IATA危険物規則

IATA危険物規則とは

IATA危険物規則とは、航空輸送で危険品を安全に運ぶための分類、包装、表示、ラベル、数量制限、書類作成などを定める実務規則です。

英語では IATA Dangerous Goods Regulations といい、一般に IATA DGR と呼ばれます。

フォワーダー実務では、航空危険品の見積、ブッキング、航空会社への受託確認、危険物申告書、包装基準、ラベル、マーキング、数量制限、旅客機搭載可否を確認する際に重要です。

海上輸送で受けられる貨物でも、航空輸送では受託不可または条件付きとなる場合があります。そのため、危険品の可能性がある貨物を航空輸送する場合は、見積段階からIATA DGR上の確認を行う必要があります。

この記事で扱う範囲

本記事では、IATA危険物規則をフォワーダー実務でどのように確認するかを扱います。

中心となるのは、規則条文の詳細解説ではなく、SDSUN番号、正式輸送品名、危険物クラス容器等級、包装基準、数量制限、危険物申告書、航空会社の受託条件をどの順番で確認するかという実務判断です。

特に、IMDG Codeとの違い、リチウム電池貨物の種類別整理、旅客機搭載と貨物機専用の違い、SDSと危険物申告書が一致しない場合、少量危険品・例外規定・制限数量の考え方を整理します。

IATA危険物規則の概要

IATA危険物規則は、航空機で危険品を輸送する際に、関係者が確認する実務上の中心規則です。

危険品の分類、UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、副次危険性、容器等級、包装基準、数量制限、ラベル、マーキング、危険物申告書、航空会社ごとの制限などを整理します。

航空輸送は、海上輸送に比べて輸送空間が限られ、気圧変化、温度変化、振動、火災時の対応制限などのリスクがあります。そのため、航空危険品は海上危険品よりも厳しい条件で管理されることが多く、フォワーダーは見積段階から危険品情報を確認する必要があります。

航空危険品で確認する主な項目

航空危険品では、SDSにUN番号があるだけでは不十分です。IATA DGR上の包装基準、数量制限、搭載条件、航空会社の受託可否まで確認しなければ、集荷後や空港搬入後に止まる可能性があります。

確認項目 確認する内容 確認不足で起きること
危険品該当性 航空輸送上の危険品に該当するか。 通常貨物として進めてしまい、航空会社確認で止まる。
UN番号 輸送上の危険品としてどのUN番号に該当するか。 航空会社が受託可否を判断できない。
正式輸送品名 Proper Shipping Nameが正しく記載されているか。 危険物申告書やラベルと不一致になる。
危険物クラス・副次危険性 主危険性と副次危険性が確認できているか。 ラベル、隔離、受託条件の確認ができない。
容器等級 該当貨物に包装等級が必要か。 包装基準や数量制限を確認できない。
包装基準 航空輸送用の包装基準を満たしているか。 空港搬入後に再梱包や受託拒否になる。
数量制限 1包装あたり、1件あたり、搭載条件上の数量制限に合っているか。 予約した便に搭載できない。
旅客機・貨物機の区分 旅客機搭載可能か、貨物機専用か。 通常便で予約しても搭載できない。
危険物申告書 申告書が必要か、内容がSDSや現物表示と一致しているか。 航空会社の書類確認で止まる。
航空会社・クーリエ会社の独自制限 各社の受託条件、禁制品、追加確認事項があるか。 規則上可能でも、実際の運送人が受けない。

IMDG Codeとの違い

IMDG Codeは海上危険品輸送の規則であり、IATA危険物規則は航空危険品輸送の規則です。

同じ貨物でも、海上輸送と航空輸送で包装、数量制限、ラベル、受託可否が異なる場合があります。海上で受けられた貨物を、そのまま航空へ切り替えられるとは限りません。

比較項目 IMDG Code IATA危険物規則
対象輸送 海上輸送。 航空輸送。
輸送環境 船舶、コンテナ、CFS、港湾保管を前提に確認する。 航空機、空港上屋、気圧変化、温度変化、搭載スペースを前提に確認する。
包装基準 海上輸送に適した包装基準を確認する。 航空輸送に適した包装基準を確認する。海上で可能な包装でも航空では不可となる場合がある。
数量制限 コンテナ積載や海上輸送上の制限を確認する。 1包装、1件、旅客機、貨物機専用など、航空特有の数量制限を確認する。
ラベル・マーキング 海上危険品ラベル、UN番号、海洋汚染物質表示などを確認する。 航空危険品ラベル、Cargo Aircraft Only表示、リチウム電池関連表示などを確認する。
書類 海上危険品申告、船社・NVOCC・CFS確認が中心になる。 航空危険物申告書、航空会社受託確認、空港上屋確認が中心になる。
受託可否 船社、NVOCC、CFS、港湾規制に左右される。 航空会社、便、機材、旅客機・貨物機区分、クーリエ会社の独自制限に左右される。
リードタイム 危険品確認やCFS搬入締切に注意する。 危険品確認、航空会社事前承認、書類確認、上屋搬入条件により通常貨物より長くなることがある。

