SDS(安全データシート)―危険品輸送で確認する第14項と輸送情報

SDS (Safety Data Sheet) — Section 14 and Transport Information for Dangerous Goods

SDSとは

SDSとは、Safety Data Sheetの略で、化学品の危険有害性、成分、取扱い、保管、応急措置、漏出時対応、廃棄、輸送情報などを記載した安全データシートです。

旧来はMSDSと呼ばれることもありましたが、現在はSDSという名称が一般的に使われています。

フォワーダー実務では、SDSは危険品輸送の入口資料です。貨物が危険品に該当するか、UN番号があるか、危険物クラスや容器等級が付いているか、海上輸送・航空輸送でどのような扱いになるかを確認するために使います。

ただし、SDSを受け取っただけで輸送可否が判断できるわけではありません。SDSの輸送情報欄、GHS表示、現物ラベル、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件を照合する必要があります。

この記事で扱う範囲

項目 本記事で扱う内容 他記事に委ねる内容
SDSの基本 化学品の危険有害性、成分、取扱い、保管、輸送情報を確認する安全データシートとして整理します。 SDS制度そのものの詳細な法令解説は、化学品管理制度の記事で扱います。
フォワーダー実務での読み方 SDSを危険品輸送、CFS搬入、倉庫受入、航空会社・船会社確認へどうつなげるかを扱います。 化学品メーカー側のSDS作成実務や分類作業は、専門資料やメーカー向け記事で扱います。
MSDSとSDSの違い 旧MSDSを受け取った場合に、最新版SDSの確認が必要になる理由を扱います。 MSDSからSDSへの制度移行の詳細は、化学品表示制度の記事で扱います。
GHS表示との関係 GHS表示とSDSの関係、GHS上の危険有害性と輸送危険品該非の違いを扱います。 GHS絵表示やGHSラベルの詳細は、GHS表示の記事で扱います。
SDS第14項の読み方 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質、海上・航空輸送条件の確認を扱います。 IMDG CodeやIATA危険物規則の詳細な適用判断は、それぞれの個別記事で扱います。
輸送情報欄が空欄・非該当の場合 空欄、確認中、非該当、海上のみ記載、航空のみ記載、現物表示との矛盾がある場合の対応を扱います。 非危険品証明書の書式や作成方法は、非危険品証明書の記事で扱います。
他書類との照合 SDS、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、現物ラベル、非危険品証明書の照合を扱います。 危険物申告書の記載方法や様式詳細は、危険物申告書の記事で扱います。
実務トラブル対応 旧版SDS、品名不一致、輸送情報不足、現物表示との矛盾、濃度・容量・包装変更時の再確認を扱います。 費用負担、損害賠償、遅延責任の判断は、貨物事故・費用負担の記事で扱います。

SDSの概要

SDSは、化学品の安全な取扱いに必要な情報を、事業者間で伝達するための書類です。

化学品を製造、輸入、販売、使用、保管、輸送する関係者が、その化学品の危険性や取扱い条件を把握するために利用します。

日本では、化管法、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法などにより、一定の化学物質やそれを含む製品について、SDSの交付やラベル表示が求められる場合があります。

フォワーダーにとって重要なのは、SDSを通関書類の一部として見るだけでなく、危険品輸送、倉庫搬入、CFS受入、航空会社・船会社の受託可否を確認する資料として読むことです。

MSDSとSDSの違い

MSDSは、Material Safety Data Sheetの略で、旧来使われていた名称です。現在は、GHSに対応した情報伝達の流れの中で、SDSという名称が一般的に使われています。

