C&I(Cost and Insurance)条件の貨物海上保険実務―FOB輸出の保険戦略とIncoterms® 2020との違い

Cargo Insurance under C&I (Cost and Insurance) Terms — Insurance Strategy for FOB Exporters and Differences from Incoterms® 2020

C&I(Cost and Insurance)条件の貨物海上保険実務―Incoterms® 2020との違い

C&I(Cost and Insurance)は、商品代金に貨物保険料を加え、主運賃については買主側に残す形で実務上使用されることがある取引条件です。ただし、C&IはICCが定めるIncoterms® 2020の正式な11条件には含まれていません。

そのため、C&Iを単に「CIFからFreightを除いたもの」と理解するだけでは不十分です。CIFからFreightという費用項目だけを取り除いても、CIFに定められた危険移転、運送契約、保険義務その他のIncoterms®上のルールが自動的にC&Iへ移植されるわけではありません。

一方、輸出者のリスク管理という観点では、C&Iには非常に大きな実務的価値があります。特にFOB輸出を行っている荷主にとって、買主が持つフレート交渉力や運送手配を維持したまま、貨物保険だけを輸出者自身の管理下へ戻すことができる点です。

FOBからCIFへ変更すると、輸出者は保険だけでなく主運送の手配とFreightも負担することになります。大量貨物を扱う海外buyerがshipping lineやglobal forwarderとの年間契約によって有利なFreightを持っている場合、日本のsellerが同じFreightを取得できるとは限りません。この差額は売価競争力へ直接影響するため、FOBからCIFへの変更が合理的であっても、商談上は容易に変更できない場合があります。

これに対してC&Iでは、主運送をbuyer側へ残したまま、sellerが貨物海上保険だけを手配する設計が可能です。通常貨物では保険料がFOB価額に対して1%未満となるケースも多く、Freight全体を価格へ加える場合に比べると価格への影響を小さくできることがあります。

したがって、C&Iの重要性は単なる「Cost+Insurance」という価格計算にありません。輸出者が自ら貨物保険を選択し、保険期間、補償条件、事故対応及び損害回収を自社の管理下へ置くための実務的な保険戦略として考えることが重要です。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他記事・個別確認事項
C&Iの位置付け Incoterms® 2020の正式条件ではないC&Iを実務で使用する場合の考え方を整理します。 Incoterms® 2020の11条件そのものは各条件の記事で確認します。
FOBからC&Iへの変更 Freightをbuyer側へ残しながら、sellerが保険だけを手配する実務メリットを扱います。 売買契約上の変更にはbuyerとの合意が必要です。
CIFとの違い Freightまでseller側へ移すCIFと、Freightをbuyer側に残せるC&Iの経済的な違いを扱います。 正式なCIFの義務はIncoterms® 2020に従います。
輸出者自身の保険 sellerが自ら外航貨物海上保険を手配し、船積前から仕向地まで一貫した補償を確保する方法を扱います。 具体的な引受条件は保険会社・取扱保険代理店へ確認します。
輸出FOB保険との関係 C&Iで適切な外航貨物海上保険を仕出地から付保することにより、別建ての輸出FOB保険を不要にできる保険設計を扱います。 既存の輸出FOB保険を解約・変更する場合は実際の保険契約を確認します。
地震・巨大災害 阪神・淡路大震災の事例から、船積前区間の保険を誰が管理するかの重要性を整理します。 現行保険での地震担保は実際の保険条件を確認します。
保険料と売価 FOBからCIFへ変更する場合のFreight負担と、C&Iへ変更する場合の保険料負担を比較します。 具体的な保険料率は貨物、航路、補償条件、事故歴等によって異なります。
危険移転 C&Iには標準的な危険移転ルールがないため、売買契約で明確化する方法を扱います。 適用法・契約解釈が争点になる場合は専門家へ確認します。
保険金請求 sellerとbuyerの双方が輸送区間に応じて適切に保険を利用できる契約・証券設計を扱います。 具体的な保険金請求は貨物海上保険の記事群で扱います。
L/C取引 C&Iと信用状上のInsurance Policy・Insurance Certificateの関係を扱います。 具体的なL/C条件は個別信用状を確認します。

C&Iの本質は「FreightではなくInsuranceだけをsellerへ戻す」ことにある

FOB輸出をCIFへ変更すれば、sellerが貨物保険を管理できるようになります。しかし、同時に主運送の手配とFreightもseller側へ移ります。

ここが実務上の最大の障害になることがあります。

海上運賃や航空運賃は、単純な公開価格だけで決まるものではありません。年間取扱量、航路別物量、carrierとの契約、global tender、space commitment、季節変動、各種surchargeその他の条件によって大きく変わります。

海外buyerが世界各国から大量に貨物を購入している場合、そのbuyer又は指定forwarderが持つFreightは、日本のsellerが単独で取得できるFreightより有利である場合があります。

この状態でFOBからCIFへ切り替えると、sellerは自らFreightを調達し、それをCIF価格へ組み込まなければなりません。結果として商品そのものの競争力とは無関係な物流費差によって、sellerのCIF価格が高くなる可能性があります。

