売却処分 — 輸入貨物クレームにおける残存価額と実務手順

Salvage Sale — Residual Value and Procedures in Import Cargo Claims

売却処分とは

売却処分とは、輸入貨物に破損、濡損、汚損、変形、品質低下などが発生した場合に、その貨物を事故品、値引き品、部品取り品、再利用品またはスクラップ品として売却する処理です。

貨物事故が発生しても、貨物の経済的価値が完全に失われるとは限りません。新品として通常販売できない場合でも、値引き販売、用途限定販売、部品取り、原材料回収またはスクラップ売却によって一定額を回収できることがあります。

売却処分によって回収した金額は、貨物に事故後も残っていた価値を示すものです。保険金請求や運送人・NVOCCに対する損害賠償請求では、この金額が残存価額として損害額から控除されることがあります。

したがって、売却処分は単なる在庫処分ではありません。売却対象、数量、単価、売却先、売却条件、入金額および処分前の貨物状態を明確にし、損害額資料と整合させる必要があります。

また、売却後は現物を確認できなくなるため、高額貨物、食品、医薬品、ブランド品、危険品、品質保証が必要な貨物などでは、売却前に保険会社、荷主その他の関係者へ確認し、写真、検品記録、サーベイ報告書等を保存することが重要です。

この記事で扱う範囲

この記事では、輸入貨物クレームにおける売却処分の意味、廃棄処分との違い、売却を選択する判断基準、残存価額との関係、売却額の妥当性、処分前の証拠保存、提出先別の説明事項およびフォワーダーの関与範囲を扱います。

個別の保険金支払い、運送人等の法的責任、ブランド毀損、製造物責任、食品・医薬品等の販売規制、税務・会計処理については、それぞれの専門家や関係当事者による確認が必要です。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
売却処分の基本 事故貨物を事故品、値引き品、部品取り品、スクラップ品として売却する考え方 保険会社への提出資料、損害額資料全体の構成
廃棄処分との違い 売却収入が発生する処分と、廃棄費用が発生する処分の違い 廃棄費用、廃棄証明書、廃棄手続
売却判断 修理、売却、廃棄、保留のいずれを選択するかの判断軸 修理見積書、修理不能証明、品質判定
残存価額 売却額と残存価額の関係、損害額からの控除方法 保険約款上の損害額算定、全損・分損の判断
売却額の妥当性 市場性、相場、買い手、保管費用、早期処分の必要性 専門査定、中古市場・スクラップ市場の詳細調査
処分前資料 写真、検品記録、数量、ケース番号、査定、売却見積の保存 写真資料、検品報告書、サーベイ報告書
売却後資料 売却明細、請求書、入金記録、引渡記録の保存 税務・会計上の売上処理、消費税処理
提出先別の説明 保険会社、運送人、NVOCC、荷主への説明事項の違い 運送人責任、責任制限、Claim Letter、通知期限
フォワーダーの関与 資料収集、売却先との調整、数量・金額の対応付け フォワーダー責任NVOCC責任、売買契約上の権限

売却処分が問題になる理由

事故貨物の価値が一部残っている場合、貨物価額の全額をそのまま損害額として請求すると、事故後に残った価値を重複して請求することになり得ます。

一方、貨物を極端に低い金額で売却した場合には、本来回収できた価値を十分に回収していないとして、損害拡大防止義務や売却額の妥当性が問題になることがあります。

売却処分では、次の四つを区別して整理することが重要です。

整理項目 意味 主な確認資料 損害額との関係 実務上の注意点
事故前の価額 事故がなければ貨物が有していた価額 Invoice、売買契約書、注文書 損害額算定の出発点となる 請求額と必ずしも同額とは限らない
事故後の状態 破損、品質低下、使用制限等を受けた状態 写真、検品報告書、サーベイ報告書 残存価値を判断する前提となる 売却前に記録する
売却額 事故貨物を実際に売却して回収した金額 売却明細、請求書、入金記録 残存価額の有力な資料となる 数量、単価、総額を一致させる
売却関連費用 仕分け、再梱包、輸送、仲介等に要した費用 作業明細、運送請求書、仲介明細 売却回収額との関係を別途整理する 通常費用との重複を避ける

