輸入者倒産時の回収可能性が弱くなる点に注意します。
AWB 航空輸送で使われる記名式の運送書類 AWB上のConsigneeが銀行名で、輸入者が直接引取りを求める場面 Consignee、銀行指図、Bank Release Orderの要否を確認します。

輸入ユーザンスとの関係

D/A決済では、輸入者が期限付手形を引き受け、将来の期日に支払いを行います。

また、D/P決済であっても、輸入者が銀行の輸入ユーザンスを利用する場合には、銀行が一定期間の金融を供与する形になります。

このような場合、銀行は貨物に対する担保権を意識し、Trust ReceiptやBank Release Orderなどの書類を求めることがあります。

フォワーダーやNVOCCは、輸入者が「銀行とは話がついている」と説明した場合でも、実際にどの書類に基づいて貨物を引き渡してよいのかを確認する必要があります。

Bank Release Orderとの関係

Air Waybillを利用する航空輸送では、B/L原本の提示による貨物引渡しとは異なり、記名式の運送書類に基づいて貨物が引き渡されます。

Air Waybill上のConsigneeが銀行名になっている場合、輸入者が貨物を引き取るには、銀行からのBank Release Orderが必要になることがあります。

銀行の指図を受ける前に運送人やNVOCCが貨物を引き渡した場合、輸入者が倒産した際に銀行から損害賠償請求を受ける可能性があります。

そのため、AWB貨物であっても、D/A決済や銀行金融が関係する場合には、単に輸入者の依頼だけで引き渡してよいとは限りません。

フォワーダー・NVOCCが注意すべき場面

D/A決済では、輸入者が代金を支払う前に貨物を引き取れる構造になるため、フォワーダーやNVOCCは書類の流れを慎重に確認する必要があります。

特に、Consigneeが銀行名である場合、B/L原本が未着である場合、Single L/Gでの引渡しを求められた場合、銀行指図が必要な貨物である場合には注意が必要です。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
Consigneeが銀行名になっている場合 輸入者、銀行、運送人、NVOCC 銀行指図またはBank Release Orderが必要か 銀行の明確な指図が確認できるまで、輸入者へ直接引き渡さないようにします。
B/L原本が未着のまま引渡しを求められた場合 輸入者、船会社、NVOCC、必要に応じて銀行 Original B/Lの所在、L/Gの差入れ条件、Bank L/Gの有無 Single L/Gだけで足りるかを慎重に判断し、必要に応じてBank L/Gを求めます。
D/A決済であることが判明した場合 荷主、輸入者、銀行、社内担当者 書類引渡し条件、貨物引渡し制限、銀行指図の有無 通常貨物と同じ扱いにせず、決済条件と書類条件を確認します。
AWBで銀行名Consigneeになっている場合 銀行、航空会社、フォワーダー、輸入者 Bank Release Orderの要否、貨物引渡先、銀行指図の内容 輸入者の依頼だけで貨物を引き渡さず、銀行指図を確認します。
Surrendered B/LやSea Waybillが使われている場合 輸出者、輸入者、NVOCC、船会社 貨物引渡しのコントロールがどの程度残っているか 代金未回収のまま貨物が引き渡されるリスクを関係者に確認します。
輸入者が急いで引渡しを求める場合 輸入者、荷主、銀行、社内管理者 支払状況、書類条件、銀行承認、L/Gの内容 急ぎの依頼ほど書類確認を省略せず、記録を残します。
銀行から照会やクレームが来た場合 銀行、運送人、NVOCC、社内管理者 誰の指図で、どの書類に基づき、いつ貨物を引き渡したか 引渡記録、D/O発行記録、L/G、メール、Bank Release Orderを確認します。

次のような対応は、特に危険です。

  • 銀行指図を確認せずに貨物を引き渡すこと
  • Consigneeが銀行名であるにもかかわらず輸入者へ直接引き渡すこと
  • Single L/Gだけで貨物を引き渡すこと
  • D/A決済であることを確認せず、通常貨物と同じ扱いをすること
  • B/L原本、Bank Release Order、D/O発行条件を確認せずに引渡しを急ぐこと

D/A決済では、貨物引渡しが輸出者、銀行、輸入者間の信用供与と密接に関係するため、誤った引渡しは単なる事務ミスでは済まないことがあります。

貨物保険との関係

D/A決済そのものは、輸入者の支払不能を補償する貨物保険ではありません。

貨物保険は、原則として輸送中の滅失・損傷などの物的損害を対象とするものであり、輸入者が手形期日に代金を支払えないという信用リスクを直接補償するものではありません。

ただし、貨物損害が発生した場合には、誰が被保険利益を持つのか、誰が保険金請求権を持つのか、誰が運送人へ損害賠償請求できるのかが問題になることがあります。

D/A決済では、貨物の所有権、危険負担、B/Lの所持、保険証券の名義、インコタームズ、売買契約上の条件が絡むため、貨物保険の請求権と代金回収リスクを分けて確認することが重要です。

実務上の注意点

D/A決済は、輸入者にとっては資金繰り上便利な取引ですが、輸出者にとっては代金回収リスクの大きい取引です。

輸出者は、輸入者の信用力、取引実績、販売先、現地回収可能性、支払サイト、信用保険や保証の有無を確認したうえで利用する必要があります。

フォワーダーやNVOCCは、D/A決済かどうか、Consigneeが誰か、銀行指図が必要か、貨物引渡しに制限があるかを確認し、安易な貨物引渡しを避ける必要があります。

特に、D/A決済では「書類を渡すこと」と「貨物を渡すこと」が、代金回収の安全性に直結します。決済条件を知らないまま引渡しだけを処理すると、後で責任関係が問題になることがあります。

まとめ

D/A決済とは、輸入者が期限付手形を引き受けることにより船積書類を受け取る荷為替取引です。

D/P決済と異なり、輸入者は代金を直ちに支払わなくても書類を受け取れるため、輸出者にとっては信用リスクが大きくなります。

また、L/C決済のように銀行が支払を確約する仕組みではないため、銀行を経由する取引であっても、輸入者の支払能力と支払意思を確認することが重要です。

D/A決済は、B/L原本、Bank Release Order、Trust Receipt、貨物保険、保険金請求権とも関係するため、単なる決済条件ではなく、貨物引渡し実務と一体で理解する必要があります。

輸出者、銀行、輸入者、フォワーダー、NVOCCのいずれにとっても、D/A決済では「誰が、どの書類に基づき、いつ貨物を引き渡してよいのか」を確認することが基本です。

同義語・別表記

  • D/A
  • Documents against Acceptance
  • 引受渡し
  • D/A決済
  • D/A取引
  • 荷為替取引
  • 期限付手形
  • Usance Draft

公式情報