ワシントン条約(CITES)の輸入通関規制

CITES Import Customs Clearance Regulations

ワシントン条約(CITES)の輸入通関規制とは

ワシントン条約(CITES)の輸入通関規制とは、絶滅のおそれのある野生動植物や、その部分、派生物、加工品を日本へ輸入する際に、CITES書類、輸入承認、事前確認、通関時確認、指定官署、NACCS上の他法令確認、原本管理などを確認する実務です。

ワシントン条約は、制度としては野生動植物の国際取引を規制する国際条約です。しかし、輸入実務では、自然保護制度としてだけでなく、「貨物を日本へ入れられるか」「どの官署で申告できるか」「どの書類を税関へ提出・提示するか」「NACCS上でどの他法令確認を行うか」という通関上の問題として現れます。

対象となるのは、生きた動植物だけではありません。毛皮、皮革製品、象牙、べっ甲、サンゴ、木材、楽器、植物、漢方薬、健康食品、化粧品、標本、装飾品、研究用サンプルなど、動植物由来の原材料を含む製品も対象となる場合があります。

書類不備や該当性の見落としがあると、輸入通関の保留、指定官署への申告変更、貨物の滞留、保管料、返送費用、廃棄費用、納期遅延、行政上の問題につながる可能性があります。

この記事で扱う範囲

この記事では、ワシントン条約を制度解説としてだけでなく、輸入通関・他法令確認・フォワーダー実務・通関業者実務に関係する規制として扱います。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
輸入通関でのCITES確認 日本へ輸入する貨物がワシントン条約対象かどうかを輸入実務上どう確認するかを扱います。 ワシントン条約の目的、条約の背景、附属書制度全体はCITES総論の記事で扱います。
輸入承認 経済産業大臣の輸入承認が必要となる場合と、輸入承認証の役割を整理します。 輸入承認申請の個別様式、申請先、審査資料は輸入承認の記事で扱います。
事前確認 事前確認書が必要となるケースと、船積前に確認すべき事項を扱います。 特定国原産、対象種リスト、事前確認の申請細目は事前確認の記事で扱います。
通関時確認 輸入承認・事前確認の対象外でも、輸入申告時にCITES書類原本を確認する実務を扱います。 税関審査、他法令証明、NACCS入力の細部は輸入通関の記事で扱います。
指定官署 ワシントン条約該当貨物を申告できる税関官署の確認と、搬入先選定の注意点を扱います。 各税関官署、保税地域、保税運送の詳細は税関・保税関係の記事で扱います。
フォワーダー・通関業者の確認 荷主から依頼を受けた時点で確認すべき情報、書類、輸送設計を整理します。 フォワーダーの責任範囲、E&Oリスク、荷主確認の実務は別記事で扱います。
貨物到着後の対応 到着後にCITES対象と判明した場合の対応、保管料、返送、廃棄、費用負担を扱います。 貨物保険、デマレージ、ディテンション、保管料の詳細は各費用・保険記事で扱います。

制度の目的と背景

ワシントン条約は、過度な国際取引によって野生動植物が絶滅に追い込まれることを防ぐために、国際取引を規制する制度です。対象となる種は附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに区分され、区分や貨物の状態に応じて必要な書類や手続が変わります。

日本の輸入実務では、ワシントン条約は外為法・輸入貿易管理令に基づく輸入管理、税関での他法令確認、指定官署での輸入申告、NACCS入力、原本提出・提示と結びつきます。つまり、CITES対象かどうかの確認は、単なる法令知識ではなく、貨物を通関できるかどうかに直結する確認です。

特に、輸入承認証、事前確認書、CITES輸出許可書、CITES再輸出証明書、輸入許可通知書は、それぞれ役割が異なります。これらを混同すると、書類が存在しているにもかかわらず通関が止まることがあります。