C&Iはこの問題を切り離します。

項目 FOB C&Iとして設計する場合 CIF 輸出者から見た意味
商品価格 seller seller seller 基本部分は同じです。
主運送手配 buyer側 buyer側に残す設計が可能 seller C&Iならbuyerの物流網を維持できます。
主運賃 buyer側 buyer側・Freight Collect等 sellerが負担し売価へ反映 C&IではsellerがFreight競争力を持たなくても導入できます。
貨物保険 Incoterms上sellerの手配義務なし sellerが手配するよう個別合意 sellerに手配義務 C&Iでは保険だけをseller管理へ戻せます。
保険料の売価への影響 原則として含めない 保険料を追加 保険料とFreightを追加 C&Iの方が価格変更幅を小さくできる場合があります。
保険会社の選択 buyer側保険に依存する部分が大きい sellerが選択可能 sellerが選択 事故対応をseller側で管理できます。
船積前のsellerリスク seller自身で別途対策が必要 外航貨物海上保険へ一体化する設計が可能 外航貨物海上保険へ一体化可能 C&Iの大きなリスク管理上の利点です。

FOBからCIFへ変更しにくい最大の理由はFreightである

保険の観点だけで考えれば、輸出者が保険を手配するCIFやCIPは管理しやすい条件です。しかし営業部門に「FOBをCIFへ変更した方が安全です」と提案しても、実際にはFreightの問題で止まることがあります。

例えばbuyerが年間数千本のcontainerを世界規模で契約しているのに対し、日本のsellerの出荷量が年間数十本であれば、同じ航路でもFreight条件が同一とは限りません。

sellerが割高なFreightをCIF価格へ加えれば、buyerから見れば商品の実質値上げになります。buyerとしても自社の物流契約を失うため、CIFへの変更を拒否する合理的な理由があります。

C&Iであれば、buyerには次のように説明できます。

  • 現在使用しているshipping line又はforwarderを変更する必要はない。
  • 現在のbuyer側Freight contractを維持できる。
  • Freight Collect等の運賃構造も原則として維持できる。
  • 変更するのは貨物保険の手配主体だけである。
  • sellerが保険料を商品価格へ加える。
  • 事故時の貨物保険をseller側で管理する。

つまり、C&Iは物流条件全体を変更するのではなく、保険だけを切り出して売主側へ移すことができるため、FOBからCIFへ全面変更するより導入しやすい場合があります。

保険料はFreightに比べて価格交渉上の障壁が小さいことが多い

貨物海上保険の保険料率は一律ではありません。貨物の種類、包装、航路、仕向国、輸送方法、保険条件、保険金額、年間輸送額、過去の事故率その他の引受条件によって決まります。

したがって「C&Iなら保険料は必ずFOB価額の1%未満」とすることはできません。

しかし、通常の一般貨物について荷主が年間包括契約等で安定した保険条件を取得できる場合、実務上の保険料がFOB価額の1%未満に収まるケースは少なくありません。その場合、Freight全体をsellerへ移すCIF化と比較すると、buyerとの価格交渉は大幅に行いやすくなります。

保険料の価格影響を具体的に考える

次は、保険料率を説明するための単純な計算例です。実際の料率ではなく、C&Iへ切り替えた場合の価格影響を見るための例です。

FOB価額 仮定する保険金額 仮定保険料率 保険料 FOB価額に対する比率
50,000,000円 55,000,000円 0.10% 55,000円 0.11%
50,000,000円 55,000,000円 0.20% 110,000円 0.22%
50,000,000円 55,000,000円 0.50% 275,000円 0.55%
50,000,000円 55,000,000円 0.80% 440,000円 0.88%

この例では保険金額を売価の110%と仮定していますが、C&Iには110%という標準ルールはありません。実際の保険金額は売買契約及び保険条件で決定します。

重要なのは、保険料率そのものではなく、商品価格に対する保険コストの比率を計算してから、FOBからC&Iへの変更可能性を検討することです。

数千万円の貨物に対し数万円から数十万円程度の保険料増加で広い輸送区間の保険をseller側へ確保できるのであれば、それは経営上十分検討する価値のあるリスク移転コストになり得ます。

C&I輸出の最大の利点―輸出者自身が貨物保険を管理できる

FOB輸出では、本船への積込みまでsellerが危険を負担する一方、その先の貨物海上保険はbuyer側が管理することが一般的です。

この構造には一つの弱点があります。

sellerが最もよく知っている自社製品について、保険会社、補償条件、保険金額、事故対応体制をbuyer側へ依存することになります。

C&Iとしてseller自身が貨物保険を手配すれば、少なくとも次の事項をseller側で管理できます。

管理項目 buyer側保険へ依存する場合 sellerがC&I保険を手配する場合 実務上の意味
保険会社 buyerが選択 sellerが選択 事故対応品質を事前に確認できます。
保険条件 sellerが把握できない場合がある sellerが設計 貨物特性に合わせた補償を選べます。
保険金額 buyerの判断 sellerが契約に基づき設定 不足保険を防止できます。
保険始期 buyer保険の条件次第 seller倉庫搬出等から設定可能 船積前区間も連続して保険できます。
保険終期 buyer側契約次第 buyer倉庫等まで合意可能 Door-to-Doorの連続補償を設計できます。
事故通知 buyer経由になる場合がある sellerが自ら保険会社等へ連絡可能 初動を早められます。
survey buyer又は海外保険会社主導 seller側保険会社と調整可能 証拠保全を管理しやすくなります。
保険金請求 海外buyer側処理へ依存 契約・証券設計によりsellerからも管理可能 損害回収の進捗を把握しやすくなります。
代位求償 buyer側保険者の判断 seller側保険者と連携可能 運送人等への求償資料を早期に確保できます。

