輸出取引信用保険における出荷後リスク
出荷後リスクとは
出荷後リスクとは、輸出取引において、商品が保険上の「出荷」に該当する状態となった後、輸出者が輸出代金を回収できなくなるリスクをいいます。
英語では、Post-shipment Risk又はPost-shipment Credit Riskなどと表現されます。
出荷後リスクを理解するうえで重要なのは、単に「貨物を船へ積んだ後の未払い」と考えないことです。
輸出取引信用保険では、保険契約上の出荷がいつ成立したかによって、その事故が出荷前リスクに該当するのか、出荷後リスクに該当するのかが分かれる場合があります。
このため、倉庫搬出日、フォワーダーへの引渡日、CY・CFS又は航空貨物ターミナルへの搬入日、本船積込日、B/L・AWB発行日、Invoice発行日、買主への納品日を区別して確認する必要があります。
また、買主の与信限度額が減額又は解除された場合には、限度額変更の効力発生日より前に出荷が成立していたか、後に成立したかが保険責任の判断に影響する可能性があります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| 出荷後リスク | 保険上の出荷成立後から代金回収までの債権損失を扱います。 | 輸出取引信用保険全体の仕組みは「輸出取引信用保険とは」で扱います。 |
| 出荷前リスクとの境界 | 費用損失から債権損失へ切り替わる時点を扱います。 | 製造費、仕入費、特注品等の詳細は「出荷前リスクとは」で扱います。 |
| 保険上の出荷 | 輸出者又はその代理人の占有を離れた時点等の確認を扱います。 | 具体的な定義は適用される保険約款・特約で確認します。 |
| 海上貨物 | 倉庫搬出、CFS・CY搬入、本船積込、B/L発行の違いを扱います。 | 海上運送契約及びB/Lの詳細はB/L関連記事で扱います。 |
| 航空貨物 | フォワーダー・航空会社への引渡し、AWB発行等を扱います。 | AWBの法的性質及び航空運送人責任は航空貨物関連記事で扱います。 |
| 売買条件 | FOB・CIF等の危険移転時点と保険上の出荷時点の違いを扱います。 | インコタームズの詳細は貿易条件関連記事で扱います。 |
| 決済条件 | D/P、D/A、Open Account、L/Cにおける出荷後期間を扱います。 | 各決済方式の詳細な代金回収実務は個別記事で扱います。 |
| 与信限度額変更 | 限度額の減額・解除日と出荷日の前後関係を扱います。 | 与信限度額及び保険金算定の詳細は「輸出取引信用保険とは」で扱います。 |
| 信用危険・非常危険 | 出荷後に回収不能を生じさせる原因として簡潔に扱います。 | 危険の類型は「輸出取引信用保険とは」「非常危険とは」で扱います。 |
| 貨物海上保険 | 出荷後債権損失との基本的な違いだけを扱います。 | 貨物の滅失・損傷及び保険金請求は貨物海上保険の記事で扱います。 |
制度上の目的と記事の位置付け
輸出取引信用保険では、出荷前に発生する費用損失と、出荷後に発生する輸出代金債権の回収不能を区別する必要があります。
出荷前は、輸出者が製造費、仕入費、加工費等を負担していても、まだ貨物を買主へ向けて引き渡しておらず、輸出代金債権が確定していない場合があります。
これに対して、保険上の出荷が成立した後は、輸出者が貨物の支配を手放し、買主に対する代金債権を回収する段階へ移ります。
本記事は、信用危険・非常危険又は保険金算定の一般論ではなく、どの時点を境に出荷前リスクから出荷後リスクへ移るのかを判断するための記事です。
3記事の役割分担
| 記事 | 中心となる期間 | 中心となる損失 | 主な担当範囲 |
|---|---|---|---|
| 輸出取引信用保険とは | 保険契約全体 | 信用危険・非常危険による対象損失 | 与信限度額、縮小率、最高支払限度額、保険金算定等の総論 |
| 出荷前リスクとは | 輸出契約締結後から保険上の出荷成立前まで | 製造費、仕入費、加工費、特注品在庫等 | 出荷前の輸出不能及び費用損失 |
| 出荷後リスクとは | 保険上の出荷成立後から代金回収まで | 輸出代金債権の未回収 | 出荷成立時点、出荷日証明及び出荷後債権損失 |
出荷前リスクと出荷後リスクの境界
