D/P決済の書類引渡しと貨物引渡し ― B/L原本・銀行指図・D/O管理

Cargo Release under D/P Collections: Original B/Ls, Bank Instructions, and D/O Control

D/P決済の書類引渡しと貨物引渡し ― B/L原本・銀行指図・D/O管理

D/P決済とは、輸入者が代金を支払うことを条件として、銀行からB/L原本、Invoice、Packing Listその他の船積書類を受け取る信用状なしの荷為替取引です。

D/PはDocuments against Paymentの略で、日本語では支払渡し又は支払引換書類渡しと呼ばれます。

D/P決済の制度全体、URC 522、Sight D/P、Usance D/P、銀行取立・買取及び支払拒絶後の貨物対応は、別記事「D/P取引の仕組みと支払拒絶時の貨物対応」で扱います。

本記事では、D/P決済に関連して、銀行から書類が渡されたことと、shipping line、NVOCC、航空会社、フォワーダー又は倉庫が貨物を引き渡してよいことを区別し、貨物引渡しの根拠書類と確認手順を整理します。

D/Pでは、原則として輸入者が代金を支払うまで商業書類は渡されません。しかし、貨物が実際に引き渡されるかどうかは、B/L、AWB、Sea Waybill、Surrendered B/L、D/O、銀行指図及び運送人の約款によって決まります。

したがって、「銀行から支払済みと聞いた」「輸入者が送金控えを提示した」「銀行が書類を扱っている」という事情だけで、フォワーダー又はNVOCCが貨物を引き渡してよいとは限りません。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他記事で扱う内容
D/P決済の制度全体 貨物引渡し判断に必要な範囲で基本構造を整理します URC 522、Sight D/P、Usance D/P及び不払い対応は「D/P取引の仕組みと支払拒絶時の貨物対応」で扱います
銀行による書類引渡し 支払確認後に商業書類が輸入者へ渡される基本構造 銀行間の取立処理及び送金時期は取引銀行へ確認します
Original B/L 原本、Full Set、裏書、Consignee及びD/Oとの関係 B/Lの権利証券性及び準拠法はB/L関連記事で扱います
Surrendered B/L 原本提示を不要とする処理とD/P管理の限界 Surrender手続自体はSurrendered B/L関連記事で扱います
Sea Waybill 原本流通を伴わない貨物引渡しと支払前Releaseの危険 Sea Waybillの法的性質は個別記事で扱います
AWB 銀行名Consignee、Bank Release Order及び航空貨物の先着問題 AWBの一般的性質は航空貨物関連記事で扱います
Bank Release Order 銀行による引渡指図又は承認書としての機能 銀行と輸入者間の融資契約は取引銀行へ確認します
Bank L/G・Single L/G B/L原本なし引渡しにおける保証者と回収可能性の違い 保証文言の詳細はBank L/G関連記事で扱います
Trust Receipt 銀行・輸入者間の担保管理書類と運送人への指図の区別 具体的な法的効力は銀行又は法律専門家へ確認します
D/O発行 発行名義、根拠書類、Release制限及び記録 港湾費用及び輸入通関は各関連記事で扱います
フォワーダー・NVOCC責任 引渡し前の確認、例外承認、証拠保存及び誤引渡し対応 最終的な法的責任は運送契約、約款及び準拠法に従います
保険 貨物損害、信用リスク及び誤引渡し責任の切り分け 個別の補償条件は保険会社又は保険代理店へ確認します

D/P取引総論記事との役割分担

比較項目 D/P取引の総論記事 本記事 実務上の使い分け
中心テーマ D/P制度、URC 522及び支払拒絶後の対応 船積書類の確認と貨物引渡しの可否 決済設計か貨物Release判断かを区別します
主な読者 輸出者、輸入者、銀行、与信担当者 フォワーダー、NVOCC、shipping line、航空貨物担当者 自社が担当する業務を確認します
中心書類 取立指示書、為替手形、銀行通知 B/L、AWB、D/O、Bank Release Order、L/G 銀行書類と運送書類を分けます
中心リスク 輸入者の支払拒絶、貨物滞留及び回収不能 支払前引渡し、銀行指図違反及び誤引渡し 信用リスクと引渡し責任を分けます
判断時点 契約締結、船積前、支払拒絶発生時 D/O発行前、Release前、例外処理時 承認が必要な時点を明確にします

