貿易売買条件の種類と売主買主の義務関係
貿易は異国間取引のため、当事者間の言葉や商慣習、法律等が異なるため、トラブルを未然に防止するためには、お互いに共通理解ができる売買契約の条件が必要となります。
国際商業会議所(
インコタームズは、1936年制定された貿易に関する国際売買契約の取引条件で、その後時代による商習慣の変遷により約10年に1度ぐらいの間隔で、改定がなされています。最新のものが、2010年版となります。
正確な名称は、『
【目 的】
外国貿易における取引条件の解釈について一定の国際ルールを提供することであり、具体的には、貿易取引契約における「売主と買主の義務」を物品の輸送の手配及び引渡し、通関、関税等の費用負担、危険の移転時期、等の明示をしています。
【特 徴】
インコタームズは国際条約ではないため、個々の売買契約書上に『2010年インコタームズに準拠』する旨を明示する必要があります。
また、物品の所有権の移転、及び不測の事態に関する免責事項、契約違反から生ずる結果についても規定されていないため、準拠法や他の契約条項が大切となります。
1.売主・買主のそれぞれの義務
2.取引規則
@全ての輸送手段(複合輸送、単一輸送)のための規則(
EXW「工場渡条件」
FCA「運送人渡条件」
CPT「運送費込条件」
CIP「運送費保険料込条件」
DAT「ターミナル持込渡」
DAP「仕向地持込渡」
DDP「仕向地持込渡(関税込み)条件」
A海上および内陸水路輸送のための規則(
FAS「船側渡条件」
FOB「本船渡条件」
CFR「運賃込条件」
CIF「運賃保険料込条件」
3.リスク移転の時期
(クリックすると大きい画像が別ウィンドウで開きます)
4.通関及び許認可手続の義務
EXW | CIP/CPT/FCA | FAS | CIF/CFR/FOB | DAP | DAT | DDP | |
輸出通関 (仕出港) |
買主 | 売主 | 売主 | 売主 | 売主 | 売主 | 売主 |
輸入通関 (仕向港) |
買主 | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 | 売主 |
5.貨物海上保険の手配
EXW | CIP | FAS | CIF | DAP | DAT | CPT/FCA | CFR/FOB | DDP | |
貨物保険手配 | 買主 | 売主 | 買主 | 売主 | 売主 | 売主 | 買主 | 買主 | 売主 |
6.各条件の概要
EXW「工場渡条件」
・「売主が、輸出通関を行わず、また、受取のための車両に積込まずに、売主の施設またはその他の指定された場所(工場、製造所、倉庫等)で、物品を買主の処分に委ねた時に引渡しの義務を果たす」条件となります。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
・買主は引渡しを受けた以降の物品に関する一切の費用を支払う。
FCA「運送人渡条件」
・売主が輸出通関を行う義務を負い、売主の施設で、買主によって指名された運送人に物品を引き渡した時、またはその他の指定地で引渡す場合は、買主(または売主)の指定した運送人等に処分を委ねた時に完了する引渡条件となります。
・危険の負担は通関の時期とは無関係で、物品の運送人への引渡しの時に売主から買主へ移転します。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
・この条件は、コンテナ輸送貨物ないしは国際複合運送貨物の為に制定されたもので、「陸に上がったFOB」と呼ばれています。
CPT「運送費込条件」
・売主が、指定した運送人に物品を引渡し、更に物品を指定仕向地まで輸送するための運送契約を締結しなければならない条件です。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
・この条件は、コンテナ輸送貨物ないしは国際複合運送貨物の為に制定されたもので、「陸に上がった、CFR」と呼ばれています。
CIP「運送費保険料込条件」
・売主が、指定した運送人に物品を引渡し、更に物品を指定仕向地まで輸送するための運送契約を締結しなければならない条件です。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
・この条件は、コンテナ輸送貨物ないしは国際複合運送貨物の為に制定されたもので、「陸に上がった、CIF」と呼ばれています。
DAT「ターミナル持込渡」
・「ターミナル持込渡」規則は、指定仕向港または仕向地における指定ターミナルで、輸入通関せずに、物品が輸送手段 から荷卸しされた後、買主の処分に委ねられた時に売主が引渡しの義務を果たす条件です。
・上図は船舶輸送を例にしたものですが、輸送手段は船舶に限定されていません。
・輸送手段から荷卸しする費用は売主負担となります。
・輸入通関の費用は買主費用となります。
DAP「仕向地持込渡」
・「仕向地持込渡」規則は、指定仕向地において、輸入通関せずに、荷卸しの準備ができている輸送手段の上で買主の処分に委ねられた時に、売主が物品の引渡しの義務を果たす条件です。
・輸入通関の費用は買主負担となります。
・輸送手段から荷卸しする費用は買主費用となります。
DDP「仕向地持込渡(関税込み)条件」
・「関税込持込渡」規則は、売主が、指定仕向地において、輸入通関を行い、かつ、輸送手段から荷卸しせずに、物品を買主に引渡す条件です。
・売主は、仕向国への輸入のための「関税」を含めて、指定仕向地までの物品の輸送に伴う費用と危険を負担しなければなりません。
・EXW条件が、売主にとって最小の義務を表しているのに対して、DDPは最大の義務を表しています。
FAS「船側渡条件」
・売主は合意された期間内に指定船積港において、買主によって指定された積込み場所で、指定された本船の船側に物品を置くことにより、買主に物品を引渡す条件です。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
FOB「本船渡条件」
・売主が指定船積港において、買主によって指定された本船上で、買主に物品を引渡す条件です。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
CFR「運賃込条件」
・売主が合意された期間内に、船積港において本船上で物品を置くことにより、買主に物品を引渡す条件です。
・売主は指定仕向港までの運送契約を締結しなければなりません。
・買主は引渡しを受けた以降の物品の滅失または損傷について一切の危険を負担することになります。
CIF「運賃保険料込条件」
・売主が合意された期間内に、船積港において本船上で物品を置くことにより、買主に物品を引渡す条件です。
・売主は指定仕向港までの運送契約を締結しなければなりません。
(注意) 詳細につきましては、『ICCインコタームズ2010』をご一読してください。