| 比較項目 | 出荷前リスク | 出荷後リスク | 境界判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 対象期間 | 契約締結後から保険上の出荷成立前まで | 保険上の出荷成立後から代金回収まで | 保険約款上の「出荷」が成立したか確認します。 |
| 主な損失 | 製造費、仕入費、加工費、転売困難品等 | 輸出代金債権の未回収 | 費用損失か債権損失かを区別します。 |
| 貨物の状態 | 輸出者の管理下にある場合が中心です。 | 買主への引渡しを目的として輸出者側の管理を離れています。 | 誰が貨物を占有・管理していたか確認します。 |
| 中心的な問題 | 貨物を出荷できなくなったこと | 出荷した貨物の代金を回収できないこと | 事故発生時点と出荷成立時点の前後を確認します。 |
| 主な証拠 | 製造記録、在庫記録、仕入記録、製造停止日 | 貨物引渡記録、B/L、AWB、搬入票、Invoice | 日付だけでなく実際の引渡しを確認します。 |
保険上の「出荷」とは
出荷後リスクにおける「出荷」は、日常用語としての発送、船積又は納品と完全に一致するとは限りません。
保険条件によっては、商品が買主へ引き渡される目的で、輸出者又はその代理人の占有を離れた時点が出荷として問題になることがあります。
したがって、輸出者の倉庫から搬出した日だけで出荷を確定できるとは限りません。
輸出者が手配した国内運送人、フォワーダー倉庫、梱包会社又は輸出前保管施設が、なお輸出者の代理人として貨物を管理している場合には、貨物が輸出者側の支配を離れたかどうかを確認する必要があります。
反対に、買主への引渡しを目的として運送人へ確定的に引き渡され、輸出者が自由に貨物を回収又は処分できない状態になっていれば、本船積込前でも保険上の出荷が問題となる場合があります。
最終的な判断は、適用される保険証券、約款、特約及び保険会社の取扱いに基づいて行います。
出荷に関係する複数の日付
| 日付・時点 | 主な意味 | 保険上の出荷との関係 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 倉庫搬出日 | 輸出者倉庫から貨物を搬出した日 | 輸出者側の代理人への移動にすぎない場合があります。 | 出庫記録、集荷伝票、運送指示書 |
| 国内運送人への引渡日 | 集荷車両へ貨物を引き渡した日 | 運送人が誰のために貨物を占有するか確認します。 | 送り状、受領書、運送契約 |
| フォワーダー倉庫搬入日 | 輸出前倉庫・混載施設へ搬入した日 | フォワーダーが輸出者の代理人として保管する場合があります。 | 搬入票、倉庫受領書、作業指示書 |
| CFS搬入日 | LCL貨物をCFSへ搬入した日 | 運送人側への引渡しが成立したか確認します。 | Dock Receipt、搬入票、House B/L情報 |
| CY搬入日 | コンテナをCYへ搬入した日 | 本船積込前でも運送人管理下に入っている場合があります。 | Equipment Interchange Receipt、搬入記録 |
| 本船積込日 | 貨物又はコンテナを本船へ積み込んだ日 | 海上貨物で出荷時点として確認されやすい日です。 | On Board B/L、船積記録 |
| B/L発行日 | B/Lが発行された日 | 実際の引渡日・本船積込日と一致しない場合があります。 | B/L表面、発行記録 |
| 航空会社への引渡日 | 航空運送人又は取扱代理店が貨物を受領した日 | 航空貨物では重要な出荷判定資料になります。 | Cargo Receipt、搬入記録、受付記録 |
| AWB発行日 | AWBが発行された日 | 貨物の実際の受領日と一致するか確認します。 | AWB、航空貨物受付記録 |
| Invoice発行日 | 輸出者が請求書を作成した日 | 出荷前に発行される場合があり、出荷日そのものではありません。 | Commercial Invoice、会計記録 |
| 買主納品日 | 買主又は最終納品先へ貨物を引き渡した日 | Door-to-Door取引では重要ですが、保険上の出荷はそれ以前の場合があります。 | Delivery Order、POD、受領書 |
| 支払期日 | 買主が代金を支払うべき日 | 出荷後リスクの終了・事故判断に関係しますが、出荷日ではありません。 | Invoice、売買契約、手形 |
出荷時点を判断する基本手順
- 適用される保険契約を確認する:保険証券、約款及び特約における出荷の定義を確認します。
