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海外への果物輸出

果物の輸出に係る一般的な流れとリスクについてシンガポールへの輸出を例に挙げて説明します。

<<シンガポールへの果物輸出>>

<販売先>

輸入者ですが、一般的には相当量を輸入しますので、問屋が主な輸入者となります。

シンガポールの場合は農産物を輸入する輸入業者は所轄官公庁であるSingapore Food Agencyより事前にライセンスを取得する必要があります。

そのため、輸入者=問屋または、レストラン等小売店を持つ会社や輸入専門会社が輸入のライセンスを保持しています。

【 外部リンク : Singapore Fruits & Vegetables Importers & Exporters Associationの会員メンバー





<輸出国における事前(輸入規制)準備>

(1)「植物輸入規定(Plant Importation Rules)」

輸入禁止扱いの病害虫、特定の国からの輸入禁止品目、輸出国の政府機関が発行した植物検疫証明書の添付が要求される条件付輸入品目、輸入検査規定等が含まれている規定です。

害虫の検疫規制  【 外部リンク : QUARANTINE PESTS



(2)「生鮮果実・野菜の輸入(再輸出)規定(Import and Transhipment of Fresh Fruits & Vegetable Rules)」



【Conditions to Import Fresh Fruits & Vegetablesの概要と参考和訳】

新鮮な果物と野菜の輸入条件

輸入品がSFAの条件を満たしている限り、どの国からでも新鮮な果物や野菜を輸入できます。 新鮮な果物と野菜とは、生の未加工の果物と野菜を指します。

加工食品としては、カット、皮むき、缶詰、冷凍等の加工を施した青果物を規制しています。



1.農産物が安全に食べられるようにする

植物の管理(新鮮な果物と野菜の輸入と積み替え)規則によれば、輸入する新鮮な果物と野菜には以下が含まれてはなりません:

禁止されている農薬、または食品規制の第9スケジュールで指定されている、またはFAO / WHOコーデックス共同委員会で推奨されている規定レベルを超える残留農薬または有毒化学物質のレベル。



2.植物検疫証明書を取得する

この条件は、南米熱帯およびメキシコの国からの貨物にのみ適用されます。

南米熱帯およびメキシコの国から輸入する各貨物には、輸入された農産物に南米葉枯病(SALB)が含まれていないか、SALBのない地域から供給または栽培されていることを証明する植物検疫証明書が添付されている必要があります。

この植物検疫証明書は、輸出国の所管官庁から入手できます。



3.ラベルが正確で完全であることを確認する

農産物のコンテナ(カートン、バスケットなど)に次のラベルが付いていることを確認する必要があります。

・製品の生産者の名前と住所

・製品説明

・輸出/梱包の日付





輸入果実に適用される規格基準

(a)輸入業者のライセンス取得

輸入業者のライセンス取得:生鮮果実または野菜を輸入する業者はシンガポール食品庁(SFA)から生鮮果実・野菜輸入・再輸出ライセンスを取得することが義務付けられています。

ライセンス申請先 : Singapore Food Agency

【外部リンク : Apply for a trader’s licence or register





(b)食品残留農薬等基準 

@設定基準以外の農薬については、FAO/WHO(国連食糧農業機関/世界保健機関)の残留農薬基準等を参考として準用されています。

【 外部リンク : FOOD WITH MAXIMUM AMOUNTS OF PESTICIDES





A食品販売法では、残留農薬以外に(A-1)化学防腐剤基準、(A-2)重金属含有量基準、(A-3)酸化防止剤基準なども規定しています。

【 外部リンク(A-1) : PERMITTED CLASS II CHEMICAL PRESERVATIVES IN SELECTED FOODS

【 外部リンク(A-2) : MAXIMUM AMOUNTS OF ARSENIC AND LEAD PERMITTED IN FOOD

【 外部リンク(A-3) : PERMITTED ANTI-OXIDANTS



(c)輸入表示規制

生鮮果実を輸入する際には、容器または梱包に以下の内容が明記されていなければなりません。

・生産業者名とその住所

・商品明細

・出荷及び輸出の日付など

【 外部リンク : Labelling Guidelines for Food Importers & Manufacturers



(d)前記に基づく輸入検査基準である。

【輸入食品の検査の概要と参考訳(Inspection of Imported Food) 】

一部の種類の食品輸入は、入国時に検査を必要とします。

貨物通関許可証(CCP)に記載されているSFA承認コードと承認メッセージは、輸入された貨物にSFAによる検査が必要かどうかを示します。

輸入業者は、CCPの条件付き承認メッセージを注意深く読み、示された要件を完全に遵守することをお勧めします。 条件付き承認メッセージに準拠していない輸入業者は、執行措置の対象となる場合があります。



検査用食品・食品

すべての食品の積荷は検査の対象となります。 一部のサンプルは、実験室分析のためにSFAによって取得される場合もあります。

場合によっては、委託品が「保留およびテスト」されることがあります。つまり、検査結果がリリースされ、サンプルがシンガポールの食品法に準拠していることが判明するまで、委託品は販売または流通できません。