輸入時に問題となる主な貨物

ワシントン条約対象貨物は、インボイス上の品名だけでは判断できません。一般的な商品名であっても、原材料や成分に対象種が含まれている場合があります。

貨物の種類 具体例 確認すべき情報 実務上の注意点
生きた動物・植物 動物、魚類、爬虫類、鳥類、昆虫、植物、苗、種子、球根、切花 学名、原産国、附属書区分、生体かどうか、検疫要否 CITESだけでなく動植物検疫や受入施設の確認も必要です。
皮革製品 ワニ革、ヘビ革、トカゲ革を使用したバッグ、財布、ベルト、靴 学名、原産国、タグ番号、輸出国側CITES書類 「Leather Bag」だけでは対象性を判断できません。
装飾品・工芸品 象牙、べっ甲、サンゴ、骨、角、貝殻を使用した装飾品 素材、学名、取得時期、条約適用前取得品かどうか 骨董品や中古品でも対象となることがあります。
木材・楽器 ローズウッド、黒檀、マホガニーなどを使用した木材、家具、楽器、部材 樹種、学名、加工状態、製造年、部材の使用箇所 製品全体ではなく、使用部材単位で対象性を確認します。
化粧品・健康食品・医薬品原料 植物エキス、漢方薬、健康食品、化粧品原料、医薬品原料 成分表、原料規格書、学名、含有量、薬機法・食品衛生法の確認 完成品名ではなく原材料・成分で確認します。
標本・研究用サンプル 剥製、標本、研究用サンプル、教育用資料、DNA試料 研究目的、学名、数量、保存状態、受入機関 非商業目的でもCITES手続が不要とは限りません。
展示会・販促・返送貨物 展示会用サンプル、販促品、修理返送品、個人携行品 輸入目的、返送予定、再輸出予定、原本管理 一時的な持込みでも、CITES対象なら確認が必要です。

輸入承認・事前確認・通関時確認の違い

ワシントン条約対象貨物を日本へ輸入する場合、主に「輸入承認」「事前確認」「通関時確認」のいずれかが問題になります。

区分 主な対象 主な手続 実務上の注意点
輸入承認 附属書Ⅰ掲載種など、特に厳格な管理が必要な貨物です。 経済産業大臣宛てに輸入承認申請を行い、輸入承認証を取得します。 輸出国側書類だけでは足りず、日本側の承認取得前に貨物を到着させると通関が止まりやすくなります。
事前確認 附属書Ⅱ・Ⅲ掲載種のうち、生きている動物や特定国原産など事前確認制度の対象となる貨物です。 経済産業省等へ事前確認申請を行い、事前確認書を取得します。 船積前に対象種、原産国、船積国、輸出国側CITES書類を確認する必要があります。
通関時確認 輸入承認・事前確認の対象外となる附属書Ⅱ・Ⅲ掲載種などです。 輸入申告時に、輸出国側のCITES輸出許可書等の原本を税関へ提出・提示して確認を受けます。 事前申請が不要に見えても、原本不備、記載不一致、指定官署違いで通関が止まることがあります。

この区分は、附属書だけで機械的に決まるものではありません。対象種、原産国、船積国、輸出国、生体か加工品か、再輸出かどうか、特定国原産に該当するかどうかによって手続が変わります。

輸入時に必要となる主な書類

ワシントン条約対象貨物の輸入で問題となる主な書類には、次のようなものがあります。実際に必要となる書類は、附属書区分、原産国、輸出国、貨物の状態、輸入目的によって異なります。

書類 主な役割 誰が準備・取得するか 注意点
CITES輸出許可書 輸出国側でCITES対象貨物の輸出を認める書類です。 海外輸出者、輸出国側申請者 原本性、有効期限、学名、数量、輸出者・輸入者の記載を確認します。
CITES再輸出証明書 一度輸入されたCITES対象貨物を第三国へ出す場合の証明書です。 海外輸出者、再輸出国側申請者 再輸出国と原産国、過去の輸入履歴を確認します。
条約適用前証明書・繁殖証明書・商品見本証明書 取得時期、繁殖・栽培、商品見本などの特殊事情を説明する書類です。 海外輸出者、所有者、関係機関 通常の輸出許可書と同じものではないため、用途を確認します。
輸入承認証 日本側で輸入承認が必要な貨物について、経済産業大臣の承認を示す書類です。 日本側輸入者、申請担当者 税関の輸入許可通知書とは別の書類です。
事前確認書 日本側で事前確認が必要な貨物について、輸入前の確認を受けたことを示す書類です。 日本側輸入者、申請担当者 船積前に取得が必要となる場合があるため、到着後対応では遅れることがあります。
輸入許可通知書 税関で輸入申告が許可されたことを示す通関後の書類です。 税関手続の結果として発行・通知されます。 輸入承認証や事前確認書の代わりにはなりません。
インボイス・パッキングリスト・B/L・AWB 輸入申告、貨物内容、輸送経路、数量を示す基本書類です。 輸出者、フォワーダー、船会社、航空会社 CITES書類の品名、数量、重量、輸出者・輸入者と整合している必要があります。
成分表・材質証明・学名資料・製造者証明 貨物がCITES対象かどうかを判断するための補足資料です。 メーカー、仕入先、荷主 一般品名だけでは対象性を判断できない場合に重要です。

