SDS

SDSとは

SDSとは、Safety Data Sheetの略で、化学品の危険有害性、成分、取扱い、保管、応急措置、漏出時対応、廃棄、輸送情報などを記載した安全データシートです。

旧来はMSDSと呼ばれることもありましたが、現在はSDSという名称が一般的に使われています。

フォワーダー実務では、SDSは危険品輸送の入口資料です。貨物が危険品に該当するか、UN番号があるか、危険物クラスや容器等級が付いているか、海上輸送・航空輸送でどのような扱いになるかを確認するために使います。

ただし、SDSを受け取っただけで輸送可否が判断できるわけではありません。SDSの輸送情報欄、GHS表示、現物ラベル、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件を照合する必要があります。

この記事で扱う範囲

本記事では、SDSをフォワーダー実務でどのように読むかを扱います。

中心となるのは、SDS制度そのものの詳細解説ではなく、SDSを受け取ったときに、危険品輸送IMDG CodeIATA危険物規則、GHS表示、危険物申告書、非危険品証明書とどうつなげて確認するかという実務判断です。

特に、SDSの16項目のうち輸送実務で重要な項目、輸送情報欄が空欄または非該当の場合の対応、旧MSDSとの違い、濃度・容量・包装形態が変わる場合の再確認、英語版SDSしか入手できない場合の扱いを整理します。

SDSの概要

SDSは、化学品の安全な取扱いに必要な情報を、事業者間で伝達するための書類です。

化学品を製造、輸入、販売、使用、保管、輸送する関係者が、その化学品の危険性や取扱い条件を把握するために利用します。

日本では、化管法、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法などにより、一定の化学物質やそれを含む製品について、SDSの交付やラベル表示が求められる場合があります。

フォワーダーにとって重要なのは、SDSを通関書類の一部として見るだけでなく、危険品輸送、倉庫搬入、CFS受入、航空会社・船会社の受託可否を確認する資料として読むことです。

MSDSとSDSの違い

MSDSは、Material Safety Data Sheetの略で、旧来使われていた名称です。現在は、GHSに対応した情報伝達の流れの中で、SDSという名称が一般的に使われています。

荷主から古いMSDSが提出された場合、フォワーダーはそのまま使えるかどうかを確認する必要があります。

区分 実務上の見方 注意点
MSDS 旧来の名称で作成された安全データシート。 作成年月が古い場合、GHS分類、輸送情報、法令情報が現在の扱いと合わない可能性がある。
SDS 現在一般的に使われる安全データシート。 最新版か、対象製品と一致しているか、輸送情報欄が記載されているかを確認する。
GHS対応SDS GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報などを含むSDS。 GHS表示と輸送上の危険品該非は同じではないため、第14項の輸送情報を確認する。
古いMSDSを受け取った場合 最新版SDSの有無を荷主またはメーカーへ確認する。 古い資料だけで危険品非該当と判断しない。

SDSとGHS表示の関係

GHS表示は、化学品の危険有害性を絵表示や注意喚起語などで伝えるものです。SDSは、その危険有害性や取扱い条件をより詳しく記載する資料です。

現物や外装にGHS絵表示がある場合、フォワーダーはSDSを確認し、GHS上の危険有害性と輸送上の危険品該非を分けて判断します。

確認対象 確認する内容 フォワーダー実務での意味
GHS表示 絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書き。 危険品確認が必要な貨物かを判断する入口になる。
SDS 危険有害性、成分、物性、取扱い、輸送情報、法令情報。 危険品該非、輸送条件、保管・荷役上の注意を確認する資料になる。
SDS第14項 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス容器等級、海洋汚染物質など。 IMDG CodeやIATA危険物規則上の確認に直結する。
危険物申告書 輸送上の危険品として申告する内容。 SDSと一致しているか確認する必要がある。