検査に必要なもの

検査中に検査官に提示するために以下を準備します。

貨物通関許可証

関連文書、例えばインボイス等船積書類や衛生証明書(畜産物の場合)、検査証明書等

検査用食品の委託(冷凍生肉の場合、検査前に1カートンを表面解凍します)



輸入品が検査に不合格になった場合

SFAの要件を満たさない積荷は、シンガポールで販売または流通させることはできません。 そのような貨物の輸入者はそれらを廃棄または積戻しなければなりません。 放射性物質で汚染されていることが判明した貨物については、輸入者は貨物を積戻しまたは再輸出する必要があります。 積荷の現地での廃棄は許可されていません。

検査不合格の理由によっては、輸出元および/または輸出者がシンガポールへの輸出を停止される場合があります。 非準拠製品の輸入業者も、これらのソース/輸出業者からの輸入を停止される場合があります。

【 外部リンク : Singapore Food Agency





<輸入通関>

トレードネット・システムという電子情報処理システムを通じて、シップメント毎に輸入申告を行い、輸入通関を行います。通常、必要な書類が揃っている場合には、貨物がシンガポールに到着する前に事前申告することができ、シンガポール到着時には通関が完了しています。その他の関連法(上述)の検査が行われ、検査が合格の場合は消費税を支払い輸入が許可されて国内での販売が可能となります。

生鮮果実や野菜は「至急取扱貨物(time sensitive cargo)」として扱われ、輸入許可後に数時間以内に国内輸入業者の倉庫まで貨物を搬入することができるようになっています。



書類審査で輸入不許可となった場合は、貨物の入港後、廃棄または積戻し処分となります。

農産物の輸入申告に際して検査条件付きで許可が発行される場合は、貨物を指定された場所(通常、生鮮果実・野菜の場合は、Pasir Panjang Wholesale Centre:パシール・パンジャン青果物卸売センター)に搬入して、SFA から派遣された検査官により検査が行われ、不合格となれば廃棄・積戻し、あるいは一部選別して再検査が行われることとなります。

【外部リンク : シンガポール税関

【外部リンク : パシール・パンジャン青果物卸売センター



<ポイント>
仕向国における関連する法律(シンガポールの場合)「植物輸入規定(Plant Importation Rules)」や「生鮮果実・野菜の輸入(再輸出)規定(Import and Transhipment of Fresh Fruits & Vegetable Rules)」、食品販売法等に従って、輸出前に日本の検査機関にて証明書を取得していると仕向国での輸入許可がスムースに行えます。

<注意>
貨物海上保険では、生鮮食料品・畜産物に関しては、ICC(A)で引き受ける場合で、バクテリア等損害を保険期間中の海水、雨、淡水との接触、または冷凍機の異常状態、故障または停止に起因して発生したもの以外は免責となりますので、廃棄費用や積戻しの費用を補償する特別約款の準備も必要です。


【詳細リンク : Quarantine Clause





<輸出前の日本での準備>

(1)梱包作業

国際海上輸送に利用されている段ボールは、二重、三重構造になっているなど、強度の向上が図られており、輸出生鮮青果物では、高い湿度の影響で段ボールが濡れて潰れることがあり、長期の海上輸送に耐えなければならないこと、仕向国で荷扱いを粗雑にされる可能性があることなどから、損傷に強い梱包を選定することが非常に重要です。



(2)予冷

収穫した果物は早急に冷却し、その品温を保持できるような保管場所及びコンテナ詰めを行う倉庫(または搬入場所)までの冷蔵トラックによる輸送が重要です



<ポイント>
国際輸送に耐えられる「強度の段ボール利用」と「貨物の予冷」を行う。

<注意>
外箱カートン(段ボール)の強度が足りなく貨物の潰れが発生した場合は、梱包不備により貨物海上保険の免責に該当する場合がありますので、ご注意ください。






<国際輸送>

(1) 海上輸送を利用する場合

-@.使用コンテナ

冷凍・冷蔵コンテナ(refrigerator container :通称”リーファーコンテナ”)を利用します。温度設定の範囲は一般的なコンテナでマイナス30度からプラス30度の範囲で0.1度単位の温度設定が出来ます。



コンテナが手配されたら下記をまず確認します。充足されていない場合は、コンテナの交換を申し入れます。

(i)前荷によるコンテナ内部の匂いと汚れ*

(ii)ベンチレーション(通風孔)の開閉の可否

(iii)コンテナ内外部の天井・側壁の損傷や穴の有無

(iv)コンテナドアのパッキンの劣化状態(外気侵入を防ぐ)

(v)床にある水抜きのためのゴム栓の有無及び装着状態(外気侵入を防ぐ)