売却処分が検討される主な場面

貨物の状態 売却処分を検討する理由 想定される売却方法 確認資料 注意点
外装だけが破損している 商品本体が使用可能で値引き販売できる可能性がある アウトレット販売、B級品販売 外装写真、商品検品記録 保証条件やブランド管理を確認する
一部に傷や変形がある 正常品としては販売できないが用途限定で使用できる 事故品販売、現状有姿販売 損害写真、使用可否判定 損傷内容を買主へ明示する
完成品として使用できない 一部の部品には利用価値が残る 部品取り品として売却 部品一覧、メーカーコメント 部品価格の根拠を残す
金属・原材料価値が残る 製品としては使えなくても再資源化価値がある スクラップ売却 重量票、スクラップ単価表 重量、単価、控除費用を確認する
修理費が高額である 修理するより現状売却した方が経済的な場合がある 事故現状品として売却 修理見積、売却見積 修理案との比較根拠を残す
品質は低下したが使用可能である 特定用途や限定市場で需要がある 用途限定販売 品質検査、買主の使用条件 食品・医薬品等は販売規制を確認する
保管料が増加している 保管を続けるより早期売却が損害拡大防止となる 早期一括売却 保管料見込、倉庫連絡 証拠保存と事前確認を省略しない
一部だけ価値が残っている 売却可能部分と廃棄部分を分けられる 一部売却・一部廃棄 仕分け表、数量一覧 回収額と廃棄費用を別々に記録する

売却処分と廃棄処分の違い

売却処分と廃棄処分は、どちらも事故貨物を通常の流通から外す対応ですが、損害額計算上の方向が異なります。

売却処分では回収額が生じ、損害額から控除する要素となることがあります。一方、廃棄処分では処分費用が生じ、その必要性と相当性が認められれば損害額資料に含まれることがあります。

比較項目 売却処分 廃棄処分 確認資料 実務上の注意点
事故後の価値 一定の使用価値・換金価値が残る 利用価値や売却価値がほとんどない 査定、検品報告書、相場資料 価値がないとの判断を早急に行わない
処理内容 事故品、部品取り品、スクラップ品等として売却する 処分業者等へ引き渡して廃棄する 売却明細、廃棄証明書 一部売却・一部廃棄を区分する
金銭の流れ 売却代金を回収する 廃棄費用を支払う 入金記録、廃棄費用請求書 回収額と支出額を相殺せず表示する
損害額への影響 残存価額として控除されることがある 必要な廃棄費用が加算されることがある 損害額計算書 個別約款と請求根拠を確認する
処分前の確認 売却条件・買主・金額を確認する 廃棄必要性・数量・方法を確認する 関係者の承認記録 現物確認の機会を失わせない
処分後の資料 売却明細、引渡記録、入金記録 廃棄証明書、マニフェスト、支払記録 取引・処分記録 対象貨物と数量を一致させる

売却・修理・廃棄・保留の判断基準

事故貨物の処理方法は、単に売却可能かどうかだけで決めるものではありません。貨物の安全性、修理可能性、市場性、残存価値、保管費用および証拠保全の必要性を比較します。