- 貨物の移動経路を確認する:輸出者倉庫から買主への引渡しまでの各地点を整理します。
- 各関係者の立場を確認する:国内運送人、フォワーダー、倉庫会社及び運送人が誰の代理人として貨物を管理していたか確認します。
- 輸出者の処分可能性を確認する:輸出者が貨物を自由に回収、転売、行先変更又は出荷停止できたか確認します。
- 引渡しの目的を確認する:単なる輸出準備のための移動か、買主への引渡しを目的とした確定的な運送開始かを確認します。
- 複数の日付を照合する:搬出日、搬入日、本船積込日、B/L・AWB発行日及びInvoice発行日を比較します。
- 限度額変更日を照合する:与信限度額の減額・解除日と出荷成立時点の前後を確認します。
- 保険会社へ確認する:境界事例では、事故後ではなく可能な限り出荷前に取扱いを確認します。
海上貨物における出荷時点
海上貨物では、本船積込日が出荷時点として理解されやすい一方、保険上の出荷が常に本船積込時に限定されるとは限りません。
LCL貨物では、貨物がCFSへ搬入され、運送人又はNVOCCの管理下へ移った時点が問題になる場合があります。
FCL貨物では、輸出者又は梱包場所でコンテナへ積み込んだ日、コンテナをCYへ搬入した日、本船へ積み込んだ日のいずれが重要になるかを確認します。
B/Lの発行日は、貨物の受領日又は本船積込日と異なることがあります。
そのため、B/L発行日だけでなく、Received for Shipmentの記載、On Board Notation、CFS・CY搬入記録及び運送人の受領記録を照合します。
航空貨物における出荷時点
航空貨物では、航空会社又は航空貨物代理店への貨物引渡しが重要になります。
AWBはB/Lのような貨物引渡しを支配する有価証券ではないため、輸出者がAWB原本を保持して貨物引渡しを止める構造には通常なりません。
貨物が航空会社の管理下へ入り、仕向地へ輸送された後は、買主が代金を支払っていなくても貨物が引き渡される可能性があります。
このため、航空貨物のOpen Account又は後払い取引では、海上のD/P取引よりも早い段階で出荷後リスクが現実化することがあります。
| 確認項目 | 海上貨物 | 航空貨物 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 主な運送書類 | B/L、Sea Waybill | AWB | 書類の法的機能が異なります。 |
| 貨物引渡しの制御 | Original B/Lでは書類所持が貨物引渡しに関係します。 | AWB原本の所持だけで引渡しを止める構造ではありません。 | 決済条件と貨物引渡しを別に確認します。 |
| 重要な日付 | CFS・CY搬入日、本船積込日、B/L発行日 | 貨物受付日、AWB発行日、搭載日 | 実際の運送人受領日を確認します。 |
| 出荷後リスク | D/Pでは書類留保による一定の管理が可能です。 | 貨物が先行して買主へ到達しやすくなります。 | 買主信用と支払条件を厳格に管理します。 |
売買条件と保険上の出荷時点
インコタームズ上の危険移転時点と、輸出取引信用保険上の出荷成立時点は、同じになる場合もありますが、当然に一致するものではありません。
| 売買条件 | 売買上確認する時点 | 保険上確認する時点 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| EXW | 売主施設で買主へ引渡す時点 | 買主又はその運送人へ確定的に引き渡した時点 | 売主手配の積込み・国内輸送がある場合は実態を確認します。 |
| FCA | 指定場所で買主指定運送人へ引渡す時点 | 運送人への引渡しが保険上の出荷に該当するか確認します。 | 指定場所と受領記録を明確にします。 |
| FOB | 指定船積港で本船上へ積み込んだ時点 | 本船積込又はそれ以前の運送人引渡しが基準となるか確認します。 | 売買上の危険移転だけで保険責任を断定しません。 |
| CFR・CIF | 通常、本船積込時に買主へ危険が移転します。 | 保険契約上の出荷定義を別途確認します。 | 売主が運賃・保険を負担しても危険移転時点は別問題です。 |
| CPT・CIP | 最初の運送人へ引き渡した時点 | 運送人への引渡しが出荷成立と評価されやすい場面です。 | 第一運送人とフォワーダーの立場を確認します。 |