「sellerが保険を持つ」ことと「sellerが全区間の危険を負う」ことは別である

C&Iを理解するうえで、ここは非常に重要です。

sellerが仕向地まで貨物海上保険を手配したからといって、売買契約上sellerが仕向地まで貨物の危険を負担する必要はありません。

CIFでも、sellerは仕向港までFreightとInsuranceを負担しますが、Incoterms® 2020上の危険は積地港で貨物が本船上に置かれた時点でbuyerへ移ります。

つまり、危険移転地点と保険終期は一致しなくてもよいということです。

sellerは危険移転後のbuyerの利益のためにも保険を用意できます。

C&Iでも同じ考え方を利用できますが、C&I自体には標準ルールがないため、誰の利益のために、どの区間を、どの条件で保険するのかを契約及び保険証券で明確にします。

適切なC&Iなら輸出FOB保険を別建てにしない設計ができる

FOB輸出のsellerにとって問題になるのは、seller倉庫から本船積込みまでの区間です。

この区間で貨物が滅失又は損傷すれば、FOBの危険移転前であるためseller自身の損失となる可能性があります。

そのため従来は、外航貨物海上保険とは別に輸出FOB保険等で船積前区間を補完する方法が使用されてきました。

しかしC&Iとしてsellerが自ら外航貨物海上保険を手配し、その保険期間をsellerの倉庫・工場等から開始させ、buyer側の合意された仕向地まで継続させれば、船積前と船積後を一つの貨物海上保険で連続的に管理することができます。

このような保険設計が適切に行われている場合、船積前だけを対象とする輸出FOB保険を別途重ねて付保する必要をなくすことができます。

ただし、「C&I」とInvoiceに書くだけで輸出FOB保険が不要になるわけではありません。

実際の貨物海上保険が次の条件を満たしているか確認する必要があります。

  • seller倉庫・工場等の適切な仕出地から保険が開始すること。
  • 国内集荷区間が保険期間へ入っていること。
  • CFS・CY・航空貨物ターミナル等での船積前滞留が必要な範囲で保険期間へ入っていること。
  • 本船・航空機その他の主輸送区間が保険されること。
  • 積替えその他予定される輸送形態が保険条件へ適合すること。
  • buyer側の合意された仕向地まで必要な保険が継続すること。
  • 地震等を含め、必要とする危険が実際の保険条件で担保されること。
  • 売買上の危険移転後にはbuyerその他の被保険利益を有する者が保険を利用できること。

阪神・淡路大震災が示した船積前リスク

1995年1月17日の阪神・淡路大震災は、輸出貨物について「本船へ積む前だからまだ大きな事故は起きない」という考えが危険であることを示した代表的な事例です。

阪神・淡路大震災に関する保険研究では、輸出FOB保険とAll Risks条件の外航貨物海上保険との地震損害に対する取扱いの差が指摘されています。

当時の調査研究では、FOB・C&F条件で輸出する荷主の中には、工場・倉庫から輸出本船までの区間について輸出FOB保険を付保していた企業がありました。

しかし、その輸出FOB保険では地震が免責となっており、地震特約を付けていなかった輸出者は地震による貨物損害を保険から回収できませんでした。

一方、CIF条件でAll Risksによる外航貨物海上保険を適切に付保していた輸出者については、陸上部分で発生した地震による貨物損害を回収できたことが研究資料で報告されています。

ここから得るべき教訓は、「FOBが悪くCIFなら必ず安全」という単純なものではありません。

重要なのは、船積前を含むsellerの貨物リスクを、地震を含め必要な危険が担保された保険で連続的にカバーしていたかという点です。

CIFではsellerが貨物海上保険を手配するため、この連続補償を構築しやすくなります。

C&Iは、CIFへ変更するとFreightの問題が生じる荷主について、Freightはbuyerへ残しながら、保険についてはCIFと同様にsellerが主導するという実務的な方法になります。

阪神・淡路大震災の教訓を現在のC&Iへ置き換える

論点 FOB輸出で起こり得る問題 C&Iによる対応 確認すべき条件
seller倉庫から港まで sellerが危険を負うがbuyer保険へ依存できない可能性 sellerの外航貨物海上保険を仕出地から開始 保険始期
CY・CFSで船積待ち 本船積込み前の巨大災害リスク 外航貨物海上保険で連続補償 保険期間・保管条件
地震 使用する国内保険条件によっては補償されない可能性 地震を担保する貨物保険条件を選択 ICC条件・免責
本船積込み後 riskはbuyerへ移るがseller側保険はない seller手配保険をbuyer利益のため仕向地まで継続 被保険者・保険証券
事故対応 国内部分と外航部分で保険が分かれる 一つの保険契約で管理できる場合がある Open Policy・申告方法
求償 事故区間ごとに別保険者となる可能性 一つの保険者が全輸送を把握 代位求償資料

C&Iは「輸出者が巨大災害リスクを自分で管理する」ための選択肢である

地震、津波、高潮、台風、倉庫火災、コンテナターミナル事故等は、buyerが本船をBookingしているかsellerがBookingしているかに関係なく発生します。

