インコタームズ・危険負担・費用分担の実務

Incoterms, Risk Transfer and Cost Allocation Practice

インコタームズ・危険負担・費用分担の実務とは

インコタームズ・危険負担・費用分担の実務とは、国際売買において、売主と買主の間でどこまで費用を負担し、どの時点で貨物の危険が移転するかを確認する実務です。

インコタームズは、単なる価格条件ではありません。輸送手配、輸出通関、輸入通関、貨物保険、B/L、L/C決済、追加費用、貨物事故時の対応に直接関係します。

条件名だけでFOB、CIF、DAP、DDPなどを判断すると、危険移転、費用負担、通関義務、保険手配、B/L条件、事故時の責任で認識違いが起きます。

本記事では、インコタームズの各条件を細かく解説するのではなく、実務上よく起きる誤解やトラブルを入口として、フォワーダー、NVOCC、輸出者、輸入者が何を確認すべきかを整理します。

この記事で分かること

  • インコタームズを実務で確認するときの基本視点
  • 危険負担と費用分担を分けて考える理由
  • FOB、FCA、CIF、CIP、DAP、DDP、EXWで起きやすい誤解
  • コンテナ輸送でFOBが実務とずれやすい理由
  • CIF・CIPと貨物保険の確認ポイント
  • DAP・DDPと輸入通関・関税負担の注意点
  • L/C取引、B/L、保険証券との整合確認
  • 貨物事故時にインコタームズをどう使って責任関係を整理するか

この記事で扱う範囲

この記事では、インコタームズを実務で使う際の横断的な確認方法を扱います。個別条件の詳細、保険始期の細かい論点、L/C書類の詳細確認は、それぞれ別テーマとして整理するのが実務上分かりやすいです。

テーマ この記事で扱う内容 別テーマとして整理すべき内容
インコタームズ全体 危険負担、費用分担、通関義務、保険手配を横断的に確認する考え方 FOB、FCA、CIF、CIP、DAP、DDP、EXWなど各条件の個別解説
危険移転と費用負担 費用を負担する者と危険を負担する者が一致しない場面の整理 各条件ごとの危険移転時点、費用範囲、指定場所の詳細
貨物保険 CIF・CIPで売主が手配する保険、FOB・CFR・FCA・CPTで買主側確認が必要な保険 外航貨物海上保険、協会貨物約款、保険始期、保険金請求実務
コンテナ輸送 FOBとFCAの使い分け、CY・CFS搬入後から本船積込前までのずれ CY搬入、CFS搬入、Booking、B/L発行条件、運送人責任
L/C・船積書類 売買条件、B/L、保険証券、Invoice、L/C条件が矛盾しないかの確認 L/C取引、ディスクレパンシー、B/L記載、保険証券の銀行提出実務
事故対応 事故発生時に、危険負担者、保険手配者、請求主体を切り分ける考え方 Claim Notice、サーベイ、運送人責任、代位求償、出訴期限

インコタームズ実務の基本構造

インコタームズを実務で確認するときは、条件名だけを見るのではなく、危険移転、費用負担、通関義務、保険手配、輸送書類、指定場所を分けて確認します。

例えば、CIFでは売主が運賃と保険を手配しますが、危険移転の時点は仕向地到着時ではありません。FOBでは船積港での本船積込みが重要になりますが、コンテナ輸送では貨物が本船積込み前にCYやCFSへ搬入されるため、実際の管理実態とずれることがあります。

また、DAPでは売主が指定地まで輸送を手配しますが、輸入通関や関税負担は買主側に残るのが通常です。DDPでは売主が輸入通関や関税負担まで含めるため、売主が輸入国で輸入者になれるか、現地法令に対応できるかが問題になります。

このように、同じ条件名でも、貨物の種類、輸送モード、指定場所、通関主体、保険手配、L/C条件によって、実務上のリスクは変わります。

最初に確認すべき5つの視点

確認項目 確認する内容 確認を怠った場合のリスク
条件名 FOB、FCA、CIF、CIP、DAP、DDP、EXWなど 売主・買主の義務を誤解する
指定場所 港名、CY、CFS、倉庫、工場、納品先など 危険移転・費用負担の地点が曖昧になる
危険移転 どの時点から貨物損傷リスクが買主へ移るか 事故時に誰が保険請求・求償を行うか分からない
費用負担 運賃、通関費用、港湾費用、配送費、保険料の負担者 追加費用の請求先で揉める
手配責任 輸送、輸出通関、輸入通関、貨物保険、B/L手配者 手配漏れ、保険未手配、通関不能が起きる

