GHS表示

GHS表示とは

GHS表示とは、化学品の危険有害性を、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きなどにより、容器や包装に表示する仕組みです。

GHSは、Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals の略で、化学品の分類および表示に関する世界調和システムを意味します。

フォワーダー実務では、GHS表示は、貨物が危険性を持つ化学品かどうかを確認する入口になります。ただし、GHS表示があることと、国際輸送上の危険品に該当することは必ずしも同じではありません。

GHS表示を見た場合は、SDS、UN番号、危険物クラス、容器等級、危険物申告書、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件とあわせて確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

本記事では、GHS表示をフォワーダー実務でどのように読むかを扱います。

中心となるのは、GHSの制度そのものを細かく解説することではなく、現物ラベルやSDSにGHS表示がある場合に、国際輸送上の危険品確認へどうつなげるかという実務判断です。

特に、GHS表示と危険品輸送ラベルの違い、GHS絵表示とUN番号・危険物クラスの関係、SDSとの照合、海上輸送と航空輸送で判断が異なる場合、非危険品説明との矛盾がある場合を整理します。

GHSの概要

GHSは、化学品の危険有害性を国際的に分かりやすく伝えるための仕組みです。

爆発性、引火性、酸化性、高圧ガス、腐食性、急性毒性、健康有害性、環境有害性などの危険有害性を分類し、ラベルやSDSによって関係者へ情報を伝達します。

GHS表示は、製造、輸入、販売、保管、取扱い、輸送に関わる事業者が、化学品の危険性を把握するための重要な情報です。

ただし、GHSは化学品の危険有害性を伝えるための仕組みであり、そのまま海上輸送や航空輸送の危険品分類を意味するものではありません。輸送上の危険品該非は、SDSの輸送情報欄、UN番号、危険物クラス、包装等級、IMDG Code、IATA危険物規則などを確認して判断します。

国内法令・輸送規則との関係

日本では、GHSに対応したSDSやラベル表示に関連して、複数の法令が関係します。また、実際の国際輸送では、海上輸送・航空輸送の危険品規則もあわせて確認する必要があります。

区分 主な役割 フォワーダー実務での見方
化管法 対象化学物質について、事業者間でのSDS提供やラベルによる情報伝達に関係する。 化学品としての危険有害性情報や成分情報を確認する入口になる。
労働安全衛生法 職場で取り扱う化学物質について、ラベル表示、SDS、リスクアセスメントなどの管理に関係する。 荷役、倉庫、CFS、作業現場での安全確認につながる。
毒物及び劇物取締法 毒物・劇物としての表示、取扱い、保管、譲渡などの規制に関係する。 毒劇物に該当する化学品では、輸送手配だけでなく保管・取扱い条件にも注意する。
IMDG Code・IATA危険物規則 海上輸送・航空輸送における危険品の分類、包装、ラベル、申告、受託条件に関係する。 実際に船積み・航空搭載できるかを判断する基準になる。

GHS表示に関係する国内法令は、主に化学品の危険有害性情報を伝えるための制度です。一方、国際輸送では、輸送中の危険性に基づくUN番号、危険物クラス、包装、ラベル、申告の確認が必要になります。

GHSラベルの主な表示項目

GHSラベルには、化学品の危険有害性を伝えるための複数の要素があります。

表示項目 意味 フォワーダー実務での確認
化学品の名称 製品名、化学品名、混合物名など。 インボイス、SDS、危険物申告書、現物ラベルの名称が一致しているか確認する。
絵表示 危険有害性を示す赤いひし形のマーク。 危険品輸送確認の入口として、SDSの輸送情報欄を確認する。
注意喚起語 危険、有害性の程度を示す語句。 危険性が高い可能性があるため、SDSと照合する。
危険有害性情報 どのような危険や健康・環境影響があるかを示す文言。 輸送上の危険品に該当する可能性があるか確認する。
注意書き 取扱い、保管、応急措置、廃棄などの注意事項。 倉庫、CFS、荷役、保管時の注意点を確認する。
供給者情報 製造者、輸入者、供給者などの情報。 SDSや追加資料を取得する連絡先として確認する。

