D/A取引とは
D/A取引とは
D/A取引とは、Documents against Acceptance の略で、日本語では「引受渡し」または「引受引換書類渡し」と呼ばれます。
輸入者が期限付手形を引き受けることで、銀行から船積書類を受け取り、実際の代金支払は後日行う信用状なしの荷為替取引です。
D/A取引では、輸入者は代金を支払う前に船積書類を受け取ることができます。
そのため、輸入者は貨物の引取りに進めますが、輸出者にとっては、支払期日に代金が支払われないリスクが残ります。
D/A取引は、輸入者にとって資金繰り上のメリットがある一方、輸出者にとっては信用リスクが大きい決済方法です。
特に、新規取引先、信用状態に不安がある取引先、新興国向け取引、支払サイトが長い取引では、慎重な判断が必要です。
URC522との関係
D/A取引やD/P取引は、国際商業会議所(ICC)の取立統一規則であるURC522に基づいて行われることがあります。
URC522は、銀行が船積書類や金融書類を取立のために取り扱う際の国際的な実務ルールです。
ただし、URC522が当然にすべての取引へ自動適用されるわけではありません。
実務上は、取立指示書などでURC522に従う旨が示されているかを確認する必要があります。
D/A取引の基本的な流れ
D/A取引では、輸出者、輸出者の銀行、輸入者の銀行、輸入者の4者が関係します。
基本的な流れは次のとおりです。
- 輸出者と輸入者が売買契約を締結します。
- 輸出者が商品を船積みします。
- 輸出者は船会社などから船荷証券を取得します。
- 輸出者はインボイス、パッキングリスト、船荷証券、期限付手形などを用意します。
- 輸出者は取引銀行へ船積書類を提出し、取立または買取を依頼します。
- 輸出者の銀行は、輸入者の銀行へ船積書類を送付します。
- 輸入者の銀行は、輸入者へ書類到着を通知します。
- 輸入者は期限付手形を引き受けます。
- 輸入者は船積書類を受け取り、貨物の引取り手続きに進みます。
- 支払期日が到来すると、輸入者は代金を支払います。
- 輸入者の銀行は、回収した資金を輸出者側の銀行へ送金します。
D/A取引の特徴
D/A取引の最大の特徴は、輸入者が代金を支払う前に船積書類を受け取れる点です。
輸入者は、期限付手形を引き受けることで、貨物の引取りに必要な書類を受け取ることができます。
このため、輸入者にとっては、貨物を販売した後の資金で支払う、在庫を先に確保する、資金繰りを調整する、といったメリットがあります。
一方、輸出者にとっては、貨物を引き渡した後に支払を待つ形になるため、輸入者の信用力に強く依存します。
Usance期間と支払サイト
D/A取引では、輸入者が期限付手形を引き受けた後、一定期間後に代金を支払います。
この支払までの期間は、Usance期間または支払サイトと呼ばれます。
実務上は、30日、60日、90日、120日、180日などの支払サイトが使われることがあります。
支払サイトが長くなるほど、輸出者は資金回収までの期間が長くなり、輸入者の信用悪化、為替規制、送金遅延、倒産などの影響を受けやすくなります。
D/A取引では、単に「D/Aであるか」だけでなく、何日後に支払われるのか、支払期日はいつか、通貨は何か、相手国から送金できるかを確認することが重要です。
D/P取引との違い
D/A取引とD/P取引は、どちらも信用状を利用しない荷為替取引ですが、書類を渡す条件が異なります。
| 区分 | 書類を受け取る条件 | 輸出者側の主なリスク |
|---|---|---|
| D/P取引 | 輸入者が代金を支払うこと | 輸入者が支払わず、書類や貨物の引取りを拒むリスク |
| D/A取引 | 輸入者が期限付手形を引き受けること | 輸入者が貨物を受け取った後、支払期日に代金を支払わないリスク |
D/P取引では、輸入者が代金を支払わなければ、原則として船積書類を受け取れません。
これに対して、D/A取引では、輸入者が手形を引き受ければ船積書類を受け取れるため、輸出者側の回収リスクはD/P取引より大きくなります。
L/C取引との違い
L/C取引では、信用状条件に合致した書類を銀行へ呈示することで、発行銀行の支払確約を前提に代金回収を図ることができます。
これに対して、D/A取引では、輸入者側銀行が当然に代金支払を保証するわけではありません。
D/A取引における銀行の役割は、主に船積書類の取次ぎ、手形引受の確認、期日管理、代金取立です。
輸入者が支払期日に代金を支払わない場合、輸入者側銀行が当然に輸出者へ代金を支払うわけではありません。
D/A取引で発生しやすい問題
D/A取引では、次のような問題が発生することがあります。
- 輸入者が支払期日に代金を支払わない
- 輸入者が貨物を受け取った後、資金繰り悪化により支払不能となる
- 品質クレームや販売不振を理由に支払を引き延ばされる
- 輸入者が期限付手形を引き受けた後でも、品質クレームや契約不履行を理由に支払拒絶・減額要求を主張する
- 手形の支払期日に不払いとなり、満期不払い・Unpaidの状態になる
- 輸入者が倒産・営業停止・破産状態となる
- 相手国の外貨不足や送金規制により送金できない
- 銀行買取後に不払いとなり、輸出者へ遡求(さかのぼり請求)される
D/A取引では、貨物がすでに輸入者側へ渡っていることが多いため、不払い発生後に貨物を回収・転売することは容易ではありません。
そのため、取引開始前の与信確認、支払サイトの管理、信用保険や国際ファクタリングの検討が重要になります。
また、D/A取引では、輸入者が手形を引き受けたからといって、支払期日に必ず入金されるとは限りません。