特に、リチウム電池、エアゾール、塗料、接着剤、香料、アルコール含有品、試薬、医薬品関連貨物などは、海上では比較的手配しやすくても、航空では厳しい制限を受けることがあります。

SDSとの関係

SDSの輸送情報欄には、UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級などが記載されることがあります。フォワーダーは、SDSをもとに、航空輸送上の危険品該当性を確認します。

ただし、SDSの記載が海上輸送中心で、航空輸送条件が十分に書かれていない場合があります。また、SDSで危険品非該当とされていても、航空会社やクーリエ会社が追加確認を求める場合があります。

SDSの状態 実務上の注意点 対応
SDSにUN番号・クラスが記載されている 航空輸送でもそのまま受けられるとは限らない。 IATA DGR上の包装基準、数量制限、旅客機・貨物機区分、航空会社受託可否を確認する。
SDSが海上輸送中心の記載になっている 航空輸送条件が十分に判断できない場合がある。 荷主、メーカー、航空会社、危険品専門業者へ追加確認する。
SDSでは非危険品とされている 航空会社やクーリエ会社が、品名・成分・用途から追加確認を求めることがある。 非危険品証明書、メーカー確認書、製品仕様書を取得する。
SDSの製品名とインボイス品名が一致しない 別製品のSDSで手配している可能性がある。 製品名、型番、メーカー名、成分を照合する。

危険物申告書との関係

航空危険品では、危険物申告書が必要になる場合があります。

危険物申告書には、UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、副次危険性、容器等級、数量、包装、ラベル、緊急連絡先などが記載されます。

フォワーダーは、危険物申告書とSDS、インボイスパッキングリスト、現物ラベル、外装表示の内容が一致しているかを確認する必要があります。書類の不一致は、航空会社の受託拒否、搭載不可、出荷遅延につながる可能性があります。

SDSと危険物申告書が矛盾する場合

SDSと危険物申告書の内容が一致しない場合、フォワーダーはそのまま航空会社へ提出してはいけません。

矛盾の例 問題点 対応の方向性
SDSと危険物申告書のUN番号が違う 別貨物、別分類、旧資料の可能性がある。 荷主・メーカーへ確認し、どちらが正しい輸送分類かを明確にする。
SDSでは海上中心の記載、申告書では航空危険品として記載されている 航空輸送条件の根拠が不足している可能性がある。 航空輸送用の分類根拠、包装基準、数量制限を追加確認する。
SDSでは非危険品、申告書では危険品扱い 資料の整合が取れていないため、航空会社が受け付けない可能性がある。 メーカー確認書や危険品判定資料を取得し、どちらの扱いで進めるかを確定する。
申告書の数量・荷姿が実貨物と違う 包装基準や数量制限の確認ができない。 パッキングリスト、現物写真、荷姿情報を照合し、申告書を修正する。

矛盾がある場合は、SDS、危険物申告書、現物、メーカー確認資料を照合し、航空輸送上の分類と条件を確定させてから手配を進めます。

旅客機搭載と貨物機専用

航空危険品では、旅客機に搭載できる貨物と、貨物機専用となる貨物があります。

貨物機専用の場合、Cargo Aircraft Only の表示や条件が関係し、利用できる便や航空会社が限られることがあります。この確認を怠ると、予約した便に搭載できず、ルート変更、遅延、追加費用が発生する可能性があります。

判断軸 確認すること 実務上の注意
危険物クラス 航空輸送上、旅客機搭載可能なクラス・条件か。 クラスだけでなく、数量や包装条件も確認する。
数量 1包装あたり、1件あたり、搭載条件上の数量制限に合っているか。 数量が変わると、旅客機搭載可否や申告条件が変わることがある。
容器等級・包装基準 航空輸送用の包装基準を満たしているか。 海上輸送用の梱包では足りない場合がある。
包装形態 単体危険品か、機器同梱か、機器組込か、少量・例外扱いか。 同じ品目でも包装形態により扱いが変わる。
航空会社の受託条件 航空会社、便、機材、経由地、クーリエ会社の制限。 規則上可能でも、運送人が受けない場合がある。
表示・書類 Cargo Aircraft Only表示、危険物申告書、ラベル、マーキング。 表示や書類の不足は受託拒否につながる。