D/P決済における二つの引渡し

D/P決済では、「銀行から輸入者への船積書類の引渡し」と「運送人から輸入者への貨物の引渡し」という二つの異なる引渡しが発生します。

区分 引渡す者 受け取る者 基本的な条件 主な根拠資料
船積書類の引渡し Presenting Bank又はCollecting Bank 輸入者 D/P代金の支払及び取立指示の充足 Collection Instruction、支払記録、銀行通知
Original B/Lの引渡し 銀行 輸入者又は権限ある者 支払後の商業書類Release Original B/L、銀行引渡記録
D/Oの発行 shipping line、NVOCC又は代理店 輸入者又は指定受取人 B/Lその他のRelease条件の充足 B/L、Release指示、本人確認資料
貨物の物理的引渡し ターミナル、倉庫、航空会社又は配送業者 D/O等で指定された受取人 D/O、引渡指示、本人確認及び費用精算 D/O、搬出記録、受領署名

銀行がD/P代金の支払を確認しても、運送人がB/L上の引渡条件を確認しなければならないことに変わりはありません。

反対に、B/L又はAWB上の受取人が明確であっても、輸出者又は銀行の担保的な支配を害する引渡しを行えば、後に責任問題となることがあります。

D/P決済から貨物引渡しまでの実務フロー

  1. 輸出者と輸入者が売買契約でD/P条件を合意します。
  2. 輸出者が貨物を船積みし、B/L、Invoice、Packing Listその他の書類を取得します。
  3. 輸出者が取立指示書と船積書類をRemitting Bankへ提出します。
  4. Remitting BankがCollecting Bank又はPresenting Bankへ書類を送付します。
  5. Presenting Bankが輸入者へ支払要求を行います。
  6. 輸入者がD/P代金及び必要な銀行費用を支払います。
  7. 銀行が取立指示に従い、B/L原本その他の商業書類を輸入者へ渡します。
  8. 輸入者がB/L原本又は適切なRelease指図をshipping line又はNVOCCへ提出します。
  9. shipping line又はNVOCCがConsignee、裏書、Full Set、原本性及び未回収原本を確認します。
  10. Release条件に問題がなければ、D/Oを発行します。
  11. ターミナル又は倉庫がD/O、本人確認及び搬出条件を確認します。
  12. 貨物を指定された受取人へ引き渡します。
  13. 引渡日時、受取人、車両、数量及び署名を記録します。
  14. B/L、銀行指図、D/O、引渡記録及び例外承認を案件単位で保存します。

D/P代金の支払確認と貨物Release権限の違い

提示された情報・書類 確認できる可能性がある事項 それだけでは確認できない事項 追加で確認するもの
輸入者の送金控え 輸入者が送金操作を行った可能性 銀行が資金を受領し、書類Release条件を満たしたこと Presenting Bankの正式な確認
銀行の支払受領通知 銀行がD/P代金を受領したこと 運送人に対する貨物Release権限 B/L、D/O発行条件、銀行指図
銀行から渡されたB/L写し 対象B/Lの内容 原本所持、Full Set回収及び正当な裏書 Original B/L一式
Bank Release Order 銀行が特定の貨物引渡しを承認した可能性 すべての損失に対する銀行保証 対象貨物、受取人、真正性及び文言
Trust Receipt 銀行と輸入者の融資・担保関係 運送人への明示的な引渡指図 銀行から運送人宛ての指図
Single L/G 輸入者が一定の補償を約束していること 銀行信用又は十分な回収可能性 輸入者信用、社内受入基準
Bank L/G 銀行が保証文言に従って責任を負う可能性 B/L上の引渡条件が当然に消滅すること 保証範囲、期間、金額、解除条件

