外航貨物海上保険と信用状
1.信用状統一規則にみる保険書類
銀行が信用状発行の際に順じている規則が国際商工会議所制定の「荷為替信用状に関する統一規則および慣例」(Uniform Customs and Practice for Documentary Credits)です。
UCP600によりますとL/C買取時に銀行がチェックする保険書類の要点は下記の通りです。
・保険書類は保険会社等により署名されていること。
・2通以上のオリジナルが発行されている場合は全通を呈示すること。
・信用状に特に指定されていなければ、銀行は保険仲立人発行のカバー・ノートは受理しない。
・信用状に特に指定されていなければ、銀行は保険承認状(Certificate)、通知書(Declaration)を受理する。
・信用状に特に指定されていなければ、銀行は運送書類上の積込み日、発送日、または貨物受取日より後に発行された保険書類を受理しない。
・信用状に特に指定されていなければ、保険書類は信用状と同一通貨でなければならないこと。
・信用状に特に指定されていなければ、最低付保金額をCIF/CIPの110%とし、保険書類上確定できない場合は信用状の支払い額、引受額、買取額の110%か、送り状の総額の110%のどちらか大きい金額を最低付保金額として認めること。
・信用状には保険条件・担保危険を明記すべきだが、不正確な表現が記載されていても呈示された書類を銀行は受理する。
・信用状に特に指定されていなければ、銀行は不担保危険に責任を負うことはなく書類を受理する。
・信用状に特に指定されていなければ、免責歩合(franchise)や控除免責歩合(excess)の適用を受ける保険書類を受理する。
・不担保危険が明記してあってもAll Risksの表示を含む保険書類を受理する。
2.信用状(L/C)上の保険条件の間違え
銀行は買取上のディスクレの責任を問われるため信用状と同一表現を求めてきますが、原則は保険条件をよく理解してもらい銀行に対処してもらうことが大切です。
@保険効力上問題ない場合
保険会社は買取上の緊急対応として信用状通りの表現で対応してくれる場合もあります。但し、特別な措置ですので以後適切な内容の保険条件を売買契約の時点で表記する必要があります。
例)
All Risks including J.W.O.B and T.P.N.D
All RisksはJ.W.O.B and T.P.N.Dの危険を担保しており、保険証券上に明記する必要はありません。
A保険効力上問題ある場合
保険会社は引受を拒否いたしますので、信用上のアメンドを交渉していただくことが大前提となります。
保険会社と包括的な契約(O.P/O.C)を結ばれている場合で、信用状の有効期限やその他諸条件の関係で、どうしてもアメンドが不可能な場合の緊急措置も実務的には行なっている保険会社もあります。
例)
All Risks including Meltingの保険条件で、お菓子(グミ)をドライコンテナで輸出する場合
熱により溶けるのは貨物の性質に起因し海上保険で免責にあたりますので保険の引受を致しません。この場合保険条件の変更を信用上のアメンドで行なっていただく事となります。
3.信用状(L/C)が求める保険書類の主な注意条項
「荷為替信用状に関する統一規則および慣例」
第28条b 項
【概 要】
保険書類が1通よりも多い原本の発行がされている場合は、すべての原本を呈示しなければならない。
【注 釈】
通常、保険証券は2通のオリジナルが発行されます。
第28条e項
【概 要】
保険書類上の日付は、船積日よりも遅くない日付であること。ただし、保険書類上で保険担保(補償)が船積日よりも遅くない日から効力を持つことが分かる場合を除きます。
【注 釈】
保険証券の日付は2箇所あります。1つ目が「Sailing on/about」で船積予定日です。もう1つが「Date of Issue」発行日となります。 通常、船積予定日は、船荷証券上の「On Board Date」と同一日にします。また貨物保険は「倉庫または保管場所において、国際輸送開始のために輸送車両等に積載するため最初に動かされた時に開始」するため、「Date of Issue」発行日は、「Sailing on/about」船積予定日よりも以前の日付での発行となります。
保険証券の日付が保険効力の発生日となります。以上より、保険の手配は早目にする事をお勧めします。
第28条f 項i
【概 要】
保険書類は、補償される保険金額を明記しなければならず、また信用状と同一通貨での表記でなければなりません。
【注 釈】
外航貨物海上保険を申込時のインボイス等の通貨と同一通貨での表示となります。
第28条f 項ii
If there is no indication in the credit of the insurance coverage required, the amount of insurance coverage must be at least 110% of the CIF or CIP value of the goods.
When the CIF or CIP value cannot be determined from the documents, the amount of insurance coverage must be calculated on the basis of the amount for which honor or negotiation is requested or the gross value of the goods as shown on the invoice, whichever is greater.
【概 要】
補償される保険金額は、物品の価額、送り状の価額またはこれと同等の価額のある割合とすべきであることを信用状で要求しており、その要求された保険金額の最低金額とみなされます。
要求された補償される保険金額の記載が信用状にない場合は、最低でもCIF価額またはCIP価額の110%でなければなりません。
CIF価額またはCIP価額が書類から判断できない場合は、補償される保険金額は、オナーまたは買取が求められている金額、または送り状に表示された物品の総価額のいずれが最大の金額に基づいて計算されなければなりません。
【注 釈】
信用状で特段の記載がない場合は、110%補償される保険金額は、最低金額として扱われます。
第28条f 項iii
【概 要】
保険書類は、最低でも、信用状に記載された「受取地」または「船積地」と「陸揚地」または「最終到着地」間の危険が補償されていることを明示しなければなりません。
【注 釈】
信用状に記載されている最小区間の補償が記載されている保険証券であれば、買取上で問題ありません。
第28条h項
【概 要】
信用状が「all risks」の保険を要求している場合で、「all risks」の見出しの有無に関係なく、「all risks」の付記または条項が記載されている保険書類が呈示された時は、その保険証券に不担保条項が記載されていても受理されます。
【注釈】
「Institute Cargo Clause(A)を担保する保険書類は、「all risks」条項または付記を要求している信用状条件を充足している。」とISBP681第173で規定しています。
Institute Cargo Clause(A)第1条の冒頭に「
また、外航貨物海上保険の旧約款(1963年)での保険条件がInstitute Cargo Clause(All Risks)となっておりました。これにより、信用状でInstitute Cargo Clause(All Risks)と要求がある場合には、Institute Cargo Clause(A)とは、別約款になりますので、上記「all risks」条項または付記を要求している場合に該当しませんので、気をつけてください。