旅客機搭載可否は、単に危険品かどうかだけで決まるものではありません。危険物クラス、数量、包装基準、包装形態、航空会社の受託条件を組み合わせて確認する必要があります。

リチウム電池貨物の注意点

航空危険品で特に注意が必要なのがリチウム電池です。

リチウム電池は、電池の種類、Wh値、リチウム含有量、数量、梱包状態、機器への組込み有無、航空会社の受託条件によって、取り扱いが大きく変わります。

具体的な数値基準や包装指示は改訂されることがあるため、実務では常に最新版の規則、航空会社条件、荷主資料を確認する必要があります。

電池の種類・形態 代表的な整理 確認すること
リチウムイオン電池単体 電池単体として扱われる貨物。 UN番号、Wh値、数量、充電状態、包装基準、旅客機搭載可否、航空会社受託条件を確認する。
リチウムイオン電池の機器同梱 電池が機器と同じ梱包内に入っているが、機器に組み込まれていない形態。 電池と機器の関係、数量、包装、短絡防止、ラベル・書類条件を確認する。
リチウムイオン電池の機器組込 電池が機器に組み込まれている形態。 機器内での固定状態、数量、Wh値、梱包、表示・書類要否を確認する。
リチウム金属電池単体 リチウム金属電池そのものを送る貨物。 リチウム含有量、数量、包装基準、旅客機搭載可否、航空会社受託条件を確認する。
リチウム金属電池の機器同梱 リチウム金属電池が機器と同梱されている形態。 電池の数量、リチウム含有量、機器との関係、短絡防止、表示条件を確認する。
リチウム金属電池の機器組込 リチウム金属電池が機器に組み込まれている形態。 機器への組込み状態、電池数量、包装、ラベル・書類要否を確認する。

リチウム電池では、「電池単体」「機器同梱」「機器組込」の違いが重要です。荷主が「電池入り製品です」と説明していても、電池単体なのか、機器と同梱なのか、機器に組み込まれているのかによって、航空輸送条件が変わります。

リチウム電池のUN番号整理

リチウム電池貨物では、電池の種類と形態によってUN番号が分かれます。

区分 代表的なUN番号 実務上の見方
リチウムイオン電池単体 UN3480 電池単体として扱う。航空会社の受託条件や旅客機搭載可否を特に確認する。
リチウムイオン電池の機器同梱・機器組込 UN3481 機器との関係、同梱か組込か、数量、包装条件を確認する。
リチウム金属電池単体 UN3090 リチウム含有量、数量、包装基準、受託可否を確認する。
リチウム金属電池の機器同梱・機器組込 UN3091 機器との関係、電池数量、包装、表示条件を確認する。

UN番号だけで判断するのではなく、電池の種類、形態、Wh値またはリチウム含有量、数量、包装、航空会社条件を組み合わせて確認する必要があります。

少量危険品・例外規定・制限数量

航空危険品では、少量危険品、例外規定、制限数量などの扱いが関係する場合があります。

ただし、これらは「少量だから普通貨物でよい」という意味ではありません。航空輸送では、少量であっても包装、表示、書類、受託条件の確認が必要になることがあります。

区分 実務上の意味 注意点
Limited Quantity 一定の条件を満たす制限数量の危険品として扱う考え方。 数量、包装、表示、航空輸送での可否を確認する。
Excepted Quantity ごく少量の危険品について、一定条件下で簡略化された扱いが認められることがある区分。 完全に通常貨物になるわけではなく、条件確認が必要です。
少量サンプル 研究用、試験用、営業サンプルなどとして少量出荷される貨物。 用途や数量ではなく、成分、危険性、輸送規則上の扱いを確認する。
航空会社独自条件 規則上可能でも、航空会社やクーリエ会社が独自に制限する場合がある。 事前に運送人へ受託可否を確認する。

少量危険品や例外規定の詳細は、貨物内容、数量、包装、輸送モード、航空会社条件によって変わります。フォワーダーは、荷主の「少量だから大丈夫」という説明だけで判断しないことが重要です。

よくあるトラブルと対応の方向性

航空危険品の不備は、集荷後、空港搬入後、航空会社確認後に発覚することがあります。その場合、搭載不可、再梱包、書類差替え、返送、出荷延期、追加費用につながる可能性があります。