判断項目 売却を検討しやすい場合 修理を検討しやすい場合 廃棄・保留を検討しやすい場合 主な確認資料
使用可能性 用途限定、部品利用、原料利用が可能 修理後に本来用途へ復帰できる 安全性や品質上使用できない 検品報告、メーカーコメント
修理費用 修理費が売却後損失を上回る 修理費が合理的で価値回復が見込める 修理可否が未確定なら保留する 修理見積書、修理不能証明
市場性 事故品、部品、スクラップとして買い手がいる 修理後に通常市場へ戻せる 買い手がなく、価値も確認できない 査定、複数見積、相場資料
安全・品質 売却条件を限定すれば安全に利用できる 修理・検査で安全性を回復できる 食品、医薬品等で流通させられない 品質検査、法規制確認
保管費用 早期売却で保管料増加を防げる 短期間の修理待ちで済む 証拠調査が必要なら処分を保留する 保管料見込、作業日程
ブランド・保証 ブランド表示除去や保証対象外を明示できる 正規修理で保証を維持できる ブランド管理上再流通できない メーカー・商標権者の指示
関係者確認 処分前に売却方針と条件を共有できる 修理内容と費用を事前確認できる 確認が未了なら現物を保存する メール、承認記録、指示書

売却処分の実務フロー

売却処分は、事故貨物を第三者へ引き渡し、現物確認の機会を失わせる処理です。売却を先行させず、事故状態、数量、処理理由および売却条件を順番に確認します。

段階 主な対応 確認する資料 判断上のポイント 問題がある場合の対応
1.事故状態の確認 破損、濡損、汚損、変形、品質低下を確認する 写真、事故報告書、検品記録 通常販売できない理由を特定する 専門検査やサーベイを行う
2.数量の確定 正常品、売却対象、廃棄対象を区分する Packing List、数量照合表 売却明細と損害数量を一致させる 再検品し、ケース別に記録する
3.修理可否の確認 修理可能性と修理費用を調査する 修理見積書、修理不能証明 修理と売却の経済性を比較する 追加見積やメーカー意見を取得する
4.売却可能性の確認 買い手、用途、見込価格、条件を確認する 査定、買取見積、相場資料 売却方法と市場性を確認する 複数の売却先を比較する
5.廃棄・保管との比較 売却額、廃棄費、保管費を比較する 廃棄見積、保管料見込 総合的に損失を抑える方法を選ぶ 処分方法を再検討する
6.関係者への確認 保険会社、荷主等へ処分方針を共有する メール、承認記録、指示書 現物確認やサーベイの要否を確認する 処分を一時保留する
7.売却前資料の保存 写真、品番、数量、ケース番号を記録する 写真台帳、検品報告書 売却後も状態を説明できるようにする 不足資料を追加作成する
8.売却実行 売却条件に基づき貨物を引き渡す 売却明細、引渡書、請求書 数量、単価、総額を確定する 差異があれば引渡時に記録する
9.入金確認 売却代金の入金を確認する 入金記録、銀行明細 実際の回収額を確定する 未収金を売却済み額として扱わない
10.損害額への反映 売却額を残存価額として整理する 損害額計算書、Claim Letter 請求額と回収額の重複を防ぐ 金額・数量の不一致を修正する

残存価額との関係

売却処分によって実際に回収した金額は、事故貨物に残っていた経済的価値を示す有力な資料です。損害額の計算では、事故前価額等から残存価額を控除して整理することがあります。

基本的な考え方の一例は、次のとおりです。

事故前価額等 − 残存価額 = 残存価額控除後の損害額

ただし、実際の保険金または損害賠償額は、保険約款、免責金額、責任制限、修理費、追加費用、税金、費用の相当性等によって異なります。

計算要素 意味 主な確認資料 注意点
事故前価額 1,000,000円 事故がなければ有していた価額 Invoice、売買契約書 請求基礎となる価額を確認する
売却処分額 300,000円 事故貨物の売却で回収した金額 売却明細、入金記録 未入金額と実回収額を区別する
残存価額控除後の金額 700,000円 1,000,000円から300,000円を控除した金額 損害額計算書 これだけで最終支払額が確定するわけではない

