1.各条約と制定沿革
条約の要点 ※上記4条約は別個の条約のため、各国がどの条約に批准しているかがポイントとなります。因みに日本は4条約とも加盟しています。 ※発着空港の各国が、同一の条約に加盟している場合に適用されるため、例えばA国がワルソー条約・改正ワルソー条約及びモントリオール第四議定書に加盟している場合で、A国〜日本国間では、モントリオール第四議定書条約が適用されます。 ※ヘーグ議定書(改正ワルソー条約)のみを批准している場合は、ワルソー条約の非改正部分もあわせて採用していると解される。例えばA国がワルソー条約に加盟していて、B国は改正ワルソー条約のみに加盟している場合で、A国〜B間では、ワルソー条約が適用されると解されます。 航空輸送に関わる条約の要旨(下記7参照) |
2.契約ごとの運送人の特定
3.運送人の定義
ワルソー条約・ヘーグ議定書・モントリオール第四議定書
運送人は定義されていない
モントリオール条約
(40条) 運送人・実際運送人の双方がこの条約の規定に従うものとする
4.出訴期限と適用範囲
@損害通知期間
ワルソー条約 | ヘーグ議定書・モントリオール第四議定書・モントリオール条約 | |
貨物に毀損があった場合 (貨物受け取りの日から) |
7日以内 | 14日以内 |
延着の場合 (貨物の処分が可能となった日から) |
14日以内 | 21日以内 |
A出訴期限
2年 → ワルソー条約・ヘーグ議定書・モントリオール第四議定書26条・モントリオール条約35条
B適用範囲
航空輸送中に限られる。
※モントリオール条約18条4項
・飛行場外で行なう陸上輸送、海上輸送または内水輸送の区間を含まない。
・航空運送契約に基き積込み、引渡し、または積替えのために行なわれる場合の陸上輸送、海上輸送または内水輸送の区間の損害は、航空輸送中における事故から生じたものと推定する。
・運送人が、荷送り人の同意なしに、航空輸送による契約にも拘わらず、運送の全部または一部を他の形態の運送に替えた場合は、その輸送手段による運送期間も、航空輸送中とみなす。
※複合輸送の場合(モントリオール条約38条2項)
航空輸送部分については、モントリオール条約を遵守
5.責任制限
@ワルソー条約・ヘーグ議定書 250金フラン(US$20) / kg
※「損害を 生じさせる意図をもって、または無謀にかつ損害の生じるおそれがあることを認識して行なった運送人またはその使用人の行為または不作為」から損害が発生した場合は、責任制限ができない。
Aモントリオール第四議定書・モントリオール条約 22SDR / kg (19SDR / kgから2019年12月28日改定)
※運送人の故意がある場合でも責任制限ができる。
※荷送人が貨物引渡し時に価額を申告し、割増航空運賃を支払った場合の責任限度額は、申告価額が実際価額を超えない限り申告価額が限度となる。
The liability of a Carrier shall be limited to the declared value by a Shipper which is specified in the Air Waybill if the declared value for carriage is declared, or US$20 or the equivalent thereof per kilogram of cargo damaged if the shipper does not declare the value. In the case, all claims for the damage shall be subject to proof of the value thereof. |
※モントリオール第四議定書・モントリオール条約は、厳格責任主義 (免責事由の損害でない限り、運送人が賠償責任を負う) ※ワルソー条約・ヘーグ議定書は、過失責任主義 |
6.運送人・荷主の責任範囲と貨物海上保険の役割
貨物保険に加入していない場合に、赤い実線の部分が荷主の責任範囲となります。
外航貨物海上保険は損害があった場合に、契約者である荷主に約定した保険金を支払います。その後、代位求償権を行使し
運送人に対して損害賠償請求(青の点線部分)をします。回収された額は、個々の保険契約者の保険成績に加味されます。
7.航空輸送に関わる条約の要旨
ワルソー条約・ヘーグ議定書 | モントリオール第4議定書・モントリオール条約 | ||
運送人の定義 | 運送人は定義されず、判例上契約運送人のみをさすと解釈 | (モントリオール第4議定書) 定義されていない (モントリオール条約40条) 契約運送人及び実行運送人の双方 |
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運送人の責任 | (ワルソー条約20条) (ヘーグ議定書20条) 運送人は運送人及びその使用人が損害を防止するため必要な全ての措置をとったこと又はその措置をとることをできなかったことを証明した時は責任を負わない |
(モントリオール第4議定書18条) (モントリオール条約18条) 貨物の破壊滅失または毀損の場合における損害は、その原因となった事故が航空輸送中に生じたものである事のみを条件として責任を負う |
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免 責 |
<ワルソー条約23条>
運送人の責任を免除する約款は無効 <ヘーグ議定書12条(2)> 貨物の性質又は固有の欠陥から生じた滅失又は損害 (例外規定) |
・貨物の固有の瑕疵又は性質 ・運送人またはその使用人もしくは代理人以外の者によって行なわれた荷造りの欠陥 ・戦争行為または武力衝突 ・貨物の輸出入又は通過に関してとられた公的機関の措置 |
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責任制限 | 1キログラム当たり250金フラン(20米ドル)(ヘーグ議定書25条) 損害を生じさせる意図をもって、または無謀にかつ損害の生じるおそれがあることを認識して行なった運送人またはその使用人の行為または不作為から損害が発生した場合は、責任制限の適用はない |
22SDR/kg運送人に故意がある場合でも責任制限ができる | |
損害通知 |
<ワルソー条約> |
<ヘーグ議定書> |
貨物の毀損 14日 貨物の延着 21日 |
出訴期限 | 到着地への到達の日、航空機が到着すべきであった日又は運送の中止の日から2年以内 | 到着地への到達の日、航空機が到着すべきであった日又は運送の中止の日から2年以内 |