SDSの16項目と輸送実務での見方

SDSは、一般に16項目構成で整理されます。フォワーダー実務では、第14項の輸送情報が最も直接的に関係しますが、それ以外の項目も補助情報として重要です。

SDS項目 主な内容 輸送実務での見方
1. 化学品及び会社情報 製品名、供給者、緊急連絡先など。 インボイス品名、メーカー名、対象製品と一致しているか確認する。
2. 危険有害性の要約 GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報。 GHS表示と現物ラベルが一致しているか確認する。
3. 組成及び成分情報 成分名、濃度、混合物情報など。 濃度変更や成分変更により危険品該非が変わる可能性を確認する。
4. 応急措置 吸入、皮膚付着、眼接触、飲み込み時の対応。 倉庫やCFSで事故が起きた場合の安全情報として確認する。
5. 火災時の措置 適切な消火剤、火災時の危険性、保護具。 引火性貨物や火災時対応が問題になる貨物で確認する。
6. 漏出時の措置 漏洩時の人体・環境への注意、封じ込め方法。 漏洩時にCFS、倉庫、船会社が求める対応情報になる。
7. 取扱い及び保管上の注意 安全な取扱い、保管条件、避けるべき条件。 CFS搬入、危険品倉庫、温度管理、混載可否の確認に関係する。
8. ばく露防止及び保護措置 管理濃度、保護具、換気など。 荷役や倉庫作業で特別な安全対策が必要か確認する。
9. 物理的及び化学的性質 形状、臭い、pH、引火点、沸点、蒸気圧など。 引火点や物性情報が危険品分類や輸送条件の根拠になる場合がある。
10. 安定性及び反応性 反応性、化学的安定性、避けるべき条件、混触危険物質。 積付け、隔離、混載可否、保管条件の確認に関係する。
11. 有害性情報 急性毒性、皮膚腐食性、発がん性など。 GHS表示や取扱い注意の確認に関係するが、輸送危険品分類とは直接一致しない場合がある。
12. 環境影響情報 水生環境有害性、残留性、分解性など。 海洋汚染物質該当性を確認する入口になる。
13. 廃棄上の注意 廃棄方法、残余物、汚染容器の扱い。 事故・漏洩・返送時の処理に関係することがある。
14. 輸送上の注意 UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、海洋汚染物質など。 海上・航空輸送の危険品該非確認に最も直接関係する。
15. 適用法令 化管法、安衛法、毒劇法、消防法など。 国内保管、取扱い、通関・倉庫搬入時の確認に関係する。
16. その他の情報 作成日、改訂日、参考情報、免責文など。 最新版かどうか、改訂履歴があるかを確認する。

輸送実務では第14項が中心ですが、第3項の成分情報、第7項の保管条件、第9項の引火点などの物性、第10項の反応性、第12項の環境影響情報も輸送判断に関係することがあります。

第14項「輸送上の注意」の読み方

SDSの第14項にあたる輸送情報欄は、フォワーダーが最も重点的に確認すべき項目です。

確認項目 確認する内容 実務上の意味
UN番号 輸送上の危険品としてどのUN番号に該当するか。 IMDG Code、IATA危険物規則、危険物申告書の基礎になる。
正式輸送品名 Proper Shipping Nameが記載されているか。 商品名ではなく輸送規則上の品名として申告する。
危険物クラス 主危険性と副次危険性があるか。 ラベル、積付け、隔離、受託可否の確認につながる。
容器等級 該当する場合、包装等級が記載されているか。 包装基準や数量制限の確認につながる。
海洋汚染物質 Marine Pollutantに該当するか。 海上輸送での表示、申告、船会社確認に関係する。
海上輸送条件 IMDG Code上の扱いが記載されているか。 船会社、CFS、倉庫の受託確認につながる。
航空輸送条件 IATA危険物規則上の扱いが記載されているか。 航空会社、クーリエ会社、空港上屋の受託確認につながる。

輸送情報欄に記載がある場合でも、船会社や航空会社が必ず受託するとは限りません。SDSは判断の入口であり、最終的な受託可否は輸送モード、包装、数量、荷姿、運送人の条件で確認します。

輸送情報欄が空欄・非該当の場合の対応

SDSの輸送情報欄に「非該当」と書かれていても、それだけで通常貨物として進めてよいとは限りません。

SDSの状態 考えられる理由 フォワーダーの対応
輸送情報欄が空欄 メーカーが未記載、輸送情報を確認していない、古い書式の可能性がある。 荷主へ最新版SDS、メーカー確認書、危険品判定資料を求める。
輸送情報欄が「確認中」 危険品該非が未確定の可能性がある。 見積やブッキングを確定せず、判定結果を待つ。
輸送情報欄が「非該当」 本当に非危険品の場合もあるが、対象輸送モードが不明な場合もある。 海上輸送・航空輸送の両方で非該当かを確認する。
海上輸送のみ記載 航空輸送条件が未確認の可能性がある。 航空輸送する場合は、IATA危険物規則上の扱いを追加確認する。
航空輸送のみ記載 海上輸送条件や海洋汚染物質該当性が不足している可能性がある。 海上輸送する場合は、IMDG Code上の扱いを追加確認する。
現物にGHS表示や危険品ラベルがある SDSの非該当記載と現物表示が矛盾している可能性がある。 現物写真、ラベル、SDS、メーカー確認を照合する。
SDSが古い 分類、成分、法令、輸送情報が更新されている可能性がある。 最新版を取得し、改訂日と輸送情報を確認する。