一部売却・一部廃棄の場合

事故貨物の全量を同じ方法で処理するとは限りません。例えば、100個のうち60個を値引き販売し、20個を部品取りとして売却し、20個を廃棄する場合があります。

この場合、売却処分額と廃棄費用を相殺して一つの金額にまとめるのではなく、数量と金額を処理方法別に表示します。

処理区分 数量例 金銭的影響 必要資料 損害額資料への反映
値引き販売 60個 売却代金を回収する 売却明細、入金記録 残存価額として整理する
部品取り売却 20個 部品価値を回収する 部品査定、売却明細 残存価額として整理する
廃棄 20個 廃棄費用が発生する 廃棄証明書、請求書 必要な処分費用として別項目にする

売却額の妥当性

売却額について、「正常品価額の何割であれば妥当」という一律の基準はありません。事故貨物の状態、市場性、保証の有無、買い手の数、保管費用、品質低下の進行および早期処分の必要性によって変わります。

正常品価額や一般相場から大きく低い価格で売却する場合ほど、その理由を説明できる資料が重要です。

確認項目 説明すべき内容 主な資料 売却額が低くなり得る事情 実務上の対応
事故貨物の状態 通常販売できない損傷・品質低下の内容 写真、検品報告書 外観不良、機能制限、保証不能 状態を売却明細に記載する
市場性 事故品としての需要と買い手の範囲 査定、買主回答 特殊貨物、限定用途、少数の買い手 可能なら複数見積を取得する
正常品価額との比較 事故前価格と事故品価格の差 Invoice、通常価格表 新品保証・正規流通ができない 値下げ理由を明示する
中古・スクラップ相場 類似品や原材料の市場価格 中古相場、スクラップ単価表 市況低下、選別・加工費用 売却日付に近い相場を使用する
売却数量 数量による単価への影響 数量表、売却明細 一括処分、ロット不揃い 数量と単価の関係を記録する
早期処分の必要性 保管費、劣化、倉庫スペース等の事情 保管料見込、倉庫連絡 時間経過による価値低下 早期売却の合理性を記録する
売却条件 現状有姿、保証なし、返品不可等の条件 売買契約、売却条件書 買主が追加リスクを負担する 条件を文書化する

売却処分に必要な資料

資料 確認する内容 主な目的 不足した場合の問題 実務上の対応
事故品の写真 売却前の状態、損害範囲、数量 通常販売できない理由を示す 売却後に状態を確認できない 全体・近接・識別写真を残す
検品報告書 損害数量、使用可能数量、処分区分 売却対象を特定する 売却数量と損害数量が一致しない ケース・品番別に整理する
修理見積・修理不能証明 修理可能性と修理費用 売却を選択した理由を示す 修理より売却が合理的か説明できない 必要に応じて複数案を比較する
買取見積・査定資料 見込売却額と査定条件 売却額の妥当性を示す 極端に低い売却額に見える 複数見積や相場資料を保存する
関係者確認記録 売却方針、処分時期、現物確認の要否 無断処分ではないことを示す 証拠保全を妨げたとの争いが生じる メール等で記録する
売却明細 数量、単価、総額、売却条件 残存価額を確定する 損害額への控除額が不明になる 品番・数量別に作成する
売却先情報 名称、所在地、連絡先、取引条件 売却取引の実在性を示す 売却の客観性を確認できない 取引記録を保存する
引渡記録 引渡日、引渡数量、受領者 現物の移転を確認する 売却数量の確定が困難になる 受領書を取得する
入金記録 実際の入金額と入金日 実回収額を確定する 売却額と回収額が一致しない 銀行明細と売却明細を照合する

