On Deck Cargo Clauseとは
On Deck Cargo Clauseとは
On Deck Cargo Clauseとは、貨物が本船の甲板上に積載される場合の貨物保険上の取扱いを整理するために用いられる特別条件です。
通常、貨物保険は、貨物が通常の輸送方法により運送されることを前提に設計されます。しかし、貨物の大きさ、重量、形状、船型、航路、積付事情によっては、貨物が船倉内ではなく甲板上に積載されることがあります。
甲板積み貨物は、海水、波浪、風雨、荒天、船体動揺、ラッシング不備、投荷、流失などの影響を受けやすいため、通常の船倉内積載とは異なる保険上の確認が必要になります。
甲板積み貨物とは
甲板積み貨物とは、本船の船倉内ではなく、甲板上に積載される貨物をいいます。英語では、Deck Cargo または On Deck Cargo と呼ばれます。
甲板積みになりやすい貨物には、次のようなものがあります。
- 大型機械、重量物、プラント設備
- 長尺貨物、鋼材、パイプ類
- 木材、建設資材
- 特殊車両、作業機械
- 船倉内に収まらない特殊貨物
- コンテナ船で甲板上に積載されるコンテナ
甲板積みは、貨物が外部環境にさらされやすいため、海水濡れ、錆、破損、流失、投荷などのリスクが高くなります。
On Deckが問題になる理由
On Deckが問題になる理由は、貨物が通常の船倉内積載よりも厳しい環境に置かれるためです。
甲板上の貨物は、波しぶき、雨、塩分、強風、荒天、船体動揺の影響を直接受けやすくなります。また、貨物の固定が不十分であれば、荷崩れ、移動、落下、流失が発生することもあります。
さらに、船舶の安全確保のために、やむを得ず甲板上の貨物が投荷される場合があります。この場合、貨物保険、共同海損、運送人責任との関係が問題になります。
なお、投荷や共同海損が関係する場合には、貨物保険だけでなく、共同海損分担、運送人責任、B/L約款との関係も問題になります。これらは別記事で整理するのが適切です。
貨物保険での基本的な考え方
貨物保険では、貨物が甲板積みされることが予定されている場合、その事実を保険会社へ申告し、適切な保険条件で付保することが重要です。
甲板積みであることを申告せずに通常条件のまま付保した場合、事故発生後に、保険条件との関係で問題になることがあります。
特に、海水濡れ、流失、投荷、荒天損害、ラッシング不備、積付不備が関係する事故では、On Deckであることが支払判断や責任切り分けに影響する可能性があります。
そのため、甲板積みになる可能性がある貨物では、見積段階または船積前に、保険条件、B/L表示、積付条件、梱包条件を確認しておく必要があります。
Underdeck or On-deck Clauseとの違い
On Deck Cargo Clauseと混同しやすいものに、Underdeck or On-deck Clauseがあります。
Underdeck or On-deck Clauseは、主にコンテナ入り貨物について、船会社の裁量で甲板上に積載される場合でも、一定の条件のもとで船倉内積みと同様に扱う趣旨で整理されることがあります。
一方、On Deck Cargo Clauseでは、貨物が甲板上に積載されること自体が重要な前提となります。特に、在来船の甲板上に裸貨物や大型貨物を積む場合には、海水濡れ、荒天、流失、ラッシング、養生、投荷などのリスクを個別に確認する必要があります。
したがって、コンテナ船の通常の甲板上コンテナと、在来船などでの甲板積み貨物は、実務上分けて整理することが重要です。
B/L表示との関係
On Deck貨物では、B/L上の表示も重要です。
B/Lに On Deck、Shipped on Deck、Carried on Deck などの表示がある場合、その貨物が甲板上に積載されることが明示されている可能性があります。
この表示は、貨物保険だけでなく、運送人責任、荷主への説明、信用状取引、銀行買取にも影響することがあります。
特に、CIFやCIPなど保険手配が売主側にある取引、L/C決済、銀行提出書類が関係する取引では、B/L上のOn Deck表示が問題になることがあります。
Warrantyとして問題になる条件
On Deck貨物では、保険条件上のWarrantyとして、積付方法、梱包、ラッシング、防水措置、養生、船積方法などが問題になることがあります。
たとえば、貨物が甲板積みになることを前提に、十分な防水梱包、固縛、カバー、ラッシング、重量物の固定措置が求められる場合があります。
これらの条件が満たされていない場合、事故発生後に、単に損害が発生したかどうかだけでなく、保険条件上求められた積付・梱包・固縛条件を満たしていたかが問題になります。
甲板積みで発生しやすい損害
甲板積み貨物では、次のような損害が問題になりやすくなります。
- 海水濡れ、波浪による濡損
- 雨濡れ、塩害、錆
- 荒天による荷崩れ、移動、落下
- ラッシング不備による損傷
- 船体動揺による破損
- 甲板上からの流失
- 投荷による滅失
- 梱包・養生不足による損傷
これらの損害では、海上固有の危険なのか、積付不備なのか、梱包不備なのか、貨物固有の性質なのかを切り分ける必要があります。
積付不備・ラッシング不備との関係
On Deck貨物では、積付不備やラッシング不備が大きな問題になります。
甲板上の貨物は、船体動揺や荒天の影響を受けやすいため、通常よりも強固な固定が必要になることがあります。