しかし事故が発生した時にsellerが損害を回収できるかどうかは、事故前にどの保険を手配していたかで大きく変わります。

FOB条件を採用しているという理由だけで、「船積前は輸出FOB保険、船積後はbuyerの保険」と二つに分けなければならないわけではありません。

売買当事者が合意し、sellerが外航貨物海上保険を仕出地から手配するC&I型の仕組みにすれば、保険だけはseller側で一元管理できます。

この意味でC&Iは、販売条件そのものよりも、輸出企業のBCP及び貨物リスク管理の手段として評価することができます。

FOB→C&I→CIFは三段階で考えると分かりやすい

段階 主運送 保険 sellerの物流負担 導入難易度 主な目的
FOB buyer sellerの船積前保険とbuyer側保険を別管理する場合がある 小さい 現状 buyerの物流契約を最大限利用
C&I buyer sellerが仕出地から外航貨物海上保険を管理 保険管理のみ増加 比較的低い Freightを動かさず保険リスクだけsellerが管理
CIF seller seller 主運送と保険の双方を管理 高くなる場合がある sellerが物流と保険の双方を管理

この考え方では、C&IはFOBとCIFの単なる中間価格ではありません。

物流購買はbuyerに残し、リスクファイナンスだけsellerへ戻すという役割分担です。

C&Iが特に適する可能性が高い荷主

荷主の状況 C&Iを検討する理由 重点確認事項 注意点
FOB輸出比率が高い 船積前リスクをseller自身で管理できる 国内区間・CY/CFSの補償 危険移転を契約で定義します。
高額機械・精密機器を輸出 一事故の金額が大きい ICC(A)等、梱包、survey 保険条件は貨物特性に合わせます。
地震リスクのある港湾を利用 船積前の巨大災害を自社で保険管理 地震が実際に担保される条件か 名称だけで担保判断をしません。
buyerのFreightが非常に安い CIFへ変更するとseller価格が悪化する Freightをbuyerへ維持できるか C&Iの契約定義が必要です。
海外buyerの保険内容が把握できない 自社製品の補償内容をsellerが管理できる 二重保険の有無 buyer側保険との調整が必要です。
年間継続輸出が多い Open Policyで保険事務を標準化しやすい 申告漏れ防止 社内出荷データとの連携が重要です。
事故時の海外対応に不安がある 国内の保険会社・代理店を窓口にできる 海外survey network等 事故発生国での手続も確認します。

C&Iを使用しない方がよい場合もある

C&Iは万能ではありません。

次のような場合には、正式なIncoterms®条件と別途保険条項を組み合わせた方が明確です。

  • buyerがC&Iという非標準条件を受け入れない場合。
  • L/CやERPが正式なIncoterms®条件しか扱えない場合。
  • 危険移転を巡る契約上の曖昧さを極力排除したい場合。
  • コンテナ輸送についてFOBそのものの使用が適切でない場合。
  • buyerが既に包括保険を持ち、seller保険を加えると二重保険管理が複雑になる場合。
  • 相手国の保険規制等について個別確認が必要な場合。

このような場合は、例えばFCA等の正式なIncoterms® 2020条件を採用したうえで、「貨物保険はsellerが別途手配する」と売買契約へ追加する方法もあります。

これは実質的にはC&Iと同じ「Freightはbuyer、Insuranceはseller」という経済効果を持ちながら、危険移転について正式なIncoterms®ルールを利用する方法です。

特にコンテナ輸出では「C&Iという名称」より契約構造を優先する

コンテナ貨物では、貨物が本船へ積み込まれる前にCY又はCFSへ引き渡されるため、FOBの本船上での危険移転と実際の物流上の引渡しに時間差が生じます。

したがって、コンテナ輸出でC&Iを利用する場合には、「FOBからFreightを除いたもの」とだけ定義するのではなく、危険移転地点を具体的に合意します。

より標準化を重視する場合には、FCA+seller手配保険という方法も比較対象にします。

C&I価格の基本的な考え方

実務上の価格計算は、概念的には次のように考えることができます。

C&I価格 = 基礎となる商品価格 + 当事者が合意した貨物保険費用

主運賃をbuyer負担とするC&Iであれば、Freightはこの価格へ含めません。

ただし、これは価格計算上の説明であり、Incoterms®上の公式算式ではありません。

また、保険料の算定基礎となる保険金額は商品価格そのものとは限りません。110%等を採用する場合には、保険金額に保険料率を掛けた結果を実際のC&I価格へ反映します。