よくある誤解

誤解 正しい整理 実務上の注意点
CIFなら保険は十分である CIFでは売主に保険付保義務がありますが、最低限の担保にとどまる場合があります。 ICC-C相当で足りる貨物か、追加付保が必要かを確認します。
CIPならすべての事故が補償される CIPではCIFより広い保険条件が求められる場合がありますが、遅延、梱包不備、固有の性質などは別論点です。 保険条件だけでなく、免責、保険期間、貨物特性を確認します。
DDPなら全部売主負担で買主は何もしなくてよい DDPでは売主の義務が重くなりますが、売主が輸入国で輸入者になれるか、規制に対応できるかが問題になります。 輸入者名義、他法令、納税、許認可、返品・廃棄費用を事前確認します。
DAPなら輸入通関や関税も売主負担である DAPでは指定地までの輸送は売主側ですが、輸入通関や関税負担は買主側に残るのが通常です。 輸入通関費用、関税、消費税、検査費用の負担者を明確にします。
FOBはコンテナ輸送でも問題ない FOBは本船積込みを基準にするため、CY・CFS搬入を前提とするコンテナ輸送では実務とずれることがあります。 FCAへの変更、CY・CFS搬入後の事故、保険始期を確認します。
EXWなら売主は何もしなくてよい EXWでも輸出通関、積込作業、輸出者名義、輸出規制への対応で売主側の協力が必要になることがあります。 買主が輸出国で輸出通関できるか、積込責任を誰が負うかを確認します。
費用を負担する者が危険も負担する 費用負担と危険負担は一致しない場合があります。 運賃負担、保険手配、危険移転時点を分けて確認します。
条件名だけ書けば十分である 条件名だけでは、指定場所、版数、通関主体、保険条件が不明確です。 Incotermsの版数、指定港・指定地、費用範囲を明記します。

危険負担と費用分担は別に考える

インコタームズで特に誤解されやすいのが、危険負担と費用分担の混同です。

費用を売主が負担しているからといって、貨物事故のリスクも売主が負っているとは限りません。逆に、買主が危険を負担している時点であっても、一定の費用を売主が支払う条件もあります。

例えば、CIFでは売主が仕向港までの運賃と貨物保険を手配します。しかし、危険移転は仕向港到着時ではなく、船積港で本船上に貨物が積み込まれた時点で買主へ移転します。

このため、事故時には「誰が運賃を払ったか」ではなく、「どの時点で事故が起きたか」「その時点で危険を負っていたのは誰か」「誰が保険を手配していたか」を分けて確認する必要があります。

実務で多いトラブルと確認すべき論点

インコタームズに関するトラブルは、条件名そのものよりも、条件名と実際の物流、通関、保険、書類が合っていない場合に発生します。

よくあるトラブル 確認すべき論点 実務上の注意点
FOBと記載されているが、実際にはコンテナ貨物でCY搬入時点が重要になっている FOBとFCA、コンテナ輸送での引渡地点、CY・CFS搬入後の危険負担 本船積込み前の事故や費用を誰が負担するか確認する
CIFなのに、買主が期待する貨物保険の内容が付いていない CIF・CIPの保険条件、保険金額、保険証券、事故時の請求方法 売主手配の保険が買主に十分とは限らない
DAPなのに、輸入通関費用や関税の負担者を誤解している DAPの輸入通関、関税、消費税、国内配送費の負担範囲 指定地までの輸送と輸入通関義務を混同しない
DDPなのに、売主が輸入国で輸入者になれない 輸入者資格、輸入規制、関税・消費税処理、現地法令対応 売主が現地で輸入通関できるか事前確認する
EXWなのに、買主が輸出国で輸出通関できない 輸出通関主体、輸出者名義、集荷・積込責任 買主が輸出国で必要手続を行えるか確認する
条件名に指定場所やIncotermsの版数が書かれていない Incoterms 2020等の版数、指定港、指定地、倉庫名 FOB Yokohamaなど、条件名と場所を明確にする
売買条件とB/L、保険証券、L/C条件が一致していない L/C、B/L、Invoice、保険証券、Freight条件の整合 銀行書類不一致や輸入地でのD/O交換遅延につながる
追加費用が発生したときに、売主・買主のどちらが負担するか決まっていない 港湾費用、保管料、待機料、再配送費、検査費用、通関費用 見積段階で含まれる費用と別途費用を明確にする