他制度との比較

制度・書類 主な目的 CITES輸入通関との関係 実務上の注意点
CITES書類 輸出国または再輸出国で、CITES対象貨物の国際移動を認めることです。 CITES輸出許可書、再輸出証明書などを税関で確認します。 原本、有効期限、学名、数量、輸出者・輸入者の整合が重要です。
輸入承認証 日本側で輸入承認が必要な貨物について、経済産業大臣の承認を受けることです。 対象貨物では、CITES書類とあわせて税関へ提出します。 税関の輸入許可通知書と混同しないようにします。
事前確認書 対象貨物について、輸入前に事前確認を受けることです。 対象貨物では、CITES書類とあわせて確認されます。 船積前・到着前に取得時期を確認します。
輸入許可通知書 税関の輸入申告が許可されたことを示すことです。 通関完了後の税関手続上の書類です。 輸入承認証や事前確認書の代替ではありません。
動植物検疫 病害虫や家畜伝染病などの侵入を防止することです。 動植物、木材、種子、畜産物などではCITESと同時に問題になる場合があります。 CITES書類があっても、検疫手続が不要になるとは限りません。
食品衛生法・薬機法 食品、添加物、化粧品、医薬品、医薬部外品等の安全性・適法性を確認することです。 健康食品、漢方薬、化粧品原料、医薬品原料ではCITESと重なることがあります。 成分、用途、販売形態によって他法令確認が追加されます。

適用される場面

場面 問題となる貨物 確認すべき手続 実務上の注意点
通常輸入 海外から販売目的で輸入する皮革製品、木材製品、植物製品などです。 CITES書類、輸入承認、事前確認、通関時確認を確認します。 船積前に必要書類と指定官署を確認します。
展示品輸入 展示会用の楽器、美術品、装飾品、標本などです。 一時的な輸入でもCITES対象性と原本管理を確認します。 展示後の返送・再輸出まで含めて確認します。
修理品・返送品 海外から日本へ修理のために入る楽器、バッグ、装飾品などです。 輸入時CITES書類と再輸出時の証明書要否を確認します。 修理後に国外へ返送する場合は再輸出も問題になります。
研究用サンプル 標本、DNA試料、植物片、動物由来資料などです。 非商業目的でもCITES書類、輸入承認、事前確認の要否を確認します。 大学・研究機関案件でも通常の宅配便感覚で処理しないようにします。
小口・国際宅配便 サンプル、個人購入品、販促品、小型部品などです。 CITES対象性、原本書類、指定官署、宅配業者の取扱可否を確認します。 少量・無償でも対象外とは限りません。
食品・化粧品・医薬品原料 漢方薬、健康食品、植物エキス、化粧品原料、医薬品原料などです。 CITES、食品衛生法、薬機法、検疫等を確認します。 成分表と学名資料が重要です。

適用要件と対象外になり得る場合

確認項目 適用されやすい場合 対象外または別確認となり得る場合 注意点
対象種 学名がCITES附属書に掲載されている場合です。 附属書に掲載されていない種の場合です。 和名、英名、商品名だけでは判断できません。
部分・派生物・加工品 皮革、木材、骨、角、抽出物、粉末、エキスなどが対象範囲に含まれる場合です。 附属書注釈により一部加工品が対象外となる場合があります。 対象範囲は種ごとの注釈確認が必要です。
原産国・輸出国 原産国、輸出国、再輸出国がCITES書類と関係する場合です。 単なる製造国や出荷国だけでは判断できない場合があります。 CITES上の原産国と貿易上の原産地を区別します。
輸入目的 販売、展示、研究、修理、返送、個人使用など国際移動がある場合です。 非商業目的でも手続不要とは限りません。 目的よりも対象種と国際移動の有無が重要です。
書類原本 CITES輸出許可書等の原本提出・提示が必要な場合です。 コピーやPDFでは足りない場合があります。 原本が貨物到着前に届くかを確認します。
有効期限 CITES書類に有効期限がある場合です。 期限後の輸入申告ができない場合があります。 船積日、到着日、輸入申告日をあわせて管理します。