輸送情報欄が空欄、非該当、確認中の場合は、通常貨物として進めるのではなく、なぜその記載になっているのかを確認することが重要です。

海上輸送・航空輸送との関係

海上輸送では、SDSの情報をもとにIMDG Code上の扱いを確認します。航空輸送では、IATA危険物規則上の受託可否、包装基準、ラベル、危険物申告書の要否を確認します。

輸送モード 確認する規則・条件 SDSで見るポイント
海上輸送 IMDG Code、船会社、NVOCC、CFS、危険品倉庫の条件。 UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、海洋汚染物質、積付け・隔離。
航空輸送 IATA危険物規則、航空会社、クーリエ会社、空港上屋の条件。 UN番号、クラス、包装基準、数量制限、旅客機搭載可否、危険物申告書要否。
国内配送・倉庫保管 消防法、毒劇法、倉庫・配送会社の受入条件。 引火点、保管条件、取扱い注意、漏洩時対応、法令情報。

海上輸送では受けられる貨物でも、航空輸送では受託不可または条件付きになる場合があります。特に、リチウム電池、スプレー缶、塗料、接着剤、香料、アルコール含有品、試薬、洗浄剤などは、輸送モードによって条件が変わりやすい貨物です。

同一製品でも再確認が必要になる場合

同じ製品名の貨物でも、濃度、容量、包装形態、荷姿、輸送モードが変わると、輸送上の扱いが変わることがあります。

変化する要素 起きる可能性があること 確認すること
濃度が変わる 危険有害性、引火性、腐食性、毒性の分類が変わる場合がある。 改訂SDS、成分情報、危険品判定資料を確認する。
容量が変わる 少量扱い、制限数量、包装条件が変わる場合がある。 1容器あたりの容量、外装数量、総数量を確認する。
包装形態が変わる 瓶、缶、ドラム、エアゾール、カートリッジなどで輸送条件が変わることがある。 容器、内装、外装、UN容器の要否を確認する。
エアゾール化する 同じ内容物でも、スプレー缶として別の輸送区分になる可能性がある。 SDS、UN番号、航空輸送可否、ラベル条件を確認する。
電池を内蔵する リチウム電池貨物として別確認が必要になる場合がある。 電池種類、Wh値、数量、機器組込・同梱の別を確認する。
海上から航空へ切り替える 海上では受けられても、航空では受託不可または条件付きになる場合がある。 IATA危険物規則上の扱いと航空会社条件を確認する。

過去に同じ製品を輸送できた実績があっても、濃度、容量、包装、輸送モードが変われば再確認が必要です。

SDSと他書類の照合

SDSは単独で見るのではなく、危険物申告書、インボイスパッキングリスト、現物表示、非危険品証明書と照合します。

照合対象 確認する内容 不一致がある場合の対応
インボイス 品名、型番、商品名、メーカー名。 SDSの製品名と一致しているか確認する。
パッキングリスト 数量、荷姿、容器、外装、重量。 SDSや危険物申告書の数量・包装条件と一致しているか確認する。
危険物申告書 UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、数量、包装。 SDS第14項と一致しているか確認する。
現物ラベル GHS表示、危険品ラベル、UN番号、製品名。 SDSや申告書と矛盾がないか確認する。
非危険品証明書 非危険品とする根拠。 SDSの危険有害性情報や輸送情報欄と矛盾していないか確認する。

書類間に矛盾がある場合は、荷主またはメーカーへ確認し、分類と輸送条件を確定させてから手配を進めます。

英語版SDSしか入手できない場合

輸出入実務では、海外メーカーが作成した英語版SDSしか入手できないことがあります。

この場合でも、フォワーダーはSDSの輸送情報欄を確認し、UN番号、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質、航空輸送条件などを読み取る必要があります。

状況 実務上の対応 注意点
英語版SDSしかない 輸送情報欄を確認し、必要に応じて荷主へ日本語版または翻訳資料を求める。 社内・倉庫・通関・配送で内容を理解できる状態にする。
日本語版が必要な取引・管理場面 荷主または輸入者に、日本語版SDSの有無を確認する。 法令対応や国内保管・取扱い上の説明が必要になる場合がある。
翻訳だけで内容確認している 翻訳内容がSDS原本の輸送情報と一致しているか確認する。 UN番号、クラス、容器等級、否定表現の誤訳に注意する。
海外版と日本語版の内容が異なる 改訂日、対象製品、成分、輸送情報を照合する。 どちらが最新か、どちらが対象貨物に対応しているか確認する。