実務で問題になりやすいケース

ケース 問題点 確認資料 実務対応
FOB条件のコンテナ貨物がCY搬入後に損傷した 本船積込み前のため売主リスクと見るか、運送人管理下と見るかで争いになる 売買契約、Booking、CY搬入票、B/L、保険証券、事故記録 FOBのままでよいか、FCAへの変更や保険始期の見直しを検討します。
CIF条件で輸入した貨物の保険条件が不足していた 売主が保険を手配していても、買主が期待する破損・水濡れ・盗難が補償されない場合がある 保険証券、協会貨物約款、保険金額、Invoice、B/L 契約前に保険条件を確認し、必要に応じて追加付保を検討します。
CFR条件をCIFと誤解して保険が未手配だった 売主が運賃を負担するため、買主が保険もあると誤解する 売買契約、Invoice、B/L、保険証券の有無 買主側で危険移転後の海上輸送区間をカバーする保険を手配します。
DAP条件で輸入通関費用と関税負担を誤解した 指定地までの輸送と、輸入通関・関税負担を混同する 売買契約、見積書、通関書類、納税資料、配送指示書 輸入通関、関税、消費税、検査費用の負担者を事前に明確にします。
DDP条件なのに売主が輸入者になれない 輸入国で輸入者名義、許認可、納税、他法令対応ができず通関が止まる 輸入者情報、通関委任、他法令書類、商品規制資料、税務情報 売主が輸入国で実務対応できるか確認し、必要ならDAP等へ条件変更を検討します。
EXW条件で買主が輸出通関できなかった 買主が輸出国で輸出者になれず、輸出通関や規制対応が進まない 輸出者名義、輸出許可資料、集荷指示、積込記録、輸出通関書類 FCA等への変更や、売主側の輸出通関協力範囲を事前に決めます。
L/C条件とB/L・保険証券が一致していない 売買条件は合っていても、銀行提出書類が不一致となり決済に支障が出る L/C、Invoice、B/L、保険証券、Packing List 船積前にL/C条件と船積書類の整合を確認し、不一致があれば修正します。
追加費用の負担者が決まっていなかった 保管料、検査費用、再配送費、待機料、D/O費用などの請求先で揉める 見積書、売買契約、通関指示、配送指示、費用明細 見積段階で含まれる費用と別途費用を分けて明示します。

FOB・FCA・コンテナ輸送の確認

FOBは伝統的に多く使われる条件ですが、コンテナ輸送では注意が必要です。

FOBでは、危険移転の基準として本船上への積込みが重要になります。しかし、コンテナ輸送では、貨物は本船積込み前にCYやCFSへ搬入され、運送人またはその関係者の管理下に入ります。

このため、売主が本船積込みの瞬間を直接管理できないにもかかわらず、契約上はFOBとして扱われることがあります。ここで、CY搬入後から本船積込み前までの損傷、港湾保管中の事故、コンテナダメージ、CFS内での取扱事故、ロールオーバーによる保管料などが問題になります。

例えば、売主がFOB条件で輸出し、コンテナをCYへ搬入した後、本船積込み前にコンテナ内貨物が損傷したとします。買主は「FOBなので本船積込み前は売主のリスク」と考え、売主は「すでにCYへ搬入し、運送人側の管理下に入っている」と考えることがあります。

さらに、買主が海上保険を手配していても、その保険の開始時点が本船積込み以後であれば、CY搬入後から本船積込み前までに保険の空白が生じる可能性があります。

このようなずれを避けるため、コンテナ輸送ではFCAの方が実務に合う場面があります。FCAでは、指定地で運送人に貨物を引き渡した時点を基準に危険移転を整理できるため、CY搬入やCFS搬入を前提とした輸出実務と整合しやすくなります。