輸入手続の基本的な流れ

ワシントン条約対象の可能性がある貨物では、輸入前に次の順番で確認します。

  1. 商品に動植物由来の原材料が含まれるか確認します。
  2. 対象種の学名、和名、英名を確認します。
  3. CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに掲載されているか確認します。
  4. 原産国、輸出国、船積国、経由国を確認します。
  5. 輸出国側でCITES輸出許可書等を取得できるか確認します。
  6. 日本側で輸入承認または事前確認が必要か確認します。
  7. 通関時確認の場合、原本書類を輸入申告時に提出・提示できるか確認します。
  8. CITES書類の有効期限内に輸出・輸入申告ができるか確認します。
  9. 指定官署で輸入申告できるよう、到着港、空港、保税搬入先を確認します。
  10. NACCSの他法令欄、貿易管理令欄、輸入承認証等欄に必要な情報を整理します。
  11. 必要書類を税関へ提出・提示し、審査・確認を受けます。
  12. 問題がなければ税関から輸入許可を受けます。

重要なのは、貨物到着後ではなく、船積前または航空便出荷前に確認することです。CITES対象貨物は、到着後に判明すると、書類取得や申告官署の変更が間に合わないことがあります。

指定官署との関係

ワシントン条約該当貨物では、指定官署が非常に重要です。

通常の輸入貨物であれば、搬入先や通関業者の都合で申告官署を決めることがあります。しかし、ワシントン条約該当貨物は、指定された税関官署でなければ輸入申告できない場合があります。

確認項目 確認する理由 確認する相手 問題がある場合の対応
到着港・到着空港 ワシントン条約該当貨物の取扱に適しているか確認するためです。 フォワーダー、通関業者、税関 必要に応じて到着地や輸送ルートを見直します。
輸入申告予定官署 指定官署で輸入申告できるか確認するためです。 通関業者、税関 指定官署で申告できない場合は保税運送や搬入先変更を検討します。
保税搬入先 搬入後に指定官署で申告できるか確認するためです。 フォワーダー、倉庫、通関業者 搬入前に申告官署と保税地域の関係を確認します。
輸送形態 海上貨物、航空貨物、国際郵便、国際宅配便で取扱いが変わるためです。 フォワーダー、宅配業者、通関業者 小口貨物でもCITES対象であれば通常貨物と同じ確認が必要です。
原本書類の到着 通関時確認や税関確認に原本が必要となる場合があるためです。 海外輸出者、輸入者、フォワーダー 貨物と書類が別送の場合は到着タイミングを管理します。
生体貨物の動線 検査、保管、引渡しに制約があるためです。 フォワーダー、倉庫、検疫関係者、税関 保管環境、検査動線、引渡し時期を事前に確認します。

通関時確認で確認されること

通関時確認とは、輸入申告時に税関がCITES関係書類を確認する手続です。事前確認や輸入承認が不要な場合でも、通関時確認によって輸出国側のCITES書類の原本や記載内容が確認されます。

  • CITES輸出許可書または再輸出証明書の原本があるか
  • 許可書の有効期限内に輸出入手続が行われているか
  • 輸出者、輸入者、原産国、輸出国、再輸出国の記載に矛盾がないか
  • 学名、品名、数量、重量、個数がインボイスやパッキングリストと一致しているか
  • B/L、AWB、荷印、ロット番号などで貨物と書類を紐付けられるか
  • 附属書区分と必要書類の組み合わせに誤りがないか
  • 許可書に必要な署名、印章、発行官庁情報があるか
  • コピーやスキャンではなく、原本提出・提示が必要な案件で原本を用意できているか

通関時確認は「何もしなくてよい」という意味ではありません。輸入承認や事前確認の対象外であっても、CITES書類の不備があれば税関で確認が止まり、輸入許可が遅れることがあります。

NACCS他法令確認との関係

ワシントン条約対象貨物は、NACCS上でも他法令確認が重要になります。

輸入申告では、輸入貿易管理令に該当する貨物として、貿易管理令欄、輸入承認証欄、輸入承認証等欄などに、必要なコードや番号を入力する必要があります。輸入承認、事前確認、通関時確認のいずれであっても、ワシントン条約該当貨物であることをNACCS上で適切に反映する必要があります。