よくあるトラブル 何が問題か 対応の方向性
海上輸送の感覚で航空便を手配してしまう。 海上では受けられる貨物でも、航空では受託不可または条件付きとなることがある。 航空輸送用にSDS、UN番号、包装基準、数量制限、航空会社条件を確認し直す。
SDSに航空輸送条件が十分に記載されていない。 航空輸送での包装基準や受託可否が判断できない。 荷主、メーカー、航空会社、危険品専門業者へ追加確認する。
UN番号、クラス、容器等級の情報が不足している。 危険品としての分類や受託条件を確認できない。 危険品判定資料、SDS、メーカー確認書を取得する。
危険物申告書とSDSの内容が一致しない。 航空会社の書類審査で止まる可能性が高い。 UN番号、正式輸送品名、クラス、数量、荷姿を照合し、修正後に提出する。
リチウム電池の種類や容量確認が不十分。 UN番号、包装基準、旅客機搭載可否、航空会社受託条件が判断できない。 電池種類、Wh値、リチウム含有量、数量、機器同梱・組込の別を確認する。
航空会社やクーリエ会社の独自制限を見落とす。 規則上可能でも、実際の運送人が受けない場合がある。 見積・集荷前に運送人へ受託可否を確認する。
外装ラベルやマーキング不備で受託拒否される。 空港搬入後に再ラベル、再梱包、返送になる可能性がある。 搬入前に危険品ラベル、UN番号、CAO表示、リチウム電池表示などを確認する。
旅客機搭載不可の貨物を通常便で手配してしまう。 予約した便に搭載できず、ルート変更や出荷延期になる。 旅客機搭載可否、貨物機専用条件、代替便、追加費用を確認する。

発覚タイミング別の対応

航空危険品の不備は、どの段階で発覚したかによって対応が変わります。

発覚タイミング 起きやすい問題 対応の方向性
見積段階 危険品情報が不足しており、見積やルートを確定できない。 SDS、UN番号、危険物クラス、数量、荷姿を取得してから見積条件を確定する。
集荷前 危険物申告書、ラベル、包装に不備が見つかる。 集荷前に修正し、航空会社受託可否を再確認する。
集荷後 倉庫や上屋で表示・書類不一致が見つかる。 書類差替え、再ラベル、再梱包、返送、保管費用の可能性を確認する。
空港搬入後 航空会社確認で受託不可または搭載不可となる。 別便、貨物機専用便、別航空会社、海上輸送への切替を検討する。
搭載直前 機材・便・受託条件により搭載できない。 遅延連絡、代替ルート、追加費用、保管費用、荷主説明を整理する。

荷主へ確認すべきこと

荷主が「少量だから大丈夫」「サンプルだから大丈夫」と説明しても、航空危険品では数量や用途だけで判断できません。

  • 最新版のSDSがあるか。
  • 航空輸送で危険品に該当するか。
  • UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級が確認できているか。
  • 航空輸送用の包装基準を満たしているか。
  • リチウム電池、エアゾール、アルコール、引火性液体、ガス、腐食性物質を含まないか。
  • 危険物申告書が必要か。
  • 旅客機搭載可能か、貨物機専用か。
  • 航空会社・クーリエ会社の受託可否を確認済みか。
  • 危険品非該当の場合、その根拠資料があるか。
  • 現物ラベル、外装表示、インボイス、パッキングリスト、SDSが一致しているか。

フォワーダーが注意すべき点

IATA危険物規則は、フォワーダーが航空危険品を扱ううえで避けて通れない実務規則です。

  • 航空危険品は見積段階で確認する。
  • SDS、危険物申告書、インボイス、現物表示を照合する。
  • 海上輸送と航空輸送の条件を混同しない。
  • リチウム電池、スプレー缶、塗料、接着剤、香料、試薬は特に注意する。
  • 航空会社・クーリエ会社ごとの独自制限を確認する。
  • 旅客機搭載可否と貨物機専用条件を確認する。
  • 危険物申告書とSDSが矛盾する場合は、そのまま提出しない。
  • 疑義がある場合は、荷主、メーカー、航空会社、危険品専門業者へ事前確認する。

まとめ

IATA危険物規則とは、航空輸送で危険品を安全に運ぶための分類、包装、表示、ラベル、数量制限、書類作成などを定める実務規則です。

航空輸送では、海上輸送で受けられる貨物でも、受託不可または条件付きとなる場合があります。そのため、IMDG CodeとIATA危険物規則を混同せず、輸送モードごとに条件を確認する必要があります。

特に、リチウム電池、エアゾール、塗料、接着剤、香料、アルコール含有品、試薬などは、UN番号、危険物クラス、包装基準、数量制限、旅客機搭載可否、航空会社受託条件を確認することが重要です。

重要なのは、規則名を知ることではなく、SDS、UN番号、危険物クラス、容器等級、包装基準、危険物申告書、航空会社の受託条件を照合し、航空機に安全に搭載できる状態に整えることです。

同義語・別表記

  • IATA DGR
  • IATA危険物規則
  • 航空危険物規則
  • Dangerous Goods Regulations
  • 航空危険品輸送規則
  • IATA Dangerous Goods Regulations

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