フォワーダーは、売買契約上FOBと書かれている場合でも、実際の引渡地点、輸送モード、保険開始時点、CY・CFS搬入後の費用とリスクを確認する必要があります。

CIF・CIPと貨物保険の確認

CIFやCIPでは、売主が貨物保険を手配する場面があります。ただし、売主が保険を手配しているからといって、買主にとって十分な補償内容になっているとは限りません。

実務では、保険条件、保険金額、免責、戦争・ストライキリスク、保険証券の名義、保険証券の譲渡、事故時の請求方法を確認する必要があります。

特に、CIFでは売主が保険を手配していても、買主が期待する補償範囲と一致しない場合があります。水濡れ、破損、盗難、温度変化、固有の瑕疵、梱包不備、遅延損害など、貨物の性質によって必要な補償は異なります。

買主は、CIFやCIPだから安心と考えるのではなく、保険証券、保険金額、約款、保険期間、請求窓口、保険金請求権を確認する必要があります。

DAP・DDPと通関費用の確認

DAPやDDPでは、仕向地側の費用や通関責任が問題になりやすくなります。

DAPでは、売主が指定地までの輸送を手配しますが、輸入通関や関税・消費税の負担は買主側に残るのが通常です。買主が「指定地まで届くなら全部込み」と誤解していると、輸入通関費用、関税、消費税、検査費用、国内側の追加費用でトラブルになります。

DDPでは、売主が輸入通関や関税負担まで含めて大きな義務を負います。買主にとって分かりやすい条件に見えますが、売主が輸入国で輸入者になれるか、輸入許可を取得できるか、関税・消費税・VATを処理できるかが問題になります。

特に、食品、化学品、医療機器、電気用品、規制貨物では、売主が輸入国の規制や許認可に対応できないことがあります。この場合、DDPと記載していても、実務上は通関が止まり、保管料や返送費用が発生する可能性があります。

EXWの実務上の注意点

EXWは、売主の義務が最も軽い条件として理解されますが、輸出実務では注意が必要です。

EXWでは、買主が売主の施設などで貨物を引き取る形になります。しかし、買主が輸出国で輸出通関を行えるか、輸出者名義を使えるか、輸出規制に対応できるかが問題になります。

また、売主施設でのトラック積込みを誰が行うのか、積込み中の事故を誰が負担するのか、輸出通関に必要な書類を誰が作成するのかも確認が必要です。

EXWは一見簡単な条件に見えますが、実際には輸出通関、積込作業、輸出者名義、貨物保険で問題が起きやすい条件です。輸出者側が実務をよく理解しないままEXWを使うと、かえってトラブルが増えることがあります。

L/C取引とインコタームズの確認

L/C取引では、インコタームズだけでなく、Invoice、B/L、保険証券、船積期限、保険金額、保険条件が信用状条件と一致しているかを確認する必要があります。

例えば、CIF条件であるにもかかわらず、保険証券の条件、金額、通貨、保険開始時点がL/C条件と合っていない場合、ディスクレパンシーになることがあります。

また、FOBやCFR条件であっても、L/C上で保険書類が要求されている場合や、B/L上のFreight記載、On Board日、積出港、荷受人名義、Notify PartyがL/C条件と合わない場合があります。

フォワーダーや輸出者は、売買条件だけでなく、L/C条件、B/L条件、保険証券、Invoiceの記載を合わせて確認する必要があります。条件名だけ合っていても、書類が合っていなければ銀行決済で問題になります。

契約から事故対応までの段階別フロー

段階 確認する内容 インコタームズとの関係 問題がある場合の対応
売買契約締結前 条件名、版数、指定場所、貨物特性、輸送モード 危険移転、費用負担、通関義務の出発点になります。 条件名だけでなく、指定港・指定地・倉庫名まで明確にします。
見積・Booking前 輸送経路、CY・CFS搬入、国内配送、追加費用の範囲 FOB、FCA、DAP、DDPなどで費用負担の範囲が変わります。 見積に含む費用と別途請求費用を分けて説明します。
保険手配時 誰が保険を手配するか、保険始期、保険条件、保険金額 CIF・CIPでは売主、FOB・CFR・FCA・CPTでは買主側確認が中心になります。 無保険区間や補償不足があれば、追加付保や条件変更を検討します。
通関準備時 輸出者・輸入者名義、輸出入通関、他法令、関税・消費税負担 EXW、DAP、DDPでは通関主体の誤解が起きやすくなります。 輸入者になれる者、許認可対応者、税金負担者を事前に確認します。
船積書類作成時 Invoice、B/L、保険証券、Packing List、L/C条件 売買条件と船積書類が一致していないと決済や引渡しで問題になります。 銀行提出前、B/L発行前に記載不一致を修正します。
貨物事故発生時 事故区間、危険移転前後、保険手配者、請求主体、Notice期限 誰が危険を負担し、誰が保険請求や運送人請求を行うかを整理します。 写真、サーベイ、B/L、保険証券、搬入記録、時系列を早急に整理します。