荷主から古いMSDSが提出された場合、フォワーダーはそのまま使えるかどうかを確認する必要があります。

区分 実務上の見方 注意点 フォワーダー実務上の対応
MSDS 旧来の名称で作成された安全データシートです。 作成年月が古い場合、GHS分類、輸送情報、法令情報が現在の扱いと合わない可能性があります。 最新版SDSの有無を荷主またはメーカーへ確認します。
SDS 現在一般的に使われる安全データシートです。 最新版か、対象製品と一致しているか、輸送情報欄が記載されているかを確認する必要があります。 第14項の輸送情報欄を中心に確認します。
GHS対応SDS GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報などを含むSDSです。 GHS表示と輸送上の危険品該非は同じではありません。 第14項の輸送情報と現物ラベルを照合します。
古いMSDSを受け取った場合 資料として参考になる場合はありますが、そのまま輸送判断に使えるとは限りません。 古い資料だけで危険品非該当と判断しないことが重要です。 最新版SDS、メーカー確認書、危険品判定資料を取得します。

SDSとGHS表示の関係

GHS表示は、化学品の危険有害性を絵表示や注意喚起語などで伝えるものです。SDSは、その危険有害性や取扱い条件をより詳しく記載する資料です。

現物や外装にGHS絵表示がある場合、フォワーダーはSDSを確認し、GHS上の危険有害性と輸送上の危険品該非を分けて判断します。

確認対象 確認する内容 フォワーダー実務での意味 注意点
GHS表示 絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きを確認します。 危険品確認が必要な貨物かを判断する入口になります。 GHS表示だけで輸送上の危険品と断定しません。
SDS 危険有害性、成分、物性、取扱い、輸送情報、法令情報を確認します。 危険品該非、輸送条件、保管・荷役上の注意を確認する資料になります。 対象製品と一致する最新版かを確認します。
SDS第14項 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質などを確認します。 IMDG CodeやIATA危険物規則上の確認に直結します。 輸送モードごとに条件を確認します。
危険物申告書 輸送上の危険品として申告する内容を確認します。 SDSと一致しているか確認する必要があります。 UN番号、正式輸送品名、数量、荷姿、包装を照合します。
現物ラベル GHS表示、危険品ラベル、UN番号、製品名などを確認します。 SDSや申告書と現物が一致しているかを確認する根拠になります。 現物表示とSDSが矛盾する場合は再確認します。

SDSの16項目と輸送実務での見方

SDSは、一般に16項目構成で整理されます。フォワーダー実務では、第14項の輸送情報が最も直接的に関係しますが、それ以外の項目も補助情報として重要です。

SDS項目 主な内容 輸送実務での見方 確認上の注意点
1. 化学品及び会社情報 製品名、供給者、緊急連絡先などです。 インボイス品名、メーカー名、対象製品と一致しているか確認します。 別製品のSDSでないか確認します。
2. 危険有害性の要約 GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報です。 GHS表示と現物ラベルが一致しているか確認します。 輸送危険品該非とは直接一致しない場合があります。
3. 組成及び成分情報 成分名、濃度、混合物情報などです。 濃度変更や成分変更により危険品該非が変わる可能性を確認します。 同じ製品名でも配合変更があれば再確認します。
4. 応急措置 吸入、皮膚付着、眼接触、飲み込み時の対応です。 倉庫やCFSで事故が起きた場合の安全情報として確認します。 搬入先から提出を求められる場合があります。
5. 火災時の措置 適切な消火剤、火災時の危険性、保護具です。 引火性貨物や火災時対応が問題になる貨物で確認します。 船会社・倉庫の安全確認に関係する場合があります。
6. 漏出時の措置 漏洩時の人体・環境への注意、封じ込め方法です。 漏洩時にCFS、倉庫、船会社が求める対応情報になります。 液体貨物や海洋汚染物質で重要です。
7. 取扱い及び保管上の注意 安全な取扱い、保管条件、避けるべき条件です。 CFS搬入、危険品倉庫、温度管理、混載可否の確認に関係します。 倉庫・CFS受入条件と照合します。
8. ばく露防止及び保護措置 管理濃度、保護具、換気などです。 荷役や倉庫作業で特別な安全対策が必要か確認します。 現場作業者の安全確認に関係します。
9. 物理的及び化学的性質 形状、臭い、pH、引火点、沸点、蒸気圧などです。 引火点や物性情報が危険品分類や輸送条件の根拠になる場合があります。 引火性液体や揮発性貨物で特に確認します。
10. 安定性及び反応性 反応性、化学的安定性、避けるべき条件、混触危険物質です。 積付け、隔離、混載可否、保管条件の確認に関係します。 他貨物との混載判断に影響します。
11. 有害性情報 急性毒性、皮膚腐食性、発がん性などです。 GHS表示や取扱い注意の確認に関係します。 輸送危険品分類とは直接一致しない場合があります。
12. 環境影響情報 水生環境有害性、残留性、分解性などです。 海洋汚染物質該当性を確認する入口になります。 Marine Pollutant該当性と照合します。
13. 廃棄上の注意 廃棄方法、残余物、汚染容器の扱いです。 事故・漏洩・返送時の処理に関係することがあります。 返送や廃棄が発生する場合に確認します。
14. 輸送上の注意 UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、海洋汚染物質などです。 海上・航空輸送の危険品該非確認に最も直接関係します。 輸送モード別に記載があるか確認します。
15. 適用法令 化管法、安衛法、毒劇法、消防法などです。 国内保管、取扱い、通関・倉庫搬入時の確認に関係します。 国内法令該当性と国際輸送上の危険品該非を分けて確認します。
16. その他の情報 作成日、改訂日、参考情報、免責文などです。 最新版かどうか、改訂履歴があるかを確認します。 旧版SDSを使っていないか確認します。