GHS表示と危険品輸送ラベルの違い

GHS表示と危険品輸送ラベルは、見た目が似ている場合がありますが、目的と確認すべき内容が異なります。

比較項目 GHS表示 危険品輸送ラベル
目的 化学品の危険有害性を取扱者へ伝える。 輸送中の危険性を運送人、倉庫、CFS、航空会社、船会社へ伝える。
主な基準 GHS、国内法令、SDS・ラベル制度。 IMDG Code、IATA危険物規則、各運送人の受託条件。
表示される場所 製品容器、包装、SDS、化学品ラベル。 輸送外装、危険品梱包、危険物申告書、輸送書類。
主な情報 絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書き。 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級危険品ラベル
確認すべき資料 SDS、製品ラベル、メーカー資料、非危険品証明書 SDSの輸送情報欄、危険物申告書、船会社・航空会社の受託条件。
実務上の注意 GHS表示があるだけで輸送上の危険品と決めつけない。 輸送ラベルやUN番号が必要な場合、通常貨物として進めない。

フォワーダーにとって重要なのは、GHS表示を危険品輸送判定の入口として使い、その後にSDS、UN番号、危険物クラス、輸送モード別の受託条件を確認することです。

GHS絵表示9種と輸送判定へのつながり

GHS表示では、赤いひし形の枠に入った絵表示が使われます。代表的な絵表示には、爆発物、炎、円上の炎、ガスボンベ、腐食性、どくろ、感嘆符、健康有害性、環境有害性があります。

ただし、すべてのGHS絵表示が同じ強さで輸送上の危険品判定に直結するわけではありません。フォワーダー実務では、どの絵表示が輸送上の確認につながりやすいかを分けて見ることが重要です。

以下の表では、GHSの標準的な掲載順ではなく、フォワーダーが輸送上の危険品該非を確認する際に注意しやすい順に並べています。

GHS絵表示 主な意味 輸送上の危険品判定との関連 フォワーダー実務での確認
爆発物 爆発性、自己反応性、有機過酸化物など。 輸送危険品との関連が強い。 SDS輸送情報欄、UN番号、クラス、船社・航空会社受託可否を必ず確認する。
引火性、可燃性、自己発熱性など。 輸送危険品との関連が強い。 引火点、UN番号、危険物クラス、容器等級、海上・航空の条件を確認する。
円上の炎 酸化性物質、酸化性液体、酸化性固体など。 輸送危険品との関連が強い。 混載可否、隔離要件、船社・CFS受入条件を確認する。
ガスボンベ 高圧ガス、圧縮ガス、液化ガスなど。 輸送危険品との関連が強い。 ガスの種類、容器、UN番号、航空輸送可否、CFS受入可否を確認する。
腐食性 皮膚腐食性、眼損傷性、金属腐食性など。 輸送危険品に該当する場合がある。 金属腐食性、容器、漏洩時の影響、クラス8該当性を確認する。
どくろ 急性毒性が強い物質。 輸送危険品に該当する可能性が高い。 毒性区分、UN番号、包装条件、受託制限を確認する。
環境有害性 水生環境有害性など。 海洋汚染物質や環境有害性の確認につながる。 Marine Pollutant該当性、海上輸送時の表示・申告を確認する。
感嘆符 刺激性、皮膚感作性、軽度の急性毒性など。 輸送上は危険品に該当しない場合もある。 GHS表示だけで危険品と決めず、SDS輸送情報欄を確認する。
健康有害性 発がん性、生殖毒性、臓器障害、吸引性呼吸器有害性など。 輸送上の危険品分類とは直接一致しない場合がある。 取扱い・保管上の注意と、輸送上の危険品該非を分けて確認する。

輸送上の確認を優先すべき絵表示は、爆発物、炎、円上の炎、ガスボンベ、腐食性、どくろ、環境有害性です。ただし、感嘆符や健康有害性であっても、SDSの輸送情報欄を確認するまでは通常貨物と決めつけないことが重要です。

GHS表示と輸送上の危険品判定がズレる場合

GHS表示と輸送上の危険品判定は、必ずしも一致しません。実務では、GHS表示があるのに輸送上は危険品に該当しない場合と、GHS表示が目立たないのに輸送上は危険品に該当する場合があります。

