B/Lの出訴期限とは

B/Lの出訴期限とは

B/Lの出訴期限とは、貨物の滅失・損傷などについて、運送人に対して訴訟を提起できる期限をいいます。

貨物事故が発生しても、いつまでも運送人に請求できるわけではありません。B/L裏面約款、適用される国際条約、国内法により、一定期間内に訴訟を提起しなければ、運送人の責任が免除されることがあります。

出訴期限は、単なる社内処理期限やClaim Letterの提出期限ではありません。貨物クレームの実務では、損害通知と並んで最初に確認すべき期限です。

損害通知と出訴期限は別物

貨物事故では、損害通知と出訴期限を混同しないことが重要です。

損害通知は、貨物の滅失・損傷があることを運送人に知らせる手続です。一方、出訴期限は、訴訟を提起しなければならない最終期限です。

項目 意味 実務上の注意
損害通知 貨物に損害があることを運送人へ知らせる 引渡し時または一定期間内に書面で通知する
Claim Letter 損害賠償請求の意思を示す 提出しても出訴期限が当然に止まるわけではない
出訴期限 訴訟を提起すべき期限 期限を過ぎると運送人責任を追及できなくなることがある
期限延長 当事者間で期限を延ばす合意 事故発生後の明確な合意が必要になることがある

損害通知をしていても、出訴期限は別に進みます。交渉中であっても、期限管理を止めてはいけません。

海上運送における1年期限

国際海上物品運送法やヘーグ・ヴィスビー・ルール系では、貨物の引渡し日、または引き渡されるべきであった日から1年以内に訴訟を提起するという考え方が重要になります。

この1年期限は、貨物が実際に引き渡された場合だけでなく、全損や不着により引き渡されなかった場合にも問題になります。

そのため、事故対応では、実際の引渡日、引渡予定日、D/OPODArrival Notice、搬出記録、納品記録を確認し、期限の起算点を整理します。

B/L約款上の出訴期限

B/L裏面約款では、独自の出訴期限が定められていることがあります。

たとえば、B/L上で「貨物が引き渡された日、または引き渡されるべきであった日から9ヶ月以内に訴訟を提起しなければならない」といった条項が置かれることがあります。

ただし、B/L約款上の期限が常にそのまま有効になるとは限りません。適用される国際条約、国内法、強行法規、事故発生区間、提訴地の裁判所の判断により、扱いが変わることがあります。

実務では、B/L約款上の期限と、適用法上の期限を両方確認します。短い方だけを機械的に採るのではなく、その条項が有効に働くかも検討します。

起算点の確認

出訴期限では、いつから期間を数えるかが重要です。

通常は、貨物が引き渡された日、または引き渡されるべきであった日が基準になります。

誤渡しや不着の場合、実際に誤って引き渡された日ではなく、本来引き渡されるべきであった日が問題になることがあります。

このため、期限管理では、単に事故発生日だけを見るのではなく、B/L上の引渡地、ETA、D/O交換日、搬出日、納品予定日、実際の引渡日を並べて確認します。

Claim Letterを出しても期限は止まらない

貨物事故では、運送人やNVOCCに対してClaim Letterを提出することがあります。

Claim Letterは重要な書類ですが、それだけで出訴期限が当然に停止・延長されるわけではありません。

運送人と交渉中であっても、P&I Clubから回答待ちであっても、サーベイ報告書の完成待ちであっても、出訴期限は進みます。

期限が近い場合は、期限延長の明確な合意を取るか、訴訟提起を含めた対応を検討します。

期限延長の注意点

出訴期限は、当事者間の合意により延長できる場合があります。

ただし、延長合意は、事故発生後に明確に行う必要があります。B/Lや運送契約で事前に法定期間より長い期限を定める場合とは扱いが異なることがあります。

実務では、メールのやり取りだけで安心せず、誰が、どの請求について、いつまで期限を延長するのかを明確にします。

House B/LとMaster B/Lがある場合、NVOCCとの期限延長と、船会社との期限延長は別問題です。片方の延長合意だけで、もう片方にも当然に効くとは限りません。