輸送実務では第14項が中心ですが、第3項の成分情報、第7項の保管条件、第9項の引火点などの物性、第10項の反応性、第12項の環境影響情報も輸送判断に関係することがあります。

第14項「輸送上の注意」の読み方

SDSの第14項にあたる輸送情報欄は、フォワーダーが最も重点的に確認すべき項目です。

確認項目 確認する内容 実務上の意味 問題がある場合の対応
UN番号 輸送上の危険品としてどのUN番号に該当するかを確認します。 IMDG Code、IATA危険物規則、危険物申告書の基礎になります。 空欄の場合はメーカー確認や危険品判定資料を求めます。
正式輸送品名 Proper Shipping Nameが記載されているかを確認します。 商品名ではなく輸送規則上の品名として申告します。 インボイス品名と異なる場合は対象製品を確認します。
危険物クラス 主危険性と副次危険性があるかを確認します。 ラベル、積付け、隔離、受託可否の確認につながります。 危険物申告書や外装ラベルと照合します。
容器等級 該当する場合、包装等級が記載されているかを確認します。 包装基準や数量制限の確認につながります。 包装条件を荷主・梱包業者へ確認します。
海洋汚染物質 Marine Pollutantに該当するかを確認します。 海上輸送での表示、申告、船会社確認に関係します。 SDS第12項、危険物申告書、外装表示を照合します。
海上輸送条件 IMDG Code上の扱いが記載されているかを確認します。 船会社、CFS、倉庫の受託確認につながります。 船会社・CFSへ受入可否を確認します。
航空輸送条件 IATA危険物規則上の扱いが記載されているかを確認します。 航空会社、クーリエ会社、空港上屋の受託確認につながります。 航空輸送する場合は航空会社条件を確認します。

輸送情報欄に記載がある場合でも、船会社や航空会社が必ず受託するとは限りません。SDSは判断の入口であり、最終的な受託可否は輸送モード、包装、数量、荷姿、運送人の条件で確認します。