事故後には、誰が積付方法を決めたのか、誰がラッシングを行ったのか、船会社、荷役業者、フォワーダー、荷主のどの範囲に責任があるのかを整理する必要があります。
ラッシング記録、積付図、船積写真、作業指示書、サーベイレポートが重要な資料になります。
荷主との事前契約で整理すべき事項
On Deck貨物では、事故発生後に、荷主とフォワーダーの間で責任や費用負担が争いになることがあります。
特に、甲板積みになる可能性がある貨物を扱う場合には、次の事項を事前に整理しておくことが重要です。
- 甲板積みになる可能性の有無
- On Deckであることの荷主への説明
- 貨物保険条件の確認
- On Deck条件での保険手配の要否
- B/L上のOn Deck表示の取扱い
- 梱包、防水、養生、ラッシングの責任分担
- 大型貨物・重量物の積付条件
- 事故発見時の通知方法
- サーベイ手配の権限
- 弁護士費用、サーベイ費用、検査費用の負担
- 船会社・荷役業者への求償協力義務
甲板積みは、事故後に保険条件や運送人責任で争いになりやすいため、見積段階または船積前に確認しておくことが重要です。
フォワーダー実務上の注意点
フォワーダーやNVOCCの立場では、On Deck貨物は、貨物保険、B/L表示、運送人責任、荷主への説明責任が交差する重要な論点です。
フォワーダーが甲板積みになる可能性を知っていた場合には、荷主へ説明し、保険条件やB/L表示を確認することが重要になります。
また、貨物の梱包、養生、ラッシング、船積方法に関する条件を、荷主、船会社、荷役業者へ正しく伝達していたかも問題になります。
事故後に、On Deckであったことを初めて知ると、貨物保険請求、荷主説明、船会社への求償、フォワーダー賠償責任の整理が難しくなります。
海事弁護士を利用すべき場面
On Deck貨物の事故では、貨物保険だけでなく、B/L約款、運送約款、共同海損、投荷、運送人責任、責任制限、荷主との契約条件が問題になることがあります。
特に、損害額が大きい場合、船会社への求償が想定される場合、B/L上のOn Deck表示が争点になる場合、投荷や共同海損が関係する場合、荷主からフォワーダーへ賠償請求がされている場合には、早い段階で海事弁護士の関与を検討することが重要です。
On Deck事故は、単なる貨物損害ではなく、運送契約、保険条件、積付責任、共同海損が絡むことがあるため、保険実務だけで判断すると対応を誤る可能性があります。
証拠として重要になる資料
On Deck貨物の事故では、甲板積みであった事実、積付状態、損害原因、責任区間を確認するための証拠が重要です。
保険・船積条件に関する資料
- 保険証券または保険条件
- On Deckに関する特別条件
- B/L、Waybill、Booking確認書
- B/L上のOn Deck表示
- 船積指示書、積付条件、作業指示書
積付・船積に関する資料
- 積付図
- 船積写真
- ラッシング記録
- 荷役業者の作業記録
- 本船側の記録
- 荒天記録、航海記録
事故確認・求償に関する資料
- 貨物写真
- 損害箇所の写真
- 梱包・養生状態の写真
- サーベイレポート
- 船会社・荷役業者への事故通知記録
- 荷主との契約書、見積条件、作業指示書
- 船会社、荷役業者、フォワーダーとのやり取りの記録
事故処理の基本フロー
On Deck貨物の事故が発生した場合、実務上は次の順番で対応します。
- 貨物の損害状態を写真で記録する。
- 貨物が甲板積みであったかを確認する。
- B/L上のOn Deck表示を確認する。
- 保険条件にOn Deckが申告されていたかを確認する。
- 積付図、ラッシング記録、船積写真を確認する。
- 荒天、波浪、投荷、流失の有無を確認する。
- 保険会社、保険代理店、フォワーダー、船会社へ通知する。
- 必要に応じてサーベイを手配する。
- 積付不備、ラッシング不備、梱包不備の有無を確認する。
- 船会社・荷役業者への求償可能性を確認する。
- 荷主との契約条件と費用負担を確認する。
- 損害額が大きい場合や責任論が複雑な場合は、海事弁護士の利用を検討する。
- 貨物保険請求とフォワーダー賠償責任の有無を分けて整理する。
実務上のポイント
- On Deck貨物は、通常の船倉内積載より外部リスクを受けやすい。
- 甲板積みになる可能性がある場合は、事前に保険条件を確認する。
- B/L上のOn Deck表示は、保険、運送人責任、決済実務に影響することがある。
- 在来船の甲板積みと、コンテナ船の甲板上コンテナは分けて整理する。
- Warrantyとして、梱包、養生、ラッシング、積付条件が問題になることがある。
- 事故後は、積付図、ラッシング記録、船積写真、サーベイレポートを確保する。
- 損害額が大きい場合や共同海損・投荷が関係する場合は、海事弁護士の利用を検討する。
まとめ
On Deck Cargo Clauseとは、甲板積み貨物の貨物保険上の取扱いを整理するための重要な特別条件です。
甲板積み貨物では、海水濡れ、荒天、流失、投荷、ラッシング不備、積付不備など、通常の船倉内積載とは異なるリスクが問題になります。
フォワーダーやNVOCCにとっては、On Deckであることの事前確認、B/L表示、保険条件、梱包・養生・ラッシング条件、船会社への求償、海事弁護士との連携まで含めて整理することが重要になります。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://marineinsurance.jp/