事故対応とインコタームズの確認

貨物事故が発生した場合、インコタームズは、誰が危険を負担していたか、誰が保険を手配していたか、誰が運送人へ請求するかを確認するための重要な手掛かりになります。

ただし、インコタームズだけで事故対応の結論がすべて決まるわけではありません。貨物保険、B/L約款、運送人責任、事故発生区間、サーベイ結果、損害通知期限、出訴期限をあわせて確認する必要があります。

事故対応では、まず事故がどこで発生した可能性があるかを確認します。輸出国内陸、CY・CFS搬入後、本船積込み中、海上輸送中、輸入港、CFS、国内配送中など、発生区間によって関係者が変わります。

そのうえで、その時点で危険を負っていたのは売主か買主か、貨物保険を手配していたのは誰か、保険金請求権者は誰か、運送人へのClaim Noticeを誰が出すべきかを整理します。

具体例

CIF条件の輸入貨物が海上輸送中に損傷した場合

例えば、CIF条件で輸入した貨物が海上輸送中に損傷したとします。買主は「売主が運賃を負担しているから売主の責任」と考えることがあります。

しかし、CIFでは、売主が仕向港までの運賃と貨物保険を手配する一方で、危険は船積港で本船上に貨物が積み込まれた時点で買主へ移転します。

この場合、買主は売主が手配した貨物保険の内容を確認し、保険証券、保険条件、保険金額、事故通知先、保険金請求権を整理する必要があります。

同時に、B/L上の運送人への損害通知、サーベイ手配、Claim Letter、出訴期限、代位求償の可能性も確認します。CIFだから売主にすべて請求すればよい、という整理にはなりません。

DDP条件なのに輸入通関ができない場合

例えば、海外売主がDDP条件で日本の買主へ貨物を販売したものの、日本側で輸入者になれず、輸入申告や他法令確認が進まない場合があります。

DDPでは、売主が輸入通関や関税・消費税の負担まで行う前提になります。しかし、売主が日本で輸入者になれない、輸入規制に対応できない、納税や許認可に対応できない場合、実務上は通関が止まります。

この場合、買主は「DDPだから売主がすべてやるはず」と考え、売主は「物流会社が処理するはず」と考えることがあります。しかし、輸入者名義、通関書類、他法令手続、税金支払、D/O交換、配送手配が整わなければ貨物は搬出できません。

DDPを使う場合は、契約前に、売主が輸入国で輸入者になれるか、現地規制に対応できるか、税金処理ができるか、返品・廃棄・検査費用を誰が負担するかを確認する必要があります。

FOB条件のコンテナ貨物がCY搬入後に損傷した場合

例えば、FOB条件で輸出するコンテナ貨物が、輸出者の倉庫でバンニングされ、CYへ搬入された後、本船積込み前に損傷したとします。

この場合、売主は「CYへ搬入済みで、すでに運送人側の管理に入っている」と考えることがあります。一方、買主は「FOBなので本船積込み前は売主側のリスク」と考えることがあります。

さらに、買主側の貨物保険が本船積込み後を前提としている場合、CY搬入後から本船積込み前までの事故が保険の空白になる可能性があります。売主側も国内輸送保険や輸出側の保険を手配していなければ、誰の保険で対応するかが問題になります。

このようなトラブルを防ぐには、FOB条件を使う場合でも、貨物がどこで誰に引き渡され、どの時点から誰の危険負担になり、どの保険が有効になるのかを事前に確認する必要があります。