運送書類別の貨物引渡し管理

運送書類 D/Pでの基本的な管理 貨物引渡しへの効果 主な危険 確認事項
To Order Original B/L 銀行経由で原本を保持し、支払後に渡します 適切な原本提示までReleaseを抑制しやすい構造です 裏書不備、未回収原本、保証渡し Full Set、裏書、原本性、D/O条件
Straight Original B/L 原本を銀行経由で管理します 原本提示の必要性は準拠法及びB/L約款によります 記名Consigneeへの原本なし引渡し Consignee、準拠法、shipping lineの方針
Surrendered B/L 仕向地で原本提示を不要とします 銀行が書類を保持しても貨物を止めにくくなります D/P代金支払前のRelease Surrender実行時点、輸出者の承認
Sea Waybill 原本流通を前提としません 記名Consigneeへの引渡しが可能です 銀行取立と貨物Releaseの分離 Consignee、停止指示、本人確認
AWB 銀行書類と貨物引渡しが連動しない場合があります 記名Consigneeが貨物を受け取れる場合があります 支払前の航空貨物引渡し AWB Consignee、Bank Release Order
Electronic B/L 電子的Controlを銀行又は権限者が保持します Controlの正当な移転後にReleaseします 取立処理とControl移転時点の不一致 Control保有者、プラットフォーム記録

Bank Release Order・Trust Receipt・L/Gの違い

書類 中心的な機能 貨物引渡しへの利用 保証機能 実務上の注意
Bank Release Order 銀行による引渡しの承認又は指図 銀行名ConsigneeのAWB等で利用されることがあります 通常、損失補償を当然には含みません 書類名ではなく本文を確認します
Trust Receipt 銀行と輸入者間の担保及び売却代金管理 輸入者が書類又は貨物を利用する内部的根拠となる場合があります 運送人への補償状とは限りません 銀行から運送人への指図を別途確認します
Bank L/G 銀行が保証文言に従って一定の責任を保証します B/L原本未着又は紛失時の例外引渡しに使われることがあります 銀行信用があります 対象B/L、金額、期間及び解除条件を確認します
Single L/G 輸入者が単独で損失補償を約束します B/L原本なし引渡しを求める際に提出される場合があります 銀行信用はありません 輸入者倒産時の回収可能性を確認します
D/O ターミナル又は倉庫への貨物引渡指示 物理的な搬出の根拠となります 支払保証ではありません 誰の名義で何を根拠に発行したか記録します

Bank Release OrderはBank L/Gと同じではない

Bank Release Orderは、銀行が特定貨物を指定された輸入者又は受取人へ引き渡してよいと承認又は指図する書類として使用されることがあります。

銀行名が記載されていても、当該銀行が貨物引渡しに伴うすべての損失を補償するとは限りません。

Bank L/Gが保証文言に基づく補償又は支払責任を中心とするのに対し、Bank Release Orderは、誰に貨物を引き渡してよいかを示す指図としての機能が中心となる場合があります。

書類の名称だけで判断せず、対象AWB又はB/L、貨物明細、受取人、発行部署、署名権限、真正性及び銀行が負う責任の範囲を確認します。

Trust Receiptだけでは貨物引渡しの根拠にならない場合がある

Trust Receiptは、銀行が輸入者に船積書類又は貨物の利用を認める一方で、貨物又は売却代金を銀行のために管理させる融資・担保書類として使われることがあります。

銀行と輸入者の間では重要な書類ですが、shipping line、NVOCC、航空会社又はフォワーダーに対する直接の引渡指図とは限りません。

Trust Receiptが提示された場合でも、B/L又はAWB上のConsignee、Bank Release Order、D/O発行条件及び銀行から運送人への明示的指図を別途確認します。

