信用状なし荷為替取引とは
信用状なし荷為替取引とは
信用状なし荷為替取引とは、信用状(L/C)を利用せずに、銀行を通じて船積書類と代金決済を行う輸出取引です。
主な方式として、D/P取引とD/A取引があります。
L/C取引では、信用状条件に合致した書類を呈示することで、発行銀行の支払確約を前提に代金回収を図ることができます。
これに対して、信用状なし荷為替取引では、輸入者側銀行が輸出者に対して当然に支払を確約するわけではありません。
そのため、輸入者が代金を支払わない場合、支払期日に決済できない場合、貨物や船積書類の引取りを拒む場合には、輸出者側に代金回収リスクや貨物処分リスクが残ります。
なお、「荷為替取引」という語は、広い意味ではL/C付きの荷為替取引を含む場合があります。
本記事では、信用状を利用しないD/P取引・D/A取引を中心に整理します。
D/P取引とD/A取引
信用状なし荷為替取引の中心になるのが、D/P取引とD/A取引です。
どちらも銀行を通じて船積書類を送付しますが、輸入者が書類を受け取る条件が異なります。
| 区分 | 内容 | 輸出者側の主なリスク |
|---|---|---|
| D/P取引 | 輸入者が代金を支払った後に、銀行から船積書類を受け取る方式です。 | 輸入者が支払わず、船積書類や貨物の引取りを拒むリスクがあります。 |
| D/A取引 | 輸入者が期限付手形を引き受けることで船積書類を受け取り、代金支払は後日行う方式です。 | 輸入者が貨物を受け取った後、支払期日に代金を支払わないリスクがあります。 |
一般に、D/P取引はD/A取引より輸出者にとって安全性が高いとされます。
D/P取引では、輸入者が代金を支払わなければ、原則として船積書類を受け取れないためです。
一方、D/A取引では、輸入者が期限付手形を引き受ければ船積書類を受け取れるため、輸入者は貨物の引取りに進むことができます。
その結果、輸出者は貨物引渡し後に支払期日を待つ形となり、輸入者の信用力に大きく依存します。
URC522との関係
D/P取引やD/A取引は、国際商業会議所(ICC)の取立統一規則であるURC522に基づいて行われることがあります。
URC522は、銀行が船積書類や金融書類を取立のために取り扱う際の国際的な実務ルールです。
ただし、URC522がすべての取引に自動的に適用されるわけではありません。
実務上は、取立指示書などでURC522に従う旨が示されているかを確認する必要があります。
基本的な取引の流れ
信用状なし荷為替取引の基本的な流れは、次のとおりです。
- 輸出者と輸入者が売買契約を締結します。
- 輸出者が商品を船積みします。
- 輸出者は船会社などから船荷証券を取得します。
- 輸出者はインボイス、パッキングリスト、船荷証券、為替手形などを用意します。
- 輸出者は取引銀行へ船積書類を提出し、取立または買取を依頼します。
- 輸出者の銀行は、輸入者側銀行へ船積書類を送付します。
- 輸入者側銀行は、輸入者へ書類到着を通知します。
- D/Pの場合、輸入者は代金を支払ったうえで船積書類を受け取ります。
- D/Aの場合、輸入者は期限付手形を引き受けたうえで船積書類を受け取ります。
- 輸入者は船積書類を使って貨物の引取り手続きに進みます。
- 輸入者側銀行は、回収した資金を輸出者側銀行へ送金し、輸出者へ代金が支払われます。
L/C取引との違い
L/C取引と信用状なし荷為替取引の最大の違いは、銀行の支払確約の有無です。
L/C取引では、信用状条件に合致した書類が呈示されれば、発行銀行の支払確約が問題になります。
一方、信用状なし荷為替取引では、輸入者側銀行は通常、支払を保証する立場ではありません。
銀行は主に、船積書類の取次ぎ、手形の引受確認、代金の取立、送金手続を行います。
そのため、信用状なし荷為替取引では、輸入者の信用力、支払意思、資金繰り、相手国の送金規制や外貨事情が重要になります。
L/C取引より手続きが簡便な一方で、輸出者側には回収不能リスクが残ります。
Open Accountとの違い
信用状なし荷為替取引とOpen Accountは、どちらもL/Cを利用しない取引ですが、銀行が船積書類の取次ぎに関与するかどうかが異なります。
D/P取引やD/A取引では、銀行を通じて船積書類を送付し、支払または手形引受と書類引渡しを結びつけます。
一方、Open Accountでは、輸出者が先に商品を出荷し、請求書に基づいて後日代金を回収する形が一般的です。
そのため、Open Accountは輸入者にとって利用しやすい一方で、輸出者にとっては輸入者の信用力に大きく依存する取引条件です。
D/A取引よりも、さらに売掛債権管理や信用保険、国際ファクタリングの検討が重要になる場合があります。
取立と買取の違い
信用状なし荷為替取引では、銀行への依頼方法として、取立と買取があります。
取立とは、輸入者から代金が回収された後に、輸出者へ資金が支払われる方式です。
輸出者にとっては、実際に入金されるまで時間がかかります。
買取とは、輸出者の銀行が船積書類や手形をもとに、輸出者へ先に資金を支払う方式です。
ただし、L/Cなし取引では、銀行が常に買取に応じるわけではありません。
輸出者の与信、輸入者の信用力、相手国リスク、支払サイト、取引実績、担保の有無などが確認されます。
また、銀行が買取を行った場合でも、輸入者が最終的に支払わないときは、契約条件により輸出者へ遡求(さかのぼり請求)される可能性があります。