| DAP・DDP | 仕向地で買主の処分に委ねる時点 | 保険上の出荷は仕向地納品より前に成立する場合があります。 | 売買上の危険移転と信用保険上の出荷を混同しません。 |
決済条件と出荷後期間
| 決済条件 | 出荷後に残る主な期間 | 出荷時点で確認すること | 詳細を扱う記事 |
|---|---|---|---|
| Open Account | 出荷又は納品から支払期日・実入金まで | 未回収残高、支払サイト及び限度額残高 | Open Account関連記事 |
| D/A | 書類引渡し・手形引受後から満期支払まで | 手形期間、買主信用及び満期日 | D/A関連記事 |
| D/P | 出荷後から買主の支払・書類引取りまで | 支払拒絶時の貨物滞留・転売・返送 | D/P関連記事 |
| 期限付L/C | 適合呈示後から満期支払まで | 発行銀行、発行国、確認及びディスクレ | L/C関連記事 |
| 前払 | 前受済み部分については代金回収リスクが限定されます。 | 未収部分、返金義務及び追加費用 | 前払決済関連記事 |
信用危険・非常危険、長期不払い、損害防止軽減義務及び保険金算定の詳細は、「輸出取引信用保険とは」で確認します。
出荷日を証明する資料
| 資料 | 主に証明できること | 単独で判断しにくい点 | 併せて確認する資料 |
|---|---|---|---|
| 出庫記録 | 輸出者倉庫から搬出した日時 | 搬出先が輸出者側代理人か買主側運送人か不明な場合があります。 | 運送契約、集荷指示、受領書 |
| 国内運送送り状 | 集荷日、配送先、運送人 | 貨物の占有・処分権が誰にあるかまでは確定しません。 | 運送依頼者、契約条件 |
| 倉庫搬入票 | フォワーダー倉庫、CFS、CY等への搬入日 | 搬入先が輸出者の代理人か運送人側か確認が必要です。 | 倉庫契約、Booking、Dock Receipt |
| Dock Receipt | 貨物がターミナル・運送関係者へ引き渡された事実 | 保険上の出荷成立を単独で確定できるとは限りません。 | Booking、House B/L、搬入記録 |
| Equipment Interchange Receipt | コンテナのCY搬出入及び受渡し | コンテナ内貨物の引渡状況を別途確認する場合があります。 | Packing記録、CY搬入記録 |
| On Board B/L | 本船積込日 | B/L発行日と本船積込日が異なる場合があります。 | On Board Notation、船積記録 |
| Received for Shipment B/L | 運送人が貨物を受領したこと | まだ本船積込前の場合があります。 | On Board Notation、搬入記録 |
| AWB | 航空貨物の運送情報及び受付日 | 発行日と実際の貨物受領日が異なる場合があります。 | Cargo Receipt、搬入記録、搭載記録 |
| Commercial Invoice | 請求日、取引価額、支払条件 | 実際の貨物引渡しを証明する書類ではありません。 | B/L、AWB、出庫記録 |
| POD・受領書 | 仕向地での最終納品日 | 保険上の出荷はそれ以前に成立している場合があります。 | 運送書類、保険約款 |
与信限度額の減額・解除日との関係
買主の信用状態が悪化した場合、保険会社が与信限度額を減額又は解除することがあります。
この場合、通知書に記載された効力発生日と、保険上の出荷成立時点の前後関係が重要になります。
| 状況 | 出荷成立時点 | 検討される取扱い | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 限度額解除の効力発生前に出荷成立 | 解除日より前 | 従前の限度額が関係する可能性があります。 | 解除通知、貨物引渡記録、B/L・AWB |
| 効力発生日当日に出荷 | 時刻・取扱いが問題になる場合があります。 | 通知文言及び保険会社の取扱い確認が必要です。 | 時刻付き搬入記録、受領記録 |
| 解除日後に輸出者倉庫から搬出 | 解除後 | 新規出荷が保険責任外となる可能性があります。 | 出庫記録、集荷伝票、解除通知 |
| 解除前に倉庫搬出、解除後に本船積込 | どの段階で保険上の出荷が成立したかが問題になります。 | 単に本船積込日だけでは判断できません。 | 運送契約、搬入票、B/L、約款 |