保険条件はCIFの最低条件をそのままコピーしない

Incoterms® 2020のCIFでは、原則としてInstitute Cargo Clauses (C)又はこれに類する最低水準の保険が要求されます。

しかしC&Iにはこのルールはありません。

したがって、C&Iでsellerが保険を手配するのであれば、「CIFに似ているからICC(C)でよい」と考える必要はありません。

機械、電子機器、精密機器、完成品その他については、貨物の性質及び輸送実態に応じてICC(A)等の広い条件を検討することができます。

特にC&Iを輸出者のリスク管理強化策として導入するのであれば、単に保険を付けるだけでなく、何を守りたいからどの条件を選ぶのかを決めることが重要です。

C&I保険設計で確認すべき項目

項目 確認内容 不十分な場合の問題 実務上の対応
仕出地 seller倉庫・工場等のどこから保険を開始するか 国内集荷区間が無保険になる 実際の出荷起点を指定します。
仕向地 港、空港、buyer倉庫等どこまで保険するか 最終配送前に補償が終了する 売買契約と輸送実態を合わせます。
保険条件 ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)等 想定事故が補償されない 貨物特性に応じて選択します。
地震 使用条件で地震損害が担保されるか 巨大災害時に回収不能となる 約款・特約を具体的に確認します。
戦争・ストライキ 追加危険をどこまで付保するか 標準貨物条件だけでは不足する場合がある 必要特約を確認します。
保険金額 Invoice価額の何%を付保するか 損害時の回収不足 売買契約で明記します。
保険通貨 USD、JPY等 売買代金との不一致 Invoiceとの整合を確認します。
Open Policy 年間包括予定契約を利用するか 個別付保漏れ 継続輸出では包括契約を検討します。
Booking情報 buyer手配船便等をsellerへ伝える方法 保険申告ができない buyerの情報提供義務を決めます。
経路変更 transshipment・destination変更時の通知 保険契約との不一致 変更通知フローを決めます。
Insurance Certificate buyerが事故時に利用できるか 危険移転後の請求が滞る 証券・証明書の権利関係を確認します。

buyerがFreightを持つからこそ情報連携が必要になる

C&Iではbuyerがmain carriageを手配し、sellerがInsuranceを手配するという分業が生じます。

このためbuyerからsellerへ、少なくとも次の情報を適時提供する仕組みが必要です。

  • shipping line又はairline
  • Booking number
  • 本船名・便名
  • 積地
  • 仕向地
  • 予定出港日・出発日
  • transshipmentの有無
  • 最終仕向地
  • 輸送経路の重要な変更

「Freightはbuyerだからsellerは輸送情報を知らなくてもよい」と考えると、Insuranceをsellerが正しく手配できなくなります。

Open Policyを利用するとC&Iは運用しやすくなる

継続的に輸出を行う荷主では、一件ごとに保険契約を締結するより、Open Policy等の包括的な仕組みを利用できる場合があります。

C&Iへ移行する荷主については、営業担当者が案件ごとに保険加入を判断するのではなく、対象となる輸出を社内システム又は出荷データから保険申告へ接続する方が事故防止につながります。

特に重要なのは「保険を付けるかどうか」を現場判断にしないことです。

高額貨物がたまたま無保険で出荷される事故を防ぐため、C&I対象貨物は原則として包括契約の申告対象へ自動的に組み込む運用が望まれます。

C&Iを契約へ記載する場合は危険移転を別途明示する

C&IはIncoterms®ではないため、単に次のように書くことは避けます。

C&I Singapore

これだけでは、Singaporeが保険終期なのか価格基準地点なのか、危険移転地点なのか判断できません。

実務上は、C&Iを価格上の名称として使用しながら、危険移転について正式なIncoterms®条件又は独自条項を別途指定する方法があります。

C&I契約記載の考え方

例えば、buyerがOcean Freightを手配し、sellerが保険のみを手配する場合、契約上は次の要素を分けて記載します。

契約事項 記載すべき内容 目的
価格 商品代金+seller手配保険料 C&I価格の意味を明確化
主運送 buyerが手配・負担 CIFとの違いを明確化
危険移転 FOB、FCAその他合意した地点・条件 C&Iの最大の曖昧さを除去
保険 sellerが手配 手配主体を確定
保険区間 seller warehouseからbuyer warehouse等 船積前を含めた補償を確保
保険条件 ICC(A)等 補償水準を確定
保険金額 Invoice valueの110%等 付保価額を確定
Booking情報 buyerがsellerへ提供 sellerによる保険申告を可能にする
保険書類 sellerからbuyerへ交付 危険移転後の保険金請求を可能にする

コンテナ輸出なら「FCA+seller手配保険」も比較する

C&Iの目的が「buyerのFreightを残し、sellerがInsuranceだけを持つこと」であれば、必ずしもC&Iという名称にこだわる必要はありません。

例えばコンテナ輸出では、売買条件をFCAとして危険移転をIncoterms® 2020で明確にし、そのうえでsellerがbuyerの利益のためにも仕向地まで貨物保険を手配するという独自のInsurance Clauseを追加する方法があります。

この方法であれば、C&Iの経済的メリットを維持しながら、危険移転についてIncoterms®の正式ルールを利用できます。

FOB・FOB+輸出FOB保険・C&I・CIF・CIPの比較

方式 主運送手配 seller側保険 船積前保険 Freight競争力 保険管理 主な注意点
FOBのみ buyer 別途必要性を検討 不十分となる可能性 buyerの契約を利用 分断されやすい seller危険区間の保険を確認
FOB+輸出FOB保険 buyer 船積前のみ別建て あり buyerの契約を利用 国内と外航で分かれる 地震等の担保条件を確認
C&I buyerに残せる sellerが外航貨物海上保険を手配 同一保険へ組込み可能 buyerの契約を利用可能 sellerで一元化可能 非標準条件なので契約定義が必須
CIF seller seller 保険設計により対応可能 sellerのFreight調達力による sellerで管理 海上・内陸水路向け正式条件
CIP seller seller 保険設計により対応 sellerのFreight調達力による sellerで管理 multimodal・containerとの親和性が高い