ズレのパターン 典型例 実務上の判断
GHS表示あり、輸送上は非該当 感嘆符や健康有害性の表示があるが、SDS輸送情報欄ではUN番号がなく、輸送上の危険品に該当しない場合。 GHS表示を理由に危険品と決めつけず、SDS輸送情報欄とメーカー確認を根拠に整理する。
GHS表示あり、輸送上も危険品 炎、ガスボンベ、腐食性、どくろなどの表示があり、SDS輸送情報欄にUN番号や危険物クラスがある場合。 危険物申告書、輸送ラベル、船会社・航空会社の受託可否を確認する。
GHS表示が目立たないが、輸送上は危険品 製品ラベル上は分かりにくいが、リチウム電池、エアゾール、アルコール含有品などとして輸送規則上の確認が必要な場合。 品名、成分、用途、SDS、製品仕様書から輸送上の危険品該非を確認する。
非危険品説明があるが、SDSと矛盾する 荷主は非危険品と説明しているが、SDSの輸送情報欄にUN番号や危険物クラスが記載されている場合。 荷主へ再確認し、必要に応じて危険品扱いで船会社・航空会社・CFSへ確認し直す。

フォワーダーは、GHS表示の有無だけで判断してはいけません。GHS表示、SDS、現物ラベル、輸送情報、危険物申告書、受託条件を組み合わせて確認する必要があります。

フォワーダー実務での確認フロー

GHS表示がある貨物、または化学品の可能性がある貨物では、次の順番で確認します。

手順 確認すること 判断の方向性
1. 現物・外装表示を確認する GHS絵表示、危険品ラベル、UN番号、製品名、ケースマーク。 化学品・危険品確認が必要か判断する。
2. SDSを取得する 最新版のSDSか、製品名・メーカー名が貨物と一致するか。 古いSDSや別製品のSDSで手配しないようにする。
3. SDSの危険有害性情報を確認する GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報。 現物ラベルとSDSが一致しているか確認する。
4. SDSの輸送情報欄を確認する UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質該当性。 輸送上の危険品該非を確認する。
5. 輸送モードごとに確認する 海上輸送、航空輸送、国内配送、倉庫搬入の条件。 海上では受託可能でも航空では不可となる場合を確認する。
6. 受託条件を確認する 船会社、航空会社、NVOCC、CFS、倉庫の受入可否。 書類上は危険品として整理できても、実際に受けてもらえるか確認する。
7. 表示・書類を整える 危険物申告書、輸送ラベル、外装表示、非危険品証明書、メーカー確認書。 搬入拒否、受託不可、船積み・搭載遅延を防ぐ。

SDS・現物ラベル・危険物申告書の照合

GHS表示がある貨物では、SDS、現物ラベル、危険物申告書、インボイスの内容を照合することが重要です。

照合項目 確認する内容 不一致がある場合の対応
製品名 インボイス、SDS、現物ラベル、危険物申告書の名称が一致しているか。 荷主またはメーカーに確認し、対象製品を特定する。
GHS絵表示 現物ラベルの絵表示とSDSの危険有害性情報が一致しているか。 SDSが古い可能性や別製品の可能性を確認する。
UN番号 SDS輸送情報欄と危険物申告書のUN番号が一致しているか。 危険品申告を修正し、受託可否を確認し直す。
危険物クラス SDS、危険物申告書、輸送ラベルのクラスが一致しているか。 海上・航空で条件が異なる可能性を確認する。
容器等級 該当する場合、包装等級や包装条件が一致しているか。 包装やラベルの再確認が必要になる。
海洋汚染物質 SDS上の該当性と海上輸送上の申告が一致しているか。 Marine Pollutant表示・申告の要否を確認する。

荷主へ確認すべきこと

荷主から「GHSラベルはありますが、危険品ではありません」と説明されることがあります。その場合でも、フォワーダーはSDSの輸送情報欄やメーカー確認資料を確認する必要があります。

  • 最新版のSDSがあるか。
  • GHSラベルとSDSの記載が一致しているか。
  • SDSの輸送情報欄にUN番号、危険物クラス、容器等級があるか。
  • 海上輸送と航空輸送で条件が異なるか。
  • 現物ラベル、外装表示、危険物ラベルが適切か。
  • 危険品非該当の場合、その根拠資料があるか。
  • 非危険品証明書とSDSが矛盾していないか。
  • 船会社、航空会社、CFS、倉庫が受託可能か。