| 解除前にInvoice発行、解除後に貨物引渡し | Invoice発行だけでは出荷成立とは限りません。 | 実際の貨物引渡し日を確認します。 | Invoice、出庫記録、運送人受領書 |
限度額の減額・解除通知を受けた場合は、営業部門だけでなく、物流、倉庫、貿易、経理及び保険担当へ直ちに共有し、未出荷貨物を停止できる体制が必要です。
出荷前か出荷後か迷いやすいケース
| ケース | 争点 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 輸出者倉庫からフォワーダー倉庫へ移動後に買主倒産 | フォワーダーが輸出者の代理人か運送人側か | 運送契約、倉庫契約、搬入票 | 輸出者が貨物を自由に回収できたか確認します。 | 出荷停止・貨物回収可能性を確認します。 |
| CFS搬入後、本船積込前に買主倒産 | CFS搬入時に出荷が成立していたか | Dock Receipt、Booking、House B/L | 運送人への引渡しと占有関係を確認します。 | 保険会社とフォワーダーへ直ちに確認します。 |
| CY搬入後、限度額解除通知を受領 | 解除前に出荷が成立していたか | CY搬入記録、解除通知、B/L | CY搬入時点の保険上の位置付けを確認します。 | 本船積込停止の可否も確認します。 |
| Invoice発行後、貨物が倉庫に残っている | 請求書発行だけで出荷成立するか | Invoice、在庫記録、出庫記録 | 貨物が輸出者の占有下にあるか確認します。 | 出荷前リスクとしての取扱いを確認します。 |
| 航空会社受付後、AWB発行前に買主倒産 | 航空会社への引渡し時に出荷が成立したか | Cargo Receipt、搬入記録、AWB | AWB発行日より実際の貨物受領日を重視します。 | 搭載停止・貨物返還の可否を確認します。 |
| DAP取引で国際輸送中に買主倒産 | 売買上の危険移転前でも保険上の出荷後か | 売買契約、運送記録、保険約款 | インコタームズと信用保険上の出荷を区別します。 | 運送停止・転売可能性を確認します。 |
| 本船積込後、B/L発行前に限度額解除 | B/L未発行でも出荷成立しているか | Mate’s Receipt、船積記録、B/L | 実際の本船積込日を確認します。 | 保険会社へ時系列を提示します。 |
| 買主指定運送人が輸出者倉庫で貨物を受領 | 倉庫受領時に買主への引渡しが成立したか | 受領書、FCA条件、運送指示 | 誰が運送人を指定し、誰のために占有したか確認します。 | 引渡時刻と限度額状況を記録します。 |
具体例1:フォワーダー倉庫搬入後の買主倒産
事実関係:輸出者Aは貨物を自社倉庫からフォワーダー倉庫へ搬入しました。貨物は輸出梱包と混載待ちの状態で、本船には積み込まれていませんでした。その翌日に海外買主Bが倒産しました。
判断軸:フォワーダー倉庫への搬入が、買主への引渡しを目的とした確定的な出荷であったのか、輸出者の代理人による輸出準備・保管にとどまっていたのかを確認します。
確認資料:倉庫契約、Booking、搬入票、貨物回収の可否及びフォワーダーへの指示権限を確認しました。
対応:Aは貨物の搬出・転売が可能かを確認し、保険会社へ出荷前・出荷後のいずれとして扱うかを照会しました。
結論:フォワーダー倉庫へ搬入した事実だけでは、保険上の出荷成立を確定できない場合があります。
具体例2:CY搬入日と限度額解除日の前後関係
事実関係:輸出者Cは7月10日にコンテナをCYへ搬入しました。保険会社は7月11日付で、買主Dに対する与信限度額を解除しました。本船積込日は7月13日でした。
判断軸:保険上の出荷がCY搬入時に成立していたのか、本船積込時に成立したのかを確認します。
確認資料:Equipment Interchange Receipt、Booking、B/L、限度額解除通知及び保険約款を照合しました。
対応:Cは単にB/L上のOn Board Dateだけで判断せず、CY搬入時の運送人への引渡し状況を保険会社へ説明しました。
結論:限度額変更の前後を判断する場合、物流上の複数の日付と保険上の出荷定義を照合する必要があります。
具体例3:航空会社受付後・AWB発行前の事故
事実関係:輸出者Eは航空貨物を7月20日の午前中に航空会社の貨物ターミナルへ搬入しました。AWBは同日夕方に発行されましたが、買主Fの倒産情報は正午に判明しました。