House B/LとMaster B/Lの期限差異

NVOCCやフォワーダーが関与する場合、House B/LとMaster B/Lの出訴期限を分けて確認します。

荷主に対してはHouse B/L上の期限が問題になり、NVOCCが船会社へ求償する場面ではMaster B/L上の期限が問題になります。

ここで注意すべきなのは、荷主からNVOCCへの請求期限と、NVOCCから船会社への求償期限が一致するとは限らないことです。

荷主との交渉、損害額の確認、サーベイ報告書の取得、保険会社との調整に時間を使っている間に、NVOCC側の船会社に対する求償期限が先に迫ることがあります。

実務上は、このHouse B/LとMaster B/L、またはHouse B/LとOcean B/Lの期限差異が、訴訟・抗弁の場面で争点になることがあります。

その場合、NVOCCやフォワーダーは、荷主に対しては責任を負う可能性があるのに、実運送人や船会社からは回収できないという差額リスクを抱えます。

このリスクを避けるためには、荷主対応と同時に、Master B/LまたはOcean B/L上の通知期限、出訴期限、準拠法、裁判管轄を確認します。必要に応じて、船会社やP&I Clubから期限延長の明確な合意を取得する必要があります。

House B/L側で期限延長の合意を取っていても、それがMaster B/LやOcean B/L上の船会社に当然に効くわけではありません。期限延長は、どの契約関係について、誰との間で、いつまで延長されたのかを個別に確認します。

Surrendered B/L・Sea Waybillでの注意点

Surrendered B/LやSea Waybillの場合でも、出訴期限の確認は必要です。

Surrendered B/Lでは、通常の有価証券としてのB/Lとは異なる整理になることがあります。ただし、海上運送中の貨物事故であれば、国際海上物品運送法や運送約款上の期限が問題になります。

Sea Waybillでも、運送契約に基づく請求である以上、適用される約款や法令上の期限を確認します。

「オリジナルB/Lがないから出訴期限も関係ない」とは考えません。書類の形式と、運送人責任の期限管理は分けて整理します。

複合輸送での注意点

複合輸送では、事故発生区間により出訴期限の判断が変わることがあります。

海上区間で発生した事故であれば、海上運送に関する法令やB/L約款が問題になります。内陸輸送中の事故であれば、陸上運送契約や国内法上の期限が問題になることがあります。

航空区間が含まれる場合には、航空運送に関する条約やAir Waybill上の期限も確認します。

事故発生区間が分からない場合は、B/L約款がどのように定めているか、どの法体系を適用する前提かを確認します。

貨物保険・代位求償との関係

貨物保険会社が保険金を支払った後、運送人へ代位求償を行うことがあります。

この場合、保険会社は被保険者の請求権を引き継ぐため、B/L上の出訴期限の影響を受けます。

保険金支払いの検討、サーベイ、損害額確定、必要書類の収集に時間がかかると、代位求償の期限が迫ることがあります。

貨物保険がある場合でも、B/L上の出訴期限は別に管理します。保険会社への事故通知と、運送人への請求期限は同じではありません。

実務上の確認ポイント

  1. B/L裏面約款の出訴期限を確認する
    まず、House B/LMaster B/L、Ocean B/Lそれぞれの出訴期限条項を確認します。
  2. 適用法と強行法規を確認する
    国際海上物品運送法、ヘーグ・ヴィスビー・ルール、COGSA、準拠法条項、裁判管轄条項との関係を確認します。
  3. 損害通知と出訴期限を分けて管理する
    損害通知やClaim Letterを出していても、出訴期限が当然に止まるわけではありません。
  4. House B/LとMaster B/Lを別々に管理する
    荷主からNVOCCへの請求期限と、NVOCCから船会社への求償期限は一致するとは限りません。
  5. 期限差異が争点になる可能性を確認する
    House B/LとMaster B/L、またはHouse B/LとOcean B/Lの期限差異が、訴訟・抗弁の場面で争点になることがあります。
  6. 期限延長または提訴判断を行う
    期限が近い場合は、期限延長の明確な合意を取得するか、訴訟提起を含めて対応方針を決めます。

まとめ

B/Lの出訴期限は、運送人に対して訴訟を提起できる期限をいいます。

損害通知やClaim Letterとは別の期限であり、通知をしていても出訴期限は別に進みます。

海上運送では、貨物の引渡し日、または引き渡されるべきであった日から1年という考え方が重要になります。一方、B/L約款上では9ヶ月などの期限が定められることもあります。

House B/LとMaster B/L、またはHouse B/LとOcean B/Lの期限差異は、訴訟・抗弁の場面で重要な争点になることがあります。荷主対応と船会社への求償対応は、必ず並行して管理します。

B/Lの出訴期限は、貨物事故対応の中でも失敗が許されない期限管理です。事故発生後は、損害額の確認と並行して、通知期限と出訴期限を早期に確認します。

同義語・別表記

  • B/L出訴期限
  • 船荷証券の出訴期限
  • Time Bar
  • タイムバー
  • 除斥期間
  • 訴訟提起期限
  • 請求期限
  • 運送人責任の期限

関連用語

公式情報