よくあるトラブルと対応の方向性

GHS表示に関するトラブルでは、表示、SDS、輸送情報、受託条件が一致していないことが多くあります。

よくあるトラブル 何が問題か 対応の方向性
外装にGHS絵表示があるのに、危険品申告がされていない。 輸送上の危険品該非が確認されていない可能性がある。 SDS輸送情報欄を確認し、必要に応じて危険物申告書を提出する。
SDSでは危険品非該当だが、現物ラベルに危険表示がある。 SDSが古い、別製品のSDS、またはGHS上の危険有害性のみを示している可能性がある。 メーカーまたは荷主へ、現物ラベルとSDSの整合を確認する。
品名とSDS上の製品名が一致しない。 別製品のSDSで手配している可能性がある。 製品名、型番、メーカー名、成分を照合し、正しいSDSを取得する。
旧版SDSに基づいて手配してしまう。 危険有害性情報や輸送情報が更新されている可能性がある。 最新版SDSまたはメーカー確認書を取得し、受託可否を確認し直す。
海上では受けられるが、航空では受託不可となる。 海上輸送と航空輸送では危険品規則や受託条件が異なる。 輸送モード変更時は、航空会社・代理店へ再確認し、リードタイムと費用を再調整する。
倉庫搬入時に危険表示を理由に受入確認が必要になる。 倉庫やCFSは、保管・荷役上の安全確認を求めることがある。 SDS、非危険品証明書、危険品判定資料を提出し、倉庫の受入条件を確認する。

よくある誤解

GHS表示は危険品確認の重要なサインですが、表示だけで結論を出すと誤解が生じます。

誤解 実務上の考え方 確認すべきこと
GHS表示があれば、必ず輸送上の危険品である。 GHS表示は化学品の危険有害性を示すものであり、輸送危険品と必ず一致するわけではありません。 SDS輸送情報欄、UN番号、危険物クラスを確認する。
GHS表示がなければ、危険品ではない。 表示が目立たなくても、輸送上の危険品に該当する場合があります。 品名、成分、用途、SDS、製品仕様書を確認する。
非危険品証明書があれば、SDSは不要である。 非危険品証明書とSDSが矛盾していないか確認する必要があります。 SDSの危険有害性情報と輸送情報欄を確認する。
海上で受けられた貨物は、航空でも受けられる。 海上輸送と航空輸送では危険品の受託条件が異なります。 輸送モードごとに確認する。
メーカーの製品ラベルだけ見れば判断できる。 製品ラベルは重要ですが、輸送上の危険品該非はSDSや輸送規則上の情報と照合します。 ラベル、SDS、危険物申告書、受託条件を照合する。

フォワーダーが注意すべき点

フォワーダーが注意すべき点は、GHS表示を「通関用の表示」や「メーカー側の安全表示」として片付けないことです。

GHS表示は、危険品該非確認のきっかけになります。特に、塗料、接着剤、洗浄剤、香料、インク、試薬、アルコール含有品、エアゾール製品、リチウム電池関連貨物などでは、GHS表示を見落とすと輸送手配に支障が出る場合があります。

  • GHS表示がある貨物は、SDSを確認する。
  • GHS表示だけで危険品該非を判断しない。
  • SDS、現物ラベル、危険物申告書、インボイスの内容を照合する。
  • 海上輸送と航空輸送の条件を分けて確認する。
  • 疑義がある場合は、荷主、メーカー、船会社、航空会社、CFS、倉庫へ事前確認する。
  • 非危険品として進める場合も、その根拠資料を残す。

まとめ

GHS表示とは、化学品の危険有害性を、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きなどにより、容器や包装に表示する仕組みです。

フォワーダー実務では、GHS表示は危険品確認の重要なサインになります。ただし、GHS表示があることと、国際輸送上の危険品に該当することは同じではありません。

重要なのは、GHS表示、SDS、現物ラベル、危険物申告書、UN番号、危険物クラス、海上・航空輸送の受託条件を照合することです。

GHS表示を見た場合は、危険品と決めつけるのでも、通常貨物として見過ごすのでもなく、SDSの輸送情報欄を確認し、実際の輸送モード、荷姿、受託条件に照らして安全に運べるかを確認することが基本です。

同義語・別表記

  • GHS
  • GHS表示
  • GHSラベル
  • 化学品ラベル
  • 化学品表示
  • Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals
  • GHS Labeling