D/Pの貨物引渡し管理が機能しやすい場面

場面 D/P管理が機能しやすい理由 確認事項 必要な対応
To Order Original B/Lを使用する海上貨物 銀行経由で原本を保持できます Full Set、裏書、未回収原本 支払前のSurrenderを禁止します
書類が貨物より先に到着する取引 貨物到着前に支払と書類Releaseを完了できます 航海日数、クーリエ日数、銀行処理日数 船積直後に書類を送付します
Consigneeと銀行指図が明確な取引 Release権限を確認しやすくなります B/L表示、銀行通知、D/O名義 案件記録を一元化します
House B/LとMaster B/Lの条件が一致する取引 NVOCCとshipping lineのRelease条件が連動します 両B/LのConsignee、Surrender状態 HouseとMasterを同時に照合します
例外引渡しを禁止している取引 Single L/G等による支払前Releaseを防止できます 社内基準、shipping lineの方針 例外時は管理者承認を要求します
D/O発行権限が限定されている取引 誤った担当者によるReleaseを防止できます 発行権限、承認者、操作履歴 二重確認を行います

D/Pの貨物引渡し管理が機能しにくい場面

場面 管理が弱くなる理由 主な危険 必要な代替策
Surrendered B/L 仕向地で原本提示が不要です D/P代金支払前に貨物が引き渡されます Surrender実行を支払確認後に限定します
Sea Waybill 記名Consigneeへの引渡しが可能です 銀行書類の保持が貨物を止めません Release停止指示又は別の信用保全を設けます
輸入者名ConsigneeのAWB 航空貨物が銀行書類より先に到着します 輸入者が支払前に貨物を受け取ります 銀行名Consignee又はBank Release管理を検討します
保証渡しを広く認めるshipping line Original B/LなしでもReleaseされる場合があります 銀行取立の支配が失われます 保証渡し禁止又は銀行保証を条件とします
House B/Lだけが銀行管理される取引 Master B/L側で既にSurrenderされている場合があります HouseとMasterのRelease状態が食い違います 両階層を照合します
銀行支払確認前にD/Oを発行する運用 書類決済と貨物Releaseが分離します 代金未回収のまま貨物が搬出されます D/O発行を正式な確認後に限定します

D/P貨物の引渡し判断フロー

  1. 対象取引の決済条件がD/Pであることを確認します。
  2. 取立指示書にURC 522、Documents against Payment及び書類引渡条件が明記されているか確認します。
  3. 輸入者が支払ったことをPresenting Bankの正式な情報で確認します。
  4. 輸入者の送金控えだけを支払完了の根拠にしません。
  5. Original B/L、Surrendered B/L、Sea Waybill、AWB又はElectronic B/Lのいずれかを特定します。
  6. Consigneeが輸入者、銀行、To Order又は第三者のいずれかを確認します。
  7. Original B/Lの場合はFull Set、裏書、原本性及び未回収原本を確認します。
  8. 銀行名Consigneeの場合はBank Release Order又は明示的な銀行指図を確認します。
  9. Trust Receiptだけが提示された場合は、銀行へ引渡権限を直接確認します。
  10. B/L原本なし引渡しを求められた場合は、Bank L/GとSingle L/Gを区別します。
  11. House B/LとMaster B/LのConsignee、原本及びSurrender状態を個別に確認します。
  12. D/Oを誰の名義で、どの書類を根拠として発行するか確認します。
  13. 例外処理の場合は管理者又は法務担当者の承認を取得します。
  14. 貨物引渡し時に受取人、本人確認資料、車両、数量、時刻及び署名を記録します。
  15. 不一致がある場合はD/O発行及び貨物引渡しを停止します。
  16. 全書類、承認、照会回答及び引渡記録を案件単位で保存します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 問題の内容 確認資料 判断のポイント 初動対応
輸入者が送金控えだけを提示した 銀行がD/P代金を受領したか不明です 送金控え、銀行通知、取立番号 Presenting Bankの正式な受領確認 D/O発行を保留します
Original B/Lの一部だけが提示された 未回収原本が流通している可能性があります B/L、Full Set表示、銀行引渡記録 全通回収が必要か 残存原本を確認します
AWBのConsigneeが銀行名である 輸入者の依頼だけでは引渡権限が確認できません AWB、Bank Release Order、銀行連絡 銀行が指定した受取人 銀行指図までReleaseしません
Trust Receiptだけが提示された 銀行と輸入者間の内部書類である可能性があります Trust Receipt、銀行指図、AWB又はB/L 運送人への引渡指図を含むか 銀行へ直接照会します
Single L/Gで原本なし引渡しを求められた 輸入者倒産時に補償を回収できない可能性があります Single L/G、B/L写し、信用情報 社内基準と輸入者信用 必要に応じてBank L/Gを求めます
輸出者が銀行取立中にSurrenderを指示した D/P代金支払前に貨物を引き取れる状態になります 取立指示、Surrender指示、銀行回答 決済担当者が承認しているか Surrender処理を停止します
House B/Lは未回収だがMaster B/LはSurrender済みである 実貨物側のReleaseが可能な状態かもしれません House B/L、Master B/L、D/O記録 各階層の貨物支配 HouseとMasterを照合します
支払前にD/Oが誤発行された 貨物が搬出される危険があります D/O、システムログ、銀行通知 D/Oが使用済みか 直ちに無効化し関係者へ通知します