C&I導入の判断プロセス

  1. 現在FOBで輸出している貨物の年間FOB価額を確認する。
  2. sellerが危険を負う船積前区間を確認する。
  3. 現在その区間にどの保険が付いているか確認する。
  4. 輸出FOB保険等の地震・津波その他の補償内容を確認する。
  5. buyer側の外航貨物海上保険へsellerが依存している区間を確認する。
  6. sellerがWarehouse-to-Warehouse型の外航貨物海上保険を手配した場合の保険料を取得する。
  7. 年間保険料を年間FOB売上額で割り、価格への影響率を計算する。
  8. FOBからCIFへ変更した場合のseller側Freightとの差額も試算する。
  9. CIF化とC&I化の価格影響を比較する。
  10. buyerへ「Freightは変更せず、Insuranceだけsellerへ変更する」案を提示する。
  11. 危険移転地点、保険区間、保険条件、保険金額を契約化する。
  12. Open Policy等と輸出データを接続し、付保漏れを防止する。

経営判断では「保険料」ではなく「最大損失額」と比較する

荷主がC&Iへの変更を検討する際、「年間保険料がいくら増えるか」だけを見ると判断を誤ることがあります。

比較すべきなのは、保険料と一事故最大損失額です。

例えば年間保険料が数百万円増えるとしても、一回の船積みで数千万円又は数億円の貨物がCY、CFS又は国内輸送中に巨大災害へ遭う可能性があるのであれば、その保険料は単なる物流コストではなく財務上のリスク移転費用です。

阪神・淡路大震災の教訓は、発生確率が低いと考えられていた危険であっても、一度発生すれば船積前貨物に巨大な損害が集中し得ることです。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
C&IはIncoterms®の正式条件である Incoterms® 2020の11条件には含まれていません。 契約内容を独自に定義します。
C&IはCIFからFreightを消すだけでよい CIFの危険移転等が自動的に残るわけではありません。 危険移転を別途定義します。
FOBから保険をseller手配にするにはCIFへ変えるしかない Freightをbuyerへ残し、Insuranceだけsellerが手配する方法があります。 C&I又は正式条件+Insurance Clauseを検討します。
CIFへ変更した方が安全なら必ずCIFへ変更すべきである sellerのFreightがbuyerより高ければ商売上不利になる場合があります。 物流購買力も考慮します。
C&Iは保険料が高いから導入しにくい 通常貨物では商品価額に対する保険コストが小さいケースがあります。 実際の年間保険料率を試算します。
C&Iなら必ずFOB価額の1%未満で保険できる 保険料率は貨物・航路・事故歴等によって異なります。 1%を固定上限として扱いません。
C&Iにすれば自動的に輸出FOB保険が不要になる 外航貨物海上保険が船積前から適切に開始している必要があります。 保険期間を確認してから重複を整理します。
sellerが保険を付けるなら全区間sellerの危険である 保険区間と危険移転は別概念です。 売買契約と保険契約を分けて確認します。
阪神・淡路大震災ではCIFだったから保険金が出た CIFという名称だけでなく、地震を含む適切なAll Risks保険が付いていたことが重要です。 現在の実際の保険条件を確認します。
buyerが安いFreightを持つならsellerは何もできない Freightをbuyerへ残したままInsuranceだけsellerが管理できます。 C&Iの大きな実務的価値です。
buyerが保険を持っているならseller保険は不要である FOBの危険移転前はseller自身の利益を保護する必要があります。 buyer保険の開始時期・被保険利益を確認します。
事故後に運送人へ請求すれば保険はなくてもよい 運送人責任には免責・責任制限・挙証問題があります。 貨物保険と運送人責任を代替関係と考えません。

実務で問題になりやすいケース

ケース 主な問題 C&Iによる考え方 確認資料 対応
buyerが非常に安いOcean Freightを持っている CIF化するとseller価格が上昇 Freightをbuyerへ残しInsuranceのみsellerへ FOB価格、Freight比較、保険見積 C&Iの価格影響を提示します。
高額機械をFOB輸出 船積前のsellerリスクが大きい seller warehouseから外航貨物海上保険を開始 貨物価額、輸送区間、保険条件 別建てFOB保険との重複を整理します。
CYで地震損害 本船積込み前でsellerリスク 地震を担保する外航貨物保険で船積前から補償 Insurance Policy、Gate-in Record 事故通知と保険期間を確認します。
buyerの保険内容をsellerが知らない 製品に必要な補償があるか不明 seller自身の保険条件を設定 売買契約、保険証券 二重保険を避けるようbuyerと調整します。
buyerが途中で船会社を変更 seller保険申告と実輸送が不一致 buyerに変更通知義務を設定 Booking変更、保険申告 速やかに保険側へ通知します。
L/CがC&I表示 保険書類条件が不明確 L/Cで具体的なInsurance Certificate条件を確認 L/C、Certificate 付保前に書類条件を照合します。
sellerがOpen Policyを持つ FOB貨物だけ別保険管理 C&I対象へ変更し同じ外航保険へ統合 Open Policy、輸出一覧 申告システムを統一します。
buyerも貨物保険を継続していた 二重保険 どちらがどの利益・区間を保険するか整理 双方のPolicy 契約変更時にbuyerへ明確に通知します。

