外航貨物海上保険の費用損害
1. 特別費用(Particular Charge)
概要
「Particular Charges」は、被保険貨物の安全または保存のために、被保険者によって、または被保険者のために支出された費用をいいます。
ただし、共同海損および救助料は除かれます。また、Particular Charges は単独海損には含まれません。単独海損の有無とは別に、保険金額を限度として支払われる性質の費用です。
注釈
担保危険を回避するため、または貨物の損害防止・軽減のために支出された費用であり、支出者を厳密に限定しない費用と整理できます。
M.I.A.76条2項では、免責歩合は適用されない旨が規定されています。
具体的な補償例
- 中間港で支出された貨物の陸揚費用
- 貨物の手入れ費用
- 保管費用
- 再積込み費用
2. 付帯費用・損害調査費用(Extra Charge)
概要
被保険貨物が、全部または一定の歩合未満の単独海損を担保しない場合でも、保険者は救助料、特別費用、その他 Sue and Labour Clause に基づき正当に支出された費用を補償します。
具体的な補償例
- サーベイヤー費用
- 鑑定料
- 競売費用
- その他、担保危険による損害調査のために必要となる費用
これらの費用は、保険金が支払われる損害に対して、保険金と合算して支払われます。
一方、損害が不担保である場合、または免責事項に該当して保険金が支払われない場合には、これらの費用も支払われないことがあります。
3. 損害防止費用(Suing and Labouring Charge)
概要
被保険貨物が全損となった場合でも、約款に従って正当に支出された損害防止費用は、保険契約とは補足的な関係にあるものとして、別枠で請求できることがあります。
損害防止費用が認められる主な要件
- 被保険危険が既に発生し、または作用していること
- 保険で担保される危険による損害を防止・軽減するための費用であること
- 保険証券記載の仕向地に到着する前に支出された費用であること
- 被保険者、その代理人、使用人または譲受人により支出された費用であること
- 合理的に支出された費用であること
注意点:危険発生のおそれに備えた準備費用は、原則として損害防止費用とは整理されません。また、被保険貨物の協定価額を大きく上回る費用をかける場合は、合理性が問題になります。
4. 共同海損費用
M.I.A.66条の規定により、貨物保険で補償される危険を回避するために生じた犠牲損害や共同海損分担金は、貨物保険で補償されることがあります。
参考:共同海損について
5. 救助料
概要
救助料は、契約に関係なく、海事法上、救助者が回収できる費用と定義されます。
一方、被保険者やその代理人、または被保険者に雇われた者が、保険で担保される危険を避けるために行った作業費用は、救助料には含まれません。その性質に応じて、特別費用または共同海損損害として回収されることがあります。
注釈
船舶が航海中に事故に遭った際、船舶や貨物の救助のために支出された費用が問題になります。
6. 費用損害の考え方と費用負担
上記1から5は、主として仕向港または仕向地到着前に発生した、損害防止に関わる費用損害についての整理です。
ここでは、仕向港または仕向地に到着した損害貨物について、原状回復のために発生する主な費用損害を整理します。
補償対象となるかどうかは、その費用が貨物輸送に関わる通常費用ではないか、原状回復を超える内容ではないか、間接費用が含まれていないかなどによって判断されます。
① 損害貨物の手直し費用
手直し費用には、人件費、資材費、運送・荷役費、保管料などがあります。
貨物損害の手直しに関わる費用であるため、保険会社の判断のもと、単独損害として処理されることがあります。
② 損害貨物の修理費用
損害を受けたままでは転売できない、または格落ちのまま使用できない貨物については、修理費用が補償対象となることがあります。
一般的には機械貨物が対象となり、交換部品代金、修繕費用、輸送費用などが問題になります。
交換部品を海外メーカーから輸入する場合、運賃や関税が補償されるかどうかは、元の機械を輸入した際の保険条件と輸送条件によって変わります。
元の機械が海上輸送された場合、交換部品の運賃は海上輸送費を限度として補償されることがあります。また、元の機械輸入時に関税保険を付保していなければ、交換部品に対する輸入関税は補償されません。
修理費用の補償限度額は、損害を受けた一単位ごとの機械の保険金額までと整理されます。
ポイント:修理が前提となる機械輸送では、交換部品の航空運賃および輸入関税を補償する特約を別途手配することがあります。
代表的には、Special Replacement Clause (Air Freight) や Special Replacement Clause (Duty) と呼ばれる特約です。
③ 再梱包費用
最終仕向港または仕向地到着前に梱包損傷があり、そのままでは安全に輸送を継続できない場合、再梱包費用が補償対象となることがあります。
一方、最終仕向地に到着した後に行われる再梱包費用は、原則として補償対象外となります。
また、外箱など輸送のための包装自体の損傷は、通常は貨物損害として補償されません。ただし、梱包が商品の一部を構成する化粧箱などの場合には、貨物本体に損害がなくても再梱包費用が問題になることがあります。
④ 輸入関税および内国消費税
輸入関税は、費用損害としては原則として認められません。別途、関税保険に加入することで補償対象となることがあります。
国内消費税については、基本的に保険金は課税対象外であるため、消費税は支払われません。
ただし、修理費用や手直し費用など、費用損害の保険金請求額に消費税が含まれている場合には、その限りではありません。
参考:保険金と消費税
⑤ 補償されない主な費用
- 損害があった貨物と正品との仕訳作業料
- 損害貨物の廃棄費用
- コンテナ洗浄費用
- コンテナ延滞料
- 違約金
- 損害品の代替品の輸送費用
- 輸入関税
- 国内消費税
まとめ
費用損害は、単なる貨物損害とは別に、特別費用、損害調査費用、損害防止費用、共同海損費用、救助料などが関係するため、非常に複雑です。
特に、仕向地到着前の損害防止費用なのか、到着後の原状回復費用なのかによって、補償の考え方が変わります。
費用損害の発生が予想される場合は、費用を支出する前に、まず保険会社または保険代理店へ相談することが重要です。