具体例1:送金控えだけでD/O発行を求められた場合

輸入者がD/P代金の送金控えをフォワーダーへ提示し、「銀行への支払は完了しているため、すぐにD/Oを発行してほしい」と求めたとします。

送金控えは輸入者が送金操作を行ったことを示す可能性がありますが、Presenting BankがD/P代金を受領し、取立指示に従って書類をReleaseしたことまでは確認できません。

フォワーダー又はNVOCCは、銀行から輸入者へOriginal B/Lが正当に渡されたか、B/LのFull Setと裏書が揃っているかを確認します。

送金控えだけでD/Oを発行すると、送金取消し、組戻し、金額不足又は別取引の送金であった場合に、代金未回収のまま貨物を引き渡す危険があります。

具体例2:銀行名ConsigneeのAWB貨物

航空貨物がD/P条件で輸送され、AWBのConsigneeには輸入者の取引銀行が記載されていたとします。

貨物は銀行経由の商業書類より先に到着し、輸入者はフォワーダーへ直接引渡しを求めました。

AWBはOriginal B/Lと同じ権利証券ではありませんが、銀行がConsigneeとして記載されている以上、輸入者の依頼だけで貨物を引き渡してよいとは限りません。

フォワーダーは、Bank Release Order又は銀行からの明示的な引渡指図を確認し、AWB番号、輸入者、貨物明細、受取人及び発行権限を照合します。

具体例3:D/P取立中にSurrendered B/Lへ変更した場合

輸出者がOriginal B/LをD/P取立のため銀行へ提出した後、営業担当者が別経路でNVOCCへSurrenderを指示したとします。

Surrender処理が完了すると、仕向地ではOriginal B/Lを提示せずに貨物を引き取れる状態になる場合があります。

銀行がOriginal B/L又は取立書類を保持していても、運送実務上の貨物支配は失われます。

フォワーダー又はNVOCCは、D/P取立と矛盾するSurrender指示を受けた場合、決済担当者の書面承認を確認するまで処理を停止する必要があります。

フォワーダーの関与範囲と標準五分類

本記事における五分類は、法令上又は業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するために使用する分析上の枠組みです。

標準五分類 D/P貨物で行い得る業務 通常は負わない役割 責任判断で確認する資料 実務上の注意
単純取次 銀行通知、B/L情報及びRelease指示の伝達 銀行支払の真正性又は輸入者信用の最終判断 依頼メール、伝達記録、業務範囲 伝達と承認を区別します
貨物利用運送事業者 到着通知、保管、搬出及び配送日程の調整 D/P代金の回収保証 運送契約、Arrival Notice、引渡記録 支払前Release制限を確認します
NVOCC/House B/L発行者 House B/L原本、Surrender、D/O及びReleaseの管理 銀行取立又は輸入者支払の保証 House B/L、Master B/L、D/O、Release指示 HouseとMasterの状態を分けて確認します
Door-to-Door一括引受者 集荷から最終配送までの貨物及び書類管理 売買代金の無条件な回収保証 一括運送契約、作業記録、受領記録 物理的引渡しと書類Releaseを連動させます
特定業務の代理・調整者 銀行照会、L/G確認、D/O発行及び例外承認の調整 委任範囲外の保証受入れ又は債権放棄 委任状、照会記録、承認記録 例外処理の権限を明確にします

Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事で使用する標準五分類を置き換えるものではありません。

梱包、保管、検品、積付け、バンニング、デバンニング、再混載、CFS搬入又は内陸配送等の実作業は、それ自体で第六の分類を構成しません。

貨物海上保険・信用保険・賠償責任保険との関係

制度 主な対象リスク D/P貨物引渡しとの関係 通常対象とならないもの 主な確認先
貨物海上保険 輸送中の貨物の滅失・損傷 支払拒絶による滞留中又は返送中の貨物損害を検討します 輸入者の支払拒絶自体 貨物保険会社、保険代理店
輸出取引信用保険 輸入者倒産、長期不払い等 D/P債権の回収不能を補完する場合があります 貨物の物的損害 信用保険会社、保険代理店
フォワーダー賠償責任保険 業務上の過失による法律上の賠償責任 銀行指図違反又は支払前の誤引渡しが問題となる場合があります 故意又は契約上加重された責任等 賠償責任保険会社、保険代理店
NVOCC賠償責任保険 House B/L発行者又は運送契約者としての責任 B/L原本なし引渡し又はD/O誤発行が問題となる場合があります 保険約款上除外された責任 賠償責任保険会社、保険代理店
Bank L/G 保証文言で定めた貨物引渡し責任 正当なB/L所持人等からの請求を補完する場合があります 保証文言外の損失 保証銀行、法律専門家

D/P代金の未回収と、フォワーダー又はNVOCCによる支払前の誤引渡しは別のリスクです。

銀行指図違反、Original B/Lなし引渡し又はD/O誤発行が疑われる場合は、責任の有無が確定する前でも、賠償責任保険会社又は保険代理店へ早期に通知します。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
D/P代金を支払えば自動的に貨物を引き渡せる 運送書類上のRelease条件を別途満たす必要があります B/L、AWB、D/O及び銀行指図を確認します
輸入者の送金控えがあれば支払確認は十分である 送金操作とPresenting Bankの受領は同じではありません 銀行の正式な確認を取得します
銀行が書類を扱うため貨物引渡しも銀行が保証する 銀行取立と貨物引渡し責任は別です 運送人側のRelease条件を確認します
Bank Release OrderはBank L/Gと同じである 引渡指図が中心で、損失補償を含まない場合があります 書類本文を確認します
Trust Receiptがあれば輸入者へ貨物を渡せる 銀行と輸入者間の内部書類である場合があります 銀行からの明示的指図を求めます
Single L/GとBank L/Gは同じである Single L/Gには銀行信用がありません 保証者と回収可能性を確認します
Original B/Lを銀行へ送れば必ず貨物を止められる Surrender又は保証渡しにより支配が失われる場合があります 実際のRelease状態を確認します
AWBもOriginal B/Lと同じ貨物支配機能を持つ AWBは一般に権利証券ではありません ConsigneeとBank Release Orderを確認します
House B/Lだけ確認すれば十分である Master B/L側のRelease状態も実貨物に影響します HouseとMasterを照合します
D/O発行は決済条件と関係しない D/O発行により貨物搬出が可能となります 支払確認前の誤発行を防止します

銀行・法律専門家・保険代理店へ確認すべき場面

問題 主な確認先 確認事項 早期確認が必要な理由
D/P支払の完了が不明 Presenting Bank、輸入者 受領金額、通貨、取立番号及び書類Release 支払前Releaseを防ぐため
Bank Release Orderの効力が不明 発行銀行、法律専門家 真正性、対象貨物、受取人、指図範囲 誤引渡しを防ぐため
Trust Receiptだけが提示された 銀行、法律専門家 運送人への引渡権限を含むか 銀行内部書類との混同を防ぐため
B/L原本なし引渡しを求められた shipping line、NVOCC、保証銀行、法律専門家 Bank L/G、Single L/G、保証範囲及びB/L所在 正当なB/L所持人の請求に備えるため
銀行名ConsigneeのAWB貨物 銀行、航空会社、フォワーダー Bank Release Order、受取人及び指図内容 銀行の担保的利益を害さないため
誤引渡しの疑いがある 社内法務、弁護士、保険会社、保険代理店 銀行指図、B/L、D/O、受取人及び引渡時刻 証拠と保険上の権利を保全するため
HouseとMasterの条件が異なる NVOCC、shipping line、現地代理店 各B/LのConsignee、原本及びRelease状態 実貨物の引渡権限を確認するため