輸送情報欄が空欄・非該当の場合の対応

SDSの輸送情報欄に「非該当」と書かれていても、それだけで通常貨物として進めてよいとは限りません。

SDSの状態 考えられる理由 フォワーダーの対応 注意点
輸送情報欄が空欄 メーカーが未記載、輸送情報を確認していない、古い書式の可能性があります。 荷主へ最新版SDS、メーカー確認書、危険品判定資料を求めます。 空欄を非危険品の意味と扱わないようにします。
輸送情報欄が「確認中」 危険品該非が未確定の可能性があります。 見積やブッキングを確定せず、判定結果を待ちます。 未確定のまま集荷・搬入しないようにします。
輸送情報欄が「非該当」 本当に非危険品の場合もありますが、対象輸送モードが不明な場合もあります。 海上輸送・航空輸送の両方で非該当かを確認します。 「非該当」の範囲を確認します。
海上輸送のみ記載 航空輸送条件が未確認の可能性があります。 航空輸送する場合は、IATA危険物規則上の扱いを追加確認します。 海上の判断を航空へ流用しないようにします。
航空輸送のみ記載 海上輸送条件や海洋汚染物質該当性が不足している可能性があります。 海上輸送する場合は、IMDG Code上の扱いを追加確認します。 Marine Pollutant該当性も確認します。
現物にGHS表示や危険品ラベルがある SDSの非該当記載と現物表示が矛盾している可能性があります。 現物写真、ラベル、SDS、メーカー確認を照合します。 現物表示を軽視しないようにします。
SDSが古い 分類、成分、法令、輸送情報が更新されている可能性があります。 最新版を取得し、改訂日と輸送情報を確認します。 旧版資料だけで判断しないようにします。

輸送情報欄が空欄、非該当、確認中の場合は、通常貨物として進めるのではなく、なぜその記載になっているのかを確認することが重要です。

海上輸送・航空輸送との関係

海上輸送では、SDSの情報をもとにIMDG Code上の扱いを確認します。航空輸送では、IATA危険物規則上の受託可否、包装基準、ラベル、危険物申告書の要否を確認します。

輸送モード 確認する規則・条件 SDSで見るポイント 実務上の注意点
海上輸送 IMDG Code、船会社、NVOCC、CFS、危険品倉庫の条件を確認します。 UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、海洋汚染物質、積付け・隔離を確認します。 船会社が受けてもCFSや倉庫が受けない場合があります。
航空輸送 IATA危険物規則、航空会社、クーリエ会社、空港上屋の条件を確認します。 UN番号、クラス、包装基準、数量制限、旅客機搭載可否、危険物申告書要否を確認します。 海上では可能でも航空では不可となる場合があります。
国内配送・倉庫保管 消防法、毒劇法、倉庫・配送会社の受入条件を確認します。 引火点、保管条件、取扱い注意、漏洩時対応、法令情報を確認します。 輸送危険品でなくても倉庫側がSDSを求める場合があります。
CFS搬入 CFS、混載業者、危険品倉庫、船会社の搬入条件を確認します。 UN番号、クラス、包装、外装表示、海洋汚染物質、混載可否を確認します。 LCL混載ではCFS受入可否と混載可否を分けて確認します。

海上輸送では受けられる貨物でも、航空輸送では受託不可または条件付きになる場合があります。特に、リチウム電池、スプレー缶、塗料、接着剤、香料、アルコール含有品、試薬、洗浄剤などは、輸送モードによって条件が変わりやすい貨物です。

同一製品でも再確認が必要になる場合

同じ製品名の貨物でも、濃度、容量、包装形態、荷姿、輸送モードが変わると、輸送上の扱いが変わることがあります。

変化する要素 起きる可能性があること 確認すること 対応の方向性
濃度が変わる 危険有害性、引火性、腐食性、毒性の分類が変わる場合があります。 改訂SDS、成分情報、危険品判定資料を確認します。 過去出荷時のSDSを流用せず、最新配合で再確認します。
容量が変わる 少量扱い、制限数量、包装条件が変わる場合があります。 1容器あたりの容量、外装数量、総数量を確認します。 危険物申告書や包装条件を再確認します。
包装形態が変わる 瓶、缶、ドラム、エアゾール、カートリッジなどで輸送条件が変わることがあります。 容器、内装、外装、UN容器の要否を確認します。 包装変更後のSDSや梱包仕様を確認します。
エアゾール化する 同じ内容物でも、スプレー缶として別の輸送区分になる可能性があります。 SDS、UN番号、航空輸送可否、ラベル条件を確認します。 通常の液体貨物と同じ扱いにしないようにします。
電池を内蔵する リチウム電池貨物として別確認が必要になる場合があります。 電池種類、Wh値、数量、機器組込・同梱の別を確認します。 製品仕様書や電池資料を取得します。
海上から航空へ切り替える 海上では受けられても、航空では受託不可または条件付きになる場合があります。 IATA危険物規則上の扱いと航空会社条件を確認します。 海上輸送時の判断をそのまま使わないようにします。