英語版SDSしかない場合でも、危険品輸送の確認を省略してよいわけではありません。必要に応じて、荷主、メーカー、輸入者、危険品専門業者へ確認します。

荷主へ確認すべきこと

SDSが不完全な場合、フォワーダーは荷主に修正版、メーカー確認書、危険品非該当証明、試験データなどを求める必要があります。

  • 最新版のSDSか。
  • 対象製品とSDSの製品名が一致しているか。
  • 日本語版または実務上確認できる版があるか。
  • 輸送情報欄が記載されているか。
  • UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級が明記されているか。
  • 海洋汚染物質に該当するか。
  • 航空輸送と海上輸送で条件が異なるか。
  • 危険品非該当の場合、その根拠資料があるか。
  • 現物ラベルや包装表示とSDSが一致しているか。
  • 濃度、容量、包装形態、輸送モードが過去出荷時と変わっていないか。

特に危険品かどうかが曖昧な貨物は、ブッキング後ではなく、見積・手配前の段階で確認することが重要です。

よくあるトラブルと対応の方向性

SDSは危険品輸送を判断するための重要資料ですが、SDSだけで輸送手配が完結するわけではありません。

よくあるトラブル 何が問題か 対応の方向性
SDSが古く、現行の分類に合っていない。 分類、法令、輸送情報が更新されている可能性がある。 最新版SDSを取得し、改訂日と輸送情報を確認する。
輸送情報欄が空欄または「確認中」になっている。 危険品該非が判断できない。 荷主・メーカーへ危険品判定資料やメーカー確認書を求める。
品名とSDSの製品名が一致しない。 別製品のSDSで手配している可能性がある。 型番、メーカー名、成分、現物ラベルを照合する。
危険品申告書とSDSのUN番号が異なる。 輸送分類が確定できず、船会社・航空会社が受託判断できない。 荷主・メーカーへ確認し、SDSまたは申告書を修正する。
航空輸送不可の貨物を航空便で手配してしまう。 海上輸送では可能でも、航空輸送では受託不可の場合がある。 IATA危険物規則上の扱いと航空会社受託条件を確認する。
現物に危険品ラベルがあるのに、SDSでは非該当になっている。 SDSが古い、別製品、または現物表示と資料が矛盾している可能性がある。 現物写真、ラベル、SDS、メーカー確認書を照合する。
混合物の濃度変更により、以前のSDSが使えなくなっている。 濃度変更により、危険有害性や輸送上の分類が変わる可能性がある。 新しい配合に対応したSDSを取得し、危険品該非を再確認する。

フォワーダーが注意すべき点

フォワーダーは、SDSを受け取っただけで安心してはいけません。重要なのは、SDSの内容が実際の貨物、荷姿、輸送モード、受託条件と一致しているかを確認することです。

  • SDSは最新版を入手する。
  • 第14項の輸送情報欄を必ず確認する。
  • 危険品非該当でも根拠を確認する。
  • 海上輸送と航空輸送の条件を分けて確認する。
  • 第3項、第7項、第9項、第10項、第12項も補助的に確認する。
  • 荷主、メーカー、船会社、航空会社、CFS、倉庫の情報を照合する。
  • 疑義がある場合は、危険品専門業者や船会社・航空会社に事前確認する。
  • 英語版SDSしかない場合は、必要に応じて日本語版や確認資料を求める。

まとめ

SDSとは、化学品の危険有害性、成分、取扱い、保管、応急措置、漏出時対応、廃棄、輸送情報などを記載した安全データシートです。

フォワーダー実務では、SDSは危険品輸送の入口資料です。ただし、SDSを受け取っただけで輸送可否が確定するわけではありません。

輸送実務では、第14項の輸送情報欄を中心に、UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質、海上輸送・航空輸送の条件を確認します。あわせて、第3項の成分情報、第7項の保管条件、第9項の物性、第10項の反応性、第12項の環境影響情報も補助的に確認します。

SDSは、GHS表示、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、現物ラベル、IMDG Code、IATA危険物規則、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件と照合して初めて、輸送実務で使える資料になります。

同義語・別表記

  • SDS
  • 安全データシート
  • MSDS
  • Material Safety Data Sheet
  • Safety Data Sheet
  • 化学品安全データシート