判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
現行FOB分析 営業、物流、経理 年間FOB売上、出荷件数、一輸送最大価額 最大損失額を可視化します。
船積前保険確認 保険会社、取扱保険代理店 現在の輸出FOB保険・国内保険の範囲 無保険区間を特定します。
地震担保確認 保険会社、取扱保険代理店 地震・噴火・津波等の扱い 必要な補償条件を検討します。
CIF試算 forwarder、shipping line、営業 sellerが取得できるFreight buyer側Freightとの価格差を算定します。
C&I試算 保険会社、取扱保険代理店 年間保険料・保険料率 FOB価額に対する比率を算定します。
buyer交渉 buyer Freightは現行維持、Insuranceのみ変更可能か C&I又は別Insurance Clauseを提示します。
危険移転設定 seller、buyer FOB、FCA又は独自の危険移転地点 契約へ明記します。
保険区間設定 保険会社、取扱保険代理店 seller warehouseから最終仕向地まで 無保険区間を解消します。
保険条件設定 seller、保険会社、取扱保険代理店 ICC(A)/(B)/(C)、追加危険 貨物特性へ合わせます。
Open Policy設定 保険会社、取扱保険代理店 申告方式、対象輸出 付保漏れ防止策を作ります。
Booking情報連携 buyer、prime freight forwarder 船名、航路、仕向地、変更情報 情報提供期限を決めます。
Insurance Certificate seller、buyer、保険会社等 buyerが事故時に利用可能か 名義・権利関係を整えます。
L/C確認 銀行担当者、seller、buyer 保険書類条件 書類不一致を事前に解消します。
事故発生時 保険会社、取扱保険代理店、関係運送人 事故地点、危険移転、保険区間 責任確定を待たず事故通知します。

保険会社・保険代理店・海事弁護士等へ相談すべき場面

場面 主な相談先 確認事項 相談を急ぐ理由
FOBからC&Iへの移行を検討する 保険会社、取扱保険代理店 年間輸送額、最大輸送額、保険条件、保険料 buyer交渉前に実際のコストを把握する必要があります。
輸出FOB保険を廃止・統合したい 保険会社、取扱保険代理店 外航貨物海上保険の始期、重複、空白区間 誤って無保険区間を作らないためです。
地震・津波リスクを含めて設計したい 保険会社、取扱保険代理店 適用約款、免責、追加特約 名称だけでは補償可否を判断できません。
C&Iの危険移転条項を作成する 必要に応じ国際取引・海事に詳しい弁護士 売買契約、適用法、引渡地点 C&Iに標準ルールがないためです。
FOB・FCA等と保険特約を組み合わせる 保険会社、取扱保険代理店、必要に応じ弁護士 危険移転と被保険利益 売買契約と保険契約の不整合を防ぐ必要があります。
高額事故が船積前に発生した 保険会社、取扱保険代理店 保険始期、事故原因、survey、求償 現場証拠が急速に失われる可能性があります。
buyerと保険金の帰属について争いがある 保険会社、必要に応じ海事弁護士 危険移転、被保険利益、Policy・Certificate C&Iでは契約設計が直接問題になります。

具体例1:buyerのFreightが安いためFOBからCIFへ変更できない場合

日本のメーカーがFOBで年間100本のcontainerを海外buyerへ輸出しています。buyerは世界各国から年間数千本を輸入しており、global forwarderとの年間契約によって非常に競争力のあるOcean Freightを取得しています。

メーカーは船積前リスクを問題視しCIFへの変更を検討しましたが、日本側で取得したFreightをCIF価格へ加えるとbuyerの総調達額が上昇するため、buyerはCIFへの変更を拒否しました。

この場合、CIFかFOBかという二択にする必要はありません。

Freightは従来どおりbuyer契約とし、sellerが自社の外航貨物海上保険をWarehouse-to-Warehouseで手配するC&I型へ変更する方法があります。

buyerの物流購買メリットを維持しながら、sellerは船積前を含む貨物保険を自社管理へ移せます。

具体例2:FOB価額5,000万円の機械輸出で保険料が価格へ与える影響

FOB価額5,000万円の機械について、仮に保険金額を5,500万円、保険料率を0.20%とすると、保険料は11万円です。

この例ではFOB価額に対する追加コストは約0.22%です。

buyerが年間契約で取得しているOcean Freightをsellerが再取得するために数十万円又はそれ以上の差額が発生するのであれば、CIF化よりもC&I化の方が商談上受け入れられやすい可能性があります。

もちろん実際の保険料率は個別見積が必要ですが、「保険料が高そうだからC&Iは無理」と判断する前に、FOB価額に対する実際の比率を計算することが重要です。

具体例3:阪神・淡路大震災型の事故を現在の輸出へ当てはめる場合

高額輸出貨物がsellerの工場から神戸地区のCYへ搬入され、本船積込みを待っている間に巨大地震が発生し、container及び貨物が損傷したとします。

FOBであれば、本船積込み前なのでseller側に危険が残っている可能性があります。

sellerが船積前の貨物について地震を担保しない保険しか持っていなければ、巨大な自己負担が発生する可能性があります。

C&Iとしてseller warehouseからbuyer側仕向地まで地震を含む適切な外航貨物海上保険を手配していれば、少なくとも「本船積込み前だから外航貨物海上保険が存在しない」という保険上の分断を避けることができます。