過去に同じ製品を輸送できた実績があっても、濃度、容量、包装、輸送モードが変われば再確認が必要です。

SDSと他書類の照合

SDSは単独で見るのではなく、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、現物表示、非危険品証明書と照合します。

照合対象 確認する内容 不一致がある場合の対応 確認する相手
インボイス 品名、型番、商品名、メーカー名を確認します。 SDSの製品名と一致しているか確認します。 荷主、メーカー
パッキングリスト 数量、荷姿、容器、外装、重量を確認します。 SDSや危険物申告書の数量・包装条件と一致しているか確認します。 荷主、倉庫、梱包業者
危険物申告書 UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、数量、包装を確認します。 SDS第14項と一致しているか確認します。 荷主、危険品申告者、船会社、航空会社
現物ラベル GHS表示、危険品ラベル、UN番号、製品名を確認します。 SDSや申告書と矛盾がないか確認します。 荷主、倉庫、配送会社
非危険品証明書 非危険品とする根拠を確認します。 SDSの危険有害性情報や輸送情報欄と矛盾していないか確認します。 荷主、メーカー
外装写真 ラベル、マーク、UN番号、ケースマーク、容器状態を確認します。 搬入前に表示修正や資料修正を行います。 荷主、倉庫、配送会社

書類間に矛盾がある場合は、荷主またはメーカーへ確認し、分類と輸送条件を確定させてから手配を進めます。

英語版SDSしか入手できない場合

輸出入実務では、海外メーカーが作成した英語版SDSしか入手できないことがあります。

この場合でも、フォワーダーはSDSの輸送情報欄を確認し、UN番号、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質、航空輸送条件などを読み取る必要があります。

状況 実務上の対応 注意点 確認する相手
英語版SDSしかない 輸送情報欄を確認し、必要に応じて荷主へ日本語版または翻訳資料を求めます。 社内・倉庫・通関・配送で内容を理解できる状態にします。 荷主、輸入者、メーカー
日本語版が必要な取引・管理場面 荷主または輸入者に、日本語版SDSの有無を確認します。 法令対応や国内保管・取扱い上の説明が必要になる場合があります。 輸入者、荷主、メーカー
翻訳だけで内容確認している 翻訳内容がSDS原本の輸送情報と一致しているか確認します。 UN番号、クラス、容器等級、否定表現の誤訳に注意します。 荷主、翻訳担当者、危険品専門業者
海外版と日本語版の内容が異なる 改訂日、対象製品、成分、輸送情報を照合します。 どちらが最新か、どちらが対象貨物に対応しているか確認します。 荷主、輸入者、メーカー