輸入者が品質クレーム、数量不足、納期遅延、契約条件違反などを理由に、支払拒絶や減額要求を主張することがあります。
このような抗弁が主張されると、銀行は商取引上の紛争を解決する立場ではないため、輸出者は売買契約、検査記録、クレーム対応記録、船積書類、通信記録などをもとに、輸入者との間で回収交渉を行う必要があります。
航空貨物の場合の注意点
航空貨物では、通常、船荷証券ではなく航空貨物運送状(AWB)が使われます。
AWBは一般に有価証券ではなく、貨物引渡しのための権利証券として機能するB/Lとは性質が異なります。
そのため、航空貨物では、銀行経由の書類管理によって貨物引渡しを止める効果が弱くなる場合があります。
D/A取引では、もともと輸入者が支払前に書類を受け取るため、航空貨物では特に、代金決済前の貨物引渡しリスクに注意が必要です。
航空貨物でD/A条件を使う場合には、荷受人名義、通知先、フォワーダーへの引渡指示、支払前引渡しの防止策、輸入者の信用状態を事前に確認する必要があります。
D/A条件への変更要求への対応
L/C取引やD/P取引で進めていた取引について、輸入者からD/A条件への変更を求められた場合は注意が必要です。
D/A取引は、輸入者にとって資金繰り上の余裕を作りやすい一方、輸出者側の回収リスクを大きくします。
特に、船積直前、貨物到着前、支払条件確定後にD/Aへの変更を求められる場合、輸入者の資金繰り悪化、銀行与信の不足、現地販売不振、外貨調達難などが背景にある可能性があります。
すべてが危険な取引とは限りませんが、条件変更の理由を確認せずに応じるべきではありません。
D/A条件への変更を求められた場合には、支払サイトの短縮、前受金の追加、分割払い、保証、Aval、国際ファクタリング、輸出手形保険、輸出取引信用保険などの保全策をあわせて検討する必要があります。
取立と買取の注意点
D/A取引では、銀行への依頼方法として取立または買取が使われることがあります。
取立の場合、輸出者は支払期日まで入金を待つことになります。
買取の場合、輸出者の銀行が期限付手形などをもとに、輸出者へ先に資金を支払うことがあります。
ただし、信用状なしのD/A取引では、銀行が常に買取に応じるわけではありません。
輸出者の与信、輸入者の信用力、相手国リスク、支払サイト、取引実績などが確認されます。
また、輸入者が最終的に支払わなかった場合、契約条件により輸出者へ遡求(さかのぼり請求)される可能性があります。
D/A取引で買取を利用する場合には、償還請求権の有無、遡求条件、輸出手形保険の利用可否を確認することが重要です。
Aval・Forfaitingとの関係
AvalとForfaitingは、それぞれ独立した貿易金融・信用補完の手法です。
ここではD/A取引との関係だけを簡単に整理し、詳細は個別記事で扱います。
Avalとは、手形に対する保証の一種です。
輸入者の支払能力に不安がある場合、銀行などが手形支払を保証することで、輸出者側の回収可能性を高める目的で利用されることがあります。
Forfaitingとは、輸出債権を金融機関などに売却し、輸出者が早期に資金化する方法です。
通常、輸入者や保証銀行の信用、支払期日、対象国リスクなどが重要になります。
D/A取引そのもののリスクを消すものではなく、債権の信用補完や資金化の方法として理解する必要があります。
貨物保険との関係
D/A取引で問題になる中心は、貨物の損傷ではなく、代金回収不能リスクです。
貨物保険は、輸送中の貨物の滅失・損傷を対象とする保険であり、輸入者が支払期日に代金を支払わないこと自体を補償するものではありません。
たとえば、輸送中に貨物が破損した場合は貨物保険の問題になります。
一方、貨物は無事に到着し、輸入者が受け取ったにもかかわらず、支払期日に代金が支払われない場合は、貨物保険ではなく、貿易決済リスク、信用リスク、債権回収リスクの問題になります。
実務上の確認事項
D/A取引を利用する場合には、次の事項を確認する必要があります。
- 取立指示書でURC522準拠とされているか
- 支払期日、支払サイト、通貨、決済銀行
- Usance期間が30日、60日、90日、120日、180日など、どの条件か
- 輸入者の信用状態、過去の支払実績、財務内容
- 相手国の外貨規制、送金規制、政治・経済状況
- 期限付手形の内容と引受条件
- 品質クレームや契約不履行を理由とする抗弁リスク
- 銀行買取を利用できるか
- 買取時に輸出者への遡求があるか
- Avalや保証の有無
- Forfaitingや国際ファクタリングの利用可否
- 輸出手形保険、輸出取引信用保険の利用可否
- 航空貨物の場合、AWBによる貨物引渡しリスクを管理できるか
まとめ
D/A取引とは、輸入者が期限付手形を引き受けることで船積書類を受け取り、実際の代金支払は後日行う信用状なしの荷為替取引です。
輸入者にとっては資金繰り上のメリットがありますが、輸出者にとっては、貨物引渡し後に代金を回収できないリスクが残ります。
D/A取引は、D/P取引よりも輸出者側の信用リスクが高くなります。
特に、L/C取引やD/P取引からD/A取引への変更要求が出た場合には、輸入者の資金繰り、銀行与信、相手国リスク、支払サイトを慎重に確認する必要があります。
D/A取引を利用する場合は、輸入者の信用力、支払条件、Usance期間、B/LまたはAWBの管理、銀行買取の遡求条件、抗弁リスク、Aval、Forfaiting、輸出手形保険、輸出取引信用保険などを組み合わせて、代金回収リスクを管理することが重要です。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://tokiomaritime.com/without-lc/