売却前に残す写真と検品記録

売却後は、貨物が買主へ移転し、保険会社や運送人等が現物を確認できなくなることがあります。そのため、処分前の状態と数量を十分に記録します。

記録項目 記録すべき内容 主な目的 対応させる資料 注意点
全体写真 売却対象全体、保管場所、仕分け状態 処分対象の範囲を示す 売却一覧、検品報告書 一部だけを拡大撮影しない
損害箇所 破損、濡損、汚損、変形、品質低下 通常販売できない理由を示す 査定資料、修理見積 損害のない部分も記録する
識別情報 品番、ロット、ケース番号、シリアル番号 対象貨物を特定する Invoice、Packing List 文字が判読できるよう撮影する
数量記録 売却、廃棄、正常品の各数量 売却明細と損害額を照合する 数量照合表 処理区分別に記録する
検品区分 値引き販売可、部品利用可、スクラップ、廃棄 処分方法を選択した根拠を示す 検品報告書 区分基準を明確にする
保管状態 温湿度、隔離状態、追加劣化の有無 売却額低下や早期処分の理由を示す 倉庫記録、温湿度記録 売却までの状態変化も記録する

提出先・説明先による確認視点の違い

提出先・説明先 主な確認目的 確認される事項 主な補足資料 断定を避ける事項
保険会社 残存価額と損害額の算定 売却必要性、売却額、数量、入金額 写真、検品報告、売却明細、入金記録 売却額がそのまま保険上の残存価額となるとの断定
運送人 請求額と損害軽減措置の確認 正常品価額、損害数量、売却額の控除 B/L、Claim Letter、写真、売却明細 売却処分を行っただけで運送人責任が確定するとの判断
NVOCC House B/L上の責任区間と請求額の整合性 事故区間、数量、残存価額、最終請求額 House B/L、CFS記録、検品記録 売却額の低さだけを理由とする責任額の断定
荷主・輸入者 通常販売不能理由と処分方法の承認 修理・売却・廃棄の比較、回収見込額 事故報告、査定、処分比較表 最終保険金または賠償額の断定
倉庫業者 保管、仕分け、引渡作業の確認 処分対象数量、引渡日、作業費 倉庫作業記録、引渡書 処分権限の確認なしに貨物を引き渡すこと
売却先 貨物状態と売買条件の確認 現状有姿、保証、用途制限、数量、価格 売買契約、商品状態一覧 正常品と同等であるとの表示

実務で問題になりやすいケース

ケース 問題になりやすい点 確認すべき資料 実務上の対応
関係者確認前に売却した 現物確認やサーベイの機会を失わせる 処分指示、連絡記録、売却日 高額・重大事故では処分前承認を取る
売却前写真がない 通常販売できなかった理由を説明できない 検品報告、倉庫記録、買主記録 売却前に全体・損害・識別写真を残す
売却額が相場より著しく低い 残存価値を十分に回収していない疑いが生じる 複数見積、相場、保管料見込 低額となった事情を文書化する
売却数量と検品数量が一致しない 残存価額控除の対象数量が不明になる 数量照合表、引渡書、売却明細 品番・ケース別に再照合する
一部売却・一部廃棄の内訳がない 回収額と廃棄費用の対象が混在する 仕分け表、売却明細、廃棄証明書 処理方法別に数量と金額を分ける
売却代金が未入金である 見積額と実際の回収額が異なる可能性がある 請求書、入金記録、売買契約 見込額と実回収額を区別する
関連会社へ売却した 価格の客観性が問題になる 相場資料、第三者見積、取引条件 独立した価格根拠を残す
ブランド品を事故品として再流通させた ブランド毀損や保証・表示上の問題が生じる メーカー指示、販売条件 ブランド表示や販売可否を確認する
食品・医薬品を値引き販売した 品質、安全性、法令上の問題が生じる 品質検査、当局・メーカーの指示 価格だけで売却可否を判断しない
売却額を損害額から控除していない 損害額の重複請求となる可能性がある 損害額計算書、売却明細 残存価額を別項目で明示する

具体例1:外装破損品を値引き販売する場合

輸入した家電製品の外箱がつぶれているものの、商品本体には機能上の異常がないとします。正規の新品として販売することは難しいものの、外装不良品として保証条件を明示すれば、値引き販売できる場合があります。

売却前には、外箱全体、破損箇所、商品本体、型番、シリアル番号、検品結果を記録します。正常品価額と事故品販売価格の差だけでなく、保証の有無、販売先、販売条件も残します。