英語版SDSしかない場合でも、危険品輸送の確認を省略してよいわけではありません。必要に応じて、荷主、メーカー、輸入者、危険品専門業者へ確認します。

フォワーダーの関与範囲対比表

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
SDSを受け取る場面 最新版か、対象製品と一致しているか、第14項に輸送情報があるかを確認することです。 SDSがあるだけで輸送可能と断定することです。 輸送情報欄、現物ラベル、他書類と照合します。
MSDSが提出された場面 作成日、改訂日、対象製品、最新版SDSの有無を確認することです。 古いMSDSだけで危険品非該当と判断することです。 荷主またはメーカーへ最新版SDSを求めます。
輸送情報欄が空欄・非該当の場面 非該当の範囲、輸送モード、メーカー確認資料の有無を確認することです。 空欄や非該当を理由に通常貨物と即断することです。 危険品判定資料、非危険品証明書、メーカー確認書を取得します。
GHS表示がある場面 SDS第2項、第14項、現物ラベルを照合することです。 GHS表示だけで輸送危険品と断定することです。 輸送上の危険品該非は第14項と輸送規則で確認します。
危険物申告書を受け取る場面 SDS、インボイス、パッキングリスト、現物表示との整合を確認することです。 申告書が出ていれば内容確認は不要と考えることです。 UN番号、正式輸送品名、数量、荷姿を照合します。
海上輸送を手配する場面 IMDG Code、船会社、CFS、危険品倉庫の条件を確認することです。 SDSにUN番号があるため船積み可能と断定することです。 船会社・CFS・倉庫の受入可否を確認します。
航空輸送を手配する場面 IATA危険物規則、航空会社、クーリエ会社の条件を確認することです。 海上で受けられたため航空でも受けられると判断することです。 航空輸送用の包装基準、数量制限、搭載可否を確認します。
書類や現物に矛盾がある場面 不一致箇所を整理し、荷主・メーカーへ確認することです。 矛盾を残したまま船会社・航空会社へ提出することです。 分類と輸送条件を確定させてから手配を進めます。

実務で問題になりやすいケース

ケース 問題になる点 確認する資料・相手 対応の方向性
SDSが古く、現行の分類に合っていない 分類、法令、輸送情報が更新されている可能性があります。 最新版SDS、改訂日、メーカー確認 最新版SDSを取得し、改訂日と輸送情報を確認します。
輸送情報欄が空欄または「確認中」になっている 危険品該非が判断できません。 荷主、メーカー、危険品判定資料 危険品判定資料やメーカー確認書を求めます。
品名とSDSの製品名が一致しない 別製品のSDSで手配している可能性があります。 インボイス、型番、メーカー名、現物ラベル 対象製品を特定し、正しいSDSを取得します。
危険物申告書とSDSのUN番号が異なる 輸送分類が確定できず、船会社・航空会社が受託判断できません。 SDS、危険物申告書、メーカー確認 荷主・メーカーへ確認し、SDSまたは申告書を修正します。
航空輸送不可の貨物を航空便で手配してしまう 海上輸送では可能でも、航空輸送では受託不可の場合があります。 SDS、IATA危険物規則、航空会社回答 航空会社受託条件を確認し、海上輸送や別ルートを検討します。
現物に危険品ラベルがあるのに、SDSでは非該当になっている SDSが古い、別製品、または現物表示と資料が矛盾している可能性があります。 現物写真、ラベル、SDS、メーカー確認書 現物表示とSDSを照合し、必要に応じて再判定します。
混合物の濃度変更により、以前のSDSが使えなくなっている 濃度変更により、危険有害性や輸送上の分類が変わる可能性があります。 新配合SDS、成分情報、危険品判定資料 新しい配合に対応したSDSを取得し、危険品該非を再確認します。
英語版SDSの誤読によりUN番号や否定表現を取り違える 輸送危険品該非や申告内容を誤る可能性があります。 英語版SDS、日本語訳、メーカー確認 原文と翻訳を照合し、重要項目は荷主・メーカーへ確認します。

4列判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
SDSを受け取ったとき 荷主・メーカー 最新版か、対象製品と一致するか、作成日・改訂日を確認します。 古い場合や対象製品と違う場合は、最新版SDSを再提出してもらいます。
第14項を確認するとき 荷主・メーカー・危険品専門業者 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質を確認します。 空欄や不明確な場合は、危険品判定資料やメーカー確認書を求めます。
GHS表示があるとき 荷主・メーカー SDS第2項、現物ラベル、第14項の輸送情報を確認します。 GHS表示だけで輸送危険品と断定せず、輸送情報欄を確認します。
輸送情報欄が非該当のとき 荷主・メーカー 海上・航空のどの輸送モードで非該当かを確認します。 対象モードが不明なら、メーカー確認書や非危険品証明書を求めます。
危険物申告書と照合するとき 荷主・危険品申告者 UN番号、正式輸送品名、クラス、数量、包装、荷姿を確認します。 不一致があれば、申告書またはSDSを修正してから提出します。
海上輸送を手配するとき 船会社・NVOCC・CFS・倉庫 IMDG Code上の扱い、CFS受入可否、海洋汚染物質、混載可否を確認します。 受入不可なら別CFS、危険品倉庫、FCL化、次船を検討します。
航空輸送を手配するとき 航空会社・クーリエ会社・航空代理店 IATA危険物規則上の扱い、包装基準、数量制限、旅客機搭載可否を確認します。 受託不可なら海上輸送、別便、貨物機便、別航空会社を検討します。
現物表示とSDSが一致しないとき 荷主・メーカー・倉庫 現物ラベル、GHS表示、UN番号、製品名、外装表示を確認します。 搬入・船積み・搭載を保留し、資料修正または再判定を行います。