買取を利用する場合には、償還請求権の有無、遡求条件、輸出手形保険の利用可否を確認する必要があります。
航空貨物の場合の注意点
信用状なし荷為替取引では、B/Lを銀行経由で管理することにより、輸入者が代金決済前に貨物を引き取りにくくする効果が期待されます。
しかし、航空貨物の場合は注意が必要です。
航空貨物では、通常、船荷証券ではなく航空貨物運送状(AWB)が使われます。
AWBは一般に有価証券ではなく、貨物引渡しのための権利証券として機能するB/Lとは性質が異なります。
そのため、航空貨物では、銀行経由で書類を管理していても、貨物引渡しを十分に止められない場合があります。
D/P取引やD/A取引を航空貨物で利用する場合には、荷受人名義、通知先、フォワーダーへの引渡指示、代金決済前の貨物引渡し防止策を事前に確認する必要があります。
発生しやすい問題
信用状なし荷為替取引では、次のような問題が発生することがあります。
- 輸入者が代金を支払わない
- 輸入者が支払期日に資金決済できない
- 輸入者が船積書類や貨物の引取りを拒む
- 輸入者が倒産・営業停止・破産状態となる
- 輸入国の外貨不足や送金規制により送金できない
- 品質クレームや販売不振を理由に支払を拒まれる
- D/A取引で貨物引取り後に支払期日が到来しても入金されない
- 銀行買取後に不払いとなり、輸出者へ遡求(さかのぼり請求)される
特にD/A取引では、輸入者が貨物を受け取った後に支払期日が到来するため、不払いが発生した時点で貨物の回収や転売が難しくなっていることがあります。
貨物保険との関係
信用状なし荷為替取引で問題になる中心は、代金回収リスクです。
貨物保険は、輸送中の貨物の滅失・損傷を対象とする保険であり、輸入者が代金を支払わないこと自体を補償するものではありません。
たとえば、輸送中に貨物が濡損した場合は貨物保険の問題になります。
一方、貨物は無事に到着したものの、輸入者が代金を支払わない、支払期日に決済できない、貨物を引き取らないという場合は、貨物保険ではなく、貿易決済リスク、信用リスク、債権回収リスクの問題になります。
輸出手形保険・輸出取引信用保険・国際ファクタリング・Forfaiting
信用状なし荷為替取引では、輸入者の不払いリスクを輸出者が直接負う場面が多くなります。
そのため、取引金額、支払サイト、輸入者の信用状態、相手国リスクによっては、輸出手形保険、輸出取引信用保険、国際ファクタリング、Forfaitingなどの利用を検討することがあります。
輸出手形保険は、D/P・D/A取引で銀行が買い取った荷為替手形について、満期不払いなどのリスクに備える制度として検討されます。
ただし、取立依頼は対象外となる場合があるため、銀行買取の有無や対象条件を確認する必要があります。
輸出取引信用保険は、海外取引先の倒産、債務不履行、送金規制などにより、輸出代金を回収できないリスクに備える保険です。
D/A取引やOpen Account取引など、輸入者の信用力に依存する取引では、特に検討対象になりやすい保全策です。
国際ファクタリングは、国内外のファクタリング会社のネットワークを通じて、輸入者の信用調査や保証を行う方法です。
L/Cを使わない取引で、輸入者の信用リスクを補完する手段として利用されることがあります。
Forfaitingは、輸出者が将来回収する輸出債権を金融機関などに売却し、早期に資金化する方法です。
D/A取引や期限付手形を伴う取引で検討されることがありますが、輸入者、保証銀行、対象国、支払期日などの信用判断が重要になります。
実務上の確認事項
信用状なし荷為替取引を利用する場合には、次の事項を確認する必要があります。
- D/P取引か、D/A取引か
- 取立指示書でURC522準拠とされているか
- 支払期日、支払サイト、通貨、決済銀行
- 輸入者の信用状態、過去の支払実績、財務内容
- 輸入国の政治・経済情勢、外貨規制、送金規制
- B/L原本の管理と書類引渡し条件
- 航空貨物の場合、AWBで貨物引渡しを止められる運用になっているか
- 銀行買取を利用できるか
- 買取時に輸出者への遡求があるか
- 不払い時の貨物保管、転売、返送、処分方法
- Open Accountへ近い運用になっていないか
- 輸出手形保険、輸出取引信用保険、国際ファクタリング、Forfaitingの利用可否
まとめ
信用状なし荷為替取引とは、L/Cを利用せず、銀行を通じて船積書類と代金決済を行う輸出取引です。
主な方式として、D/P取引とD/A取引があります。
D/P取引では、輸入者が代金を支払った後に船積書類を受け取ります。
D/A取引では、輸入者が期限付手形を引き受けることで船積書類を受け取り、実際の支払は後日行います。
信用状なし荷為替取引は、L/C取引より手続きが簡便な場合がありますが、輸入者側銀行による支払確約がないため、輸出者側には代金回収リスクが残ります。
また、Open Accountとは異なり銀行が書類取次ぎに関与しますが、銀行が支払を保証するわけではありません。
輸入者の信用力、相手国リスク、B/LまたはAWBの管理、銀行買取の遡求条件、輸出手形保険、輸出取引信用保険、国際ファクタリング、Forfaitingの利用可否を確認することが重要です。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
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