ここで重要なのはC&Iという名称ではありません。事故発生前から、seller自身が適切な保険契約を持っていることです。

具体例4:C&Iへ変更したため輸出FOB保険を統合できる場合

メーカーは従来、FOB輸出についてseller倉庫から本船積込みまで輸出FOB保険を付け、本船積込み後はbuyerの貨物保険に任せていました。

C&Iへ変更し、sellerのOpen Policyでseller warehouseからbuyer warehouseまでを連続して付保することになりました。

この場合、同じseller危険区間について輸出FOB保険と外航貨物海上保険を重ねる必要があるか確認します。

外航貨物海上保険がseller倉庫搬出から適切に開始し、必要な危険を担保していることを確認できれば、輸出FOB保険を別建てにせず一つの外航貨物海上保険へ統合できる可能性があります。

保険の本数を減らすこと自体が目的ではなく、補償の空白と不必要な重複をなくすことが目的です。

具体例5:buyerが船便を変更した場合

C&I取引でbuyerがOcean Freightを負担し、自らBookingを行っていました。sellerはbuyerから最初のBooking情報を受け取り貨物保険を申告しました。

その後buyerは別のshipping lineへBookingを変更しましたが、sellerには通知しませんでした。

C&Iではこのような情報分断が弱点になります。

sellerがInsuranceを持ち、buyerがFreightを持つのであれば、buyerには運送情報の提供義務、重要変更の通知義務を設定しておく必要があります。

C&Iは保険だけをsellerへ戻す優れた方法になり得ますが、それを成立させるためにはInsuranceとFreightの情報を接続する仕組みが必要です。

具体例6:コンテナ輸出でC&I名称を使わずFCA+保険条項とする場合

buyerは「C&Iは自社ERPに登録できない」として、非標準条件の使用を拒否しました。

そこで売買条件自体はFCAとしてIncoterms® 2020による引渡し・危険移転を明確にし、別条項でsellerがseller warehouseからbuyer warehouseまでICC(A)相当の貨物保険を手配することを合意しました。

主運送は従来どおりbuyer手配です。

経済的にはC&Iとほぼ同じ「Cost+Insurance、Freightはbuyer」という役割分担を維持しながら、危険移転について正式なIncoterms®ルールを利用できます。

C&Iの目的は名称を守ることではなく、輸出者が保険を自ら管理することです。

まとめ

C&I(Cost and Insurance)はIncoterms® 2020の正式条件ではありません。しかし、日本の貿易・貨物保険実務では長く使用されてきた考え方であり、特にFOB輸出企業のリスク管理に大きな実務的価値があります。

FOBからCIFへ変更すればsellerが貨物保険を管理できますが、同時にFreightもseller側へ移ります。buyerが大量取扱によって有利なFreightを持つ場合、このFreight差がCIF化の大きな障害になります。

C&Iでは、buyerのFreightをそのまま維持し、Insuranceだけをsellerへ戻すことができます。

保険料率は貨物、航路、条件等によって異なりますが、通常貨物ではFOB価額に対する保険コストが1%未満となるケースも多く、Freight全体をseller価格へ加えるCIF化と比較すると導入のハードルを大幅に下げられる場合があります。

そしてC&Iの最大の価値は保険料の安さそのものではありません。

sellerが自社の貨物リスクを自ら保険すること、自社倉庫から船積前区間を含めて一貫した外航貨物海上保険を持つこと、そして巨大事故が発生した時に自社の保険会社・保険代理店と直接損害回収を進められることにあります。

阪神・淡路大震災では、輸出FOB保険で地震を担保していなかった輸出者が船積前貨物の地震損害を回収できなかった一方、CIF+All Risksで適切な外航貨物海上保険を付保していた輸出者は陸上部分の地震損害を回収できたことが報告されています。

この教訓は現在も変わりません。

貨物事故は本船へ積み込まれてから始まるわけではありません。工場出庫、国内配送、CFS、CY、航空貨物ターミナル、保管及び荷役の各段階にも重大なリスクがあります。

C&Iでsellerが適切なWarehouse-to-Warehouse型の外航貨物海上保険を手配すれば、船積前区間を同一保険へ組み込み、別建ての輸出FOB保険を必要としない保険設計も可能になります。

ただしC&Iは非標準条件です。そのため、危険移転、主運送、Freight、保険区間、保険条件、保険金額、buyerへのInsurance Certificate、Booking情報提供義務等を契約で明確にしなければなりません。

コンテナ輸出等でC&Iという名称自体が契約上扱いにくければ、FCAその他の正式なIncoterms®条件にsellerの保険手配義務を追加する方法でも同じ目的を実現できます。

したがって、FOB輸出企業が最初に検討すべき問いは「FOBをCIFへ変えられるか」だけではありません。

「Freightはbuyerに残したまま、Insuranceだけをseller自身の管理へ戻せないか」という問いです。

C&Iは、そのための実務上有力な選択肢です。

同義語・別表記

  • C&I
  • C & I
  • Cost and Insurance
  • Cost & Insurance
  • CNI

公式情報