具体例1:輸送情報欄が空欄のSDSを受け取ったケース

荷主から提出されたSDSの第14項「輸送上の注意」が空欄で、インボイス品名は化学品名になっているケースです。

この場合、輸送情報欄が空欄であることを理由に、非危険品と判断してはいけません。メーカーが輸送情報を記載していない、旧版SDSを提出している、または輸送条件が未確認である可能性があります。

フォワーダーは、荷主へ最新版SDS、メーカー確認書、危険品判定資料、非危険品証明書の提出を依頼します。

海上輸送であればIMDG Code上の扱い、航空輸送であればIATA危険物規則上の扱いを確認し、通常貨物として進めてよい根拠を残すことが重要です。

具体例2:SDSと危険物申告書のUN番号が一致しないケース

SDS第14項にはあるUN番号が記載されている一方で、危険物申告書には別のUN番号が記載されているケースです。

この状態で船会社や航空会社へ提出すると、書類審査で止まる可能性が高くなります。別製品のSDS、旧版SDS、申告書作成ミス、分類変更などが原因として考えられます。

フォワーダーは、荷主またはメーカーへ確認し、対象製品、最新版SDS、正しいUN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級を確定させます。

修正後に、SDS、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、現物ラベル、外装表示を再照合してから、船会社・航空会社・CFS・倉庫へ確認します。

具体例3:過去に輸送できた製品だが濃度が変わったケース

過去に同じ製品名で海上輸送した実績がある貨物について、今回も同じ扱いで進めたいと荷主から依頼されたケースです。

しかし、確認すると成分濃度が変更されており、旧SDSとは配合が異なっていました。同じ製品名でも、濃度、容量、包装形態が変わると、引火性、腐食性、毒性、環境有害性、輸送上の危険品該非が変わることがあります。

フォワーダーは、過去実績だけで判断せず、新しい配合に対応した最新版SDS、危険品判定資料、必要に応じてメーカー確認書を取得します。

そのうえで、UN番号、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質該当性、船会社・CFS・倉庫の受入可否を再確認します。

具体例4:英語版SDSしかなく、輸送情報の読み違いが起きたケース

海外メーカーから英語版SDSのみが提出され、輸送情報欄の記載を社内で確認したところ、UN番号や危険物クラスの記載を見落としていたケースです。

英語版SDSしかない場合でも、危険品輸送の確認を省略してよいわけではありません。特に、UN番号、Proper Shipping Name、Packing Group、Marine Pollutant、Not regulated などの表現は、輸送判断に直接関係します。

フォワーダーは、原文の輸送情報欄を確認し、必要に応じて荷主、輸入者、メーカー、危険品専門業者へ確認します。

社内、倉庫、CFS、通関、配送で内容を共有する必要がある場合は、日本語版SDSまたは確認用の翻訳資料を求め、原文との整合性を確認します。

荷主へ確認すべきこと

SDSが不完全な場合、フォワーダーは荷主に修正版、メーカー確認書、危険品非該当証明、試験データなどを求める必要があります。

  • 最新版のSDSか。
  • 対象製品とSDSの製品名が一致しているか。
  • 日本語版または実務上確認できる版があるか。
  • 輸送情報欄が記載されているか。
  • UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級が明記されているか。
  • 海洋汚染物質に該当するか。
  • 航空輸送と海上輸送で条件が異なるか。
  • 危険品非該当の場合、その根拠資料があるか。
  • 現物ラベルや包装表示とSDSが一致しているか。
  • 濃度、容量、包装形態、輸送モードが過去出荷時と変わっていないか。