確認項目 確認内容 関係者 注意点
他法令欄・貿易管理令欄 ワシントン条約該当貨物として処理が必要か確認します。 通関業者、税関 通常貨物と同じ申告処理でよいとは限りません。
輸入承認証番号 輸入承認証がある場合、番号や内容を申告情報に反映します。 輸入者、通関業者 輸入許可通知書と混同しないようにします。
事前確認書番号 事前確認書がある場合、番号や対象貨物を確認します。 輸入者、通関業者 対象貨物、数量、学名との整合を確認します。
CITES書類番号 CITES輸出許可書や再輸出証明書の番号を確認します。 海外輸出者、輸入者、通関業者 番号が長い場合や複数ある場合は補足資料を用意します。
他法令の重複 食品衛生法、薬機法、植物防疫、動物検疫なども問題にならないか確認します。 輸入者、通関業者、関係機関 CITES以外の手続漏れでも通関が止まります。

フォワーダーの関与範囲と関係者の役割分担

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
荷主・輸入者 商品情報、原材料、学名、原産国、仕入先情報を入手します。 メーカー資料、成分表、材質証明、取引先情報を確認できます。 商品内容を把握していないと、フォワーダーや通関業者も判断できません。
海外輸出者 輸出国側CITES書類の取得、原本送付、輸出国側手続を行います。 輸出国当局、CITES輸出許可書、再輸出証明書を確認できます。 日本側の輸入承認・事前確認までは把握していない場合があります。
フォワーダー 輸送設計、Booking、搬入先調整、書類到着管理を行います。 貨物内容の疑義、原本到着、指定官署、ルート変更可能性を確認できます。 CITES該当性の最終判断や申請可否を単独で判断する立場ではありません。
通関業者 輸入申告、他法令確認、NACCS入力、税関対応を行います。 申告書類、CITES書類、輸入承認証、事前確認書、指定官署を確認できます。 商品成分や学名は荷主・メーカーから資料提供を受ける必要があります。
税関 輸入申告、他法令確認、CITES書類の確認、輸入許可を行います。 提出・提示された書類と申告内容を確認します。 書類不足や対象性不明の場合は、確認・照会・保留が発生します。

4列判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
見積・輸入相談時 荷主・輸入者 貨物に動植物由来素材が含まれていないかを確認します。 不明な場合は、成分表、材質証明、メーカー資料を依頼します。
船積前 海外輸出者・荷主 CITES輸出許可書等の取得予定、原本送付予定、有効期限を確認します。 取得未了の場合は、船積延期またはルート変更を検討します。
輸入承認・事前確認の確認時 輸入者・申請担当者 輸入承認証または事前確認書が必要かを確認します。 必要な場合は、貨物到着前に申請・取得スケジュールを確保します。
Booking・搬入先決定時 フォワーダー・通関業者 指定官署で申告できる到着地・搬入先かを確認します。 指定官署で申告できない場合は、到着港や保税搬入先を変更します。
輸入申告前 通関業者・輸入者 CITES書類、インボイス、パッキングリスト、B/L、AWBの整合を確認します。 不一致があれば、申告前に訂正または補足資料を準備します。
NACCS入力時 通関業者 他法令欄、貿易管理令欄、輸入承認証等欄の入力要否を確認します。 入力不明の場合は、税関相談または関係資料の確認を行います。
税関照会時 通関業者・輸入者・メーカー 学名、原産国、成分、材質、数量、用途を説明できるか確認します。 メーカー資料、写真、カタログ、成分表を追加提出します。
原本管理時 フォワーダー・通関業者・輸入者 原本が貨物到着前または申告時に利用できるか確認します。 原本未着の場合は、申告時期、保管、返送リスクを再確認します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 起こりやすい問題 確認すべき資料 対応の考え方
ワニ革バッグを通常のバッグとして輸入する場合 品名だけで通常貨物と判断し、CITES対象性を見落とすことがあります。 学名、原産国、タグ番号、CITES輸出許可書、インボイスを確認します。 皮革素材がある場合は、必ず対象種と原産国を確認します。
漢方薬・健康食品に動物由来成分が含まれる場合 成分名が一般名称で、対象種かどうか分からないことがあります。 成分表、原料規格書、学名、製造者証明、食品衛生法関係資料を確認します。 CITESと食品衛生法・薬機法を分けて確認します。
楽器に希少木材や象牙・べっ甲が使われる場合 楽器全体の品名だけで、部材の対象性が見落とされることがあります。 材質証明、製造年、写真、シリアル番号、学名、CITES書類を確認します。 部材単位で対象性を確認します。
ランやサボテンなど植物を輸入する場合 CITESと植物検疫の両方が問題になることがあります。 学名、附属書区分、CITES書類、植物検疫証明、輸入承認・事前確認の要否を確認します。 CITES書類だけで検疫が不要になるとは考えないようにします。
化粧品原料に植物由来成分が含まれる場合 完成品名から対象原料が見えず、CITES確認が漏れることがあります。 成分表、原料規格書、学名、原産国、薬機法関係資料を確認します。 原料段階で対象種を確認します。
国際宅配便で小口サンプルを輸入する場合 少量・無償であるため手続不要と誤解されることがあります。 商品資料、成分表、学名、CITES書類、宅配業者の取扱条件を確認します。 数量や金額ではなく、対象種と国際移動で判断します。
貨物到着後にCITES対象と判明する場合 原本取得、申告官署変更、保管料、納期遅延が発生します。 到着情報、保税搬入先、CITES書類、指定官署、税関相談履歴を確認します。 到着後対応ではなく、船積前確認を原則にします。
輸出国側CITES書類の有効期限が迫っている場合 輸入申告前に期限切れとなり、通関できないおそれがあります。 発給日、有効期限、船積日、到着日、輸入申告予定日を確認します。 書類期限と通関予定日を同時に管理します。