売却金額は残存価額の資料となり得ますが、その金額が自動的に保険上の残存価額として確定するわけではありません。売却条件と事故状態を保険会社等へ説明できるようにします。

具体例2:機械を部品取り品として売却する場合

機械本体のフレームが変形し、完成品として修理するには高額な費用がかかるものの、モーター、制御基板、センサー等は再利用できるとします。

この場合、修理見積書と部品査定を比較し、完成品としての修理より部品取り売却が経済的かを確認します。売却明細には、機械一式としての金額か、部品別の金額かを明示します。

メーカー保証、ソフトウェア、認証部品、再利用制限がある場合には、部品として売却できるかを事前に確認します。

具体例3:金属製品をスクラップ売却する場合

金属製品が大きく変形し、製品としては使用できないものの、金属材料として価値が残っているとします。

スクラップ売却では、材質、正味重量、スクラップ単価、選別費、運搬費および控除項目を記録します。売却額だけでなく、重量票と売却日の相場資料を保存することが重要です。

売却代金から運搬費等が差し引かれる場合は、総売却額と控除費用を分けて表示します。差引入金額だけでは、単価や処分条件を確認しにくくなります。

具体例4:一部を売却し、一部を廃棄する場合

濡損した100ケースのうち、40ケースは値引き販売可能、30ケースは部品取りまたは原材料として売却可能、30ケースは品質上使用できず廃棄が必要であるとします。

この場合、検品報告書で三つの処理区分を明確にし、売却数量、売却単価、売却総額、廃棄数量、廃棄費用を別々に記録します。

すべてを「処分損」としてまとめると、残存価額として控除すべき金額と、追加損害として検討する廃棄費用が混在します。損害額資料では、回収額と支出額を別項目にします。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
事故品を売却すれば損害額計算とは無関係になる 売却額は残存価額として損害額から控除されることがある 売却数量、金額、入金記録を保存する
事故品なのでいくらで売っても問題ない 極端に低い売却額では妥当性の説明を求められることがある 複数見積、相場、早期処分理由を残す
保険会社に連絡せず売却してよい 売却後は現物確認やサーベイができなくなる 高額・重大事故では処分前確認を行う
売却できる貨物は全量売却しなければならない 安全性、品質、ブランド管理上、一部廃棄が必要な場合がある 売却・廃棄数量を区分する
売却すれば廃棄費用は発生しない 売却可能部分と廃棄部分が混在することがある 回収額と廃棄費を別々に整理する
売却処分額は事故による利益である 事故貨物に残った価値を回収した金額である 残存価額として損害額計算へ反映する
買主の見積が一件あれば価格は妥当である 市場性や取引関係によって価格が偏る場合がある 可能なら相場資料や複数見積で補強する
処分するなら詳細な検品は不要である 検品しなければ売却・廃棄・正常品の数量を区分できない 処分前に数量と状態を確定する
フォワーダーが売却額や残存価額を決定する フォワーダーは調整を支援できるが、最終決定者とは限らない 権限者、保険会社、荷主の確認を得る

判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
事故発見時 荷主、倉庫、検品会社 事故状態、対象数量、保管場所 貨物を隔離し、写真と事故報告を作成する
処分方法の検討時 荷主、メーカー、保険会社 修理、売却、廃棄、保留の比較 追加検査や見積を取得する
修理可否確認時 メーカー、修理業者 修理可能性、費用、回復価値 修理不能証明や追加見積を求める
売却先選定時 買取業者、荷主 買主、用途、単価、条件、保証 複数見積または相場資料を取得する
売却前確認時 保険会社、荷主、サーベイヤー 現物確認、証拠保存、処分時期 必要な確認が終わるまで売却を保留する
売却前撮影時 倉庫、検品会社 全体、損害箇所、数量、品番、ケース番号 写真台帳と数量照合表を作成する
売却実行時 倉庫、売却先 引渡数量、単価、総額、引渡日 差異を引渡書へ記録する
入金確認時 売却先、経理担当者 請求額、入金額、未収金 未入金額を実回収額と区別する
損害額算定時 保険会社、荷主、運送人、NVOCC 事故前価額、損害数量、残存価額、最終請求額 数量・金額の不一致を修正する