特に危険品かどうかが曖昧な貨物は、ブッキング後ではなく、見積・手配前の段階で確認することが重要です。

よくある誤解

誤解 実務上の考え方 確認すべきこと
SDSを受け取れば輸送可否は判断できる SDSは入口資料であり、輸送可否は輸送情報欄、荷姿、数量、受託条件を確認して判断します。 SDS第14項、危険物申告書、船会社・航空会社条件を確認します。
輸送情報欄が空欄なら非危険品である 空欄は非危険品を意味するとは限りません。 メーカー確認書、危険品判定資料、最新版SDSを確認します。
非該当と書かれていればすべての輸送で通常貨物になる 海上、航空、国内配送、倉庫保管で条件が異なる場合があります。 対象輸送モード、IMDG Code、IATA危険物規則、倉庫条件を確認します。
GHS表示があれば必ず輸送危険品である GHS表示は危険有害性を示すもので、輸送危険品該非と必ず一致するわけではありません。 第14項の輸送情報欄、UN番号、危険物クラスを確認します。
MSDSでも過去に使った資料なら問題ない 古いMSDSは、現在の分類、法令、輸送情報と合わない可能性があります。 最新版SDS、改訂日、対象製品との一致を確認します。
危険物申告書があればSDSとの照合は不要である 危険物申告書とSDSが一致しない場合、船会社・航空会社で確認が止まります。 UN番号、正式輸送品名、数量、荷姿、包装を照合します。
過去に同じ製品を輸送できたなら今回も同じ扱いでよい 濃度、容量、包装形態、輸送モードが変われば扱いが変わる場合があります。 最新版SDS、配合、容量、包装、輸送モードを確認します。
英語版SDSは翻訳すれば十分である 翻訳だけでなく、UN番号、クラス、否定表現、輸送モード別記載が原文と一致しているか確認が必要です。 原文SDS、翻訳資料、メーカー確認を照合します。

フォワーダーが注意すべき点

フォワーダーは、SDSを受け取っただけで安心してはいけません。重要なのは、SDSの内容が実際の貨物、荷姿、輸送モード、受託条件と一致しているかを確認することです。

  • SDSは最新版を入手します。
  • 第14項の輸送情報欄を必ず確認します。
  • 危険品非該当でも根拠を確認します。
  • 海上輸送と航空輸送の条件を分けて確認します。
  • 第3項、第7項、第9項、第10項、第12項も補助的に確認します。
  • 荷主、メーカー、船会社、航空会社、CFS、倉庫の情報を照合します。
  • 疑義がある場合は、危険品専門業者や船会社・航空会社に事前確認します。
  • 英語版SDSしかない場合は、必要に応じて日本語版や確認資料を求めます。

まとめ

SDSとは、化学品の危険有害性、成分、取扱い、保管、応急措置、漏出時対応、廃棄、輸送情報などを記載した安全データシートです。

フォワーダー実務では、SDSは危険品輸送の入口資料です。ただし、SDSを受け取っただけで輸送可否が確定するわけではありません。

輸送実務では、第14項の輸送情報欄を中心に、UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質、海上輸送・航空輸送の条件を確認します。あわせて、第3項の成分情報、第7項の保管条件、第9項の物性、第10項の反応性、第12項の環境影響情報も補助的に確認します。

SDSは、GHS表示、危険物申告書、インボイス、パッキングリスト、現物ラベル、IMDG Code、IATA危険物規則、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件と照合して初めて、輸送実務で使える資料になります。

本記事の要点は、SDSを単なる化学品資料として読むのではなく、危険品輸送、非危険品判断、海上輸送、航空輸送、CFS搬入、倉庫受入をつなぐ実務上の確認起点として扱うことです。

同義語・別表記

  • SDS
  • 安全データシート
  • MSDS
  • Material Safety Data Sheet
  • Safety Data Sheet
  • 化学品安全データシート