貨物到着後に判明した場合の対応

ワシントン条約対象であることが貨物到着後に判明した場合、どの段階で判明したかによって対応が変わります。

判明した段階 主な対応 発生しやすい問題 実務上の判断
本船・航空便到着前 原本書類の手配、輸入承認・事前確認の要否確認、指定官署の確認、到着地変更の検討を行います。 書類到着遅れ、船積書類訂正、到着港・空港の見直しが起きます。 まだ輸送ルートを調整できる可能性があります。
保税搬入後・申告前 通関業者による他法令確認、税関相談、必要書類の追加入手、申告官署の確認を行います。 保管料、搬出入費用、保税運送、申告遅延が発生します。 保税地域と指定官署の関係を優先して確認します。
輸入申告後・税関審査中 税関照会への回答、CITES原本提出、成分表・学名資料提出、申告補正を行います。 審査長期化、納期遅延、追加説明資料不足が起きます。 荷主・メーカー資料を速やかに揃えます。
必要書類が取得できない場合 輸出者への返送、積戻し、廃棄、取引中止、関係当局への相談を検討します。 返送費用、廃棄費用、保管料、契約トラブル、行政上の問題が発生します。 輸入許可まで進められない前提で費用負担を整理します。
原本が到着しない場合 原本所在、国際郵便・Courierの追跡、再発行可否を確認します。 通関保留、保管料、納期遅延が発生します。 コピーで足りるかを安易に判断せず、通関業者・税関確認を行います。
有効期限が切れた場合 再発行可否、返送、積戻し、税関相談を検討します。 輸入申告不可、返送費用、契約トラブルが発生します。 期限切れ後の救済を前提にせず、出荷前管理を徹底します。

具体例1:ワニ革バッグを輸入する場合

ワニ革バッグを輸入する場合、インボイス上の品名が単に「Bag」や「Leather Bag」と記載されているだけでは、CITES対象かどうかを判断できません。

実務では、ワニの学名、原産国、製造国、輸出国、タグ番号、輸出国側のCITES輸出許可書または再輸出証明書を確認します。必要に応じて、日本側で輸入承認や通関時確認が問題になります。

原本書類が貨物到着までに届かない場合や、書類上の数量・タグ番号と実貨物が一致しない場合、輸入通関が止まり、保管料や納期遅延が発生する可能性があります。

具体例2:漢方薬・健康食品を輸入する場合

漢方薬、健康食品、サプリメント、化粧品原料などには、動植物由来成分が含まれることがあります。商品名だけではCITES対象性を判断できず、成分表や原料規格書の確認が必要です。

たとえば、動物由来成分、植物エキス、粉末原料などが含まれている場合、学名、原産国、対象部位、含有量、附属書区分を確認します。同時に、食品衛生法、薬機法、動植物検疫などの他法令も問題になることがあります。

「少量サンプル」「研究用」「販売前試験品」であっても、対象種が含まれる場合はCITES確認を省略できません。CITES書類と他法令資料を分けて整理することが重要です。