判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
D/P貨物受付時 輸出者、輸入者、銀行 D/P条件、取立番号、支払・書類引渡条件 不明点を書面で確認します
B/L発行時 NVOCC、shipping line、輸出者 Consignee、To Order、Full Set、Surrender可否 D/P条件と矛盾する記載を修正します
AWB発行時 航空会社、フォワーダー、輸出者 Consignee、銀行名義、Bank Release Order 支払前Release防止策を設定します
支払確認時 Presenting Bank 受領金額、通貨、取立番号、書類Release 送金控えだけでは処理しません
Original B/L受領時 銀行、輸入者、NVOCC Full Set、裏書、原本性、未回収原本 不備があればD/Oを発行しません
Bank Release Order受領時 発行銀行 真正性、対象貨物、受取人、指図範囲 訂正版又は銀行確認を取得します
Trust Receipt提示時 銀行、輸入者 運送人への引渡権限の有無 明示的な銀行指図を求めます
B/L原本未着時 shipping line、NVOCC、銀行 原本所在、Bank L/G、Single L/G、保証期間 社内基準を満たすまで引き渡しません
House・Master照合時 NVOCC、shipping line Consignee、原本、Surrender及びRelease状態 不一致を解消します
D/O発行時 NVOCC、shipping line、現地代理店 発行名義、根拠書類、支払確認及びRelease制限 D/O発行を停止します
貨物引渡し時 受取人、倉庫、運送人 本人確認、車両、時刻、数量及び署名 受取人を確認できなければ引き渡しません
誤引渡し疑義発生時 銀行、社内法務、弁護士、保険代理店 指図者、根拠書類、受取人及び損害可能性 追加Releaseを停止し記録を保全します

まとめ

D/P決済では、輸入者が代金を支払った後、銀行からB/L原本その他の船積書類を受け取ります。

しかし、銀行から船積書類が渡されたことと、shipping line、NVOCC、航空会社又はフォワーダーが貨物を引き渡してよいことは同じではありません。

貨物引渡しでは、Original B/L、Full Set、裏書、Consignee、未回収原本、Bank Release Order、D/O及び運送人のRelease条件を確認します。

輸入者の送金控えは、Presenting BankがD/P代金を受領し、書類引渡条件が満たされたことを当然に証明するものではありません。

Bank Release Orderは引渡しの承認又は指図が中心となる場合があり、Bank L/Gと同じ補償機能を持つとは限りません。

Trust Receiptは銀行と輸入者間の担保管理書類であり、運送人に対する直接の引渡指図とは限りません。

B/L原本なし引渡しでは、Bank L/GとSingle L/Gを区別し、保証者、保証文言、金額、期間及びB/L回収後の解除条件を確認します。

Surrendered B/L、Sea Waybill又はAWBを使用する場合、銀行が取立書類を保持していても、支払前の貨物引渡しを止められないことがあります。

House B/LとMaster B/Lについては、Consignee、原本、Surrender及びD/Oの状態を個別に確認します。

D/Oは単なる事務書類ではなく、貨物の物理的な搬出につながる重要なRelease指図です。発行名義、根拠書類、支払確認及び承認者を記録します。

銀行指図違反、Original B/Lなし引渡し又はD/O誤発行が疑われる場合は、追加の貨物引渡しを停止し、銀行、社内法務、弁護士、賠償責任保険会社及び保険代理店へ早期に連絡します。

D/P貨物の安全な引渡しには、決済条件の確認だけでなく、銀行書類と運送書類を照合し、誰の指図に基づいて誰へ貨物を引き渡したかを証拠として保存することが必要です。

同義語・別表記

  • D/P
  • Documents against Payment
  • 支払渡し
  • 支払引換書類渡し
  • D/P決済
  • D/P荷為替取引

公式情報