判断軸:AWB発行時ではなく、航空会社又は取扱代理店が貨物を確定的に受領した時点で出荷が成立していたかを確認します。
確認資料:Cargo Receipt、搬入時刻、AWB、搭載状況及び貨物返還可能性を確認しました。
対応:Eは航空会社へ搭載停止を依頼し、貨物を回収できるか確認するとともに、保険会社へ事故発生時刻を報告しました。
結論:航空貨物では、AWB発行日だけでなく、実際の貨物受付日時が重要になります。
具体例4:DAP取引での輸送途中の買主倒産
事実関係:輸出者GはDAP条件で買主H向けに貨物を出荷しました。売買上の危険は仕向地で引き渡すまでGに残る条件でしたが、国際輸送中にHが倒産しました。
判断軸:売買上の危険移転時点と、輸出取引信用保険上の出荷成立時点を分けて確認します。
確認資料:売買契約、運送人受領書、保険約款、貨物の現在地及び運送停止可能性を確認しました。
対応:Gは運送停止・貨物回収・転売の可能性を確認し、回収不能となる輸出代金債権の有無を整理しました。
結論:DAP・DDP等で売主が輸送中の危険を負担していても、信用保険上は既に出荷後となっている場合があります。
信用危険・非常危険との関係
保険上の出荷が成立した後、買主の倒産、支払不能又は長期不払いによって代金を回収できない場合は、信用危険による出荷後リスクが問題になります。
買主に支払意思や現地資金があっても、送金規制、外貨不足、戦争、政府措置又は銀行業務停止により送金できない場合は、非常危険による出荷後リスクが問題になります。
信用危険と非常危険の類型、長期不払いの待期間、損害防止軽減義務、与信限度額、縮小率及び期間中最高支払限度額の詳細は、「輸出取引信用保険とは」で確認します。
貨物海上保険との違い
| 比較項目 | 出荷前リスク | 出荷後リスク | 貨物海上保険 |
|---|---|---|---|
| 中心となる損失 | 出荷前の製造費・仕入費等 | 出荷後の輸出代金債権 | 輸送中の貨物の滅失・損傷 |
| 中心となる時点 | 保険上の出荷成立前 | 保険上の出荷成立後 | 貨物保険上の保険期間中 |
| 典型例 | 製造中の買主倒産、出荷禁止 | 出荷後の倒産、長期不払い、送金不能 | 破損、濡損、盗難、滅失 |
| 貨物が無事な場合 | 輸出不能による費用損失があり得ます。 | 代金未回収であれば損失があり得ます。 | 通常、物的損害がなければ請求対象になりません。 |
| 詳細記事 | 出荷前リスクとは | 出荷後リスクとは | 貨物海上保険関連記事 |
保険会社・専門家へ確認すべき場面
| 場面 | 主な確認先 | 確認事項 | 確認を急ぐ理由 |
|---|---|---|---|
| 保険約款上の出荷定義が不明 | 保険会社、保険代理店 | 占有離脱、運送人引渡し、船積等の基準 | 出荷前後の補償区分へ直接影響します。 |
| 限度額解除日前後に貨物が移動 | 保険会社、物流担当 | 効力発生日、搬出・搬入・船積日時 | 対象取引の保険責任に影響します。 |
| フォワーダーが誰の代理人か不明 | フォワーダー、保険会社、契約担当 | 運送契約、倉庫契約及び貨物処分権 | 占有を離れた時点を判断できません。 |
| 貨物回収・転売の可否が不明 | フォワーダー、船会社、現地代理店 | 運送停止、積戻し、転売及び書類状況 | 損害軽減の可能性に影響します。 |
| 契約解釈又は保険金支払を争う | 保険に詳しい弁護士、保険会社 | 証券、約款、代理関係、出荷時点及び証拠 | 請求期限及び法的権利に影響します。 |
よくある誤解
| よくある誤解 | 実務上の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 出荷後リスクは本船積込後だけをいう | 保険上の出荷が本船積込前に成立する場合があります。 | 運送人への引渡しと占有関係を確認します。 |
| B/L発行日が必ず出荷日になる | B/L発行日と貨物受領日・本船積込日は異なる場合があります。 | On Board Date、搬入日及び受領日を確認します。 |
| Invoice発行日が出荷日になる | Invoiceは出荷前に作成される場合があります。 | 実際の貨物引渡しを確認します。 |
| 倉庫から出せば必ず出荷後になる | 輸出者の代理人倉庫への移動にすぎない場合があります。 | 貨物の管理者と回収可能性を確認します。 |
| CY・CFS搬入前は必ず出荷前である | 買主指定運送人へ既に引き渡されている場合があります。 | 運送契約と貨物受領記録を確認します。 |