コンテナ輸送では、FCA条件を使うことで、CY搬入やCFS搬入を基準に実務と危険移転を合わせやすくなる場合があります。

DAP条件で輸入通関費用をめぐって争いになった場合

例えば、DAP条件で日本国内の納品先まで輸送する契約で、買主が「納品先までの条件だから輸入通関費用や関税も売主負担」と考えていたとします。

しかし、DAPでは、売主は指定地までの輸送を手配する一方で、輸入通関や関税・消費税の負担は買主側に残るのが通常です。

この場合、輸入通関費用、関税、消費税、検査費用、国内側の追加費用について、誰が負担するかで争いになります。

DAPを使う場合は、指定地までの輸送費に何が含まれているか、輸入通関費用や税金を誰が負担するか、通関遅延時の保管料や再配送費を誰が負担するかを事前に明確にする必要があります。

フォワーダーが確認すべきポイント

フォワーダーやNVOCCの立場では、売買条件を価格条件だけとして扱わないことが重要です。売買条件は、輸送手配、通関、B/L、保険、請求先、追加費用の説明に直接影響します。

特に、見積時点で条件が曖昧なまま進むと、事故時だけでなく、港湾費用、配送費用、通関費用、保険料、保管料、検査費用の請求でもトラブルになります。

実務上の確認チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
見積時 荷主・売主・買主 売買条件、版数、指定場所、費用に含む範囲 条件名だけでなく、指定地、含まれる費用、別途費用を明確にします。
Booking時 荷主・船会社・NVOCC・フォワーダー 輸送経路、CY・CFS搬入、本船積込日、B/L条件 FOBとFCAのずれ、保険始期、危険移転時点を確認します。
保険確認時 荷主・保険会社・保険代理店 保険手配者、保険始期、保険条件、保険金額、請求権者 無保険区間や補償不足があれば、追加付保や条件変更を検討します。
通関準備時 輸出者・輸入者・通関業者 輸出通関、輸入通関、他法令、輸入者名義、関税・消費税負担 DDP、DAP、EXWで通関主体が曖昧な場合は条件変更や役割分担を確認します。
L/C・書類確認時 輸出者・銀行・フォワーダー・保険会社 Invoice、B/L、保険証券、L/C条件、Freight表示 ディスクレパンシーを避けるため、船積前に記載を照合します。
追加費用発生時 荷主・売主・買主・通関業者・配送会社 保管料、検査費用、待機料、再配送費、港湾費用の負担者 見積条件、売買条件、発生原因を整理し、請求先を確認します。
貨物事故発生時 荷主・保険会社・サーベイヤー・運送人 事故区間、危険移転前後、保険期間内か、Claim Notice期限 写真、サーベイ、B/L、保険証券、搬入記録、時系列を整理します。
規制貨物の取扱時 輸入者・通関業者・荷主・専門機関 食品、化学品、医療機器、電気用品などの他法令対応 DDPで売主が対応できない場合は、輸入者変更や条件変更を検討します。

実務上の注意点

インコタームズは、売主と買主の費用負担や危険移転を整理するための重要なルールですが、実務上のすべての問題を自動的に解決するものではありません。

実際の輸送では、B/L、Sea Waybill、L/C、貨物保険、通関書類、フォワーダーの見積条件、船会社・NVOCCの約款、現地法令が関係します。

そのため、条件名だけを見て「FOBだからここまで」「CIFだから保険は問題ない」「DDPだから全部売主負担」と判断するのは危険です。

必ず、指定場所、危険移転、費用負担、通関主体、保険手配、輸送書類、追加費用、事故時対応を分けて確認する必要があります。

まとめ

インコタームズ・危険負担・費用分担の実務では、条件名だけで判断せず、危険移転、費用負担、通関義務、貨物保険、輸送手配を分けて確認することが重要です。

FOB、CIF、DAP、DDP、EXWなどは実務でよく使われますが、輸送モード、指定場所、通関主体、保険内容、B/L条件と合っていなければ、事故時や費用請求時にトラブルになります。

特にコンテナ輸送では、FOBとFCAの使い分け、CY・CFS搬入後の危険負担、保険の開始時点を確認することが重要です。

フォワーダーやNVOCCは、売買条件を輸送手配、B/L、通関、保険、費用請求、事故対応に結び付けて確認し、条件名だけで実務判断しないことが重要です。

同義語・別表記

  • インコタームズ実務
  • 危険負担
  • 費用分担
  • リスク移転
  • Risk Transfer
  • Cost Allocation
  • Incoterms Practice
  • 貿易条件確認
  • 建値確認

公式情報

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