(vi)冷蔵・冷凍機の稼働の状態を確認

*前荷による燻蒸等で冷却ファンの吹き出し口から白錆が放出される場合もある



近年CA(Controlled Atmosphere)コンテナが利用されています。CA輸送は、コンテナ内の空気組成を低酸素、高二酸化炭素状態にコントロールすることで青果物の呼吸を抑制する効果があり、青果物は「冬眠状態」になり、低温管理と組み合わせることで品質の劣化を抑制し、高い鮮度を保つことができます。



<ポイント>
リーファーコンテナは、既に冷却されている貨物の温度を保つことはできますが、暖かい貨物を急速に冷却することはできませんので、コンテナそのものの冷却に加えて、収容する貨物の予冷が必要となります。

<注意>
国際輸送開始前のリーファーコンテナ冷凍機故障や欠陥部位に起因する損害は、貨物海上保険の開始前の損害となりますので、輸出者または一義的なShipperの方々は貨物積み込み前にコンテナのチェックが重要となります。


【外部リンク : 冷凍コンテナ故障時における庫内温度変化に関する研究(PDF)



-A.積み付け(Vanning)

(イ) 生鮮青果物には、エチレンの生成量が多い(エチレンガスを多く生み出す)ものと、エチレン感受性が高い(エチレンガスの影響を受けやすく、少量のエチレンガスでも劣化が促進されやすい)ものがあります。

これらの生鮮青果物を同じコンテナに積載して運搬することは、腐敗の進行に繋がります。

【外部リンク : 果物の収穫後の品質を維持するための推奨事項 (英語)



(ロ) 生鮮青果物は、収穫した後も生きて呼吸活動によりエネルギーを消費しています。収穫後は外部からの栄養の補給がないため、細胞内に蓄えられた栄養分を使用して自己消化(生物体が自己の体内に保有する酵素により体の成分を分解すること)を行い、その結果水分を発散させます。したがって、収穫後の生鮮青果物の鮮度を保持するためには輸送する生鮮青果物の特性に合わせて温度や湿度を管理することが非常に重要です。

【外部リンク : 果物の最適貯蔵条件 (英語) 】 

【外部リンク : 野菜の最適貯蔵条件



(ハ) 輸送効率を高めるためカートンを段積みすることが経済的な反面、海上輸送中には自重による荷重やコンテナの荷卸し時の衝撃、本船上の動揺による荷重がかかります。圧迫によって生鮮物は互いに強く接触して変形や傷が発生しますし、特に下にあるカートンが潰れるという事故が発生します。そのため、貨物の重量と梱包の強度を踏まえたうえで、一番下に積まれる貨物の梱包がその上に積まれる貨物の重量に十分耐えられるか考慮する必要があります。



(ニ) コンテナの冷気は吹き出し口から吹き出され貨物を囲むようにコンテナ内を循環して、すべての貨物を冷やしています。積付が適当でないと、コンテナ内が満遍なく冷やされず温度の高い部分が生じ損害が発生します。



<ポイント>
リーファーコンテナの温度設定・換気のためのベンチレーションの開閉、及びエチレンの生成量が多い果物とその影響を受け易い果物の詰め合わせ、及び段積みによる冷気の循環と果物の潰れに注意が必要です。

<注意>
果物の劣化及び腐敗は、貨物海上保険では商品の性質に起因し免責事項となります。特約での復活担保をすることが重要です。






(2) 航空輸送を利用する場合

通常はULDというコンテナで輸送されるため、冷却システムのないコンテナにドライアイス・保冷剤・氷詰めにして輸送します。そのため飛行時間に合わせて冷却材を詰め合わせ、また梱包材も断熱性の高い材質の内箱を使用する必要があります。

リーファーコンテナに対応している航空会社は限定されており、厳密な温度管理はできません。



<ポイント>
輸送に関わる日数は海上輸送に比べて格段に短いですが、ドライアイス・保冷剤等の量による温度管理が難しい為、事前の準備がより重要となります。また、トランジットの場合や空港上屋での積卸時の温度上昇には要注意です。

<注意>
想定以上に飛行時間を要し冷却材が足りなかった(飛行機・通関等の遅延に起因する)ことによる損害は、貨物海上保険の免責になる場合がありますので、ご注意ください。




【外部リンク : JAL温度管理輸送サービス





<食品 輸出協力企業リスト>

ジェトロが一定基準を設け公募によって収集した、農林水産物・食品の輸出を行う商社・貿易会社・船社(船舶代理店)・航空会社(航空代理店)・輸送会社・物流会社・海貨会社・フォワーダー・輸出梱包サービス会社・保険会社のリストです。

【外部リンク : ジェトロ農林水産物・食品 輸出協力企業リスト 】  



<外航貨物海上保険について>

果物に関しての貨物海上保険のご質問は弊社・インターリンクにても受け付けております。




<参考文献>

食品別輸入関連規則・流通事情−シンガポール編(日本貿易振興機構(ジェトロ))

生鮮青果物 輸出ハンドブック (三井住友海上火災保険株式会社)

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