具体例3:貨物到着後にCITES対象と判明した場合

輸入貨物が保税地域に到着した後、通関業者の確認や税関照会によってCITES対象であることが判明することがあります。この場合、すでに輸送ルートや搬入先が決まっているため、対応の選択肢は限られます。

まず確認すべきことは、輸出国側のCITES書類原本があるか、日本側で輸入承認または事前確認が必要か、指定官署で申告できる状態か、NACCS上の他法令処理が可能かという点です。

必要書類が取得できない場合、輸入許可まで進められず、返送、積戻し、廃棄、取引中止が問題になることがあります。到着後対応では保管料や納期遅延が拡大しやすいため、CITES対象の可能性がある貨物は船積前に確認することが基本です。

貨物保険・物流費用との関係

ワシントン条約に関する書類不備や許可未取得により通関が止まった場合、保管料、デマレージ、ディテンション、返送費用、廃棄費用、再梱包費用、追加配送費用などが発生することがあります。

これらの費用が貨物保険で当然に補償されるとは限りません。貨物保険は、通常、輸送中の偶然な物的損害を中心に補償するものであり、通関書類不備、法令違反、許可未取得、輸入規制による遅延や費用は、保険の対象外となることがあります。

そのため、CITES対象貨物では、貨物到着後に「保険で何とかなる」と考えるのではなく、船積前・航空便出荷前に、該当性、必要書類、原本管理、通関官署、費用負担を確認しておくことが重要です。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
輸出国側のCITES書類があれば日本側の手続は不要である。 貨物によっては、日本側で輸入承認証や事前確認書が必要となります。 輸出国側書類と日本側手続を分けて確認します。
通関時確認は事前準備が不要という意味である。 通関時確認でも、輸入申告時にCITES書類原本や記載内容が確認されます。 原本、有効期限、数量、学名の整合を船積前に確認します。
輸入承認証と輸入許可通知書は同じである。 輸入承認証は経済産業省の承認書類であり、輸入許可通知書は税関の輸入申告許可に関する書類です。 英訳時もCertificate of Import ApprovalとImport Permit Noticeを混同しないようにします。
指定官署は通関業者が後で何とかできる。 ワシントン条約該当貨物は、指定官署でなければ輸入申告できない場合があります。 到着港、空港、保税搬入先を船積前に確認します。
少量サンプルならCITES手続は不要である。 少量、無償、サンプル、研究用でも、対象種であれば手続が必要となる場合があります。 数量や価格ではなく、対象種と国際移動で判断します。
商品名に動植物名がなければ対象外である。 一般品名では対象種が見えない場合があります。 学名、原材料、成分、材質証明で確認します。
NACCS入力は形式的な作業である。 CITES対象貨物では、他法令確認や貿易管理令欄の処理が通関審査に影響します。 書類番号、承認番号、他法令コードの整理が必要です。
通関が止まった費用は貨物保険で当然に補償される。 法令手続不備や許可未取得による遅延費用は、貨物保険の対象外となることがあります。 保険ではなく、船積前の該当性確認と費用負担整理が重要です。

まとめ

ワシントン条約(CITES)の輸入通関規制は、動植物やその製品を日本へ輸入する際の重要な他法令確認です。

制度としてのワシントン条約を理解するだけでは不十分です。輸入実務では、対象種の学名、附属書区分、原産国、輸出国側CITES書類、日本側の輸入承認・事前確認・通関時確認、指定官署、NACCS入力、原本管理まで確認する必要があります。

フォワーダーは早期の疑義確認と輸送設計、通関業者は申告前の他法令確認とNACCS処理、荷主・輸入者は商品情報と許可書類の取得を担当します。それぞれの役割を分けて確認しなければ、貨物到着後に通関が止まるリスクが高くなります。

ワシントン条約対象貨物では、貨物到着後に対応するのでは遅いことがあります。船積前・航空便出荷前の段階で、該当性、必要書類、指定官署、原本管理、費用負担まで確認することが、通関遅延と追加費用を避ける基本です。

同義語・別表記

  • ワシントン条約輸入規制
  • CITES輸入規制
  • ワシントン条約通関
  • CITES通関
  • ワシントン条約他法令確認
  • CITES他法令確認
  • CITES Import Regulation
  • CITES Customs Clearance

関連用語

公式情報