| インコタームズの危険移転時点と保険上の出荷は同じである | 売買上の危険移転と信用保険上の出荷定義は別です。 | 保険約款を独立して確認します。 |
| DAPでは仕向地納品まで出荷前である | 保険上は国際輸送開始時点で出荷後となる場合があります。 | 売買条件だけで判断しません。 |
| AWB発行前なら航空貨物は出荷前である | 航空会社が貨物を受領した時点が重要になる場合があります。 | Cargo Receiptと受付日時を確認します。 |
| 限度額解除前にInvoiceを発行すれば保険対象になる | Invoice発行ではなく保険上の出荷成立時点が問題になります。 | 貨物引渡し日と解除日を照合します。 |
| 貨物が輸送中なら貨物保険だけ確認すればよい | 貨物損害と代金回収不能は別のリスクです。 | 信用保険と貨物保険を分けて確認します。 |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険契約締結時 | 保険担当、保険会社、保険代理店 | 出荷の定義、責任開始時点及び必要証拠 | 曖昧な定義を出荷前に確認します。 |
| 売買契約締結時 | 営業、貿易、法務担当 | インコタームズ、納品場所及び危険移転 | 保険上の出荷との違いを整理します。 |
| 運送手配時 | 物流担当、フォワーダー | 集荷、倉庫、CFS・CY、運送人及び代理関係 | 各地点で誰が貨物を管理するか明確にします。 |
| 出荷前 | 与信管理、保険担当、物流担当 | 買主限度額、減額・解除通知及び出荷予定 | 限度額変更後の貨物を停止します。 |
| 倉庫搬出時 | 倉庫、国内運送人、物流担当 | 搬出日時、搬出先及び運送依頼者 | 出庫記録と受領書を保存します。 |
| CFS・CY搬入時 | フォワーダー、ターミナル | 搬入日時、受領者及び貨物回収可否 | 搬入票・EIR等を保存します。 |
| 本船積込時 | フォワーダー、船会社 | On Board Date、B/L記載及び積込記録 | B/L発行日と区別して記録します。 |
| 航空貨物受付時 | 航空貨物代理店、航空会社 | 受付日時、AWB発行日及び搭載状況 | Cargo Receiptを保存します。 |
| 買主信用悪化時 | 営業、与信管理、保険担当 | 貨物現在地、出荷成立、運送停止及び回収可能性 | 追加出荷・搭載・引渡しを停止します。 |
| 事故通知時 | 保険会社、保険代理店 | 出荷時点、限度額、事故発生日及び証拠 | 日付を時系列で整理して提出します。 |
| 紛争時 | 保険会社、弁護士、フォワーダー | 約款、運送契約、代理関係及び貨物処分権 | 請求期限前に専門家へ相談します。 |
まとめ
出荷後リスクとは、商品が保険上の出荷に該当する状態となった後、輸出者が輸出代金を回収できなくなるリスクです。
本記事で最も重要なのは、出荷後リスクを単なる「本船積込後の未払い」と理解しないことです。
保険上の出荷は、商品が買主へ引き渡される目的で輸出者又はその代理人の占有を離れた時点として判断される場合があります。
したがって、倉庫搬出日、国内運送人への引渡日、フォワーダー倉庫搬入日、CFS・CY搬入日、本船積込日、B/L発行日、航空会社受付日及びAWB発行日を区別する必要があります。
Invoice発行日は請求書の日付であり、買主への納品日は最終引渡しの日付です。いずれも保険上の出荷日と当然に一致するわけではありません。
また、FOB、CIF、DAP等の売買上の危険移転時点と、輸出取引信用保険上の出荷成立時点は別に確認する必要があります。
買主の与信限度額が減額又は解除された場合は、その効力発生日と、貨物が保険上の出荷に該当した時点の前後関係が重要になります。
出荷時点の判断には、出庫記録、運送送り状、搬入票、Dock Receipt、EIR、B/L、AWB、Cargo Receipt等を組み合わせて使用します。
信用危険・非常危険、長期不払い、損害防止軽減義務、与信限度額、縮小率及び保険金算定の詳細は、「輸出取引信用保険とは」で確認します。
製造費、仕入費、特注品在庫等の出荷前損失については、「出荷前リスクとは」で確認します。
出荷前後の境界が不明確な場合は、事故後に判断するのではなく、保険会社又は保険代理店へ事前に確認し、出荷日を証明する資料を保存しておくことが重要です。