フォワーダーの関与範囲

フォワーダーは、事故発生時に、荷主、保険会社、運送人、NVOCC、倉庫、検品会社、修理業者、処分業者および売却先との間で、資料収集や連絡を調整することがあります。

ただし、フォワーダーが貨物所有者の承認なく事故貨物を売却できるとは限りません。また、売却額の妥当性、残存価額、保険金支払いまたは運送人等の最終責任額を独自に決定する立場でもありません。

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
事故貨物の特定 B/L、品番、ケース番号、数量の整理 売却対象の所有権や処分権限の確定 荷主・権限者を確認する
写真・検品資料 売却前写真と検品記録の収集 貨物が無価値または全損であるとの判断 メーカーや保険会社の評価を確認する
修理・売却比較 修理見積、買取見積、廃棄見積の取りまとめ どの処分方法が法的に正しいかの最終判断 比較資料を権限者へ提示する
売却先の調整 査定依頼、日程、引渡条件の調整 特定の売却額が最も妥当であるとの断定 可能なら複数見積を取得する
処分前確認 保険会社等への連絡、現物確認の日程調整 売却実行の最終承認 権限者の承認記録を保存する
数量管理 売却、廃棄、正常品の数量表の整理 不足や損害の発生区間の確定 各段階の記録を照合する
金額資料 売却単価、総額、入金記録の取りまとめ 保険上の残存価額または支払額の確定 保険会社・荷主へ資料を提出する
Claim Letter 売却額控除後の請求資料の整理 運送人・NVOCCの法的責任額の確定 責任制限や通知期限を別途確認する

実務上のポイント

売却処分は、事故貨物に残っている経済的価値を回収し、損害の拡大を抑えるための実務対応です。

売却前には、事故状態、損害数量、売却数量、品番、ケース番号、修理可否および処分方法を記録します。売却後に現物を確認できなくなることを前提として、写真、検品報告書、査定資料を保存します。

売却額が低い場合は、事故貨物の状態、市場性、買い手の有無、保証条件、保管費用および早期処分の必要性を説明できるようにします。

一部売却・一部廃棄の場合は、売却による回収額と廃棄に要した費用を相殺せず、処理区分、数量、単価、総額を別々に表示します。

フォワーダーは、資料収集、査定依頼、売却先との連絡を支援できますが、処分権限、残存価額、保険金支払いまたは運送人等の責任額を独自に決定する立場とは限りません。

まとめ

売却処分とは、破損、濡損、汚損、変形、品質低下などを受けた輸入貨物を、事故品、値引き品、部品取り品、再利用品またはスクラップ品として売却する処理です。

売却によって回収した金額は、事故貨物に残っていた価値を示し、残存価額として損害額から控除されることがあります。

実務では、修理、売却、廃棄、保留を比較し、売却額だけでなく、修理費、廃棄費、保管費、市場性、安全性および関係者確認を踏まえて処分方法を選択します。

売却前には、写真、検品記録、数量、品番、ケース番号、査定資料および関係者との確認記録を保存し、売却後は売却明細、引渡記録、入金記録を損害額資料と対応させます。

外航貨物海上保険は、保険料より条件で差が出ます。付保条件の選択と約款の解釈は、専門の保険会社・代理店にご相談ください。

同義語・別表記

  • 損害品売却
  • 事故品売却
  • サルベージ売却
  • 処分売却
  • 事故品処分
  • 残存品売却
  • Salvage Disposal
  • Damaged Goods Sale
  • Salvage Sale

関連用語

公式情報